長尺材の加熱および搬送装置
【課題】複数の長尺材を搬送ししつ、それらの端面を均一に且つ効率良く加熱できる長尺材の加熱および搬送装置を提供する。
【解決手段】複数の長尺材Wを複数の凹部3で個別に支持する一対の固定ラック2と、これと平行に位置し、凹部3と相似形で長尺材Wを支持する複数の凹部5を有し、凹部5が回転運動可能な一対の移動ラック4と、両ラック2,4との外側に平行に位置する加熱箱体10とを含み、移動ラック4は、固定ラック2の凹部3に支持された長尺材Wを凹部5に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラック2における長尺材Wの搬送方向の凹部3に各長尺材Wを支持するよう持ち下げる回転運動を行い、加熱箱体10は、移動ラック4の回転運動のうち上半分の運動と同期して昇降し、固定ラック2の凹部3および回転運動する移動ラック4の凹部5に支持された長尺材Wの端面に対向した側面12に複数の酸素バーナ11を有する、長尺材の加熱および搬送装置1。
【解決手段】複数の長尺材Wを複数の凹部3で個別に支持する一対の固定ラック2と、これと平行に位置し、凹部3と相似形で長尺材Wを支持する複数の凹部5を有し、凹部5が回転運動可能な一対の移動ラック4と、両ラック2,4との外側に平行に位置する加熱箱体10とを含み、移動ラック4は、固定ラック2の凹部3に支持された長尺材Wを凹部5に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラック2における長尺材Wの搬送方向の凹部3に各長尺材Wを支持するよう持ち下げる回転運動を行い、加熱箱体10は、移動ラック4の回転運動のうち上半分の運動と同期して昇降し、固定ラック2の凹部3および回転運動する移動ラック4の凹部5に支持された長尺材Wの端面に対向した側面12に複数の酸素バーナ11を有する、長尺材の加熱および搬送装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼材からなる複数の長尺材を搬送ししつその一端面または両端面を均一に且つ効率良く加熱するための長尺材の加熱および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴットやブルームなどの鋼塊を熱間圧延して断面円形または正方形などで且つ細長く成形された鋼材は、コールドシャーやエメリーソーなどを用いて、所定の長さに切断される。係る切断時において、コールドシャーを用いた場合、切断面(端面)にシャー割れが生じたり、エメリーソーを用いた場合、切断面付近が焼き入れ状態となることがある。上記シャー割れや前記焼きが端面に入っていると、切断後の長尺材を加工する次工程で、品質トラブルを招くおそれがある。
【0003】
前記品質トラブルを防ぐため、鋼材などの長尺材を複数本結束し、これらの端面を再度加熱して、係る端面の付近を焼きならす方法が行われている。
例えば、多数の直棒を1つに結束した直棒群を、多数のノズル孔を備えた酸素バーナに近接した対向させ、上記直棒群の各端面に酸素バーナを近接状態に保ちつつ移動させることで、各直棒の端面を均一に加熱する直棒端面加熱方法および加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−26918号公報(第1〜5頁、図2,3)
【0005】
しかしながら、前記直棒端面加熱方法および加熱装置によると、多数の長尺材を一旦結束し、これを受け部に載置した後、酸素バーナを各端面に近接状態して、各端面を加熱するため、上記結束、直棒群の搬送、酸素バーナの移動という多くの準備工程が必要となる。また、加熱後においても、上記と逆の後工程がそれぞれ必要となる。しかも、結束状態にある長尺材の各端面を同時に加熱するため、酸素バーナを如何に近接させても各端面を均一に加熱することは、困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した背景技術における問題点を解決し、複数の長尺材を搬送ししつ、それらの端面を均一に且つ効率良く加熱できる長尺材の加熱および搬送装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、複数の長尺材をそれらの幅方向に沿って1本ずつ搬送すると共に、係る搬送工程の一部で、各長尺材の端面を同時に加熱する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の長尺材の加熱および搬送装置(請求項1)は、鋼材などの複数の長尺材を複数の凹部で個別に支持する複数の固定ラックと、係る固定ラックと平行に位置し、上記凹部と相似形で且つ上記長尺材を支持する複数の凹部を有す且つ各凹部が回転運動可能な複数の移動ラックと、上記固定ラックおよび移動ラックの複数組のうち、少なくとも何れかの組の外側に平行に位置する加熱箱体と、を含み、上記複数の移動ラックは、上記固定ラックの各凹部に支持された各長尺材をその凹部に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラックにおける長尺材を搬送すべき方向の各凹部に各長尺材を支持するように持ち下げる回転運動が行えると共に、上記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動のうちほぼ上半分の運動と同期して昇降し、上記固定ラックの凹部および回転運動する移動ラックの凹部に個別に支持された長尺材の端面に対向した側面に複数の加熱手段を有する、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、複数の長尺材は、固定ラックの各凹部に両端付近を支持されつつ、各凹部が回転運動しつつ移動する移動ラックの各凹部に両端付近を支持されて昇降した際に、これらと同期して昇降する加熱箱体における複数の加熱手段を有する側面に、各長尺材の端面が接近する。しかも、係る接近状態を保ちつつ、各長尺材の端面を上記加熱手段により均一に加熱することで、前述した端面付近の焼き入れやシャー割れなどを除去できるため、次工程における品質トラブルを解消することができる。更に、複数の長尺材は、前記固定ラックおよび移動ラックにより、幅方向に沿って1本ずつ順送りされるため、例えば熱間圧延された後、常温付近までの冷却を待つことなく、各端面の加熱を順次行うことができる。
尚、長尺材の断面形状には、円形、正方形、または長方形などが含まれる。また、長尺材の材質には、前述した切断面(端面)付近に焼きが入ったり、シャー割れが生じ得るものであれば、鋼材はもとより、非鉄金属も含まれる。更に、前記固定ラックと移動ラックとの組は、それぞれ1つずつが隣接するものを指す。
【0009】
また、本発明には、前記固定ラックおよび移動ラックの組は、複数の長尺材の両端付近に一対が平行に配置されると共に、係る一対の固定ラックおよび移動ラックの組の少なくとも一方の外側に、前記加熱箱体がその前記側面を上記長尺材の端面に近接して配置されている、長尺材の加熱および搬送装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、複数の長尺材は、一対ずつの固定ラックおよび移動ラックにより、幅方向に沿って1本ずつ順送りされ、移動ラックと共に上昇した際に、各長尺材の両端面または何れか一方の端面を均一に加熱できる。従って、端面を加熱すべき長尺材の数量や温度域、スペースなどに応じて、同時に両端面を加熱したり、一端面を加熱した後、更に搬送して他端面を加熱することが自在に行える。
【0010】
更に、本発明には、前記移動ラックの回転運動は、当該移動ラックをほぼ水平姿勢に保ちつつ、各凹部が側面視でほぼ円形またはほぼ四角形の移動軌跡を形成するものであり、前記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動によりその凹部が形成する移動軌跡のほぼ上半分に相当する範囲で昇降する、長尺材の加熱および搬送装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、移動ラックの各凹部に両端付近を支持されつつ上昇した複数の長尺材の一端面または両端面を、これらが接近し且つこれらの長尺材と同期的に昇降する加熱箱体の側面における複数の加熱手段により、均一に加熱することができる。しかも、加熱箱体は、複数の長尺材と、それらの端面に接近しつつ同様の範囲で昇降するため、垂直方向のサイズを最小限にでき、安価に製作し得る。
【0011】
また、本発明には、前記加熱箱体は、前記移動ラックに当接するローラを下端に有し且つ移動ラックにおける各凹部の回転運動のほぼ上半分を当該加熱箱体に伝達する複数のロッドと、当該移動ラックの各凹部の回転運動うちほぼ下半分を除去すべく、当該加熱箱体の下降を阻止するストッパと、を備えている、長尺材の加熱および搬送装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、移動ラックは、全体の姿勢をほぼ水平に保ちつつ、その各凹部が側面視覚でほぼ円形やほぼ四角形(正方形または長方形)の回転運動を行う際に、係る移動ラックにおける各凹部の上記移動軌跡のほぼ上半分の範囲において、加熱箱体に対し、水平姿勢のまま上記移動軌跡のほぼ上半分の範囲での昇降を確実に行わせることができる。従って、少ない加熱手段により、複数の長尺材ごとの端面を均一に且つ効率良く加熱することが可能となる。
【0012】
加えて、本発明には、前記加熱箱体は、前記長尺材の端面に対向した側面に複数の酸素バーナ孔、または複数の誘導加熱体を有する、長尺材の加熱および搬送装置(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記側面に多数の酸素バーナ孔が穿設されるか、加熱箱体の長手(水平)方向に沿って、複数の誘導加熱体を側面に併設するした加熱箱体となる。このため、加熱すべき長尺材の材質や端面サイズなどに応じて、最適の加熱箱体を用いて長尺材の端面加熱を一層効果的に行うことができる。
尚、前記誘導加熱体は、例えば、絶縁材や非磁性材などの内側に渦巻き形の誘導コイルを配置したものが用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明による長尺材の加熱および搬送装置1の概略を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線の矢視に沿った一部に概略断面を含む側面図、図3は、図2と直交する視覚で且つ一部に断面を含む正面図である。
長尺材の加熱および搬送装置1は、図1〜3に示すように、左右一対(複数)の水平な固定ラック2と、係る固定ラック2と隣接し且つ平行に位置する左右一対(複数)の移動ラック4と、一対ずつのうちで一方の固定ラック2および移動ラック4の組の外側に、これと平行に位置する加熱箱体10と、を備えている。
固定ラック2は、図1,2に示すように、細長い鋼部材からなり、その上辺に沿って断面ほぼV字形の凹部3を多数連続して有する。
【0014】
また、移動ラック4も、細長い鋼部材からなり、その上辺に沿って前記凹部3と相似形で断面ほぼV字形の凹部5を多数連続して有する。図2,3に示すように、移動ラック4,4は、その底面から前後一対ずつのロッド6が垂下し、係る四つのロッド6の下端にレベル板7が水平に固定されている。係る移動ラック4,4は、図1,2中の矢印で示すように、ほぼ水平姿勢を保ちつつ、図示しないカムまたはクランク機構によって、複数の凹部5が側面視で円形の移動軌跡を描くような回転運動が可能とされている。
【0015】
更に、加熱箱体10は、全体が細長い直方体を呈し、一方の移動ラック4に対向した側面12に後述する複数の酸素バーナ孔(加熱手段)11が穿設されている。図2,3に示すように、加熱箱体10は、前後一対の水平部材13、その後端を支持する連結体15、および当該連結体15に連結するスプライン軸14を介して、各スプライン軸14が多数のボールを介して昇降する一対のボールスプライン軸受(以下、単に軸受と称する)16に対し、昇降可能に支持されている。
尚、上記連結体15は、スプライン軸14の上端部に固定されると共に、加熱箱体10の昇降に応じて昇降する。また、一対の軸受16は、図示しないスタンドを介して、床面上に支持されている。
【0016】
図2,3に示すように、一対の水平部材13から個別に垂下する一対のロッド9の下端には、それぞれローラ8が軸支されている。係るローラ8は、図1〜3の移動ラック4,4が最低位置にあり、且つ固定ラック2,2と同じ高さにある状態では、前記レベル板7から離れているが、後述するように、移動ラック4,4が上昇した際に、レベル板7の上面に接触し且つ転動する。この際、加熱箱体10は、各スプライン軸14が自由昇降することで、図1中の矢印で示すように、水平姿勢を保ちつつ、前記移動ラック4の回転運動による各凹部5の移動軌跡のほぼ上半分の範囲内において昇降可能とされている。
図3に示すように、軸受16からレベル板7寄りに突出した水平板17の上には、垂直棒19が立設し、その上端には硬質ゴムなどからなり且つ前記水平部材13の下面に接触可能なストッパ18が設けられている。係るストッパ18は、図1〜3に示すように、移動ラック4,4が下降した際に、水平部材13の下面に当接して、加熱箱体10の所定以上の下降を阻止するためのものである。
【0017】
ここで、長尺材の加熱および搬送装置1の作用について説明する。
例えば、溝付きロール間で熱間圧延され所定の直径(例えば、30mm)とされた鋼材は、エメリソーにより所定の長さ(例えば、6メートル)に切断されて、複数の長尺材Wとなる。各長尺材Wは、切断時にその切断面(端面)付近に焼きが入った状態となっている。
係る複数の長尺材Wは、例えば多関節ロボットにより、1本ずつ把持され、図1〜3に示すように、一対の固定ラック2の各凹部3および一対の移動ラック4の各凹部5に両端付近を順次支持され、且つ図1で左側から右側に搬送される。
【0018】
図1〜3の状態では、一対の移動ラック4は、各凹部5の回転運動の移動軌跡において、最低の位置にあり、当該移動ラック4と固定ラック3とは、図2に示すように、側面視で各凹部3,5を含めて重複している。このため、各長尺材Wは、固定ラック2および移動ラック4の各凹部3,5に支持されている。また、図1〜3では、移動ラック4が最低位置にあるため、加熱箱体10側のロッド9の下端における各ローラ8は、レベル板7から離れ、その上方に位置している。
次に、図4中のカーブした矢印で示すように、一対の移動ラック4を図示しない機構により、ほぼ水平姿勢を保ちつつ各凹部5が円弧形状に沿ってほぼ斜め上方に上昇するように、各凹部5を回転運動させる。
【0019】
その結果、図4,5に示すように、各長尺材Wは、固定ラック2の各凹部3から離れ、且つ移動ラック4の各凹部5のみに支持されて持ち上げられ、ほぼ斜め方向に上昇する。同時に、一対の移動ラック4の係る上昇に伴って、レベル板7の上面が加熱箱体10側の各ローラ8に当接し、各ロッド9および水平部材13を介して加熱箱体10を上昇可能とする。
更に、各凹部5を回転運動させつつ移動ラック4,4が上昇し、前記円形運動の上半分側に上昇すると、同様に上昇するレベル板7と共に、各ローラ8、各ロッド9、および各水平部材13を介して、加熱箱体10も上昇し始める。この際、各水平部材13の後端で連結体15に連結されたスプライン軸14は、軸受16をスライドしつつ当該軸受16に支持されて上昇する。
【0020】
次いで、各凹部5を回転運動させつつ移動ラック4,4が更に円弧形に上昇し、各凹部5が円形運動の最上部に上昇すると、図6,7に示すように、移動ラック4,4の上昇に伴い且つこれと同期して、加熱箱体10も前記ローラ8などを介して上昇する。この間において、各長尺材Wの図7における右端面(一端面)は、移動ラック4の上昇に伴って上昇すると共に、各長尺材Wの当該右端面に対し、加熱箱体10の側面12が対向しつつ接近し且つ同期的に上昇する。また、図7に示すように、加熱箱体10側の水平部材13は、前記ストッパ18から離れる。
【0021】
係る状態で、図8中の一点鎖線の矢印で示すように、各凹部5の円形の移動軌跡で上昇する各長尺材Wの右端面に対し、図8中の垂直の矢印で示すように、移動ラック4,4と同期して上昇する加熱箱体10の対向する側面12に穿設された複数の酸素バーナ孔(加熱手段)11から火炎fを吹き付けて加熱する。係る火炎fの吹き付けは、各長尺材Wの右端面に対し、移動ラック4における各凹部5の円形運動による移動軌跡のほぼ上半分の範囲において、連続して行われる。
このため、各長尺材Wの右端面が均一に加熱され、係る右端面付近に前記切断時に入った焼き入れ状態を解消し、且つ焼きならすことが確実に行える。しかも、複数の長尺材Wの右端面を同時に加熱することができ、且つ加熱箱体10の側面12に垂直方向に穿設する酸素バーナ孔11を最少限にできるため、当該加熱箱体10の製作コストを低減したり、その燃料コストを節約することもできる。
【0022】
更に、図9中のカーブした矢印で示すように、一対の移動ラック4および各長尺材Wがほぼ斜め下向きに下降し始めると、これと同期して加熱固体10も下降し始める。図9,10に示すように、移動ラック4における各凹部5が描く円形運動の移動軌跡で、ほぼ上半分よりも下側に下降すると、各ストッパ18に加熱箱体10側の水平部材13が当接する。このため、加熱箱体10は、これ以下への下降を阻止される。係る下降が停止する直前まで、加熱箱体10の各酸素バーナ孔11からの火炎fが、各長尺材Wの右端面に対し、連続的に吹き付けられる。
そして、一対の移動ラック4の各凹部5が円形の回転運動における最低位置に下降すると、前記図1〜3に示したように、移動ラック4は固定ラック2と同じ高さになり、且つ各凹部3,5も側面視で互いに重複する。この際、移動ラック4により持ち下げられた各長尺材Wは、固定ラック2の前記図1における右側(搬送方向)に隣接する凹部3に、それぞれ順送りされている。
【0023】
以上に説明した加熱および搬送装置1によれば、複数の長尺材Wを幅方向に沿って搬送しつつ、係る途中で各長尺材Wの端面を確実且つ均一に加熱できると共に、加熱箱体も縦寸法が小さなもので良く、燃料コストなども低減できる。
尚、図1,3において、各長尺材Wの搬送方向の先に、一対の固定ラック2および移動ラック4を延長し、前記加熱箱体10と反対側に別の加熱箱体10や前記軸受16などを前記同様で且つ対称にして配置することで、各長尺材Wの左端面(他端面)をも連続的に加熱しつつ、各長尺材Wを搬送することができる。
あるいは、図1〜3において、左右一対の固定ラック2および移動ラック4の2組の左右両外側に、一対の加熱箱体10などを対称にして配置することで、各長尺材Wの両端面を連続的に加熱しつつ、各長尺材Wを搬送することができる。
【0024】
図11は、異なる形態の加熱箱体20を示し、その細長い直方体における前記長尺材Wの端面に対向する側面22には、複数の誘導加熱体24が長手(水平)方向に沿って連続して配置されている。係る誘導加熱体24は、例えば非磁性材の板材の内側または裏面側に渦巻き形のコイルCを配置したものである。
上記コイルCに高周波電流を通電すると、当該コイルCの径方向と直交する軸方向に沿って磁界が発生する。係る磁界は、加熱箱体20の側面22に接近して対向し且つ磁性材からなる前記長尺材Wの端面付近に浸透し、且つ当該端面付近の磁性材を励起して誘導加熱する。これにより、長尺材Wの端面付近を急速加熱し、前記切断時の焼き入れ状態を解消できると共に、縦方向の寸法が小さな加熱箱体20であっても、その側面22に長尺材Wの端面形状および寸法に対応した誘導加熱体24を容易配置することができる。
【0025】
本発明は、以上のような各形態に限定されない。
例えば、断面が正方形または長方形の細長い鋼材などを本発明の加熱および搬送対象としても良い。
また、互いに平行な3列以上の固定ラックと、互いに平行な3列以上の移動ラックと、これらの外側の少なくとも一方に位置する加熱箱体と、を含む長尺材の加熱および搬送装置としても良い。
更に、固定ラックおよび移動ラックは、上辺に沿って互いに相似形のほぼ半円形である凹部を複数ずつそれぞれ連続して有する形態としても良い。係る移動ラックも、前記同様に各凹部が回転可能であるため、各凹部は側面視でほぼ円形または四角形などの移動軌跡を描く。この形態による場合、断面円形や楕円形の長尺材Wを振動しにくくして加熱および搬送できる。
【0026】
また、固定ラックの凹部、移動ラックの凹部、および受け部の受け面の形状は、側面視で例えば上向きに開いたコ字形や逆台形としても良く、これらにより、断面四角形の長尺材はもとより、断面六角形や八角形の長尺材も、本発明の加熱および搬送対象とすることができる。
更に、前記加熱箱体は、複数ずつの平行な固定ラックおよび移動ラックの組のうち、少なくとも一方の外側に沿って、複数個を連続して、あるいは間隔を置いて配置することも可能である。
尚、前記加熱および搬送装置は、制御室で多数の長尺材や移動ラックや加熱箱体などの全体の動きを、各部のモニタにより監視され、新たな長尺材の搬入や端面の加熱や搬送済みの長尺材の搬出を含め、全自動により運転される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による長尺材の加熱および搬送装置の概略を示す斜視図。
【図2】図1中のA−A線の矢視に沿った一部に概略断面を含む側面図。
【図3】図2と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図4】上記装置の作用を示す図2と同様な側面図。
【図5】図4と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図6】上記装置の引き続く作用を示す図2,4と同様な側面図。
【図7】図6と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図8】加熱箱体の付近を示す部分斜視図。
【図9】上記装置の引き続く作用を示す図2,4,6と同様な側面図。
【図10】図9と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図11】異なる形態の加熱箱体を示す部分斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1……………加熱および搬送装置
2……………固定ラック
3,5………凹部
4……………移動ラック
8……………ローラ
9……………ロッド
10,20…加熱箱体
12,22…側面
18…………ストッパ
24…………誘導加熱体
W……………長尺材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼材からなる複数の長尺材を搬送ししつその一端面または両端面を均一に且つ効率良く加熱するための長尺材の加熱および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴットやブルームなどの鋼塊を熱間圧延して断面円形または正方形などで且つ細長く成形された鋼材は、コールドシャーやエメリーソーなどを用いて、所定の長さに切断される。係る切断時において、コールドシャーを用いた場合、切断面(端面)にシャー割れが生じたり、エメリーソーを用いた場合、切断面付近が焼き入れ状態となることがある。上記シャー割れや前記焼きが端面に入っていると、切断後の長尺材を加工する次工程で、品質トラブルを招くおそれがある。
【0003】
前記品質トラブルを防ぐため、鋼材などの長尺材を複数本結束し、これらの端面を再度加熱して、係る端面の付近を焼きならす方法が行われている。
例えば、多数の直棒を1つに結束した直棒群を、多数のノズル孔を備えた酸素バーナに近接した対向させ、上記直棒群の各端面に酸素バーナを近接状態に保ちつつ移動させることで、各直棒の端面を均一に加熱する直棒端面加熱方法および加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−26918号公報(第1〜5頁、図2,3)
【0005】
しかしながら、前記直棒端面加熱方法および加熱装置によると、多数の長尺材を一旦結束し、これを受け部に載置した後、酸素バーナを各端面に近接状態して、各端面を加熱するため、上記結束、直棒群の搬送、酸素バーナの移動という多くの準備工程が必要となる。また、加熱後においても、上記と逆の後工程がそれぞれ必要となる。しかも、結束状態にある長尺材の各端面を同時に加熱するため、酸素バーナを如何に近接させても各端面を均一に加熱することは、困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した背景技術における問題点を解決し、複数の長尺材を搬送ししつ、それらの端面を均一に且つ効率良く加熱できる長尺材の加熱および搬送装置を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、複数の長尺材をそれらの幅方向に沿って1本ずつ搬送すると共に、係る搬送工程の一部で、各長尺材の端面を同時に加熱する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の長尺材の加熱および搬送装置(請求項1)は、鋼材などの複数の長尺材を複数の凹部で個別に支持する複数の固定ラックと、係る固定ラックと平行に位置し、上記凹部と相似形で且つ上記長尺材を支持する複数の凹部を有す且つ各凹部が回転運動可能な複数の移動ラックと、上記固定ラックおよび移動ラックの複数組のうち、少なくとも何れかの組の外側に平行に位置する加熱箱体と、を含み、上記複数の移動ラックは、上記固定ラックの各凹部に支持された各長尺材をその凹部に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラックにおける長尺材を搬送すべき方向の各凹部に各長尺材を支持するように持ち下げる回転運動が行えると共に、上記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動のうちほぼ上半分の運動と同期して昇降し、上記固定ラックの凹部および回転運動する移動ラックの凹部に個別に支持された長尺材の端面に対向した側面に複数の加熱手段を有する、ことを特徴とする。
【0008】
これによれば、複数の長尺材は、固定ラックの各凹部に両端付近を支持されつつ、各凹部が回転運動しつつ移動する移動ラックの各凹部に両端付近を支持されて昇降した際に、これらと同期して昇降する加熱箱体における複数の加熱手段を有する側面に、各長尺材の端面が接近する。しかも、係る接近状態を保ちつつ、各長尺材の端面を上記加熱手段により均一に加熱することで、前述した端面付近の焼き入れやシャー割れなどを除去できるため、次工程における品質トラブルを解消することができる。更に、複数の長尺材は、前記固定ラックおよび移動ラックにより、幅方向に沿って1本ずつ順送りされるため、例えば熱間圧延された後、常温付近までの冷却を待つことなく、各端面の加熱を順次行うことができる。
尚、長尺材の断面形状には、円形、正方形、または長方形などが含まれる。また、長尺材の材質には、前述した切断面(端面)付近に焼きが入ったり、シャー割れが生じ得るものであれば、鋼材はもとより、非鉄金属も含まれる。更に、前記固定ラックと移動ラックとの組は、それぞれ1つずつが隣接するものを指す。
【0009】
また、本発明には、前記固定ラックおよび移動ラックの組は、複数の長尺材の両端付近に一対が平行に配置されると共に、係る一対の固定ラックおよび移動ラックの組の少なくとも一方の外側に、前記加熱箱体がその前記側面を上記長尺材の端面に近接して配置されている、長尺材の加熱および搬送装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、複数の長尺材は、一対ずつの固定ラックおよび移動ラックにより、幅方向に沿って1本ずつ順送りされ、移動ラックと共に上昇した際に、各長尺材の両端面または何れか一方の端面を均一に加熱できる。従って、端面を加熱すべき長尺材の数量や温度域、スペースなどに応じて、同時に両端面を加熱したり、一端面を加熱した後、更に搬送して他端面を加熱することが自在に行える。
【0010】
更に、本発明には、前記移動ラックの回転運動は、当該移動ラックをほぼ水平姿勢に保ちつつ、各凹部が側面視でほぼ円形またはほぼ四角形の移動軌跡を形成するものであり、前記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動によりその凹部が形成する移動軌跡のほぼ上半分に相当する範囲で昇降する、長尺材の加熱および搬送装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、移動ラックの各凹部に両端付近を支持されつつ上昇した複数の長尺材の一端面または両端面を、これらが接近し且つこれらの長尺材と同期的に昇降する加熱箱体の側面における複数の加熱手段により、均一に加熱することができる。しかも、加熱箱体は、複数の長尺材と、それらの端面に接近しつつ同様の範囲で昇降するため、垂直方向のサイズを最小限にでき、安価に製作し得る。
【0011】
また、本発明には、前記加熱箱体は、前記移動ラックに当接するローラを下端に有し且つ移動ラックにおける各凹部の回転運動のほぼ上半分を当該加熱箱体に伝達する複数のロッドと、当該移動ラックの各凹部の回転運動うちほぼ下半分を除去すべく、当該加熱箱体の下降を阻止するストッパと、を備えている、長尺材の加熱および搬送装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、移動ラックは、全体の姿勢をほぼ水平に保ちつつ、その各凹部が側面視覚でほぼ円形やほぼ四角形(正方形または長方形)の回転運動を行う際に、係る移動ラックにおける各凹部の上記移動軌跡のほぼ上半分の範囲において、加熱箱体に対し、水平姿勢のまま上記移動軌跡のほぼ上半分の範囲での昇降を確実に行わせることができる。従って、少ない加熱手段により、複数の長尺材ごとの端面を均一に且つ効率良く加熱することが可能となる。
【0012】
加えて、本発明には、前記加熱箱体は、前記長尺材の端面に対向した側面に複数の酸素バーナ孔、または複数の誘導加熱体を有する、長尺材の加熱および搬送装置(請求項5)も含まれる。
これによれば、前記側面に多数の酸素バーナ孔が穿設されるか、加熱箱体の長手(水平)方向に沿って、複数の誘導加熱体を側面に併設するした加熱箱体となる。このため、加熱すべき長尺材の材質や端面サイズなどに応じて、最適の加熱箱体を用いて長尺材の端面加熱を一層効果的に行うことができる。
尚、前記誘導加熱体は、例えば、絶縁材や非磁性材などの内側に渦巻き形の誘導コイルを配置したものが用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明による長尺材の加熱および搬送装置1の概略を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線の矢視に沿った一部に概略断面を含む側面図、図3は、図2と直交する視覚で且つ一部に断面を含む正面図である。
長尺材の加熱および搬送装置1は、図1〜3に示すように、左右一対(複数)の水平な固定ラック2と、係る固定ラック2と隣接し且つ平行に位置する左右一対(複数)の移動ラック4と、一対ずつのうちで一方の固定ラック2および移動ラック4の組の外側に、これと平行に位置する加熱箱体10と、を備えている。
固定ラック2は、図1,2に示すように、細長い鋼部材からなり、その上辺に沿って断面ほぼV字形の凹部3を多数連続して有する。
【0014】
また、移動ラック4も、細長い鋼部材からなり、その上辺に沿って前記凹部3と相似形で断面ほぼV字形の凹部5を多数連続して有する。図2,3に示すように、移動ラック4,4は、その底面から前後一対ずつのロッド6が垂下し、係る四つのロッド6の下端にレベル板7が水平に固定されている。係る移動ラック4,4は、図1,2中の矢印で示すように、ほぼ水平姿勢を保ちつつ、図示しないカムまたはクランク機構によって、複数の凹部5が側面視で円形の移動軌跡を描くような回転運動が可能とされている。
【0015】
更に、加熱箱体10は、全体が細長い直方体を呈し、一方の移動ラック4に対向した側面12に後述する複数の酸素バーナ孔(加熱手段)11が穿設されている。図2,3に示すように、加熱箱体10は、前後一対の水平部材13、その後端を支持する連結体15、および当該連結体15に連結するスプライン軸14を介して、各スプライン軸14が多数のボールを介して昇降する一対のボールスプライン軸受(以下、単に軸受と称する)16に対し、昇降可能に支持されている。
尚、上記連結体15は、スプライン軸14の上端部に固定されると共に、加熱箱体10の昇降に応じて昇降する。また、一対の軸受16は、図示しないスタンドを介して、床面上に支持されている。
【0016】
図2,3に示すように、一対の水平部材13から個別に垂下する一対のロッド9の下端には、それぞれローラ8が軸支されている。係るローラ8は、図1〜3の移動ラック4,4が最低位置にあり、且つ固定ラック2,2と同じ高さにある状態では、前記レベル板7から離れているが、後述するように、移動ラック4,4が上昇した際に、レベル板7の上面に接触し且つ転動する。この際、加熱箱体10は、各スプライン軸14が自由昇降することで、図1中の矢印で示すように、水平姿勢を保ちつつ、前記移動ラック4の回転運動による各凹部5の移動軌跡のほぼ上半分の範囲内において昇降可能とされている。
図3に示すように、軸受16からレベル板7寄りに突出した水平板17の上には、垂直棒19が立設し、その上端には硬質ゴムなどからなり且つ前記水平部材13の下面に接触可能なストッパ18が設けられている。係るストッパ18は、図1〜3に示すように、移動ラック4,4が下降した際に、水平部材13の下面に当接して、加熱箱体10の所定以上の下降を阻止するためのものである。
【0017】
ここで、長尺材の加熱および搬送装置1の作用について説明する。
例えば、溝付きロール間で熱間圧延され所定の直径(例えば、30mm)とされた鋼材は、エメリソーにより所定の長さ(例えば、6メートル)に切断されて、複数の長尺材Wとなる。各長尺材Wは、切断時にその切断面(端面)付近に焼きが入った状態となっている。
係る複数の長尺材Wは、例えば多関節ロボットにより、1本ずつ把持され、図1〜3に示すように、一対の固定ラック2の各凹部3および一対の移動ラック4の各凹部5に両端付近を順次支持され、且つ図1で左側から右側に搬送される。
【0018】
図1〜3の状態では、一対の移動ラック4は、各凹部5の回転運動の移動軌跡において、最低の位置にあり、当該移動ラック4と固定ラック3とは、図2に示すように、側面視で各凹部3,5を含めて重複している。このため、各長尺材Wは、固定ラック2および移動ラック4の各凹部3,5に支持されている。また、図1〜3では、移動ラック4が最低位置にあるため、加熱箱体10側のロッド9の下端における各ローラ8は、レベル板7から離れ、その上方に位置している。
次に、図4中のカーブした矢印で示すように、一対の移動ラック4を図示しない機構により、ほぼ水平姿勢を保ちつつ各凹部5が円弧形状に沿ってほぼ斜め上方に上昇するように、各凹部5を回転運動させる。
【0019】
その結果、図4,5に示すように、各長尺材Wは、固定ラック2の各凹部3から離れ、且つ移動ラック4の各凹部5のみに支持されて持ち上げられ、ほぼ斜め方向に上昇する。同時に、一対の移動ラック4の係る上昇に伴って、レベル板7の上面が加熱箱体10側の各ローラ8に当接し、各ロッド9および水平部材13を介して加熱箱体10を上昇可能とする。
更に、各凹部5を回転運動させつつ移動ラック4,4が上昇し、前記円形運動の上半分側に上昇すると、同様に上昇するレベル板7と共に、各ローラ8、各ロッド9、および各水平部材13を介して、加熱箱体10も上昇し始める。この際、各水平部材13の後端で連結体15に連結されたスプライン軸14は、軸受16をスライドしつつ当該軸受16に支持されて上昇する。
【0020】
次いで、各凹部5を回転運動させつつ移動ラック4,4が更に円弧形に上昇し、各凹部5が円形運動の最上部に上昇すると、図6,7に示すように、移動ラック4,4の上昇に伴い且つこれと同期して、加熱箱体10も前記ローラ8などを介して上昇する。この間において、各長尺材Wの図7における右端面(一端面)は、移動ラック4の上昇に伴って上昇すると共に、各長尺材Wの当該右端面に対し、加熱箱体10の側面12が対向しつつ接近し且つ同期的に上昇する。また、図7に示すように、加熱箱体10側の水平部材13は、前記ストッパ18から離れる。
【0021】
係る状態で、図8中の一点鎖線の矢印で示すように、各凹部5の円形の移動軌跡で上昇する各長尺材Wの右端面に対し、図8中の垂直の矢印で示すように、移動ラック4,4と同期して上昇する加熱箱体10の対向する側面12に穿設された複数の酸素バーナ孔(加熱手段)11から火炎fを吹き付けて加熱する。係る火炎fの吹き付けは、各長尺材Wの右端面に対し、移動ラック4における各凹部5の円形運動による移動軌跡のほぼ上半分の範囲において、連続して行われる。
このため、各長尺材Wの右端面が均一に加熱され、係る右端面付近に前記切断時に入った焼き入れ状態を解消し、且つ焼きならすことが確実に行える。しかも、複数の長尺材Wの右端面を同時に加熱することができ、且つ加熱箱体10の側面12に垂直方向に穿設する酸素バーナ孔11を最少限にできるため、当該加熱箱体10の製作コストを低減したり、その燃料コストを節約することもできる。
【0022】
更に、図9中のカーブした矢印で示すように、一対の移動ラック4および各長尺材Wがほぼ斜め下向きに下降し始めると、これと同期して加熱固体10も下降し始める。図9,10に示すように、移動ラック4における各凹部5が描く円形運動の移動軌跡で、ほぼ上半分よりも下側に下降すると、各ストッパ18に加熱箱体10側の水平部材13が当接する。このため、加熱箱体10は、これ以下への下降を阻止される。係る下降が停止する直前まで、加熱箱体10の各酸素バーナ孔11からの火炎fが、各長尺材Wの右端面に対し、連続的に吹き付けられる。
そして、一対の移動ラック4の各凹部5が円形の回転運動における最低位置に下降すると、前記図1〜3に示したように、移動ラック4は固定ラック2と同じ高さになり、且つ各凹部3,5も側面視で互いに重複する。この際、移動ラック4により持ち下げられた各長尺材Wは、固定ラック2の前記図1における右側(搬送方向)に隣接する凹部3に、それぞれ順送りされている。
【0023】
以上に説明した加熱および搬送装置1によれば、複数の長尺材Wを幅方向に沿って搬送しつつ、係る途中で各長尺材Wの端面を確実且つ均一に加熱できると共に、加熱箱体も縦寸法が小さなもので良く、燃料コストなども低減できる。
尚、図1,3において、各長尺材Wの搬送方向の先に、一対の固定ラック2および移動ラック4を延長し、前記加熱箱体10と反対側に別の加熱箱体10や前記軸受16などを前記同様で且つ対称にして配置することで、各長尺材Wの左端面(他端面)をも連続的に加熱しつつ、各長尺材Wを搬送することができる。
あるいは、図1〜3において、左右一対の固定ラック2および移動ラック4の2組の左右両外側に、一対の加熱箱体10などを対称にして配置することで、各長尺材Wの両端面を連続的に加熱しつつ、各長尺材Wを搬送することができる。
【0024】
図11は、異なる形態の加熱箱体20を示し、その細長い直方体における前記長尺材Wの端面に対向する側面22には、複数の誘導加熱体24が長手(水平)方向に沿って連続して配置されている。係る誘導加熱体24は、例えば非磁性材の板材の内側または裏面側に渦巻き形のコイルCを配置したものである。
上記コイルCに高周波電流を通電すると、当該コイルCの径方向と直交する軸方向に沿って磁界が発生する。係る磁界は、加熱箱体20の側面22に接近して対向し且つ磁性材からなる前記長尺材Wの端面付近に浸透し、且つ当該端面付近の磁性材を励起して誘導加熱する。これにより、長尺材Wの端面付近を急速加熱し、前記切断時の焼き入れ状態を解消できると共に、縦方向の寸法が小さな加熱箱体20であっても、その側面22に長尺材Wの端面形状および寸法に対応した誘導加熱体24を容易配置することができる。
【0025】
本発明は、以上のような各形態に限定されない。
例えば、断面が正方形または長方形の細長い鋼材などを本発明の加熱および搬送対象としても良い。
また、互いに平行な3列以上の固定ラックと、互いに平行な3列以上の移動ラックと、これらの外側の少なくとも一方に位置する加熱箱体と、を含む長尺材の加熱および搬送装置としても良い。
更に、固定ラックおよび移動ラックは、上辺に沿って互いに相似形のほぼ半円形である凹部を複数ずつそれぞれ連続して有する形態としても良い。係る移動ラックも、前記同様に各凹部が回転可能であるため、各凹部は側面視でほぼ円形または四角形などの移動軌跡を描く。この形態による場合、断面円形や楕円形の長尺材Wを振動しにくくして加熱および搬送できる。
【0026】
また、固定ラックの凹部、移動ラックの凹部、および受け部の受け面の形状は、側面視で例えば上向きに開いたコ字形や逆台形としても良く、これらにより、断面四角形の長尺材はもとより、断面六角形や八角形の長尺材も、本発明の加熱および搬送対象とすることができる。
更に、前記加熱箱体は、複数ずつの平行な固定ラックおよび移動ラックの組のうち、少なくとも一方の外側に沿って、複数個を連続して、あるいは間隔を置いて配置することも可能である。
尚、前記加熱および搬送装置は、制御室で多数の長尺材や移動ラックや加熱箱体などの全体の動きを、各部のモニタにより監視され、新たな長尺材の搬入や端面の加熱や搬送済みの長尺材の搬出を含め、全自動により運転される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による長尺材の加熱および搬送装置の概略を示す斜視図。
【図2】図1中のA−A線の矢視に沿った一部に概略断面を含む側面図。
【図3】図2と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図4】上記装置の作用を示す図2と同様な側面図。
【図5】図4と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図6】上記装置の引き続く作用を示す図2,4と同様な側面図。
【図7】図6と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図8】加熱箱体の付近を示す部分斜視図。
【図9】上記装置の引き続く作用を示す図2,4,6と同様な側面図。
【図10】図9と直交する視覚で一部に断面を含む正面図。
【図11】異なる形態の加熱箱体を示す部分斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1……………加熱および搬送装置
2……………固定ラック
3,5………凹部
4……………移動ラック
8……………ローラ
9……………ロッド
10,20…加熱箱体
12,22…側面
18…………ストッパ
24…………誘導加熱体
W……………長尺材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材などの複数の長尺材を複数の凹部で個別に支持する複数の固定ラックと、
上記固定ラックと平行に位置し、上記凹部と相似形で且つ上記長尺材を支持する複数の凹部を有し且つ各凹部が回転運動可能な複数の移動ラックと、
上記固定ラックおよび移動ラックの複数組のうち、少なくとも何れかの組の外側に平行に位置する加熱箱体と、を含み、
上記複数の移動ラックは、上記固定ラックの各凹部に支持された各長尺材をその凹部に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラックにおける長尺材を搬送すべき方向の各凹部に各長尺材を支持するように持ち下げる回転運動が行えると共に、
上記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動のうちほぼ上半分の運動と同期して昇降し、上記固定ラックの凹部および回転運動する移動ラックの凹部に個別に支持された長尺材の端面に対向した側面に複数の加熱手段を有する、
ことを特徴とする長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項2】
前記固定ラックおよび移動ラックの組は、複数の長尺材の両端付近に一対が平行に配置されると共に、
上記一対の固定ラックおよび移動ラックの組の少なくとも一方の外側に、前記加熱箱体がその前記側面を上記長尺材の端面に近接して配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項3】
前記移動ラックの回転運動は、当該移動ラックをほぼ水平姿勢に保ちつつ、各凹部が側面視でほぼ円形またはほぼ四角形の移動軌跡を形成するものであり、
前記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動によりその凹部が形成する移動軌跡のほぼ上半分に相当する範囲で昇降する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項4】
前記加熱箱体は、前記移動ラックに当接するローラを下端に有し且つ移動ラックにおける各凹部の回転運動のほぼ上半分を当該加熱箱体に伝達する複数のロッドと、当該移動ラックの各凹部の回転運動うちほぼ下半分を除去すべく、当該加熱箱体の下降を阻止するストッパと、を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項5】
前記加熱箱体は、前記長尺材の端面に対向した側面に複数の酸素バーナ孔、または複数の誘導加熱体を有する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項1】
鋼材などの複数の長尺材を複数の凹部で個別に支持する複数の固定ラックと、
上記固定ラックと平行に位置し、上記凹部と相似形で且つ上記長尺材を支持する複数の凹部を有し且つ各凹部が回転運動可能な複数の移動ラックと、
上記固定ラックおよび移動ラックの複数組のうち、少なくとも何れかの組の外側に平行に位置する加熱箱体と、を含み、
上記複数の移動ラックは、上記固定ラックの各凹部に支持された各長尺材をその凹部に支持して上方に持ち上げ且つ固定ラックにおける長尺材を搬送すべき方向の各凹部に各長尺材を支持するように持ち下げる回転運動が行えると共に、
上記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動のうちほぼ上半分の運動と同期して昇降し、上記固定ラックの凹部および回転運動する移動ラックの凹部に個別に支持された長尺材の端面に対向した側面に複数の加熱手段を有する、
ことを特徴とする長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項2】
前記固定ラックおよび移動ラックの組は、複数の長尺材の両端付近に一対が平行に配置されると共に、
上記一対の固定ラックおよび移動ラックの組の少なくとも一方の外側に、前記加熱箱体がその前記側面を上記長尺材の端面に近接して配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項3】
前記移動ラックの回転運動は、当該移動ラックをほぼ水平姿勢に保ちつつ、各凹部が側面視でほぼ円形またはほぼ四角形の移動軌跡を形成するものであり、
前記加熱箱体は、上記移動ラックの回転運動によりその凹部が形成する移動軌跡のほぼ上半分に相当する範囲で昇降する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項4】
前記加熱箱体は、前記移動ラックに当接するローラを下端に有し且つ移動ラックにおける各凹部の回転運動のほぼ上半分を当該加熱箱体に伝達する複数のロッドと、当該移動ラックの各凹部の回転運動うちほぼ下半分を除去すべく、当該加熱箱体の下降を阻止するストッパと、を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【請求項5】
前記加熱箱体は、前記長尺材の端面に対向した側面に複数の酸素バーナ孔、または複数の誘導加熱体を有する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の長尺材の加熱および搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−16663(P2006−16663A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195359(P2004−195359)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】
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