説明

長尺樹脂成形体及び長尺樹脂成形体の製造方法

【課題】簡便な工程により製造ができ、長さ方向における強度が高められて寸法安定性が向上された長尺樹脂成形体及び長尺樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】合成樹脂製のバインダー1にカーボンナノファイバー2を長さ方向に配向させて熱成形することで長尺樹脂成形体10Aが形成されており、簡便な工程で、且つ混合されているカーボンナノファイバーによって長さ方向における強度が高められ、寸法安定性が向上させられた長尺樹脂成形体10Aとなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製結束用バンドやホース等として用いられる長尺樹脂成形体及び長尺樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製結束用バンドやホース等に用いられる長尺樹脂成形体は、成形時の残留歪みや長さ方向における引っ張り外力による伸びといった要因に対する寸法安定性が求められるものである。かかる寸法安定性が向上されたものとしては、例えば本出願人により、長さ方向にロール多段延伸されて延伸倍率15〜30倍となされた幅10〜35mmの帯状となされ、引張強度50〜65kg/mm、破断伸び4〜10%、ヤング率1000〜1300kg/mmとなされたポリプロピレン樹脂製の高強度結束バンドが開示されている。
【0003】
また管状の内面ゴム層と外面ゴム層との間に、繊維コードを含む管状の主補強層および副補強層が配設されているとともに、螺旋状の剛性部材またはスチールコードを含む耐座屈層が埋設されている補強ゴムホースにおいて、上記主補強層および副補強層は、耐座屈層の内周側に配設され、主補強層の繊維コードは、ホース軸線方向に対して35度〜54度44分の角度をなすように配設されているとともに、副補強層の繊維コードは、ホース軸線方向に対して60度〜85度の角度をなすように配設されている補強ゴムホースが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平4−288218号公報
【特許文献2】特開平5−322073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高強度結束バンドや、特許文献2に記載の補強ゴムホースでは、多段延伸による延伸倍率を一定の範囲内としたり、ホースの軸線方向に対して補強層の繊維コードを35度〜54度44分の角度をなすように配設したりといった、製造上極めて厳密な品質管理が必要となり、製造に係わる工程が煩瑣となるものであった。
【0006】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、簡便な工程により製造ができ、長さ方向における強度が高められて寸法安定性が向上された長尺樹脂成形体及び長尺樹脂成形体の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる長尺樹脂成形品は、合成樹脂からなるバインダーにカーボンナノファイバーを混合して流動化した混合物が長さ方向に連続して成形されていると共に、前記バインダー中でカーボンナノファイバーが長さ方向に配向されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係わる長尺樹脂成形品によれば、合成樹脂からなるバインダーを長さ方向に連続して成形すると、成形後に残留応力による縮みや長さ方向への外力による伸び等によって寸法安定性が低下する恐れが生じるが、カーボンナノファイバーを長さ方向に配向させて成形することで、簡便な工程で製造ができると共に、長さ方向に配向されて混合されているカーボンナノファイバーによって長さ方向における強度が高められて、寸法安定性を向上させることができる。
【0009】
また前記カーボンナノファイバーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンマイクロコイル、カーボンフレーク及びフラーレンからなる群から選ばれた少なくとも1つであれば、これらは何れも市場から入手して使用することができるものであり、容易にバインダーに配合して上述の如き効果を得ることができ好ましい。
【0010】
また前記バインダーは、カーボンナノファイバーが配合された状態で長さ方向に一軸延伸され、該一軸延伸の方向と前記カーボンナノファイバーが配向された方向とが一致されていれば、カーボンナノファイバーにより具備される寸法安定性の向上と、延伸による引っ張り方向の外力への対抗力とが相俟って、更に寸法安定性を向上させることができ好ましい。
【0011】
また更に断面に中空部が備えられたものであれば、カーボンナノファイバーの配合によっては長さ方向への寸法安定性に加え、断面方向への弾力も具備されることから、中空部による凹みの発生も防止することができるようになり好ましい。
【0012】
また更に外層が設けられ、該外層にはカーボンナノファイバーが含有されていないものであれば、外層の色調がカーボンナノファイバーの色調により干渉されることを防止でき、外観を所望のものとすることができ好ましい。
【0013】
また本発明に係わる長尺樹脂成形品の製造方法は、バインダーにカーボンナノファイバーを混合して流動化した混合物を、長さ方向に連続して成形する製造方法であって、前記バインダー中でカーボンナノファイバーを長さ方向に配向させて成形することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係わる長尺樹脂成形品の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを長さ方向に配向させてバインダーに配合することで、押出成形や押出延伸成形等により簡便な工程により製造ができ、またカーボンナノファイバーにより長さ方向における強度が高められて、寸法安定性が向上された長尺樹脂成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる長尺樹脂成形品によれば、合成樹脂からなるバインダーを長さ方向に連続して成形すると、成形後に残留応力による縮みや長さ方向への外力による伸び等によって寸法安定性が低下する恐れが生じるが、カーボンナノファイバーを長さ方向に配向させて成形することで、簡便な工程で製造ができると共に、長さ方向に配向されて混合されているカーボンナノファイバーによって長さ方向における強度が高められて、寸法安定性を向上させることができる。
【0016】
また本発明に係わる長尺樹脂成形品の製造方法によれば、カーボンナノファイバーを長さ方向に配向させてバインダーに配合することで、押出成形や押出延伸成形等により簡便な工程により製造ができ、またカーボンナノファイバーにより長さ方向における強度が高められて寸法安定性が向上された長尺樹脂成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係わる長尺樹脂成形体の、実施の一形態を示す斜視図である。本実施形態における長尺樹脂成形体は、梱包等に用いられるPPバンド10Aであり、幅30〜40mm、厚み0.1〜1.5mm程度のものであり、長さ方向αに連続して成形されている。表面には、幅方向における割れ防止のためにダイヤシボSが設けられている。
【0019】
図2は、図1に示したPPバンドの、寸法を誇張して描写した縦断面を示す断面図である。PPバンド10Aは、ポリプロピレン樹脂からなるバインダー1中に、カーボンナノチューブであるカーボンナノファイバー2が長さ方向αに配向されて混合されている。カーボンナノファイバー2は、外径が0.4〜80nm程度のものであり、繊維長さは10nm〜3mm程度である。またバインダー1の100重量部に対し、カーボンナノファイバー2は0.01〜20重量部程度配合されている。
【0020】
カーボンナノファイバー2は、カーボンナノチューブに限定されるものではなく、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンマイクロコイル、カーボンフレーク及びフラーレンからなる群から選ばれた少なくとも1つを選択して用いることができる。用いることが可能なカーボンナノチューブとしては、例えばシングルウオールカーボンナノチューブ、マルチウオールカーボンナノチューブ等が挙げられる。カーボンナノコイルとは炭素からなる繊維直径が0.05〜5μm、コイル外径が繊維直径の2〜10倍であり、巻数が10μm当たり5/コイル外径(μm)〜50/コイル外径(μm)であるコイル状繊維のものである。更にフラーレンとしてはC60、C70、C60とC70の混合物などを用いることができるが、C60構造のものは球形に近く方向性に乏しいものであるから、C70構造を有するものを好適に用いることができる。
【0021】
また、かかる長尺樹脂成形体の製造においては、パウダー状のポリプロピレン樹脂であるバインダーと、粉体であるカーボンナノファイバーとをドライブレンドし、ホッパーから一軸の押出機に投入してバインダーが溶融されることでバインダー中にカーボンナノファイバーがほぼ均一に分散され、金型から吐出される際にカーボンナノファイバーが長さ方向に配向されることで容易に成形することが可能である。押出機による成形時においては、成形直後に延伸を加えてもよい。
【0022】
図3は、本発明に係わる長尺樹脂成形体の、他の実施形態を斜視図である。本実施形態における長尺樹脂成形体は散水用のホース10Bであり、断面には中空部Cが設けられた円筒状の形状となされたものである。ホース10Bの内径は直径15mm、厚みは4mm程度となされている。かかるホース10Bにカーボンナノファイバーが長さ方向αに配向されて混合されていることで、長さ方向αにおける寸法安定性が具備されると共に、断面方向βに対しても弾力が備えられ、例えば巻き取り時等の断面方向βに連続して強い外力が掛かる場合においても、ホース10Bの断面方向に変形が生じるのを防止することができるようになされている。
【0023】
図4は、図3に示したホースの、寸法を誇張して描写した縦断面を示す断面図である。ホース10Bは、軟質アクリル樹脂からなるバインダー1中に、カーボンナノチューブであるカーボンナノファイバー2が長さ方向αに配向されて混合されている。カーボンナノファイバー2は、外径が0.4〜80nm程度のものであり、繊維長さは10nm〜3mm程度である。またバインダー1の100重量部に対し、カーボンナノファイバー2は0.01〜20重量部程度配合されている。
【0024】
用いられるカーボンナノファイバー2としては、図1に示した実施形態と同様にカーボンナノチューブが好適であるが、それに限定されるものではなく、用いることができるカーボンナノファイバーは同実施形態において示した同様のものを用いることができる。
【0025】
図5は、図3に示した実施形態の、変形の一例を示す断面図である。ホース10Bには、更に外層4が設けられ、内層3を形成するバインダーのみにカーボンナノファイバーが混合され、外層4を形成する合成樹脂にはカーボンナノファイバーは配合されていない。カーボンナノファイバーはカーボンに由来する黒色の物質であり、バインダーに配合した場合には黒色になるのが避けられないが、内層3にカーボンナノファイバーを配合して長さ方向における強度を高めて寸法安定性を向上させ、外層4には顔料等のみを配合しておくことで、外観上はカーボンナノファイバーによる黒色が現れることがなく、外観を所望の色調及び意匠とすることが可能となりうる。内層3の黒色を外観上現れなくするには、外層4の厚みは0.3〜3.0mmとしておくのが好ましい。
【0026】
かかる長尺樹脂成形体を成形するにおいては、パウダー状の軟質アクリル樹脂にカーボンナノファイバーをドライブレンドした成形用混合物を、通常のホースの形成に用いられる押出機に投入し、中空押出成形により中空部Cを形成することで、バインダー中で長さ方向にカーボンナノファイバーが配向されたホース10Bを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる長尺樹脂成形体の、実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した長尺樹脂成形体の、寸法を誇張した縦断面図である。
【図3】本発明に係わる長尺樹脂成形体の、他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3に示した長尺樹脂成形体の、寸法を誇張した縦断面図である。
【図5】図3に示した実施形態における長尺樹脂成形体の、変形の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 バインダー
2 カーボンナノファイバー
4 外層
10A PPバンド
10B ホース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなるバインダーにカーボンナノファイバーを混合して流動化した混合物が長さ方向に連続して成形されていると共に、前記バインダー中でカーボンナノファイバーが長さ方向に配向されていることを特徴とする長尺樹脂成形品。
【請求項2】
前記カーボンナノファイバーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンマイクロコイル、カーボンフレーク及びフラーレンからなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の長尺樹脂成形品。
【請求項3】
前記バインダーは、カーボンナノファイバーが配合された状態で長さ方向に一軸延伸され、該一軸延伸の方向と前記カーボンナノファイバーが配向された方向とが一致されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺樹脂成形品。
【請求項4】
更に断面に中空部が備えられたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長尺樹脂成形品。
【請求項5】
更に外層が設けられ、該外層にはカーボンナノファイバーが含有されていないものである請求項1〜4のいずれかに記載の長尺樹脂成形品。
【請求項6】
バインダーにカーボンナノファイバーを混合して流動化した混合物を、長さ方向に連続して成形する製造方法であって、前記バインダー中でカーボンナノファイバーを長さ方向に配向させて成形することを特徴とする長尺樹脂成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−50527(P2008−50527A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230768(P2006−230768)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】