説明

鍵盤装置

【課題】鍵盤とモジュールとを一体化し、更にモジュールを簡単に交換が可能な鍵盤装置を提供する。
【解決手段】偏平な基台の上面を2分割し、2分割した一方の領域に鍵盤を配置し、一方の領域にラックマウント部材を配置する。ラックマウント部材はラックマウント規格に準拠した寸法に配置されたビス孔を有し、このビス孔を用いてラックマウント型のモジュールを実装する。ラックマウント部材は第1スライドレールと第2スライドレールによって基台の長辺方向にスライド自在に装着され、更にチルトアップが可能な状況で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシンセサイザ或いはキーボード等と呼ばれている電子楽器に適用して好適な鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子鍵盤楽器は、鍵盤操作で選択された音名の音の電気信号を生成する音源にエフェクタ等が組み込まれたモジュールが、鍵盤に一体に組込まれた型式と、鍵盤とモジュールとが分離され、演奏者の好みに応じて所望の品種のモジュールと、所望の品種の鍵盤とを組合わせて演奏することができる型式とが存在する。
鍵盤とモジュールとが一体化されている型式の電子鍵盤楽器は取扱が容易である反面、自由度が乏しい欠点がある。一方、鍵盤とモジュールとを切り離して構成する型式の楽器では鍵盤とモジュールとの選択が自由であるため汎用性が高く、多様な演奏に適合が可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鍵盤とモジュールとが別々に切り離された型式の電子鍵盤楽器は上述したようにモジュールの組合せを自由に選択できることから多様な演奏を実現できる特質を有する。然し乍ら鍵盤とモジュールとが一体でないため、移動には手間が掛かる欠点がある。また演奏中でもモジュールに対して何等かの操作を加えなくてはならないから、モジュールを鍵盤の近傍、つまり、演奏者の手が届く範囲の位置に支持しておく必要がある。このために、鍵盤を支持するスタンドの他に、モジュールを支持するスタンドが必要となる。
また、最近は各種モジュールをラックマウント型にし、ラックマウントして利用する形態も多い。このような場合もラックを演奏者の手が届く範囲に設置しなければならないから、ラック用のスタンドが必要となり、コストが掛かる欠点が生じる。
【0004】
本発明の目的は鍵盤と組合わせるモジュールを自由に選択できる機能を持ちながら鍵盤とモジュールを一体化して取扱うことができる鍵盤装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では扁平な基台の上面を2分割し、2分割した一方の領域に鍵盤を配置し、他方の領域にラックマウント部材を配置する。ラックマウント部材はラックマウント規格に準拠した寸法に配置されたビス孔を有し、このビス孔を用いてラックマウント型モジュールを装着し、基台を介して鍵盤とラックマウント型モジュールとを一体化する。
更に詳しくは、本発明の鍵盤装置は長方形状の平面を持つ基台と、この基台の平面の一方の長辺から短辺方向の半部を塞ぐ姿勢で装着された鍵盤と、鍵盤の背面に沿って配置した第1スライドレールと、基台の他方の長辺に沿って配置した第2スライドレールと、これら第1スライドレールと第2スライドレールによって基台の長辺方向に移動自在に支持した一対のラックマウント部材を備える構造としたことを特徴とする。
【0006】
更に本発明の特徴は、一対のラックマウント部材は、それぞれ一端側は第1スライドレールの軸線方向に対してはスライド自在とされ、第1スライドレールの軸線と直交する向に対しては軸線を軸として回動自在に支持され、他端側はそれぞれ2本のリンクレバーを介して第2スライドレールにスライド自在に連結されている構造としたことを特徴とする。
更に、本発明の特徴はラックマウント部材は第1スライドレールの軸線を含む面と平行するラックマウント面と、このラックマウント面に中心位置が一方のラックマウント部材と他方のラックマウント部材のそれぞれの間でラックマウント規格に準拠した間隔を保持して形成したネジ孔とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した本発明の特徴とする構成によれば基台の手前側に鍵盤が配置され、その鍵盤の背面側にラックマウント部材が配置される。ラックマウント部材にラックマウント型のモジュールを実装することにより、鍵盤とモジュールとは基台を介して一体化される。従って移動時は鍵盤とモジュールとを一体にして持ち運びできるから、取扱が容易である。
更に、ラックマウント部材に実装したモジュールは簡単に交換することができるから、演奏に適したモジュールを自由に選択して実装することができる。
更に、ラックマウント部材には、2本のリンクレバーを介して第2ガイドレールに連結したからラックマウント部材に実装したモジュールの前面パネル面を立ち上げること(以下チルトアップと称す)ができる。従って、モジュールのパネル面の姿勢を平らにした姿勢と、チルトアップした姿勢に設定することができ、演奏者の好みの姿勢を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
長方形の形状の偏平な基台上に一方の長辺に沿って鍵盤を実装する。鍵盤の背後にラックマウント部材を配置する。ラックマウント部材は鍵盤の背面に沿って配置した第1スライドレールと基台の他方の長辺に沿って配置した第2スライドレールに摺動自在に支持される。
【実施例1】
【0009】
図1乃至図8に本発明の一実施例を示す。図中100は基台、200はこの基台100の上面に実装した鍵盤、300は鍵盤200の背後に配置したラックマウント部材を示す。
基台100はこの実施例では例えばアルミの押出型材で形成された角パイプを長方形の枠状に形成して構成した場合を示す。基台100の上面側の開口面に基台100の一方の長辺に沿って鍵盤200を実装する。鍵盤200の横幅Wは基台100の長辺の長さにほぼ等しく、鍵盤200の奥行きD1は基台100の短辺の寸法D2の約1/2程度とされる。尚、この実施例では鍵盤200は白鍵と黒鍵の他に音量コントロール用のホイール204と、音程変調用のホイール205とを併設した鍵盤の例を示す。
【0010】
鍵盤200の背面に第1スライドレールを配置し、更に基台100の他方の長辺に沿って第2スライドレールを配置する。第1スライドレールと第2スライドレールの実施例を図4乃至図6に示す。図4及び図5は第1スライドレール301の実施例を示す。第1スライドレール301はこの実施例では鍵盤200の上面を塞ぐ天板201と背面を塞ぐ背面板202と兼用した場合を示す。つまり、鍵盤200の天板201と背面板202との接合部分に第1スライドレール301を構成する溝301−1を形成し、更に、この溝301−1の軸芯位置を中心とする円弧面301−2を背面板202の一部に形成し、これら溝301−1と円弧面301−2とによって第1スライドレール301を構成した場合を示す。これらの天板201と背面板202A及び溝301−1と円弧面301−2はアルミの押出形材によって形成することができる。
【0011】
図4に示した第1スライドレール301に図5に示すようにラックマウント部材300から突出した連結部材302を係合させる。この連結部材302によってラックマウント部材300は第1スライドレール301に対してスライド自在で、然も溝301−1の軸芯位置を中心に回動自在に支持される。
図6に第2スライドレール310と、この第2スライドレール310とラックマウント部材300とを連結する連結部分の実施例を示す。この実施例では図6に示す第2スライドレール310を図1乃至図3に示した基台100の枠を構成する角パイプで構成した場合を示す。第2スライドレール310は上面と下面に溝310−1を有し、この溝310−1にC字状断面を持つスライダ310−2の遊端を係合させスライダ310−2を第2スライドレール310に沿って移動自在に支持する。スライダ310−2は所定の間隔を保持して第2スライドレール310に2個取付られる。
【0012】
スライダ310−2には第1リンクレバー310−3を回動自在に装着し、この第1リンクレバー310−3の回動遊端には第2リンクレバー310−4を回動自在に装着する。これら第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4はそれぞれ第2スライドレール310の軸線と平行する軸によって回動自在に支持される。従ってその回動方向は第2スライドレール310の軸線と直交する面を回動面とする方向に回動する。第2リンクレバー310−4の回動遊端をラックマウント部材300に回動自在に連結し、ラックマウント部材300をチルトアップが可能で、且つ基台100の長辺方向に移動自在に支持する。
【0013】
図7は第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4が最も折畳まれた状態を示し、図8はラックマウント部材300をチルトアップさせる途中の状態を示す。また、図6に示す状態はラックマウント部材300をチルトアップして安定させた状態を示す。この安定状態では第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4は逆くの字に折返された状態でストッパでその状態を維持している状態を示す。このように、第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4を上死点位置を通過させて、逆くの字の状態でストッパーで受け止める構造とすることにより、この安定状態でラックマウント部材300に多少の力が加わっても第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4が意に反して折り畳まれる方向に回動する事故の発生を阻止することができる。つまり、第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4が上死点位置の近傍乃至は上死点位置より手前の位置を安定位置とした場合は、その安定状態を維持させるためのストッパはバネ等の弾性を利用した係止構造が採られる。このために係止力を強く採ったとしても、安定状態でラックマウント部材300に強い力が与えられると、ストッパの係止力が耐えきれず係合が外れてしまい、ラックマウント部材300が平らな姿勢に戻る方向に移動し、この移動が利用者の意に反する結果手を挟む等の事故が起きるおそれがある。
【0014】
これに対し、図6に示す姿勢で受け止めるストッパはバネを用いることなく、第1リンクレバー310−3と第2リンクレバー310−4の回動位置を制限する突起等で形成したストッパを用いることができるため、利用者の意に反してラックマウント部材300がチルトアップ状態から戻る方向に回動する事故の発生を阻止することができる。
図8に示す突起310−5はこのストッパを構成するための突起である。また第1リンクレバー310−3に形成して突片310−6はチルトアップ状態から、折り畳む方向に第1リンクレバー310−3を回動させるための把手として作用する。
【0015】
ラックマウント部材300は第1スライドレール310の軸線を含む面と平行なラックマウント面300−1を有し、このラックマウント面300−1にネジ孔311(図1、図2参照)が形成される。このネジ孔311の中心間の寸法L(図1、図2)はラックマウント規格に準拠した寸法に選定される。ラックマウント規格では標準ラック規格として19インチが標準とされている。従って、寸法Lを19インチに選定することにより、この標準規格に準拠して作られた各種モジュールをラックマウント部材300に装着することができる。
【0016】
図9乃至図12にモジュールの実装例を示す。図9乃至図11に示すモジュール400は例えば音源装置或いはエフェクタ等とすることができる。この発明によれば図9に示すように、モジュール400を中央に配置することも、また図10に示すように何れか一方の端に寄せて配置することもできる。何れか一方に寄せて配置した場合には、他方の端に空きスペースを得ることができるから、この空きスペースに例えば台を配置すればノートパソコン等を置くことができ、ノートパソコンと連動して演奏を行なう状況を作ることができる。図11はチルトアップの状態、図12はチルトダウンの状態を示す。
【産業上の利用可能性】
【0017】
電子鍵盤楽器の分野で活用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明による鍵盤装置の一実施例を説明するための平面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の側面図。
【図4】この発明に用いた第1スライドレールの詳細を説明するための断面図。
【図5】この発明に用いた第1スライドレールとラックマウント部材との連結部分の構造を説明するための断面図。
【図6】この発明に用いた第2スライドレールとラックマウント部材との連結部分の構造を説明するための断面図。
【図7】この発明による鍵盤装置に付設したラックマウント部材を平らな姿勢に収納した状況を説明するための側面図。
【図8】この発明による鍵盤装置に付設したラックマウント部材をチルトアップする途中の状況を説明するための側面図。
【図9】この発明による鍵盤装置にモジュールを実装した状況を説明するための正面図。
【図10】この発明の鍵盤装置により実装したモジュールの位置を変更した状態を説明するための正面図。
【図11】この発明の鍵盤装置により実装したモジュールをチルトアップした状態を説明するための側面図。
【図12】この発明による鍵盤装置により実装したモジュールを平らな姿勢にすることができることを説明するための側面図。
【符号の説明】
【0019】
100 基台 310 第2スライドレール
200 鍵盤 310−1 溝
201 天板 310−2 スライダ
202 背面板 310−3 第1リンクレバー
300 ラックマウント部材 310−4 第2リンクレバー
300−1 ラックマウント面 310−5 突起
301 第1スライドレール 310−6 突片
301−1 溝 311 ネジ孔
302 連結部材
302−2 円弧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.長方形状の平面を持つ基台と、
B.この基台の平面を一方の長辺から短辺方向の半部を塞ぐ姿勢で装着された鍵盤と、
C.上記鍵盤の背面に沿って配置した第1スライドレールと、
D.上記基台の他方の長辺に沿って配置した第2スライドレールと、
E.これら第1スライドレールと第2スライドレールによって上記鍵盤の鍵の配列方向に移動自在に支持された一対のラックマウント部材と、
を備えたことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
請求項1記載の鍵盤装置において、上記一対のラックマウント部材は、それぞれ一端側は上記第1スライドレールの軸線方向に対してはスライド自在とされ、第1スライドレールの軸線と直交する向に対しては上記軸線を軸として回動自在に支持され、他端側はそれぞれ2本のリンクレバーを介して上記第2スライドレールにスライド自在に連結されている構造としたことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項3】
請求項1に又は2の何れかに記載の鍵盤装置において、上記ラックマウント部材は上記第1スライドレール及び第2スライドレールの軸線を含む面と平行するラックマウント面と、このラックマウント面に中心位置が一方のラックマウント部材と他方のラックマウント部材のそれぞれの間でラックマウント規格に準拠した間隔を保持して形成したネジ孔とを備えることを特徴とする鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−86306(P2007−86306A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273906(P2005−273906)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000130329)株式会社コルグ (111)
【Fターム(参考)】