説明

鋼管構造物の鋼管内部除錆処理装置

【課題】汎用の電力供給源により作動でき、上方から下方に向かっての除錆処理は勿論のこと、下方から上方に向かっての除錆処理をも行うことのできる吊下げ型の除錆処理装置を提供することにある。
【解決手段】 除錆処理装置は、総体的に細長い本体1と、該本体1の吊下げ方向下方端の下側に配置される除錆部2と、本体1に配置され、該本体1を鋼管P内の中空位置に保持すべく開脚が可能な支持アーム30を有する少なくとも1つの支持部3とを有する。除錆部2はその先端に研削装置23を備えた開閉脚自在な研削アーム20と、研削アーム20を本体1から放射方向へ開閉脚させるためのアーム駆動装置22とから構成される。本体1は本体1の中心軸を回転軸として除錆部2を回転させるための回転駆動装置10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管鉄塔等のような鋼管構造物の鋼管内面に発生した錆等を除去するための除錆処理装置に関し、特に、鋼管内部に吊下げられて移動し、発生した錆等を機械的に除去するための除錆処理装置に関する。本発明の説明において、「上方」および「下方」の用語は、設置された鋼管の内部に除錆処理装置が吊り下げられた状態における位置関係で使用され、また、「先端」なる用語は、除錆処理装置が鋼管内部に吊り下げられた状態における下方端を意味する。
【背景技術】
【0002】
鋼管鉄塔等のような鋼管構造物の鋼管は、経年的に、雨水等の水分が浸入してその内面に錆を発生させる可能性を有しており、発生した錆を放置することは鋼管構造物の耐久性を低下する大きな要因の一つとなっている。
【0003】
本出願人は、このような鋼管内部に発生した錆を除去する手段として、鋼管内部に除錆処理装置を吊り下げて移動し、錆発生箇所に密封用カップを被せ、その内部を真空状態にした後、密封用カップ内に設けられた電極に高電圧を供給することにより、密封用カップ内の錆との間で真空アーク放電を発生させて錆を除去する装置を提案した(特許文献1参照)。この装置は、錆を昇華して除去するため、除錆時に残滓を生じないという利点を有する反面、真空アーク放電のための大電力供給源や真空ポンプを必要とするため、例えば、山中に建てられた送電鉄塔等で使用するには必ずしも適していない。
【0004】
また、鋼管の接手付近、特にその接手における鋼管の内方に突出する部分の下面及び鋼管における前記下面に隣接する内面部分に発生した錆は、下方から上方に向かって除錆処理を行う必要があるが、鋼管内部を吊り下げて移動されるタイプの除錆処理装置の場合、そのような向きでの処理にも対応できるものは提案されていないのが実情である。
【特許文献1】特開2004−11013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の真空アーク放電を用いた除錆処理に必要な真空ポンプや大電力供給源を必要とせず、また、上方から下方に向かっての除錆処理は勿論のこと、下方から上方に向かっての除錆処理をも行うことのできる吊下げ型の除錆処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による除錆処理装置は、鋼管構造物の鋼管内部に吊り下げられて移動し、鋼管内面に発生した錆等を除去するための除錆処理装置である。本除錆処理装置は、総体的に細長い本体と、該本体の吊下げ方向下方端の下側に配置された除錆部と、前記本体に配置され、該本体を鋼管内の中空位置に保持すべく開脚が可能な支持アームを有する少なくとも1組の支持部とを具備している。除錆部は、先端部に研削装置を備えた開閉脚自在な研削アームと、該研削アームの基端部を支点にして該研削アームを前記本体から放射方向へ開閉脚させるためのアーム駆動装置とを備えた構成になっている。本体は、該本体の中心軸を回転軸として除錆部を回転させるための回転駆動装置を備えている。
【0007】
本除錆処理装置は、鋼管の頂部から鋼管内部に吊り下げられ、除去すべき錆位置まで下降されると、支持アームの開脚によって本体が鋼管の中空位置に保持される。そして、アーム駆動装置を作動して研削アームを開脚させ、研削装置を除去すべき錆を有する鋼管の内面に当接させて作動することにより除錆処理を行う。回転駆動装置は、研削アームを鋼管内面の周方向に回転させ、所要の錆位置に研削装置を移動させることが可能であると共に、除錆処理中においても研削アームを所要角度だけ回転させることによって鋼管内面における周方向の異なる位置の除錆作業を連続的に行うことが可能である。除錆処理が終了すると、支持アームを閉脚させると共に、研削アームを閉脚させ、除錆処理装置を上昇させて鋼管から抜き取る。
【0008】
本発明による除錆処理装置は、モータと、該モータの出力回転軸に装着されたボルトと、該ボルトと螺合してボルトの中心軸方向へ直線的に移動されるナットと、該ナットに連結されたラックと、該ラックとそれぞれ噛合し、前記研削アームの基端部に設けられるピニオンとを備えてなるアーム駆動装置を構成し、研削アームが開脚する方向へラックを弾性的に押し進めるためのバネ部材をナットとラックの間に設けることもできる。バネ部材は、研削アームの研削装置を鋼管内面に押し付けたのち、更に研削アームを開脚したとき、ラックの閉脚方向の移動を許容し、それにより、研削装置をバネ部材の反発力によって鋼管内壁に弾性的に押し付けると共に、研削アームの回転中心から鋼管内面までの距離の変化に対して追随する。
【0009】
本発明による除錆処理装置はまた、研削装置を、研削アームの先端側に配置された回転アームの先端部に設け、回転アームは、基端部が前記研削アームの先端部に該研削アームの開閉脚運動における回転軸に平行な軸を回転軸として回転自在に連結されていると共に、アーム転向装置によって研削アームに対して回転駆動されるようになっており、研削装置には、外方に突出するように研削ヘッドが設けられた構成にしてもよい。
【0010】
また、本発明の除錆処理装置は、除錆処理装置の下方を撮影すると共に研削装置の除錆作業を撮影するためのビデオカメラと、該ビデオカメラの撮影方向を照射するための照明装置とを研削アームに設けるように構成してもよい。
【0011】
さらに、本発明の除錆処理装置は、除錆処理装置の下方を撮影すると共に前記研削装置の除錆作業を撮影するためのビデオカメラと、該ビデオカメラの撮影方向を照射するための照明装置とを回転アームに設けるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体を支持アームによって鋼管内の中空位置に支持した状態において、研削アームを開脚することにより、研削アームの研削装置を鋼管内面に押し付けることができる。このため、研削装置の作動により、鋼管内面における除錆作業を確実に行うことができる。また、回転駆動装置によって研削アームを鋼管内面の周方向に沿って回転させることにより、鋼管内面における周方向の異なる位置に生じた錆も連続的に除去することができる。しかも、ナットとラックの間にバネ部材を備えていることにより、研削作業中、鋼管内面に対して研削装置を常に弾性的な力で押し付けることができるため、より確実に除錆作業を行うことができると共に、回転駆動装置による回転運動の中心軸と鋼管内面の中心軸との間にズレがあっても、そのズレ分を吸収できるため、除錆作業を確実に連続して行うことができる。さらに、研削アームの開脚と回転アームの回動とを適当に組み合わせて動かすことにより、基本的に研削装置を含む回転アーム全体の長さとほぼ同等な内径を有する鋼管であれば、その鋼管内部において研削装置の向きを反転させることができるため、除錆処理装置を鋼管から抜き出すことなしに、接手における鋼管の内方に突出する部分の下面及び鋼管における前記下面に隣接する内面部分等に発生した錆をも除去することができる。また、除錆処理装置を鋼管内に吊り下げて下降させるときや除錆作業時に、除錆処理装置の下方や除錆作業の方向を照明装置で照らしながらビデオカメラで撮影できる。撮影された映像は、例えば鋼管の外に設置した制御装置の表示器に表示することにより、操作者は、表示器に表示された映像を見ながら、除錆処理装置の移動、研削アームの開閉脚および回転アームの回転、研削装置の作動、停止等を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の形態としての一実施例について図面を参照しながら説明する。この実施例で示す除錆処理装置は、図1に示すように、鋼管鉄塔のような鋼管構造物の鋼管Pの内部に吊下げワイヤWによって吊り下げられて移動するように構成されている。そして、本除錆処理装置は、総体的に細長い形状を有する本体1と、本体1の先端(吊下げ方向下方端)の下側に配置された除錆部2と、本体1に設けられ、該本体1を鋼管P内の中空位置に保持すべく開脚が可能な複数の支持アーム30を有する少なくとも1組(図示の場合、2組)の支持部3とを備えた構成になっている。
【0014】
即ち、支持部3は、図2に示すように、本体1の中心軸から放射方向へ開閉脚する複数(図示例では、本体1の周方向に120度の間隔をおいて3本設けられているが、周方向に90度の間隔をおいて4本設けたり、周方向の180度の間隔をおいて2本設けたりするなど、周方向に所定の間隔をおいて複数設けてもよい)の支持アーム30と、支持アーム30を開閉脚するためのアーム駆動装置31とを備えている。アーム駆動装置31は、モータ311と、モータ311の出力軸に結合されたボルト312と、ボルト312に螺合されたナット313と、ナット313に連結されたラック314と、ラック314と噛合された複数(この例では支持アーム30の本数に対応する個数の3つ)のピニオン315とを備えており、各ピニオン315には各支持アーム30の一端部(基端部)がそれぞれ固定されている。ナット313とラック314の間には、支持アーム30が開脚する方向へラック314を弾性的に押し進めるためのバネ部材316が介在されている。モータ311の出力軸が回転することにより、ボルト312が回転し、ボルト312に螺合されたナット313がボルト312の中心軸に沿って直線方向に往復移動するようになっている。このナット313の直線方向の往復移動によりラック314もまた直線方向に往復移動することから、ラック314に噛合されたピニオン315が回動することになり、これにより、ピニオン315に固定された支持アーム30がピニオン315の回転軸を中心として回動することになる。即ち、支持アーム30は、基端部を支点にして揺動し、これにより開閉脚するようになっている。また、支持アーム30に対して意図しない変位、例えば、鋼管Pの内部の突起物等と衝突することによって支持アーム30を閉脚方向に押し戻そうとする変位が作用することがあるが、この変位をバネ部材316の圧縮変形によって吸収し、ラック314の移動を許容することができ、これによって上述した予期しない変位によって大きな外力が作用し、これによって支持アーム30、ラック314、ピニオン315等が損傷を受けるのを回避することができるようになっている。また、各支持アーム30は、開脚によってその先端部が鋼管Pの内面に当接し、これによって本体1を鋼管P内の中空位置であって当該鋼管Pのほぼ中心軸の位置に保持するようになっている。なお、支持アーム30およびアーム駆動装置31(後述する研削アーム20およびアーム駆動装置22もまた同様)のより詳細な構成については、本出願人の出願に係る特願2006−283139号を参照されたい。
【0015】
除錆部2は、図3に示すように、本体1の先端部に設けられた回転駆動装置10の出力軸101に装着されており、モータ102によって本体1の中心軸を回転軸として回転される。除錆部2はまた、図4に示すように、錆を除去するための研削アーム20と、研削アーム20を本体1の中心軸から放射方向へ開閉脚させるためのアーム駆動装置22とを備えた構成になっている。この除錆部2は、基本的に、前述した支持部3の構成と同様であるが、支持部3の支持アーム30の1つを利用して研削アーム20を構成している点で異なっている。即ち、アーム駆動装置22は、モータ221と、モータ221の出力軸に連結されたボルト222と、ボルト222に螺合されたナット223と、ナット223に連結されたラック224と、ラック224と噛合された複数(この例では3つ)のピニオン225とを備え、その一つのピニオン225に研削アーム20の一端部が連結されている。これにより、モータ221によって研削アーム20の開閉脚が行われるようになっている。また、アーム駆動装置31と同様に、ナット223とラック224の間には、研削アーム20が開脚する方向へ該ラック224を弾性的に押し進めるためのバネ部材226が介在されている。
【0016】
図5は、除錆部2の研削アーム20を示す図であり、図中の(A)は研削アーム20の正面図を示し、(B)は(A)から後述する照明装置を取り除いた状態の研削アーム20の正面図を示し、(C)は(A)の右側面図を示している。
【0017】
研削アーム20は、ピニオン225側の一端部(基端部)に対して反対側の自由端部(他端部(先端部))側に研削装置23を備えている。研削装置23は、研削ヘッド231を有する慣用のグラインダによって構成されている。好ましくは、研削装置23は、研削ヘッド231が研削アーム20の外周面よりも外方へ位置するように、研削アーム20の伸延方向に対して研削装置23の回転軸を適当に傾斜させて配置される。これにより、研削アーム20をほとんど開脚できないような小さな内径の鋼管であっても除錆作業を行うことが可能である。
【0018】
また、研削アーム20には、図5の(C)に示すように、研削ヘッド231の上側に、ビデオカメラ25Aが配置されている。ビデオカメラ25Aは、研削アーム20の伸延方向とほぼ平行に位置をずらすことにより、研削アーム20よりも外方に撮影中心線が位置するように配置されている。これにより、ビデオカメラ25Aは、研削ヘッド231の除錆作業を監視すべく撮影することが可能になっていると共に、研削アーム20が閉脚されて鋼管P内を吊下げワイヤWで吊持されて移動するとき、その下側(先端側)を監視すべく撮影することが可能になっている。撮影された映像は、通信線(図示せず)によって鋼管Pの外へ伝送され、除錆処理装置の昇降、各アーム30、20の開閉脚、除錆部2の回動、研削装置23の制御等の際に作業者によって利用される。図示の場合、研削ヘッド231の除錆作業をより近くで監視するための別のビデオカメラ25Bが設けられており、この2つのビデオカメラ25A、25Bからの映像は、必要に応じて使い分けられる。
【0019】
更に、研削アーム20には、図5の(A)および(C)に示すように、各ビデオカメラ25A、25Bの左右両側の位置に、該研削アーム20の伸延方向に沿って、各ビデオカメラ25A、25Bによる撮影を可能にするための複数の照明装置26が設けられている。各照明装置26は、各ビデオカメラ25A、25Bの撮影範囲を十分にカバーできる範囲を照明することが可能になっている。
【0020】
上述の如く構成された本発明の除錆処理装置においては、吊下げワイヤWによって鋼管Pの内部に吊り下げ、各ビデオカメラ25A、25Bの一方又は双方の映像を見ながら、除錆すべき錆発生箇所まで下降させる。そして、除錆作業を可能にすべく、各支持部3における各支持アーム30を開脚し、その各支持アーム30の先端部を鋼管Pの内面に当接させることにより、本体1を鋼管P内の中空位置に保持する。この場合、本体1は、その中心軸が鋼管Pの中心軸にほぼ一致するように保持された状態になる。このように本体1を鋼管Pに対して保持することにより、研削アーム20の開脚によって研削装置23の研削ヘッド231を錆を有する鋼管Pの内面に押し付けることが可能になる。ここにおいて、研削ヘッド231の位置が除錆すべき錆の位置から鋼管P内面の周方向にズレている場合には、回転駆動装置10によって除錆部2を回転駆動し、該研削ヘッド231を除錆位置に合わせる。このとき、研削アーム20がアーム駆動装置22のバネ部材226を介して付勢されることにより、研削ヘッド231が適当な弾性力でもって除錆すべき錆の位置に押し付けられるように、研削アーム20を開脚することが好ましい。次いで、研削装置23のモータ(図示なし)を作動させて研削ヘッド231による除錆作業を行うと共に、本体1の回転駆動装置10による除錆部2の回転と、吊下げワイヤWの繰り出し/巻上げとを併用することにより、面状に広がった部分の除錆作業を行うことが可能である。これらの作業は、ビデオカメラ25A、25Bから送られてくる映像を見ながら行うことができる。
【0021】
図6は本発明の他の実施例として示した除錆処理装置の図である。前述した除錆処理装置では、研削アーム20に設置される研削装置23の研削ヘッド231が総体的に下方にのみ指向するように構成されているため(即ち、研削ヘッド231が上下方向(斜め上下方向を含む)に延在する研削アーム20の下端部から下方に突出すべく設けられているため)、例えば、図7に示すように鋼管Pを連結する接手Fにおける該鋼管Pの内方に突出する部分の下面F1及び鋼管Pにおける下面F1に隣接する内面部分P1(下面F1及び内面部分P1を図中にハッチングで示す)に発生した錆に対しては、研削ヘッド231が届くことがなく、該錆を除去することができない。これに対して、図6に示す除錆処理装置は、研削ヘッド231が研削アーム20に対して上方に突出するように向きを変えることが可能なように、研削装置23を、研削アーム20の先端部に回転自在に取り付けられた回転アーム27の先端部に設けている。
【0022】
即ち、回転アーム27は、その基端部が研削アーム20の先端部に回転自在に連結されていると共に、アーム転向装置28によって研削アーム20に対して回転駆動されるようになっている。この場合、回転アーム27は、研削アーム20の開閉脚運動における回転軸、すなわち、ピニオン225の回転軸に平行な軸を回転軸として回転自在となるように、研削アーム20の先端部に連結されている。アーム転向装置28は、回転アーム27を回動させることができる構成であればどのような構成のものも適用できるが、図示の場合、研削アーム20の先端部(または回転アーム27の基端部)に配設されるモータ281と、かさ歯車やハイポイド歯車等のような1組の2軸交差型歯車を構成する小径側歯車282及び大径側歯車283とを備えた構成になっている。小径側歯車282はモータ281の出力軸に装着され、大径側歯車283は回転アーム27の基端部(または研削アーム20の先端部)に配設される。大径側歯車283の回転軸は、研削アーム20の開閉脚運動における回転軸(すなわち、ピニオン225の回転軸)と平行に設けられている。研削装置23はその研削ヘッド231が回転アーム27の自由端(先端)から外方へ突出するように該回転アーム27の先端部に取り付けられる。
【0023】
回転アーム27を備えた除錆処理装置は、通常、図6中において実線で示すように、研削ヘッド231が上下に延在する該研削アーム20の下方に突出する位置で保持され、前述と同様にして除錆作業が行われる。このとき、必要ならば、アーム転向装置28を作動させることにより、研削ヘッド231が研削アーム20の外側面よりも外方へ位置するように、回転アーム27を回動させてもよいことは容易に理解されよう。
【0024】
また、図7に示す接手Fの下面F1および鋼管Pにおける下面F1に隣接する内面部分P1等に発生した錆を除去する場合には、図6に示すように、アーム転向装置28を作動させることにより、研削ヘッド231が鋼管P内において上方を向くように、回転アーム27の方向を転換する。この方向転換作業は、一旦、除錆処理装置を鋼管Pから抜き出してから行ってもよいが、研削装置23及び回転アーム27を含むアーム転向装置28によって回転駆動される部分の長さが、処理すべき鋼管Pの内径よりも小さければ、鋼管P内において行うことができる。具体的には、図6中において2点鎖線で示すように、研削ヘッド231が鋼管Pにおける所定方向の内面に向う方向である矢印aの方向に回転アーム27を回転させると共に、研削アーム20を矢印aの方向とは反対の矢印bの方向へ回転させる。そして、研削アーム20の先端が鋼管Pの内面に近接した状態を維持しながら、回転アーム27をさらに矢印c、d、e、fの方向に回転させることにより、鋼管P内において、研削ヘッド231を研削アーム20に対して相対的に上方に突出するように転向させることが可能である。
【0025】
従って、研削装置23によって鋼管P内に突出する接手Fの下面F1および鋼管Pにおける下面F1に隣接する内面部分P1等の錆を除去することができる。
【0026】
なお、図6においては、研削ヘッド231として、円板状の砥石を有する軸付きのものを示したが、この研削ヘッド231としては、球状や円錐形状等の他の形状の砥石を有する軸付きものであってもよい。また、研削ヘッド231としては、軸付きブラシや、外周面の少なくとも切れ刃の部分が炭素鋼や超硬合金やダイヤモンド等で形成されたスチールバーや超硬バーやダイヤモンドバー等を用いてもよい。このような研削ヘッドを用いた場合も、ブラシや切れ刃によって形成される外周面の形状を上述のように円筒状(円板状)や球状や円錐形状等に形成することが可能である。そして、円錐形状に形成した研削ヘッドを用いることにより、図7に示す下面F1と内面部分P1との隅部に発生した錆を除去することができる。なお、軸付きブラシを用いた場合には、そのフレキシブル性により円錐形状に形成したものではなくても前記隅部に発生した錆を除去することが可能である。
【0027】
また、図6においては、ビデオカメラや照明装置を省略した例を示したが、上述したビデオカメラ25A、25Bや、照明装置26に相当するものを、回転アーム27に設けるように構成してもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例として示した除錆処理装置の概要を示す断面図である。
【図2】同除錆処理装置における支持部を示す部分断面図である。
【図3】同除錆処理装置における回転駆動装置を示す部分断面図である。
【図4】同除錆処理装置における除錆部を示す部分断面図である。
【図5】同除錆処理装置における除錆部の研削アームを示す部分断面図である。
【図6】本発明の他の実施例としての除錆処理装置を示す図であって、回転アームの回転変形例を示す模式的図である。
【図7】除錆処理装置を用いて錆を削除することが可能な鋼管における接手の下面及びこの下面に隣接する鋼管の内面部分を示す鋼管の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 本体 2 除錆部
3 支持部
10 回転駆動装置
20 研削アーム 22 アーム駆動装置
23 研削装置 25A、25B ビデオカメラ
26 照明装置 27 回転アーム
28 アーム転向装置 30 支持アーム
31 アーム駆動装置
101 出力軸 102 モータ
221 モータ 222 ボルト
223 ナット 224 ラック
225 ピニオン 226 バネ部材
231 研削ヘッド
281 モータ 282 小径側歯車
283 大径側歯車
311 モータ 312 ボルト
313 ナット 314 ラック
315 ピニオン 316 バネ部材
P 鋼管 W 吊下げワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管構造物の鋼管内部に吊り下げられて移動し、鋼管内面に発生した錆等を除去するための除錆処理装置であって、
総体的に細長い本体と、該本体の吊下げ方向下方端の下側に配置された除錆部と、前記本体に配置され、該本体を前記鋼管内の中空位置に保持すべく開脚が可能な支持アームを有する少なくとも1組の支持部とを具備してなり、
前記除錆部は、先端部に研削装置を備えた開閉脚自在な研削アームと、該研削アームの基端部を支点にして該研削アームを前記本体から放射方向へ開閉脚させるためのアーム駆動装置とを備え、
前記本体は、該本体の中心軸を回転軸として前記除錆部を回転させるための回転駆動装置を備える、除錆処理装置。
【請求項2】
前記アーム駆動装置は、モータと、該モータの出力回転軸に装着されたボルトと、該ボルトと螺合して該ボルトの中心軸方向へ直線的に移動されるナットと、該ナットに連結されたラックと、該ラックとそれぞれ噛合し、前記研削アームの基端部に設けられるピニオンとを備え、
前記ナットと前記ラックの間には、前記研削アームが開脚する方向へ該ラックを弾性的に押し進めるためのバネ部材が配置される、請求項1に記載の除錆処理装置。
【請求項3】
前記研削装置は、前記研削アームの先端側に配置された回転アームの先端部に設けられており、
前記回転アームは、基端部が前記研削アームの先端部に該研削アームの開閉脚運動における回転軸に平行な軸を回転軸として回転自在に連結されていると共に、アーム転向装置によって前記研削アームに対して回転駆動されるようになっており、
前記研削装置には、外方へ突出するように研削ヘッドが設けられている、請求項1または2に記載の除錆処理装置。
【請求項4】
前記研削アームは、除錆処理装置の下方を撮影すると共に前記研削装置の除錆作業を撮影するためのビデオカメラと、該ビデオカメラの撮影方向を照射するための照明装置とを備える、請求項1または2に記載の除錆処理装置。
【請求項5】
前記回転アームは、除錆処理装置の下方を撮影すると共に前記研削装置の除錆作業を撮影するためのビデオカメラと、該ビデオカメラの撮影方向を照射するための照明装置とを備える、請求項3に記載の除錆処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46737(P2010−46737A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212113(P2008−212113)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】