説明

錠制御装置の取付部の構造

【課題】錠制御装置の取付部の構造に関し、扉表裏に開設される取付開口間の直線的な連続性を遮断することにより、防炎性、防水性を向上させることを目的とする。
【解決手段】扉1の表裏に開設された取付開口2に嵌合され、扉1内で背面壁を対向させて保持される一対の錠制御装置4、4と、
扉1に脱離不能に装着され、錠制御装置4の背面壁間に位置して前記取付開口2、2間の炎の直進を規制する隔離壁部5の辺縁に錠制御装置4からの外部接続配線6を引き出す配線引き出し部7を備えた耐火壁8と、
を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠制御装置の取付部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐火扉等に錠制御装置を取り付ける場合の錠制御装置の取付部の構造としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、出入管理用受信機(錠制御装置4)の扉への固定は、各錠制御装置を扉の表裏に開設された貫通穴(取付開口)に嵌合させ、各錠制御装置の背面部に固定された金属製の裏板を取付金具に固定して行われる。
【0003】
裏板、および取付金具には挿通口が開設されており、錠制御装置からのケーブルは、挿通口を挿通して一方の裏板と取付金具間に形成される隙間に引き出された後、扉下方、あるいは上方に導かれる。
【特許文献1】特開2007-29644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例は、挿通開口は各裏板、および取付金具の対向壁面に形成されるために、扉表裏の取付開口間は挿通開口を経由して概ね直線状に連続した状態となる。この結果、錠制御装置が熱、あるいは炎により崩落した後に扉の一方の壁面の取付開口から扉内に侵入した炎の反対側壁面への直進を完全に防止できないという問題がある。
【0005】
また、挿通開口により扉表裏の錠制御装置が収容される空間が概ね直線状に連続していることから、一方から侵入した水が他方に飛び散り、あるいはケーブルを伝って移動することによる短絡、腐食等の不具合を完全に防止できないという欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、扉表裏に開設される取付開口間の直線的な連続性を遮断することにより、防炎性、防水性を向上させた錠制御装置の取付部の構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
扉1の表裏両面には取付開口2が開設され、錠制御装置4は取付開口2に嵌合させた状態で扉1の表裏両面に取り付けられる。耐火壁8は、錠制御装置4の可燃部が崩落した状態においても扉1から脱離することないように扉1に装着されており、装着状態において、扉1内で対向する各錠制御装置4の背面壁間に隔離壁部5が位置する。
【0008】
隔離壁部5により隔てられた錠制御装置4の外部接続配線6は、隔離壁部5の辺縁から引き出されて例えば電源、あるいはコントローラに接続される。
【0009】
したがってこの発明において、扉1の表裏面に開設される取付開口2、2間は耐火壁8の隔離壁部5により仕切られるために、一方の錠制御装置4側から侵入した水、あるいは錠制御装置4の可燃部が崩落して扉1内に侵入した炎は隔離壁部5により隔てられて直接反対方の取付開口2に達することを確実に防止することが可能になる。
【0010】
耐火壁8は隔離壁部5を錠制御装置4間に配置可能であれば、例えば、隔離壁部5の四隅から脚片を突設したものであってもよいが、隔離壁部5の四周縁から側壁を起立させてボックス形状に形成し、扉1内で一方の錠制御装置4の周囲を囲むように形成すると、当該錠制御装置4を扉1内の他の空間から隔離することができるために、他の空間へ、あるいは他の空間からの水、炎の伝達をより効率的に遮断することができる。
【0011】
耐火壁8の扉1への装着は、例えば、扉1に適宜の止着子、あるいはクリップ等を使用して固定して行うことも可能であるが、
前記耐火壁8は、周縁に扉1内への落ち込みを防止するフランジ9を備えていずれか一方の取付開口2に嵌合されるとともに、
他方の取付開口2に嵌合される錠制御装置4には、周縁に扉1内への落ち込みを防止するフランジ9を備えて取付金具10が固定され、
前記耐火壁8は、前記取付金具10に連結されて脱離が規制されるように構成すると、扉1に格別のネジ孔等をあけることなく、かつ、錠制御装置4の可燃部が炎により崩落しても、扉1から脱落することなく扉1に装着することができる。
【0012】
外部接続配線6は隔離壁部5の辺縁であれば、いずれの方向から引き出してもよいが、下方から引き出した場合には、扉1の表裏空間上方からの水も遮断することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、扉表裏に開設される取付開口間の直線的な連続性が遮断されるために、防炎性、防水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1以下に示すように、錠制御装置4は、家屋の扉1の室内側壁面1aに固定されて使用される。扉1は、内部が中空の鉄製の耐火扉であり、図2に示すように、扉1表面に錠制御装置4を固定するための矩形の取付開口2が開設される。
【0015】
錠制御装置4は、表面のスイッチプレート11を押下操作することにより、利用者が所持する図外の認証コード発信装置に対して認証信号要求信号を出力する機能と、発信装置からの認証信号を受信する機能とを有し、受信結果はコントローラに伝達されて電気錠(図示せず)が駆動される。
【0016】
スイッチプレート11は装置本体13の表面部に配置される揺動軸12周りに揺動自在に連結され、揺動軸12から上方(以下、本明細書において扉1への取付姿勢を基準に「上下」「正面」「背面」を決定する。)を押すことにより施錠信号が、下方を押すことにより解錠信号が出力される。利用者に施解錠時の押圧操作位置を示すために、スイッチプレート11には施解錠マーク11aが表示される。
【0017】
装置本体13内には実装基板14が固定され、この実装基板14上にスイッチプレート11への揺動操作に伴って押下操作される押しボタンスイッチ14aと、押しボタンスイッチ14aの押下を条件に認証コード発信装置との交信を行うアンテナ14b、およびこれらの周辺回路が実装される。
【0018】
また、装置本体13には底壁構成部材を兼ねた鋼板製の取付金具10が固定される。取付金具10は実装基板14を背面側から覆うように、ボックス形状に形成され、正面側を向く開放端縁から外方に向けてフランジ9が突設される。ボックス部10aは扉1の取付開口2に挿入可能な大きさを有し、フランジ9は取付金具10の扉1内への落ち込みを規制することができる程度の寸法に形成される。
【0019】
この取付金具10は、ボックス部10aの上下辺から突設されるフランジ9をネジ15止めして装置本体13に固定され、扉1への固定状態において下方を向く側壁面には矩形の配線引き出し口10bが開設される。
【0020】
さらに、図1、2において扉1に対して左側に示される室内側の装置本体13の取付金具10の上辺に位置するフランジ9には係止舌片挿通開口10dが開設されるとともに、ボックス部10aの開放端縁の下縁中心部にはネジ孔10fを備えた連結舌片10eが突設される。連結舌片10eは、ネジ孔10fが斜め下方を向くように、正面側に向いて折り曲げられる。また、室外側の取付金具10のボックス部10aの底壁には、ナット10cが埋め込まれる。
【0021】
以上のように構成される錠制御装置4はブラケットを兼ねる耐火壁8を介して扉1に固定される。図4に示すように、耐火壁8は、上記取付金具10が嵌合可能なボックス形状をなし、ボックス部10aの開放端縁からフランジ9が突設される。フランジ9は上述した取付金具10と同様に、ボックス部10aを取付開口2に挿入させた状態で耐火壁8が扉1内に落ち込むことがない大きさに形成される。
【0022】
また、耐火壁8のボックス部8aの下方に位置する側壁には、配線引出し部7が開設されるとともに、ボックス部8aの底壁には、ビス挿通孔8bが開設される。ビス挿通孔8bは上述した室外側の取付金具10に形成されるナット10cに対応して配置され、皿ネジ16の頭部を収容するために皿もみされる。
【0023】
さらに、耐火壁8には、上記室内側の取付金具10の係止舌片挿通開口10dに挿通可能な係止舌片8cと、取付金具10の連結舌片10eに対応する耐火壁8側連結舌片8dが形成される。耐火壁8側連結舌片8dには、取付金具10側の連結舌片10eのネジ孔10fに連通するネジ挿通孔8eが穿孔される。
【0024】
したがってこの実施の形態において、錠制御装置4の扉1への固定に際し、まず、ボックス部10aを取付開口2に挿入して室外側の錠制御装置4を保持する。錠制御装置4の装置本体13と扉1との間には、室外からの浸水を防止するために、パッキン17が介装される。次いで、耐火壁8のボックス部10aを室内側から取付開口2に挿入し、ナット10cにねじ込まれる皿ネジ16を使用して室外側の錠制御装置4に連結する。室外側の錠制御装置4と耐火壁8との固定を扉1内に配置される皿ネジ16により行うことにより、悪戯等による錠制御装置4の取り外しが確実に防止できる。
【0025】
耐火壁8を室外側の錠制御装置4の取付金具10に固定した状態において、耐火壁8と取付金具10のフランジ9は扉1を挟んだ状態となり、扉1からの脱落が防止される。
【0026】
以上のようにして耐火壁8を固定した後、室内側の錠制御装置4を耐火壁8に固定する。耐火壁8への固定に際し、まず、図4、図5(a)に示すように、取付金具10の係止舌片挿通開口10dを耐火壁8の係止舌片8cに外嵌し、次いで、係止舌片8cとの接触部を中心として図5(a)において反時計回りに回転させる。取付金具10の回転により、図5(b)に示すように、取付金具10側の連結舌片10eは耐火壁8側連結舌片8d上に積層され、この状態でビス18をねじ込むことにより双方が連結される。
【0027】
図2に示すように、耐火壁8を介して双方の錠制御装置4を扉1に固定した状態において、室内外の錠制御装置4から引き出される電源、信号線等の外部接続配線6は、各々対応する配線引き出し口10bから下方に引き出された後、コントローラ19等に接続される。また、室内側の錠制御装置4は耐火壁8により囲まれた状態となり、かつ、室内外の錠制御装置4とを耐火壁8の底壁が隔てるために、室内外の取付開口2は完全に分断される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】錠制御装置を示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)はスイッチプレートを取り除いて一部を破断させた図である。
【図2】本発明を示す断面図である。
【図3】耐火壁への錠制御装置の取付を示す図である。
【図4】耐火壁への取付金具の固定を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の4B-4B方向矢視図である。
【図5】室内側の取付金具の耐火壁への固定を示す図で、(a)は取り付け途中状態を示す図、(b)は取り付け完了状態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 扉
2 取付開口
4 錠制御装置
5 隔離壁部
6 外部接続配線
7 配線引出し部
8 耐火壁
9 フランジ
10 取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の表裏に開設された取付開口に嵌合され、扉内で背面壁を対向させて保持される一対の錠制御装置と、
扉に脱離不能に装着され、錠制御装置の背面壁間に位置して前記取付開口間の炎の直進を規制する隔離壁部の辺縁に錠制御装置からの外部接続配線を引き出す配線引き出し部を備えた耐火壁と、
を有する錠制御装置の取付部の構造。
【請求項2】
前記耐火壁はボックス形状に形成されて扉内で一方の錠制御装置の周囲を囲み、
該錠制御装置を扉内空間から隔離する請求項1記載の錠制御装置の取付部の構造。
【請求項3】
前記耐火壁は、周縁に扉内への落ち込みを防止するフランジを備えていずれか一方の取付開口に嵌合されるとともに、
他方の取付開口に嵌合される錠制御装置には、周縁に扉内への落ち込みを防止するフランジを備えて取付金具が固定され、
前記耐火壁は、前記取付金具に連結されて脱離が規制される請求項1または2記載の錠制御装置の取付部の構造。
【請求項4】
前記配線引き出し部は、扉への取付姿勢において、下方に向けて開口される請求項1、2または3記載の錠制御装置の取付部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228293(P2009−228293A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74528(P2008−74528)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000170598)株式会社アルファ (433)
【Fターム(参考)】