説明

鍼灸針保護パックを保持する容器

【課題】鍼灸針を汚染・感染することなく治療することができ、落下及び紛失を防止し、異なる種類の鍼灸針も分かりやすく分別でき、鍼の抜き忘れを防止することができる鍼灸針を保持する容器を提供すること。
【解決手段】鍼パック20の一部を開封して鍼灸針10の一部を突出させた鍼灸針保護パック1を挿入し、鍼パック20から鍼灸針10を着脱するときパック材22がストッパー31に引っ掛かり、鍼灸針着脱口34から鍼灸針10のみ着脱することが可能な鍼灸針保護パックを保持する容器。また鍼灸針保護パック1の着脱及び鍼パック20の取出しを可能にする鍼パック着脱口35を設けた鍼灸針保護パックを保持する容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼灸針保護パックを単数または複数保持する構造と、鍼灸針保護パックを複数並列に並べて保持する構造と、異なる種類の鍼灸針を1つの容器で分かりやすく保持する方法と、鍼パックの一部を開封し鍼灸針を突出させた状態で保持する方法及び構造と、鍼パックを残存し鍼灸針のみ取り出す方法及び構造と、鍼灸針が容器以外に触れる事なく滅菌状態を維持したまま治療する方法及び構造と、容器に残存した鍼パックを取り出す方法及び構造と、鍼灸針を計数表示する構造と、小型でシンプルな構造と、容器を折り曲げ容積を小さくする方法及び構造と、容器を携帯する構造の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な鍼治療の方法は以下の通りである。但し鍼皿は洗浄・消毒・滅菌処理が可能なもので、鍼灸針は滅菌処理して鍼パック内に密封されたものである。
【0003】
鍼灸針保護パック・鍼皿・消毒液・消毒綿・処理箱・鍼廃棄箱を用意する。
消毒液で手指と鍼皿を消毒する。
鍼灸針保護パックの鍼パックを手指で開封し、鍼灸針を使用する数だけ取り出し鍼皿に入れる。
鍼パックを処理箱に入れる。
消毒液で手指を消毒する。
消毒綿を取り出し、治療する部分を消毒する。
使用済みの消毒綿を処理箱に入れる。
鍼皿から鍼灸針を取り出す。
鍼灸針を鍼と鍼管に分離して治療する。
治療後は使用済みの鍼管は処理箱に、使用済みの鍼は鍼廃棄箱にそれぞれ入れる。
処理箱の鍼管と、鍼廃棄箱の鍼をそれぞれ数えて鍼数確認する。
消毒綿を取り出し、治療した部分を消毒する。
使用済みの消毒綿を処理箱に入れる。
【0004】
上記のように鍼灸針保護パックを開封して取り出した鍼灸針を鍼皿に入れて行う方法では、鍼パック内部は滅菌を維持しているが、鍼パック外部は空気に触れているため雑菌が付着しており、開封するとき鍼パックに触れた手指が汚染・感染するため取り出した鍼灸針も間接的に汚染・感染した。この鍼灸針を鍼皿に入れると鍼皿や他の鍼灸針にも接触するため、鍼灸針及び鍼皿が全体的に汚染・感染した。つまりこの後手指を消毒しても汚染・感染した鍼灸針で治療していた。
鍼皿に多数の鍼灸針を入れるため、一目で鍼数が分かりにくく紛失に気付かないことがあった。
鍼皿から鍼灸針を取り出すとき落下及び紛失することがあった。
異なる種類(長さ・太さなど)の鍼灸針を使用する場合は、誤鍼を防止するため複数の鍼皿に分別していた。
治療後の鍼数確認では、鍼管と鍼の双方を数えていたため、数え間違えによる抜き忘れ事故を起こすことがあった。
以上より、この方法では衛生面・安全面に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
以下に特許文献による従来技術に関して述べる。
例えば特開2008−23117では、鍼灸針を収納する鍼パックであって、鍼パック自体に開封後鍼灸針を保持する構造がなく、かつ鍼パックを残存して鍼灸針のみ取り出す構造でない。
次に特開2009−22407では、挿入口に段差があり、鍼灸針を挿入することで固定する構造であって、容器自体に開封した鍼パックを残存し鍼灸針のみ取り出す構造でなく、かつ鍼パックを挿入した場合残存した鍼パックを取り出す構造を持たない。容器を複数並列に並べた構造では、挿入口に段差があるため列の間に隙間を設けるか、各列の挿入口の高さが異なる構造となり同じ高さで構成できない。本発明は鍼灸針を保持するだけで固定するものではなく、挿入口にストッパーを設けて鍼パックを引っ掛けて残存し鍼灸針のみ取り出す構造である。
また特開平9−276365では、容器を開閉しないと鍼灸針を収納及び残存した鍼パックを取り出すことができない。容器を複数並列に並べると開閉できない。
更に特開2008−43522では、鍼灸針保護パックを未開封の状態で挿入する構造で、鍼パックを開封後挿入する構造にない。鍼パックの一部を開封し鍼灸針を突出させた状態で保持する構造であるが、ローラーを駆動しないと鍼灸針の取り出し、鍼パックの保持及び取り出しができない。
容器を複数並列に並べるとローラーが干渉するため隙間を設ける必要があり容器が拡大し、大型化及び複雑な構造となる。
【0006】
以上より鍼灸針の汚染・感染・落下・紛失・抜き忘れをなくす方法として従来技術には問題点があり、鍼灸針を保持する容器としては不十分であることが分かる。
【特許文献1】特開2008−23117
【特許文献2】特開2009−22407
【特許文献3】特開平9−276365
【特許文献4】特開2008−43522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題及び目的を以下に示す。
鍼灸針保護パックから鍼灸針を取り出す作業で、鍼灸針が汚染・感染していた。
鍼灸針の落下及び紛失があった。
異なる種類の鍼灸針を使用する場合は分別を要した。
鍼の抜き忘れによる事故を起こしていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鍼灸針10をシート材21とパック材22からなる鍼パック20で密閉した鍼灸針保護パック1を保持する容器であって、
挿入した前記鍼パック20を引っ掛けて容器の内部に留めるストッパー31と、前記鍼灸針保護パック1を遮蔽する遮蔽板前面32及び前記ストッパー31を装着した遮蔽板後面33と、前記鍼灸針保護パック1及び前記鍼灸針10の着脱を可能にする鍼灸針着脱口34を有し、
前記鍼パック20の一部を開封して前記鍼灸針10の一部を突出させた前記鍼灸針保護パック1を挿入し、前記鍼パック20から前記鍼灸針10を着脱するとき前記パック材22が前記ストッパー31に引っ掛かり、前記鍼灸針着脱口34から前記鍼灸針10のみ着脱する構造を有することを特徴とする鍼灸針保護パックを保持する容器を構成するものである。
【0009】
第2の発明は、前記鍼灸針保護パック1の着脱及び前記鍼パック20の取出しを可能にする鍼パック着脱口35を設けたことを特徴とする鍼灸針保護パックを保持する容器を構成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以下に本発明の効果を示す。
鍼灸針保護パック開封後も鍼パックに鍼灸針を保持することで、鍼灸針を汚染・感染することなく治療することができる。
同様に鍼灸針の落下及び紛失を防止することができる。
鍼灸針保護パックを並べて保持することで、異なる種類の鍼灸針も分かりやすく分別でき、誤鍼を防止することができる。
開封した鍼灸針保護パックを身体に携帯し治療することができる。
鍼灸針を計数表示することで、鍼の抜き忘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】鍼灸針保護パックの概略斜視図である。
【図2】開封した鍼灸針保護パックの挿入方法を示した容器の概略斜視図である。
【図3】挿入した鍼灸針保護パックの鍼灸針と鍼パックの着脱方法を示した容器の概略斜視図である。
【図4】容器の応用例及び容積を小さくする方法を示した容器の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1により鍼灸針保護パック1を説明する。
鍼灸針保護パック1は鍼11と鍼管12からなる鍼灸針10を、シート材21とパック材22を密着した鍼パック20の密閉空間内に密封したもので、鍼灸針10は滅菌処理された状態にある。シート材21及びパック材22の密着していない先端部分を把持して離間して鍼パック20を開封し、鍼灸針10を取り出すことができる。シート材21は紙材、パック材22は樹脂材の軟性材を使用し屈曲できるものである。
【0014】
図2は開封した鍼灸針保護パック1を容器30に挿入する方法を示し、図3は挿入した鍼灸針保護パック1から鍼灸針10と鍼パック20を着脱する方法を示したものである。
以下に容器30を説明する。
容器30は、ストッパー31と、遮蔽板前面32と、遮蔽板後面33と、鍼灸針着脱口34と、鍼パック着脱口35と、台36と、フック37と、表示38からなる。
【0015】
上部にストッパー31と鍼灸針着脱口34を設け、ストッパー31は挿入した鍼パック20を引っ掛けて容器30の内部に留めるもので、鍼灸針着脱口34は開封した鍼灸針保護パック1の挿入及び鍼灸針10の着脱を行う開口部である。
側部には前面に遮蔽板前面32と後面に遮蔽板後面33と左右に鍼パック着脱口35を設け、遮蔽板前面32と遮蔽板後面33で鍼灸針保護パック1を外部と遮蔽し、鍼パック着脱口35は鍼パック20の取り出しを行う開口部である。
底部の台36は容器30が短数列の場合などでの転倒及び外部との遮蔽を行う。
フック37はベルト、バンド、衣類などに装着し、身体に携帯するためのフックである。
表示38は開封した鍼灸針保護パック1の鍼灸針10を計数表示し、開封数または使用数が分かる。
【0016】
次に図2及び図3を用いて本発明の鍼灸針保護パックを保持する容器を用いた、鍼治療方法を説明する。
鍼灸針保護パック1・容器30・消毒液・消毒綿・処理箱・鍼廃棄箱を用意する。
消毒液で手指と容器30を消毒する。
鍼灸針保護パック1のシート材21及びパック材22を一部離間して鍼パック20を開封し、鍼灸針10の一部を突出させる。
シート材21及びパック材22を屈曲して折り曲げ、鍼灸針着脱口34に鍼灸針保護パック1の開封していない部分から挿入する。このとき、開封した鍼パック20の開封端がストッパー31より容器30の内部に収まるまで挿入する。挿入する順番は表示38に従う。
同様に鍼灸針10を使用する数だけ鍼灸針保護パック1を開封し、容器30に挿入する。
【0017】
消毒液で手指を消毒する。
消毒綿を取り出し、治療する部分を消毒する。
使用済みの消毒綿を処理箱に入れる。
容器30から鍼灸針10を取り出す。このとき鍼パック20の開封端をストッパー31に引っ掛けて鍼パック20を容器30の内部に残存する。
鍼灸針10を鍼11と鍼管12に分離して治療する。
治療後は使用済みの鍼管12は処理箱に、使用済みの鍼11は鍼廃棄箱にそれぞれ入れる。
鍼廃棄箱の鍼11を数え、表示38と比較して鍼数を確認する。
消毒綿を取り出し、治療した部分を消毒する。
使用済みの消毒綿を処理箱に入れる。
鍼パック着脱口35から鍼パック20を取り出し処理箱に入れる。
【0018】
以下に本発明の応用例を示す。
ストッパー31は鍼灸針着脱口34の前後や四方向に設けてもよい。
鍼灸針着脱口34は単数列だけでなく複数列並べてもよい。
鍼灸針着脱口34で鍼灸針保護パック1及び鍼パック20の着脱を行ってもよい。
鍼パック着脱口35で鍼灸針保護パック1及び鍼パック20の着脱を行ってもよい。
フック37をベルト、バンド、衣類などに装着するだけでなく、磁石、粘着による装着、また直接身体に携帯してもよい。
表示38は計数だけでなく、マーク、記号でもよい。
【0019】
容器30の材質は金属、樹脂、紙、ゴムなどの硬性または軟性で、形状を保持できるものであればよい。また洗浄、消毒、滅菌処理が可能または焼却可能なものであればよい。
容器30を直列に配置し、鍼灸針保護パック1を連続して並べてもよい。
図4より、鍼灸針着脱口34を囲う形で四方にストッパー31を設けた揚合、鍼灸針保護パック1が単数であっても鍼灸針10を保持しているときに転倒や鍼パック着脱口35からの落下を防止する構造としてもよい。
ストッパー31と、遮蔽板前面32及び遮蔽板後面33の接触部分を屈折して折りたたむことで容器30の容積を小さくし、携帯しやすい変形可能な構造としてもよい。
消毒綿、使用済みの鍼11や鍼管12、治療用具などを入れる小物入れを装備してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明を、その背景となった利用分野である医師及び鍼灸師による鍼灸治療で使用する鍼灸針保護パック1に適用した場合について述べたが、この発明はそれに限定されるものではなく、鍼灸針10が固体で硬質なものは勿論、軟質なもの、鍼パック20がパック式なものは勿論、袋、箱などの形状のもの、治療用具に限らず保持することが可能なもの全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・・鍼灸針保護パック
10・・・鍼灸針
11・・・鍼
12・・・鍼管
20・・・鍼パック
21・・・シート材
22・・・パック材
30・・・容器
31・・・ストッパー
32・・・遮蔽板前面
33・・・遮蔽板後面
34・・・鍼灸針着脱口
35・・・鍼パック着脱口
36・・・台
37・・・フック
38・・・表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍼灸針10をシート材21とパック材22からなる鍼パック20で密閉した鍼灸針保護パック1を保持する容器であって、
挿入した前記鍼パック20を引っ掛けて容器の内部に留めるストッパー31と、前記鍼灸針保護パック1を遮蔽する遮蔽板前面32及び前記ストッパー31を装着した遮蔽板後面33と、前記鍼灸針保護パック1及び前記鍼灸針10の着脱を可能にする鍼灸針着脱口34を有し、
前記鍼パック20の一部を開封して前記鍼灸針10の一部を突出させた前記鍼灸針保護パック1を挿入し、前記鍼パック20から前記鍼灸針10を着脱するとき前記パック材22が前記ストッパー31に引っ掛かり、前記鍼灸針着脱口34から前記鍼灸針10のみ着脱する構造を有することを特徴とする鍼灸針保護パックを保持する容器。
【請求項2】
前記鍼灸針保護パック1の着脱及び前記鍼パック20の取出しを可能にする鍼パック着脱口35を設けたことを特徴とする請求項1に記載の鍼灸針保護パックを保持する容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264201(P2010−264201A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134479(P2009−134479)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(307029397)株式会社ボーダーヒル (5)
【Fターム(参考)】