説明

長尺記録媒体の一時収容装置

【課題】装置の小型化を図りながらも、紙粉や埃等により記録媒体が損なわれることのない長尺記録媒体の一時収容装置を提供する。
【解決手段】長尺の記録媒体を巻取りドラム62に巻き付けて一時収容してから繰り出す長尺記録媒体の一時収容装置であって、前記巻取りドラム62と一体回転するように配置され、前記巻取りドラム62との間で前記記録媒体の先端を挟持する圧着部63を、圧着状態と非圧着状態の何れかに切り替える姿勢切替機構64と、前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転時に前記圧着状態への姿勢切替を許容し、前記巻取りドラム62の繰出し方向への回転時であって前記記録媒体の巻付け長さが所定長さ以下となったときに、前記非圧着状態への姿勢切替を許容する姿勢切替制御機構65を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される長尺の記録媒体を巻取りドラムに巻き付けて一時収容し、収容した記録媒体を繰り出す長尺記録媒体の一時収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、写真処理装置の露光部と現像処理部との間に、長尺記録媒体としての感光材料を一時的に滞留させる長尺記録媒体の一時収容装置としてループ部が設けられたものが提案されている。
【0003】
前記ループ部は、露光部と現像処理部の感光材料に対する搬送速度差を吸収するとともに、露光中の感光材料に振動や負荷変動による画像乱れの発生を回避するためのもので、露光部から感光材料を搬送する第一搬送系と、現像処理部に感光材料を搬送する第二搬送系との間に設けられ、ループ量が所定範囲に収まるように各搬送系が制御され、露光部による全コマの露光処理が終了して第一搬送系が停止している際に、前記ループ部より露光部側に設けられたカッターにより感光材料が切断されるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−155402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の長尺記録媒体の一時収容装置によれば、ループ形成のための大きな空間を確保するために写真処理装置が大型になるという問題があり、ループ部の底部に溜まる紙粉や埃を除去するという煩雑なクリーニング作業をしなければ、切断後に垂れ下がる感光材料の後端部が底部に接触して、紙粉等が付着することにより感光材料に傷が発生したり現像不良が発生する虞が増大するのみならず、現像液の劣化が進むという問題があった。
【0006】
そこで、ループ部が必要とされる大きな空間を不要とするべく、搬送される長尺の記録媒体を巻取りドラムに巻き付けて一時収容し、収容した記録媒体を繰り出す長尺記録媒体の一時収容装置を構成することが考えられるが、巻き付けた記録媒体を繰り出す際に記録媒体の後端が垂れ下がると、上述と同様の問題が生じる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、装置の小型化を図りながらも、紙粉や埃等により記録媒体が損なわれることのない長尺記録媒体の一時収容装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による長尺記録媒体の一時収容装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、搬送される長尺の記録媒体を巻取りドラムに巻き付けて一時収容し、収容した記録媒体を繰り出す長尺記録媒体の一時収容装置であって、前記巻取りドラムと対向して一体回転するように配置され、前記巻取りドラムとの間で前記記録媒体の先端を挟持する圧着部を、圧着状態と非圧着状態の何れかに切り替える姿勢切替機構と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記姿勢切替機構による前記圧着状態への姿勢切替を許容し、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時であって前記記録媒体の巻付け長さが所定長さ以下となったときに、前記姿勢切替機構による前記圧着状態から前記非圧着状態への姿勢切替を許容する姿勢切替制御機構を備えて構成される点にある。
【0009】
記録媒体が巻取りドラムに巻き取られる際に、巻取りドラムと一体回転する圧着部が姿勢切替機構により圧着状態に姿勢切替されることにより、記録媒体の先端が巻取りドラムと圧着部との間で挟持され、その状態で巻き取られる。その後巻取りドラムが繰出し方向に回転して記録媒体が繰出されるときには、姿勢切替制御機構により圧着状態が維持されたままで繰出され、記録媒体の巻付け長さが所定長さ以下となったときに前記姿勢切替機構により非圧着状態へ姿勢切替される。従って、前記所定長さを装置内に溜まった紙粉などと接触しない長さに設定することにより、記録媒体が紙粉等により損なわれない状態で後段に向けて送り出すことができるのであり、上述の構成によれば大きなループ形成空間を確保する必要が無く装置の小型化をも実現することができるのである。
【0010】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記姿勢切替機構が、前記圧着部を前記巻取りドラムに付勢する付勢機構と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転に伴ない前記圧着部を前記付勢機構により前記圧着状態に導き、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転に伴ない前記圧着部を前記付勢機構に抗して前記非圧着状態に導くカム機構で構成され、前記カム機構が、前記圧着部を前記巻取りドラムの径方向に移動自在に支持する支持部と、前記支持部の端部が接当し前記巻取りドラムの回転に伴なって前記圧着部を前記径方向に移動させるカム面を備え、前記巻取りドラムを支持する固定軸心に設けられたカム板で構成されている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、圧着部が付勢機構により巻取りドラムの径方向に付勢されているため、その支持部の端部がカム面に摺動するに連れて巻取りドラムに近接して圧着状態に到り、或いは離隔して非圧着状態に到るものであり、例えば巻取りドラムの周速を記録媒体の搬送速度に近い速度で巻取り方向に回転させることにより無理なく記録媒体を挟持することができ、巻取りドラムを繰出し方向に回転させることにより圧着状態を解除することができるようになるのである。
【0012】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記姿勢切替制御機構が、前記カム板の側面に形成されたカム溝と、一端が前記巻取りドラムと一体回転し他端が前記カム溝に係入するように前記カム板側への付勢部材を介して取り付けられた連結ピンと、前記カム板を前記固定軸心に対して回転可能に支持するトルクリミッタとを備えて構成され、前記カム溝が、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記連結ピンが摺動して前記圧着状態への姿勢切替を許容する第一カム溝と、前記第一カム溝より深く形成され、前記圧着状態への姿勢切替に伴ない係入して前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記連結ピンと係合して前記カム板を前記巻取りドラムと一体回転させる一方、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時に前記連結ピンと係合して前記カム板を前記巻取りドラムと一体回転させる第二カム溝と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転に伴ない前記第二カム溝より深く形成された始端に係入し、終端が前記第一カム溝に連なるように次第に浅く形成され、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時に前記連結ピンが摺動して前記非圧着状態への姿勢切替を許容する第三カム溝で構成されている点にある。
【0013】
巻取りドラムが記録媒体の巻取り方向に回転すると連結ピンが第一カム溝に沿って摺動する。このときカム板に掛かるトルクは小さいため固定軸心に固定された状態が維持され、カム板のカム面に沿って支持部の端部が摺動することにより圧着部が圧着状態へと姿勢切替される。その後、第二カム溝に係入する連結ピンが第二カム溝の縁部と係合して、巻取り方向に回転する巻取りドラムのトルクが連結ピンを介してカム板に付与され、トルクリミッタの作用でカム板が巻取りドラムと一体回転することで圧着状態が維持されながら記録媒体が巻き取られる。
【0014】
巻き取られた記録媒体が巻取りドラムから繰出されるときには、第一カム溝と第二カム溝に段差が形成されているため連結ピンが第一カム溝に戻ることなく第二カム溝の対向する縁部と係合して、繰出し方向に回転する巻取りドラムのトルクが連結ピンを介してカム板に付与され、トルクリミッタの作用でカム板が巻取りドラムと一体回転することで圧着状態が維持されながら記録媒体が繰り出される。
【0015】
記録媒体の巻付け長さが所定長さ以下となったときに巻取りドラムを巻取り方向に回転させると連結ピンが第三カム溝に係入する。その後、巻取りドラムを繰出し方向に回転させると第二カム溝と第三カム溝に段差が形成されているため連結ピンが第二カム溝に戻ることなく第三カム溝に沿って摺動する。このときカム板に掛かるトルクは小さいため固定軸心に固定された状態が維持され、カム板のカム面に沿って支持部の端部が摺動することにより圧着部が非圧着状態へと姿勢切替され、連結ピンは第三カム溝から第一カム溝に復帰するのである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した通り、本発明によれば、装置の小型化を図りながらも、紙粉や埃等により記録媒体が損なわれることのない長尺記録媒体の一時収容装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明による長尺記録媒体の一時収容装置を備えた写真処理装置について説明する。
【0018】
写真処理装置は、図2に示すように、ロール状に巻回された長尺の記録媒体としての印画紙Pが収容された二系統の印画紙マガジン10と、印画紙マガジン10から繰出される印画紙Pを所定のプリントサイズに切断するシートカッター20と、印画紙Pを露光する露光ヘッドが配置された露光部30と、印画紙Pの先端と後端を検知する印画紙端検知センサ76と、露光中の感光材料に振動や負荷変動による画像乱れの発生を回避するためのループ部40と、露光後の印画紙Pを現像処理する現像部50と、前記現像部50へ印画紙Pを搬送する現像前搬送部90が、印画紙Pの搬送経路に沿って配置され、さらに、前記露光部30と現像部50の間に本発明による一時収容装置60が設けられている。
【0019】
前記露光部30は、前記搬送経路に沿って副走査方向に搬送される印画紙Pに対して、搬送方向に直交する主走査方向にプリントデータに基づき変調されたRGB三色のレーザー光線束を出力して露光する露光ヘッド31が収容されている。
【0020】
前記現像部50は、露光後の印画紙を現像、漂白、定着するための現像処理液、漂白定着処理液、安定化処理液等を貯留する複数の槽からなる処理槽51を備えて構成されており、前記処理槽51は、内部を隔壁52によって複数に仕切られている。
【0021】
印画紙マガジン10に収容された印画紙Pは、図示しないピックアップローラによって引き出され、図2に一点鎖線で示す印画紙Pの搬送経路に沿って配置された複数対の搬送ローラによって搬送される。印画紙Pは前記シートカッター20によって所定のプリントサイズに切断されてから前記露光部30に搬送され、前記露光部30にて露光された印画紙Pは前記一時収容装置60へと搬送される。
【0022】
前記一時収容装置60は、図1に示すように、印画紙を受け入れる一対の受入ローラ61と、搬送される印画紙Pを巻き付けて一時収容し、収容した印画紙Pを前記現像前搬送部90に繰り出す巻取りドラム62と、前記受入ローラの位置切替を行う受入ローラ位置切替機構(図示せず)と、前記巻取りドラム62の位置切替を行う位置切替機構70とを備えて構成されている。
【0023】
詳述すると、前記巻取りドラム62と対向して一体回転するように配置され、前記巻取りドラム62との間で印画紙Pの先端を挟持する圧着部63としての遊転ローラを、圧着状態と非圧着状態の何れかに切り替える姿勢切替機構64と、前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転時に前記姿勢切替機構64による前記圧着状態への姿勢切替を許容し、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時であって印画紙Pの巻付け長さが所定長さ以下となったときに、前記姿勢切替機構64による前記圧着状態から前記非圧着状態への姿勢切替を許容する姿勢切替制御機構65(図1には図示せず。後述する)を備えて構成される。
【0024】
前記姿勢切替機構64は、前記圧着部63を前記巻取りドラム62に付勢する付勢機構66と、前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転に伴ない前記圧着部63を前記付勢機構66により前記圧着状態に導き、前記巻取りドラム62の繰出し方向への回転に伴ない前記圧着部63を前記付勢機構66に抗して前記非圧着状態に導くカム機構67で構成される。
【0025】
前記カム機構67は、前記圧着部63を前記巻取りドラム62の径方向に移動自在に支持する支持部67aと、前記支持部67aの端部が接当し前記巻取りドラムの回転に伴なって前記圧着部63を前記径方向に移動させるカム面67bを備え、前記巻取りドラム62を支持する固定軸心68に設けられたカム板67cで構成されている。
【0026】
詳述すると、前記カム機構67は、図3に示すようなカム機構被覆部80で覆われており、前記カム機構被覆部80は、図4に示すように、前記巻取りドラム62の両端位置において一体固定され、かつ前記固定軸心68によって支持されている。
【0027】
前記カム機構被覆部80は、図3に示すように、円柱の側面部に相当する箇所に貫通穴801が開けられており、図4および図5に示すように、前記支持部67aが前記貫通穴801を通じて前記カム面67bと接当することで、上述したような前記圧着部63の圧着状態と非圧着状態の切替が可能となる。
【0028】
圧着状態と非圧着状態の切替を具体的に説明する。図6に示すように、図6(a)においては前記巻取りドラム62の表面部と前記圧着部63の表面部との隙間がA、つまり非圧着状態である。ここで、図6(a)に一点鎖線矢印で示すように、前記巻取りドラム62が巻取り方向へ回転すると、前記圧着部63と前記支持部67aが前記巻取りドラム62と一体回転する。このとき、カム板67cに掛かるトルクは小さいため、前記カム板67cは固定軸心68に固定された状態が維持され、前記カム板67cのカム面67bに沿って支持部67aの端部が摺動する。その結果、図6(b)に示す状態となる。図6(b)においては、前記巻取りドラム62の表面部と前記圧着部63の表面部との隙間がない、つまり圧着状態である。これは前記カム板67cにおける前記カム面67bとカムの外周67dの差が最浅部ではBであるのに対して、最深部ではCとなるような形状であることから、前記支持部67aが図6(a)に示した位置から図6(b)に示した位置に移動するに際して、前記圧着部63は最深部と最浅部の差分D(=C−B)だけ前記巻取りドラム62の表面部に近づくのである。即ち、前記差分Dを、上述の隙間Aと等しくすることによって、前記圧着部63の圧着状態と非圧着状態の切替が可能となるのである。
【0029】
尚、上述では、カム機構被覆部80を設けて、前記カム機構被覆部80に貫通穴801を開ける実施形態について説明したが、前記カム機構被覆部80を巻取りドラム62と一体化させて、前記巻取りドラム62に貫通穴を開ける形態であってもよい。
【0030】
前記姿勢切替制御機構65は、図5および図7に示すように、前記カム板67cの円柱底面(上面)部分に形成されたカム溝651(図7における斜線部)と、一端が前記巻取りドラム62および前記カム機構被覆部80と一体回転し他端が前記カム溝651に係入するように付勢部材654を介して取り付けられた連結ピン652と、前記カム板67cを前記固定軸心68に対して回転可能に支持するトルクリミッタ653とを備えて構成される。
【0031】
前記カム溝651は、図8に示すように、前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転時に前記連結ピン652が摺動して前記圧着状態への姿勢切替を許容する第一カム溝651aと、前記第一カム溝651aより深く形成され、前記圧着状態への姿勢切替に伴い係入して前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転時に前記連結ピン652と係合して前記カム板67cを前記巻取りドラム62と一体回転させる一方、前記巻取りドラム62の繰出し方向への回転時に前記連結ピン652と係合して前記カム板67cを前記巻取りドラム62と一体回転させる第二カム溝651bと、前記巻取りドラム62の巻取り方向への回転に伴ない前記第二カム溝651bより深く形成された始端に係入し、終端が前記第一カム溝651aに連なるように次第に浅く形成され、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時に前記連結ピン652が摺動して前記非圧着状態への姿勢切替を許容する第三カム溝651cで構成されている。
【0032】
また、前記第一カム溝651aから第三カム溝651cの境界は段差を構成している。即ち、図9に示すように、斜線で示された各カム溝651のうち、前記第一カム溝651aは段差abにおいて前記第二カム溝651bより高く構成されており、前記第二カム溝651bは段差bcにおいて前記第三カム溝651cより高く構成されており、次第に浅く形成された前記第三カム溝651cは段差caにおいて前記第一カム溝より高く構成されている。さらに、前記第二カム溝は段差bbによって2領域に分割されており、前記第一カム溝651a側の領域が前記第三カム溝651c側の領域より高く構成されている。つまり、前記連結ピン652の摺動順序は、前記第一カム溝651a、第二カム溝651b、第三カム溝651c、そして再び第一カム溝651aに戻る順序であって、逆の順序に摺動することはない構成となっている。
【0033】
上述の具体的動作を図10〜図16によって詳述する。まず、図10に示すように、印画紙Pが挿入されると、巻取りドラム62が印画紙Pの巻取り方向に回転して、前記巻取りドラム62と一体回転する連結ピン652が第一カム溝651aに沿って摺動する。このときカム板67cに掛かるトルクは小さいため、前記カム板67cは固定軸心68に固定された状態が維持され、前記カム板67cのカム面67bに沿って支持部67aの端部が摺動することにより圧着部63が圧着状態へと姿勢切替される(図11)。
【0034】
このとき、図9と図12に示すように、前記連結ピン652が段差abを通過した後に第二カム溝651bの縁部と係合して、巻取り方向に回転する前記巻取りドラム62のトルクが前記連結ピン652を介してカム板67cに付与され、トルクリミッタ653の作用で前記カム板67cが前記巻取りドラム62、圧着部63と共に一体回転することで圧着状態が維持されながら印画紙Pが巻き取られる。尚、印画紙Pが巻き取られる際の2周目以降は、巻取りドラム62と前記圧着部63は圧着状態であって両者間に隙間がないことから、図12に示すように、印画紙Pは前記圧着部63の外周側に巻き取られる。
【0035】
次に、巻き取られた印画紙Pが巻取りドラム62から繰出される(巻取りドラム62が巻取り方向と逆に回転する)ときには、図9と図13に示すように、前記第一カム溝651aと前記第二カム溝651bに段差abが形成されているため前記連結ピン652が前記第一カム溝651aに戻ることなく、逆に段差bbを経由して前記第二カム溝651bの対向する縁部と係合する。
【0036】
そして、前記連結ピン652が前記第二カム溝651bの対向する縁部と係合した後は、図14に示すように、繰出し方向に回転する前記巻取りドラム62のトルクが前記連結ピン652を介してカム板67cに付与され、トルクリミッタ653の作用で前記カム板67cが前記巻取りドラム62、圧着部63と共に一体回転することで圧着状態が維持されながら印画紙Pが繰り出される。
【0037】
印画紙Pの巻付け長さが所定長さ以下となったときには、図9と図15に示すように、前記巻取りドラム62を一旦、巻取り方向に逆回転させる。すると、前記連結ピン652が段差bcを経由して第三カム溝651cに係入する。尚、前記連結ピン652は段差bbに阻まれるため、前記第二カム溝651bのうち前記第一カム溝651aに接する側の領域へ戻ることはない。
【0038】
その後、再び、前記巻取りドラム62を繰出し方向に回転させると、図16に示すように、前記第二カム溝651bと前記第三カム溝651cに段差bcが形成されているため前記連結ピン652が前記第二カム溝651bに戻ることなく前記第三カム溝651cに沿って摺動する。このとき、前記カム板67cに掛かるトルクは小さいため、前記カム板67cは固定軸心68に固定された状態が維持され、前記カム板67cのカム面67bに沿って支持部67aの端部が摺動することにより圧着部63が非圧着状態へと姿勢切替される。そして、前記連結ピン652は前記第三カム溝651cから前記第一カム溝651aに復帰するのである。
【0039】
前記一時収容装置60は、図1に示す前記巻取りドラム62の通常位置としての第一位置70aと、図17に示す前記巻取りドラム62の退避位置としての第二位置70bに位置切替する位置切替機構70を備えており、前記第一位置70aで印画紙Pの巻取りを開始し、前記第二位置70bで巻き取った印画紙Pの繰出しを開始する。
【0040】
また、前記受入ローラ61も、図17に示すように、印画紙Pを露光部30から前記巻取りドラム62へ送る受入位置61aと、印画紙Pを前記巻取りドラム62から現像前搬送部90へ送る送出位置61bに位置切替する受入ローラ位置切替機構(図示せず)を備えている。
【0041】
詳述すると、前記位置切替機構70は、前記巻取りドラム62の両端に一体に取り付けられているドラム位置切替駆動部71と、前記ドラム位置切替駆動部71の駆動に連動するように設けられているコンベアベルト72と、前記コンベアベルト72の動作の終端として前記一時収容装置60の上部と下部に設けられている歯車73と、前記巻取りドラム62と前記ドラム位置切替駆動部71を移動させるために前記ドラム位置駆動部71に取り付けられているスライダー74とを備えて構成されている。動作としては、例えば、図1にように前記巻取りドラム62が前記一時収容装置60の通常位置に位置しているときに、前記ドラム位置切替駆動部71が駆動すると、前記コンベアベルト72が前記歯車73を両端軸として上下に動作することで、前記巻取りドラム62と前記ドラム位置切替駆動部71が前記スライダー74に沿って移動する結果、図17に示すように、前記巻取りドラム62と前記ドラム位置切替駆動部71は前記一時収容装置60の退避位置に移動するのである。
【0042】
以下、一時収容装置60が、露光部30で露光された印画紙Pを収容してから、収容した印画紙Pを現像前搬送部90に繰出すまでの動作を説明する。
【0043】
写真処理装置の印画紙Pの搬送経路上には、図2に示すように、印画紙端検知センサ76が設けられており、前記印画紙端検知センサ76によって印画紙Pの先端が検知されると、前記写真処理装置は印画紙Pの先端を認識する。すると、図1に示すように、露光された印画紙Pが受入ローラ61を介して一時収容装置60内へ挿入されたときに、前記写真処理装置は圧着部63を巻取りドラム62に圧着させて印画紙Pを固定させるために、支持部67aをカム面67b上において摺動させる。尚、前記印画紙端検知センサ76の位置は印画紙Pの搬送経路であって前記一時収容装置60より前であれば、図2に示した位置に限定されない。
【0044】
図18に示すように、印画紙Pが前記巻取りドラム62と前記圧着部63の間に固定されると、図19に示すように、前記巻取りドラム62は前記一時収容装置60の通常位置から退避位置への移動を開始する。
【0045】
図20に示すように、前記巻取りドラム62が前記一時収容装置60の退避位置へ到達すると、前記巻取りドラム62の動作は止まるが、印画紙Pは前記受入ローラ61を介してさらに送り込まれてくるので、印画紙Pの弛みが大きくなってくる。
【0046】
前記一時収容装置60には、図21に示すように、投光部と受光部より構成されている印画紙弛み検知センサ75が設けられており、印画紙Pによって前記印画紙弛み検知センサ75の光経路が遮断されて投光部の光が受光部へ届かなくなると、前記写真処理装置は前記巻取りドラム62の巻取り動作を開始させる。
【0047】
図22に示すように、前記巻取りドラム62の巻取り動作によって印画紙Pが巻き取られることで、前記印画紙弛み検知センサ75の投光部から受光部への光が届くようになると、前記写真処理装置は前記巻取りドラム62の巻取り動作を停止させる。
【0048】
前記巻取りドラム62の巻取り動作中は、上述の前記印画紙弛み検知センサ75の検知によって前記巻取りドラム62の巻取り駆動を行い、非検知によって前記巻取りドラム62の巻取りを停止するという処理を継続する。
【0049】
前記印画紙端検知センサ76によって、印画紙Pの後端が検知されると、前記写真処理装置は印画紙Pの後端が前記受入ローラ61を通過する直前で前記巻取りドラム62の巻取り動作を停止させる。巻取り動作が停止すると、図17に示すように、前記受入ローラ61は受入位置61aから送出位置61bに位置切替を行う。
【0050】
その後、前記巻取りドラム62は繰出し動作を開始して、繰出された印画紙Pは、図23に示すように、前記受入ローラ61を介して前記現像前搬送部90へ送出される。
【0051】
印画紙Pの先端まで繰出すための動作として、前記巻取りドラム62は、巻き取られた印画紙Pを全て繰出された後に、前記一時収容装置60の退避位置から通常位置への移動、つまり図19と逆の動作を開始する。
【0052】
前記巻取りドラム62が前記一時収容装置60の通常位置へ到達すると、前記写真処理装置は、前記圧着部63の巻取りドラム62への圧着を解除させて印画紙Pの固定を解除するために、前記支持部67aを前記カム面67b上において摺動させる。圧着が解除されて印画紙Pが全て前記現像前搬送部90へ送出されると、前記受入ローラ61は送出位置61bから受入位置61aに位置切替を行う。
【0053】
以下、別の実施形態について説明する。上述の実施形態では、巻取りドラム62が一時収容装置60の通常位置から退避位置へ退避する構成について説明したが、前記巻取りドラム62が退避しない構成であってもよい。
【0054】
例えば、印画紙Pが前記巻取りドラム62に圧着した状態、つまり図18の状態になるまでに、印画紙端検知センサ76によって印画紙Pの後端が検知されて、前記巻取りドラム62に印画紙Pをそれ以上巻取る必要がなくなったときは、前記巻取りドラム62を前記一時収容装置60の退避位置へ退避させることなく、受入ローラ61の位置を、図24に示すように、受入位置61aから送出位置61bに切替えるのである。
【0055】
尚、本実施形態において、印画紙Pが一定長以上の長尺の場合には、前記巻取りドラム62を退避位置へ退避させ、印画紙Pが一定長より短い短尺の場合には、前記巻取りドラム62を退避させない、つまり退避の有無を印画紙Pの長さによって選択できる構成であってもよい。
【0056】
上述の実施形態では、圧着部63として遊転ローラを用いた構成について説明したが、前記圧着部63はローラ状のものに限らない。例えば、図25に示すように、前記圧着部63を、遊転ローラに代えて、巻取りドラム62の両端部に凹部を設けて印画紙Pと前記巻取りドラムを挟持する印画紙固定部69を設けた構成であってもよい。
【0057】
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一時収容装置の機能ブロック構成の説明図
【図2】写真処理装置の機能ブロック構成の説明図
【図3】カム機構被覆部の斜視図
【図4】姿勢切替機構の概観説明図
【図5】圧着部とカム面の接当の説明と、姿勢切替制御機構の説明のための巻取りドラム端部の正面図
【図6】(a)は非圧着状態を示し、(b)は圧着状態を示す姿勢切替機構の断面図
【図7】姿勢切替制御機構を説明するための姿勢切替機構とカム板の斜視図
【図8】カム溝を説明するためのカム板の上面図
【図9】カム溝を説明するためのカム板の斜視図
【図10】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、印画紙挿入開始直後の状態。
【図11】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、圧着部が圧着状態へと姿勢切替された状態。
【図12】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、印画紙巻き取り中の状態。
【図13】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、印画紙を繰出すために連結ピンが移動している状態。
【図14】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、印画紙繰出し中の状態
【図15】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、圧着部を非圧着状態へと姿勢切替するために連結ピン移動中の状態
【図16】姿勢切替制御機構の動作を説明するための姿勢切替機構の正面図であり、圧着部が非圧着状態へと姿勢切替中の状態
【図17】受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図
【図18】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、印画紙が固定された状態
【図19】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、巻取りドラムが退避位置へ移動中の状態
【図20】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、巻取りドラムが退避位置へ到達した状態
【図21】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、印画紙によって印画紙緩み検知センサの光経路が遮断された状態
【図22】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、巻取りドラムが印画紙を巻き取っている状態
【図23】巻取りドラムと受入ローラの動作を説明するための一時収容装置の正面図であり、巻取りドラムが印画紙を繰出している状態
【図24】巻取りドラムが退避しないまま受入ローラが送出位置に位置切替する実施形態の説明図
【図25】印画紙の固定に印画紙固定部を用いた実施形態の説明図
【符号の説明】
【0059】
60:一時収容装置
61:受入ローラ
62:巻取りドラム
63:圧着部
64:姿勢切替機構
65:姿勢切替制御機構
651:カム溝
67:カム機構
71:ドラム位置切替駆動部
75:印画紙弛み検知センサ
76:印画紙端検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される長尺の記録媒体を巻取りドラムに巻き付けて一時収容し、収容した記録媒体を繰り出す長尺記録媒体の一時収容装置であって、
前記巻取りドラムと対向して一体回転するように配置され、前記巻取りドラムとの間で前記記録媒体の先端を挟持する圧着部を、圧着状態と非圧着状態の何れかに切り替える姿勢切替機構と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記姿勢切替機構による前記圧着状態への姿勢切替を許容し、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時であって前記記録媒体の巻付け長さが所定長さ以下となったときに、前記姿勢切替機構による前記圧着状態から前記非圧着状態への姿勢切替を許容する姿勢切替制御機構を備えて構成される長尺記録媒体の一時収容装置。
【請求項2】
前記姿勢切替機構が、前記圧着部を前記巻取りドラムに付勢する付勢機構と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転に伴ない前記圧着部を前記付勢機構により前記圧着状態に導き、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転に伴ない前記圧着部を前記付勢機構に抗して前記非圧着状態に導くカム機構で構成され、前記カム機構が、前記圧着部を前記巻取りドラムの径方向に移動自在に支持する支持部と、前記支持部の端部が接当し前記巻取りドラムの回転に伴なって前記圧着部を前記径方向に移動させるカム面を備え、前記巻取りドラムを支持する固定軸心に設けられたカム板で構成されている請求項1記載の長尺記録媒体の一時収容装置。
【請求項3】
前記姿勢切替制御機構が、前記カム板の側面に形成されたカム溝と、一端が前記巻取りドラムと一体回転し他端が前記カム溝に係入するように前記カム板側への付勢部材を介して取り付けられた連結ピンと、前記カム板を前記固定軸心に対して回転可能に支持するトルクリミッタとを備えて構成され、前記カム溝が、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記連結ピンが摺動して前記圧着状態への姿勢切替を許容する第一カム溝と、前記第一カム溝より深く形成され、前記圧着状態への姿勢切替に伴ない係入して前記巻取りドラムの巻取り方向への回転時に前記連結ピンと係合して前記カム板を前記巻取りドラムと一体回転させる一方、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時に前記連結ピンと係合して前記カム板を前記巻取りドラムと一体回転させる第二カム溝と、前記巻取りドラムの巻取り方向への回転に伴ない前記第二カム溝より深く形成された始端に係入し、終端が前記第一カム溝に連なるように次第に浅く形成され、前記巻取りドラムの繰出し方向への回転時に前記連結ピンが摺動して前記非圧着状態への姿勢切替を許容する第三カム溝で構成されている請求項2記載の長尺記録媒体の一時収容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−153496(P2007−153496A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348744(P2005−348744)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】