説明

鍵盤装置

【課題】スペース効率の向上を図った鍵盤装置を提供する。
【解決手段】質量体40が、棒状本体部42と、棒状本体部42の一端を軸C2に向けて折り返すように上側に曲げる曲げ加工が施された第1曲部43と、を有していて、棒状本体42において第1曲部43よりも一端側である最上側部42A及び第1曲部43よりも他端側である最下側部42Bとの成す角度θが質量体40の最大回転角度θから質量体40の後端部の上側に設けられたフレーム20の下面と質量体40の後端部の下側に設けられたボトムケース30の上面との成す角度θを差し引いた角度となるように、設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤装置に係り、特に、質量体と、質量体を収容するケースと、を備えた鍵盤装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子楽器の鍵盤装置においては、図11に示すように、自然楽器の押鍵タッチ感触に近似した重量感のあるタッチ感触を得るために各鍵に対応してハンマー等の質量体を備えている(例えば特許文献1〜4)。この種の鍵盤装置100では、例えば、鍵10の回動に連動して一端が上下方向Y3に回動する質量体40が鍵10の下側に取り付けられている。この質量体40は、上側に鍵が取り付けられるフレーム20と、フレーム20の下側を塞ぐボトムケース30との間に設けられている。
【0003】
上述した質量体40の回動範囲(初期位置から押し切り位置まで)は、上ストッパ51、下ストッパ52により規制されている。上記鍵盤装置100は、質量体40の後端が上ストッパ51に当接したときに鍵10は押鍵押し切り位置となり、下ストッパ52に当接したときに鍵10は初期位置となる。
【0004】
しかしながら、上述した鍵盤装置100は、図12(A)に示すように、押し切り位置での質量体40の後端部とフレーム20の上面とが平行になっておらず、スペースA1が有効に使われていない、という問題があった。また、図12(B)に示すように、初期位置でも質量体40の後端部とボトムケース30の下面とが平行になっておらず、スペースA2が有効に使われていない、という問題があった。
【0005】
特に、質量体40の長さを短くすると、短い質量体40で大きな質量感を得るために、質量体40の回動角度を大きくする必要がある。このため、押し切り位置での質量体40の後端部とフレーム20の下面との成す角度θや、初期位置での質量体40の後端部とボトムケース30の上面との成す角度θを大きくする必要があり、ますますスペースを有効に使えなくなる、という問題があった。
【特許文献1】実用登録第2567774号公報
【特許文献2】実用登録第2565998号公報
【特許文献3】特開平6−83351号公報
【特許文献4】特許第2917863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、スペース効率の向上を図った鍵盤装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、鍵の回動に連動して軸を中心に回動するように鍵に取り付けられた質量体を有する鍵盤装置において、前記質量体が、棒状本体部と、前記棒状本体部の一端を前記軸に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された第1曲部と、を有していて、前記棒状本体部において前記第1曲部よりも他端側、及び、前記第1曲部よりも一端側のうちの最も上側に位置する最上側部と、最も下側に位置する最下側部と、の成す角度が前記質量体の最大回転角度から前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面との成す角度を差し引いた角度となるように、前記質量体が設けられている。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記質量体が、前記質量体の一端をさらに前記軸から離れた側に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された第2曲部を有する。
【0009】
請求項3記載の発明は、鍵の回動に連動して軸を中心に回動するように鍵に取り付けられた質量体を有する鍵盤装置において、前記質量体が、棒状本体部と、前記棒状本体部の一端を前記軸に向けて又は前記軸から離れた側に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された複数の曲部と、を有していて、前記棒状本体部において前記複数の曲部のうち最も他端側の曲部よりも他端側、前記曲部と前記曲部との間、及び、前記複数の曲部のうち最も一端側の曲部よりも一端側、のうちの最も上側に位置する最上側部と、最も下側に位置する最下側部と、の成す角度が前記質量体の最大回転角度から前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面との成す角度を差し引いた角度となるように、前記質量体が設けられている。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記最上側部及び前記最下側部との成す角度が前記質量体の最大回転角度となるように、前記質量体が設けられている。
【0011】
請求項5記載の発明は、質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面とが水平となるように、前記一対の部材が設けられている。
【0012】
請求項6記載の発明は、上ストッパが、前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面に設けられていて前記質量体の最上側部と当接して前記鍵及び前記質量体の回動角度を規制し、下ストッパが、前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面に設けられていて前記質量体の最下側部と当接して前記鍵及び前記質量体の回動角度を規制する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、質量体の一端が回転範囲の上端に位置した状態で最上側部と質量体の一端部の上側に設けられた部材の下面とが平行になり、かつ、質量体の一端が回転範囲の下側に位置した状態で最下側部と質量体の一端部の下側に設けた部材の上面とが平行になるように、質量体を設けることができるので、スペース効率の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、第2曲部を設けることにより、質量体の回転軸と重心との距離を離すことができ、より一層質量感を与えることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、質量体の一端が回転範囲の上端に位置した状態で最上側部と質量体の一端部の上側に設けられた部材の下面とが平行になり、かつ、質量体の一端が回転範囲の下側に位置した状態で最下側部と質量体の一端部の下側に設けた部材の上面とが平行になるように、質量体を設けることができるので、スペース効率の向上を図ることができる。また、曲部を複数設けることにより、質量体の回転軸と重心との距離を離すことができ、より一層質量感を与えることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、質量体の一端部の上側に設けられた部材の下面と質量体の一端部の下側に設けられた部材の上面とを平行に設けることができ、一対の部材を簡単に設けることができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、質量体の一端部の上側に設けられた部材の下面と質量体の一端部の下側に設けられた部材の下面とを水平に設けることができ、一対の部材を簡単に設けることができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、上ストッパの当接面と平行に最上側部が当接し、下ストッパの当接面と平行に最下側部が当接するので、ストッパの当接面全体に均一に力がかかるため耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1実施形態
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の鍵盤装置100の一実施形態を示す上面図である。図2は、第1実施形態における鍵盤装置100を示す部分側面である。以下説明において、鍵盤装置100の「上下左右前後」は演奏時の演奏者側から見た正立状態における「上下左右前後」を意味する。
【0020】
鍵盤装置100は、例えば電子鍵盤楽器に用いられるものである。同図に示すように、鍵盤装置100は、鍵10と、フレーム20と、ボトムケース30と、質量体40と、上ストッパ51及び下ストッパ52と、を備えている。上記鍵10は、図1に示すように黒鍵及び白鍵が左右方向Y1に複数並設されている。フレーム20は、上板部21と、上板部21の前後方向Y2両側から垂下された前側立壁部22及び後側立壁部23と、から構成され、下側が開口されている。このフレーム20の下側に設けられた開口は、ボトムケース30によって塞がれている。
【0021】
上述した上板部21は、後側に向かうに従って下側に近づくテーパ部24と、テーパ部24の前側に水平に設けられた水平部25と、から構成されている。また、上記ボトムケース30は、後側に向かうに従って下側に近づくテーパ部31と、テーパ部31の前後方向Y2両端に設けられた水平部32と、から構成されている。そして、フレーム20の前側立壁部22はボトムケース30の前側の水平部32上面に配置され、後側立壁部23はボトムケース30の後側の水平部32の上面に配置されている。
【0022】
また、フレーム20の上側には、鍵10が配置されている。鍵10は、前端部が上下方向Y3に回動可能となるように軸C1を支点として鍵支持部26に軸支されていて、軸C1を中心として回動する。鍵支持部26は、テーパ部24上に突設されている。上記質量体40は、鍵10の回動に連動して軸C2を中心に回動するようにフレーム20に支持されている。質量体40は、フレーム20とボトムケース30との間に収容されている。つまり、フレーム20及びボトムケース30は、質量体40を収容するケースとして機能する。
【0023】
質量体40は、樹脂などから構成されている作動部41と、棒状の金属から形成された前後方向Y2に延びる棒状本体部42と、棒状本体部42の後端(一端)を軸C2に向けて折り返すように上側に曲げる曲げ加工が施された第1曲部43と、最上側部42Aと、最下側部42Bと、で構成されている。最上側部42Aは、棒状本体部42において第1曲部43よりも前端(他端)側、及び、第1曲部43よりも後端側、のうちの最も上側に位置する部材である。最下側部42Bは、棒状本体部42において第1曲部43よりも前端側、及び、第1曲部43よりも後端側、のうちの最も下側に位置する部材である。質量体40は、フレーム20に設けた質量体支持部27により作動部41の軸C2を支点として支持されている。質量体支持部27は、上記鍵支持部26よりも前側の上板部21下面に設けられている。
【0024】
上記質量体40は、その後端が後側立壁部23や、鍵支持部26よりも前側になるように設けられている。そして、質量体40の後端部は、フレーム20のテーパ部24とボトムケース30のテーパ部31との間に設けられる。言い換えると、質量体40の後端部の回転範囲の上側には一対の部材の一方であるフレーム20のテーパ部24が配置され、下側には一対の部材の他方であるボトムケース30のテーパ部31が配置される。また、作動部41の前端には上下に二股に分かれた連結片41Aが形成されており、鍵10から下側に向かって突出する作用部11の下端部に設けられた連結ピン11Aが連結片41Aに挟まれている。
【0025】
上述した上ストッパ51、下ストッパ52は、質量体40と当接して鍵10及び質量体40の回動範囲を規制するストッパである。上ストッパ51、下ストッパ52は、フェルト等のクッション材からなっていて、質量体40との当接時の衝撃が低減するようになっている。上記上ストッパ51は、テーパ部24の下面に設けられている。そして、演奏者が鍵10を押鍵すると作用部11が作動部41を押し下げ、質量体40が回転軸C2を回動中心として図1において反時計回りに回動して、質量体40の最上側部42Aと上ストッパ51とが当接すると押し切り状態となる。一方、下ストッパ52は、ボトムケース30のテーパ部31の上面に設けられている。そして、演奏者が離鍵すると、質量体40が回転軸C2を回動中心として図1において時計回りに回動して、最下側部42Bと下ストッパ52とが当接すると初期位置となる。
【0026】
また、上記作動部41には、軸C2付近に質量体40の後端側を下側に曲げる第3曲部45が設けられている(第2曲部47は後述する)。この第3曲部45は、質量体40の後端が回転範囲の下端に位置した状態で最下側部42Bとテーパ部31とが平行になり、質量体40の後端が回転角度の上端に位置した状態で最上側部42Aとテーパ部24とが平行になるような角度に設けられている。
【0027】
次に、上述した質量体40の構成についてさらに詳しく説明する。最上側部42Aとこの最上側部42Aと対向する最下側部42Bとの成す角度、即ち第1曲部43の曲げ角度θは、下記の式(1)に示すように、質量体40の最大回転角度θから最上側部42Aの上側にあるフレーム20のテーパ部24の下面と最上側部42Aの下側にあるボトムケース30のテーパ部31の上面との成す角度θK1を差し引いた角度となるように設けられている。また、曲げ角度θは0°より大きくなるように設けられている。
90度>θ=θ−θK1>0度…(1)
実際にはθは20度程度に設けられる。
【0028】
また、上述したテーパ部24に設けられた上ストッパ51の当接面と、テーパ部31に設けられた下ストッパ52の当接面との成す角度が角度θK1と等しくなるように、上ストッパ51及び下ストッパ52が設けられている。
【0029】
上述した鍵盤装置100によれば、第1曲部43の曲げ角度θが質量体40の最大回転角度θから質量体40の後端部の上側に設けられたテーパ部24の下面と質量体40の後端部の下側に設けられたテーパ部31の上面との成す角度θK1を差し引いた角度となるように、質量体40が設けられている。これにより、質量体40の後端が回転範囲の上端に位置した状態で最上側部42Aと質量体40の後端部の上側に設けられたテーパ部24の下面とが平行になり、かつ、質量体40の後端が回転範囲の下側に位置した状態で最上側部42Aに対向する最下側部42Bと質量体40の後端部の下側に設けたテーパ部31の上面とが平行になるので、図12に示すようにスペースA1、A2が生じることがなくなり、スペース効率の向上を図ることができる。
【0030】
また、上述した鍵盤装置100によれば、質量体40の後端部の上側にあるテーパ部24の下面に設けられた上ストッパ51が、質量体40の最上側部42Aと当接して鍵10及び質量体40の回動角度を規制し、質量体40の後端部の下側にあるテーパ部31の上面に設けられた下ストッパ52が、質量体40の最下側部42Bと当接して鍵10及び質量体40の回動角度を規制する。このように上ストッパ51、下ストッパ52を設けることにより、図3に示すように、上ストッパ51及び最上側部42Aの当接箇所vと、下ストッパ52及び最下側部42Bの当接箇所lとの間に第1曲部43を設けることができる。よって、図4に示すように、上ストッパ51の当接面と平行に最上側部42Aが当接し、下ストッパ52の当接面と平行に最下側部42Bが当接する。このため、上ストッパ51、下ストッパ52の当接面に対して垂直な力Fが、質量体40と上下ストッパ51、52との当接時に作用し、上下ストッパ51、52の当接面全体に均一に力がかかるため耐久性の向上を図ることができる。
【0031】
また、上述した鍵盤装置100によれば、質量体40に第1曲部43を設けることにより質量体40の後端部に弾性を持たせることができる。このため、最上側部42A及び上ストッパ51、最下側部42B及び下ストッパ52が、当接したときの衝撃を緩和することができる。
【0032】
ところで、図5に示すように、最上側部42Aの長さlA1=lB1=lC1が等しいとき、上記曲げ角度θが大きくなるほど(θTA<θTB<θTC)、重心Gが後端側にずれるため軸C2と質量体40の重心Gとの距離が長くなる(lA2>lB2>lC2)。よって、上述した鍵盤装置100のように、曲げ角度θを0度より大きくして、ある程度の角度を持たせることにより、軸C2と質量体40の重心Gとの距離を長くすることができ、これによって、質量体40を軽くしても、押鍵時に大きな質量感(手ごたえ感)を得ることができる。なお、曲げ角度θを大きく設けるほど、質量体40の重みには有効に働くが、鍵10下の空間が大きくなってしまうので、曲げ角度θは、質量体40の重みや、フレーム20やボトムケース30の大きさなどによって適宜決められる。
【0033】
また、本発明は、上述したように質量体40の後端部が鍵10を支持する鍵支持部26よりも前側に配置されている鍵盤装置100のスペース効率の向上に有効な技術である。
【0034】
第2実施形態
次に、第2実施形態における鍵盤装置100について説明する。図6は、第2実施形態における鍵盤装置100を示す部分側面図である。図6において、図1〜図5について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分は同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0035】
第1実施形態と大きく異なる点は、フレーム20、ボトムケース30及び質量体40の形状である。同図に示すように、フレーム20及びボトムケース30は各々、テーパ部24及び31が設けられていない。そして、フレーム20の上板部21とボトムケース30とは、互いに平行に、かつ、水平に配置されていて、質量体40の後端部は、フレーム20の上板部21とボトムケース30との間に設けられている。言い換えると、質量体40の後端部の回転範囲の上側には一対の部材であるフレーム20の上板部21が配置され、下側には一対の部材の他方であるボトムケース30が配置される。
【0036】
上述した質量体40は、下記の式(2)に示すように、第1曲部43の曲げ角度θが、質量体40の最大回転角度θと等しくなるように、質量体40が設けられている。即ち、フレーム20の上板部21とボトムケース30との成す角度θK2が0度になるように設けられている。
90度>θ=θ(∵θK2=0度)>0度 …(2)
【0037】
さらに、棒状本体部42は、後端側を上側に向かって曲げる曲げ加工が施された第4曲部46が設けられている。第4曲部46は、質量体40の後端が回転範囲の下端に位置した状態で第4曲部46よりも後端側の最下側部42Bが水平となり、質量体40の後端が回転範囲の上端に位置した状態で最上側部42Aが水平となるような角度で曲げる曲げ加工が施されている。
【0038】
上述した鍵盤装置100によれば、式(2)に示すように、曲げ角度θを設けることにより、質量体40の後端部上側に設けられた上板部21と下側に設けられたボトムケース30とを平行に設けることができる。一般に、工業製品は直交座標系で成立しているものがほとんどであり、素材の歩留まりなど、またデザイン的にもフレーム20の上板部21と、ボトムケース30とを平行にすることは有利であり、フレーム20、ボトムケース30の構成が簡単になる。
【0039】
上述した鍵盤装置100によれば、さらに、フレーム20の上板部21とボトムケース30とを水平に設けることができるため、より一層、フレーム20、ボトムケース30の構成が簡単となる。上述した鍵盤装置100によれば、上述した第1実施形態と同等の部分については、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
第3実施形態
次に、第3実施形態における鍵盤装置100について説明する。図7は、第3実施形態における鍵盤装置100を示す部分側面図である。図7において、図1〜図5について上述した第1実施形態で既に説明した部分と同等の部分は同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0041】
第2実施形態と大きく異なる点は、質量体40の形状である。上述した質量体40は、第1実施形態と同様に、作動部41と、棒状本体部42と、第1曲部43と、最上側部42Aと、最下側部42Bと、で構成されている。また、上記式(2)に示すように、第1曲部43の曲角度θが、質量体40の最大回転角度θと等しくなるように、質量体40が設けられている。
【0042】
さらに、作動部41には、後端側が下側に向けて曲げられた第3曲部45が設けられ、棒状本体部42には、後端側を上側に向かって曲げる曲げ加工が施された第4曲部46が設けられている。第3曲部45及び第4曲部46は各々、質量体40の後端が回転範囲の下端に位置した状態で第4曲部46よりも後端側の最下側部42Bが水平となり、質量体40の後端が回転範囲の上端に位置した状態で最上側部42Aが水平となるような角度で曲げられている。第3実施形態も、第1及び第2実施形態と同等の部分については、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、上述した第2及び第3実施形態によれば、フレーム20の上板部21とボトムケース30とを平行に設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図1と同様に、上板部21とボトムケース30とにテーパ部24、31を設け、これらテーパ部24、31を互いに平行になるようにしてもよい。この場合も、式(2)を満たすように、質量体40を形成すればよい。
【0044】
第4実施形態
次に、第4実施形態における鍵盤装置100について説明する。図8は、第4実施形態における鍵盤装置100を示す部分側面図である。図7において、図1〜図5について上述した第1〜第3実施形態で既に説明した部分と同等の部分は同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
第2及び第3実施形態と大きく異なる点は、フレーム20及び質量体40の形状と、上ストッパ51の位置である。フレーム20は、第2及び第3実施形態と同様に、テーパ部24及び31が設けられていない。そして、質量体40の後端部の上側に位置するフレーム20の上板部21には、開口部28が設けられている。これにより、質量体40の後端部は、鍵10とボトムケース30との間に設けられている。言い換えると、質量体40の後端部の回転範囲の上側には一対の部材である鍵10が配置され、下側には一対の部材の他方であるボトムケース30が配置される。また、上ストッパ51は、フレーム20の上板部21の上面前部に設けられ、鍵10と当接して鍵10及び質量体40の回転角度を規制するように設けられている。
【0046】
次に、上述した質量体40の第1曲部43の構成について以下説明する。第1曲部43の曲げ角度θは、下記の式(3)に示すように、質量体40の最大角度θから鍵10と上ストッパ51とが当接して鍵10の前端が回転角度の下端にした状態での鍵10の下面とボトムケース30とのなす角度θK3を差し引いた角度となるように設けられている。
90度>θ=θ−θK3>0度…(3)
【0047】
また、棒状質量体40は、軸C2と第1曲部43との間に、後端部を上側に向けて曲げる曲げ加工が施された第4曲部46が2箇所設けられている。
【0048】
上述した鍵盤装置100によれば、第1実施形態と同様に、質量体40の後端が回転範囲の上側に位置した状態で最上側部42Aと質量体40の後端部の上側に設けられた鍵10の下面とが平行になり、かつ、質量体40の後端が回転範囲の下側に位置した状態で最下側部42Bと質量体40の後端部の下側に設けられたボトムケース30の上面とが平行になるので、スペース効率の向上を図ることができる。さらに、開口部28を設けることにより、上板部21と鍵10との間も質量体40の後端部の回転範囲にすることができ、より一層スペース効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、上述した第4実施形態によれば、質量体40は、質量体40の後端をさらに軸C2から離れた側に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された第2曲部47と、第2曲部47により軸C2から離れた側に向けて折り返された折返部48を設けている。これにより、質量体40の重心Gがさらに後端側になって軸C2と重心Gとの距離が離れるため、より一層、押鍵時の質量感を増すことができる。
【0050】
なお、上述した第4実施形態によれば、第2曲部47を2箇所設けて折返部48を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図9に示すように、第2曲部47を1箇所設けて折返部48を設けるようにしてもよい。
【0051】
また、上述した第1〜第4実施形態によれば、質量体40の後端側を上側に折り曲げる第1曲部43を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、質量体40の後端を下側に折り曲げるような第1曲部43を設けてもよい。この場合、第1〜第4実施形態では、棒状本体部42において第1曲部43よりも後端側が最下側部42Bとなり、第1曲部43よりも前端側が最上側部42Aとなる。
【0052】
また、上述した第1〜第4実施形態によれば、上ストッパ51及び下ストッパ52の両方が質量体40と当接するか、上ストッパ51が鍵10に当接し、下ストッパ52が質量体40に当接していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、上ストッパ51及び下ストッパ52の両方が、鍵10に当接するようにしてもよいし、下ストッパ52が鍵10に当接し、上ストッパ51が質量体40に当接するようにしてもよい。
【0053】
また、上述した第1〜第4実施形態によれば、最上側部42Aと最下側部42Bとの間に1箇所の第1曲部43を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図10に示すように、第4実施形態の折返部48と同様に最上側部42Aと最下側部42Bの間に2箇所に曲部を設けることも考えられる。
【0054】
第5実施形態
次に、第5実施形態における鍵盤装置100について説明する。図10は、第5実施形態における鍵盤装置100を構成する質量体40の部分拡大図である。図10において、図1〜図8について上述した第1〜第3実施形態で既に説明した部分と同等の部分は同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
第1〜第4実施形態と大きく異なる点は、質量体40の形状である。同図(A)に示す例では、質量体40において棒状本体部42には、複数の曲部43A、43Bが設けられている。曲部43Aは、棒状本体部42の後端を軸C2に向けて上側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。曲部43Bは、棒状本体部42の後端を軸C2から離れた側に向けて折り返すようにさらに上側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。この場合、棒状本体部42において複数の曲部43A、43Bのうちの最も前端側の曲部43Aよりも前端側、曲部43Aと曲部43Bとの間、及び、複数の曲部43A、43Bのうち最も後端側の曲部43Bよりも後端側、のうちの最も上側に位置する曲部43Bよりも後端側が最上側部42Aとなり、最も下側に位置する曲部43Aよりも前端側が最下側部42Bとなる。
【0056】
また、同図(B)に示す例では、質量体40において棒状本体部42には、複数の曲部43C〜43Fが設けられている。曲部43Cは、棒状本体部42の後端を軸C2に向けて上側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。曲部43Dは、棒状本体部42の後端を軸C2から離れた側に向けて折り返すようにさらに上側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。曲部43Eは、棒状本体部42の後端を軸C2から離れた側に向けて折り返すように下側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。曲部43Fは、棒状本体部42の後端を軸C2に向けて折り返すように下側に折り曲げる折り曲げ加工が施されている。この場合、棒状本体部42において複数の曲部43C〜43Fのうちの最も前端側の曲部43Cよりも前端側、曲部43Cと曲部43Dとの間、曲部43Eと曲部43Fとの間、及び、複数の曲部43C〜43Fのうち最も後端側の曲部43Fよりも後端側、のうちの最も上側に位置する曲部43Eと曲部43Fとの間が最上側部42Aとなり、最も下側に位置する曲部43Fよりも前端側が最下側部42Bとなる。
【0057】
この場合も、第1〜第4実施形態と同様に、最上側部42Aと最下側部42Bとの成す角度θが式(1)〜(3)を満たすように質量体42を設ければ、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の鍵盤装置の一実施形態を示す上面図である。
【図2】第1実施形態における鍵盤装置を示す部分側面である。
【図3】当接箇所と第1曲部との位置関係を説明するための図である。
【図4】(A)及び(B)はそれぞれ、上ストッパと最上側部との当接時、下ストッパと最下側部との当接時に作用する力を説明するための図である。
【図5】曲げ角度と質量体の重心との関係を示す図である。
【図6】第2実施形態における鍵盤装置を示す部分側面図である。
【図7】第3実施形態における鍵盤装置を示す部分側面図である。
【図8】第4実施形態における鍵盤装置を示す部分側面図である。
【図9】他の実施形態における質量体の部分拡大図である。
【図10】第5実施形態における鍵盤装置を構成する質量体の部分拡大図である。
【図11】従来の鍵盤装置の一例を示す側面図である。
【図12】(A)は図11(A)のX部の拡大図であり、(B)は図11(B)のY部の拡大図である。
【符号の説明】
【0060】
10…鍵(部材)、21…上板部(部材)、24…テーパ部(部材)、31…テーパ部(部材)、30…ボトムケース(部材)、40…質量体、42…棒状本体部、42A…最上側部、42B…最下側部、43…第1曲部、43A〜43F…曲部、47…第2曲部、51…上ストッパ、52…下ストッパ、100…鍵盤装置、Y3…上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部が上下方向に回動可能となるように後端部が支持されて設けられた複数の鍵と、前記鍵の回動に連動して軸を中心に回転するように前記鍵に連結された質量体と、前記質量体の一端部の回転範囲の上側及び下側に配置された一対の部材と、を有する鍵盤装置において、
前記質量体が、棒状本体部と、前記棒状本体部の一端を前記軸に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された第1曲部と、を有していて、
前記棒状本体部において前記第1曲部よりも他端側、及び、前記第1曲部よりも一端側のうちの最も上側に位置する最上側部と、最も下側に位置する最下側部と、の成す角度が前記質量体の最大回転角度から前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面との成す角度を差し引いた角度となるように、前記質量体が設けられている
ことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記質量体が、前記質量体の一端をさらに前記軸から離れた側に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された第2曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前端部が上下方向に回動可能となるように後端部が支持されて設けられた複数の鍵と、前記鍵の回動に連動して軸を中心に回転するように前記鍵に連結された質量体と、前記質量体の一端部の回転範囲の上側及び下側に配置された一対の部材と、を有する鍵盤装置において、
前記質量体が、棒状本体部と、前記棒状本体部の一端を前記軸に向けて又は前記軸から離れた側に向けて折り返すように上側又は下側に曲げる曲げ加工が施された複数の曲部と、を有していて、
前記棒状本体部において前記複数の曲部のうち最も他端側の曲部よりも他端側、前記曲部と前記曲部との間、及び、前記複数の曲部のうち最も一端側の曲部よりも一端側、のうちの最も上側に位置する最上側部と、最も下側に位置する最下側部と、の成す角度が前記質量体の最大回転角度から前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面との成す角度を差し引いた角度となるように、前記質量体が設けられている
ことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項4】
前記最上側部及び前記最下側部との成す角度が前記質量体の最大回転角度となるように、前記質量体が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面と前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面とが水平となるように、前記一対の部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記質量体の一端部の上側に設けられた前記部材の下面に設けられていて前記質量体の最上側部と当接して前記鍵及び前記質量体の回動角度を規制する上ストッパと、
前記質量体の一端部の下側に設けられた前記部材の上面に設けられていて前記質量体の最下側部と当接して前記鍵及び前記質量体の回動角度を規制する下ストッパとを有することを特徴とする請求項1〜5何れか1項に記載の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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