説明

錠剤状の不活化コレラ菌ワクチン

本発明は、ワクチン、特に経口コレラワクチンの分野に関する。本発明の技術的目的は、コレラ菌全細胞不活化ワクチンの錠剤剤形の製造である。本発明は、ワクチン製品の処方を記述するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予防接種技術の分野において、具体的には、コレラ感染に対する経口投与ワクチンとしての用途を有する。
【0002】
本発明は、新たなワクチン処方とその療法的適用を開示する。より具体的には、提示される発明は、錠剤状で経口投与することが可能なコレラ菌(Vibrio cholera)に対して反応性の不活化ワクチン処方からなる。
【背景技術】
【0003】
コレラは、その最も注目すべき症状が、液状の糞便の突然且つ大量の排出を特徴とする急性の下痢であるところの感染症である。その下痢は、かなり重度になることもあり、もし患者が適切な治療を受けないと、症状の開始後の5時間以内に死を招くことさえある。コレラは、汚染された食物又は液体から、経口的に獲得される。今日までに7回の流行が報告されており、全てが高い指標の罹患率及び死亡率という結果になった。この感染症は、衛生上劣悪な状態をもたらす自然災害、戦争や他の破壊的な出来事に見舞われた未開発地区又は地域に居住する人々のあいだで最も起きやすい。このような影響を受けた訪問先を持つ旅行者も該感染症にかかりやすい(CDC/NCID.Organizacion Panamericana de la Salud.Metodos de laboratorio para el diagnostico de Vibrio cholerae.En:Programa especial de publicaciones.Ed.Washington,D.C.,Estados Unidos 1994年)。
【0004】
抗生物質と水和塩による処置が効果的であるが、該疾患の急速な影響に対応するためには徹底的で且つ一貫した治療が必要とされる。一方では、該感染症は、人間の防御の表れとして、血清中の殺ビブリオ菌性抗体の存在に関連がある特定の免疫性防御を誘導することが示されている(Glass,R.I.、Svennerholm,A.M.、Stoll,B.J.、Khan,M.R.、Hossain,K.M.、Huq,M.I.、Holmgren,J.、1983年、母乳摂取児における母乳中の抗体によるコレラに対する防御(Protection against cholera in breast−fed children by antibodies in breast milk)、N.Engl.J.Med.308:1389〜1392頁、及びJertborn,M.、Svennerholm,A.M.、Holmgren,J.、1993年、スウェーデン人ボランティアにおける経口Bサブユニットワクチンのための種々の免疫化スケジュールの評価(Evaluation of different immunization schedules for oral B subunit vaccine in Swedish volunteers)、Vaccine.10:130−2)。これは、不活化された全細胞又は弱毒化された生細胞に由来する種々のクラスのコレラワクチンの開発につながった。フェノールで不活化された全細胞に由来する非経口的に投与されるワクチンは、その防御が短寿命(3から6カ月)であり、低レベル(30から60%)であること、並びに、その反応の発生率(reactogenesis)が高レベルであって、紅斑、局所痛、硬結、発熱及び頭痛(cephalia)につながることが理由で、市場から引き上げられた(OMS.、1991年、Reunion sobre la vacuna contra el colera.Informe final.ワシントンD.C.)。
【0005】
代替品が、胆汁で不活化された全細胞において見出される(the Bilivaccines)。この経口投与されるワクチンは、中程度のレベルの防御を提供するが、未だ産業的に開発されていない(Svennerholm,A.M.とHolmgren,J.、1986年、経口組合せBサブユニット−全細胞コレラワクチン(Oral combined B subunit−whole cell cholera vaccine)、J.Holmgren A.Lindberg及びR.Mollby(編)。下痢に対するワクチンと薬剤の開発(Development of vaccines and drugs against diarrhea)、11th Novel Conference、ストックホルム、1985年、Student litteratur、スウェーデン国ルンド、33〜43頁)。
【0006】
熱とホルムアルデヒドで不活化された全細胞は、コレラ毒素のBサブユニット(B−WC)と組み合わせると、投与されて3年後に中程度のレベルの防御(60%のレベル)を提供することが示されている(Holmgren,J.、Svennerholm,A.M.、Lonroth,I.、Fall−Persson,M.、Markham,B.及びLundback,H.、1977年、サブユニットトキソイドに基づく改良されたコレラワクチンの開発(Development of improved cholera vaccine based on subunit toxoid)、Nature 269:602〜604頁)が、このワクチンの生産は、コレラ毒素のBサブユニットを入手して精製する必要性のために、極めて高価で複雑である(Tayot,J.L.、Holmgren,J.、Svennerholm,L.、Lindblad,M.、Tardy,M.、1981年、リゾGMIガグリオシドで誘導体化されたシリカビーズ上でのコレラ毒素の大規模な受容体特異的精製(Receptor−specific large scale purification of cholera toxin on silica beads derivatized with lyso−GMI gaglioside)、Eur.J.Biochem.、113:249〜258頁)。
【0007】
組換え法(rB−WC)で入手したコレラ毒素のBサブユニットを用いた上記代替品の変異体は、信頼の置けるものであることが判明しているが、投与後3年でたかだか60%のレベルの防御を提供するだけであるうえに、面倒な調製プロセスを伴う。該ワクチンは、2つの多層エンベロープ内に調製され、一方は粉状の塩の混合物を含有し、他方はコレラ菌の凍結乾燥株を含有する。投与時に、第1のエンベロープを水に再懸濁せねばならず、第2のエンベロープは、水と塩の溶液中に再懸濁せねばならない。そして、該塩を含有する溶液を経口で投与せねばならず、その後に続いて、上記株を含有する懸濁液を15分後に同じ方法で投与するのである(Sanchez,J.L.、Holmgren,J.、1989年、ワクチン開発の基礎としてのコレラ菌におけるコレラ毒素のBサブユニットの過剰発現のための組換え系(Recombinant system for overexpression of cholera toxin B Subunit in Vibrio cholerae as basis for vaccine development)、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、86:481〜485頁)。
【0008】
不活化された全細胞に由来するもう一つの最新技術のワクチンは、上記ワクチンに似ており、コレラ菌カイロ50株(古典型、オガワ)を569B株(エルトール型、イナバ)に置き換える。該ワクチンは、投与された後8〜10カ月まで容認可能レベルの防御(66%のレベル)を提供する。それは、コレラ菌の種々の血清型及び生物型の株の混合物であり、上記懸濁された株を含有する瓶と塩の混合物を含有するエンベロープとに調製されている(Trach,D.D.、Clemens,J.D.、Ke,N.T.、Thuy,H.T.、Son,N.D.、Canh,D.G.、Hang,P.V.D、Rao,M.R.、1997年、ベトナムにおける現地生産の死菌経口コレラワクチンのフィールド試行(Field trial of a locally produced,killed,oral cholera vaccine in Vietnam)、Lancet、349:231〜235頁)。上記したワクチンでは、その適用には、塩の混合物を水に溶解して経口投与すること、及び、上記細胞株を含有する瓶の内容物を15分後に投与することが必要なので、時間並びに適任者を要する緩慢で注意深い手順が助長され、該プロセスが一層高価なものになる。
【0009】
CVD103 HgRワクチンは、CVD103株に基づいており、その流行株を分化させるために該株内に付加的に挿入した水銀抵抗性遺伝子によって補われたものだが、安全な投与法を伴い、ボランティアに対して行った試行において良好なレベルの防御を結果として得た。ただし、該ワクチンは、実質的な免疫原性応答を得るためには高用量で投与されねばならない(OMS、1991年、Reunion sobre la vacuna contra el colera.Informe final.ワシントンD.C.、並びに、Holmgren,J.及びSvennerholm,A.M.、1999年、下痢疾患に対するワクチン(Vaccines against Diarrheal Diseases)、Perlmann,P.及びWigzell,H.[編]、Vaccines、Springer−Verlag Berlin Heidelberg New York.290〜328頁にて)。この株の生産は、全面的な閉鎖系を要求し(Cryz,S.J.及びGluck,R.、1997年、弱毒化細菌及びウイルス生ワクチンの大規模生産(Large−Scale production of live attenuated bacterial and viral vaccines)、新世代ワクチン(New Generation Vaccine)、第2版、編:Levine,M.M.、Woodrow,G.C.、Kaper,J.B.及びCobon,G.S.、国会図書館。出版データにおける目録、ニューヨーク、1153〜1163頁にて)、そして、先に記したワクチンと同じ態様で調製され、投与時には同じ難点を示した。
【0010】
638株に基づき、C7258流行株に由来するする弱毒化生ワクチンは、CTXφ病原性ファージを排除するように且つプロテアーゼ血球凝集素を分類するhap遺伝子におけるワクチンマーカーcelAを含むように処置されたものであるが、適用時に信頼性できるものであることが判明し、結果として、適切な免疫応答が得られた(Benitez,J.A.、Garcia L.、Silva A.、Garcia,H.、Fando,R.、Cedre,B.、Perez,A.、Campos,J.、Rodriguez,B.、Perez,J.L.、Balmaseda,T.、Perez,O.、Ramirez,M.、Ledon,T.、Diaz,M.、Bravo,L.及びSierra,G.、1999年、コレラワクチンの候補としての新たなCTXφ陰性血球凝集素/プロテアーゼ欠損エルトール株の安全性及び免疫原性の予備アセスメント(Preliminary assessment of the safety and immunogenicity of a new CTX(−negative,haemaglutinin/protease−defective El Tor strain as a cholera vaccine candidate)、Infect.Immun.67:539〜545頁)。しかし、上記したものに似た調製プロセスのために、それは、先に考慮したワクチンと関連がある難点の全てを提示する。
【0011】
免疫原性応答を提供するもののPeru−3、Bah−3及びBang−3のような株を利用した、コレラ菌株の弱毒化に基づくワクチンは、容認し難いほどに反応の発生率が高いことが判明した(Taylor,D.N、Killen,K.P.、Hack,D.C>、Kenner,J.R.、Coster,T.S.、Beatle,D.T.、Ezzell,J.、Hyman,T.、Tropa,A.、Sjogrem,M.H.、Friedlander,A.、Mekalanos,J.J.、Sadoff,J.C.、1994年、エルトール型コレラに対する経口弱毒化生ワクチンの開発(Development of a live,oral,attenuated vaccine against El Tor cholera)、J.Infect.Dis.170:1518〜1523頁)。
【0012】
Peru15株を使用し、Peru−3株に基づいたワクチンは、安全な適用方法を持ち、ボランティアに対して行った試行において良好なレベルの防御をもたらした(Kener,J.R.、Coster,T.S.、Taylor,D.N.、Troffa,A.F.、Barrera−Oro,M.、Hyman,T.、Adams,J.M.、Beattie,D.T.、Killeen,K.P.、Spriggs,D.R.、Mekalanos,J.J.、Sadoff,J.C.、1995年、Peru−15、コレラ菌O1のための改良され且つ弱毒化された経口ワクチン候補(Peru−15,an improved and attenuated oral vaccine candidate for Vibrio cholerae O1)、J.Infect.Dis.72:1126〜1129頁)。しかしながら、臨床調査はまだ全く実行されておらず、該ワクチンは、上記したものと同じ難点を提示する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、錠剤剤形の最終製剤のために使用されるコレラ菌の不活化全細胞、凝着剤、潤滑剤、被覆剤、充填剤及び崩壊剤を含む新たなワクチン処方からなり、その様々な成分を安定状態に維持するとともに、それらが互いに干渉することを防止するものである。
【0014】
最終製品が、該処方の活性複合体を構成する不活化細胞と似た抗原性及び免疫原性効果を示すことを見出したのは驚くべきことであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、天然又は弱毒株を利用した、血清群O139に、又は血清群O1に、及び古典、エルトール、オガワ若しくはイナバ生物又は血清型に属するコレラ菌の不活化細胞で構成されるワクチンを提供する。ここに提示されるワクチン処方は、コレラ菌の不活化細胞、好ましくは、1錠剤あたり10〜1011個の間の不活化細菌を含有する。それは、凝着剤:錠剤の総質量に対して1から5%の濃度で見出されねばならないポビドン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース;潤滑剤:錠剤の総質量に対して0.25〜1.5%の濃度で用いられるカルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素及びタルク;被覆剤:錠剤の総質量に対して1〜2%の濃度で用いられるセルロースアセトフタレート、ジエチルフタル酸セルロース、10%濃度のラッカー、及び二酸化チタン;充填剤:錠剤の総質量に対して65〜80%の濃度で見出されねばならない乳糖及びトウモロコシデンプン;並びに、崩壊剤:錠剤の総質量に対して5〜15%の間の濃度で用いられるクロスカラメロース(croscaramelose)ナトリウム、トウモロコシデンプン及びマイクロクリスタリンセルロース、を含有するように作ることができる。
【0016】
今日までのところ、予防接種の最新技術方法中に本錠剤処方の前例は全くない。また、本処方は、使用されている技術に特徴的な化学的及び物理的ストレスに耐え、それによってその活性複合体の主要な免疫学的特性に影響を与えることのない製剤において合成化合物を生物学的材料、特に細胞と組み合わせた初めての処方であることも指摘すべきである。
【0017】
本発明の目的を、下記の実施例を通じて説明する。
【実施例1】
【0018】
コレラ菌のLPS評価に用いたELISA試験中に起こり得る錠剤内の賦形剤の干渉に関する研究。
この実施例に関して、不活化細胞、上記様々な賦形剤のそれぞれを含むこれらの細胞の混合物、及び賦形剤の個別の溶液を調査した。不活化細胞をポジティブコントロール群として使用した。用いた賦形剤は、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカラメロースナトリウム、ポビドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン及び乳糖であった。
【0019】
ELISA手法は、下記の段階からなっていた。
1.ポリスチレンプレート(Maxisorp、Nunc、デンマーク)をPBSに溶解した細胞混合物−賦形剤100μL/穴で覆う。湿潤チャンバーにおいて4℃で一晩インキュベートする。
2.該免疫酵素法の段階のそれぞれの間にプレートを0.05%Tween20含有水で洗浄する。
3.濃度1%の脱脂乳PBS150μL/穴でプレートをブロックする。湿潤チャンバーにおいて37℃で1時間インキュベートする。
4.100μL/穴の抗LPSモノクローナル抗体を加える。
5.1%脱脂乳及び0.05%Tween20を含むPBSに希釈したタイプVI西洋わさびペルオキシダーゼ(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)と結合した、マウス由来の抗IgG抗体を100μL/穴の割合で加える。湿潤チャンバーにおいて室温で2時間インキュベートする。
6.H0.01%を含有するpH4.5の0.1Mのクエン酸緩衝液中の濃度0.4mg/mLのo−フェニレンジアミン溶液(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)100μL/穴を用いて反応を行う。
7.HSOの2.5Mの溶液50μL/穴とともに基質を与えた後の30分後に反応を止め、マイクロプレートリーダーで492nmの波長でプレートを読み取る。
【0020】
結果は、図1に示すように、使用した賦形剤と分析プロセスの成分との間には干渉は起こらないことを実証した。図1では、賦形剤と不活化細胞との混合物は、不活化細胞のみの値に似た値を示し、一方で、混合しない賦形剤はそれよりもかなり低い値を提供した。
【実施例2】
【0021】
賦形剤とワクチン活性複合体との間に起こり得る干渉の決定。
不活化コレラ菌細胞の懸濁液と用いられた種々の賦形剤とを含有する混合物の抗原性を、(実施例1に説明したような)ELISA手法を用いて、該混合物を等しい2つの部分に分け、一方を4℃で他方を28℃でインキュベートして、決定した。該調査は、インキュベーションの時刻0と30日後とで実行した。この実施例で用いた賦形剤は、乳糖、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカラメロース、ポビドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び二酸化チタンであった。結果は、不活化細胞のリポ多糖の抗原性は、上記種々の賦形剤の存在によって影響されないことを指し示した。ELISA値は、4℃で行った試行及び28℃で行ったものの両方において、インキュベーションの30日間を通じて維持された(図2)。
【実施例3】
【0022】
ワクチンの抗原性。
ワクチンの抗原性を、錠剤中のコレラ菌のリポ多糖(LPS)を検出することを狙ったELISA抑制試験で決定した。
【0023】
錠剤、コレラ菌のLPSオガワ、コレラ菌のLPS O139の溶液、エルトール且つオガワ株のコレラ菌生細胞の懸濁液、不活化細胞の懸濁液を、該試験の試料として用いた。
【0024】
ELISA試験は下記の段階からなる:
ポリスチレンプレート(Maxisorp、Nunc、デンマーク)をリン酸緩衝液(PBS)に溶解した25μg/mLの濃度のコレラ菌のLPSオガワ100μL/穴で覆う。湿潤チャンバーにおいて4℃で一晩インキュベートする。
該免疫酵素法の段階のそれぞれの間にプレートを0.05%Tween−20含有水で洗浄する。
濃度1%の脱脂乳PBS150μL/穴でプレートをブロックする。湿潤チャンバーにおいて37℃で1時間インキュベートする。
PBS 0.05%Tween20中に上記試料と抗LPSオガワモノクローナル抗体とを濃度比1:2で溶解して最終濃度25μg/mlとした溶液中で予め室温で1時間インキュベートした試料100μLを加える。湿潤チャンバーにおいて室温で2時間インキュベートする。
脱脂乳1%濃度を含むPBS 0.05%Tween20中に希釈したタイプVI西洋わさびペルオキシダーゼ(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)と結合した、種特異的抗IgG抗体を100μl/穴の割合で加える。湿潤チャンバーにおいて室温で2時間インキュベートする。
0.01%を含有するpH4.5の0.1Mクエン酸緩衝液中の最終濃度0.4mg/mLのo−フェニレンジアミン(Sigma Chemical Co.、ミズーリ州セントルイス)の溶液100μl/穴を用いて反応を行う。
30分後に該反応を止める。HSOの2.5Mの溶液50μL/穴とともに基質を加えた後、Titerkek Multiskan Plusマイクロプレートリーダー(Flow Laboratories、米国)で492nmの波長でプレートを読み取る。
【0025】
結果は、錠剤懸濁液を利用したときに高レベルの抑制を示し、その値は、生細胞、不活化細胞及びLPSオガワを用いたときに得られた値に類似していた。LPS O139が関与した場合においては、抑制は観察されなかった(図3)。これは、不活化細胞の抗原性活性が、最終の錠剤処方において影響されずに残ることを実証する。
【実施例4】
【0026】
ワクチンの免疫原性
ワクチンの免疫原性を、課題試料のウサギの十二指腸内接種を通じて調査した。血清(seric)中の抗体動態をELISA及び殺ビブリオ菌手法を用いて評価した。錠剤処方、及びエルトール且つオガワ株コレラ菌の不活化細胞を含有する懸濁液を、課題試料として使用した。
【0027】
開腹術を実行して、十二指腸を露出させ、十二指腸の管腔に、5mLの再懸濁錠剤を、ワクチン株の不活化培養物を、又は塩水を接種した。抗体の血清動態を、ELISA及び殺ビブリオ菌手法を用いて決定した。
【0028】
IgG抗リポ多糖抗体の動態を決定するためのELISA手法:
1.Nunc又はMaxisorp96穴ポリスチレンプレートを濃度25μg/mLの純粋なLPSで覆う。4℃で一晩又は37℃で2時間インキュベートする。
2.水中の濃度0.05%Tween20含有水で3回洗浄する。
3.濃度2%の脱脂乳PBS 150μL/穴で、37℃で1時間ブロックする。
4.3回洗浄する。
5.PBS Tween0.05%で課題血清の段階的溶液を作る。2時間室温でインキュベートする。
6.前のように3回洗浄する。
7.1%乳汁含有PBS−T中に希釈した結合抗IgG−HRP種を加え、室温で1時間インキュベートする。
8.6回洗浄する。
9.pH4.5のクエン酸緩衝液中の濃度1mg/mLのo−フェニレンジアミン及び濃度30%のHで発色させる。
10.492nmの波長で吸光度を読み取る。
【0029】
殺菌性抗体を試験するための殺ビブリオ菌手法:
平底無菌プレートを用いた。
1.50μLの課題血清を第1穴に加える。25μLの塩水を残りの穴に加える。
2.段階的溶液を作り、最後の25μLを捨てる。
3.25μLの補体−細菌混合物を加え(プレートあたり2.5ml)、37℃で1時間インキュベートする。
4.BHI培養液を加える(125μLのブロモクレゾールパープルと10mlのグルコースを培養液100mlに対して用いる。グルコースの10mlは、培養液から差し引かねばならない。)
5.プレートを手作業でモノジナイズし、37℃で3時間インキュベートする。
6.力価は、細菌の生育を抑制することができる血清の最高希釈として定義するが、これは、培養液の色の変化がないことで決定される。
【0030】
補体−細菌の混合物の調製:
1.2つのBHI寒天ウェッジ又はプレートに、保存されたコレラ菌(V.cholerae)を播き、2つの播種していないウェッジとともに、37℃の温度で18から24時間のあいだの任意の時間インキュベートさせる。
2.プレート内の単離コロニー、又はウェッジ内でクック(cook)されたそれらのいくつかを取り出し、前加熱したウェッジ内に入れる。これらを、37℃で4時間インキュベートさせる。
3.ウェッジ内に見られる生育物を、無菌塩水pH7で洗い、洗浄物をD.O=0.9〜0.95に調整する。
4.調整された不活化細胞を1:10の比で希釈する。
5.補体−細菌混合物を調製するが、ここで:
・補体(モルモット又はヒト血清、殺ビブリオ菌性抗体の無いもの)を冷たい無菌塩水に1:5の比で希釈する。
・等量の不活化細胞と希釈補体とを混ぜる。
【0031】
結果は、ELISA手法(図4A)及び殺ビブリオ菌性抗体(図4B)を用いて評価された、ウサギにおいて抗リポ多糖抗体を誘導する免疫原性能力において、錠剤処方と不活化細胞との間で何も相違点を提示しない。実施例1、2及び3は、本発明に記載される錠剤処方が、該処方に含められる前の不活化細胞自体と同じようにモデル動物において抗原的であり且つ免疫原的あることを実証し、このことは、最終錠剤処方における抗原の存在と、その殺ビブリオ菌性抗体の誘導能力との両方によって実証される。
【0032】
提案された解決法の利点
提案された解決法は、遺伝子操作された生ワクチンに関連する潜在的な危険性も、従前の不活化ワクチンで提示された製品の投与時に伴う難点も全く伴うことなく、簡便に投与することが可能な(抗リポ多糖抗体と殺ビブリオ菌性抗体の両方を誘導する能力について)高度に免疫原性の製品であるので、従前のワクチン処方よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コレラ菌のLPSを評価するためにELISA手法を用いた、錠剤賦形剤のありうる干渉についての調査。C01からC09まで:賦形剤の不活化細胞との混合物。C10からC18:賦形剤のみ。C19:不活化細胞のみ。該試料のそれぞれで用いた賦形剤:C01とC10:デンプン;C02とC11:カルボキシメチルデンプンナトリウム;C03とC12:クロスカラメロース;C04とC13:ポビドン;C05とC14:タルク;C06とC15:ステアリン酸マグネシウム;C07とC16:二酸化チタン;C08とC17:二酸化ケイ素;C09とC18:デンプン1500;C19:不活化細胞。
【図2】ワクチン活性複合体の抗原性に対する賦形剤のありうる影響を決定。グラフは、30日間インキュベートした試料についての平均ELISA試験結果値の、同じ試料について時刻0で評価したELISA試験結果値に対する百分率を表す。4℃でインキュベート(図2A)及び26から28℃の間の温度でインキュベート(図2B)。この実施例で評価した賦形剤は:1.・乳糖、2.・デンプン、3.・カルボキシメチルデンプンナトリウム、4.・クロスカラメロース、5.・ポビドン、6.・タルク、7.・ステアリン酸マグネシウム、8.・二酸化チタン、9.・不活化細胞であった。
【図3】最終錠剤処方におけるコレラ菌のリポ多糖(LPS)の抗原性を、ELISAモノクローナル抗体抗LPS抑制試験を通じて決定。
【図4】不活化細胞を又はワクチンの錠剤処方を接種したウサギの血清力価。ELISAを通じて検出されたコレラ菌O1オガワの抗リポ多糖力価を図4Aに示す。殺ビブリオ菌力価を図4Bに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.コレラ菌の不活化細胞
b.凝着剤
c.潤滑剤
d.被覆剤
e.充填剤
f.崩壊剤
から構成されるコレラ用のワクチン組成物。
【請求項2】
コレラ菌の弱毒株からなる不活化細胞を含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
血清群O139に属する不活化細胞を含む請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
血清群O1に属する不活化細胞を含む請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
エルトール型又は古典型の細胞を含む請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記不活化細胞がオガワ又はイナバ血清型に属する請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記不活化細胞がコレラ菌の野性株からなる請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記不活化細胞が血清群O139に属する請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記不活化細胞が血清群O1に属する請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
エルトール生物型又は古典生物型の細胞を含む請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
オガワ又はイナバ血清型細胞を含む請求項10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
1錠剤あたり5×10から1011個の間の細胞を含有する請求項1から11までに記載のワクチン組成物。
【請求項13】
凝着剤として、ポビドン、ゼラチン又はカルボキシメチルセルロースを含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
前記凝着剤が、錠剤の総質量の1から5%の間の濃度で見出される請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
潤滑剤として、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素又はタルクを含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記潤滑剤が、錠剤の総質量の0.25から1.5%の間の濃度で見出される請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
被覆剤として、アセトフタレートセルロース、ジエチルフタル酸セルロース、10%のラッカー又は二酸化チタンを含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記被覆剤が、錠剤の総質量の1から2%の間の濃度で見出される請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
充填剤として、乳糖又はトウモロコシデンプンを含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記充填剤が、錠剤の総質量の65から80%の間の濃度で見出される請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
崩壊剤としてクロスカラメロース(croscaramelose)ナトリウム、トウモロコシデンプン又はマイクロクリスタリンセルロースを含む請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記崩壊剤が、錠剤の総質量の1から6%の間の濃度で見出される請求項21に記載のワクチン組成物。

【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2006−520332(P2006−520332A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504217(P2006−504217)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/CU2004/000005
【国際公開番号】WO2004/082711
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505353445)インスティテュート フィンライ. セントロ デ インベスティガシオン − プロデュクシオン デ バクナス イ スエロス (2)
【Fターム(参考)】