鍵盤楽器の発音制御装置
【課題】バックチェックへのシャッタの接触を回避でき、それにより、発音タイミングを適切に設定できるとともに、タッチ感を良好に維持することができる鍵盤楽器の発音制御装置を提供する。
【解決手段】鍵4の回動に連動して回動するハンマー5に一体に設けられ、ハンマー5の回動経路を含む平面に沿って延び、鍵4の押鍵に伴うハンマー5の回動方向と反対側の端部に切欠き6cが形成されたシャッタ6と、回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部7a,8aと、回動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部7b,8bとを有し、受光部の受光状態に応じた検出信号S1,S2を出力する光センサ7,8と、ハンマー5が回動する際、シャッタ6による光センサ7,8の光路の開閉に応じた検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段23と、を備える。
【解決手段】鍵4の回動に連動して回動するハンマー5に一体に設けられ、ハンマー5の回動経路を含む平面に沿って延び、鍵4の押鍵に伴うハンマー5の回動方向と反対側の端部に切欠き6cが形成されたシャッタ6と、回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部7a,8aと、回動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部7b,8bとを有し、受光部の受光状態に応じた検出信号S1,S2を出力する光センサ7,8と、ハンマー5が回動する際、シャッタ6による光センサ7,8の光路の開閉に応じた検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段23と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器や、消音ピアノあるいは自動演奏ピアノなどの複合型ピアノに適用され、楽音の発音タイミングを設定する鍵盤楽器の発音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤楽器の発音制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この発音制御装置61は、アップライト型の自動演奏ピアノに適用されており、図14に示すように、回動自在の鍵(図示せず)と、鍵の押鍵に連動して、センターピン68を中心として回動し、弦62を打弦するハンマー63と、ハンマー63に取り付けられたシャッタ64と、第1および第2センサ65,66などで構成されている。シャッタ64は、円弧状に形成されており、その一端部がハンマーシャンク63aの前面に、他端部がキャッチャ63bの上面にそれぞれ固定されている。また、シャッタ64には、それに沿って円弧状のシャッタ窓67が形成されている。このシャッタ窓67は、上半部67aおよび下半部67bで構成されており、下半部67bは、上半部67aに対してハンマーシャンク63a側、すなわち後側にずれている。
【0003】
第1および第2センサ65,66は、シャッタ窓67の上半部67aおよび下半部67bに対応する位置に、隣り合った状態で配置されており、シャッタ64の両側に配置された一対の発光部および受光部(ともに図示せず)でそれぞれ構成されている。
【0004】
以上の構成により、図14に実線で示す離鍵状態では、第1センサ65の発光部からの光はシャッタ64で遮断され、第2センサ66の発光部からの光は、シャッタ窓67の下半部67bを通って受光部に到達する。この離鍵状態から、鍵の押鍵に連動し、ハンマー63が図14の反時計方向に回動するのに伴い、シャッタ64がハンマー63と一体に回動する。この回動に伴い、シャッタ64のシャッタ窓67の上半部67aの後端部が第1センサ65に達することによって、その受光部へ光が到達する。ハンマー63の回動が進むと、シャッタ窓67の下半部67bの前縁部が第2センサ66を通過することによって、その発光部からの光が遮断される。ハンマー63の回動がさらに進み、ハンマー63が弦62を打弦する直前に、シャッタ窓67の上半部67aの前縁部が第1センサ65を通過することによって、その発光部からの光が遮断される。一方、離鍵時には、第1および第2センサ65,66の検出信号は、上記と逆の順序で変化する。
【0005】
この発音制御装置61では、第2センサ66の検出信号が光路の閉鎖状態を示し、かつ第1センサ65の検出信号が開放状態から閉鎖状態に切り替わったタイミングを、自動演奏において楽音を発音すべき発音タイミングとして設定し、記録する。また、第2センサ66の検出信号が開放状態を示し、かつ第1センサ65の検出信号が開放状態から閉鎖状態に切り替わったタイミングを、止音タイミングとして設定し、記録する。また、ハンマー63は、弦62を打弦した後、図14の時計方向に復帰回動し、その途中で、キャッチャ63bがウイッペン(図示せず)に立設されたバックチェック69に当接することによって、停止する。
【0006】
しかし、従来の発音制御装置61では、シャッタ64がキャッチャ63bに取り付けられているので、シャッタ64がバックチェック69に接触しやすく、ハンマー63がリバウンドしやすくなる。このようなハンマー63のリバウンドが生じると、シャッタ64が第2センサ66および第1センサ65の順に、その光路を閉鎖することがある。その場合には、第1および第2センサ65,66から発音タイミング時と同じ検出信号が出力されることによって、押鍵動作を実際には行っていないにもかかわらず、誤った発音が行われてしまう。
【0007】
また、シャッタ64がバックチェック69に接触することによって振動が発生し、その振動がアクションを介して鍵に伝達されるため、タッチ感が損なわれる。さらに、止音タイミングが前述したように設定されるため、離鍵状態において、第1センサ65の光路を閉鎖し、かつ第2センサ66の光路を開放するように、シャッタ64を取り付ける必要があるため、その組み付けに手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、バックチェックへのシャッタの接触を回避でき、それにより、発音タイミングを適切に設定できるとともに、タッチ感を良好に維持することができる鍵盤楽器の発音制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】特開平2−160292号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、回動自在の鍵と、鍵の回動に連動して回動するハンマーと、このハンマーに一体に設けられ、ハンマーの回動経路を含む平面に沿って延び、鍵の押鍵に伴うハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成された板状のシャッタと、シャッタの回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部と、回動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部とを有し、受光部の受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、ハンマーが回動する際、シャッタによる光センサの発光部からの光の光路の開閉に応じた光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この鍵盤楽器の発音制御装置によれば、鍵の回動に連動してハンマーが回動すると、それに伴い、ハンマーに一体に設けられた板状のシャッタによって、光センサの発光部からの光の光路が開閉され、この開閉に応じて変化する受光部の受光状態に応じた検出信号が、光センサから出力される。発音タイミング設定手段は、この光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する。
【0012】
本発明によれば、シャッタには、鍵の押鍵に伴うハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成されている。このため、例えば、アップライト型のハンマーのキャッチャにシャッタの一端部を取り付けた場合でも、ハンマーが切欠き側に復帰回動し、キャッチャがバックチェックに当接する際に、切欠きが存在することによって、シャッタがバックチェックに接触するのを回避することができる。このため、シャッタがバックチェックに接触することによるハンマーのリバウンドと、それに起因する誤った発音を防止できるので、発音タイミングを適切に設定することができる。また、バックチェックへのシャッタの接触を回避することによって、それによる振動の発生を防止でき、その結果、タッチ感を良好に維持することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の発音制御装置において、光センサの検出信号に基づいて、楽音を止音すべき止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段をさらに備え、発音タイミング設定手段は、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過することにより、検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、発音タイミングを設定し、止音タイミング設定手段は、シャッタの切欠きと反対側の縁部が光センサを通過することにより、検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、鍵の押鍵に伴ってハンマーが回動すると、シャッタが光センサの光路を遮断することにより、光センサの検出信号が閉状態になる。その後、ハンマーの回動がさらに進むと、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過することにより、光センサの光路が開放され、検出信号が閉状態から開状態に変化し、このタイミングに基づいて、発音タイミング設定手段は、発音タイミングを設定する。
【0015】
また、発音タイミングが設定された後、ハンマーが上記と反対方向に復帰回動すると、シャッタが光センサの光路を遮断することによって、検出信号が閉状態になる。その後、ハンマーの復帰回動がさらに進むと、シャッタの切欠きと反対側の縁部が光センサを通過することにより、光センサの光路が開放され、検出信号が閉状態から開状態に変化し、このタイミングに基づいて、止音タイミング設定手段は、止音タイミングを設定する。
【0016】
以上のように、本発明では、シャッタの切欠き側の縁部を利用して、発音タイミングを設定するとともに、切欠きと反対側の縁部を利用して、止音タイミングを設定することができる。このため、従来の発音制御装置のようなシャッタ窓をシャッタに形成する必要がないので、その分、シャッタの形状を単純化することができる。また、シャッタ窓の省略によって、従来と異なり、離鍵状態において、第1センサの光路を閉鎖し、かつ第2センサの光路を開放するように、シャッタを取り付ける必要がないので、その組み付けを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の鍵盤楽器の発音制御装置において、光センサは、回動経路に沿って配置された複数の光センサで構成されており、発音タイミングを設定した後、複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、発音タイミング設定手段による新たな発音タイミングの設定を禁止する発音禁止手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、発音タイミングを設定した後、回動経路に沿って配置された複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、発音禁止手段は、新たな発音タイミングの設定を禁止する。このため、例えば、ハンマーの復帰回動の途中で、ハンマーが反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過し、検出信号が閉状態から開状態に変化したとしても、検出信号がすべて閉状態にならない限り、新たな発音タイミングが設定されることはないので、それに起因する誤った発音を防止することができる。このため、例えば、鍵が強く押鍵されたときに、ハンマーの復帰回動の途中で、キャッチャがバックチェックに勢いよく当接することで、ハンマーがリバウンドし、検出信号が閉状態から開状態に変化した場合に、発音タイミングの設定を禁止することができる。
【0019】
また、ハンマーの回動を規定する構成部品、例えばバックチェックに経時的な摩耗などが生じた場合には、ハンマーの回動タイミングや停止位置がずれることによって、シャッタの切欠き側の縁部が光センサの光路上に留まり、検出信号がチャタリングを起こすことがある。このような場合でも、上述したように、検出信号がすべて閉状態にならない限り、新たな発音タイミングが設定されないので、誤った発音を防止することができる。さらに、ハンマーの復帰回動時には、復帰回動がある程度進むと、次の押鍵が可能になるため、連打を行うことができる。本発明によれば、検出信号がすべて閉状態になれば、新たな発音タイミングの設定が許容されるので、連打性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による発音制御装置1を適用したアップライト型の消音ピアノ2(鍵盤楽器)を示している。なお、以下の説明では、消音ピアノ2を演奏者から見た場合の手前側(図1の右側)を「前」、奥側(図1の左側)を「後」とし、さらに左側および右側をそれぞれ「左」および「右」として、説明を行うものとする。
【0021】
図1に示すように、この消音ピアノ2は、棚板3に載置された複数(例えば88個)の鍵4(1つのみ図示)と、鍵4の後部上方に設けられたアクション9と、鍵4ごとに設けられたハンマー5を備えている。また、消音ピアノ2は、ハンマー5に設けられたシャッタ6と、第1および第2光センサ7,8と、演奏音を電子的に発生させるための楽音発生装置10(図7参照)などを備えている。この消音ピアノ2では、演奏モードが、ハンマー5による弦Sの打弦によってアコースティックな演奏音を発生させる通常演奏モードと、ハンマー5による打弦を阻止した状態で、楽音発生装置10によって電子的な演奏音を発生させる消音演奏モードに、切り替えられる。
【0022】
鍵4は、その中央に形成されたバランスピン孔(図示せず)を介して、棚板3上に設けられたバランスレール3aに立設されたバランスピン11に、回動自在に支持されている。
【0023】
アクション9は、鍵4の押鍵に伴ってハンマー5を回動させるためのものであり、前後方向に延び、各鍵4の後部にキャプスタンスクリュー12を介して載置されたウイッペン13と、ウイッペン13に取り付けられたジャック14などを備えている。各ウイッペン13は、その後端部においてセンターレール15に回動自在に支持されている。ジャック14は、上下方向に延びる突き上げ部14aと、その下端部から前方にほぼ直角に延びる係合部14bとから、L字状に形成されており、その角部においてウイッペン13に回動自在に取り付けられている。また、センターレール15の後端部には、ダンパー16が回動自在に取り付けられている。
【0024】
ウイッペン13には、バックチェック17が立設されている。バックチェック17は、ウイッペン13の前端部から上方に延びるバックチェックワイヤ17aと、バックチェックワイヤ17aの上端部に取り付けられたバックチェック本体17bと、バックチェック本体17bの背面に取り付けられたバックチェックスキン17cで構成されている。
【0025】
一方、ハンマー5は、バット5aと、バット5aから上方に延びるハンマーシャンク5bと、ハンマーシャンク5bの上端部に取り付けられたハンマーヘッド5cと、バット5aから前方に延びるキャッチャシャンク5dと、キャッチャシャンク5dの前端部に取り付けられたキャッチャ5eなどで構成されており、バット5aの下端部において、センターピン18aを介して、バットフレンジ18bに回動自在に支持されている。図1に示す離鍵状態では、バット5aにジャック14の突き上げ部14aの先端が係合しているとともに、ハンマーシャンク5bがハンマーレール19に斜めに当接し、ハンマーヘッド5cが弦Sに対向している。
【0026】
シャッタ6は、光を透過させない不透明な材料、例えば合成樹脂で構成されている。図1〜3に示すように、シャッタ6は、前後方向に延びる取付け部6aと、取付け部6aから上方に延びる板状の本体部6bで構成されている。取付け部6aは、逆U字状の断面を有し、その内側の幅は、バット5aおよびキャッチャ5eの幅よりも若干、小さい。シャッタ6は、取付け部6aの前端部をキャッチャ5eに、後端部をバット5aに、それぞれ上方から嵌め込むことによって、ハンマー5に取り付けられている。本体部6bの後縁(背面)6dは、前上がりに斜めにまっすぐ延びている。本体部6bの前部には、切欠き6cが形成されている。切欠き6cに臨む本体部6bの前縁6eの上部は、後縁6dとほぼ平行に斜めに延びている。
【0027】
第1および第2光センサ7,8は、互いに同じ構成のフォトインタラプタで構成されている。図1および図4に示すように、第1光センサ7は、ケース7cと、このケース7cに、左右方向に互いに対向するように設けられた一対の発光ダイオード7a(発光部)およびフォトトランジスタ7b(受光部)で構成されている。同様に、第2光センサ8は、ケース8cに、左右方向に対向するように設けられた一対の発光ダイオード8a(発光部)およびフォトトランジスタ8b(受光部)で構成されている。第1および第2光センサ7,8は、基板20に取り付けられており、シャッタ6の回動経路に沿って、前者7が下側に、後者8が上側に、配置されるとともに、発光ダイオード7a,8aおよびフォトトランジスタ7b,8bは、シャッタ6の回動経路の両側に配置されている。この基板20は、左右方向に延びており、棚板3の左右端部にそれぞれ設けられたブラケット(ともに図示せず)の間に渡された取付けレール21に取り付けられている。
【0028】
発光ダイオード7a,8aは、pn接合されたダイオードで構成されており、それらのアノードおよびカソードはそれぞれ、基板20に電気的に接続されている。これらの発光ダイオード7a,8aは、それらのアノードに、後述するCPU23から駆動信号が出力されることによって作動し、その発光面(図示せず)から光を、水平な光路に沿い、フォトトランジスタ7b,8bに向かって出射する。
【0029】
フォトトランジスタ7b,8bは、npn接合されたバイポーラトランジスタで構成されており、それらのコレクタおよびエミッタはそれぞれ、基板20に電気的に接続されている。これらのフォトトランジスタ7b,8bは、それらのベースに相当する受光面(図示せず)で光を受光し、その光量(以下「受光量」という)が所定レベル以上のときに、コレクタ−エミッタ間が導通状態になり、エミッタからHレベルの信号が出力される。一方、受光量が所定レベル未満のときに、コレクタ−エミッタ間が非導通状態になり、エミッタからLレベルの信号が出力される。第1および第2光センサ7,8は、これらのHレベルまたはLレベルの信号を、第1および第2検出信号S1,S2としてそれぞれ出力する。
【0030】
また、図1に示すように、ハンマー5と弦Sの間には、ストッパ32が設けられている。このストッパ32は、消音演奏モード時に、ハンマー5による弦Sの打弦を阻止するためのものであり、本体部32aと、その先端面に取り付けられたクッション(図示せず)などで構成されている。ストッパ32は、本体部32aの基端部において支点32bに回動自在に支持されており、モータ(図示せず)によって駆動される。ストッパ32は、通常演奏モード時には、上下方向に延び、ハンマー5のハンマーシャンク5bの回動範囲内から退避した退避位置(図1の実線位置)に駆動され、一方、消音演奏モード時には、前後方向に延び、ハンマーシャンク5bの回動範囲内に進入した進入位置(図1の2点鎖線位置)に駆動される。なお、このモータは、CPU23からの駆動信号によって駆動される。
【0031】
以上の構成により、鍵4が押鍵されると、鍵4はバランスピン11を中心として図1の時計方向に回動し、この回動に伴ってウイッペン13が反時計方向に回動する。このウイッペン13の回動に伴い、ジャック14がウイッペン13と一緒に上方に移動し、その突き上げ部14aがバット5aを突き上げることによって、ハンマー5が反時計方向に回動する。通常演奏モード時には、ストッパ32が退避位置に位置することによって、ハンマーヘッド5cが弦Sを打弦する。一方、消音演奏モード時には、ストッパ32が進入位置に位置することによって、ハンマーヘッド5cが弦Sを打弦する直前で、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接し、打弦が阻止される。また、このハンマー5の回動に伴い、シャッタ6が第1および第2光センサ7,8の光路を開閉し、それに応じて、第1および第2検出信号S1,S2が出力される。
【0032】
図5は、押鍵に伴うハンマー5の回動位置を示し、図6は、ハンマー5の回動に伴う第1および第2検出信号S1,S2のタイミングチャートを示している。まず、離鍵状態では、ハンマー5は、図5(a)に示す離鍵位置に位置しており、シャッタ6が第1および第2光センサ7,8の光路を開放することによって、第1および第2検出信号S1,S2は、ともにHレベルになっている(タイミングt1以前)。この離鍵状態から鍵4が押鍵され、ハンマー5が図5の反時計方向に回動すると、その途中で、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7の光路に達したときに、その光路がシャッタ6で遮断されることによって、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに立ち下がる(t1)。ハンマー5の回動が進むと、シャッタ6の後縁6dが第2光センサ8の光路に達したときに(図5(b))、第2検出信号S2がHレベルからLレベルに立ち下がる(t2)。さらにハンマー5の回動が進むと、シャッタ6の前縁6eが第1光センサ7を通過することにより(図5(c))、その光路が開放されることによって、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに立ち上がる(t3)。ハンマー5の回動がさらに進み、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接する付近で、図3に2点鎖線で示すように、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過することにより(図5(d))、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに立ち上がる(t4)。
【0033】
その後、ハンマー5がさらに回動したときに、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接することによって、ハンマー5が図5の時計方向に復帰回動し始め(図5(e))、その復帰回動の途中で、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8の光路に達したときに、その光路が遮断されることによって、第2検出信号S2がHレベルからLレベルに立ち下がる(t5)。復帰回動が進み、キャッチャ5eがバックチェック17に当接し、ハンマー5が停止する付近で、シャッタ6の前縁6eが第1光センサ7の光路に達することにより(図5(f))、その光路が遮断され、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに立ち下がる(t6)。さらに復帰回動が進むと、シャッタ6の後縁6dが第2光センサ8を通過することにより、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに立ち上がり(t7)、復帰回動がさらに進むと、図3に実線で示すように、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過することにより(図5(g))、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに立ち上がる(t8)。その後、ハンマー5は、離鍵位置に復帰する(図5(h))。
【0034】
楽音発生装置10は、消音演奏モード時に楽音を生成するものであり、図7に示すように、センサスキャン回路22、CPU23、ROM24、RAM25、音源回路26、波形メモリ27、DSP28、D/A変換器29、パワーアンプ30およびスピーカ31などで構成されている。センサスキャン回路22は、第1および第2光センサ7,8から出力された第1および第2検出信号S1,S2に基づいて、鍵4のオン/オフ情報、およびオンまたはオフされた鍵4を特定するキーナンバ情報を検出するとともに、これらのオン/オフ情報およびキーナンバ情報を、第1および第2検出信号S1,S2とともに、鍵4の押鍵情報データとしてCPU23に出力する。
【0035】
ROM24は、CPU23で実行される制御プログラムの他、音量などを制御するための固定データなどを記憶している。また、RAM25は、消音演奏モード時の動作状態を表すステータス情報などを一時的に記憶するとともに、CPU23の作業領域としても使用される。
【0036】
音源回路26は、CPU23からの制御信号に従って、音源波形データおよびエンベロープデータを波形メモリ27から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号MSを生成する。DSP28は、音源回路26によって生成された楽音信号MSに所定の音響効果を付加する。D/A変換器29は、DSP28によって音響効果が付加された楽音信号MSを、デジタル信号からアナログ信号に変換する。パワーアンプ30は、変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅し、スピーカ31は、増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0037】
CPU23は、本実施形態において、発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および発音禁止手段を構成するものであり、消音演奏モード時に、楽音発生装置10の動作を制御する。CPU23は、第1および第2光センサ7,8の第1および第2検出信号S1,S2に応じて、発音タイミングおよび止音タイミングを設定するとともに、ハンマー5の回動速度Vに応じて音量を制御するためのベロシティを決定するなどの発音制御処理を実行する。
【0038】
図8は、この発音制御処理のメインフローチャートである。この処理は、88鍵すべての鍵4について順次、実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、鍵4のキーナンバn(n=1〜88)を値1に初期化する。次に、今回のキーナンバnに対する発音タイミングおよび止音タイミングなどを含む後述するタッチ検出処理を行う(ステップ2)。
【0039】
次に、キーナンバnをインクリメントする(ステップ3)とともに、インクリメントしたキーナンバnが値88よりも大きいか否かを判別する(ステップ4)。この判別結果がNOのときには、前記ステップ2に戻り、ステップ2以降の処理を繰り返し実行する。一方、ステップ4の判別結果がYESのとき、すなわち88鍵すべてについて上記の処理が終了したときには、本処理を終了する。
【0040】
図9は、前記ステップ2のタッチ検出処理を示すフローチャートである。本処理では、まずステップ11において、第1光センサ7の第1検出信号S1がHレベルであり、かつ第2光センサ8の第2検出信号S2がHレベルであるか否かを判別する。
【0041】
この判別結果がYESのとき、すなわち、第1および第2光センサ7,8の光路がいずれも開放されているときには、カウンタ(図示せず)の値CNTが最大値CMAXと等しいか否かを判別する(ステップ12)。
【0042】
このカウンタ値CNTは、図10の処理によって算出される。本処理では、まずステップ21において、前回と今回の間で、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したか否かを判別する。この判別結果がYESで、シャッタ6が第1光センサ7の光路を開放した直後のタイミングのときには、カウンタ値CNTを最大値CMAXにセットし(ステップ22)、本処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ21の判別結果がNOのときには、第1検出信号S1がHレベルであり、かつ第2検出信号S2がLレベルであるか否かを判別する(ステップ23)。この判別結果がYESで、第1光センサ7の光路が開放され、かつ第2光センサ8の光路が遮断されているときには、カウンタ値CNTをデクリメントし(ステップ24)、本処理を終了する。一方、ステップ23の判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0044】
以上のようにして算出したカウンタ値CNTは、図11にも示すように、押鍵時にシャッタ6の前縁6eが、第1光センサ7を通過したときに(t3)、最大値CMAXにセットされ、第2光センサ8を通過するまで(t4)、デクリメントされる。最大値CMAXとt4におけるカウンタ値CNTとの差(=ΔCNT)は、ハンマー5の回動速度Vに反比例する。その後、カウンタ値CNTは、その値が保持され、ハンマー5が復帰回動し、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したときに(t8)、最大値CMAXにセットされる。その後、ステップ23の判別結果がNOになることで、カウンタ値CNTは、デクリメントされず、最大値CMAXに維持される。
【0045】
図9に戻り、前記ステップ12の判別結果がNOで、カウンタ値CNTが最大値CMAXと等しくないとき、すなわち、押鍵によるハンマー5の回動に伴い、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した直後のタイミング(図5(d),t4)のときには、楽音を発音すべき発音タイミングであると判定する。次に、再発音禁止フラグF_MSFが「0」であるか否かを判別する(ステップ13)。この再発音禁止フラグF_MSFは、電源(図示せず)をONしたときに「0」に初期化されるものである。このため、ステップ13の判別結果がYESになり、その場合には、ベロシティを決定する(ステップ14)。
【0046】
このベロシティは、図12の処理によって決定される。本処理では、まずステップ31において、第1および第2光センサ7,8間の回動ストロークSTを、図10の処理で算出されたカウンタ値の差ΔCNTで除算するとともに、除算した値に所定の係数Kを乗算することによって、ハンマー5の回動速度Vを算出する。そして、算出された回動速度Vに基づいて、ベロシティを決定し(ステップ32)、本処理を終了する。
【0047】
図9に戻り、前記ステップ14に続くステップ15では、発音実行フラグF_MSTRを「1」にセットする。このように、発音実行フラグF_MSTRが「1」にセットされると、発音を開始する制御信号が音源回路26に出力されることによって、決定したベロシティなどに基づいて、発音が開始される。また、楽音の再発音を禁止するために、再発音禁止フラグF_MSFを「1」にセットし、本処理を終了する。
【0048】
このステップ15が実行されることにより、前記ステップ13の判別結果がNOになり、その場合には、本処理を終了する。
【0049】
一方、前記ステップ11の判別結果がNOで、第1および第2検出信号S1,S2の少なくとも一方がLレベルのときには、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルであるか否かを判別する(ステップ16)。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。一方、ステップ16の判別結果がYESで、第1および第2光センサ7,8の光路がいずれも遮断されているとき(図5(f))には、再発音の禁止を解除するために、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ17)、本処理を終了する。
【0050】
前記ステップ12の判別結果がYESのとき、すなわち、ハンマー5の復帰回動に伴い、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過した直後のタイミング(図5(g),t8)のときには、楽音を止音すべき止音タイミングであると判定する。次に、発音実行フラグF_MSTRが「1」であるか否かを判別する(ステップ18)。この判別結果がYESで、発音中のときには、発音実行フラグF_MSTRを「0」にリセットする。このように、発音実行フラグF_MSTRが「0」にリセットされると、発音を停止する制御信号が音源回路26に出力されることによって、発音が停止される。また、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ19)、本処理を終了する。一方、ステップ18の判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、シャッタ6の前端部に、切欠き6cが形成されているので、ハンマー5が復帰回動し、キャッチャ5eがバックチェック17に当接する際、切欠き6cによって、シャッタ6がバックチェック17に接触するのを回避することができる。このため、シャッタ6がバックチェック17に接触することによるハンマー5のリバウンドと、それに起因する誤った発音を防止できるので、発音タイミングを適切に設定することができる。また、バックチェック17へのシャッタ6の接触を回避することによって、それによる振動の発生を防止でき、その結果、タッチ感を良好に維持することができる。
【0052】
また、鍵4の押鍵に伴うハンマー5の回動時には、シャッタ6の前縁6eを利用して、発音タイミングを設定するとともに、ハンマー5の復帰回動時には、後縁6dを利用して、止音タイミングを設定する。このため、従来の発音制御装置のようなシャッタ窓をシャッタに形成する必要がないので、その分、シャッタ6の形状を単純化することができる。また、シャッタ窓の省略によって、従来と異なり、離鍵状態において、第1光センサ7の光路を閉鎖し、かつ第2光センサ8の光路を開放するように、シャッタ6を取り付ける必要がないので、その組み付けを容易に行うことができる。
【0053】
また、カウンタ値CNTは、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したときに、最大値CMAXにセットされ、シャッタ6の前縁6eが、第1光センサ7を通過した後、第2光センサ8を通過するまでの間に限り、デクリメントされる。このため、第1および第2検出信号S1,S2がともにHレベルになり、かつそのときのカウンタ値CNTが最大値CMAXと等しくないとき(ステップ11:YES,ステップ12:NO)には、ハンマー5が後方に回動し、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過したとして、そのタイミングを発音タイミングとして設定する。また、第1および第2検出信号S1,S2がともにHレベルになり、かつそのときのカウンタ値CNTが最大値CMAXと等しいとき(ステップ11,12:YES)には、ハンマー5が前方に復帰回動し、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したとして、そのタイミングを止音タイミングとして設定する。以上のように、カウンタ値CNTと最大値CMAXを比較することによって、第1および第2光センサ7,8を、シャッタ6の前縁6eまたは後縁6dのいずれが通過したかを正しく識別でき、発音タイミングおよび止音タイミングを適切に設定することができる。
【0054】
さらに、発音タイミングを設定した後には、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルになり、再発音禁止フラグF_MSFが「0」にリセットされるまでの間、新たな発音タイミングの設定を禁止する(ステップ13,16,17)。このため、ハンマー5の復帰回動の途中で、ハンマー5が反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、シャッタ6の前縁6eが第1および第2光センサ7,8を通過し、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルにならない限り、新たな発音タイミングが設定されることはないので、それに起因する誤った発音を防止することができる。例えば、ハンマー5の復帰回動の途中で、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した後、キャッチャ5eがバックチェック17に勢いよく当接することで、ハンマー5がリバウンドし、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過することで、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化した場合にも、発音タイミングの設定を禁止することができる。
【0055】
また、バックチェックスキン17cの経時的な摩耗などによって、キャッチャ5eがバックチェック17に当接する位置がずれ、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8の光路上に留まり、第2検出信号S2がチャタリングを起こすことがある。このような場合でも、上述したように、第1および第2検出信号S1,S2がすべてLレベルにならない限り、新たな発音タイミングが設定されないので、誤った発音を防止することができる。さらに、第1および第2検出信号S1,S2がすべてLレベルになれば、新たな発音タイミングの設定が許容されるので、連打性能を確保することができる。
【0056】
図13は、本発明の第2実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。本処理では、まずステップ41において、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルに維持され、かつ第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化したか否かを判別する。この判別は、第1実施形態のステップ11および12に相当する。この判別結果がYESのときには、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した直後のタイミングであると判定する。その後のステップ42〜44の実行内容は、第1実施形態のステップ13〜15と同じである。すなわち、再発音禁止フラグF_MSFが「0」であるか否かを判別し(ステップ42)、その判別結果がYESのときには、第1実施形態と同様、図10の処理によって算出されるカウンタ値CNTを用いて、ベロシティを決定する(ステップ43)とともに、発音実行フラグF_MSTRおよび再発音禁止フラグF_MSFを「1」にセットし(ステップ44)、本処理を終了する。このステップ44の実行により、ステップ42の判別結果がNOになり、その場合には、本処理を終了する。
【0057】
一方、前記ステップ41の判別結果がNOのときには、前回と今回の間で、第1検出信号がLレベルからHレベルに変化し、かつ第2検出信号S2がHレベルに維持されているか否かを判別する(ステップ45)。この判別は、第1実施形態のステップ18に相当する。
【0058】
この判別結果がNOのときには、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに変化し、かつ第2検出信号S2がLレベルに維持されているか否かを判別する(ステップ47)。この判別は、第1実施形態のステップ16に相当する。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0059】
一方、このステップ47の判別結果がYESで、ハンマー5の復帰回動によって、第2光センサ8の光路の遮断に加えて、第1光センサ7の光路が遮断された直後のとき(図5(f))には、第1実施形態と同様、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ48)、本処理を終了する。
【0060】
前記ステップ45の判別結果がYESのときには、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したタイミングであると判定する。次に、第1実施形態のステップ19と同様、発音実行フラグF_MSTRおよび再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ46)、本処理を終了する。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルに維持された状態で、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化したときに(ステップ41:YES)、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過したとして、そのタイミングを発音タイミングとして設定する。また、第2検出信号S2がHレベルに維持された状態で、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したときに(ステップ45:YES)、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したとして、そのタイミングを止音タイミングとして設定する。以上のように、本実施形態では、カウンタ値CNTを用いずに、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもHレベルになったときに、第1および第2検出信号S1,S2のどちらかが変化したかによって、シャッタ6の前縁6eまたは後縁6dのどちらが通過したかを識別することができる。したがって、第1実施形態と同様、発音タイミングおよび止音タイミングを適切に設定することができる。
【0062】
また、シャッタ6が第2光センサ8を遮断した状態で、第1光センサ7を遮断したときに(ステップ47:YES)、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットするので、第1実施形態と同様、ハンマー5の復帰回動の途中で、ハンマー5が反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、それに起因する誤った発音を防止することができる。
【0063】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、シャッタ6の回動経路に、2つの光センサを設けているが、それらの数は、これに限定されず、さらに増やしてもよい。
【0064】
また、実施形態では、光センサとして、発光ダイオードおよびフォトトランジスタからなるフォトインタラプタを用いているが、他のタイプの適当な光センサを用いてもよく、例えば、発光部をレーザダイオードなどで構成し、受光部をフォトダイオードなどで構成してもよい。さらに、実施形態は、発光ダイオードやフォトトランジスタをケースに直接、設けた例であるが、ケースの発光側および受光側に光ファイバを互いに対向するようにそれぞれ設けるとともに、それらの光ファイバの延長上に発光素子および受光素子をそれぞれ設けてもよい。また、実施形態では、発音制御処理を、CPU23によって行っているが、これに代えて、センサスキャン回路22で行ってもよい。
【0065】
さらに、実施形態は、本発明をアップライト型の消音ピアノに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、グランド型の消音ピアノにも適用でき、さらには、自動演奏ピアノや電子ピアノなどの他のタイプの鍵盤楽器にも適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態による発音制御装置およびこれを適用した消音ピアノの概略構成を示す図である。
【図2】シャッタの(a)側面図および(b)正面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】第1および第2光センサの回路図である。
【図5】押鍵に伴うハンマーの回動位置を示す図である。
【図6】ハンマーの回動時における第1および第2検出信号のタイミングチャートを示している。
【図7】楽音発生装置の一部を示す図である。
【図8】図5のCPUで実行される発音制御処理を示すメインフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【図10】カウンタ値の算出処理を示すフローチャートである。
【図11】ハンマーの回動位置に対するカウンタ値の関係の一例を示す図である。
【図12】ベロシティ決定処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【図14】従来の発音制御装置の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 発音制御装置
2 消音ピアノ(鍵盤楽器)
4 鍵
5 ハンマー
6 シャッタ
6c 切欠き
6d 後縁(縁部)
6e 前縁(縁部)
7 第1光センサ
7a 発光ダイオード(発光部)
7b フォトトランジスタ(受光部)
8 第2光センサ
8a 発光ダイオード(発光部)
8b フォトトランジスタ(受光部)
23 CPU(発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および発音禁止手段)
S1 第1検出信号
S2 第2検出信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器や、消音ピアノあるいは自動演奏ピアノなどの複合型ピアノに適用され、楽音の発音タイミングを設定する鍵盤楽器の発音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤楽器の発音制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この発音制御装置61は、アップライト型の自動演奏ピアノに適用されており、図14に示すように、回動自在の鍵(図示せず)と、鍵の押鍵に連動して、センターピン68を中心として回動し、弦62を打弦するハンマー63と、ハンマー63に取り付けられたシャッタ64と、第1および第2センサ65,66などで構成されている。シャッタ64は、円弧状に形成されており、その一端部がハンマーシャンク63aの前面に、他端部がキャッチャ63bの上面にそれぞれ固定されている。また、シャッタ64には、それに沿って円弧状のシャッタ窓67が形成されている。このシャッタ窓67は、上半部67aおよび下半部67bで構成されており、下半部67bは、上半部67aに対してハンマーシャンク63a側、すなわち後側にずれている。
【0003】
第1および第2センサ65,66は、シャッタ窓67の上半部67aおよび下半部67bに対応する位置に、隣り合った状態で配置されており、シャッタ64の両側に配置された一対の発光部および受光部(ともに図示せず)でそれぞれ構成されている。
【0004】
以上の構成により、図14に実線で示す離鍵状態では、第1センサ65の発光部からの光はシャッタ64で遮断され、第2センサ66の発光部からの光は、シャッタ窓67の下半部67bを通って受光部に到達する。この離鍵状態から、鍵の押鍵に連動し、ハンマー63が図14の反時計方向に回動するのに伴い、シャッタ64がハンマー63と一体に回動する。この回動に伴い、シャッタ64のシャッタ窓67の上半部67aの後端部が第1センサ65に達することによって、その受光部へ光が到達する。ハンマー63の回動が進むと、シャッタ窓67の下半部67bの前縁部が第2センサ66を通過することによって、その発光部からの光が遮断される。ハンマー63の回動がさらに進み、ハンマー63が弦62を打弦する直前に、シャッタ窓67の上半部67aの前縁部が第1センサ65を通過することによって、その発光部からの光が遮断される。一方、離鍵時には、第1および第2センサ65,66の検出信号は、上記と逆の順序で変化する。
【0005】
この発音制御装置61では、第2センサ66の検出信号が光路の閉鎖状態を示し、かつ第1センサ65の検出信号が開放状態から閉鎖状態に切り替わったタイミングを、自動演奏において楽音を発音すべき発音タイミングとして設定し、記録する。また、第2センサ66の検出信号が開放状態を示し、かつ第1センサ65の検出信号が開放状態から閉鎖状態に切り替わったタイミングを、止音タイミングとして設定し、記録する。また、ハンマー63は、弦62を打弦した後、図14の時計方向に復帰回動し、その途中で、キャッチャ63bがウイッペン(図示せず)に立設されたバックチェック69に当接することによって、停止する。
【0006】
しかし、従来の発音制御装置61では、シャッタ64がキャッチャ63bに取り付けられているので、シャッタ64がバックチェック69に接触しやすく、ハンマー63がリバウンドしやすくなる。このようなハンマー63のリバウンドが生じると、シャッタ64が第2センサ66および第1センサ65の順に、その光路を閉鎖することがある。その場合には、第1および第2センサ65,66から発音タイミング時と同じ検出信号が出力されることによって、押鍵動作を実際には行っていないにもかかわらず、誤った発音が行われてしまう。
【0007】
また、シャッタ64がバックチェック69に接触することによって振動が発生し、その振動がアクションを介して鍵に伝達されるため、タッチ感が損なわれる。さらに、止音タイミングが前述したように設定されるため、離鍵状態において、第1センサ65の光路を閉鎖し、かつ第2センサ66の光路を開放するように、シャッタ64を取り付ける必要があるため、その組み付けに手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、バックチェックへのシャッタの接触を回避でき、それにより、発音タイミングを適切に設定できるとともに、タッチ感を良好に維持することができる鍵盤楽器の発音制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】特開平2−160292号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、回動自在の鍵と、鍵の回動に連動して回動するハンマーと、このハンマーに一体に設けられ、ハンマーの回動経路を含む平面に沿って延び、鍵の押鍵に伴うハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成された板状のシャッタと、シャッタの回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部と、回動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部とを有し、受光部の受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、ハンマーが回動する際、シャッタによる光センサの発光部からの光の光路の開閉に応じた光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この鍵盤楽器の発音制御装置によれば、鍵の回動に連動してハンマーが回動すると、それに伴い、ハンマーに一体に設けられた板状のシャッタによって、光センサの発光部からの光の光路が開閉され、この開閉に応じて変化する受光部の受光状態に応じた検出信号が、光センサから出力される。発音タイミング設定手段は、この光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する。
【0012】
本発明によれば、シャッタには、鍵の押鍵に伴うハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成されている。このため、例えば、アップライト型のハンマーのキャッチャにシャッタの一端部を取り付けた場合でも、ハンマーが切欠き側に復帰回動し、キャッチャがバックチェックに当接する際に、切欠きが存在することによって、シャッタがバックチェックに接触するのを回避することができる。このため、シャッタがバックチェックに接触することによるハンマーのリバウンドと、それに起因する誤った発音を防止できるので、発音タイミングを適切に設定することができる。また、バックチェックへのシャッタの接触を回避することによって、それによる振動の発生を防止でき、その結果、タッチ感を良好に維持することができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の発音制御装置において、光センサの検出信号に基づいて、楽音を止音すべき止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段をさらに備え、発音タイミング設定手段は、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過することにより、検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、発音タイミングを設定し、止音タイミング設定手段は、シャッタの切欠きと反対側の縁部が光センサを通過することにより、検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、止音タイミングを設定することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、鍵の押鍵に伴ってハンマーが回動すると、シャッタが光センサの光路を遮断することにより、光センサの検出信号が閉状態になる。その後、ハンマーの回動がさらに進むと、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過することにより、光センサの光路が開放され、検出信号が閉状態から開状態に変化し、このタイミングに基づいて、発音タイミング設定手段は、発音タイミングを設定する。
【0015】
また、発音タイミングが設定された後、ハンマーが上記と反対方向に復帰回動すると、シャッタが光センサの光路を遮断することによって、検出信号が閉状態になる。その後、ハンマーの復帰回動がさらに進むと、シャッタの切欠きと反対側の縁部が光センサを通過することにより、光センサの光路が開放され、検出信号が閉状態から開状態に変化し、このタイミングに基づいて、止音タイミング設定手段は、止音タイミングを設定する。
【0016】
以上のように、本発明では、シャッタの切欠き側の縁部を利用して、発音タイミングを設定するとともに、切欠きと反対側の縁部を利用して、止音タイミングを設定することができる。このため、従来の発音制御装置のようなシャッタ窓をシャッタに形成する必要がないので、その分、シャッタの形状を単純化することができる。また、シャッタ窓の省略によって、従来と異なり、離鍵状態において、第1センサの光路を閉鎖し、かつ第2センサの光路を開放するように、シャッタを取り付ける必要がないので、その組み付けを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の鍵盤楽器の発音制御装置において、光センサは、回動経路に沿って配置された複数の光センサで構成されており、発音タイミングを設定した後、複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、発音タイミング設定手段による新たな発音タイミングの設定を禁止する発音禁止手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、発音タイミングを設定した後、回動経路に沿って配置された複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、発音禁止手段は、新たな発音タイミングの設定を禁止する。このため、例えば、ハンマーの復帰回動の途中で、ハンマーが反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、シャッタの切欠き側の縁部が光センサを通過し、検出信号が閉状態から開状態に変化したとしても、検出信号がすべて閉状態にならない限り、新たな発音タイミングが設定されることはないので、それに起因する誤った発音を防止することができる。このため、例えば、鍵が強く押鍵されたときに、ハンマーの復帰回動の途中で、キャッチャがバックチェックに勢いよく当接することで、ハンマーがリバウンドし、検出信号が閉状態から開状態に変化した場合に、発音タイミングの設定を禁止することができる。
【0019】
また、ハンマーの回動を規定する構成部品、例えばバックチェックに経時的な摩耗などが生じた場合には、ハンマーの回動タイミングや停止位置がずれることによって、シャッタの切欠き側の縁部が光センサの光路上に留まり、検出信号がチャタリングを起こすことがある。このような場合でも、上述したように、検出信号がすべて閉状態にならない限り、新たな発音タイミングが設定されないので、誤った発音を防止することができる。さらに、ハンマーの復帰回動時には、復帰回動がある程度進むと、次の押鍵が可能になるため、連打を行うことができる。本発明によれば、検出信号がすべて閉状態になれば、新たな発音タイミングの設定が許容されるので、連打性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による発音制御装置1を適用したアップライト型の消音ピアノ2(鍵盤楽器)を示している。なお、以下の説明では、消音ピアノ2を演奏者から見た場合の手前側(図1の右側)を「前」、奥側(図1の左側)を「後」とし、さらに左側および右側をそれぞれ「左」および「右」として、説明を行うものとする。
【0021】
図1に示すように、この消音ピアノ2は、棚板3に載置された複数(例えば88個)の鍵4(1つのみ図示)と、鍵4の後部上方に設けられたアクション9と、鍵4ごとに設けられたハンマー5を備えている。また、消音ピアノ2は、ハンマー5に設けられたシャッタ6と、第1および第2光センサ7,8と、演奏音を電子的に発生させるための楽音発生装置10(図7参照)などを備えている。この消音ピアノ2では、演奏モードが、ハンマー5による弦Sの打弦によってアコースティックな演奏音を発生させる通常演奏モードと、ハンマー5による打弦を阻止した状態で、楽音発生装置10によって電子的な演奏音を発生させる消音演奏モードに、切り替えられる。
【0022】
鍵4は、その中央に形成されたバランスピン孔(図示せず)を介して、棚板3上に設けられたバランスレール3aに立設されたバランスピン11に、回動自在に支持されている。
【0023】
アクション9は、鍵4の押鍵に伴ってハンマー5を回動させるためのものであり、前後方向に延び、各鍵4の後部にキャプスタンスクリュー12を介して載置されたウイッペン13と、ウイッペン13に取り付けられたジャック14などを備えている。各ウイッペン13は、その後端部においてセンターレール15に回動自在に支持されている。ジャック14は、上下方向に延びる突き上げ部14aと、その下端部から前方にほぼ直角に延びる係合部14bとから、L字状に形成されており、その角部においてウイッペン13に回動自在に取り付けられている。また、センターレール15の後端部には、ダンパー16が回動自在に取り付けられている。
【0024】
ウイッペン13には、バックチェック17が立設されている。バックチェック17は、ウイッペン13の前端部から上方に延びるバックチェックワイヤ17aと、バックチェックワイヤ17aの上端部に取り付けられたバックチェック本体17bと、バックチェック本体17bの背面に取り付けられたバックチェックスキン17cで構成されている。
【0025】
一方、ハンマー5は、バット5aと、バット5aから上方に延びるハンマーシャンク5bと、ハンマーシャンク5bの上端部に取り付けられたハンマーヘッド5cと、バット5aから前方に延びるキャッチャシャンク5dと、キャッチャシャンク5dの前端部に取り付けられたキャッチャ5eなどで構成されており、バット5aの下端部において、センターピン18aを介して、バットフレンジ18bに回動自在に支持されている。図1に示す離鍵状態では、バット5aにジャック14の突き上げ部14aの先端が係合しているとともに、ハンマーシャンク5bがハンマーレール19に斜めに当接し、ハンマーヘッド5cが弦Sに対向している。
【0026】
シャッタ6は、光を透過させない不透明な材料、例えば合成樹脂で構成されている。図1〜3に示すように、シャッタ6は、前後方向に延びる取付け部6aと、取付け部6aから上方に延びる板状の本体部6bで構成されている。取付け部6aは、逆U字状の断面を有し、その内側の幅は、バット5aおよびキャッチャ5eの幅よりも若干、小さい。シャッタ6は、取付け部6aの前端部をキャッチャ5eに、後端部をバット5aに、それぞれ上方から嵌め込むことによって、ハンマー5に取り付けられている。本体部6bの後縁(背面)6dは、前上がりに斜めにまっすぐ延びている。本体部6bの前部には、切欠き6cが形成されている。切欠き6cに臨む本体部6bの前縁6eの上部は、後縁6dとほぼ平行に斜めに延びている。
【0027】
第1および第2光センサ7,8は、互いに同じ構成のフォトインタラプタで構成されている。図1および図4に示すように、第1光センサ7は、ケース7cと、このケース7cに、左右方向に互いに対向するように設けられた一対の発光ダイオード7a(発光部)およびフォトトランジスタ7b(受光部)で構成されている。同様に、第2光センサ8は、ケース8cに、左右方向に対向するように設けられた一対の発光ダイオード8a(発光部)およびフォトトランジスタ8b(受光部)で構成されている。第1および第2光センサ7,8は、基板20に取り付けられており、シャッタ6の回動経路に沿って、前者7が下側に、後者8が上側に、配置されるとともに、発光ダイオード7a,8aおよびフォトトランジスタ7b,8bは、シャッタ6の回動経路の両側に配置されている。この基板20は、左右方向に延びており、棚板3の左右端部にそれぞれ設けられたブラケット(ともに図示せず)の間に渡された取付けレール21に取り付けられている。
【0028】
発光ダイオード7a,8aは、pn接合されたダイオードで構成されており、それらのアノードおよびカソードはそれぞれ、基板20に電気的に接続されている。これらの発光ダイオード7a,8aは、それらのアノードに、後述するCPU23から駆動信号が出力されることによって作動し、その発光面(図示せず)から光を、水平な光路に沿い、フォトトランジスタ7b,8bに向かって出射する。
【0029】
フォトトランジスタ7b,8bは、npn接合されたバイポーラトランジスタで構成されており、それらのコレクタおよびエミッタはそれぞれ、基板20に電気的に接続されている。これらのフォトトランジスタ7b,8bは、それらのベースに相当する受光面(図示せず)で光を受光し、その光量(以下「受光量」という)が所定レベル以上のときに、コレクタ−エミッタ間が導通状態になり、エミッタからHレベルの信号が出力される。一方、受光量が所定レベル未満のときに、コレクタ−エミッタ間が非導通状態になり、エミッタからLレベルの信号が出力される。第1および第2光センサ7,8は、これらのHレベルまたはLレベルの信号を、第1および第2検出信号S1,S2としてそれぞれ出力する。
【0030】
また、図1に示すように、ハンマー5と弦Sの間には、ストッパ32が設けられている。このストッパ32は、消音演奏モード時に、ハンマー5による弦Sの打弦を阻止するためのものであり、本体部32aと、その先端面に取り付けられたクッション(図示せず)などで構成されている。ストッパ32は、本体部32aの基端部において支点32bに回動自在に支持されており、モータ(図示せず)によって駆動される。ストッパ32は、通常演奏モード時には、上下方向に延び、ハンマー5のハンマーシャンク5bの回動範囲内から退避した退避位置(図1の実線位置)に駆動され、一方、消音演奏モード時には、前後方向に延び、ハンマーシャンク5bの回動範囲内に進入した進入位置(図1の2点鎖線位置)に駆動される。なお、このモータは、CPU23からの駆動信号によって駆動される。
【0031】
以上の構成により、鍵4が押鍵されると、鍵4はバランスピン11を中心として図1の時計方向に回動し、この回動に伴ってウイッペン13が反時計方向に回動する。このウイッペン13の回動に伴い、ジャック14がウイッペン13と一緒に上方に移動し、その突き上げ部14aがバット5aを突き上げることによって、ハンマー5が反時計方向に回動する。通常演奏モード時には、ストッパ32が退避位置に位置することによって、ハンマーヘッド5cが弦Sを打弦する。一方、消音演奏モード時には、ストッパ32が進入位置に位置することによって、ハンマーヘッド5cが弦Sを打弦する直前で、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接し、打弦が阻止される。また、このハンマー5の回動に伴い、シャッタ6が第1および第2光センサ7,8の光路を開閉し、それに応じて、第1および第2検出信号S1,S2が出力される。
【0032】
図5は、押鍵に伴うハンマー5の回動位置を示し、図6は、ハンマー5の回動に伴う第1および第2検出信号S1,S2のタイミングチャートを示している。まず、離鍵状態では、ハンマー5は、図5(a)に示す離鍵位置に位置しており、シャッタ6が第1および第2光センサ7,8の光路を開放することによって、第1および第2検出信号S1,S2は、ともにHレベルになっている(タイミングt1以前)。この離鍵状態から鍵4が押鍵され、ハンマー5が図5の反時計方向に回動すると、その途中で、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7の光路に達したときに、その光路がシャッタ6で遮断されることによって、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに立ち下がる(t1)。ハンマー5の回動が進むと、シャッタ6の後縁6dが第2光センサ8の光路に達したときに(図5(b))、第2検出信号S2がHレベルからLレベルに立ち下がる(t2)。さらにハンマー5の回動が進むと、シャッタ6の前縁6eが第1光センサ7を通過することにより(図5(c))、その光路が開放されることによって、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに立ち上がる(t3)。ハンマー5の回動がさらに進み、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接する付近で、図3に2点鎖線で示すように、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過することにより(図5(d))、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに立ち上がる(t4)。
【0033】
その後、ハンマー5がさらに回動したときに、ハンマーシャンク5bがストッパ32に当接することによって、ハンマー5が図5の時計方向に復帰回動し始め(図5(e))、その復帰回動の途中で、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8の光路に達したときに、その光路が遮断されることによって、第2検出信号S2がHレベルからLレベルに立ち下がる(t5)。復帰回動が進み、キャッチャ5eがバックチェック17に当接し、ハンマー5が停止する付近で、シャッタ6の前縁6eが第1光センサ7の光路に達することにより(図5(f))、その光路が遮断され、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに立ち下がる(t6)。さらに復帰回動が進むと、シャッタ6の後縁6dが第2光センサ8を通過することにより、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに立ち上がり(t7)、復帰回動がさらに進むと、図3に実線で示すように、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過することにより(図5(g))、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに立ち上がる(t8)。その後、ハンマー5は、離鍵位置に復帰する(図5(h))。
【0034】
楽音発生装置10は、消音演奏モード時に楽音を生成するものであり、図7に示すように、センサスキャン回路22、CPU23、ROM24、RAM25、音源回路26、波形メモリ27、DSP28、D/A変換器29、パワーアンプ30およびスピーカ31などで構成されている。センサスキャン回路22は、第1および第2光センサ7,8から出力された第1および第2検出信号S1,S2に基づいて、鍵4のオン/オフ情報、およびオンまたはオフされた鍵4を特定するキーナンバ情報を検出するとともに、これらのオン/オフ情報およびキーナンバ情報を、第1および第2検出信号S1,S2とともに、鍵4の押鍵情報データとしてCPU23に出力する。
【0035】
ROM24は、CPU23で実行される制御プログラムの他、音量などを制御するための固定データなどを記憶している。また、RAM25は、消音演奏モード時の動作状態を表すステータス情報などを一時的に記憶するとともに、CPU23の作業領域としても使用される。
【0036】
音源回路26は、CPU23からの制御信号に従って、音源波形データおよびエンベロープデータを波形メモリ27から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号MSを生成する。DSP28は、音源回路26によって生成された楽音信号MSに所定の音響効果を付加する。D/A変換器29は、DSP28によって音響効果が付加された楽音信号MSを、デジタル信号からアナログ信号に変換する。パワーアンプ30は、変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅し、スピーカ31は、増幅されたアナログ信号を再生し、楽音として放音する。
【0037】
CPU23は、本実施形態において、発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および発音禁止手段を構成するものであり、消音演奏モード時に、楽音発生装置10の動作を制御する。CPU23は、第1および第2光センサ7,8の第1および第2検出信号S1,S2に応じて、発音タイミングおよび止音タイミングを設定するとともに、ハンマー5の回動速度Vに応じて音量を制御するためのベロシティを決定するなどの発音制御処理を実行する。
【0038】
図8は、この発音制御処理のメインフローチャートである。この処理は、88鍵すべての鍵4について順次、実行される。本処理では、まずステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、鍵4のキーナンバn(n=1〜88)を値1に初期化する。次に、今回のキーナンバnに対する発音タイミングおよび止音タイミングなどを含む後述するタッチ検出処理を行う(ステップ2)。
【0039】
次に、キーナンバnをインクリメントする(ステップ3)とともに、インクリメントしたキーナンバnが値88よりも大きいか否かを判別する(ステップ4)。この判別結果がNOのときには、前記ステップ2に戻り、ステップ2以降の処理を繰り返し実行する。一方、ステップ4の判別結果がYESのとき、すなわち88鍵すべてについて上記の処理が終了したときには、本処理を終了する。
【0040】
図9は、前記ステップ2のタッチ検出処理を示すフローチャートである。本処理では、まずステップ11において、第1光センサ7の第1検出信号S1がHレベルであり、かつ第2光センサ8の第2検出信号S2がHレベルであるか否かを判別する。
【0041】
この判別結果がYESのとき、すなわち、第1および第2光センサ7,8の光路がいずれも開放されているときには、カウンタ(図示せず)の値CNTが最大値CMAXと等しいか否かを判別する(ステップ12)。
【0042】
このカウンタ値CNTは、図10の処理によって算出される。本処理では、まずステップ21において、前回と今回の間で、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したか否かを判別する。この判別結果がYESで、シャッタ6が第1光センサ7の光路を開放した直後のタイミングのときには、カウンタ値CNTを最大値CMAXにセットし(ステップ22)、本処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ21の判別結果がNOのときには、第1検出信号S1がHレベルであり、かつ第2検出信号S2がLレベルであるか否かを判別する(ステップ23)。この判別結果がYESで、第1光センサ7の光路が開放され、かつ第2光センサ8の光路が遮断されているときには、カウンタ値CNTをデクリメントし(ステップ24)、本処理を終了する。一方、ステップ23の判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0044】
以上のようにして算出したカウンタ値CNTは、図11にも示すように、押鍵時にシャッタ6の前縁6eが、第1光センサ7を通過したときに(t3)、最大値CMAXにセットされ、第2光センサ8を通過するまで(t4)、デクリメントされる。最大値CMAXとt4におけるカウンタ値CNTとの差(=ΔCNT)は、ハンマー5の回動速度Vに反比例する。その後、カウンタ値CNTは、その値が保持され、ハンマー5が復帰回動し、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したときに(t8)、最大値CMAXにセットされる。その後、ステップ23の判別結果がNOになることで、カウンタ値CNTは、デクリメントされず、最大値CMAXに維持される。
【0045】
図9に戻り、前記ステップ12の判別結果がNOで、カウンタ値CNTが最大値CMAXと等しくないとき、すなわち、押鍵によるハンマー5の回動に伴い、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した直後のタイミング(図5(d),t4)のときには、楽音を発音すべき発音タイミングであると判定する。次に、再発音禁止フラグF_MSFが「0」であるか否かを判別する(ステップ13)。この再発音禁止フラグF_MSFは、電源(図示せず)をONしたときに「0」に初期化されるものである。このため、ステップ13の判別結果がYESになり、その場合には、ベロシティを決定する(ステップ14)。
【0046】
このベロシティは、図12の処理によって決定される。本処理では、まずステップ31において、第1および第2光センサ7,8間の回動ストロークSTを、図10の処理で算出されたカウンタ値の差ΔCNTで除算するとともに、除算した値に所定の係数Kを乗算することによって、ハンマー5の回動速度Vを算出する。そして、算出された回動速度Vに基づいて、ベロシティを決定し(ステップ32)、本処理を終了する。
【0047】
図9に戻り、前記ステップ14に続くステップ15では、発音実行フラグF_MSTRを「1」にセットする。このように、発音実行フラグF_MSTRが「1」にセットされると、発音を開始する制御信号が音源回路26に出力されることによって、決定したベロシティなどに基づいて、発音が開始される。また、楽音の再発音を禁止するために、再発音禁止フラグF_MSFを「1」にセットし、本処理を終了する。
【0048】
このステップ15が実行されることにより、前記ステップ13の判別結果がNOになり、その場合には、本処理を終了する。
【0049】
一方、前記ステップ11の判別結果がNOで、第1および第2検出信号S1,S2の少なくとも一方がLレベルのときには、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルであるか否かを判別する(ステップ16)。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。一方、ステップ16の判別結果がYESで、第1および第2光センサ7,8の光路がいずれも遮断されているとき(図5(f))には、再発音の禁止を解除するために、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ17)、本処理を終了する。
【0050】
前記ステップ12の判別結果がYESのとき、すなわち、ハンマー5の復帰回動に伴い、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過した直後のタイミング(図5(g),t8)のときには、楽音を止音すべき止音タイミングであると判定する。次に、発音実行フラグF_MSTRが「1」であるか否かを判別する(ステップ18)。この判別結果がYESで、発音中のときには、発音実行フラグF_MSTRを「0」にリセットする。このように、発音実行フラグF_MSTRが「0」にリセットされると、発音を停止する制御信号が音源回路26に出力されることによって、発音が停止される。また、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ19)、本処理を終了する。一方、ステップ18の判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、シャッタ6の前端部に、切欠き6cが形成されているので、ハンマー5が復帰回動し、キャッチャ5eがバックチェック17に当接する際、切欠き6cによって、シャッタ6がバックチェック17に接触するのを回避することができる。このため、シャッタ6がバックチェック17に接触することによるハンマー5のリバウンドと、それに起因する誤った発音を防止できるので、発音タイミングを適切に設定することができる。また、バックチェック17へのシャッタ6の接触を回避することによって、それによる振動の発生を防止でき、その結果、タッチ感を良好に維持することができる。
【0052】
また、鍵4の押鍵に伴うハンマー5の回動時には、シャッタ6の前縁6eを利用して、発音タイミングを設定するとともに、ハンマー5の復帰回動時には、後縁6dを利用して、止音タイミングを設定する。このため、従来の発音制御装置のようなシャッタ窓をシャッタに形成する必要がないので、その分、シャッタ6の形状を単純化することができる。また、シャッタ窓の省略によって、従来と異なり、離鍵状態において、第1光センサ7の光路を閉鎖し、かつ第2光センサ8の光路を開放するように、シャッタ6を取り付ける必要がないので、その組み付けを容易に行うことができる。
【0053】
また、カウンタ値CNTは、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したときに、最大値CMAXにセットされ、シャッタ6の前縁6eが、第1光センサ7を通過した後、第2光センサ8を通過するまでの間に限り、デクリメントされる。このため、第1および第2検出信号S1,S2がともにHレベルになり、かつそのときのカウンタ値CNTが最大値CMAXと等しくないとき(ステップ11:YES,ステップ12:NO)には、ハンマー5が後方に回動し、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過したとして、そのタイミングを発音タイミングとして設定する。また、第1および第2検出信号S1,S2がともにHレベルになり、かつそのときのカウンタ値CNTが最大値CMAXと等しいとき(ステップ11,12:YES)には、ハンマー5が前方に復帰回動し、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したとして、そのタイミングを止音タイミングとして設定する。以上のように、カウンタ値CNTと最大値CMAXを比較することによって、第1および第2光センサ7,8を、シャッタ6の前縁6eまたは後縁6dのいずれが通過したかを正しく識別でき、発音タイミングおよび止音タイミングを適切に設定することができる。
【0054】
さらに、発音タイミングを設定した後には、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルになり、再発音禁止フラグF_MSFが「0」にリセットされるまでの間、新たな発音タイミングの設定を禁止する(ステップ13,16,17)。このため、ハンマー5の復帰回動の途中で、ハンマー5が反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、シャッタ6の前縁6eが第1および第2光センサ7,8を通過し、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもLレベルにならない限り、新たな発音タイミングが設定されることはないので、それに起因する誤った発音を防止することができる。例えば、ハンマー5の復帰回動の途中で、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した後、キャッチャ5eがバックチェック17に勢いよく当接することで、ハンマー5がリバウンドし、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過することで、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化した場合にも、発音タイミングの設定を禁止することができる。
【0055】
また、バックチェックスキン17cの経時的な摩耗などによって、キャッチャ5eがバックチェック17に当接する位置がずれ、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8の光路上に留まり、第2検出信号S2がチャタリングを起こすことがある。このような場合でも、上述したように、第1および第2検出信号S1,S2がすべてLレベルにならない限り、新たな発音タイミングが設定されないので、誤った発音を防止することができる。さらに、第1および第2検出信号S1,S2がすべてLレベルになれば、新たな発音タイミングの設定が許容されるので、連打性能を確保することができる。
【0056】
図13は、本発明の第2実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。本処理では、まずステップ41において、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルに維持され、かつ第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化したか否かを判別する。この判別は、第1実施形態のステップ11および12に相当する。この判別結果がYESのときには、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過した直後のタイミングであると判定する。その後のステップ42〜44の実行内容は、第1実施形態のステップ13〜15と同じである。すなわち、再発音禁止フラグF_MSFが「0」であるか否かを判別し(ステップ42)、その判別結果がYESのときには、第1実施形態と同様、図10の処理によって算出されるカウンタ値CNTを用いて、ベロシティを決定する(ステップ43)とともに、発音実行フラグF_MSTRおよび再発音禁止フラグF_MSFを「1」にセットし(ステップ44)、本処理を終了する。このステップ44の実行により、ステップ42の判別結果がNOになり、その場合には、本処理を終了する。
【0057】
一方、前記ステップ41の判別結果がNOのときには、前回と今回の間で、第1検出信号がLレベルからHレベルに変化し、かつ第2検出信号S2がHレベルに維持されているか否かを判別する(ステップ45)。この判別は、第1実施形態のステップ18に相当する。
【0058】
この判別結果がNOのときには、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルからLレベルに変化し、かつ第2検出信号S2がLレベルに維持されているか否かを判別する(ステップ47)。この判別は、第1実施形態のステップ16に相当する。この判別結果がNOのときには、本処理を終了する。
【0059】
一方、このステップ47の判別結果がYESで、ハンマー5の復帰回動によって、第2光センサ8の光路の遮断に加えて、第1光センサ7の光路が遮断された直後のとき(図5(f))には、第1実施形態と同様、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ48)、本処理を終了する。
【0060】
前記ステップ45の判別結果がYESのときには、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したタイミングであると判定する。次に、第1実施形態のステップ19と同様、発音実行フラグF_MSTRおよび再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットし(ステップ46)、本処理を終了する。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、前回と今回の間で、第1検出信号S1がHレベルに維持された状態で、第2検出信号S2がLレベルからHレベルに変化したときに(ステップ41:YES)、シャッタ6の前縁6eが第2光センサ8を通過したとして、そのタイミングを発音タイミングとして設定する。また、第2検出信号S2がHレベルに維持された状態で、第1検出信号S1がLレベルからHレベルに変化したときに(ステップ45:YES)、シャッタ6の後縁6dが第1光センサ7を通過したとして、そのタイミングを止音タイミングとして設定する。以上のように、本実施形態では、カウンタ値CNTを用いずに、第1および第2検出信号S1,S2がいずれもHレベルになったときに、第1および第2検出信号S1,S2のどちらかが変化したかによって、シャッタ6の前縁6eまたは後縁6dのどちらが通過したかを識別することができる。したがって、第1実施形態と同様、発音タイミングおよび止音タイミングを適切に設定することができる。
【0062】
また、シャッタ6が第2光センサ8を遮断した状態で、第1光センサ7を遮断したときに(ステップ47:YES)、再発音禁止フラグF_MSFを「0」にリセットするので、第1実施形態と同様、ハンマー5の復帰回動の途中で、ハンマー5が反対方向に回動した場合や、途中の位置に留まっている場合でも、それに起因する誤った発音を防止することができる。
【0063】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、シャッタ6の回動経路に、2つの光センサを設けているが、それらの数は、これに限定されず、さらに増やしてもよい。
【0064】
また、実施形態では、光センサとして、発光ダイオードおよびフォトトランジスタからなるフォトインタラプタを用いているが、他のタイプの適当な光センサを用いてもよく、例えば、発光部をレーザダイオードなどで構成し、受光部をフォトダイオードなどで構成してもよい。さらに、実施形態は、発光ダイオードやフォトトランジスタをケースに直接、設けた例であるが、ケースの発光側および受光側に光ファイバを互いに対向するようにそれぞれ設けるとともに、それらの光ファイバの延長上に発光素子および受光素子をそれぞれ設けてもよい。また、実施形態では、発音制御処理を、CPU23によって行っているが、これに代えて、センサスキャン回路22で行ってもよい。
【0065】
さらに、実施形態は、本発明をアップライト型の消音ピアノに適用した例であるが、本発明はこれに限らず、グランド型の消音ピアノにも適用でき、さらには、自動演奏ピアノや電子ピアノなどの他のタイプの鍵盤楽器にも適用することが可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態による発音制御装置およびこれを適用した消音ピアノの概略構成を示す図である。
【図2】シャッタの(a)側面図および(b)正面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】第1および第2光センサの回路図である。
【図5】押鍵に伴うハンマーの回動位置を示す図である。
【図6】ハンマーの回動時における第1および第2検出信号のタイミングチャートを示している。
【図7】楽音発生装置の一部を示す図である。
【図8】図5のCPUで実行される発音制御処理を示すメインフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【図10】カウンタ値の算出処理を示すフローチャートである。
【図11】ハンマーの回動位置に対するカウンタ値の関係の一例を示す図である。
【図12】ベロシティ決定処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態によるタッチ検出処理を示すフローチャートである。
【図14】従来の発音制御装置の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 発音制御装置
2 消音ピアノ(鍵盤楽器)
4 鍵
5 ハンマー
6 シャッタ
6c 切欠き
6d 後縁(縁部)
6e 前縁(縁部)
7 第1光センサ
7a 発光ダイオード(発光部)
7b フォトトランジスタ(受光部)
8 第2光センサ
8a 発光ダイオード(発光部)
8b フォトトランジスタ(受光部)
23 CPU(発音タイミング設定手段、止音タイミング設定手段および発音禁止手段)
S1 第1検出信号
S2 第2検出信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動自在の鍵と、
当該鍵の回動に連動して回動するハンマーと、
このハンマーに一体に設けられ、当該ハンマーの回動経路を含む平面に沿って延び、前記鍵の押鍵に伴う前記ハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成された板状のシャッタと、
当該シャッタの前記回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部と、前記回動経路の他方の側に配置され、前記発光部からの光を受光する受光部とを有し、当該受光部の受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、
前記ハンマーが回動する際、前記シャッタによる前記光センサの前記発光部からの光の光路の開閉に応じた前記光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、
を備えることを特徴とする鍵盤楽器の発音制御装置。
【請求項2】
前記光センサの検出信号に基づいて、楽音を止音すべき止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段をさらに備え、
前記発音タイミング設定手段は、前記シャッタの前記切欠き側の縁部が前記光センサを通過することにより、前記検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、前記発音タイミングを設定し、
前記止音タイミング設定手段は、前記シャッタの前記切欠きと反対側の縁部が前記光センサを通過することにより、前記検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の鍵盤楽器の発音制御装置。
【請求項3】
前記光センサは、前記回動経路に沿って配置された複数の光センサで構成されており、
前記発音タイミングを設定した後、前記複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、前記発音タイミング設定手段による新たな発音タイミングの設定を禁止する発音禁止手段をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の鍵盤楽器の発音制御装置。
【請求項1】
回動自在の鍵と、
当該鍵の回動に連動して回動するハンマーと、
このハンマーに一体に設けられ、当該ハンマーの回動経路を含む平面に沿って延び、前記鍵の押鍵に伴う前記ハンマーの回動方向と反対側の端部に切欠きが形成された板状のシャッタと、
当該シャッタの前記回動経路の一方の側に配置され、光を出射する発光部と、前記回動経路の他方の側に配置され、前記発光部からの光を受光する受光部とを有し、当該受光部の受光状態に応じた検出信号を出力する光センサと、
前記ハンマーが回動する際、前記シャッタによる前記光センサの前記発光部からの光の光路の開閉に応じた前記光センサの検出信号に基づいて、楽音を発音すべき発音タイミングを設定する発音タイミング設定手段と、
を備えることを特徴とする鍵盤楽器の発音制御装置。
【請求項2】
前記光センサの検出信号に基づいて、楽音を止音すべき止音タイミングを設定する止音タイミング設定手段をさらに備え、
前記発音タイミング設定手段は、前記シャッタの前記切欠き側の縁部が前記光センサを通過することにより、前記検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、前記発音タイミングを設定し、
前記止音タイミング設定手段は、前記シャッタの前記切欠きと反対側の縁部が前記光センサを通過することにより、前記検出信号が閉状態から開状態に変化したタイミングに基づいて、前記止音タイミングを設定することを特徴とする、請求項1に記載の鍵盤楽器の発音制御装置。
【請求項3】
前記光センサは、前記回動経路に沿って配置された複数の光センサで構成されており、
前記発音タイミングを設定した後、前記複数の光センサの検出信号がいずれも閉状態になるまでの間、前記発音タイミング設定手段による新たな発音タイミングの設定を禁止する発音禁止手段をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の鍵盤楽器の発音制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−26577(P2008−26577A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198800(P2006−198800)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】
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