説明

鋼管柱用ベースプレート

【課題】強度アップを図りながら、全体重量の増加を抑えた鋼管柱用ベースプレートを提供する。
【解決手段】鋼管柱用ベースプレート100は矩形状であって、中央部に形成された立上部20と、角部11に向けて形成されたアンカーボルト座部30と、アンカーボルト座部30によって挟まれた三角形状の傾斜部40と、を有する。傾斜部40は、短期許容耐力時のコンクリートの圧縮から決定される板厚(T2)である位置Eと、傾斜部40の周縁部部12における製造上の制約から決定される板厚(T0)である位置Dとを結ぶ面の一部である緩斜面41と、前記短期許容耐力よりも大きな値の短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって決定される板厚(T3)である位置Fと、周縁部部12における底面10の位置Cとを結ぶ面の一部である急斜面とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管柱用ベースプレート、特に、通常のコンクリート基礎に比較して強度の高いコンクリートによって形成された高強度基礎コンクリートに設置される、鋼管柱用ベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する露出型柱脚工法に用いられる鋼管柱用ベースプレートは、矩形状の板材であって、鉄骨柱の下端を接合するために中央部に形成された環状の立上部と、対角線に沿って立上部から角部に向かって形成され、アンカーボルトが挿通するアンカーボルト孔が設けられたアンカーボルト座部と、アンカーボルト座部に挟まれた略三角形状の傾斜部と、を有している。
そして、アンカーボルトの配置を規定して、厚みをできるだけ小さくすることができる鋼管柱用ベースプレートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−282570号公報(第3−4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、アンカーボルト座部の厚さ(T1)が、アンカーボルトのネジ部の降伏軸力によって、アンカーボルト座部の立上部との接合位置に生じる曲げモーメントに対して、該接合位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される。
一方、傾斜部の立上部への至近位置(三角形の頂点に同じ)における厚さ(T2)は、短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、傾斜部の立上部への至近位置に生じる曲げモーメントに対して、該至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される値である。
また、傾斜部の周縁部(三角形の底辺に同じ)における厚さ(T0)は、製造上の制約(たとえば、鋳造時に湯流れを保証する厚さ等)から最少値が決定される。
このとき、傾斜部は周縁部(厚さT0)から、至近位置(板厚T2)に向かって傾斜した平面を呈している。
【0005】
したがって、特許文献1に開示された発明によって、鋼管柱用ベースプレートの厚みをできるだけ小さくすることができるという効果が得られるものの、コンクリートの短期許容耐力の値によって、傾斜部の傾斜角度は変動することになる。
すなわち、所定の強度のコンクリートに設置される鋼管柱用ベースプレートを、これよりも強度の高いコンクリートに設置される鋼管柱用ベースプレートに変更しようとすると、前者の傾斜部の傾斜角度より、後者の傾斜部の傾斜角度の方が大きくなって、傾斜部全体の厚さが増加し、鋼管柱用ベースプレートの全体重量が増すことになる。
このため、より強度の高いコンクリートに設置される鋼管柱用ベースプレートについて、全体重量の増加を抑えたいという要請があった。
【0006】
本発明は、このような要請に応えるものであって、より強度の高いコンクリートに設置されるものであって、全体重量の増加が抑えられた鋼管柱用ベースプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る鋼管柱用ベースプレートは、基礎コンクリートに固定されたアンカーボルトによって基礎コンクリートに設置される略矩形状であって、
中央部に形成され、鋼管柱の下端が接合される環状の立上部と、
対角線に沿って前記立上部から角部に向かって形成され、アンカーボルトが挿通するアンカーボルト孔が設けられたアンカーボルト座部と、
前記アンカーボルト座部に挟まれた略三角形状の傾斜部と、を有し、
前記傾斜部の周縁部寄りに緩斜面が形成され、
前記傾斜部の中央部寄りに急斜面が形成されることを特徴とする。
【0008】
(2)また、前記(1)において、前記緩斜面が、短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、前記至近位置に生じる曲げモーメントに対して、前記至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T2)の前記至近位置における上面と、前記傾斜部の周縁部における製造上の制約から決定される板厚(T0)の上面とを結ぶ面であって、
前記急斜面が、前記短期許容耐力よりも大きな値の短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、前記至近位置に生じる曲げモーメントに対して、前記至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T3)の前記至近位置における上面と、前記傾斜部の周縁部における底面とを結ぶ面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鋼管柱用ベースプレートは、傾斜部に緩斜面と急斜面とが形成されるから、すなわち、強度アップに対応した必要最小限の範囲に限定した増肉をするから、傾斜部を単一平面に形成する場合に対比して、強度上不要な肉厚を削除することが可能になり、全体重量を減少させることができる。また、鋳造によって製造する際、既存の型(金型、木型等)を強度アップに対応した必要最少限の範囲で修正するだけで、より強度の高い鋼管柱用ベースプレートを製造するための型にすることができるから、型の製造コストを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る鋼管柱用ベースプレートを説明する平面図等。
【図2】図1に示す鋼管柱用ベースプレートを説明する拡大断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る鋼管柱用ベースプレートを説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る鋼管柱用ベースプレートを説明するものであって、図1の(a)は平面図、図1の(b)は側面図、図1の(c)は断面図、図2は拡大断面図である。
【0012】
図1において、鋼管柱用ベースプレート100は、基礎コンクリート(図示しない)に固定されたアンカーボルト(図示しない)によって基礎コンクリートに設置されるものである。鋼管柱用ベースプレート100は、略矩形で、平面状の底面10と、中央部に形成された環状の立上部20と、対角線方向に立上部20から角部11a、11b、11c、11dに向かって形成されたアンカーボルト座部30a、30b、30c、30dとを有している。
【0013】
(傾斜面)
そして、アンカーボルト座部30a、30b、30c、30dに挟まれた略三角形状の傾斜部40a、40b、40c、40dと、を有している。なお、以下、共通する内容については、符号の添え字「a、b、c、d」の記載を省略して説明する。
また、アンカーボルト座部30は、アンカーボルト座上面31と、アンカーボルト座側面32と、貫通する(アンカーボルト座上面31および底面10を貫通する)アンカーボルト孔33を有している。
また、傾斜部40の周縁部12寄りに緩斜面41が形成され、傾斜部40の立上部20寄り(中央部寄りに同じ)に急斜面42が形成されている。なお、周縁部12の中央には、位置決めのための周縁部突起13が形成されている。
【0014】
(緩斜面)
図2において、緩斜面41が、短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、至近位置(B−Bにて示す位置に同じ)に生じる曲げモーメントに対して、該至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T2)の前記至近位置における上面(位置Eにて示す)と、傾斜部40の周縁部12における製造上の制約から決定される板厚(T0)の上面(位置Dにて示す)とを結ぶ面の一部である。
【0015】
(急斜面)
また、急斜面42が、前記短期許容耐力よりも大きな値の短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、至近位置(B−Bにて示す位置に同じ)に生じる曲げモーメントに対して、該至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T3)の前記至近位置における上面(位置Fにて示す)と、周縁部12(正確には周縁部突起13)における底面10の位置(位置Cにて示す)とを結ぶ面の一部である。
【0016】
すなわち、基礎コンクリートの強度がより大きくなった場合に対応し、補強するに必要な部分のみの板厚を増加して強度を確保している。このとき、既存(基礎コンクリートの強度が大きくなる前)の基礎コンクリートの基本形状を極力保持しながら、強度アップと、最少の断面増加による重量増加(材料量の増加)を抑え、経済的な形状になっている。
また、既存の基礎コンクリートを鋳造するための型(金型、木型等)を最少の範囲に限って修正することによって、強度アップを図った基礎コンクリートを鋳造することができるから、製造コストが安価になる。
なお、本発明は板厚(T2)および板厚(T3)の計算式を限定するものではなく、たとえば、公知の以下の式を用いてもよい(特許文献1参照)。また、立上部20が断面矩形状(角形鋼管からなる鉄骨柱が接合される)であるが、本発明はこれに限定するものではなく、立上部20が断面円形状(丸形鋼管からなる鉄骨柱が接合される)であってもよい。
【0017】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2に係る鋼管柱用ベースプレートを説明する平面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相等する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、共通する内容については、符号の添え字「a、b、c、d」の記載を省略している。
図3において、鋼管柱用ベースプレート200は、アンカーボルト座部30にそれぞれ一対のアンカーボルト孔33が形成されている。そして、アンカーボルト座部30の角部11寄りには、角部11に向かって板厚が減少する角傾斜部50が形成されている。
このとき、傾斜部40は実施の形態1と同様に緩斜面41と急斜面42とから形成されているから、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は以上であって、重量増加および製造コストを抑えて強度アップを図ることができるから、各種形態の鋼管柱用ベースプレートとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 底面
11 角部
12 周縁部
13 周縁部突起
20 立上部
30 アンカーボルト座部
31 アンカーボルト座上面
32 アンカーボルト座側面
33 アンカーボルト孔
40 傾斜部
41 緩斜面
42 急斜面
50 角傾斜部
100 鋼管柱用ベースプレート
200 鋼管柱用ベースプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートに固定されたアンカーボルトによって基礎コンクリートに設置される略矩形状の鋼管柱用ベースプレートであって、
中央部に形成され、鋼管柱の下端が接合される環状の立上部と、
対角線に沿って前記立上部から角部に向かって形成され、アンカーボルトが挿通するアンカーボルト孔が設けられたアンカーボルト座部と、
前記アンカーボルト座部に挟まれた略三角形状の傾斜部と、を有し、
前記傾斜部の周縁部寄りに緩斜面が形成され、
前記傾斜部の中央部寄りに急斜面が形成されることを特徴とする鋼管柱用ベースプレート。
【請求項2】
前記緩斜面が、短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、前記至近位置に生じる曲げモーメントに対して、前記至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T2)の前記至近位置における上面と、前記傾斜部の周縁部における製造上の制約から決定される板厚(T0)の上面とを結ぶ面であって、
前記急斜面が、前記短期許容耐力よりも大きな値の短期許容耐力時のコンクリートの圧縮によって、前記至近位置に生じる曲げモーメントに対して、前記至近位置が弾性範囲内にとどまる条件から決定される板厚(T3)の前記至近位置における上面と、前記傾斜部の周縁部における底面とを結ぶ面であることを特徴とする請求項1記載の鋼管柱用ベースプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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