説明

長尺材の付着物除去方法および付着物除去装置

【課題】長尺材に表面の汚れや付着した微粉などの付着物を除去したのち、長尺材の清浄度および乾燥度を高めることにより、洗浄の品質の向上を図ることができる長尺材の付着物除去方法を提供する。
【解決手段】長尺材の表面に付着した付着物を除去したのち、該長尺材の表面を乾燥する付着物除去方法であって、長尺材の表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄工程と、洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去工程と、水滴を除去したのちの湿潤した長尺材の表面を乾燥させる乾燥工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺材の付着物除去方法および付着物除去装置に関する。さらに詳しくは、たとえばブラスト処理または伸線加工された、断面形状が円形、矩形または多角形などの長尺材の表面に付着した汚れや異物を除去したのち、該長尺材の表面を乾燥する長尺材の付着物除去方法および付着物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺材の表面の汚れや付着した異物を除去する洗浄方法として、伸線加工により得られた長尺材をセラミック粒子と洗浄水が充填された振動する容器の内部を通過させる振動洗浄工程と、該容器を通過した長尺材を水洗する水洗工程と、水洗後の表面が湿潤状態にある長尺材の表面にフェルトなどからなる一対のベルトを押圧する拭取り工程とを含む洗浄方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−280178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この洗浄方法では、振動洗浄工程で長尺材が上下左右または円周方向に揺れるため、振動容器に設けられた長尺材の通過孔と緊張した長尺材が触れたり、擦ったりして双方に表面キズが発生しやすい。この表面キズの発生を防止するため、前記通過孔を大きくするとセラミック粒子が長尺材と通過孔とのあいだのスキマに噛み込んだり、セラミック粒子が流出するという問題がある。
また、洗浄後に長尺材を拭取るためにベルトを使用しているが、前工程室の水洗槽の長尺材の通過孔から噴き出る水が長尺材の表面を伝って前記ベルトまで誘導されるため、該ベルトによる表面の拭取りでは充分に水分を除去することが難しい。このため、毎分200mを超える高速で処理される長尺材の洗浄後の清浄度および乾燥度は充分でないという問題がある。
また、長時間稼働の場合、乾燥度の低下したベルトのメンテナンスや取換えのためラインを停止しなければならないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、長尺材に表面の汚れや付着した微粉などの付着物を除去したのち、長尺材の清浄度および乾燥度を高めることにより、洗浄の品質の向上を図ることができる長尺材の付着物除去方法および付着物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の長尺材の付着物除去方法は、長尺材の表面に付着した付着物を除去したのち、該長尺材の表面を乾燥する付着物除去方法であって、長尺材の表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄工程と、洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去工程と、水滴を除去したのちの湿潤した長尺材の表面を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴としている。
前記水滴除去工程に、長尺材の表面を回動自在に挟持するとともに、定期的に押圧する少なくとも一対の吸水ローラを用いるのが好ましい。
前記吸水ローラの表層部に軟質の吸水材を用いるのが好ましい。
前記吸水材がスポンジまたは吸水性ゴムまたは吸水フェルトであるのが好ましい。
前記洗浄工程が、洗浄材としてセラミックボールと洗浄水を用いて、第1槽内にセラミックボールと洗浄水を溜めたのち、該第1槽内に洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射しながらセラミックボールを転動および流動させるとともに、長尺材の表面に接触させて洗浄する工程であるのが好ましい。
前記セラミックボールは前記第1槽内の長尺材の表面を被う位置まで該第1槽に充填されているのが好ましい。
前記セラミックボールが、研磨性を有する砥粒を混入したセラミックボールであるのが好ましい。
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部の通路径および搬出通路部の通路径より大きいのが好ましい。
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部および搬出通路部と長尺材とのあいだのスキマより大きいのが好ましい。
前記乾燥工程が圧縮エアを長尺材の表面に噴射する工程であるのが好ましい。
【0007】
さらに、本発明の長尺材の付着物除去装置は、前記付着物除去方法に用いられる付着物除去装置であって、長尺材の表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄装置と、洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去手段と、水滴を除去したのちの湿潤した長尺材の表面を乾燥させる乾燥手段とを備えてなることを特徴としている。
前記水滴除去手段が、長尺材の表面を挟持するための少なくとも一対の吸水ローラと、該吸水ローラが取り付けられる軸と、該軸を支持するとともに該吸水ローラを定期的に押圧する押圧機構とを具備するのが好ましい。
前記押圧機構が、前記軸を支持するハウジングと、該ハウジングの外周から延設される第1の連結部および第2の連結部と、該第1の連結部を固定部材に回動自在に連結する回動支持部と、該第2の連結部に回動自在に連結されるアクチュエータであるのが好ましい。
前記ハウジングに軸を回動自在に支持する軸受が組み込まれているのが好ましい。
前記吸水ローラが硬質部材と硬質部材の周りに設けられる軟質の吸水材とからなるのが好ましい。
前記吸水材がスポンジまたは吸水性ゴムまたは吸水フェルトであるのが好ましい。
前記洗浄装置が、洗浄材としてセラミックボールと洗浄水を用いて、基台と、基台に立設される一対の支柱と、該一対の支柱に支持される前記長尺材の搬入部と搬出部を有するとともに前記セラミックボールと洗浄水を溜める第1槽と、該第1槽内に洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射する噴射手段とを具備しているのが好ましい。
前記第1槽の搬入部と搬出部を回動自在に支持するために前記一対の支柱に設けられる軸受と、前記長尺材の搬入部および搬出部のうちいずれか一方に連結して前記第1槽を傾動させる傾動手段を具備しているのが好ましい。
前記傾動手段が、前記第1槽内に貯留されるセラミックボールを転動移動させて該第1槽の搬入部の搬入通路部から搬出部の搬出通路部までの長尺材の通路を確保する状態の位置に該第1槽を傾動させるアクチュエータであるのが好ましい。
前記第1槽から排出される洗浄水を回収するために該第1槽の下部周辺部に設けられる第2槽と、前記第2槽から排出される洗浄水を清浄化するろ過部と、該清浄化された洗浄水を貯留する液貯蔵槽と、該液貯蔵槽に回収された洗浄水を前記噴射手段に供給する循環装置とを具備しているのが好ましい。
前記セラミックボールは前記第1槽内の長尺材の表面を被う位置まで該第1槽に充填されているのが好ましい。
前記セラミックボールが、研磨性を有する砥粒を混入したセラミックボールであるのが好ましい。
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部の通路径および搬出通路部の通路径より大きいのが好ましい。
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部および搬出通路部と長尺材とのあいだのスキマより大きいのが好ましい。
前記乾燥手段が、圧縮エアを噴射する乾燥ノズル手段と、エアポンプとを具備しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去するため、乾燥工程における長尺材の清浄度および乾燥度を高めることができる。
また、洗浄材としてセラミックボールと洗浄水を用いて、洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射しながらセラミックボールを転動および流動させ、長尺材の表面に接触させて洗浄することにより、長尺材に表面の汚れや付着した微粉などの付着物を除去する洗浄力が高く、洗浄の品質の向上を図ることができる。
さらに、洗浄水を加圧噴射させることにより、汚れや付着した微粉などを長尺材の表面より遠ざけることができるため、これらが再び表面に付着しないという二次的な表面汚染も回避できる。
また、本発明によれば、長尺材の乾燥は毎分200mで走行する長尺材の表面に付着した水滴であっても、弾性体である吸水ローラにより密着してスキマなく長尺材の表面に接触しているため、前記水滴を確実に除去したのちに行われている。これにより、省エネかつ稼働中のメンテナンスフリーで、洗浄の品質の向上と高稼働率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、長尺材の表面を研掃するショットブラスト装置、ビレットやブルーム、帯板(フープ)材などの鋼片搬送装置、たとえロールブラシと調整車などを用いて長尺材を研削するセンターレス研磨装置、ベンディングとロールブラシによる表面スケール除去装置、砥粒入りウォータジェットによる表面検索装置などによる表面処理後の洗浄工程において、洗浄材、たとえばセラミックボールと洗浄水を用いて、セラミックボールを転動および流動させながら長尺材に接触させることにより汚れや付着物などの付着物を落としたのち、乾燥工程の前に洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する工程を行っている。この水滴除去工程では、長尺材の表面を回動自在に挟持するとともに、定期的に押圧する少なくとも一対の吸水ローラが用いられている。この一対の吸水ローラは通過中の長尺材の摩擦により回動自在である。この吸水ロールが回動すると、吸水機能が高い部分で長尺材の表面を挟持するため、長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する機能を維持することができる。また、この一対の吸水ローラを定期的に押圧することにより、吸水された水を押し出して、吸水機能を回復させることができる。
また、本発明は、長尺材の洗浄後の洗浄水を回収し付着物を除去した清浄化された洗浄水を循環させるようにしている。
また、本発明における長尺材は、とくに限定されるものではないが、直径が2〜20mmであり、断面形状が円形、矩形または多角形などの線材、または円筒形または矩形などの金属管とすることができる。また、この長尺材の材質としては、鋼、銅、アルミニウムまたは合金鋼などとすることができる。
【0010】
以下、添付図面に基づいて本発明の長尺材の付着物除去方法および付着物除去装置を説明する。本発明の一実施の形態にかかわる長尺材の付着物除去装置は、図1〜6に示されるように、長尺材Wの表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄装置Aと、洗浄後の長尺材Wの表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去手段Bと、水滴を除去したのちの湿潤した長尺材Wの表面を乾燥させる乾燥手段Cとを備えている。前記洗浄材は、室温の水、温水またはこれらのいずれかと必要に応じて長尺材の防錆を目的とした薬品などを加えた洗浄水を含むものであれば、本発明において、とくに限定されるものではないが、セラミックボールとともに用いることにより長尺材の表面の汚れや付着物を脱落させる物理的な力を加えることでき、洗浄効率を高めることができるため、セラミックボールと洗浄水であるのが好ましい。
また、このセラミックボールは、洗浄水とともに自由に転動し、流動できる形状であれば、完全な球形の他、球形に近い楕円形(すなわち、アスペクト比が1に近い楕円形)や多面体形状などの球形状体とすることができる。また、このセラミックボールに、研磨性を有する砥粒を混入したセラミックボールを用いることにより、長尺材に接触する場合、接触部で転動研磨を行い、長尺材の表面清浄度を向上させることができる。
【0011】
前記洗浄装置Aは、基台1と、該基台1に立設される一対の支柱2と、該一対の支柱2に支持される第1槽3と、該第1槽3内に洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射する噴射手段Dとを具備している。前記第1槽3は、セラミックボールと洗浄水を溜めることができるように、有底のボックス形状を呈しており、前記長尺材Wの搬入部としての搬入側支持軸4と搬出部としての搬出側支持軸5を有している。前記セラミックボールは前記第1槽3内の長尺材Wの表面を被う位置まで該第1槽に充填されている。前記搬入側支持軸4と搬出側支持軸5には、長尺材Wを通過させるための、搬入通路4aと搬出通路5aが形成されている。この搬入通路4aの通路径および搬出通路5aの通路径は、長尺材Wが通過できる大きさであり、前記セラミックボールが流出しないように該セラミックボールの外径より小さい径に設定されている。また、前記長尺材Wの断面がセラミックボールの外径より大きい場合は、搬入通路4aおよび搬出通路5aと長尺材Wとのあいだのスキマより大きいセラミックボールの外径(ボール径)を選択するのが好ましい。
【0012】
前記第1槽3は、その下部に所定の個数の流通孔が形成されるステンレス製の金網やパンチングメタルなどのメッシュ部材6が固設されている。前記噴射手段Dは、その噴射口が前記メッシュ部材6の下面に向くように第1槽3の下部側面に設けられている。本実施の形態では、浄長尺材Wの表面に付着した異物を効率よく脱落させるため、前段の荒洗浄仕上げ用セラミックボールと後段の微細洗仕上げ用セラミックボールとでその種類(大きさまたは形状)の変更ができるように、該第1槽3が、長尺材Wを通す孔(図示せず)を有する内壁板7により2室に区画されている。このため、前記メッシュ部材6と噴射手段Dは各室に設けられている。
また、第1槽3の側壁のうち、長尺材Wの搬送方向に対向する側壁3a、3bには、図6に示されるように、搬入通路4aと搬出通路5aと同様の側壁搬入通路(図示せず)と側壁搬出通路8が形成されており、該側壁搬入通路と側壁搬出通路8から廃液(洗浄水)を流出させるために側壁3a、3bの外壁面には排出通路部材9、10が設けられている。この側壁搬入通路と側壁搬出通路8の通路径および排出通路部材9、10の長尺材Wの通路の通路径は、ともに前記搬入通路4aと搬出通路5aと同様に前記セラミックボールが流出しないように該セラミックボールの外径より小さい径に設定されている。なお、本実施の形態では、該側壁搬入通路、排出通路部材9の通路および搬入通路4aを含めて搬入通路部といい、該側壁搬出通路8、排出通路部材10の通路および搬出通路5aを含めて搬出通路部という。
さらに、本実施の形態では、該排出通路部材9、10から搬入通路4aおよび搬出通路5aを伝って装置外に洗浄水が流出するのを防止するために、前記搬入側支持軸4および搬出側支持軸5の垂直方向に貫通孔11、12が形成されている。
また、前記長尺材Wの搬送方向に直行する第1槽3の対向する両壁3c、3dのうち一方の側壁3cには、上下部に形成される開口部に透明な樹脂板13が嵌め込まれているとともに、上端の開口部にも透明な樹脂板14が嵌め込まれている。また、前記第1槽3の他方の側壁3dには、第1槽3内のセラミックボールが前記側壁搬入通路と側壁搬出通路8からの洗浄水の排出を妨げて、前記排出通路部材9、10および貫通孔11、12からの洗浄水の流出が充分でない場合、第1層3にあふれる洗浄水を排出するために、所定の個数と形状の排出口15が設けられている。
また、本実施の形態では、前記第1槽3から排出される洗浄水を回収するために該第1槽3の下部周辺部に第2槽21が設けられている。この第2槽21は、基台1に設けられる支持台22に固定されている。そして、この第2槽21から排出管23を介して排出される洗浄水は、該洗浄水をろ過するためのろ過部24と、該ろ過部24により清浄化された洗浄水を貯留する液貯蔵槽25と、該液貯蔵槽25に回収された洗浄水を前記噴射手段Dに供給する循環装置26とにより、前記噴射手段Dから噴射される洗浄水として循環させて再利用される。
【0013】
前記噴射手段Dは、前記噴射口から洗浄水を加圧噴射することができるものであれば、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、噴射ノズル31、ホースおよび配管類を含む連結具32、噴射量の制御弁(図示せず)および噴射時間のタイマー(図示せず)などを具備している。そして、この制御弁の制御や、タイマー制御、前記連続または間歇的な加圧噴射の制御プログラムは制御盤Eに格納されている。なお、洗浄水として温水を用いる場合には、循環装置26は昇温器を具備している。
【0014】
前記搬入側支持軸4と搬出側支持軸5は、前記一対の支柱2に設けられる軸受33、34により回動自在に支持されている。また、前記第1槽3は前記搬入側支持軸4と搬出側支持軸5のうち、搬入側支持軸4に連結される傾動手段Fにより傾動自在にされている。この傾動手段Fは、図6〜7に示されるように、長尺材Wを挿通するときに、前記第1槽3内に貯留されるセラミックボールを転動移動させて該第1槽3の搬入側支持軸4の搬入通路4aから搬出側支持軸5の搬出通路5aまでの長尺材Wの通路を確保する状態の位置に該第1槽3を傾動させるエアシリンダや、油圧シリンダ、サーボシリンダなどのアクチュエータを用いることができ、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、エアシリンダ35が用いられている。なお、図7において、符号Lは、第1槽3内に溜められるセラミックボールが第1槽3の転倒により移動して前記側壁搬出通路8と搬出通路5aとを塞がない当該セラミックボール層の表面を示す。また、同様に前記側壁搬入通路と搬入通路4aもセラミックボールにより塞がらない。
これにより、従来の洗浄方法では、洗浄装置として長尺材をセラミック粒子を充填した容器内に入線させるとき、初期作業として容器の長尺材の搬入通路から搬出通路までの該容器内のセラミック粒子を排除しながらの入線作業が必要であり、多大な段取り時間を要するという問題があるのに対して、本実施の形態では、前記第1槽3を傾動させて長尺材Wを通過させるため、前記入線作業時間を短縮することができる。
【0015】
前記エアシリンダ35は、側部が基台1に設けられる回動支持部36に連結され、ロッド先端部35aがリンク機構37を介して搬入側支持軸4に回動自在に軸支されている。これにより、前記第1槽3は、セラミックボールを転動移動させて長尺材Wの洗浄効果を高めるために、定期的にエアシリンダ35により第1槽3を傾動させるのが好ましいが、本発明においては、前記噴射手段Dによりセラミックボールを転動移動させて充分洗浄効果を高めることができるので、とくに第1槽3は洗浄中に傾動させる必要がなく、前述したように長尺材Wを挿通させるときに傾動させるようにすることができる。
【0016】
前記水滴除去手段Bは、長尺材Wの表面を挟持するための一対の吸水ローラ41と、該吸水ローラ41が取り付けられる軸42と、該軸42を支持するとともに該吸水ローラ41を定期的に押圧する押圧機構43とを具備している。なお、本実施の形態では、前記吸水ローラ41は、長尺材Wの表面を挟持するために一対設けられているが、とくにこれに限定されるものではなく、吸水効果を高めるために2対以上設けることができる。
また、前記吸水ローラ41は、本発明において、吸水機能を有していれば、その構造はとくに限定されるものではないが、本実施の形態では、前記軸42に挿通される硬質部材としてのリング状の芯金41aと該芯金41aの周りに設けられる軟質の吸水材41bとからなる。この吸水材41bとしては、たとえばスポンジや、吸水性ゴム(たとえば連泡、単泡性ゴムなど)、または化学繊維や植物繊維からなる吸水フェルトなどを用いることができる。
前記押圧機構43は、本発明において、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、前記軸42を支持するハウジング44と、該ハウジング44の外周から延設される二股形状の第1の連結部45および第2の連結部46と、該第1の連結部45をケース47にブラケット48aを介して設けられる固定部材48に回動自在に連結する回動支持部としてのピン49と、該第2の連結部46に回動自在に連結されるアクチュエータ50とから構成されている。このアクチュエータ50としては、たとえばエアシリンダを用いることができる。また、このアクチュエータ50の定期的な作動は、前記制御盤Eに搭載されるコントローラにより制御される。また、前記ケース47の下部には、前記液貯蔵槽25に洗浄水を回収するための排水管47aが設けられている。
本実施の形態では、前記一対の吸水ローラ41を定期的に押圧することにより、吸水された水を押し出(排出)して、吸水機能を維持することができる。
また、本実施の形態では、前記ハウジング44に軸42を回動自在に支持する軸受(図示せず)が組み込まれている。このため、この一対の吸水ローラ41は通過中の長尺材Wとの摩擦により回動自在になる。この吸水ロール41が回動すると、吸水機能が高い部分で長尺材Wの表面を挟持するため、長尺材Wの表面から水滴を吸収し、除去する機能を維持することができる。
また、長尺材Wの再供給により別の長尺材を通過させる場合、一旦一対の吸水ローラ41を離間させるが、このとき前回の長尺材Wの表面から吸着した水分を該吸水ローラ41から搾り出すために、図5に示されるように該吸水ローラ41に接近した部位に当接部材61を設けるのが好ましい。
【0017】
前記乾燥手段Cは、圧縮エアを噴射する乾燥ノズル手段と、エアポンプ51とを具備している。該乾燥ノズル手段は、前記ケース47の内壁に固定されるブラケット52の下部において長尺材Wを挟む位置に配設される一対のノズル53から構成されている。また、この一対のノズル53は、対向する面に該長尺材Wを通過させる通路53aが形成されている。このノズル53とエアポンプ51とはホース54および配管類を含む連結具55により連結されている。なお、前記圧縮エアは、乾燥していれば室温のエアまたは温風(加熱されたエア)とすることができる。温風を噴射する場合には、エアポンプ51として空気昇温器を備えるエアポンプを用いる。
また、本実施の形態では、前記圧縮エアを長尺材に吹き付けて乾燥させているが、本発明においては、この吹き付けている圧縮エアをさらに前記一対の吸水ローラ41に吹き付けて長尺材Wから吸水した水分を蒸発させることにより、該吸水ローラ41による吸水効果を高めることができる。たとえば、圧縮エアを一対の吸水ローラ41へ向けて吹き付ける構造は、ノズル53の通路53aの入口端面(長尺材Wが搬入する側のノズル53の端面)から一対の吸水ローラ41の挟持面(合わせ面)に向けて配置したパイプにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる長尺材の付着物除去装置の一部切欠きの正面図である。
【図2】図1の一部切欠きの平面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】図1の一部切欠きの右側面図である。
【図6】図2のI−I線の断面矢視図である。
【図7】図6の第1槽を転倒したときの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
A 洗浄装置
B 水滴除去手段
C 乾燥手段
D 噴射手段
E 制御盤
W 長尺材
1 基台
2 支柱
3 第1槽
3a、3b、
3c、3d 側壁
4 搬入側支持軸
5 搬出側支持軸
4a 搬入通路
5a 搬出通路
6 メッシュ部材
7 内壁板
8 側壁搬出通路
9、10 排出通路部材
11、12 通孔貫
13、14 樹脂板
15 排出口
21 第2槽
22 支持台
23 排出管
24 ろ過部
25 液貯蔵槽
26 循環装置
31 噴射ノズル
32 連結具
33、34 軸受
35 エアシリンダ
35a ロッド先端部
36 回動支持部
37 リンク機構
41 吸水ローラ
41a 芯金
41b 吸水材
42 軸
43 押圧機構
44 ハウジング
45 第1の連結部
46 第2の連結部
47 ケース
47a 排水管
48 固定部材
48a ブラケット
49 ピン
50 アクチュエータ
51 エアポンプ
52 ブラケット
53 ノズル
53a 通路
54 ホース
55 連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材の表面に付着した付着物を除去したのち、該長尺材の表面を乾燥する付着物除去方法であって、
長尺材の表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄工程と、
洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去工程と、
水滴を除去したのちの湿潤した長尺材の表面を乾燥させる乾燥工程
とを含む長尺材の付着物除去方法。
【請求項2】
前記水滴除去工程に、長尺材の表面を回動自在に挟持するとともに、定期的に押圧する少なくとも一対の吸水ローラが用いられている請求項1記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項3】
前記吸水ローラの表層部に軟質の吸水材を用いる請求項2記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項4】
前記吸水材がスポンジまたは吸水性ゴムまたは吸水フェルトである請求項3記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項5】
前記洗浄工程が、洗浄材としてセラミックボールと洗浄水を用いて、第1槽内にセラミックボールと洗浄水を溜めたのち、該第1槽内に洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射しながらセラミックボールを転動および流動させるとともに、長尺材の表面に接触させて洗浄する工程である請求項1、2、3または4記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項6】
前記セラミックボールは前記第1槽内の長尺材の表面を被う位置まで該第1槽に充填されている請求項5記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項7】
前記セラミックボールが、研磨性を有する砥粒を混入したセラミックボールである請求項5記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項8】
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部の通路径および搬出通路部の通路径より大きい請求項5記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項9】
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部および搬出通路部と長尺材とのあいだのスキマより大きい請求項5記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が圧縮エアを長尺材の表面に噴射する工程である請求項1、2、3または4記載の長尺材の付着物除去方法。
【請求項11】
請求項1記載の付着物除去方法に用いられる付着物除去装置であって、
長尺材の表面に付着した付着物を洗浄材により除去する洗浄装置と、
洗浄後の長尺材の表面から水滴を吸収し、除去する水滴除去手段と、
水滴を除去したのちの湿潤した長尺材の表面を乾燥させる乾燥手段
とを備えてなる長尺材の付着物除去装置。
【請求項12】
前記水滴除去手段が、長尺材の表面を挟持するための少なくとも一対の吸水ローラと、該吸水ローラが取り付けられる軸と、該軸を支持するとともに該吸水ローラを定期的に押圧する押圧機構とを具備する請求項11記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項13】
前記押圧機構が、前記軸を支持するハウジングと、該ハウジングの外周から延設される第1の連結部および第2の連結部と、該第1の連結部を固定部材に回動自在に連結する回動支持部と、該第2の連結部に回動自在に連結されるアクチュエータである請求項12記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項14】
前記ハウジングに軸を回動自在に支持する軸受が組み込まれている請求項13記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項15】
前記吸水ローラが硬質部材と硬質部材の周りに設けられる軟質の吸水材とからなる請求項12、13または14記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項16】
前記吸水材がスポンジまたは吸水性ゴムまたは吸水フェルトである請求項15記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項17】
前記洗浄装置が、洗浄材としてセラミックボールと洗浄水を用いて、基台と、基台に立設される一対の支柱と、該一対の支柱に支持される前記長尺材の搬入部と搬出部を有するとともに前記セラミックボールと洗浄水を溜める第1槽と、該第1槽内に洗浄水を連続または間歇的に加圧噴射する噴射手段とを具備してなる請求項11、12、13または14記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項18】
前記第1槽の搬入部と搬出部を回動自在に支持するために前記一対の支柱に設けられる軸受と、前記長尺材の搬入部および搬出部のうちいずれか一方に連結して前記第1槽を傾動させる傾動手段を具備してなる請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項19】
前記傾動手段が、前記第1槽内に貯留されるセラミックボールを転動移動させて該第1槽の搬入部の搬入通路部から搬出部の搬出通路部までの長尺材の通路を確保する状態の位置に該第1槽を傾動させるアクチュエータである請求項18記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項20】
前記第1槽から排出される洗浄水を回収するために該第1槽の下部周辺部に設けられる第2槽と、前記第2槽から排出される洗浄水を清浄化するろ過部と、該清浄化された洗浄水を貯留する液貯蔵槽と、該液貯蔵槽に回収された洗浄水を前記噴射手段に供給する循環装置とを具備してなる請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項21】
前記セラミックボールは前記第1槽内の長尺材の表面を被う位置まで該第1槽に充填されている請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項22】
前記セラミックボールが、研磨性を有する砥粒を混入したセラミックボールである請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項23】
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部の通路径および搬出通路部の通路径より大きい請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項24】
前記セラミックボールの外径が、長尺材が通過する第1槽の搬入通路部および搬出通路部と長尺材とのあいだのスキマより大きい請求項17記載の長尺材の付着物除去装置。
【請求項25】
前記乾燥手段が、圧縮エアを噴射する乾燥ノズル手段と、エアポンプとを具備する請求項11、12、13または14記載の長尺材の付着物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−255388(P2008−255388A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96168(P2007−96168)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】