説明

鎖中央にシラノールを有する単峰性結合ジエンエラストマー、その製造方法、およびそれを含むゴム組成物

本発明は、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマー、その製造方法、並びに、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンポリマーと補強用無機充填剤とを含む、加硫状態における改良されたヒステリシスと物理的性質および生状態における改良された加工性を有する、とりわけタイヤ被覆材の製造において使用することのできるゴム組成物に関する。
鎖中央にシラノール官能基を有するこのエラストマーの製造方法は、ジエンモノマー(1種以上)と重合開始剤とのキレート化極性剤の存在下での反応、リビングジエンポリマーのカップリング剤との反応、および、その後、加水分解後の、鎖中央に官能基を有する結合ジエンポリマーの回収を含む。
本発明に従うゴム組成物は、補強用無機充填剤と鎖中央にシラノール官能基を有するこの単峰性結合エラストマーとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性(monomodal)結合ジエンエラストマー、このエラストマーの製造方法、並びに鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンポリマーと補強用無機充填剤とを含む、とりわけタイヤ被覆材の製造において使用することができ、加硫状態における改良されたヒステリシスと物理的性質および生状態での改良された加工性を有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料節減および環境保護の必要性が優先事項となってきているので、良好な機械的性質およびできるだけ低いヒステリシスを有するポリマーを製造すること、さらに、これらのポリマーを、例えば、下地層、異なる性質を有するゴム間の結合用ゴム、金属または繊維補強要素のコーティーング用ゴム、側壁ゴムまたはトレッドのようなタイヤ被覆材組成物に関連する各種半製品の製造において使用することのできるゴム組成物の形で使用し得ること且つ改良された性質、とりわけ、低減された転がり抵抗性を有するタイヤを得ることが望ましい。
【0003】
そのような目的を達成するためには、とりわけカップリング剤またはスターリング剤(星形化剤, starring agent)または官能化剤を使用して重合終了時のジエンポリマーおよびコポリマーの性質を改変することからなる多くの解決法が提案されている。これらの解決法の大多数は、本質的には、変性ポリマーとカーボンブラック間の良好な相互作用を得る目的での変性ポリマーの補強用充填剤としてのカーボンブラックと一緒の使用に集中しており、白色充填剤、とりわけシリカの使用は、そのような組成物のある種の性質ひいてはこれらの組成物を使用するタイヤのある種の性質の低レベル、例えば、低い耐摩耗性故に不適切であることが判明している。この従来技術の具体的な例としては、特許 US-B-4 677 165号を挙げることができ、この特許は、官能化リビングポリマーをベンゾフェノン誘導体と反応させてカーボンブラックを含む組成物における改良された性質を得ることを記載している。同じ目的でもって、特許US-B-4 647 625号は、リビングポリマーをN‐メチルピロリジンと反応させることによるエラストマー官能化を記載している。特許出願EP-A-0 590 491号およびEP-A-0 593 049号は、ポリマーとカーボンブラック間のより良好な相互作用を可能にするアミン官能基を担持するポリマーを記載している。
【0004】
また、タイヤトレッドを構築することを意図する組成物中での補強用充填剤としてのシリカの使用に関連する幾つかの解決法も提案されている。即ち、特許出願EP-A-0 299 074号およびEP-A-0 447 066号は、アルコキシシラン官能基を含む官能化ポリマーを記載している。これらの官能化ポリマーは、従来技術においては、ヒステリシスを低下させ且つ耐摩耗性を改良するのに有効であると説明されている;しかしながら、それらの性質は、これらのポリマーのタイヤトレッドを構築することを意図する組成物中での使用を可能にするには不適切である。さらにまた、これらのポリマーの構築は、重合溶媒の除去中にマクロ構造の変化問題をもたらしており、潜在的に有益な性質の重大な悪化を生じている。しかも、この変化は、制御するのが極めて困難である。
【0005】
さらに最近、特許出願EP-A-0 877 047号は、補強用充填剤として表面に固定させたシリカを有するカーボンブラックを使用し、シラノール官能基または少なくとも1個のシラノール末端を有するポリシロキサンブロックによって鎖末端で官能化したジエンポリマー或いは鎖に沿ってシラノール官能基によって官能化したジエンポリマーをベースとするゴム組成物を記載している。この組成物は、補強用充填剤としてカーボンブラックを含む組成物との比較においては、改良されたヒステリシス特性を示す。この組成物の生、即ち、加硫していない状態での使用は、原料混合物の高ムーニー粘度のために問題である。
【0006】
シラノール官能基によって官能化するエラストマーの幾つかの合成経路は、この文献に提示されている;とりわけ、リビングポリマー鎖と環状ポリシロキサンとの反応およびR1R2SiXnタイプのジハロシラン誘導体とリビングポリマー鎖との反応による合成が説明されており、R1およびR2は、同一または異なるものであって、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素または臭素を示し、nは整数2である。この反応は、ハンドブック"Chemistry and Technology of Silicones", Academic Press, New York, N. Y., 1968, page 95に記載されているように、鎖末端に加水分解後SiOH結合に転換するSi-X官能基を有するSBRの形成を生じる。また、このハンドブックには、このSi-X官能基が変化して縮合反応を生じ得ることも述べられている。しかしながら、特許EP 0 778 311 A1号文献によれば、官能化ポリマーの回収中の重合溶媒の水蒸気ストリッピングによる通常の回収操作ではこのSi-X官能基は変化され得ないことが知られている。
【0007】
Journal of Polymer Science: Part A, vol. 3, pages 93-103 (1965) における論文は、極性剤なしで製造したジエンエラストマーのRxSiX4-x (x = 0〜3) タイプのハロシラン誘導体を使用しての反応を記載している。2本のリビングポリマー鎖とCH3SiCl3分子との反応から得られる鎖中央にSi-Cl官能基を有する官能性ポリブタジエンの製造に触れている。当業者であれば、この反応およびその後の加水分解により、鎖中央にSiOH官能基を有するポリブタジエンを製造する結果となる。該官能性ポリブタジエンの1,2‐結合含有量は、僅か8%である。
【0008】
特許出願EP 1 398 347A1号、EP 1 400 559 A1号およびEP 1 400 560A1号は、鎖中央に少なくとも1個のSiOHまたはSiOR官能基を有する多峰性、好ましくは二峰性の複合SBRを含み、Japan Synthetic Rubber Corporation社から品名T596として販売されているタイヤ被覆材の製造において使用し得るゴム組成物の使用を開示している。この多峰性複合SBRは、200 000〜300 000g/モル範囲の数平均分子量Mnを有する35〜55質量%の非官能性SBR1、400 000〜500 000g/モル範囲の数平均分子量Mnを有する65〜35質量%のSBR2、25〜35%のスチレン含有量および50〜70%の範囲のブタジエン成分の1,2‐単位含有量(−15℃〜−30℃の範囲のガラス転移温度)、並びに550 000g/モルよりも高い数平均分子量を有する0〜10質量%のSBR3を含む。
【0009】
タイヤ用途目的において架橋させ得るゴム組成物において使用し得るエラストマーは、主として、ブタジエンとスチレンのコポリマー(SBR)またはポリブタジエン(BR)である。これらエラストマーの合成には、重合段階において極性剤を使用してガラス転移温度の調整を可能にすることを必要とする。THFタイプの非キレート化極性剤および例えば、テトラヒドロフルフリルエチルエーテルまたはテトラメチルエチレンジアミンタイプのような、少なくとも2個の原子上に少なくとも1個の非結合性ダブレット(non-bonding doublet, 非結合性電子対)を有するキレート化極性剤のような数タイプの極性剤を使用し得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、新規な工業製品である、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのミリモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%の範囲であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定したSiOH官能基のモル数対ケイ素(Si)のモル数に相応する比である鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する結合ジエンエラストマーに関する。
数Npは、比 106/サイズ排除クロマトグラフィー(SEC3D)によって測定した数平均分子量Mnによって得られる。
【0011】
また、本発明は、第1段階において、モノマー(1種以上)を、不活性炭化水素溶媒の存在または非存在下、少なくとも2個の原子上に少なくとも1個の非結合性ダブレットを有するキレート化極性剤の存在下に重合開始剤と反応させて、リビングジエンポリマーを製造し、第2段階において、それ自体既知のようにして、上記リビングジエンポリマーを、ポリマー鎖に対するカップリング剤と反応させ、加水分解後、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンポリマーを得ることからなる、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーの製造方法にも関する。
単峰性エラストマーまたはポリマーなる用語は、その分子量分布に関連して、SEC (サイズ排除クロマトグラフィー)法によって測定した数平均分子量の分布がSECクロマトグラフの分解中に単一のピークに相応することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従うコポリマーAのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【図2】本発明に従うコポリマーBのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【図3】本発明に従うコポリマーEのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【図4】本発明に従うコポリマーFのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【図5】本発明に従うコポリマーGのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【図6】本発明に従うコポリマーHのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細には、本出願法人は、驚くべきことに、重合段階において使用する極性剤の性質が上記リビングポリマー鎖とポリマー鎖に対するカップリング剤間のカップリング反応の選択性に対して影響を有することを見出した。非キレート化極性剤を使用する場合、とりわけ3分岐星状物のような種々の存在物の形成が観察されるのに対し、キレート化極性剤を使用する場合には、一方では、量Lが高く、即ち、Si原子を含むポリマー鎖の大多数がカップリングすることを示している0.36〜0.60の範囲にあること(カップリング反応の最適条件が、1個のSi原子にカップリングする2本のポリマー鎖を有することからなり、0.5のSi官能基量に相当することは既知である)を、他方では、鎖中央にシラノール官能基を有する結合エラストマーが、上記キレート化極性剤の極めて高い選択性により、極めて優勢に形成されること(官能化量L1は、> 80%、即ち、80〜100%の範囲である)を、さらに、結合ポリマー鎖の数平均分子量の分布は単峰性であることを見出している。
【0014】
上記キレート化極性剤は、重合を溶液中で実施する場合、重合開始剤の添加前に、好ましくはジエンモノマー(1種以上)および溶媒と一緒に導入する。
本発明に従う方法において使用することのできる適切なキレート化極性剤は、とりわけ、少なくとも1個の第三級アミン官能基または少なくとも1個のエーテル官能基を含む薬剤であり、好ましくは、テトラヒドロフルフリルエチルエーテルまたはテトラメチルエチレンジアミンタイプの薬剤である。
【0015】
本発明に従う方法において使用することのできる適切な共役ジエンは、とりわけ、1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;フェニル‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン;2,4‐ヘキサジエン等である。
適切なビニル芳香族化合物は、とりわけ、スチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン;ビニルナフタレン等である。
コポリマーは、99質量%〜20質量%のジエン単位と1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含み得る。
【0016】
鎖中央にシラノール官能基を担持する単峰性結合ジエンポリマーは、使用する重合条件に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記ポリマーは、ブロック、ランダム、序列または微細序列(microsequential)ポリマー等であり得、分散液または溶液中で製造し得る。アニオン重合を使用する場合、これらのポリマーのミクロ構造は、変性剤および/またはランダム化剤の存在または非存在によって、および使用する変性剤および/またはランダム化剤の量によって決定し得る。
本発明に従う方法によって製造し得る単峰性結合ジエンポリマーは、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー或いは1種以上の共役ジエンの相互または8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマーを意味するものと理解されたい。
【0017】
とりわけ好ましくは、鎖中央にシラノール官能基を担持する上記単峰性結合ジエンポリマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン‐スチレンコポリマー(SBR)、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)、イソプレン‐スチレンコポリマー(SIR)およびブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマー(SBIR)からなる溶液中で製造した“高不飽和”ジエンエラストマーの群から選ばれる。
さらに好ましくは、上記エラストマーは、溶液中で製造したポリブタジエン、ブタジエン‐スチレンコポリマーおよびブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマー、並びにポリイソプレンからなる群に属する。
有利には、上記エラストマーは、溶液中で製造したブタジエン‐スチレンコポリマーである。
有利には、上記エラストマーは、20質量%〜45質量%のスチレン含有量、15%〜65%のブタジエン成分のビニル結合含有量、15%〜75%のトランス‐1,4‐結合含有量および−5〜−65℃、好ましくは−20〜−55℃のTgを有する溶液中で製造したブタジエン‐スチレンコポリマーである。
【0018】
好ましくは、ポリブタジエン、とりわけ、15%〜80%の1,2‐単位含有量を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン‐スチレンコポリマー、とりわけ、4〜50質量%、とりわけ20質量%〜40質量%のスチレン含有量、15%〜65%のブタジエン成分の1,2‐結合含有量および10%〜80%のトランス‐1,4‐結合含有量を有するコポリマー;ブタジエン‐イソプレンコポリマー、とりわけ、5〜90質量%のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のガラス転移温度(Tg)を有するコポリマー;および、イソプレン‐スチレンコポリマー、とりわけ、5〜50質量%のスチレン含有量および−5℃〜−50℃のTgを有するコポリマーが適している。ブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマーの場合、適切なコポリマーは、5〜50質量%、とりわけ10質量%〜40質量%のスチレン含有量、15質量%〜60質量%、とりわけ20質量%〜50質量%のイソプレン含有量、5〜50質量%、とりわけ20質量%〜40質量%のブタジエン含有量、15%〜85%のブタジエン成分の1,2‐単位含有量、6%〜80%のブタジエン成分のトランス‐1,4‐単位含有量、15%〜70%のイソプレン成分の1,2‐単位+3,4‐単位含有量および10%〜50%のイソプレン成分のトランス‐1,4‐単位含有量を有し、より一般的には、−5℃〜−70℃のTgを有する任意のブタジエン‐スチレン‐イソプレンコポリマーである。
【0019】
重合開始剤としては、任意の既知の単官能性アニオン開始剤を使用し得る。しかしながら、好ましくは、リチウムのようなアルカリ金属を含む開始剤を使用する。適切な有機リチウム開始剤は、とりわけ、炭素‐リチウム結合を含む開始剤である。典型的な化合物は、エチルリチウム、n‐ブチルリチウム(n-BuLi)、イソブチルリチウム等のような脂肪族有機リチウム化合物である。ピロリジンおよびヘキサメチレンイミンのような環状第二級アミンから得られ、且つ炭化水素溶媒中に溶媒和剤を使用することなく可用性であるリチウムアミドは、極めて好ましい。
【0020】
重合は、それ自体知られているとおり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロヘキサンのような脂肪族または脂環式炭化水素或いはベンゼン、トルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素であり得る不活性炭化水素溶媒の存在下に実施する。
重合は、連続的にまたはバッチ方式で実施し得る。重合は、一般に20℃〜150℃、好ましくは30度近く乃至は110℃の温度で実施する。
第1段階の結果として得られるリビングジエンポリマーのカップリング反応は、−20℃〜100℃の温度で、非重合性カップリング剤をリビングポリマー鎖に付加することによって或いはその逆によって生じ得る。混合は、任意の適切な手段により、とりわけ、当業者にとって既知の完全撹拌タイプの静的タイプおよび/または任意の動的ミキサーの撹拌を行う任意のミキサーを使用して実施し得る。リビングジエンポリマーとカップリング剤間の反応時間は、10秒〜2時間であり得る。
【0021】
適切なカップリング剤は、式RSiXnに相応する全ての化合物であり、式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する第一級もしくは第二級アルキル、シクロアルキルまたはアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素または臭素を示し、nは整数3である。カップリング剤RSiXnと上記リビングポリマー鎖の開始剤の金属とのカップリングにおける比は、0.4〜1.0、好ましくは0.5〜0.7である。
上記ポリマー鎖のカップリング反応において使用する溶媒は、好ましくは、重合において使用する不活性炭化水素溶媒と同じであり、好ましくはシクロヘキサンまたは任意の他の脂肪族炭化水素溶媒である。反応前の溶媒/モノマー(1種以上)の質量比は、1〜15、好ましくは4〜7である。重合工程は、連続法またはバッチ方式により実施し得る。
【0022】
鎖中央にシラノール官能基を有し且つ本発明に従う方法によって製造した結合ジエンポリマーは、100 000g/モル〜350 000g/モル、好ましくは114 000g/モル〜185 000g/モルの通常のSEC法によって測定した数平均分子量Mnを有する。
ムーニー粘度(100℃でのML1+4)は、好ましくは、20〜150である。
鎖中央にシラノール官能基を有し且つ本発明に従う方法によって製造した結合ジエンポリマーは、通常の回収方法に従って、とりわけ、高温条件下および/または減圧下に乾燥させることによって或いはストリッピングによって回収する。
【0023】
本発明のもう1つの目的および主題は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(例えば、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する少なくとも1種以上の単峰性結合ジエンポリマーと、補強用無機充填剤とをベースとし、且つ架橋状態における低減されたヒステリシス損失および架橋していない状態での改良された加工能力を示し、また、ゴム組成物を製造するのに使用する特定の能力を有する架橋性または架橋ゴム組成物である。
【0024】
この目的は、本出願法人が、驚くべきことに、例えば、上述したような製造方法に従って得られた、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する本発明に従う少なくとも1種の単峰性結合ジエンエラストマーの補強用無機充填剤との組合せによって得られた架橋ゴム組成物が、鎖末端活性官能基、とりわけシラノール官能基を含むポリマーをベースとする既知の組成物が示すのと同等で且つ充填剤としてシリカを含む官能化されていないポリマーをベースとする組成物と比較して改良された小および大ひずみでのヒステリシス喪失の低減を示すとともに、充填剤としてシリカを含み且つ鎖末端にシラノール官能基を担持する官能化ジエンポリマーを有する既知の組成物と比較して改良されており、且つ官能化されていないポリマーをベースとし充填剤としてシリカを含む組成物と匹敵する架橋されていない状態での加工特性を有すること正しく発見したことで達成される。
【0025】
本発明に従う鎖中央にシラノール官能基を含み、官能基(Si)の全体量Lが0.36〜0.60の範囲であり且つ鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲である単峰性結合ジエンエラストマーの上記特性は、このエラストマーを使用して、新品または再トレッド形成タイヤにおいてとりわけ低減された転がり抵抗性を示すタイヤトレッドとして或いは、例えば下地層を製造するためのまたはクラウンもしくはカーカス補強材をカレンダー加工するためのタイヤ内部の混合物として有利に使用することのできるゴム組成物を製造するのを可能にする。
【0026】
本発明のもう1つの主題は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する本発明に従う少なくとも1種の単峰性結合ジエンポリマーと、補強用無機充填剤とをベースとするゴム組成物をベースとするトレッドを含むタイヤである。
【0027】
本発明の好ましい特徴によれば、上記組成物は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する少なくとも1種の単峰性結合ジエンエラストマーを主として含むエラストマーマトリックスをベースとする:さらに好ましくは、このエラストマーマトリックスは、鎖中央にシラノール官能基を有する上記単峰性結合ジエンエラストマーのみからなる。
【0028】
“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または現場反応生成物を含む組成物を意味するものとして理解すべきであり、これらのベース構成成分の幾つかは、組成物製造の種々の段階において、とりわけ組成物の架橋中に互いに少なくとも1部反応し得るか或いは反応するように意図する。
【0029】
勿論、本発明に従う組成物は、上述した単峰性結合ジエンエラストマーのような、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する正しく1種の単峰性結合ジエンエラストマー或いは数種の上記エラストマーの混合物を含み得る。
【0030】
本発明に従う、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する上記単峰性結合ジエンエラストマーは、本発明に従う組成物において単独でまたはタイヤにおいて通常使用する任意の他の官能化したまたは官能化していないジエンエラストマーとブレンドして使用することができる。
【0031】
本発明に従う組成物の諸性質の改良は、この組成物中の通常のエラストマー(1種以上)の割合が低下するにつれて向上することに留意すべきである。
【0032】
本特許出願においては、“補強用無機充填剤”とは、知られているとおり、カーボンブラック(本説明の関連においては有機充填剤とみなす)に対比して、“白色”充填剤または“透明”充填剤としても知られている、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない無機または鉱質充填剤を意味するものと理解されたい;この無機充填剤は、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラック充填剤とその補強役割において置換わり得る。そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有し、この場合、上記エラストマーと充填剤間に安定な結合を付与することを意図するカップリング剤またはカップリング系の使用を必要とする。
【0033】
好ましくは、上記補強用無機充填剤は、本発明の組成物中に、20〜200pce (pce:エラストマー(1種以上)100質量部当りの質量部)、より好ましくは40〜150pceの量で存在する;最適量は、目的とする用途によって異なる。また、好ましくは、上記補強用無機充填剤は、本発明の組成物が含む補強用充填剤中で、50%よりも多く且つ100%までの範囲であり得る質量画分に従って存在する。
【0034】
有利には、上記補強用無機充填剤は、その全体または少なくとも主要量において、シリカ(SiO2)である。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、とりわけ、共に450m2/gよりも低いBET比表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカであり得、高分散性沈降シリカが好ましい。
本明細書においては、BET比表面積は、知られているとおり、"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載され、規格AFNOR-NFT-45007 (1987年11月)に相応するBrunauer-Emmett-Teller法に従って測定する; CTAB比表面積は、1987年11月の同じ規格AFNOR-NFT-45007に従って測定した外表面積である。
【0035】
高分散性シリカは、薄い切片において電子または光学顕微鏡によって既知の方法で観察し得る、エラストマーマトリックス中での極めて高度の離解および分散能力を有する任意のシリカを意味するものと理解されたい。そのような好ましい高分散性シリカの非限定的な例としては、出願 WO 03/016387号に記載されているような、Akzo社からのシリカPerkasil KS 430;Degussa社からのシリカBV 3380;Rhodia社からのシリカ類Zeosil 1165 MP、1135 MPおよび1115 MP;PPG社からのシリカ類Hi-Sil 2000およびHi-Sil EZ150G;Huber社からのシリカ類Zeopol 8715、8755または8745;或いは、例えば、特許 EP-A-735 088号の明細書に記載されているアルミニウムで“ドーピング”したシリカ類のような処理沈降シリカを挙げることができる。
【0036】
補強用無機充填剤に付与されたその物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒またはビーズのいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤は、種々の補強用無機充填剤の、とりわけ、上述したような高分散性シリカの混合物を意味することも理解されたい。また、補強用無機充填剤としては、30〜400 m2/g、より好ましくは60〜250 m2/gの範囲のBET比表面積および大きくとも500nmに等しい、より好ましくは大きくとも200nmに等しい平均粒度を有する高分散性アルミナ(Al2O3)も適している。そのような補強用アルミナの非限定的な例としては、とりわけ、アルミナ類“Baikalox A125”または“CR125”(Baikowski社)、“APA-100RDX”(Condea社)、“Aluminium Oxide C”(Degussa社)または“AKP-G015”(Sumitomo Chemicals社)を挙げることができる。
【0037】
本発明に従うゴム組成物の補強用充填剤は、上記補強用無機充填剤(1種以上)以外に、小量(即ち、50%よりも少ない質量画分による)のカーボンブラックまたは不活性(非補強用)充填剤も、ブレンド(混合物)として含み得る。適切なカーボンブラックは、タイヤにおいて、とりわけタイヤトレッドにおいて通常使用される全てのカーボンブラック類、とりわけ、HAF、ISAFおよびSAFタイプのブラック類である。そのようなブラック類の非限定的な例としては、ブラック類N115、N134、N234、N339、N347およびN375を挙げることができる。適切な非補強用無機充填剤は、クレー、ベントナイト、タルク、チョークまたはカオリンの粒子である。
【0038】
例えば、ブラック/シリカブレンドまたはシリカで部分的にまたは完全に被覆したブラック類は、補強用充填剤を構成するのに適している。また、無機層で、例えば、シリカで少なくとも部分的に被覆され、その部分においては、エラストマーとの結合を確立するためのカップリングの使用を必要とするカーボンブラックを含む補強用充填剤、例えば、限定するまでもなく、Cabot社から品名“CRX 2000”として販売されており、特許 WO-A-96/37547号の明細書に記載されている充填剤も適している。
また、補強用無機充填剤としては、限定するまでもないが、ヨーロッパ特許 EP-A-810 258号の明細書に記載されている高分散性を有するアルミナのようなアルミナ類(式Al2O3を有する)或いは特許 WO-A-99/28376号の明細書に記載されているような水酸化アルミニウムも使用し得る。
【0039】
補強用充填剤が補強用無機充填剤とカーボンブラックのみを含む場合、該補強用充填剤中のこのカーボンブラックの質量画分は、好ましくは、30%以下に選定する。
しかしながら、経験によれば、本発明に従う組成物の上記諸性質は、組成物が含む補強用充填剤がより多くの質量画分の補強用無機充填剤を含むのに比例して改良されること、また、上記諸性質は、上記組成物が、補強用充填剤として、補強用無機充填剤、例えば、シリカのみを含む場合に最適であることが明らかである。従って、後者の場合は、本発明に従うゴム組成物の好ましい例を構成する。
【0040】
さらに、本発明に従うゴム組成物は、通常、補強用無機充填剤/エラストマーマトリックス結合剤を含む。
結合剤は、より具体的には、当該充填剤とエラストマー間に化学および/または物理的性質の満足し得る結合を確立するとともに、この充填剤のエラストマーマトリックス内での分散を容易にすることのできる薬剤を意味するものと理解されたい。そのような少なくとも二官能性の結合剤は、例えば、簡略化した一般式“Y-T-X”を有し、式中、
Yは、無機充填剤に物理的および/または化学的に結合し得る官能基(“Y”官能基)を示し、そのような結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカが関連する場合の表面シラノール類)間で確立され得;
Xは、上記エラストマーに、例えば、イオウ原子を介して物理的および/または化学的に結合し得る官能基(“X”官能基)を示し;
Tは、YとXを連結し得る2価の基である。
【0041】
上記結合剤は、上記充填剤に対して活性であるY官能基を公知の形で含み得るが上記エラストマーに対して活性であるX官能基は含んでいない、当該充填剤を被覆するための単純な薬剤と混同すべきではない。タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物において、補強用無機充填剤、例えば、シリカとジエンエラストマー間に結合(またはカップリング)を有効にもたらすことが知られているまたはもたらすことができる、例えば、オルガノシラン類、とりわけ、上記XおよびY官能基を担持するアルコキシシランポリスルフィド類もしくはメルカプトシラン類またはポリオルガノシロキサン類のような任意の結合剤を使用し得る。シリカ/エラストマー結合剤は、詳細には、多くの文献に記載されており、知られている最良のものは、アルコキシシランポリスルフィドのような二官能性アルコキシシラン類である。
【0042】
とりわけ、その特定の構造に従い“対称形”または“非対称形”として知られ、例えば、そのような既知の化合物を詳細に説明している特許US-A-3 842 111号、US-A-3 873 489号、US-A-3 978 103号、US-A-3 997 581号、US-A-4 002 594号、US-A-4 072 701号およびUS-A-4 129 585号において、或いは、さらに最近の特許US-A-5 580 919号、US-A-5 583 245号、US-A-5 650 457号、US-A-5 663 358号、US-A-5 663 395号、US-A-5 663 396号、US-A-5 674 932号、US-A-5 675 014号、US-A-5 684 171号、US-A-5 684 172号、US-A-5 696 197号、US-A-5 708 053号、US-A-5 892 085号、EP-A-1 043 357号、WO 03/002648号(またはUS 2005/0016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/0016650号)において記載されているようなアルコキシシランポリスルフィド類を使用する。
【0043】
とりわけ適しているのは、以下の定義に限定するものではないが、下記の一般式(I)に相応する“対称形”のアルコキシシランポリスルフィド類である:
(I) Z-A-Sn-A-Z
(式中、nは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、二価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、とりわけC1〜C10アルキレン基、とりわけC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】


(置換または非置換のR1基は、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル基、C5〜C18シクロアルキル基またはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基、とりわけC1〜C4アルキル基、とりわけメチルおよび/またはエチル)を示し;
置換または非置換のR2基は、互いに同一かまたは異なるものであって、ヒドロキシル、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1〜C8アルコキシルまたはC5〜C8シクロアルコキシル基、より好ましくはC1〜C4アルコキシル基、とりわけメトキシルおよびエトキシル)を示す)。
【0044】
上記式(I)に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、とりわけ、通常の商業的に入手し得る混合物の場合、“n”指数の平均値は、好ましくは2〜5の間、より好ましくは4に近い分数であることを理解されたい。
【0045】
アルコキシシランポリスルフィドの例としては、とりわけ、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類のような、ビス((C1〜C4)アルコキシル(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(とりわけ、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)である。これらの化合物のうちでは、とりわけ、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。TESPDは、例えば、Degussa社から品名Si266またはSi75 (第2の場合は、ジスルフィド(75質量%)とポリスルフィド類の混合物形)として、或いはWitco社から品名Silquest A1589として市販されている。TESPTは、例えば、Degussa社から品名Si69として(または、カーボンブラック上に50質量%で支持されている場合のX50S)、或いはOsi Specialties社から品名Silquest A1289として市販されている(両者とも、4に近い平均値nを有するポリスルフィド類の市販混合物)。また、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(とりわけ、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、とりわけ、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド(MESPTと略称する)またはジスルフィドも挙げることができ、これらは、本出願法人の権利としての国際特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/0132880号)の主題を構成する。
【0046】
上記のアルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤の例としては、とりわけ、出願WO 02/30939号およびWO 02/41041号に開示されているような、二官能性ポリオルガノシロキサン類またはヒドロキシシランポリスルフィド類を挙げることができる。
本発明に従う組成物においては、カップリング剤の量は、有利には20pce未満、好ましくは10pce未満であり、できる限り最低での使用が一般的に望ましく、補強用無機充填剤の量に対して調整されることを理解されたい。
【0047】
また、本発明に従う組成物は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する上記単峰性結合ジエンエラストマーおよび上記補強用無機充填剤以外に、可塑剤、顔料、酸化防止剤、疲労防止剤、オゾン劣化防止ワックス、接着促進剤、例えば文献WO 02/10269号に記載されている補強用または可塑化用樹脂、過酸化物および/またはビスマレイミド、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M)、イオウおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系、一酸化亜鉛およびステアリン酸を含む架橋活性化剤、グアニジン誘導体(とりわけ、ジフェニルグアニジン)、増量オイル;アルコキシラン、ポリオールまたはアミンのようなシリカを被覆するための1種以上の薬剤も含む。
【0048】
とりわけ、これらの組成物は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する上記単峰性結合ジエンエラストマーを、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル、好ましくは30℃よりも高い高Tgを有する可塑化用炭化水素樹脂およびそのような可塑剤の混合物からなる群から選ばれる芳香族オイルまたは非芳香族オイルまたは極めて僅かに芳香族系オイルで、0〜50pceの増量オイル量でもって増量するようにし得る。
【0049】
本発明のもう1つの主題は、本発明に従う架橋性ゴム組成物の製造方法である。この方法は、下記の工程を含む:
(i) 130℃〜200℃の最高温度で、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する上記単峰性結合ジエンエラストマーと、補強用無機充填剤とを架橋系を除いて含む上記組成物において必要な、架橋系を除くベース構成成分の熱機械的加工の第1工程(“非生産段階とも称す)を実施する工程;その後の、
(ii) 上記第1工程の上記最高温度よりも低い、好ましくは120℃よりも低い温度で、機械的加工の第2工程を実施し、その間に、上記架橋系を混入する工程;
(iii) そのようにして得られたゴム組成物を所望形状に押出またはカレンダー加工してトレッドのような半製品を製造する工程。
【0050】
また、上記方法は、鎖中央にシラノール官能基を有し、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり(即ち、Si官能基の量は36%〜60%であり)、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定した鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有する単峰性結合ジエンエラストマーの製造工程も含み、該工程は、上記工程(i)、(ii)および(iii)を実施する前に、第1段階において、モノマー(1種以上)を、不活性炭化水素溶媒の存在または非存在下、少なくとも2個の原子上に少なくとも1個の非結合性ダブレットを有するキレート化極性剤の存在下に重合開始剤と反応させて、リビングジエンポリマーを得、第2段階において、それ自体既知のとおりに、リビングジエンポリマーを、ポリマー鎖に対するカップリング剤と反応させ、加水分解後、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンポリマーを得ることからなる。
【0051】
本発明のもう1つの主題は、上述した組成物のような架橋性または架橋ゴム組成物を含むような或いはこの組成物からなるようなタイヤトレッドである。
架橋状態の本発明に従うゴム組成物を特徴付ける低減されたヒステリシスにより、上記組成物を含むトレッドを有するタイヤは有利に低下した転がり抵抗性を示すことに注目すべきである。
本発明に従うタイヤは、このトレッドを含むようにする。
【0052】
本発明の上記特徴および他の特徴は、以下の本発明の幾つかの典型的な実施態様の説明を、本発明に従うコポリマーA、B、E、F、GおよびHそれぞれのSEC法によって測定した質量平均分子量Miの分布を示す添付図面1〜6と関連して読めば容易に理解し得るであろう。これらの図面において、X軸は、十進法対数方式(decimal logarithmic form)において、ポリマーのg/モルでの分子量(Mi)の尺度を示し;Y軸は、数平均分子量Miを有するポリマーの質量に比例する任意尺度を示す。
【実施例】
【0053】

【0054】
1) 本発明に従う鎖中央にSiOH官能基を有する結合コポリマーAのキレート化極性剤を使用しての調製
105グラムのシクロヘキサン(135ml)、ブタジエンおよびスチレンを、それぞれの質量比 1/0.091/0.051でもって、窒素下に維持した0.25lの“対照”ボトルおよび本発明を実施することを意図するもう1つの同じボトルに導入する。また、22ppmのテトラヒドロフルフリルエチルエーテルも、ビニル結合の促進剤として導入する。n‐ブチルリチウム(n-BuLi)を使用して不純物を中和した後、123μモルのn‐ブチルリチウムを添加する。重合を2つのボトルの各々において40℃で実施したところ、転換モノマー量は、100分後で76%である。この量は、110℃で26.66kPa (200mmHg)の減圧下に乾燥させた抽出物を秤量することによって測定する。
重合生成物を含む“対照”ボトルにおいては、重合を、リチウムに対しての過剰のメタノールによって中断する。トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度(“出発”粘度)は、0.94dl/gである。SEC3D法によって測定したこの対照の分子量Mnは92 000g/モルであり、PIは1.07である。
【0055】
本発明に従うカップリング剤を使用してのカップリング
メチルトリクロロシラン(61μモル)溶液を、この同じ重合生成物を含む上記第2のボトルに注入する。従って、Si/Li比は0.50である。0℃で20分間反応させた後、カップリング反応をリチウムに対しての過剰の水で中断し、残存のSiCl官能基を加水分解する。測定した最終固有粘度は、1.52dl/gである。
上記“最終”粘度対上記“出発”粘度の比として定義する粘度の急上昇は、この場合1.62である。そのようにしてカップリングさせたポリマーのML粘度は41である。
【0056】
そのようにして得られた鎖中央においてSiOHで官能化した結合コポリマーAを、エラストマー100部当り0.35部(pce)の4,4‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノール)とエラストマー100部当り0.10部(pce)のN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを添加することによって酸化防止処理に供する。このポリマーを、60℃のオーブン内で窒素流下に乾燥させることによって回収する。
【0057】
このポリマーAのミクロ構造を、13C NMRによって測定する:
1,4‐トランス単位の質量レベルは34%であり、1,4‐シス単位の質量レベルは25%であり、1,2‐単位の質量レベルは41%である(これらの3つのレベルの各々は、ブタジエン単位に関する)。
スチレンの質量レベルは、27%である。
【0058】
通常のSEC法によって測定したこのポリマーAの分子量Mnは139 000g/モルであり、分子量Mwは158 000g/モルであり、PIは1.14である。
コポリマーAにおいて1H NMRによって測定したCH3Si官能基の量は4.15ミリモル/kgであり、これは、上記分子量Mnを考慮すれば、0.38の量Lに相応する。
2D 1H-29Si NMR分析は、δSi = + 8 ppmにおいて単一の相関スポットを示している。このことは、官能化量L1が100%であること、即ち、その形が鎖中央において100%のCH3Si(SBR)2OHを含む形であることと結論付けるのを可能にしている。
上記NMRおよびSEC分析は、キレート化極性剤の存在下に実施したカップリング反応がとりわけ選択性であるという事実を例証している。
【0059】
2) 鎖中央にSiOH官能基を有する結合ポリマーBの非キレート化極性剤を使用しての調製
この試験は、本発明に対する対照である。
105グラムのシクロヘキサン(135ml)、ブタジエンおよびスチレンを、それぞれの質量比 1/0.104/0.045でもって、窒素下に維持した0.25lの“対照”ボトルおよび本発明を実施することを意図するもう1つの同じボトルに導入する。また、2 600ppmのテトラヒドロフランも、ビニル結合の促進剤として導入する。n-BuLiを使用して不純物を中和した後、123μモルのn‐ブチルリチウムを添加する。重合を2つのボトルの各々において40℃で実施したところ、転換モノマー量は、100分後で78%である。この量は、110℃で26.66kPa (200mmHg)の減圧下に乾燥させた抽出物を秤量することによって測定する。
重合生成物を含む“対照”ボトルにおいては、重合を、リチウムに対しての過剰のメタノールによって中断する。トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度(“出発”粘度)は、0.92dl/gである。SEC3D法によって測定したこの対照の分子量Mnは98 000g/モルであり、PIは1.07である。
【0060】
カップリング剤を使用してのカップリング
メチルトリクロロシラン(61μモル)溶液を、この同じ重合生成物を含む他のボトルに注入する。従って、Si/Li比は0.50である。0℃で20分間反応させた後、カップリング反応をリチウムに対しての過剰の水で中断し、残存のSiCl官能基を加水分解する。測定した“最終”固有粘度は、1.85dl/gである。
上記“最終”粘度対上記“出発”粘度の比として定義する粘度の急上昇は、この場合2.01である。そのようにしてカップリングさせたポリマーのML粘度は60である。
【0061】
そのようにして得られた鎖中央においてSiOHで官能化した結合コポリマーBを、エラストマー100部当り0.35部(pce)の4,4‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノール)とエラストマー100部当り0.10部(pce)のN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを添加することによって酸化防止処理に供する。このポリマーを、60℃のオーブン内で窒素流下に乾燥させることによって回収する。
【0062】
このポリマーBのミクロ構造を、13C NMRによって測定する:
1,4‐トランス‐BRの質量レベルは34%であり、1,4‐シス‐BRの質量レベルは22%であり、1,2‐BRの質量レベルは44%である(これらの3つのレベルの各々は、ブタジエン単位に関する)。スチレンの質量レベルは、26%である。
【0063】
通常のSEC法によって測定したこのポリマーBの分子量Mnは170 000g/モルであり、分子量Mwは209 000g/モルであり、PIは1.23である。
コポリマーBにおいて1H NMRによって測定したCH3Si官能基の全体量は4.2ミリモル/kgであり、これは、0.42の量Lに相応する。
【0064】
2D 1H-29Si NMR分析は、予測生成物(鎖中央の(SBR)2SiCH3OH形)に相応するδSi = + 8 ppmにおいて、ジェミナル生成物(鎖末端のSBRSiCH3(OH)2形)に相応するδSi = − 8 ppmにおいて、そして、星形生成物((SBR)3SiCH3形)に相応する
【数1】

においての3つの相関スポットを示している。各ピーク領域の積分は、δSi = + 8 ppmの領域において47%、δSi = − 8 ppmの領域において35%、そして
【数2】

の領域において18%の分布を示している。
コポリマーBは、鎖中央においてSiOH官能基の形で生じた47%のSiの割合を有している。
上記NMRおよびSEC分析は、数種の官能基が高割合で存在すると結論付けるのを可能にしており、非キレート化極性剤の存在下で実施したカップリング反応が選択性でないという事実を特徴付けている。
【0065】
3) 鎖末端にSiOH官能基を有する“対照”SBR Cの調製
ヘキサメチルシクロトリシロキサンで官能化したこの線状“対照”SBR Cは、スチレンとブタジエンの共重合によって調製する。
105グラムのシクロヘキサン(135ml)、ブタジエンおよびスチレンを、それぞれの質量比 1/0.091/0.051でもって、窒素下に維持した0.25lのボトルに導入する。また、15ppmのテトラヒドロフルフリルエチルエーテルも、ビニル結合の促進剤として導入する。不純物を中和した後、90μモルのn‐ブチルリチウムを添加する。重合を上記ボトルにおいて40℃で実施したところ、転換モノマー量は、120分後で74%である。この量は、110℃で26.66kPa (200mmHg)の減圧下に乾燥させた抽出物を秤量することによって測定する。
【0066】
ヘキサメチルシクロトリシロキサンを使用しての官能化
ヘキサメチルシクロトリシロキサン(45μモル)溶液を、この重合生成物を含む上記ボトルに注入する。従って、Si/Li比は1.50である。40℃で20分間反応させた後、官能化反応をリチウムに対しての過剰のメタノールで中断する。トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した“最終”固有粘度は、1.59dl/gである。
【0067】
そのようにして得られたヘキサメチルシクロトリシロキサンで官能化した線状“対照”コポリマーCを、エラストマー100部当り0.35部(pce)の4,4‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノール)とエラストマー100部当り0.10部(pce)のN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを添加することによって酸化防止処理に供する。このポリマーを、60℃のオーブン内で窒素流下に乾燥させることによって回収する。
【0068】
通常のSEC法によって測定したこのポリマーCの分子量Mnは、133 000g/モルである。
このコポリマーのML粘度は、39である。
このコポリマーCのミクロ構造を、13C NMRによって測定する:1,4‐トランス‐BRの質量レベルは34%であり、1,4‐シス‐BRの質量レベルは25%であり、1,2‐BRの質量レベルは44%である(これらの3つのレベルの各々は、ブタジエン単位に関する)。
スチレンの質量レベルは、26%である。
2D 1H-29Si NMR分析は、SBR(CH3)2SiOHタイプの鎖末端官能基が存在すると結論付けることを可能にしている。コポリマーCにおいて1H NMRによって測定した(CH3)2Si官能基の量は、5.70ミリモル/kgである。
【0069】
4) 非官能性“対照”SBR Dの調製
この非官能性“対照”SBR Dは、スチレンとブタジエンの共重合によって調製する。
105グラムのシクロヘキサン(135ml)、ブタジエンおよびスチレンを、それぞれの質量比 1/0.091/0.051でもって、窒素下に維持した0.25lのボトルおよびもう1つの同じボトルに導入する。また、15ppmのテトラヒドロフルフリルエチルエーテルも、ビニル結合の促進剤として導入する。n-BuLiを使用して不純物を中和した後、90μモルのn‐ブチルリチウムを添加する。重合を上記ボトルにおいて40℃で実施したところ、転換モノマー量は、123分後で75%である。この量は、110℃で26.66kPa (200mmHg)の減圧下に乾燥させた抽出物を秤量することによって測定する。
重合生成物を含むボトルにおいて、重合を、リチウムに対しての過剰のメタノールで中断する。トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度は、1.59dl/gである。
【0070】
そのようにして得られた線状“対照”コポリマーDを、エラストマー100部当り0.35部(pce)の4,4‐メチレンビス(2,6‐ジ(tert‐ブチル)フェノール)とエラストマー100部当り0.10部(pce)のN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを添加することによって酸化防止処理に供する。このポリマーを、60℃のオーブン内で窒素流下に乾燥させることによって回収する。
【0071】
このコポリマーのML粘度は、39である。
通常のSEC法によって測定したこのポリマーDの分子量Mnは、143 000g/モルである。
このポリマーDのミクロ構造を、13C NMRによって測定する:1,4‐トランス‐BRの質量レベルは33%であり、1,4‐シス‐BRの質量レベルは24%であり、1,2‐BRの質量レベルは43%である(これらの3つのレベルの各々は、ブタジエン単位に関する)。
スチレンの質量レベルは、26%である。
【0072】

【0073】
1) 本発明に従う鎖中央にSiOH官能基を有する結合コポリマーEの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/11/3.2/0.045でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り160マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り1160μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を70℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は96%であり、トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度は1.28dl/gである。SEC3Dによって測定した分子量Mnは、83 000g/モルである。
【0074】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り638マイクロモルのメチルトリクロロシラン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。3分間のこのカップリング反応の後、100gのモノマー当り580ミリモルの水をこの溶液に添加し、その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、本発明に従う鎖中央でSiOHによって官能化した結合コポリマーを得る。
【0075】
このコポリマーEの固有粘度は1.69dl/gであり、粘度急上昇は1.32であり、そのML粘度は55である。通常のSEC法によって測定した上記コポリマーの分子量は137 000g/モルであり、分子量Mwは237 000g/モルであり、PIは1.73である。
このコポリマーEのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーEのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、59%のビニル単位、21%の1,4‐シス単位および20%の1,4‐トランス単位を含む。
コポリマーEにおける1H NMRによって測定したCH3Si官能基の量は、5.03ミリモル/kgであり、0.42の量Lに相応している。
【0076】
2D 1H-29Si NMR分析は、予測生成物(鎖中央の(SBR)2SiCH3OH形)に相応するδSi = + 8 ppmにおいて、そして、結合ジェミナル生成物(SBRSiCH3(OH)-O-SiCH3(OH)SBR形)に相応するδSi = − 15.4 ppmにおいての2つの相関スポットを示している。各ピーク領域の積分は、δSi = + 8 ppmの領域において94%、δSi = − 15.4 ppmの領域において6%の分布を示している、すなわち、この分析は、官能化の度合L1が94%であると結論付けるのを可能にしている。
上記NMRおよびSEC分析は、キレート化極性剤の存在下に実施したカップリング反応がとりわけ選択性であるという事実を例証している。
【0077】
2) 本発明に従う鎖中央にSiOH官能基を有する結合コポリマーFの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/11/3.2/0.043でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り200マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り800μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を70℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は95%であり、トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度は1.61dl/gである。SEC3D法によって測定した分子量Mnは、118 000g/モルである。
【0078】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り560マイクロモルのメチルトリクロロシラン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。3分間のこのカップリング反応の後、100gのモノマー当り400ミリモルの水をこの溶液に添加し、その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、本発明に従う鎖中央でSiOHによって官能化した結合コポリマーを得る。
【0079】
このコポリマーFの固有粘度は2.18dl/gであり、粘度急上昇は1.35であり、そのML粘度は81である。通常のSEC法によって測定した上記コポリマーの分子量は185 000g/モルであり、分子量Mwは323 000g/モルであり、PIは1.75である。
このコポリマーFのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーFのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、21%の1,4‐シス単位および21%の1,4‐トランス単位を含む。
コポリマーFにおける1H NMRによって測定したCH3Si官能基の量は、4.06ミリモル/kgであり、0.48の量Lに相応している。
【0080】
2D 1H-29Si NMR分析は、予測生成物(鎖中央の(SBR)2SiCH3OH形)に相応するδSi = + 8 ppmにおいて、ジェミナル生成物(鎖末端のSBRSiCH3(OH)2形)に相応するδSi = − 8 ppmにおいて、そして、星形生成物((SBR)3SiCH3形)に相応する
【数3】

においての3つの相関スポットを示している。各ピーク領域の積分は、δSi = + 8 ppmの領域において94%、δSi = − 8 ppmの領域において3%、そして
【数4】

の領域において3%の分布を示している、すなわち、この分析は、官能化の度合L1が94%であると結論付けるのを可能にしている。
【0081】
3) 本発明に従う鎖中央にSiOH官能基を有する結合コポリマーGの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/11/3.2/0.048でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り160マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り1460μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を70℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は97%であり、トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度は1.06dl/gである。SEC3D法によって測定した分子量Mnは、66 000g/モルである。
【0082】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り803マイクロモルのメチルトリクロロシラン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。3分間のこのカップリング反応の後、100gのモノマー当り730ミリモルの水をこの溶液に添加し、その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、本発明に従う鎖中央でSiOHによって官能化した結合コポリマーを得る。
【0083】
このコポリマーGの固有粘度は1.40dl/gであり、粘度急上昇は1.32であり、そのML粘度は37である。通常のSEC法によって測定した上記コポリマーの分子量は114 000g/モルであり、分子量Mwは190 000g/モルであり、PIは1.67である。
このコポリマーGのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーGのSBRブロックは、25.1%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、22%の1,4‐シス単位および20%の1,4‐トランス単位を含む。
コポリマーGにおける1H NMRによって測定したCH3Si官能基の量は、6.16ミリモル/kgであり、0.40の量Lに相応している。
【0084】
2D 1H-29Si NMR分析は、予測生成物(鎖中央の(SBR)2SiCH3OH形)に相応するδSi = + 8 ppmにおいて、ジェミナル生成物(鎖末端のSBRSiCH3(OH)2形)に相応するδSi = − 8 ppmにおいて、そして、星形生成物((SBR)3SiCH3形)に相応する
【数5】

においての3つの相関スポットを示している。各ピーク領域の積分は、δSi = + 8 ppmの領域において92%、δSi = − 8 ppmの領域において3%、そして
【数6】

の領域において5%の分布を示している、すなわち、この分析は、官能化の度合L1が92%であると結論付けるのを可能にしている。
4) 本発明に従う鎖中央にSiOH官能基を有する結合コポリマーHの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/9.8/4.4/0.0055でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り150マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り1175μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を80℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は89%であり、トルエン中0.1g/dlにおいて25℃で測定した固有粘度は1.27dl/gである。SEC3D法によって測定した分子量Mnは、76 000g/モルである。
【0085】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り705マイクロモルのメチルトリクロロシラン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。3分間のこのカップリング反応の後、100gのモノマー当り590ミリモルの水をこの溶液に添加し、その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、本発明に従う鎖中央でSiOHによって官能化した結合コポリマーを得る。
【0086】
このコポリマーHの固有粘度は1.68dl/gであり、粘度急上昇は1.32であり、そのML粘度は53である。通常のSEC法によって測定した上記コポリマーの分子量は130 000g/モルであり、分子量Mwは208 000g/モルであり、PIは1.60である。
このコポリマーHのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーHのSBRブロックは、28%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、24%のビニル単位、30%の1,4‐シス単位および46%の1,4‐トランス単位を含む。
コポリマーHにおける1H NMRによって測定したCH3Si官能基の量は、7.63ミリモル/kgであり、0.58の量Lに相応している。
【0087】
2D 1H-29Si NMR分析は、予測生成物(鎖中央の(SBR)2SiCH3OH形)に相応するδSi = + 8 ppmにおいて、そして、結合ジェミナル生成物(SBRSiCH3(OH)-O-SiCH3(OH)SBR形)に相応するδSi = − 15.4 ppmにおいての2つの相関スポットを示している。各ピーク領域の積分は、δSi = + 8 ppmの領域において92%、δSi = − 15.4 ppmの領域において8%の分布を示している、すなわち、この分析は、官能化の度合L1が92%であると結論付けるのを可能にしている。
【0088】
5) 鎖末端にSiOH官能基を有する“対照”コポリマーIの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/11/3.2/0.037でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り200マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り530μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を70℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は98%である。
【0089】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り265マイクロモルのヘキサメチルシクロトリシロキサン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、鎖末端でSiOHによって官能化したコポリマーを得る。
【0090】
このポリマーIのML粘度は、53である。通常のSECによって測定したコポリマーの分子量は、123 000g/モルである。
このコポリマーIのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーIのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、21%の1,4‐シス単位および21%の1,4‐トランス単位を含む。
2D 1H-29Si NMR分析は、鎖末端官能基 SBR(CH3)2SiOHが存在していると結論付けるのを可能にしている。コポリマーIにおける1H NMRによって測定した(CH3)2Si官能基の量は、5.85ミリモル/kgである。
【0091】
6) 非官能性“対照”コポリマーJの調製
コポリマーJの合成に関しては、その合成は、試験5)に記載した操作条件に従って実施するが、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの代りに、メタノールを、MeOH/n-BuLi比 = 1.5で添加する。
コポリマーJのML粘度は、53である。通常のSECによって測定したコポリマーの分子量は、123 000g/モルである。
このコポリマーJのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーJのSBRブロックは、25%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、58%のビニル単位、21%の1,4‐シス単位および21%の1,4‐トランス単位を含む。
【0092】
7) 鎖末端にSiOH官能基を有する“対照”コポリマーKの調製
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレンおよびテトラヒドロフルフリルエチルエーテルを、それぞれの質量による流量100/9.8/4.4/0.0043でもって、タービンタイプの撹拌機を備えた32.5 lの反応器に連続導入する。100gのモノマー当り200マイクロモルのn‐ブチルリチウム(n-BuLi)をライン入口で導入して、ライン入口に存在する各種構成成分によって導入されたプロトン性不純物を中和する。100gのモノマー当り610μモルのn-BuLiを反応器入口で導入する。
各流量を調整して、反応器内の平均滞留時間が40分であるようにする。温度を80℃に維持する。
反応器出口で取出したサンプルにおいて測定した転換度合は93%である。
【0093】
最後に、反応器出口で、100gのモノマー当り265マイクロモルのヘキサメチルシクロトリシロキサン(シクロヘキサン中溶液中の)を上記リビングポリマー溶液に添加する(インライン静的ミキサーで)。その後、コポリマーを、0.8pceの2,2'‐メチレンビス(4‐メチル‐6‐(tert‐ブチル)フェノール)および0.2pceのN‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミンを使用して酸化防止処理に供する。
そのようにして処理したコポリマーを、その溶液から水蒸気ストリッピング操作によって分離し、次いで、100℃の開放ミル内で20分間乾燥させて、鎖末端でSiOHによって官能化したコポリマーを得る。
【0094】
このコポリマーKのML粘度は、54である。通常のSECによって測定したコポリマーの分子量は、119 000g/モルである。
このコポリマーKのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーKのSBRブロックは、27%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、24%のビニル単位、30%の1,4‐シス単位および46%の1,4‐トランス単位を含む。
2D 1H-29Si NMR分析は、鎖末端官能基 (CH3)2SiOHが存在していると結論付けるのを可能にしている。コポリマーKにおける1H NMRによって測定した(CH3)2Si官能基の量は、6.0ミリモル/kgである。
【0095】
8) 非官能性“対照”コポリマーLの調製
コポリマーLの合成に関しては、その合成を試験7)に記載した操作条件に従って実施するが、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの代りに、メタノールを、MeOH/n-BuLi比 = 1.5で添加する。
そのML粘度は、54である。通常のSECによって測定したコポリマーの分子量は、120 000g/モルである。
このコポリマーLのミクロ構造を、13C NMRによって測定する。
このコポリマーLのSBRブロックは、27%のスチレン(質量による)を含み、そのブタジエン成分においては、24%のビニル単位、30%の1,4‐シス単位および46%の1,4‐トランス単位を含む。
【0096】

本実施例においては、実施例1に従って調製した Tg = −38℃を有する4種のエラストマー SBR A、SBR B、SBR CおよびSBR Dを、各々がシリカを補強用無機充填剤として含むトレッドタイプのゴム組成物A、B、CおよびDの製造において使用した。
【0097】
これらの組成物A、B、CまたはDの各々は、下記の配合(pecで表す:エラストマー100部当りの質量部)を示す。



(1) = Rhodia社からのシリカ“Zeosil 1165 MP”;
(2) = Degussa社からの結合剤“Si69”;
(3) = N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン;
(4) = N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド;
(5) = Hansen & Rosenthal European社からの芳香族オイル;
(6) = Repsol社からのオゾン劣化防止ワックス。
【0098】
下記の組成物の各々を、冷却期によって分離された2段階による熱機械的加工の第1工程において、さらに、その後、機械的加工による第2仕上げ工程において製造する。
エラストマー、2/3の補強用充填剤、カップリング剤およびジフェニルグアニジンを、その後、およそ1分後に、残りの補強用充填剤、芳香族オイル、ステアリン酸およびオゾン劣化防止ワックス“C32ST”を、容量が400cm3であり、70%充填し、且つほぼ90℃の出発温度を有する“バンバリー(Banbury)”タイプの実験室密閉ミキサー内に連続して導入する。
【0099】
熱機械的加工の第1段階は、ほぼ160℃の最高落下温度まで4〜5分間実施する。その後、エラストマーブロックを回収し、冷却する。
その後、熱機械的加工の第2段階を、同じミキサー内で、一酸化亜鉛および酸化防止剤を添加しながら、ほぼ160℃の最高落下温度まで3〜4分間で実施する。
第1の上記熱機械的加工工程はそのようにして実施し、この第1工程におけるブレードの平均速度は、45回転/分であるように定める。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、開放ミキサー(ホモフィッシャー)内で、イオウおよびスルフェンアミドを30℃で添加し、混ぜ合せた混合物を、さらに3〜4分間混合する(第2の上記機械的加工工程)。
【0100】
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質を測定するためのゴムのシート(2〜3mm範囲の厚さを有する)または微細シートの形に、或いは、例えば、タイヤ半製品としての、とりわけトレッドの所望寸法に切断および/または組立てた後に直接使用することのできる形状要素の形のいずれかにカレンダー加工する。
架橋は、150℃で40分間実施する。
結果は、下記の表1に記録している。
【0101】
表1

【0102】
本発明に従う組成物Aは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Dの値と匹敵するムーニー“混合物”値を示すことに注目すべきである。本発明に従う組成物Aは、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Cの値よりも著しく低いムーニー“混合物”値を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、鎖末端にSiOH官能基を有するエラストマーに対比して、加工性を改良するのを可能にしている。
【0103】
架橋状態での性質に関しては、本発明に従う組成物AのEM300/EM100比が、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Cの値と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Aは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Dの値よりも著しく高いEM300/EM100比を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、通常の非官能性エラストマーと比較して、補強性を改良するのを可能にしている。
組成物Bは、本発明に従う組成物Aの値よりも低いEM300/EM100比を示すことに注目すべきである。この結果は、補強が本発明に従う組成物においてのみ著しく改良されていることを明白に実証している。
【0104】
動的性質に関しては、本発明に従う組成物Aのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)は、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Cの特性と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Aは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Dのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)と対比して著しく改良されたヒステリシス特性を示す。本発明に従う官能性エラストマーは、非官能性エラストマーと対比して、ヒステリシス特性(低および高歪みにおける)を改良するのを可能にしている。従って、本発明に従う官能性エラストマーは、組成物Aに対し、架橋していない状態の性質(加工特性)および架橋状態の性質(ヒステリシス特性)における有利な妥協点を付与している。
組成物Bは、本発明に従う組成物Aのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)に対比して劣っているヒステリシス特性を示していることに注目すべきである。この結果は、ヒステリシス特性(低および高歪みにおける)が本発明に従う組成物においてのみ良好であることを明白に実証している。
【0105】
換言すれば、鎖中央にSiOH官能基を含み、鎖中央でSiOH官能基の形で生じるSiの割合が100%であるエラストマーをベースとする本発明に従う組成物Aは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Dのゴム特性と対比しては低減されたヒステリシスの結果として、さらに、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Cに対比しては改良された加工能力の結果として、改良されている架橋状態でのゴム特性を示している。
鎖中央にSiOH官能基を含み、鎖中央でSiOH官能基の形で生じるSiの割合が100%であるエラストマーをベースとする本発明に従う組成物Aは、鎖中央でSiOH官能基の形で生じるSiの割合が47%である組成物Bのゴム特性と対比して、低および高歪みにおける低減されたヒステリシスの結果として、また、改良された補強性の結果として、改良されている架橋状態でのゴム特性を示している。
【0106】

本実施例においては、実施例2従って調製した Tg = −25℃を有する3種のエラストマー SBR E、SBR I、およびSBR Jを、各々がシリカを補強用無機充填剤として含むトレッドタイプのゴム組成物E、IおよびJの製造において使用した。
【0107】
これらの組成物E、IまたはJの各々は、下記の配合(pecで表す:エラストマー100部当りの質量部)を示す。



(1) = Rhodia社からのシリカ“Zeosil 1165 MP”;
(2) = Degussa社からの結合剤“Si69”;
(3) = N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン;
(4) = N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド;
(5) = DRT社からのResin Dercolyte L 120またはArizona社からのSylvagum TR7125C;
(6) = Repsol社からのオゾン劣化防止ワックス;
(7) = Shell社からのCatenexR SNR。
【0108】
下記の組成物の各々を、冷却期によって分離された2段階による熱機械的加工の第1工程において、さらに、その後、機械的加工による第2仕上げ工程において製造する。
エラストマー、2/3の補強用充填剤、カップリング剤およびジフェニルグアニジンを、その後、およそ1分後に、残りの補強用充填剤、オイル、樹脂、ステアリン酸およびオゾン劣化防止ワックス“C32ST”を、容量が400cm3であり、70%充填し、且つほぼ90℃の出発温度を有する“バンバリー(Banbury)”タイプの実験室密閉ミキサー内に連続して導入する。
【0109】
熱機械的加工の第1段階は、ほぼ160℃の最高落下温度まで4〜5分間実施する。その後、エラストマーブロックを回収し、冷却する。
その後、熱機械的加工の第2段階を、同じミキサー内で、一酸化亜鉛および酸化防止剤を添加しながら、ほぼ160℃の最高落下温度まで3〜4分間で実施する。
第1の上記熱機械的加工工程はそのようにして実施し、この第1工程におけるブレードの平均速度は、45回転/分であるように定める。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、開放ミキサー(ホモフィッシャー)内で、イオウおよびスルフェンアミドを30℃で添加し、混ぜ合せた混合物を、さらに3〜4分間混合する(第2の上記機械的加工工程)。
【0110】
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質を測定するためのゴムのシート(2〜3mm範囲の厚さを有する)または微細シートの形に、或いは、例えば、タイヤ半製品としての、とりわけトレッドの所望寸法に切断および/または組立てた後に直接使用することのできる形状要素の形のいずれかにカレンダー加工する。
架橋は、150℃で40分間実施する。
結果は、下記の表2に記録している。
【0111】
表2

【0112】
本発明に従う組成物Eは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Jの値と匹敵するムーニー“混合物”値を示すことに注目すべきである。本発明に従う組成物Eは、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Iの値よりも著しく低いムーニー“混合物”値を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、鎖末端にSiOH官能基を有するエラストマーに対比して、加工性を改良するのを可能にしている。
【0113】
架橋状態での性質に関しては、本発明に従う組成物EのEM300/EM100比が、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Iの値と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Eは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Jの値よりも著しく高いEM300/EM100比を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、非官能性エラストマーと対比して、補強性を改良するのを可能にしている。
【0114】
動的性質に関しては、本発明に従う組成物Eのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)は、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Iの特性と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Hは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Jのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)と対比して改良されたヒステリシス特性を示す。本発明に従う官能性エラストマーは、非官能性エラストマーと対比して、ヒステリシス特性(低および高歪みにおける)を改良するのを可能にしている。
【0115】
換言すれば、鎖中央にSiOH官能基を含み、鎖中央でSiOH官能基の形で生じるSiの割合が94%であるエラストマーをベースとする本発明に従う組成物Eは、一方では、非官能性エラストマーをベースとする組成物Jのゴム特性と対比しては低減されたヒステリシスの結果として、さらに、他方では、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Iに対比しては改良された加工能力の結果として、改良されている架橋状態でのゴム特性を示している。
【0116】


本実施例においては、実施例2従って調製した Tg = −48℃を有する3種のエラストマー SBR H、SBR K、およびSBR Lを、各々がシリカを補強用無機充填剤として含むトレッドタイプのゴム組成物H、KおよびLの製造において使用した。
【0117】
これらの組成物H、KまたはLの各々は、下記の配合(pecで表す:エラストマー100部当りの質量部)を示す。



(1) = Rhodia社からのシリカ“Zeosil 1165 MP”;
(2) = Degussa社からの結合剤“Si69”;
(3) = N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン;
(4) = N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド。
【0118】
下記の組成物の各々を、混練段階による熱機械的加工の第1工程において、さらに、その後、機械的加工による第2仕上げ工程において製造する。
エラストマー、補強用充填剤、カップリング剤およびジフェニルグアニジンを、その後、およそ1分後に、ステアリン酸、酸化防止剤および一酸化亜鉛を、容量が400cm3であり、70%充填し、且つほぼ70℃の出発温度を有する“バンバリー(Banbury)”タイプの実験室密閉ミキサー内に連続して導入する。
【0119】
熱機械的加工の第1段階は、ほぼ160℃の最高落下温度まで4〜5分間実施する。その後、エラストマーブロックを回収し、冷却する。
第1の上記熱機械的加工工程はそのようにして実施し、この第1工程におけるブレードの平均速度は、45回転/分であるように定める。
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、開放ミキサー(ホモフィッシャー)内で、イオウおよびスルフェンアミドを30℃で添加し、混ぜ合せた混合物を、さらに3〜4分間混合する(第2の上記機械的加工工程)。
【0120】
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質を測定するためのゴムのシート(2〜3mm範囲の厚さを有する)または微細シートの形に、或いは、例えば、タイヤ半製品としての、とりわけトレッドの所望寸法に切断および/または組立てた後に直接使用することのできる形状要素の形のいずれかにカレンダー加工する。
架橋は、150℃で40分間実施する。
結果は、下記の表3に記録している。
【0121】
表3

【0122】
本発明に従う組成物Hは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Lの値と匹敵するムーニー“混合物”値を示すことに注目すべきである。本発明に従う組成物Hは、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Kの値よりも著しく低いムーニー“混合物”値を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、鎖末端にSiOH官能基を有するエラストマーに対比して、加工性を改良するのを可能にしている。
【0123】
架橋状態での性質に関しては、本発明に従う組成物HのEM300/EM100比が、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Kの値と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Hは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Lの値よりも著しく高いEM300/EM100比を示している。本発明に従う官能性エラストマーは、非官能性エラストマーと対比して、補強性を改良するのを可能にしている。
【0124】
動的性質に関しては、本発明に従う組成物Hのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)は、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Kの特性と同等であることに注目すべきである。本発明に従う組成物Hは、非官能性エラストマーをベースとする組成物Lのヒステリシス特性(低および高歪みにおける)と対比して著しく改良された特性を示す。本発明に従う官能性エラストマーは、非官能性エラストマーと対比して、ヒステリシス特性(低および高歪みにおける)を改良するのを可能にしている。
【0125】
換言すれば、鎖中央にSiOH官能基を含み、鎖中央でSiOH官能基の形で生じるSiの割合が92%であるエラストマーをベースとする本発明に従う組成物Hは、一方では、架橋状態においては、非官能性エラストマーをベースとする組成物Lのゴム特性と対比して低減されたヒステリシスの結果として、さらに、他方では、架橋していない状態においては、鎖末端にSiOH官能基を含むエラストマーをベースとする組成物Kに対比して改良された加工能力の結果として、改良されているゴム特性を示している。
【0126】
使用する測定および試験方法(得られたポリマーの前以っての特性決定において使用する実験方法)
(a) 立体排除クロマトグラフィー法(通常のSEC)によるモル質量での分布の測定:
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法は、これらのポリマーのサンプルに関するモル質量での分布を測定するのに使用した。この方法は、ヨーロッパ特許EP-A-692 493号の明細書の実施例1に記載されている特性を有する標準製品から出発して、例えば、浸透圧法で測定した値とは異なり、相対的値を有する数平均分子量(Mn)を、さらにまた、質量平均分子量(Mn)を評価するのを可能にする。このサンプルの多分散性指数(PI = Mw/Mn)は、“ムーア(Moore)”較正によって算出し、それから推定する。
【0127】
この方法によれば、巨大分子は、多孔質静置相を充填したカラム内で、膨潤状態のそれら分子それぞれのサイズに従って物理的に分離される。この分離を実施する前に、ポリマーのサンプルを、およそ1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解する。その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルターで濾過する。
【0128】
品名“Waters Alliance 2690”として販売されており、インライン脱ガス装置を備えたクロマトグラフを上記の分離において使用する。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は 1ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は30分である。2本セットの直列に配置した“Waters”カラム、“Styragel HT6E”タイプを使用する。
【0129】

【0130】
ポリマーサンプル溶液の注入容量は100μlである。検出器は、“Waters”モデル“2410”示差屈折計である。また、商品名“Waters Empower”を有するクロマトグラフィーデータ用のシステムズソフトウェアも使用する。
算出平均モル質量は、以下のミクロ構造を有するSBRに対して描いた較正曲線に関連する:25質量%のスチレンタイプの単位、23質量%の1,2‐タイプの単位および50質量%の1,4‐トランスタイプの単位。
【0131】
(b) 3重検出立体排除クロマトグラフィー法(SEC3D)によるモル質量での分布測定:
SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法を使用して、これらのポリマーのサンプルに関する分子量の分布を測定する。
【0132】
測定原理
この方法は、溶液中の巨大分子を、多孔質ゲルを充填したカラムにより、それら分子のサイズに従って分離するのを可能にする。巨大分子をそれら分子の流体力学的容積に従って分離し、最大容積物が最初に溶出する。
3種の検出器(3D)、即ち、屈折計、粘度計および90°光散乱検出器との組合せにおいて、SECは、ポリマーの絶対モル質量の分布を理解することを可能にする。また、種々の数平均絶対モル質量(Mn)および質量平均絶対モル質量(Mw)も算出し得る。サンプルの多分散性指数(PI = Mw/Mn)を、それから推定する。
この方法によれば、巨大分子は、多孔質静置相を充填したカラム内で、膨潤状態のそれら分子それぞれのサイズに従って物理的に分離される。この分離を実施する前に、ポリマーのサンプルを、およそ1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解する。その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルターで濾過する。
【0133】
SEC3D分析
使用する装置は、“Waters Alliance”クロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は 0.5ml/分であり、系の温度は35℃である。以下の商品名を有する直列の4本セットのPolymer Laboratories社のカラムを使用する:2本が“Mixed A LS”で、2本が“Mixed B LS”。
ポリマーサンプル溶液の注入容量は、100μlである。使用する検出装置は、Viscotek社からの“TDA 302”である;この装置は、示差屈折計、示差粘度計および90°光散乱検出器からなる。これらの3種の検出器においては、波長は670nmである。平均モル質量の算出に当っては、ポリマー溶液の屈折率の増分値dn/dC (この値は、テトラヒドロフラン中で、35℃および670nmで予め明確にしておく) を積分する。データのシステムズソフトウェアは、Viscotek社からの“Omnisec”システムである。
【0134】
(c) ポリマーおよびゴム組成物において、100℃でのムーニー粘度ML (1+4)を、規格ASTM D-1646に従って測定する。
規格ASTM D-1646に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:生状態(即ち、硬化前)のゴム組成物を100℃に加熱した円筒状の室内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験片内で2回転/分で回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0135】
(d) ポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量計を使用して測定する。
【0136】
(e) 鎖中央でのCH3Si(SBR)2OH官能化または鎖末端でのSBR(CH3)2SiOH官能化は、2D 1H-29Si NMRによって特性決定し、1H NMRによって定量する。
2D 1H-29Si NMRスペクトルは、官能基の性質を、2J近辺内のケイ素核心およびプロトンの化学シフト値(2つの結合を介しての)によって確認するのを可能にする。上記スペクトルは、8Hzの2J1H-29Siカップリング定数値を使用する。鎖中央での生成物CH3Si(SBR)2OHのケイ素の化学シフトはおよそ8ppmであり、鎖末端での形成物SBR(CH3)2SiOHのケイ素の化学シフトはおよそ11〜12ppmである。
【0137】
1H NMRスペクトルは、上記官能基を、δ= 0 ppmの近くに位置したケイ素が担持したメチル基CH3Siのプロトンのシグナル特性の積分によって定量するのを可能にする。サンプルを二硫化炭素(CS2)中に溶解する。100μLの重水素化シクロヘキサン(C6D12)をロックシグナル(lock signal)に対して付加する。NMR分析は、5mmの“ブロードバンド”BBIプローブを備えた500MHz Bruker分光計において実施する。定量1H NMR試験においては、シーケンスは、30°パルスおよび2秒の反復時間を使用する。
【0138】
(f) 13C NMR法1を使用して、得られたエラストマーのミクロ構造を測定する。13C NMR分析は、10mmの13C-1Hデュアルプローブを備えた250 MHz Bruker分光計において実施する。エラストマーを、およそ75g/lの濃度で、CDCl3中に溶解する。定量13C NMR試験は、1Hデカップリングによるシーケンスおよびオーバーハウザー効果の抑制(逆ゲーテッド1Hデカップリング)、90°パルスおよび反復時間 = 6秒を使用する。200ppmのスペクトル幅およびスキャン数は、8192である。スペクトルは、77ppmでのCDCl3のトリプレットの中央ピークに対して較正する。
1 文献1:Beebe, D. H.; Polymer, 1978, 19, 231-33;文献2:Bradbury, J. H., Elix, J. A. and Perera, M. C. S.; Journal of Polymer Science, 1988, 26, 615-26;文献3:Durbetaki, A. J. and Miles, C. M.; Analytical Chemistry, 1965, 37, 1231-35;文献4:Gronski, W., Murayama, N. and Cantow, H.-J,; Polymer, 1976, April, 358-60;文献5:Kobayashi, E., Furakawa, J., Ochiai, M. and Tsujimoto, T.; European Polymer J., 1983, 10, 871-75。
【0139】
(g) ポリマーにおいて、トルエン中0.1g/dlポリマー溶液の25℃での固有粘度を、乾燥ポリマー溶液から出発して測定する:
原理
上記固有粘度は、毛細管中でのポリマー溶液の流動時間tおよびトルエンの流動時間t0を測定することによって測定する。
トルエンの流動時間と上記0.1g/dlポリマー溶液の流動時間を、25±0.1℃にサーモスタット制御した浴中に置いたウベローデ管(Ubbelohde tube) (毛管直径 0.46mm、容量 18〜22ml)内で測定する。
固有粘度は、下記の関係により得られる:
【0140】

式中、C:g/dlでのポリマーのトルエン溶液濃度;
t:ポリマートルエン溶液の秒での流動時間;
t0:秒でのトルエンの流動時間;
ηint:dl/gで表す固有粘度。
【0141】
(h) 引張試験:
これらの試験は、弾性応力および破壊時特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46-002に従って行う。公称割線モジュラス(または見掛け応力、MPaでの)を、2回目の伸びにおいて(即ち、測定自体において予測される伸長度への調節サイクル後に)、10%伸び(EM10と記録)、100%伸び(EM100と記録)および300%伸び(EM300と記録)において測定する。また、破壊応力(MPaでの)および破壊時伸び(%での)も測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格 NF T 40-101 (1979年12月)に従い、標準の温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)条件下で実施する。
【0142】
(i) 硬化後の組成物のショアA硬度は、規格ASTM D 2240-86に従って評価する。
【0143】
(j) 動的特性:
動的特性ΔG*maxおよびtan(δ)maxを、規格ASTM D 5992-96に従い、ビスコアナライザー(Metravib VA4000)で測定した。10Hzの周波数での単純交互正弦剪断応力に供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび断面積400mm2を有する円筒状試験片)の応答を、ASTM D 1349-99規格に従う標準温度条件(23℃または40℃)下に記録した。歪み増幅・掃引を、0.1〜50%(前進サイクル)および50%〜0.1%範囲(戻りサイクル)において実施した。使用する結果は、複素動的剪断弾性率(G*)、0.1%〜50%の増幅および50%の歪み増幅においてG” max 23℃として記録したG”の最高値の測定によって表す複素動的剪断弾性率G”、および損失係数tan(δ)である。tan(δ)maxとして観察し記録したtan(δ)の最高値、および0.15%および50%歪みでの値間の複素弾性率の差(ΔG*) (パイネ効果)を、戻りサイクルにおいて示す。
【0144】
(k) ヒステリシス特性の測定:
ヒステリシス特性は、6回目の衝撃において標準の温度条件(23℃)または高めの温度(60℃)下に測定し、下記の関係に従って%で表す、与えられたエネルギーを有するサンプルのリバウンドによるエネルギー損失を測定することによって評価し得る:
HP(%) = 100[(W0−W1)/W0]
式中、W0は、供給エネルギーであり;W1は、回復エネルギーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖中央にシラノール官能基を含み、Si官能基の全体量L (この量はNs/Np比であり、Nsは、1H核磁気共鳴NMRによって測定しミリモル/kgで表す結合ポリマーに結合させたケイ素のモル数を示し、Npは、ポリマーのキログラム当りのカップリング前のポリマーのミリモル数を示す)が0.36〜0.60の範囲であり、2D 1H-29Si核磁気共鳴NMRによって測定したSiOH官能基のモル数対ケイ素(Si)のモル数に相応する比である鎖中央のシラノール官能基(SiOH)の量L1が80〜100%の範囲にあり、結合ポリマー鎖の単峰性数平均分子量分布を有することを特徴とする、シラノール官能基を有する結合ジエンエラストマー。
【請求項2】
第1段階において、モノマー(1種以上)を、必要に応じて不活性炭化水素溶媒の存在または非存在下、少なくとも2個の原子上に少なくとも1個の非結合性ダブレットを有するキレート化極性剤の存在下に重合開始剤と反応させ、第2段階において、リビングジエンポリマーを、不活性炭化水素溶媒の存在下に、ポリマー鎖に対するカップリング剤と反応させ、加水分解後、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンポリマーを得ることからなることを特徴とする、請求項1記載の鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーの製造方法。
【請求項3】
前記キレート化極性剤を、少なくとも1個の第三級アミン官能基または少なくとも1個のエーテル官能基を含む薬剤からなる群から選択する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記キレート化極性剤を、テトラヒドロフルフリルエチルエーテルおよびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポリマー鎖に対する前記カップリング剤が、式 RSiX3 (式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する第一級または第二級アルキル、シクロアルキルまたはアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子、好ましくは塩素または臭素を示す)に相応する、請求項2〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記カップリング剤/前記リビングポリマー鎖の開始剤の金属の量比が、0.4〜1.0である、請求項2〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記カップリング剤/前記リビングポリマー鎖の開始剤の金属の量比が、0.5〜0.7である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記重合溶媒が、前記ポリマー鎖に対するカップリング溶媒と同じである、請求項2〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記エラストマーが下記であることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか1項記載の鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーの製造方法:
・ポリブタジエンまたはポリイソプレンのような、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液重合によって得られたホモポリマー;または、
・ブタジエン/ビニル芳香族またはブタジエン/ビニル芳香族/イソプレンコポリマーのような、1種以上の共役ジエンともう1種の共役ジエンおよび/または8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液共重合によって得られたコポリマー。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項記載の方法によって得ることのできる、鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマー。
【請求項11】
少なくとも1種の補強用無機充填剤と請求項1記載の少なくとも1種の鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーとをベースとする、タイヤトレッドを形成するのに使用することのできる架橋性または架橋ゴム組成物。
【請求項12】
前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーが下記に由来する、請求項11記載の組成物:
・ポリブタジエンまたはポリイソプレンのような、4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの溶液重合によって得られたホモポリマー;または、
・ブタジエン/ビニル芳香族またはブタジエン/ビニル芳香族/イソプレンコポリマーのような、1種以上の共役ジエンともう1種の共役ジエンおよび/または8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との溶液共重合によって得られたコポリマー。
【請求項13】
前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーが、溶液中で製造したブタジエン/ビニル芳香族コポリマーに由来する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーが、100 000g/モル〜350 000g/モル、好ましくは114 000g/モル〜185 000g/モルである数平均分子量Mnを示す、請求項11〜13のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーを主として含むエラストマーマトリックスをベースとする、請求項11〜14のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記組成物が、前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーからなるエラストマーマトリックスを含む、請求項11〜15のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項17】
補強用充填剤を含む前記組成物が前記補強用無機充填剤を含み、前記補強用無機充填剤が、前記補強用充填剤中に、50%よりも多く100%までの範囲の質量割合によって存在する、請求項11〜16のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記補強用無機充填剤が、シリカである、請求項17記載のゴム組成物。
【請求項19】
下記の工程を含むことを特徴とする、請求項11〜18のいずれか1項記載の架橋性組成物の製造方法:
(i) 請求項2〜9のいずれか1項記載の方法によって得ることのできる鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーを製造する工程;
(ii) 130℃〜200℃の最高温度で、前記鎖中央にシラノール官能基を有する単峰性結合ジエンエラストマーと補強用無機充填剤を含む前記組成物の架橋系を除いた構成成分の熱機械的加工の第1工程を実施する工程:その後、
(iii) 前記第1工程の前記最高温度よりも低い温度で、機械的加工の第2工程を実施し、その間に、前記架橋系を混入する工程。
【請求項20】
請求項11〜18のいずれか1項記載の架橋性または架橋ゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤトレッド。
【請求項21】
前記架橋性または架橋ゴム組成物からなる、請求項20記載のタイヤトレッド。
【請求項22】
請求項20または請求項21記載のトレッドを含む、低減された転がり抵抗性を示すタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−525087(P2010−525087A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503392(P2010−503392)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002977
【国際公開番号】WO2008/141702
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】