説明

鍵盤楽器

【課題】 幼い子供が怪我をする危険性が少なく、楽器全体の重量を軽くて、幼い子供でも容易に持ち運ぶことができる鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】 複数の鍵1が音階順に配列された鍵盤楽器において、複数の鍵1は、それぞれ軟質の樹脂からなり、その各内部にそれぞれ空洞部7が鍵1の前部から後部に亘って連続して形成され、押鍵操作された際にその押鍵箇所が弾力的に潰れ変形する構成である。従って、乳幼児などの幼い子供が鍵1を押鍵操作した際に、その押鍵操作された箇所を弾力的に潰れ変形させることができるので、幼い子供が鍵1の間に指を挟んだり、鍵1の角にぶつけたりしても、怪我をする危険性がないばかりか、鍵1の重量を軽くして、楽器全体の重量を軽くし、幼い子供でも容易に持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、音階順に配列された複数の鍵と、この複数の鍵における各後部を支持する鍵盤フレームとを備え、この鍵盤フレーム上に複数の鍵を、音階順に配列させて支持した状態で、楽器ケース内に組み込むように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−76720号公報
【0004】
この種の鍵盤楽器は、複数の鍵の各後端部に肉厚の薄い屈曲部がそれぞれ形成され、この屈曲部が鍵の配列方向に連続する連結部にそれぞれ連結形成され、この連結部によって複数の鍵が音階順に配置され、この状態で連結部が鍵盤フレームに支持されることにより、各鍵がそれぞれ屈曲部の撓み変形によって上下方向に回転するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の鍵盤楽器では、鍵を押鍵操作して屈曲部を撓ませることにより、鍵が上下方向に回転する構成であるため、鍵を押鍵操作した際に鍵が変形しないように、鍵をスチロール樹脂などの硬質の合成樹脂によって形成している。このため、このような鍵盤楽器を乳幼児などの幼い子供が押鍵操作した際に、鍵の間に指を挟んだり、鍵の角にぶつけたりして、怪我をする危険性があるほか、鍵の重量が重いので、楽器全体の重量が重くなり、持ち運びが不便であるなどの問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、幼い子供が怪我をする危険性が少なく、楽器全体の重量を軽くて、幼い子供でも容易に持ち運ぶことができる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、複数の鍵が音階順に配列された鍵盤楽器において、前記複数の鍵は、それぞれ軟質の樹脂からなり、その各内部にそれぞれ空洞部が前記鍵の前部から後部に亘って連続して形成され、押鍵操作された際にその押鍵箇所が弾力的に潰れ変形することを特徴とする鍵盤楽器である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記鍵が、前記空洞部内における上下部に一対の電極を、互いに接離可能な状態で前記鍵の前部から後部に亘って連続させて設けた構成であることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記複数の鍵の配列方向に連続し、且つ前記複数の鍵にそれぞれ対応する複数の基板挿入部が設けられた配線基板を備えており、前記複数の鍵における前記各空洞部が位置する各後端部には、前記配線基板の前記基板挿入部がそれぞれ挿入する開放口がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記配線基板に、前記複数の基板挿入部が前記複数の鍵の前記各開放口にそれぞれ挿入した際に、前記鍵の前記空洞部内に設けられた前記一対の電極にそれぞれ接続される一対の接続配線が、前記複数の鍵に対応して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤楽器である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記鍵が、軟質の樹脂からなるシートを膨出形成して前記空洞部を成形した構成であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記鍵が、軟質の合成樹脂を射出成形して前記空洞部を成形した構成であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、内部に空洞部が鍵の前部から後部に亘って連続して形成された鍵を乳幼児などの幼い子供が押鍵操作した際に、その押鍵操作された箇所を弾力的に潰れ変形させることができるので、幼い子供が鍵の間に指を挟んだり、鍵の角にぶつけたりしても、怪我をする危険性がないばかりか、鍵の重量を軽くして、楽器全体の重量を軽くすることができ、これにより幼い子供でも容易に持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1を示した斜視図である。
【図2】図1に示された鍵盤楽器のA−A矢視における拡大断面図である。
【図3】図2に示された鍵盤楽器のB−B矢視における鍵の要部を示した拡大断面図である。
【図4】図3に示された鍵を上方から押圧操作して弾力的に潰れ変形させた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図5】図2に示された鍵盤楽器において、鍵の後部を楽器ケースの下部ケースに設けられた鍵支持部上に固定した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図6】図5に示された鍵と配線基板との取付状態を示した要部の拡大斜視図である。
【図7】この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2を示した斜視図である。
【図8】図7に示された鍵盤楽器のC−C矢視における拡大断面図である。
【図9】図8に示された鍵盤楽器のD−D矢視における鍵の要部を示した拡大断面図である。
【図10】図9に示された鍵を上方から押圧操作して弾力的に潰れ変形させた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図11】図8に示された鍵盤楽器において、鍵の後部を楽器ケースの下部ケースに設けられた鍵支持部上に固定した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図12】この発明を適用した鍵における空洞部内の上下部に設けられた各電極の変形例を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図6を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態1について説明する。
この鍵盤楽器は、図1に示すように、音階順に配列された複数の鍵1と、この複数の鍵1の各後端部を保持する楽器ケース2とを備えている。この場合、楽器ケース2は、上部ケース3と下部ケース4とを備え、これらの内部に複数の鍵1の各後端部を固定した状態で、複数の鍵1を外部に露出させるように構成されている。
【0016】
複数の鍵1は、図1に示すように、複数の白鍵5と複数の黒鍵6とを有し、これら白鍵5および黒鍵6が音階順に配列されている。この複数の鍵1における白鍵5と黒鍵6とは、その外形の形状が異なる以外は、両者とも同じ構造になっている。このため、以下では、白鍵5について説明する。
【0017】
白鍵5は、図2〜図4に示すように、その内部に空洞部7が形成され、押鍵操作された際にその押鍵箇所が弾力的に潰れ変形するように構成されている。すなわち、この白鍵5は、シリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の合成樹脂からなる樹脂シートをブロー成形によって風船を膨らませるように膨出形成することにより、内部に空洞部7が鍵1の前部(図2では左側部)から後部(図2では右側部)に亘って連続して形成されている。
【0018】
この場合、白鍵5は、図2に示すように、楽器ケース2から露出する鍵本体8と、楽器ケース2内に固定される鍵固定部9とを備えている。鍵本体8は、通常の鍵と同様、細長い角筒形状に形成され、その内部に空洞部7が鍵本体8の前部から後部に亘って連続して形成された構成になっている。
【0019】
また、この鍵本体8は、図2および図3に示すように、その底部における鍵1の配列方向の中間部分に底上げ部8aが盛上って形成され、この底上げ部8aの上面が空洞部7内の上面に接近するように構成されている。これにより、白鍵5は、図4に示すように、鍵本体8が上方から押鍵操作された際に、その押鍵箇所が弾力的に潰れ変形するように構成されている。
【0020】
鍵固定部9は、図2および図5に示すように、鍵本体8の後端部(図2では右端部)における上部に形成されている。この鍵固定部9の内部には、鍵本体8に連続する空洞部7が鍵固定部9の前部から後部に亘って連続して形成されている。この場合、鍵固定部9の後端部には、開放口9aが後方に開放された状態で形成されている。
【0021】
また、この白鍵5の空洞部7内には、図2〜図4に示すように、第1、第2の各電極10、11が互いに接離可能な状態で設けられている。すなわち、第1の電極10は、白鍵5の空洞部7内における上面に、鍵本体8の前端部(図2では左端部)から鍵固定部9の後端部(図2では右端部)に亘って連続して設けられている。第2の電極11は、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面に、鍵本体8の前端部から鍵固定部9の後端部に亘って連続して設けられている。
【0022】
この場合、白鍵5の鍵固定部9における後端部の開放口9a内には、図2および図5に示すように、配線基板12の基板挿入部12bが挿入されている。すなわち、この配線基板12は、図6に示すように、鍵1の配列方向に沿って連続する連続基板部12aが白鍵5の鍵固定部9の後方に位置し、この連続基板部12aにおける各鍵1に対応する箇所に基板挿入部12bがそれぞれ突出して形成された構成になっている。
【0023】
また、この配線基板12の上面には、図6に示すように、鍵1ごとに第1、第2の各接続配線13、14が各鍵1にそれぞれ対応して設けられている。第1の接続配線13は、連続基板部12aの上面に設けられたコネクタ部15から、各基板挿入部12bの上面に設けられた第1の電極端子部13aに亘り、連続して形成されている。
【0024】
また、第2の接続配線14は、図6に示すように、連続基板部12aの上面に設けられたコネクタ部15から、各基板挿入部12bに上下に貫通して設けられた各スルーホール部16に連続し、この各スルーホール部16を介して各基板挿入部12bの下面に設けられた第2の電極端子部14aに亘って連続して形成されている。この場合、コネクタ部15は、フレキシブルな接続配線基板17によって後述する回路基板18と電気的に接続されている。
【0025】
これにより、白鍵5は、図2、図5および図6に示すように、その後部に位置する鍵固定部9の開放口9aから鍵固定部9の空洞部7内に配線基板12の基板挿入部12bが挿入されると、白鍵5の空洞部7内における上面に設けられた第1の電極10が、配線基板12に設けられた第1の接続配線13における第1の電極端子部13aと電気的に接続されるように構成されている。
【0026】
また、この白鍵5は、図5および図6に示すように、その後部に位置する鍵固定部9の開放口9aから鍵固定部9の空洞部7内に配線基板12の基板挿入部12bが挿入されると、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面に設けられた第2の電極11が、配線基板12に設けられた第2の接続配線14における第2の電極端子部14aと電気的に接続されるように構成されている。
【0027】
これにより、この白鍵5は、図6に示すように、その空洞部7内に設けられた第1、第2の各電極10、11が、配線基板12に設けられた第1、第2の各接続配線13、14に接続され、この第1、第2の接続配線13、14がフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18と電気的に接続されるように構成されている。
【0028】
このため、白鍵5は、図2および図3に示す状態で、鍵本体8が上方から押鍵操作され、その押鍵箇所が弾力的に潰れ変形した際に、図4に示すように、この潰れ変形した箇所の第1の電極10が第2の電極11に接触して、両者が導通することにより、回路基板18にスイッチ信号を与えるように構成されている。
【0029】
さらに、この白鍵5は、図2および図5に示すように、その後部に位置する鍵固定部9が楽器ケース2の下部ケース4内に設けられた鍵支持部20上にビス21によって固定されている。すなわち、この鍵支持部20は、下部ケース4の底部上に起立した状態で、鍵1の配列方向(図2では紙面の表裏面方向)に沿って設けられている。
【0030】
また、この鍵支持部20は、図5および図6に示すように、配線基板12の基板挿入部12bが挿入された白鍵5の鍵固定部9が、鍵支持部20の上面に配置され、この状態で白鍵5の鍵固定部9がビス21によって、配線基板12に設けられた第1、第2の各接続配線13、14を避けた状態で、配線基板12と共に固定されるように構成されている。
【0031】
ところで、黒鍵6は、図1および図2に示すように、その長さが白鍵5よりも短く、その高さが白鍵5よりも高く形成されているが、白鍵5と同様に、楽器ケース2の下部ケース4内に設けられた鍵支持部20上にビス21によって固定されるように構成されている。この場合にも、図示しないが、黒鍵6は、その内部に空洞部が形成され、この空洞部内に第1、第2の各電極が設けられ、この第1、第2の各電極が配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18と電気的に接続されるように構成されている。
【0032】
一方、楽器ケース2は、図2に示すように、上部ケース3と下部ケース4とを備え、下部ケース4の底部上に設けられた鍵支持部20上に各鍵1が固定され、この状態で上部ケース3と下部ケース4とによって各鍵1の後部、つまり白鍵5の鍵固定部9およびこれに対応する黒鍵6の鍵固定部(図示せず)を覆い隠すように構成されている。
【0033】
この場合、下部ケース4は、スチロール樹脂などの合成樹脂からなり、図2に示すように、その底部に下側ボス部4aが起立して設けられた構成になっている。また、上部ケース3も、スチロール樹脂などの合成樹脂からなり、その内部の下面に上側ボス部3aが下部ケース4の下側ボス部4aに対応した状態で垂下されて設けられた構成になっている。この場合、上部ケース3および下部ケース4は、外部に露出する全ての角部に円弧状の面取加工が施されている。
【0034】
これにより、楽器ケース2は、図2に示すように、下部ケース4上に上部ケース3を重ね合わせて、下部ケース4の下側ボス部4aと上部ケース3の上側ボス部3aとを対応させ、この状態でビス22を下側ボス部4aから上側ボス部3aに螺入させて締め付けることにより、上部ケース3と下部ケース4とが取り付けられるように構成されている。
【0035】
この場合、上部ケース3の内部には、図2に示すように、回路基板18が下側ボス部4aと上側ボス部3aとに挟まれた状態で取り付けられている。この回路基板18は、楽器全体を電気的に制御するための電子回路が搭載されたものであり、上述したフレキシブルな接続配線基板17が電気的に接続されている。また、この回路基板18の上面には、各種のスイッチ部23および複数の発光素子24が設けられている。
【0036】
スイッチ部23は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、上部ケース3の上方に突出した状態で回路基板18上に設けられている。複数の発光素子24は、LED(発光ダイオード)からなり、複数の鍵1にそれぞれ対応した状態で、回路基板18上に設けられている。この発光素子24は、演奏に応じて順次発光し、この発光した光によって押鍵すべき鍵1に対応する箇所の上部ケース3を光らせることにより、演奏に応じて順次押鍵すべき鍵1を指示するように構成されている。
【0037】
また、上部ケース3には、図1に示すように、スピーカ部25および表示部26が設けられている。スピーカ部25は、楽音を発音するものであり、上部ケース3内における鍵1の配列方向(図1では左右方向)の両側にそれぞれ設けられ、この状態で回路基板18と電気的に接続されている。表示部26は、液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示パネルからなり、楽音情報を電気光学的に表示するように構成されている。この表示部26は、上部ケース3のほぼ中央部に配置され、この状態で回路基板18と電気的に接続されている。
【0038】
次に、このような鍵盤楽器の鍵1を製作する場合について説明する。
まず、鍵1のうち、白鍵5を製作する場合には、ブロー成形によって製作する。すなわち、ブロー成形の金型内にシリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の樹脂シートを順次供給しながら空気を吹き込んで、樹脂シートに空気圧を加えることにより、樹脂シートを風船のように膨らませて金型の内面に押し付ける。この場合、樹脂シートを金型内に供給する際には、樹脂シートの内面に、第1、第2の各電極10、11を形成するための導電材料を同時に配置する。
【0039】
この後、金型を離型することにより、内部に空洞部7が鍵1の前部から後部に亘って連続して形成された白鍵5が得られる。この白鍵5は、図2および図3に示すように、空洞部7内に底上げ部8aが盛上って形成されるほか、樹脂シートおよび空気を金型内に供給するための金型の供給口が、鍵固定部9の後端部の開放口9aとして形成される。また、白鍵5の空洞部7内における上面と底上げ部8aの上面とには、それぞれ第1、第2の各電極10、11が形成される。
【0040】
この場合、白鍵5の空洞部7内における上面には、図2および図3に示すように、第1の電極10が鍵本体8の前端部から鍵固定部9の後端部に亘って連続して設けられると共に、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面には、第2の電極11が第1の電極10に対して接離可能な状態で、鍵本体8の前端部から鍵固定部9の後端部に亘って連続して設けられる。
【0041】
なお、第1、第2の各電極10、11は、必ずしも樹脂シートをブロー成形する際に、これと同時に形成する必要はなく、成形後に冶具を用いて鍵1の空洞部7内に貼り付けても良い。これにより、図2および図3に示すように、第1、第2の電極10、11が空洞部7内に互いに接離可能な状態で設けられた白鍵5が形成される。これと同様にして、黒鍵6もブロー成形によって形成され、この黒鍵6の空洞部(図示せず)内にも、白鍵5と同様、第1、第2の電極(図示せず)が互いに接離可能な状態で形成される。
【0042】
次に、このように形成された鍵1を楽器ケース2に組み付ける場合について説明する。
この場合には、まず、図5および図6に示すように、白鍵5の鍵固定部9における後端部の開放口9a内に、配線基板12の基板挿入部12bを後方(図5では右側)から挿入させる。
【0043】
これにより、白鍵5の空洞部7内における上面に設けられた第1の電極10が、配線基板12の第1の接続配線13における第1の電極端子部13aと電気的に接続されると共に、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面に設けられた第2の電極11が、配線基板12の第2の接続配線14おける第2の電極端子部14aと電気的に接続される。
【0044】
このようにして、配線基板12の各基板挿入部12bが、複数の白鍵5および複数の黒鍵6の各開放口9aにそれぞれ挿入されると、図1および図6に示すように、これら複数の鍵1が配線基板12に沿って音階順に配列される。この状態で、図2および図5に示すように、複数の鍵1を下部ケース4の鍵支持部20上に配置してビス21により固定する。
【0045】
このときには、図2および図5に示すように、配線基板12が取り付けられた白鍵5の鍵固定部9を下部ケース4の鍵支持部20上に配置して、ビス21により配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14を避けた状態で固定する。これと同様に、黒鍵6の鍵固定部も、下部ケース4の鍵支持部20上に配置してビス21により固定する。これにより、複数の鍵1が音階順に配列された状態で、一度に鍵支持部20上に固定される。
【0046】
この後、配線基板12のコネクタ部15をフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18と電気的に接続する。これにより、白鍵5の空洞部7内における上面に設けられた第1の電極10と、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面に設けられた第2の電極11とが、配線基板12およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18と電気的に接続される。これと同様に、黒鍵6の第1、第2の電極(図示せず)も、回路基板18と電気的に接続される。
【0047】
そして、上部ケース3を下部ケース4上に重ね合わせ、この状態で下部ケース4の下側ボス部4aと上部ケース3の上側ボス部3aとを対応させて、ビス22を下側ボス部4aから上側ボス部3aに螺入させて締め付けることにより、上部ケース3と下部ケース4とを取り付ける。これにより、図1に示すように、複数の鍵1が音階順に配列されて、各鍵1の各鍵固定部9が楽器ケース2内に固定された状態で、各鍵1の鍵本体8が楽器ケース2の外部に露出した鍵盤楽器が得られる。
【0048】
次に、このような鍵盤楽器を卓上や床などの載置面T上に配置して使用する場合について説明する。
この場合には、演奏に合わせて鍵1を押鍵操作すると、その押鍵操作された箇所の鍵1が弾力的に潰れ変形する。すなわち、鍵1はシリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の樹脂シートをブロー成形によって膨出成形した構成であるから、鍵1の内部に空洞部7が鍵1の前部から後部に亘って連続して形成されている。
【0049】
このため、楽器ケース2の外部に露出した鍵1の鍵本体8を上方から押圧操作すると、図4に示すように、その押圧操作された箇所の鍵本体8が弾力的に潰れ変形し、鍵1の空洞部7内に設けられた第1、第2の各電極10、11が互いに接触する。すなわち、鍵1は、その空洞部7内に底上げ部8aが底部から盛上って形成されているので、鍵1が押圧操作されて潰れ変形する際に、鍵1を強く押圧しなくても、白鍵5の空洞部7内における上面に設けられた第1の電極10が、白鍵5の空洞部7内における底上げ部8aの上面に設けられた第2の電極11に接触して、第1、第2の各電極10、11が導通する。
【0050】
これにより、配線基板12およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18にスイッチ信号が与えられ、スピーカ部25から楽音が発音される。また、潰れ変形した鍵1から指を離すと、図3に示すように、鍵1が元の形状に弾性復帰するので、鍵1の空洞部7内に設けられた第1、第2の電極10、11が互いに離れる。このため、回路基板18に与えられたスイッチ信号が途絶えて、スピーカ部25からの楽音の発音が停止される。
【0051】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵1が、その各内部にそれぞれ空洞部7を鍵1の前部から後部に亘って連続させて形成し、押鍵操作された際にその押鍵箇所を弾力的に潰れ変形させる構成であるから、乳幼児などの幼い子供が鍵1を押鍵操作した際に、その押鍵操作された箇所を弾力的に潰れ変形させることができる。
【0052】
このため、鍵1を押鍵操作した際に、幼い子供が鍵1の間に指を挟んだり、鍵1の角にぶつけたりしても、怪我をする危険性がないばかりか、鍵1の重量を軽くして、楽器全体の重量を軽くすることができ、これにより幼い子供でも容易に持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。
【0053】
この場合、鍵1は、空洞部7内における上下部に第1、第2の各電極10、11が、互いに接離可能な状態で設けられていることにより、鍵1を押鍵操作して弾力的に潰れ変形させた際に、第1、第2の各電極10、11を互いに接触させて導通させることができる。これにより、回路基板18にスイッチ信号を与えることができるので、押鍵操作された鍵1に対応する楽音を良好に発音させることができる。
【0054】
また、この鍵1は、その空洞部7内に底上げ部8aが底部から盛上って形成され、この底上げ部8aの上面に第2の電極11が、空洞部7内の上面に設けられた第1の電極10に接近した状態で設けられているので、鍵1が押圧操作されて潰れ変形する際に、鍵1を強く押圧して大きく潰れ変形させる必要はなく、軽い力で押圧だけでも、第1、第2の各電極10、11を互いに接触させて導通させることができる。
【0055】
また、この鍵盤楽器では、複数の鍵1の配列方向に連続し、且つ複数の鍵1にそれぞれ対応する複数の基板挿入部12bが設けられた配線基板12を備えており、複数の鍵1における各空洞部7が位置する各後端部には、配線基板12の基板挿入部12bがそれぞれ挿入する開放口9aがそれぞれ形成されていることにより、複数の鍵1の各開放口9a内に配線基板12の基板挿入部12bをそれぞれ挿入させだけで、複数の鍵1を配線基板12に沿って簡単に且つ容易に配列させることができる。
【0056】
このため、複数の鍵1を楽器ケース2に組み付ける際に、複数の鍵1を配線基板12に沿って音階順に配列させた状態で、複数の鍵1を配線基板12と共に鍵支持部20上に配置させ、この状態でビス21によって複数の鍵1を一度に鍵支持部20上に固定することができる。これにより、複数の鍵1を1つずつ楽器ケース2に組み付ける必要がないので、鍵1の組立作業を向上させることができ、これにより生産性を高めることができると共に、製作コストを下げることができる。
【0057】
また、この配線基板12には、複数の基板挿入部12bが複数の鍵1の各開放口9aにそれぞれ挿入した際に、鍵1の空洞部7内に設けられた第1、第2の各電極10、11にそれぞれ接続される第1、第2の各接続配線13、14が、複数の鍵1に対応して設けられているので、各鍵1の鍵固定部9に配線基板12の各基板挿入部12bを挿入するだけで、簡単に且つ容易に鍵1の空洞部7内に設けられた第1、第2の各電極10、11と配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14とを電気的に接続することができ、これにより配線作業の向上を図ることができる。
【0058】
この場合、第1の接続配線13は、連続基板部12aのコネクタ部15から各基板挿入部12bの第1の電極端子部13aに亘って連続して形成されており、第2の接続配線14は、連続基板部12aのコネクタ部15から各基板挿入部12bの下面に設けられた第2の電極端子部14aにスルーホール部16を介して連続して形成されているので、各鍵1の鍵固定部9に配線基板12の各基板挿入部12bを挿入すると、鍵1の第1の電極10と配線基板12の第1の接続配線13とを電気的に接続することができると共に、鍵1の第2の電極11と配線基板12の第2の接続配線14とを電気的に接続することができる。
【0059】
また、この配線基板12は、各鍵1に対応する第1、第2の各接続配線13、14がコネクタ部15に接続され、このコネクタ部15がフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18に接続されているので、これによっても配線作業が容易にできると共に、鍵1を押鍵操作して弾力的に潰れ変形させ、第1、第2の各電極10、11が互いに接触して導通した際に、その導通信号をスイッチ信号として回路基板18に確実に且つ良好に与えることができる。
【0060】
また、この鍵1は、軟質の樹脂からなる樹脂シートをブロー成形によって膨出形成して内部に空洞部7を形成した構成であるから、ブロー成形によって風船を膨らますように樹脂シートを膨出形成することにより、内部に空洞部7が形成された鍵1を簡単に且つ容易に成形することができると共に、鍵1の開放口9aをブロー成形時において樹脂シートおよび空気を金型内に供給するための金型の供給口として使用することができ、これにより効率良く鍵1を生産することができると共に、楽器全体の低価格化を図ることができる。
【0061】
この場合、鍵1は、ブロー成形によって風船を膨らますように樹脂シートを膨出形成することにより、鍵1の肉厚を薄く形成することができるので、鍵1を容易に潰れ変形させることができると共に、鍵1の内部に大きな空洞部7を形成することができる。このため、鍵1の重量を大幅に軽くすることができるので、楽器全体の重量を軽くすることができる。これにより、幼い子供でも手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。
【0062】
(実施形態2)
次に、図7〜図11を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の実施形態2について説明する。なお、図1〜図6に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この鍵盤楽器は、複数の鍵30と楽器ケース31とが実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0063】
複数の鍵30は、図7に示すように、複数の白鍵32と複数の黒鍵33とを有し、これら白鍵32および黒鍵33が音階順に配列されている。この複数の鍵30における白鍵32と黒鍵33とは、実施形態1と同様、その外形の形状が異なる以外は、両者とも同じ構造になっている。このため、以下では、白鍵32について説明する。
【0064】
白鍵32は、図8〜図10に示すように、その内部に空洞部34が白鍵32の前部(図8では左側部)から後部(図8では右側部)に亘って連続して形成され、押鍵操作された際にその押鍵箇所が弾力的に潰れ変形するように構成されている。すなわち、この白鍵32は、シリコーンゴムやエラストマーなどの軟質合成樹脂を射出成形によって形成することにより、内部に空洞部34が白鍵32の前部から後部に亘って連続して形成された構成になっている。
【0065】
この場合にも、白鍵32は、図8に示すように、楽器ケース31から露出する鍵本体35と、楽器ケース31内に固定される鍵固定部36とを備えている。鍵本体35は、通常の鍵と同様、細長い角筒形状に形成され、その内部に空洞部34が鍵本体35の前部から後部に亘って連続して形成された構成になっている。
【0066】
また、この鍵本体35は、その前端部(図8では左端部)に下側に突出する支持突起部35aが形成され、この支持突起部35aが後述する補助ケース37上に当接することにより、補助ケース7の上方に浮いた状態で支持されるように構成されている。これにより、白鍵32は、実施形態1と同様、鍵本体35が上方から押鍵操作された際に、その押鍵箇所が弾力的に潰れ変形するように構成されている。
【0067】
鍵固定部36は、図8に示すように、鍵本体35の後端部(図8では右端部)に形成されている。また、この鍵固定部36は、その内部に空洞部34が鍵本体35に連続して形成されている。さらに、鍵固定部36は、その後端部に開放口36aが、後方(図8では右側)に開放された状態で形成されている。
【0068】
また、この白鍵32の空洞部34内には、図8に示すように、第1、第2の各電極10、11が、互いに接離可能な状態で、白鍵32の前部から後部に亘って連続して設けられている。すなわち、第1の電極10は、実施形態1と同様、白鍵32の空洞部34内における上面に、鍵本体35の前端部(図8では左端部)から鍵固定部36の後端部(図8では右端部)に亘って連続して設けられている。第2の電極11は、白鍵32の空洞部34内における下面に、鍵本体35の前端部から鍵固定部36の後端部に亘って連続して設けられている。
【0069】
この場合にも、白鍵32の鍵固定部36における後端部の開放口36a内には、図8および図11に示すように、配線基板12の基板挿入部12bが挿入されている。この配線基板12は、実施形態1と同様、鍵30の配列方向に沿って連続する連続基板部12aが白鍵32の鍵固定部36の後方に位置し、この連続基板部12aにおける各鍵30に対応する箇所に基板挿入部12bがそれぞれ突出して形成された構成になっている。
【0070】
この配線基板12も、実施形態1と同様、第1、第2の各接続配線13、14およびコネクタ部15が設けられ、このコネクタ部15がフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18と電気的に接続されている。これにより、白鍵32は、図8および図11に示すように、その後部に位置する鍵固定部36の開放口36aから鍵固定部36の空洞部34内に配線基板12の基板挿入部12bが挿入された際に、白鍵32の空洞部34内における上面に設けられた第1の電極10が、配線基板12の第1の接続配線13における第1の電極端子部13aと電気的に接続されるように構成されている。
【0071】
また、この白鍵32は、図8および図11に示すように、鍵固定部36の開放口36aから鍵固定部36の空洞部34内に配線基板12の基板挿入部12bが挿入された際に、白鍵32の空洞部34内における下面に設けられた第2の電極11が、配線基板12の第2の接続配線14における第2の電極端子部14aと電気的に接続されるように構成されている。
【0072】
これにより、この白鍵32は、実施形態1と同様、その空洞部34内に設けられた第1、第2の各電極10、11が、配線基板12に設けられた第1、第2の各接続配線13、14に接続され、この第1、第2の接続配線13、14がフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18と電気的に接続されるように構成されている。
【0073】
このため、白鍵32は、図8および図9に示す状態で、鍵本体35が上方から押鍵操作され、その押鍵箇所が弾力的に潰れ変形した際に、図10に示すように、この潰れ変形した箇所の第1の電極10が第2の電極11に接触して、両者が導通することにより、回路基板18にスイッチ信号を与えるように構成されている。
【0074】
さらに、この白鍵32は、図8および図11に示すように、その後部に位置する鍵固定部36が楽器ケース31の下部ケース4内に設けられた鍵支持部20上にビス21によって固定されている。すなわち、この鍵支持部20も、実施形態1と同様、下部ケース4の底部上に起立した状態で、鍵30の配列方向(図8では紙面の表裏面方向)に沿って設けられている。
【0075】
また、この鍵支持部20は、図11に示すように、配線基板12の基板挿入部12bが挿入された白鍵32の鍵固定部36が、鍵支持部20の上面に配置され、この状態で白鍵32の鍵固定部36がビス21によって、配線基板12に設けられた第1、第2の各接続配線13、14を避けた状態で、配線基板12と共に固定されるように構成されている。
【0076】
ところで、黒鍵33は、図7および図8に示すように、その長さが白鍵32よりも短く、その高さが白鍵32よりも高く形成されているが、白鍵32と同様に、楽器ケース31の下部ケース4内に設けられた鍵支持部20上にビス21によって固定されるように構成されている。この場合にも、図示しないが、黒鍵33は、その内部に空洞部が形成され、この空洞部内に第1、第2の各電極が設けられ、この第1、第2の各電極が配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18と電気的に接続されるように構成されている。
【0077】
一方、楽器ケース31は、実施形態1と同様、上部ケース3と下部ケース4とを備えているほかに、図7に示すように、補助ケース37を備えている。この補助ケース37は、図7および図8に示すように、複数の鍵30の各鍵本体35の上面側を除いて、音階順に配列された鍵本体35の全体における下側、前端部側、両側部を覆うことにより、鍵30が下側から押されたり、鍵30がその配列方向に押されたり、あるいは鍵30の前端部が後方に向けて押されたりしないように構成されている。
【0078】
次に、このような鍵盤楽器の鍵30を製作する場合について説明する。
まず、鍵30のうち、白鍵32を製作する場合には、射出成形用の金型を用いた2色成形によって製作する。すなわち、射出成形用の金型は、上金型と下金型とを備えているほか、鍵30の内部に空洞部34を形成するためのスライドコアを備えている。この場合、スライドコアは、その上下面に第1、第2の各電極10、11を装着した状態で、金型内の空洞部(キャビティ)内に抜き出し可能な状態で配置されるように構成されている。
【0079】
そして、スライドコアが装着された射出成形用の金型内にシリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の合成樹脂を注入する。この注入された合成樹脂が冷却されると、スライドコアに装着された第1、第2の各電極10、11が、冷却された合成樹脂に固着される。この後、金型内からスライドコアを抜き出して金型を上金型と下金型とに分離する。これにより、内部に空洞部34が白鍵32の前部から後部に亘って連続して形成され、この空洞部34内に第1、第2の各電極10、11が設けられた白鍵32が得られる。
【0080】
すなわち、この白鍵32は、その空洞部34内における上面に第1の電極10が、鍵本体35の前端部から鍵固定部36の後端部に亘って連続して設けられると共に、白鍵32の空洞部34内における下面に第2の電極11が、第1の電極10に対して接離可能な状態で鍵本体35の前端部から鍵固定部36の後端部に亘って連続して設けられる。
【0081】
なお、この場合にも、第1、第2の各電極10、11は、必ずしも射出成形時に同時に2色成形する必要はなく、成形後に冶具を用いて鍵30の空洞部34内に貼り付けても良い。これと同様にして、黒鍵33も射出成形によって形成され、この黒鍵33の空洞部(図示せず)内にも、白鍵32と同様、第1、第2の電極(図示せず)が接離可能な状態で形成される。
【0082】
次に、このような鍵30を楽器ケース31に組み付ける場合について説明する。
この場合には、実施形態1と同様、白鍵32の鍵固定部36における後端部の開放口36a内に、配線基板12の基板挿入部12bを後方から挿入させる。これにより、白鍵32の空洞部34内における上面に設けられた第1の電極10が、配線基板12の第1の接続配線13における第1の電極端子部13aと電気的に接続されると共に、白鍵32の空洞部34内における下面に設けられた第2の電極11が、配線基板12の第2の接続配線14における第2の電極端子部14aと電気的に接続される。
【0083】
このようにして、配線基板12の各基板挿入部12bが複数の白鍵32および複数の黒鍵33の各開放口36a内にそれぞれ挿入されると、実施形態1と同様、これら複数の鍵30が配線基板12に沿って音階順に配列される。この状態で、図8および図11に示すように、複数の鍵30の各鍵固定部36を下部ケース4の鍵支持部20上に配置して、ビス21により配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14を避けて固定する。これにより、複数の鍵30が音階順に配列させた状態で、一度に鍵支持部20上に固定される。
【0084】
この後、配線基板12のコネクタ部15をフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18と電気的に接続する。これにより、白鍵32の内部34における上面に設けられた第1の電極10と、白鍵32の空洞部34内における下面に設けられた第2の電極11とが、配線基板12およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18と電気的に接続される。これと同様に、黒鍵33の第1、第2の電極(図示せず)も、回路基板18と電気的に接続される。
【0085】
そして、上部ケース3を下部ケース4上に重ね合わせ、この状態で下部ケースの下側ボス部4aと上部ケース3の上側ボス部3aとを対応させて、ビス22を下側ボス部4aから上側ボス部3aに螺入させて締め付けることにより、上部ケース3と下部ケース4とを取り付ける。このときにも、実施形態1と同様、回路基板18が下側ボス部4aと上側ボス部3aとの間に挟み付けられて取り付けられる。
【0086】
この後、下部ケース4の下に補助ケース37を取り付けて、音階順に配列された複数の鍵30における鍵本体35全体の下側、前端部側、両側部を覆う。これにより、図7および図8に示すように、複数の鍵30が音階順に配列されて、各鍵30の各鍵固定部36が楽器ケース31内に固定された状態で、各鍵30の鍵本体35の上部側が楽器ケース31の外部に露出した鍵盤楽器が得られる。
【0087】
次に、このような鍵盤楽器を使用する場合について説明する。
この場合には、演奏に合わせて鍵30を押鍵操作すると、その押鍵操作された箇所の鍵30が弾力的に潰れ変形する。すなわち、鍵30は、シリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の合成樹脂によって内部に空洞部34が形成されているため、楽器ケース31の上方に露出した鍵30の鍵本体35を上方から押圧操作すると、その押圧操作された箇所の鍵本体35が弾力的に潰れ変形する。
【0088】
このように、鍵30が潰れ変形すると、実施形態1と同様、鍵30の空洞部34内に設けられた第1、第2の各電極10、11が互いに接触する。すなわち、鍵30が押圧操作されて潰れ変形すると、図8および図9に示すように、白鍵32の空洞部34内における上面に設けられた第1の電極10が、白鍵32の空洞部34内における下面に設けられた第2の電極11に接触して、第1、第2の各電極10、11が導通する。
【0089】
これにより、配線基板12およびフレキシブルな接続配線基板17を介して回路基板18にスイッチ信号が与えられ、スピーカ部25から楽音が発音される。また、潰れ変形した鍵30から指を離すと、図8および図9に示すように、鍵30が元の形状に弾性復帰するので、鍵30の空洞部34内に設けられた第1、第2の電極10、11が互いに離れる。このため、回路基板18に与えられたスイッチ信号が途絶えて、スピーカ部25からの楽音の発音が停止される。
【0090】
このように、この鍵盤楽器によれば、複数の鍵30が、その各内部にそれぞれ空洞部34を鍵30の前部から後部に亘って連続させて形成し、押鍵操作された際にその押鍵箇所を弾力的に潰れ変形させる構成であるから、実施形態1と同様、乳幼児などの幼い子供が鍵30を押鍵操作した際に、その押鍵操作された箇所を弾力的に潰れ変形させることができる。
【0091】
このため、実施形態1と同様、鍵30を押鍵操作した際に、幼い子供が鍵30の間に指を挟んだり、鍵30の角にぶつけたりしても、怪我をする危険性がないばかりか、鍵30の重量を軽くして、楽器全体の重量を軽くすることができ、これにより幼い子供でも容易に持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。
【0092】
この場合、鍵30は、その空洞部34内における上下部に第1、第2の各電極10、11が、互いに接離可能な状態で設けられていることにより、実施形態1と同様、鍵30を押鍵操作して弾力的に潰れ変形させた際に、第1、第2の各電極10、11を互いに接触させて導通させることができる。これにより、回路基板18にスイッチ信号を与えることができるので、押鍵操作された鍵30に対応する楽音を良好に発音させることができる。
【0093】
また、この鍵盤楽器では、複数の鍵30の配列方向に連続し、且つ複数の鍵30にそれぞれ対応する複数の基板挿入部12bが設けられた配線基板12を備えており、複数の鍵30における各空洞部34が位置する各後端部には、配線基板12の基板挿入部12bがそれぞれ挿入する開放口36aがそれぞれ形成されていることにより、複数の鍵30の各開放口36a内に配線基板12の基板挿入部12bをそれぞれ挿入させだけで、実施形態1と同様、複数の鍵30を配線基板12に沿って簡単に且つ容易に配列させることができる。
【0094】
このため、複数の鍵30を楽器ケース31に組み付ける際に、複数の鍵30を配線基板12に沿って音階順に配列させた状態で、複数の鍵30を配線基板12と共に楽器ケース31の鍵支持部20上に配置させ、この状態でビス21によって複数の鍵30を一度に鍵支持部20上に固定することができる。これにより、複数の鍵30を1つずつ楽器ケース31に組み付ける必要がないので、実施形態1と同様、鍵30の組立作業を向上させることができ、これにより生産性を高めることができると共に、製作コストを下げることができる。
【0095】
また、この配線基板12には、複数の基板挿入部12bが複数の鍵30の各開放口36aにそれぞれ挿入した際に、鍵30の空洞部34内に設けられた第1、第2の各電極10、11にそれぞれ接続される第1、第2の各接続配線13、14が、複数の鍵30に対応して設けられているので、各鍵30の鍵固定部36に配線基板12の各基板挿入部12bを挿入するだけで、簡単に且つ容易に鍵30の空洞部34内に設けられた第1、第2の各電極10、11と配線基板12の第1、第2の各接続配線13、14とを電気的に接続することができ、これにより配線作業の向上を図ることができる。
【0096】
この場合、第1の接続配線13は、連続基板部12aのコネクタ部15から各基板挿入部12bの第1の電極端子部13aに亘って連続して形成されており、第2の接続配線14は、連続基板部12aのコネクタ部15から各基板挿入部12bの下面に設けられた第2の電極端子部14aにスルーホール部16を介して連続して形成されているので、実施形態1と同様、各鍵30の鍵固定部36に配線基板12の各基板挿入部12bを挿入すると、鍵1の第1の電極10と配線基板12の第1の接続配線13とを電気的に接続することができると共に、鍵1の第2の電極11と配線基板12の第2の接続配線14とを電気的に接続することができる。
【0097】
また、この配線基板12は、各鍵30に対応する第1、第2の各接続配線13、14がコネクタ部15に接続され、このコネクタ部15がフレキシブルな接続配線基板17によって回路基板18に接続されているので、これによっても配線作業が容易にできると共に、鍵30を押鍵操作して弾力的に潰れ変形させ、第1、第2の各電極10、11が互いに接触して導通した際に、その導通信号をスイッチ信号として回路基板18に確実に且つ良好に与えることができる。
【0098】
また、この鍵30は、シリコーンゴムやエラストマーなどの軟質の合成樹脂を射出成形によって内部に空洞部34を成形した構成であるから、鍵30を押鍵操作した際に、その押鍵操作された箇所を容易に且つ良好に弾力的に潰れ変形させることができると共に、スライドコアを用いた射出成形用の金型によって鍵30を簡単に且つ容易に成形することができると共に、鍵30の後部の開放口36aを射出成形用のスライドコアが挿入する挿入口としても使用することができ、これにより効率良く鍵30を生産することができると共に、楽器全体の低価格化を図ることができる。
【0099】
この場合、鍵30は、スライドコアを用いた射出成形用の金型によって軟質の合成樹脂を射出形成することにより、鍵30の内部に空洞部34を形成することができるので、鍵30の重量を軽くすることができ、これにより楽器全体の重量を大幅に軽くすることができる。このため、幼い子供でも手軽に鍵盤楽器を持ち運ぶことができ、使い勝手の良いものを提供することができる。
【0100】
なお、上述した実施形態1、2は、鍵1、30の空洞部7、34内における上下部に第1、第2の各電極10、11をそれぞれ連続させて設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば図12に示す変形例のように、鍵40の空洞部41内における上部に一対の電極42、43を鍵40の前部から後部に亘って連続させて設け、鍵40の空洞部41内における下部に、一対の電極42、43を導通させるための導電部44を設けた構成であっても良い。このように構成しても、実施形態1、2と同様の作用効果がある。
【符号の説明】
【0101】
1、30、40 鍵
2、31 楽器ケース
3 上部ケース
4 下部ケース
5、32 白鍵
6、33 黒鍵
7、34、41 空洞部
8、35 鍵本体部
9、36 鍵固定部
9a、36a 開放口
10、11、42、43 第1、第2の各電極
12 配線基板
13、14 第1、第2の各接続配線
13a、14a 電極端子部
15 コネクタ部
17 接続配線基板
18 回路基板
44 導電部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵が音階順に配列された鍵盤楽器において、
前記複数の鍵は、それぞれ軟質の樹脂からなり、その各内部にそれぞれ空洞部が前記鍵の前部から後部に亘って連続して形成され、押鍵操作された際にその押鍵箇所が弾力的に潰れ変形することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記鍵は、前記空洞部内における上下部に一対の電極が、互いに接離可能な状態で前記鍵の前部から後部に亘って連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記複数の鍵の配列方向に連続し、且つ前記複数の鍵にそれぞれ対応する複数の基板挿入部が設けられた配線基板を備えており、
前記複数の鍵における前記各空洞部が位置する各後端部には、前記配線基板の前記基板挿入部がそれぞれ挿入する開放口がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記配線基板には、前記複数の基板挿入部が前記複数の鍵の前記各開放口にそれぞれ挿入した際に、前記鍵の前記空洞部内に設けられた前記一対の電極にそれぞれ接続される一対の接続配線が、前記複数の鍵に対応して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記鍵は、軟質の樹脂からなるシートを膨出形成して前記空洞部を成形したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
前記鍵は、軟質の合成樹脂を射出成形して前記空洞部を成形したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤楽器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−32588(P2012−32588A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171662(P2010−171662)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】