説明

長尺物の非破壊検査方法及び検査装置

【課題】共振現象を利用して長尺物の欠陥を検出する非破壊検査装置を提供する。
【解決手段】長尺物20の離れた箇所に接触して長尺物に張力を付与する一対の張力付与手段21、22と、長尺物20に接触して振動を与える加振手段31と、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物に接触して長尺物の振動を検出する振動受信手段32と、振動受信手段が検出した振動の周波数を分析する周波数分析手段34と、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を順次更新する長尺物移動手段と、を備える。帯状や線状の長尺物の共振特性を部分的に測定し、且つ、測定対象の長尺物の部位を順次更新することにより、長尺物全体の欠陥を迅速且つ低コストで検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振現象を利用して帯状金属板などの長尺物に含まれる欠陥を検出する非破壊検査方法と、その方法を実施する検査装置に関し、欠陥が含まれる長尺物の部位を迅速に特定できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を利用する非破壊検査方法として、超音波探傷法や超音波共振法が知られている。超音波探傷法は、被検査体を伝播する超音波が被検査体内の傷や空隙等の欠陥で反射する現象を利用して、反射波が戻って来る時間から被検査体内の欠陥の位置を検出する。
一方、超音波共振法は、被検査体に欠陥がある場合とない場合とで、被検査体の共振周波数が違ってくることを利用して欠陥の有無を検出する。
【0003】
下記特許文献には、コンクリート管などのコンクリート構造物に送信器と受信器とを接触させ、送信器からコンクリート構造物に超音波を入射しながら、コンクリート構造物の共振振動を受信器で検出し、受信器の検出波形と、コンクリート構造物に欠陥が存在しないときの波形とを比較して、コンクリート構造物の損傷の有無を判定するコンクリート構造物の非破壊検査方法が開示されている。
超音波共振法は、超音波探傷法やX線を用いる非破壊検査などに比べて、迅速な検査が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−105680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、被検査体の共振を利用して欠陥を検出する非破壊検査方法は、被検査体が単体であれば、その共振特性を簡単に測定できるが、被検査体が帯状金属板などの長尺物の場合には、被検査体全体の共振特性の測定が容易でないため、長尺物に適用することが難しい。
例えば、帯状金属板の長尺物には、図10に示すように、抵抗器の電極となるコイル状金属帯板11と抵抗材料のコイル状金属帯板12とを重ねて冷間圧延したクラッド圧延金属帯板13が存在する。
このクラッド圧延金属帯板13は、コイル状に巻き取られた後、抵抗材料側に絶縁層15を塗装したり、電極側に半田層14を形成したり、電極金属の中央部を除去して両側部に電極部を残すように切削する処理が施されるが、これらの処理加工は、コイルから引き出したクラッド圧延金属帯板13を、再びコイル状に巻回する間に行われる。
各種の処理が終了した圧延金属帯板のコイルは、抵抗器メーカに提供され、細断されて多数の抵抗器が形成される。
【0006】
このように、異種金属板を積層したクラッド圧延金属帯板では、図11に図示するように、異種金属の界面で接着不良を起こしている界面欠陥16が存在する可能性がある。
こうした長尺の金属帯板の界面欠陥を検出するため、従来は、X線による非破壊検査などが行われているが、全長検査に時間が掛かり、また、装置が高額なためにコストが掛かると言う問題がある。
【0007】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、共振現象を利用して長尺物の欠陥を検出する非破壊検査方法と、その方法を実施する検査装置とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、共振現象を利用して長尺物の欠陥を検査する非破壊検査装置であって、長尺物の離れた箇所に接触して長尺物に張力を付与する一対の張力付与手段と、長尺物に接触して長尺物に振動を与える加振手段と、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物に接触して長尺物の振動を検出する振動受信手段と、振動受信手段が検出した振動の周波数を分析する周波数分析手段と、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を順次更新する長尺物移動手段と、を備えることを特徴とする。
この非破壊検査装置は、帯状や線状の長尺物の共振特性を部分的に測定する。そして、測定対象の長尺物の部位を順次更新することにより、長尺物全体の欠陥の検査が可能になる。
【0009】
また、本発明の非破壊検査装置では、加振手段が、長尺物に超音波振動を与えるようにしている。
【0010】
また、本発明の非破壊検査装置では、加振手段が、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物に接触して振動を与えるようにしても良い。
【0011】
また、本発明の非破壊検査装置では、一対の張力付与手段の外側に存在する長尺物に接触して長尺物の振動を抑制する振動吸収手段を設けることが望ましい。
こうすることで、長尺物の欠陥の位置を、狭い範囲に絞り込むことができる。
【0012】
また、本発明の非破壊検査装置では、長尺物移動手段が、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を間欠的に更新するようにしても良い。
この場合、欠陥の検査は、長尺物の停止時に行われ、長尺物の移動と欠陥の検査とが交互に実行される。
【0013】
また、本発明の非破壊検査装置では、長尺物移動手段が、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を連続的に移動させるようにしても良い。
この場合、長尺物の移動中に欠陥の検査が行われる。
【0014】
また、本発明は、共振現象を利用して長尺物の欠陥を検査する非破壊検査方法であって、長尺物の離れた箇所に接触する一対の張力付与手段で長尺物に張力を付与しながら、長尺物に接触する加振手段で長尺物に振動を与えるとともに、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物に接触する振動受信手段で長尺物の振動を検出するステップと、振動受信手段が検出した振動の周波数を解析して、極大を示す周波数と該周波数での振動の強度との関係を求めるステップと、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を順次更新するステップと、を含み、極大を示す周波数と強度との関係が変化したとき、長尺物に欠陥があると識別することを特徴とする。
この非破壊検査方法では、長尺物の共振特性を部分的に測定するとともに、測定対象の長尺物の部位を順次更新することにより長尺物全体の欠陥を検査する。
【0015】
また、本発明の非破壊検査方法では、一対の張力付与手段の外側に存在する長尺物に振動吸収手段を接触させて、長尺物の振動を抑制しながら、振動受信手段で長尺物の振動を検出することが望ましい。
こうすることで、長尺物の欠陥の位置を、狭い範囲に絞り込むことができる。
【0016】
また、本発明の非破壊検査方法では、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を間欠的に更新するようにしても良い。
この場合、長尺物の移動と欠陥の検査とが交互に行われる。
【0017】
また、本発明の非破壊検査方法では、一対の張力付与手段の間に存在する長尺物を連続的に移動させるようにしても良い。
こうすることで、検査時間をさらに短縮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、共振現象を利用して、長尺物の欠陥を迅速に検出することができ、また、低コストでの検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図
【図2】クラッド金属板の共振モードを示す図
【図3】長尺物の欠陥による共振スペクトルの変化を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る非破壊検査装置での長尺物の振動範囲を示す図
【図5】本発明の実施形態に係る非破壊検査方法において、長尺物の「欠陥を含む範囲」の特定手順を説明する図
【図6】加振手段をロッドの範囲外に設置した本発明の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図
【図7】振動吸収手段を設置した本発明の実施形態に係る非破壊検査装置を示す図
【図8】図7の非破壊検査方法において、長尺物の「欠陥を含む範囲」の特定手順を説明する図
【図9】長尺物に作用する張力に応じた共振スペクトルの変化を示す図
【図10】クラッド圧延金属板を説明する図
【図11】クラッド圧延金属板の界面欠陥を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る長尺物の非破壊検査装置は、図1に模式的に示すように、帯状の長尺物20(クラッド圧延金属板)の離間した箇所に接触する一対のロッド21、22と、ロッド21、22を押し上げるジャッキ23と、長尺物20の上面または下面に接触して長尺物20に振動を与える加振用圧電振動子(加振手段)31と、加振用圧電振動子31を駆動して超音波振動を発振させる駆動手段33と、長尺物20の上面または下面に接触して長尺物20の振動を検出する受信用圧電振動子(振動受信手段)32と、受信用圧電振動子32が検出した振動の周波数を分析して横軸に周波数、縦軸に振動の強度を表すグラフを表示するスペクトラムアナライザー(周波数分析手段)34と、コイル41から繰り出した長尺物20をコイル42で巻き取ることによりロッド21とロッド22との間の長尺物20を順次更新する長尺物移動手段(不図示)とを備えている。
【0021】
ロッド21、22は、特許請求の範囲で言う「張力付与手段」であり、ジャッキ23で押し上げられて長尺物20に張力を付与している。また、ロッド21、22は、後述するように、長尺物20の欠陥が含まれる範囲を特定する際の指標位置としての機能も有している。
受信用圧電振動子32は、ロッド21とロッド22との間の長尺物20に接触して振動を検出する。一方、加振用圧電振動子31は、ロッド21とロッド22との間の長尺物20に接触しても良いし、後述するように、ロッド22とコイル41との間の長尺物20に接触して振動を与えるようにしても良い。
【0022】
この非破壊検査装置によりコイル41に巻回されたクラッド圧延金属板の界面欠陥を検査するときは、コイル41から繰り出してコイル42に巻き取る途中のクラッド圧延金属板をロッド21、22で押し上げて緊張状態に保ち、このクラッド圧延金属板に加振用圧電振動子31から超音波振動を加え、クラッド圧延金属板の振動を受信用圧電振動子32で検出して、その振動の周波数と振動の強さとの関係をスペクトラムアナライザー34で表示する。
この非破壊検査は、コイル42での巻き取りを連続的に行い、ロッド21、22間のクラッド圧延金属板が連続的に移動する状態で実行しても良いし、クラッド圧延金属板をロッド21、22間の距離だけ進行方向に間欠的に移動し、クラッド圧延金属板が停止している間に非破壊検査を行うようにしても良い。
【0023】
クラッド圧延金属板は、図2に示すように、様々な共振モードを有し、種々の共振周波数が現われる。ロッド21、22により緊張状態に保たれた長尺なクラッド圧延金属板の場合も、加振用圧電振動子31で加振されると、複雑な共振モードで振動し、多数の共振周波数が現われるが、クラッド圧延金属板の振動する範囲に界面欠陥が含まれていなければ、クラッド圧延金属板のどの部分を加振した場合でも、スペクトラムアナライザー34で表示される共振スペクトルの極大を示す周波数と振動の強度との関係は、ほぼ一定している。
しかし、振動する範囲内のクラッド圧延金属板に界面欠陥などの欠陥が含まれると、共振スペクトルのグラフは変化する。
【0024】
図3は、長尺の帯状金属板に傷を付ける実験を行い、傷を付ける前後で共振スペクトルがどのように変化するかを調べた結果について示している。
この実験では、厚さ0.5mm、幅5.0mm、長さ500mmの帯状の銅薄板を試料とし、図1と同様の装置により、20mmの間隔のロッド21、22で試料を押し上げて緊張状態に保ち、加振用圧電振動子31から超音波振動を加えたときの試料の振動を受信用圧電振動子32で検出して、100〜150kHzの間の共振周波数を測定した。
図3の曲線(1)は、傷を付ける前の試料の共振スペクトルを示し、曲線(2)は、試料に約1mmの傷を付けたときの共振スペクトルを示している。この実験から、長尺物の振動範囲に欠陥が存在すると、スペクトル強度が減少し、共振ピークの数が減少することが分かる。従って、共振スペクトルの極大を示す周波数と振動の強度との関係を観察することにより、欠陥の存在を知ることができる。
【0025】
しかし、長尺金属板の厚さが約0.1mm以上になると、一対のロッド21、22で長尺物20を押し上げるだけでは、加振用圧電振動子31から加えられた超音波振動が、ロッド21、22で区画される範囲の周囲の長尺物20にまで伝播することが実験で確認された。
図4は、厚さが厚い長尺物20での振動の拡がりを模式的に示している。
このような場合、界面欠陥が含まれる長尺物20の範囲は、図5に示す手順で特定することができる。
【0026】
ここでは、長尺物20をロッド21、22間の距離Lだけ間欠的に移動させ、長尺物20が停止している間に非破壊検査を行うこととする。
非破壊検査により界面欠陥が検出されない場合、少なくとも、検査時点においてロッド21とロッド22との間に存在する長尺物20には、界面欠陥が存在しないことが明らかである(図5(a))。
長尺物20の距離Lの間欠的移動と非破壊検査とを交互に繰り返し、それまで非破壊検査で検出されなかった界面欠陥(×印)が検出されたときは、その界面欠陥が、ロッド21とロッド22との間、またはロッド22とコイル41との間に存在している。
【0027】
このとき、長尺物20の移動方向の川下側にあるロッド21の位置の長尺物20に「欠陥を含む範囲」の始点を示す印51を付ける(図5(b))。
長尺物20の距離Lの間欠的移動と非破壊検査とをさらに交互に繰り返し、非破壊検査において界面欠陥が検出されなくなったときは、ロッド21とロッド22との間の長尺物20に界面欠陥が存在しないから、ロッド21の位置の長尺物20に「欠陥を含む範囲」の終点を示す印52を付ける(図5(c))。
そして、コイル42に巻回した長尺物20の印51から印52までの範囲を「欠陥を含む範囲」として処理する。
【0028】
ここでは、説明の都合上、長尺物20を間欠的に移動させることとしたが、長尺物20を連続的に移動させる場合でも、同様に、界面欠陥が検出されたときの川下側のロッド21の位置を「欠陥を含む範囲」の始点とし、界面欠陥が検出されなくなったときの川下側のロッド21の位置を「欠陥を含む範囲」の終点とすることで、長尺物20の「欠陥を含む範囲」を特定することができる。
【0029】
また、長尺物20を連続的に移動させるとき、その移動速度と界面欠陥の検出に要する時間との関係から、川上側のロッド22とコイル41との間の長尺物20に存在する界面欠陥が、川上側のロッド22の位置に到達する前に必ず検出できるのであれば、界面欠陥が検出されたときの川上側のロッド22の位置を「欠陥を含む範囲」の始点としても良い。
【0030】
また、長尺金属板の厚さが約0.1mm程度であると、加振用圧電振動子31で長尺物20に加えた超音波振動は、長尺物20を押し上げるロッド21、22の外側の長尺物20にまで伝播しないが、この場合でも、「欠陥を含む範囲」は、界面欠陥が検出されたときの川下側のロッド21の位置を「欠陥を含む範囲」の始点とし、界面欠陥が検出されなくなったときの川下側のロッド21の位置を「欠陥を含む範囲」の終点とすることで、特定することができる。この場合、「欠陥を含む範囲」は、長さLの単位で特定することができる。
【0031】
なお、前述するように、長尺金属板の厚さが約0.1mm以上になると、加振用圧電振動子31で長尺物20に加えた超音波振動は、長尺物20を押し上げるロッド21、22の位置を越えて長尺物20に伝播するため、約0.1mm以上の厚さの長尺金属板を対象とする場合には、図6に示すように、加振用圧電振動子31は、ロッド21、22により区画される範囲の外側で長尺物20に接触させて、長尺物20の加振を行わせるようにしても良い。
【0032】
また、長尺金属板の厚さが約0.1mm以上の場合でも、長尺物20の「欠陥を含む範囲」を特定する際に、振動の伝播する長尺物20の範囲を狭めることができれば、「欠陥を含む範囲」を、より狭く限定することができる。
図7に示すように、長尺物20の振動範囲は、長尺物20に振動吸収体61、62を取り付けることで制限できる。振動吸収体61、62には、粘土、ゴムや樹脂のエラストマーなどを用いることができ、これらの素材で長尺物20を挟み込んで長尺物20の振動を抑制することができる。
図8は、振動収集体61、62を備える非破壊検査装置により、界面欠陥が含まれる長尺物20の範囲を特定する場合を示している。この装置では、長尺物20を、ロッド21、22間の距離Lだけ間欠的に移動させ、長尺物20が停止している間に非破壊検査を行う。
【0033】
図8において「欠陥を含む範囲」を特定する手順は、図5の場合と同様であり、界面欠陥(×印)が検出されたとき、川下側のロッド21の位置の長尺物20に「欠陥を含む範囲」の始点を示す印51を付け(図8(b))、界面欠陥が検出されなくなったとき、ロッド21の位置の長尺物20に「欠陥を含む範囲」の終点を示す印52を付ける(図8(c))。
この非破壊検査装置では、長尺物20の振動範囲が振動吸収体61、62によって制限されるため、受信用圧電振動子32の検出信号から検出された界面欠陥の存在する長尺物20の範囲が狭くなり、「欠陥を含む範囲」の始点を示す印51と終点を示す印52との距離が短くなる。
【0034】
振動吸収体61、62は、長尺物20の振動を完全に遮断できなくても、長尺物20の振動範囲を狭めることができれば、「欠陥を含む範囲」の狭小化に効果を発揮する。
また、振動吸収体61、62が長尺物20の振動範囲を制限することで、共振スペクトルから瑣末な凹凸が取り除かれる。そのため、スペクトラムアナライザー34に表示される共振スペクトルの特徴が、振動吸収体61、62の存在により見極め易くなる。
【0035】
ロッド21、22による長尺物20への張力は、強くする程、共振スペクトルの極大点の強度が高くなる。図9は、図3の実験に際して、ロッド21、22による長尺物20への張力を変えたときの共振スペクトルの変化を示している。曲線(1)は、図1の装置において、長尺物20が水平な状態から12mm上昇するようにロッド21、22を押し上げたときの共振スペクトルを示している。また、曲線(2)は、ロッド21、22を押し上げずに、加振用圧電振動子31及び受信用圧電振動子32を長尺物20の上面に接触させて、これら振動子の接触荷重だけを長尺物20に加えたときの共振スペクトルを示している。なお、曲線(2)の場合も、振動子の接触荷重により、長尺物20は、ロッド21、22から張力を受けている。
図9に示すように、長尺物20への張力が強い程、共振スペクトルの極大点の強度が高くなり、共振ピークが検出し易い。しかし、長尺物20への張力が弱くても、共振ピークの検出は可能である。
【0036】
なお、ここでは、帯状の長尺物の非破壊検査について説明したが、本発明の方法及び装置は、線状の長尺物を検査対象とすることもできる。また、金属の長尺物だけでなく、樹脂と繊維を組合わせた複合材などの長尺物を検査することもできる。
また、ここでは、長尺物に超音波振動を加えているが、長尺物に加える振動は、それ以外でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、金属や複合材などの長尺物の欠陥を迅速、且つ、低コストで検出することが可能であり、線材や帯板材などを扱う各分野の長尺物の非破壊検査に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
20 長尺物
21 ロッド
22 ロッド
23 ジャッキ
31 加振用圧電振動子(加振手段)
32 受信用圧電振動子(振動受信手段)
33 駆動手段
34 スペクトラムアナライザー(周波数分析手段)
51 「欠陥を含む範囲」の始点を示す印
52 「欠陥を含む範囲」の終点を示す印
61 振動吸収体
62 振動吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振現象を利用して長尺物の欠陥を検査する非破壊検査装置であって、
前記長尺物の離れた箇所に接触して該長尺物に張力を付与する一対の張力付与手段と、
前記長尺物に接触して該長尺物に振動を与える加振手段と、
前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物に接触して該長尺物の振動を検出する振動受信手段と、
前記振動受信手段が検出した振動の周波数を分析する周波数分析手段と、
前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を順次更新する長尺物移動手段と、
を備えることを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非破壊検査装置であって、前記加振手段が、前記長尺物に超音波振動を与えることを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非破壊検査装置であって、前記加振手段が、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物に接触して振動を与えることを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の非破壊検査装置であって、前記一対の張力付与手段の外側に存在する前記長尺物に接触して該長尺物の振動を抑制する振動吸収手段を有することを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の非破壊検査装置であって、前記長尺物移動手段が、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を間欠的に更新することを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の非破壊検査装置であって、前記長尺物移動手段が、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を連続的に移動させることを特徴とする長尺物の非破壊検査装置。
【請求項7】
共振現象を利用して長尺物の欠陥を検査する非破壊検査方法であって、
前記長尺物の離れた箇所に接触する一対の張力付与手段で前記長尺物に張力を付与しながら、前記長尺物に接触する加振手段で前記長尺物に振動を与えるとともに、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物に接触する振動受信手段で前記長尺物の振動を検出するステップと、
前記振動受信手段が検出した振動の周波数を解析して、極大を示す周波数と該周波数での振動の強度との関係を求めるステップと、
前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を順次更新するステップと、
を含み、前記極大を示す周波数と強度との関係が変化したとき、前記長尺物に欠陥があると識別することを特徴とする長尺物の非破壊検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の非破壊検査方法であって、前記一対の張力付与手段の外側に存在する前記長尺物に振動吸収手段を接触させて、該長尺物の振動を抑制しながら、前記振動受信手段で前記長尺物の振動を検出することを特徴とする長尺物の非破壊検査方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の非破壊検査方法であって、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を間欠的に更新することを特徴とする長尺物の非破壊検査方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の非破壊検査方法であって、前記一対の張力付与手段の間に存在する前記長尺物を連続的に移動させることを特徴とする長尺物の非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−132819(P2012−132819A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286023(P2010−286023)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本機械学会M&M2010材料力学カンファレンス 主催:日本機械学会 開催日:2010年10月9日〜11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(592197706)株式会社特殊金属エクセル (9)
【Fターム(参考)】