説明

錠剤の製造方法と顆粒の製造方法及び顆粒の製造装置

【課題】本発明は、混合原料粉粒体の分散均一性に優れ、作業者の目視による精度よりも高精度で管理可能であり、収率も良好とすることができる、打錠用顆粒と錠剤の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、流動層転動造粒装置を用いて混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを添加して流動層転動装置内での混合原料粉粒体の水分含有量を事前の検証結果から導き出した値まで上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において水分含有量を維持しながら造粒して中間顆粒を形成し、その後、該中間顆粒を打錠することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合原料粉粒体を造粒して中間顆粒を製造し、それを打錠して錠剤を製造する場合、混合原料粉粒体の各成分を均一に分散させた中間顆粒の製造を可能とし、割れや欠けの無い硬度の高い、成分均一性の高い錠剤を製造する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉粒体の混合装置として攪拌造粒装置が知られている。この攪拌造粒装置とは、ケーシングの内部に攪拌翼が設けられており、このケーシング内に複数の粉粒体を液状バインダーとともに投入し、攪拌翼を一定時間回転させることで粉粒体に一定時間、対流、分散、剪断作用を加えることができ、これにより希望とする造粒品を製造することができる装置として広く一般に使用されている。
【0003】
図12にこの種の攪拌造粒装置を備えた顆粒、及び錠剤の製造工程の一例を示す。
図12に示す工程においては、秤量工程において秤量器100によって原料粉粒体101を秤量し、秤量した原料粉粒体101を台車等の搬送機102によって搬送し、攪拌造粒装置103に液状バインダーとともに投入して造粒工程を行う。攪拌造粒装置103のケーシング105内に必要量の原料粉粒体を必要な種類投入し、液状バインダーを投入したならば、攪拌翼106を回転させて所定時間造粒することにより、各種の原料を均一に混合した中間造粒品を得ることができる。
この造粒工程が終了したならば攪拌造粒装置103から中間造粒物を搬送機107に取り出し、搬送器107を移動させて中間造粒物を乾燥機108に装入し、熱風乾燥などにより乾燥工程を行う。
この乾燥工程が終了したならば、乾燥後の中間造粒品を搬送機107により更に移動して整粒機109に吸引投入し、整粒工程を行う。
整粒工程が終了したならば、整粒品を搬送機110により混合機111に移動させ、副原料や必要な添加物等と混合して貯留コンテナ112に貯留しておき、必要に応じて打錠装置113によって必要な量だけ打錠して製品としての錠剤を得ることができる。
ところが、図12に示した従来工程にあっては、攪拌造粒装置103に混合原料粉粒体を投入するとともに液状バインダーを噴霧して造粒する際、投入担当者による目視確認で造粒終了点を決めており、品質にバラツキを生じる原因となっていた。例えば、造粒品の大きさにバラツキを生じ易く、また、大きなダマが生成してしまうなどの問題がある。このダマとは、比較的粒径の大きな混合原料粉粒体のみが中心となって大きな固まりを形成したものを示す。
【0004】
なお、造粒装置として前記攪拌造粒装置103の他に、流動層造粒装置、転動造粒装置などが知られている。
これらの中で、流動層造粒装置では造粒品形状が不定形になり易く、カサ密度が軽いものしか製造できず、微粒が分離するなどの特徴があり、転動造粒装置は造粒品形状が真球状しか製造できず、造粒時間が長い、乾燥ができないなどの特徴があり、本攪拌造粒装置は造粒品形状が不定形になり易く、粒度分布がブロードでシャープになり難く、乾燥ができないなど、いずれの装置においても今回の中間品顆粒を製造する上で課題があった。
そこで本発明者らは、従来知られている造粒装置の中でも造粒品として不定形〜球状まで広く対応可能であり、カサ密度として軽〜重まで広く対応可能であり、混合性が良好で粒度分布もシャープな状態を得やすく、造粒時間が短く、乾燥機能も備えている造粒装置として、流動層転動造粒装置について着目した。
【0005】
この流動層転動造粒装置とは、下から送風して原料を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により原料を攪拌しながら造粒することができる装置として知られている。
この流動層転動造粒装置を用いた粉体処理に関する従来技術として、アスペクト比、カサ密度、安息角を規定した球形粒を用いて表面が均一の造粒物を得るための方法(特許文献1参照)、あるいは、流動層装置の器壁を断熱構造として結露を防止し、装置としての汎用性を高めた構造(特許文献2、図10参照)などが知られている。
【特許文献1】特開2004−67670号公報
【特許文献2】特開2002−172320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の攪拌造粒装置を用いた製造方法にあっては、缶体付着物やダマの発生により、造粒工程における収率が低下する、また、打錠工程などの後工程において打錠障害の原因となり易く、最終製品として得られた錠剤に割れや欠けを生じやすいなどの問題があった。例えば、造粒工程において生じた造粒品の缶体付着物や大きなダマの発生は、打錠工程において流動性の悪化を引き起こし、同工程における割れや欠けの原因にもつながる。
また、図12に示す製造ラインにおいては、秤量後に攪拌造粒装置103に搬送する際、造粒後に乾燥装置108に搬送する際、乾燥後に整粒装置109に搬送する際、整粒後に混合機111に搬送する際、いずれにおいても作業員がハンドリングを行う処理となるので、人手作業による移送途中の衝撃や取り扱いによって、あるいは、各装置間を移動中の造粒物や中間顆粒の環境暴露が原因となって異物混入に繋がるおそれが高いものであった。
なお、種々の性能が良好と思われる流動層転動造粒装置について着目し、本発明者らが前述の錠剤製造ラインの造粒用途にこの流動層転動造粒装置を応用し、前述の問題点を回避するために鋭意研究した結果、本願発明に到達した。
【0007】
本発明は、流動層転動造粒装置を用いて錠剤製造用の混合原料粉粒体を造粒し中間造粒物を製造する場合の望ましい条件について研究した結果、混合原料粉粒体表面の水分量を缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水準を基に制御することで良好な打錠用顆粒製剤ができることを知見した。
本発明は、種々の大きさの原料を混合してなる原料混合粉粒体であっても、種々の原料の分散均一性に優れ、作業者の目視による精度よりも高精度で管理可能であり、収率も良好とすることができる、錠剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)本発明の錠剤の製造方法は、混合原料粉粒体を造粒して中間顆粒を形成する工程と、該中間顆粒を乾燥する工程と、該中間顆粒を打錠する工程とを具備する錠剤の製造方法において、
下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分含有量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒して中間顆粒を形成し、その後、該中間顆粒を打錠して錠剤とすることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の錠剤の製造方法は、前記流動層転動造粒装置内の混合原料粉粒体の表面水分を近赤外線照射により検出しながら流動層転動造粒を行うとともに、混合原料粉粒体の表面水分含有量を一定に保持するように前記液体バインダーの供給量を調整しながら流動層転動造粒する。
(3)本発明の錠剤の製造方法は、前記流動層転動造粒装置内部における造粒中の混合原料粉粒体の表面水分値を前記缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分量を中心として±2%の範囲内に維持しながら流動層転動造粒を行うことを特徴とする。
(4)本発明の顆粒の製造方法は、秤量した原料の搬送タンクと、流動層転動造粒装置と、その後工程用に設けられる整粒機と、その後工程用に設けられるコンテナとを、順次パイプで接続し、原料の搬送タンクから流動層転動造粒装置と整粒機とコンテナに至るまでの製造工程において、混合原料粉粒体とその造粒物あるいは中間顆粒を、原料の搬送タンクと流動層転動造粒装置と整粒機とコンテナと各パイプから外部に出すことなくコンテナまで導いて製造するとともに、 下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して、前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分含有量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒することを特徴とする。
【0010】
(5)本発明の錠剤の製造装置は、混合原料粉粒体を造粒して中間顆粒を形成する工程と、該中間顆粒を乾燥する工程と、該中間顆粒を打錠する工程とを備え、
下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において、缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒して中間顆粒を形成し、その後、該中間顆粒を打錠して錠剤とすることを特徴とする錠剤の製造方法に利用される製造装置であって、
秤量した原料の搬送タンクと、前記流動層転動造粒装置と、その後工程用に設けられる整粒機と、その後工程用に設けられるコンテナとを備え、
前記搬送タンクと前記流動層転動造粒装置と前記整粒機と前記コンテナが前記混合原料粉粒体とその造粒物あるいは中間顆粒搬送用の輸送パイプにより接続されてなることを特徴とする。
(6)本発明の製造装置は、 前記流動層転動造粒装置にその内部に収容した混合原料粉粒体の表面水分を計測する近赤外線照射水分測定器が付設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の表面水分量を一定値に保持しながら流動層転動造粒するので、粒径や比重が異なり、含水量や流動性なども異なる複数種類の種々の原料を混合してなる混合原料粉粒体を造粒する場合であっても、種々の原料を均一に混合しながら造粒できるので、成分均一性の優れた均質な造粒物を得ることができる効果がある。また、均一混合ができるので流動層転動造粒装置の内部に混合原料粉粒体の成分の一部のみが残留するなどの問題が生じ難いので、原料を無駄なく全て造粒物に含ませることができる結果として、原料の無駄のない、収率の高い生産ができる特徴を有する。
流動層転動造粒装置内における混合原料粉粒体の表面の水分含有量を近赤外線照射により検出しながら表面の水分量を一定にするように適量の液状バインダーを添加しつつ流動層転動造粒を行うことにより、流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の内部側の水分濃度を測定しなくとも、表面の水分含有量の把握のみによって流動層転動造粒中の混合原料粉粒体全体の造粒状態を制御することができ、表面の水分含有量の把握のみによって種々の原料を均一に混合しながら造粒することができ、組成均一性の優れた均質な造粒物を得ることができる効果を確実に得ることができる。
【0012】
組成均一性の優れた造粒物である中間顆粒を得るとともに、この中間顆粒から打錠して錠剤を得ることにより、打錠時に効率良く固化できる結果として、強度の高い錠剤を得ることができる。また、混合原料粉粒体から得た中間顆粒中の崩壊剤が均一なため、錠剤に液体が侵入し易くなり崩壊性にも優れ、また錠剤とした場合の錠剤内部におけるバインダーの分散均一性も優れるので、錠剤強度が高い錠剤を提供できる。
造粒中の混合原料粉粒体の表面の水分含有量を缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる状態において±2%以内に制御することにより、混合原料粉粒体の内部均一性の極めて優れた造粒物を再現良く得ることができる。
【0013】
本発明の製造装置によれば、流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の水分含有量を缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量で一定に保持しながら造粒することができ、この造粒物から得られた中間顆粒を用い打錠して錠剤を得ることができるので、組成均一性の高い、強度の高い、割れや欠けのより少ない錠剤を製造することができる。
本発明の製造装置によれば、流動層転動造粒装置に備えた近赤外線照射水分測定器により、流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の水分含有量を逐一観測し把握できるので、組成均一性の高い、割れや欠けのより少ない、強度の高い錠剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は本発明に係る錠剤の製造ラインの第1実施形態の構造を示すもので、この第1実施形態の製造ラインは、秤量装置1と搬送タンク2と流動層転動造粒装置3と整粒機5と貯留用のコンテナ6と混合機7と保管用のコンテナ8と打錠装置9とを主体として構成されている。
前記秤量装置1は製造するべき錠剤の複数種類の原料を秤量する装置である。この秤量装置1により計量した各種の原料を搬送タンク2に収容し、この搬送タンク2の底部に形成されている取出口2aと流動層転動造粒装置3の投入部3aとを第1の搬送パイプ11により接続し、秤量した原料粉粒体を流動層転動造粒装置3に投入することができるようになっている。
この例では複数種類の原料粉粒体を混合するタイプの錠剤製造において、搬送タンク2に秤量した単一種の原料粉粒体を収容しておき、その原料粉粒体を流動層転動造粒装置3に投入するとともに、搬送タンク2を他にも複数用意しておき、原料種類別に搬送タンク2を使い分け、順次複数の搬送タンク2から流動層転動造粒装置3へ順々に必要量の原料を投入して流動層転動造粒装置3の内部に原料粉粒体を供給することもできるし、複数種類の原料粉粒体を混合するタイプの錠剤製造において、別途秤量した必要な種類の原料粉粒体を搬送タンク2に予め必要な組成割合で収容しておき、搬送タンク2の内部において既に目的の組成割合になっている混合原料粉粒体を流動層転動造粒装置3に必要量投入することもできる。本実施形態においては、流動層転動造粒装置3の内部に必要な量の必要な組成比の混合原料粉粒体を供給すればよいので、その供給方法は特には問わない。
【0015】
本実施形態において用いる流動層転動造粒装置3は図2(A)に示す如く、縦型の円筒状の処理容器(缶体)15と、この処理容器15の底部に接続された通風装置16と、処理容器15の底部側に設けられた攪拌翼17と、処理容器15の上部側に収容されたフィルタ装置18とを主体として構成されている。
前記通風装置16は図示略の送風装置と加熱ヒータを介して送られてくる60〜100℃程度の熱風を処理容器15の底部側に吹き混み、処理容器15の上部に接続された排気ダクト20から排出できるように処理容器15の底部に接続されている。
通風装置16の上部は上述の原料粉粒体を支持するためのメッシュなどのフィルタ層21を介して処理容器15の筒型の底部15aに接続され、処理容器15の底部内側であって、フィルタ層21の上方には攪拌翼(アジテーター)17が水平に回転自在に、フィルタ層21の周囲には水平に回転自在にローターディスク22が設けられている。また、処理容器15の底部周壁の一部であって、攪拌翼17の設置位置の側方側には、角筒状の取出部23が設けられている。また、処理容器15の底部周壁の一部にはランプブレーカー(破砕機)25が設けられるとともに、処理容器15の中央上部側と底部側壁側に水分を含む液体バインダーの噴射ノズル(スプレーガン)26a、26bが個々に設けられている。
【0016】
前記処理容器15の上部側壁には先の搬送パイプ11を接続するための筒形の投入部3aが形成され、投入部3aには投入口27が設けられている。前記フィルタ装置18はバグフィルタ装置などの排気フィルタ装置であって、処理容器15の内部に供給された熱風に含まれる原料混合粉粒体の微粉末成分を除去して清浄化した後に熱風を外に排出するための装置となる。
図2(A)に示す流動層転動造粒装置3はその内部に投入された混合原料粉粒体に対し、噴射ノズル26a、26bから液状バインダを噴霧し、混合原料粉粒体の水分含有量を調整できるように構成されている。
また、流動層転動造粒装置3は図2(B)に示す如くローターディスク22の回転と攪拌翼17を回転させて内部に収容している混合原料粉粒体の遠心転動を行うことができる。また、流動層転動造粒装置3は図2(C)に示す如く底部側からフィルタ層21を介して熱風を吹き出すことができ、下から吹き出る熱風の浮遊流動攪拌作用により流動層造粒ができる。更に、流動層転動造粒装置3はローターディスク22の回転と攪拌翼17を回転させるとともに、底部側からフィルタ層21を介して熱風を吹き出すことで、熱風の攪拌作用とローターディスク22と攪拌翼17の攪拌作用を統括的に作用させて混合原料粉粒体を流動層転動造粒することができるようになっている。
【0017】
流動層転動造粒装置3の後工程側には、流動層転動造粒装置3の取出部23に接続された第2の搬送パイプ30を介して接続された整粒機5が設けられ、整粒機5の後工程側には、整粒機5の排出口に接続された第3の搬送パイプ31を介して接続された貯蔵用のコンテナ6が設けられ、このコンテナ6の後工程側には第4の接続パイプ32を介して接続された粉体移送器33が設けられ、この粉体移送器33の後工程側には混合装置7が設けられ、混合装置7の後工程側に打錠装置9が設けられている。
【0018】
この実施形態の流動層転動造粒装置3にあっては、流動層転動造粒を行うことで、粒径や種類の異なる各種の原料粉粒体を混合した混合原料粉粒体を均一に造粒することができる。
ここで造粒とは、異成分系混合粉粒体の密度、粒度、形状の差による分離を防止して均一性を確保して偏析を防止すること、後の圧縮成形時の応力伝達の向上、吸湿などによる粒子間相互作用の低減により流動性を改善すること、通気性改善などのために行うもので、原料粉粒体の凝集による造粒を目的として行う処理となる。この造粒時に攪拌、転動、流動などにおいて固相、液相、気相の各種材料が入り交じり、凝集した所望の造粒物にすることが重要であり、粗大粒子の破砕による粒子均一化、溶融液の均一分散を目指す。
【0019】
更に、流動層転動造粒装置3において処理容器15の底部15aの側面の部分(取出部23とランプブレーカ25の間の部分)にローターディスク22上の混合原料に向くように近赤外線照射水分測定器35が設けられ、この水分測定器35の計測制御部351が流動層転動造粒装置3の外部に設置され、この計測制御部351に混合原料粉粒体の表面水分含有量を表示できるようになっている。
本実施形態の流動層転動造粒装置3ではこの近赤外線照射水分測定器35を用いて流動層転動造粒中の混合原料粉粒体表面の水分量を測定することができる。
この実施形態では近赤外線照射水分測定器35を用いて流動層転動造粒中の混合原料粉粒体表面の水分量を計測し、この水分量が一定となるように、噴射ノズル26a、26bから噴霧する液状バインダーの量を調整する。
流動層転動造粒中の混合原料粉粒体にはフィルタ層21を介して下から60〜100℃程度の熱風が送られて混合原料粉粒体は流動層状態とされているので、混合原料粉粒体は自然と乾燥が進み、水分量を一定とするためには、噴射ノズル26a、26bから噴射する水分含有の液状バインダーの噴射量を調整する必要がある。
【0020】
前述の如く流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の水分測定には水分測定器35を用いて混合原料粉粒体表面の水分量を測定するが、本発明者らは後述する実施例に示す如く混合原料粉粒体表面の水分を測定し、その値を把握し、表面水分含有量を一定値に保持することでダマにならずに均一な組成の造粒物を製造できることを知見した。
流動層転動造粒中の混合原料粉粒体は液状バインダーの吹き付けとともに徐々に水分量が増加するが、その水分量を水分測定器35で把握し、ある一定の水分量となった時点で吹き付け量を減少させ、その後は、流動層転動造粒による乾燥作用と供給する液状バインダーにより増加される水分とが均衡し、流動層転動造粒中の混合原料粉粒体の表面水分量が一定となるように吹き付け量を調整し、造粒を続行する。
【0021】
所定の液状バインダーを吹き終えるまで、造粒したならば、流動層転動造粒装置3の内部でそのまま乾燥工程を行なう。
流動層転動造粒中の原料粉粒体表面の水分量を一定の値に保持する場合の保持水分量の算定には、缶体への付着性、及び乾燥時の顆粒粉化が起きない範囲を見つけ、且つ顆粒強度及び打錠時の顆粒結合力において現状と同等以上の品質を確保できる状態の把握により判断する。処理容器15の側壁には観測窓15bが形成されているので、この窓部15bを介して内部の混合原料粉粒体の流動性を観察するか、サンプリング口36から順次造粒品をサンプリングし、その造粒品の物性値(実際水分値、及び粒子径等)を把握しながら流動層転動造粒することができる。
より具体的には、当該組成の原料混合物に対して、先に説明した近赤外線照射水分測定器35を利用して、「どの位の値で、(1)造粒品の流動性が悪化するか、(2)缶体内部への付着が始まるかどうかを確認する。(上記(1)、(2)は「造粒品の濡れすぎ」によるもので、ダマにつながり、さらに整粒時には一粒約1mm以下にするため、粉化に繋がる)。同様に、下限については(1)乾燥時の造粒品の粉化の発生状況により設定する。粉化するということは、折角混合原料を均一に一粒一粒顆粒状にしたにも係わらず、一部元の原料レベルに戻ってしまう事を指し、これは後工程の打錠時の顆粒流動性の悪化、分級などにより1錠剤中の含量が不均一になることに繋がる。また、液状バインダーの均一性にも影響してくるため、打錠したときの錠剤強度の低下をまねき、それがワレカケ発生にも繋がる。
従って前述の(1)と(2)を踏まえ、造粒時の水分値範囲を設定する。(この水分値は造粒品の実際水分値ではなく、近赤外線照射水分測定器の表示値のことであり、この2者の関係として、事前に直線性が認められることを確認しておく必要がある。従って、(1)と(2)で決めた管理幅間で工程を確実に維持することができ、且つ誰もが再現良く、同品質の顆粒を得ることが重要であって、これが打錠品質安定化につながる。
【0022】
流動層転動造粒中の原料粉粒体の水分値を確認すると、液状バインダーの吹き付け量の増大に応じて水分値は徐々に増加してゆき、ある時点の吹き付け量を超えるとダマを生じ易くなる。
ここで混合原料粉粒体表面の水分含有量が上述より高い状態のまま造粒すると、処理容器15内部での流動性が悪化し、濡れの方が乾燥に勝ってしまい、処理容器15の内面壁に付着して離れない混合原料粉粒体が増加して無駄が多くなる。また、逆に水分含有量を低い状態にし過ぎると、造粒が不十分になり易く、後工程の乾燥時に粉化し易く、フィルタ装置18においてフィルタの目詰まりを生じ易くなり、風量低下の原因となり、乾燥時間が異常に長く必要になって生産効率が低下するなどの問題を生じ易くなる。
【0023】
流動層転動造粒装置3の内部において流動層転動造粒中に前述の混合原料粉粒体の水分値を安定させる際の液状バインダーの噴射量は、使用する混合原料粉粒体の濡れ性によって値が変化する。よって実際の製造に際し、予めサンプルとしての混合原料粉粒体を用意して製造し、缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる条件出しを行い、その条件に合わせて実際の製造時の噴射量を調整すればよい。これは、目的とする錠剤に合わせて使用する混合原料粉粒体の組成比も変わるので、組成比に応じて一定にするべき表面水分量が異なり、当然、流動層転動造粒中の諸条件、熱風温度と送風量、フィルタ装置18のフィルタの篩指標、攪拌翼17とローターディスク22の回転数にも影響を受けるので、混合原料粉粒体のサンプルを用いて条件出しを行った後に実操業時に各組成比に合致する条件で生産すれば良い。
【0024】
混合原料粉粒体の表面水分量を一定に維持しながら所定の時間流動層転動造粒を行ったならば、造粒物を第2の搬送パイプ30を介してインライン型の整粒機5に搬送し、整粒し、次いで第3の搬送パイプ31を介して貯留コンテナ6に搬送し、これを混合機7にて混合して保管し、打錠装置9へ供給することで必要量の錠剤を製造することができる。
【0025】
以上説明した製造ラインにおいて搬送タンク2と流動層転動造粒装置3と整粒機5と貯蔵コンテナ6までの搬送経路において、第1〜3の搬送パイプ11、30、31を設けて混合原料粉粒体あるいは造粒物が人手に触れないようにしているために、人手によるハンドリング中に造粒物に異物が混入するおそれは無くなる。
【0026】
以上説明した製造ラインにおいて流動層転動造粒装置3において製造した造粒物としての中間顆粒は、水分測定器35により一定化した状態の好ましい水分含有量にて造粒され、その後に乾燥がなされているので、混合原料粉粒体中に粒径の異なる各種原料、水分吸収量や水分吸着量の異なる各種原料が入り交じっていても、これら複数種類の原料が均一に分散配合された状態の造粒物からなる中間顆粒とされている。
【0027】
前述の製造ラインにおいて得られた中間顆粒の状態を従来の製造方法により得られた中間顆粒と対比させて図7に示す。
図7に示す如く攪拌造粒装置103により製造された造粒物120は、部分的に均一化された小粒造粒体120a、120b、120cが複数分散されてバインダー120dに囲まれた複層状態の造粒物である反面、前述の流動層転動造粒装置3によって前述の如く水分管理を行って造粒して得た中間顆粒35は全体として組成比の均一な原料が分散混合された造粒物となっている。しかもこの中間顆粒35Aは混合原料粉粒体の各成分が均一に分散されているのみではなく、バインダー成分も均一に分散されている。
【0028】
次に、前述の造粒物120あるいは中間顆粒35Aから整粒機5において整粒した後の粒度分布を考慮すると、図7に例示する如く分布の不均一な造粒物120から整粒機により得られた整粒物121は不均一性が高いために一部粉化し、整粒後の粒度分布の裾野が拡がる傾向があるが、前述の造粒物35から整粒された整粒物35aは粒度分布の裾野が狭く均一な粒度とすることができる。
なお、図8に示す如く従来の攪拌造粒装置103により製造された粒度の不揃いな整粒物121にあっては、バインダーが均一分散しにくく、結合力が弱い反面、粒子は練られているため、重質で硬い傾向となる。この整粒物を打錠して錠剤とした場合、実際の使用状態を想定すると、飲用時に唾液や胃液などの水分との接触の場合であっても、内部側に水分が侵入し難く、錠剤としての崩壊性は低い傾向となると考えられる。これに対して、前述の中間顆粒35から打錠して得た錠剤は、バインダーが均一分散してその間に混合原料粉粒体が均一分散している組織となっているので、均一分散バインダーの間に均一に存在する原料の存在により錠剤全体としてのポーラス性が確保されているので、飲用時の水分との接触により水分が浸透し易く、錠剤としての崩壊性に優れた特徴を示すと考えられる。
従って前述した製造方法により、硬度が高い上に崩壊性にも優れ、成分の均一な錠剤を製造することができる。
【実施例】
【0029】
「実施例1」
炭酸マグネシウムとジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートと賦形剤と結合剤を重量比で26:13:58:3の割合で混合し、得られた混合原料粉粒体18kgを図2に示す流動層転動造粒装置に投入し、回転翼の回転数200rpm、ローター回転数(ローターディスク回転数)100rpm、熱風の給気温度80〜90℃、風量3〜6m/分に設定し、バインダー溶液を噴射ノズルから吹き出しながら流動層転動造粒を行った。バインダー溶液の初期吹き付け流量を330ml/分とした。
事前に検証した適正な水分値に到達した時点でバインダー溶液の吹き付け量を約100ml/分に低下させ、全量吹き付けた後、引き続き乾燥を行った。
得られた造粒物を整粒機により整粒し、整粒物を打錠装置により打錠した。
上記の適正水分値は、5〜10%まで値を変更して試験し、噴霧時間や乾燥時間などの全工程リードタイムや、得られた顆粒、錠剤の物性値を考慮し決定した。
【0030】
流動層転動造粒装置に設けた近赤外線照射水分測定器による水分値の有効性を確認するために、流動層転動造粒装置からサンプリングした造粒物の水分実測値との比較結果を図3に示す。
図3に示す結果から、水分測定器の計測値と実際の造粒物の水分実測値との相関関係に直線性があり、相関性があることを確認できたので、流動層転動造粒装置内部での造粒物の水分含有量を表面の水分量測定により確実に計測し、把握できることが判明した。
【0031】
次に、流動層転動造粒装置においてバインダー溶液を吹き付ける段階(吹付工程)における水分出力値(図4の(1)で示す直線領域)と、造粒段階(造粒工程)における水分出力値(図4の(2)で示す安定領域)と、乾燥段階(乾燥工程)における水分出力値(図4における(3)で示す直線領域)とを測定した結果を図4に示す。
前述の如くバインダー溶液の初期吹き付け流量を330ml/分とすることで混合原料粉粒体表面の水分含有量が徐々に増加し、その後のバインダー溶液の吹き付け量を約100ml/分とすることで水分含有量をほぼ一定に維持することができ、その後の乾燥工程により水分含有量を徐々に低下できることを確認することができた。
【0032】
図5は水分測定器が出力した値とそれぞれの水分値を保持しながら造粒して得られた顆粒の安息角の測定結果と嵩密度の測定結果を示す。顆粒の安息角において50度を超えるようであるとコンテナ6内での流動性が低下する傾向となる。このことから、水分値0.6保持は粉化による流動性悪化を招く傾向があり、また水分値1.4保持では顆粒物性値としては基準を満たしてはいるが、造粒品の濡れにより缶体内部への付着やダマが認められる傾向が明らかとなった。
また、従来の製造方法で得られる造粒品との比較のために、図5に示す水分出力値0.6、0.8、1.0、1.2、1.4のいずれかの水分含有量で水分を固定しながら造粒する方法を実施した。
【0033】
図6は先の本発明に係る中間顆粒から得られた錠剤硬度と従来品の錠剤硬度の測定結果、及び、錠剤を水に投入した際の崩壊時間を測定した結果を併せて示す。
図6において本発明品は、造粒時の水分計測器の水分含有量表示において0.6で固定して維持し、造粒した造粒物から整粒し打錠して得た錠剤と、造粒時の水分計測器の水分含有量表示において0.8で固定して維持し、造粒した造粒物から整粒し打錠して得た錠剤と、造粒時の水分計測器の水分含有量表示において1.0で固定して維持し、造粒した造粒物から整粒し打錠して得た錠剤と、造粒時の水分計測器の水分含有量表示において1.2で固定して維持し、造粒した造粒物から整粒し打錠して得た錠剤と、造粒時の水分計測器の水分含有量表示において1.4で固定して維持し、造粒した造粒物から整粒し打錠して得た錠剤のそれぞれの測定結果を示す。
【0034】
図6に示す結果から、水分出力値0.6、0.8、1.0、1.2、1.4のいずれかの水分含有量で固定して製造した試料においても本発明品の方が従来品よりも遙かに錠剤硬度が高い上に、錠剤の崩壊時間は造粒時の水分出力値0.6〜1.4のいずれの試料においても従来品よりも短いことが判明した。
これは本発明方法により得られる錠剤であり、安息角を50度以下としながら造粒する製造方法ならば、錠剤硬度が高いので割れや欠けに強いとともに、錠剤が薬剤の場合、その服用時の崩壊時間が短く、胃の中で溶け易く、薬効性に優れているという優れた特徴を示すことを意味する。
しかし、流動層転動造粒装置の内部において混合原料粉粒体が円滑に流動しながら流動層転動造粒することを考慮し、且つ缶体内部への付着、及びダマの発生を抑えることを考慮すると、水分出力値0.8〜1.2の領域において流動層転動造粒を行うことが好ましいと考えられる。
【0035】
従来品と本発明品の錠剤の特性対比から、錠剤硬度が高い上に崩壊時間が短いという作用効果を本発明品が発現する理由として、本発明者らは以下のように考えている。
図7は攪拌造粒装置103により製造された顆粒状の造粒物120と本発明に係る流動層転動造粒装置を用いた製造方法による中間顆粒35を対比して説明する図である。
図7において造粒物120は、部分的に均一化された大きさの異なる小粒造粒体120a、120b、120cが複数分散されてバインダー120dに囲まれた複層状態の造粒物である反面、前述の流動層転動造粒装置によって前述の如く水分管理を行って造粒して得た中間顆粒35は全体として均一な原料とバインダーの分散混合された造粒物となっている。
【0036】
次に、前述の造粒物120あるいは中間顆粒35から整粒機において整粒した後の粒度分布を考慮すると、図7に例示する如く分布の不均一な造粒物120から整粒機により得られた整粒物121は粉化する可能性が高いために整粒後の粒度分布の裾野が拡がる傾向があるが、前述の中間顆粒35Aはバインダー自体が均一であるため、整粒された整粒物35aは粉化しづらく、粒度分布の裾野が狭く均一な粒度とすることができる。
なお、図8に示す如く従来の攪拌造粒装置103により製造された粒度の不揃いな整粒物121にあっては、バインダーが均一分散されておらず、結合力が弱い反面、粒子は練られているため、重質で硬い傾向となる。この整粒物を打錠して錠剤とした場合、実際の使用状態を想定すると、飲用時の水分との接触の場合であっても、内部側に水分が侵入し難く、錠剤としての崩壊性は低い傾向となる。即ち、組成内の崩壊剤が不均一になることにより水分が侵入し難い傾向となり、崩壊の進行が遅くなる傾向となる。
これに対して、前述の造粒物35から打錠して得た錠剤は、バインダーが均一分散してなり、その間に原料が均一に分散している組織となっているので、バインダーの間に均一に存在する崩壊剤の存在により錠剤服用時の水分との接触により内部に水分が浸透し易く、錠剤としての崩壊性に優れた特徴を示すものと思われる。
【0037】
図9は先に用いた整粒機の性能評価を行うために、スクリーンのメッシュ径をφ1.0mm、φ1.5mm、φ2.0mmと変更して製造した場合において、整粒前と整粒後における粒度分布、並びに平均粒子径を比較した図である。
スクリーンのメッシュ径をφ1.0mm、φ1.5mmとした場合に平均粒子径の相違は少なく、影響が少ないことが判明した。
図10は安息角に及ぼす影響を調べるために、スクリーンのメッシュ径をφ1.0mm、φ1.5mm、φ2.0mmと変更して製造した場合と整粒前の安息角の対比を示す。
図10に示す結果から、上述した組成比の混合原料粉粒体を流動層転動造粒し、その後に整粒する場合に、整粒機のスクリーン径をφ1.0mm、φ1.5mmのいずれかに設定することが好ましいことが判明した。
【0038】
図11は造粒時水分測定器の水分表示量を1.0、整粒機のスクリーン径をφ1.5mmとした場合の打錠装置における打錠圧変動に伴う錠剤硬度と崩壊時間の関係を示すものであるが、本発明に係る造粒物を用いて700kgで打錠した場合、同じ700kgで打錠した従来品の錠剤硬度よりも本発明品の錠剤硬度の方が高いことが明らかであり、本発明品は900kg、1100kgで打錠することで錠剤硬度を従来品よりも2倍以上に引き上げることが可能であり、しかも1100kgで打錠した錠剤であっても崩壊時間は従来品と同程度であることが判明した。
よって本発明品によれば、従来品よりも崩壊時間を短く、錠剤硬度を2倍以上に引き上げることが可能となる。
【0039】
「実施例2」
次に前記の組成比の混合原料粉粒体に代えて、アセトアミノフェンと結晶セルロースをはじめとする賦形剤と崩壊剤と結合剤を重量比で27:62:10:1の割合で混合し、得られた混合原料粉粒体を先の実施例と同等の方法で錠剤とした。流動層転動造粒装置における水分管理値として、実際水分含有量を39.0〜41.0%の範囲で先の実施例と同様、缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分量(40.0%)に制御しながら流動層転動造粒するという指標に基づき錠剤を製造することにより、硬度、崩壊時間とも優れた錠剤を得ることができた。
【0040】
「実施例3」
次に前記の組成比の混合原料粉粒体に代えて、アセトアミノフェンとジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートと賦形剤を重量比で60:30:10の割合で混合し、得られた混合原料粉粒体を先の実施例と同等の方法で錠剤とした。流動層転動造粒装置における水分管理値として、実際水分含有量を8.0〜10.0%の範囲で先の実施例と同様、缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分量(9%)に制御しながら流動層転動造粒することにより、硬度、崩壊時間とも優れた錠剤を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明に係る錠剤の製造ラインの一例を示す構成図。
【図2】図2は流動層転動造粒装置の一例を示すもので、図2(A)は全体構成図、図2(B)は処理容器の底部における転動時の動作を示す構成図、図2(C)は処理容器の底部における流動層転動造粒時の動作を示す構成図。
【図3】図3は実施例において造粒物表面に対する水分測定器の表示結果と実際の造粒物の水分含有量測定値との対比を示すグラフ。
【図4】図4は実施例における造粒物表面に対する水分計測器の表示結果を時間の変化とともに示すグラフ。
【図5】図5は実施例における造粒時の水分測定器が示す水分出力値と安息角、嵩密度の相関関係を示すグラフ。
【図6】図6は実施例における造粒時の水分測定器が示す水分出力値と従来品における錠剤硬度と崩壊時間の関係を示すグラフ。
【図7】図7は従来品の造粒物を整粒した後の顆粒の構成と粒度分布、並びに、本発明品の造粒物を整粒した後の顆粒の構成と粒度分布を示す説明図。
【図8】図8は従来品の造粒物を整粒した後の顆粒の構成、並びに、本発明品の造粒物を整粒した後の顆粒の構成を示す説明図。
【図9】図9は本発明方法に用いる整粒機の性能評価のための試験結果を示すグラフ。
【図10】図10は本発明方法に用いるスクリーン径の範囲と安息角、並びに、スクリーンメッシュ径との関係を示す説明図。
【図11】図11は従来品の造粒物を整粒した後の顆粒の錠剤強度と崩壊時間、並びに、本発明品の造粒物を整粒した後の錠剤の錠剤強度と崩壊時間を示す説明図。
【図12】図12は従来の錠剤製造ラインの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
1…軽量装置、2…搬送タンク、3…流動層転動造粒装置、5…整粒機、6…コンテナ、7…混合機、9…打錠装置、11…搬送パイプ、15…処理容器(缶体)、17…攪拌翼、18…フィルタ装置、21…スクリーン、22…ローターディスク、25…ランプブレーカー、26a、26b…噴射ノズル、27…投入口、30、31…搬送パイプ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合原料粉粒体を造粒して中間顆粒を形成する工程と、該中間顆粒を乾燥する工程と、該中間顆粒を打錠する工程とを具備する錠剤の製造方法において、
下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して、前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分含有量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒して中間顆粒を形成し、その後、該中間顆粒を打錠して錠剤とすることを特徴とする錠剤の製造方法。
【請求項2】
前記流動層転動造粒装置内の混合原料粉粒体の表面水分を近赤外線照射により検出しながら流動層転動造粒を行うとともに、混合原料粉粒体の表面水分含有量を一定に保持するように前記液体バインダーの供給量を調整しながら流動層転動造粒することを特徴とする請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記流動層転動造粒装置内部における造粒中の混合原料粉粒体の表面水分値を缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分量を中心として±2%の範囲内に維持しながら流動層転動造粒を行うことを特徴とする請求項2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
秤量した原料の搬送タンクと、流動層転動造粒装置と、その後工程用に設けられる整粒機と、その後工程用に設けられるコンテナとを、順次パイプで接続し、原料の搬送タンクから流動層転動造粒装置と整粒機とコンテナに至るまでの製造工程において、混合原料粉粒体とその造粒物あるいは中間顆粒を、原料の搬送タンクと流動層転動造粒装置と整粒機とコンテナと各パイプから外部に出すことなくコンテナまで導いて製造するとともに、
下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、
該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して、前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分含有量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒することを特徴とする顆粒の製造方法。
【請求項5】
混合原料粉粒体を造粒して中間顆粒を形成する工程と、該中間顆粒を乾燥する工程と、該中間顆粒を打錠する工程とを備え、
下から送風して混合原料粉粒体を流動化するとともに液体バインダーを供給しながら攪拌翼により流動層転動造粒する流動層転動造粒装置を用いて前記混合工程と造粒工程と乾燥工程を行い、該流動層転動造粒装置内での造粒工程に先立ち、水分を含有した液体バインダーを前記混合原料粉粒体に添加して前記流動層転動装置内での混合原料粉粒体の缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量まで水分量を上昇させた後、流動層転動造粒装置内部において、缶体への付着、及び乾燥時の顆粒粉化が起きず、且つ打錠時の顆粒結合力を確保できる水分含有量を維持しながら造粒して中間顆粒を形成し、その後、該中間顆粒を打錠して錠剤とすることを特徴とする錠剤の製造方法に利用される顆粒の製造装置であって、
秤量した原料の搬送タンクと、前記流動層転動造粒装置と、その後工程用に設けられる整粒機と、その後工程用に設けられるコンテナとを備え、
前記搬送タンクと前記流動層転動造粒装置と前記整粒機と前記コンテナが前記混合原料粉粒体とその造粒物あるいは中間顆粒搬送用の輸送パイプにより接続されてなることを特徴とする顆粒の製造装置。
【請求項6】
前記流動層転動造粒装置にその内部に収容した混合原料粉粒体の表面水分を計測する近赤外線照射水分測定器が付設されてなることを特徴とする顆粒の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−249359(P2009−249359A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101601(P2008−101601)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】