説明

長距離圧送用吹付け材

【課題】 一般的に使用されているポンプ程度で、内径1インチ程度のフレキシブルホースでも、500〜1000m以上の長距離の圧送が可能で、かつ十分な強度および安定性が得られる長距離圧送用吹付け材を提供する。
【解決手段】 吹付け材の配合において、結合材と、細骨材と、混練水と、尿素と、高性能減水剤とを含み、前記結合材として、少なくともセメントと、シリカヒュームと、膨張材とを含み、前記結合材:細骨材の体積比を1:0.2〜1:2とする。シリカフュームは、チクソトロピー性の付与および加圧ブリーディングの抑制を目的とし、結合材の内割で5.0〜15.0%混合する。膨張材は、吹付け材料を膨張させ、収縮を低減させることを目的として使用し、単位体積あたりの添加量を10〜40kg/m3とする。尿素は、主に吹付け材料の収縮低減を目的として使用し、混練水に対し、体積割合で2.0〜20.0%置換して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チクソトロピー性を有する長距離圧送用吹付け材に関するものであり、特に山間部における法面吹付けなどに適している。
【背景技術】
【0002】
現在、我が国では法面に吹付ける材料としてセメント:砂が、1:4であるモルタルが一般的に使用されている。しかしながら、この材料は長距離の圧送には適しておらず、そのような時には機材を多量に用いて中継点を設け、多額のコストと時間、手間を要することになる。
【0003】
また、出願人等は、水平距離で700m程度の圧送が可能な材料を開発しているが、その吹付け材を使用して施工を行う場合、金属製の配管を650m程度設置しなければならないため、多大な時間と労力がかかる。また、使用するホースおよび金属製の管の内径が4〜6インチと太く,ホースの先を支えるノズルマンへの負担が非常に大きいことも問題となる。
【0004】
その他、特許文献1には、法面吹付工法として、セメントと砂の重量比が1.0:3±0.5のモルタル吹付材料を用い、200m程度の遠距離搬送が可能であるとしているが、装置が大掛かりとなり、コストや手間の面で必ずしも有効とは言えない。
【0005】
また、特許文献2にも、セメントと砂の重量比1:3〜1:4未満の混合材であって、圧送距離が200mまで可能であるとする吹付け材が記載されているが、本発明が目標とする500〜1000m程度の圧送は不可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−104258号公報
【特許文献2】特開2007−016570号公報
【特許文献3】特開2002−188150号公報
【特許文献4】特開2004−067474号公報
【非特許文献1】土木学会 吹付けコンクリート研究小委員会:コンクリートライブラリー122「吹付けコンクリート指針(案)[のり面編]」,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長距離圧送のメリットや需要を考慮して開発されたものであり、吹付け材の配合において、吹付け材にチクソトロピー性を持たせ、一般的に使用されているポンプ程度で、また内径1インチ程度のフレキシブルホースでも、500〜1000m程度、条件によってはそれ以上の長距離の圧送が可能で、かつ十分な強度および安定性が得られる長距離圧送用吹付け材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る長距離圧送用吹付け材は、結合材と、細骨材と、混練水と、尿素と、高性能減水剤とを含み、前記結合材として、少なくともセメントと、シリカヒュームと、膨張材とを含み、前記結合材:細骨材の体積比が1:0.2〜1:2であることを特徴とするものである。
【0009】
ここでいう結合材には、セメントの他、混和材として加えられる粉体状の配合物が含まれる。
【0010】
前述のように、従来の吹付け用のモルタルにおいては、結合材:細骨材に相当するセメント:砂が、1:4であるモルタルが一般的であり、また前述した特許文献1、2の場合もそれに近い値となっているが、本発明では、結合材:細骨材の体積比を1:0.2〜1:2とした。
【0011】
これは、細骨材に期待される収縮低減効果を犠牲にして、ポンプ圧送性を優先したものである。すなわち、細骨材は、ほとんど使用しなくとも作業性は衰えないが、収縮低減効果が増加するため、混入量は多い方が良いが、Cの体積1.0に対して細骨材の割合2.0程度まで混入すると、ポンプによる圧送が困難となる。
【0012】
シリカヒュームの混入は、主にチクソトロピー性を付与すること、および加圧ブリーディングの抑制を目的としたものである。
【0013】
膨張材は、吹付け材料を膨張させることによって収縮を低減させることを目的として使用しており、細骨材を減らしたことによる収縮低減効果の低下を補うものである。
【0014】
尿素も、主に吹付け材料の収縮低減を目的として使用しており、細骨材を減らしたことによる収縮低減効果の低下を補う効果がある。
【0015】
高性能減水剤は使用水量の低減と、吹付け材の適度なフレッシュ性状を得ることを目的として使用する。
【0016】
請求項2は、請求項1に係る長距離圧送用吹付け材において、前記尿素が、前記混練水に対する体積置換率で2〜20%配合されていることを特徴とするものである。
【0017】
前述のように、尿素は主に吹付け材料の収縮低減を目的として使用しており、添加率は使用水量を体積割合で2.0%程度尿素に置換することで収縮低減効果が得られる。しかしながら、添加率を20.0%まで増加すると硬化後に尿素が結晶化し、内部から膨張破壊する恐れがある。
【0018】
請求項3は、請求項1または2にい係る長距離圧送用吹付け材において、前記膨張材が10〜40kg/m3配合されていることを特徴とするものである。
【0019】
膨張材は単位体積あたりの添加量を30kg/m3程度とした時が最も効率的に収縮低減の効果を発揮し、添加量を低減すると、それに比例して収縮低減効果も低減する。添加量が10kg/m3以下になると、初期の時点で表面にひび割れが発生する恐れがある。しかしながら、添加量を30kg/m3よりも増加すると添加量に応じて膨張し、40kg/m3以上添加すると、打設後1ヶ月を経過した頃から再度膨張が始まり、内部から膨張破壊を起こす恐れがある。
【0020】
請求項4は、請求項1、2または3に係る長距離圧送用吹付け材において、前記シリカヒュームが前記結合材の内割で5.0〜15.0%配合されていることを特徴とするものである。
【0021】
シリカヒュームは、前述のように、主にチクソトロピー性を付与すること、および加圧ブリーディングの抑制を目的として使用しているが、結合材において、内割で5.0%程度添加することによりチクソトロピー性が付与される。また、加圧ブリーディングの抑制についても5%程度必要である。しかしながら、添加率を15.0%まで増加すると粘性の増加に伴い、長距離ポンプ圧送性が悪くなる。
【0022】
請求項5は、請求項1〜4に係る長距離圧送用吹付け材において、さらに、AE剤が前記結合材に対する重量比で200〜350ppm、高性能減水剤が前記結合材に対する重量比で0.15〜0.20%混合されていることを特徴とするものである。
【0023】
AE剤は、微細な気泡を混入することによって、強度を低下させずに試料の軽量化および増量を図るものである。
【0024】
添加量は、結合材の全量に対し、重量比で200ppm添加することで軽量化が期待できる。しかしながら、添加率を350ppmまで増加すると硬化後の圧縮強度が著しく低下し、十分な強度が得られない。
【0025】
請求項6は、請求項1〜5に係る長距離圧送用吹付け材において、前記結合材として、さらに、石灰石微粉末が結合材の内割で0.0〜25.0%混合されていることを特徴とするものである。
【0026】
石灰石微粉末は、主に吹付け材料全体のコスト低減のために使用しており、使用しなくとも所要の条件を満たすことは可能である。しかしながら、結合材の全量に対し、内割中で25.0%まで増加すると強度が著しく低下する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の吹付け材は、同条件の施工においては、遥かに長距離の施工が可能である。
【0028】
作業性に関しても、内径1インチ程度のフレキシブルホースでも、500〜1000m程度、条件によってはそれ以上の長距離の圧送が可能であり、作業を容易かつ円滑に行うことができ、作業員への負担も小さい。
【0029】
コストに関しては、長距離の圧送が可能であることから、山間部などの工事においても中継点などを設ける必要がなく、機材も簡単なものでよいため、吹付け作業において、大幅なコスト削減が図れる。
【0030】
強度や安定性においても従来の吹付け材に劣らない強度、安定性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、その試験方法および試験結果とともに説明する。
【0032】
1. 比較試験
まず、従来、一般的な法面吹付け材との比較および適切な配合を決めるための比較試験を行った。
【0033】
(1) 使用材料
比較例としての現在一般的に使用されている吹付け材(モルタル)の使用材料を表1に、本発明の吹付け材の使用材料を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
(2) 使用配合
比較例の吹付け材(モルタル)の使用配合を表3に、本発明における配合を表4に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
(3) 試験結果
比較例の吹付け材および本発明における配合の各種試験結果を表5に示す。また、圧縮強度試験の結果を図1に、長さ変化試験の結果を図2に示す。
【0040】
【表5】

【0041】
(4) 実機試験結果
本発明の材料について実機試験を行い、500m圧送した時の試験結果を以下に述べる。
【0042】
圧送距離については、従来一般的な吹付け材では、10m程度の圧送が限界である。本発明の吹付け材では、1kmの圧送が可能であることが推認できた。
【0043】
作業性については、従来の一般的な吹付け材では、管径が4〜5インチの太い管が必要であり、作業員への負担が大きい。また、一般的な現場では金属製のパイプが組まれており、移動の際には再度組み直す必要がある。
【0044】
これに対し、本発明の吹付け材では、管径は1インチの細いものでよく、非常に扱いやすい。また、本発明では1kmのフレキシブルなホースでの施工を想定して評価を行っているため、作業を容易かつ円滑に行うことができ、作業員への負担も小さい。
【0045】
コストについては、通常、法面の吹付け施工は山間部などの工事が多く、施工がしにくく、機材および材料の配送に多額のコストがかかる。
【0046】
従来一般的な吹付け材では、圧送距離が短いので、長距離圧送を行う時には中継点などを設ける必要があるため、別の機材を使用しなくてはならない。または、別のポイントまで機材を運び、組み直してから再度吹付けを再開するなど、手間と時間、そしてコストが非常にかかってしまう。
【0047】
これに対し、本発明の吹付け材では、1km以上の圧送が可能であるため、機材の数は最小限に留めることができ、吹付けることができる面積も非常に広い。
【0048】
(5) 総合評価
本発明の吹付け材を、従来の一般的な吹付け材との性能を比較すると、表6のようになる。
【0049】
【表6】

【0050】
(6) 使用材料の限界添加率(量)
この比較試験においては、本発明の吹付け材について、以下の8種類の材料について検討を行った。ここでは、それぞれの材料の添加率に関する上限値および下限値、作業性の変化などについて述べる。
【0051】
適量範囲の値は、表4に示した配合に対して、1項目を変化させた場合の範囲であり、全ての材料について適量範囲下限値をとっても所要の性能を有するというものではない。また、下限値が0のものは、本発明の吹付け材において、必須ではないことを意味する。
【0052】
(6)−1 セメント
セメント(C)、例えば普通ポルトランドセメントは、主に強度を得る目的で使用している。
【0053】
表4に示した内割(P)の中で、60%添加することにより目的の強度を満足する。しかしながら、添加率を90%まで増加すると経時変化が著しくなり、十分な作業時間を確保できない。
【0054】
したがって、普通ポルトランドセメント(C)の適量範囲は内割計算をする材料(粉体状の結合材)のうち60〜90%が望ましい。
【0055】
(6)−2 細骨材(6号硅砂)
細骨材、例えば6号硅砂(KS)などの砂は、主に収縮低減および強度増加を目的として使用している。
【0056】
添加率は、セメント(C)の体積1.0に対して細骨材の割合1.0程度の割合で混入するのが適当である。細骨材は、ほとんど使用しなくとも作業性は衰えないが、収縮低減効果が増加するため、混入量は多い方が良い。しかしながら、Cの体積1.0に対して細骨材の割合2.0程度まで混入すると、ポンプによる圧送が困難となる。
【0057】
したがって、細骨材の適量範囲はCの体積1.0に対して細骨材の割合が0.2〜2.0とする。
【0058】
(6)−3 シリカフューム
シリカフューム(SF)は、主にチクソトロピー性を付与すること、および加圧ブリーディングの抑制を目的として使用している。
【0059】
表4に示した内割(P)の中で、5.0%添加することによりチクソトロピー性が付与される。また、加圧ブリーディングの抑制についても5%程度は必要な結果となった。しかしながら、添加率を15.0%まで増加すると粘性の増加に伴い、長距離ポンプ圧送性を失う。
【0060】
したがって、シリカフューム(SF)の適量範囲としては、結合材の内割で5.0〜15.0%が望ましい。
【0061】
(6)−4 石灰石微粉末
石灰石微粉末(LS)は、主に吹付け材料全体のコスト低減のために使用している。つまり、使用しなくとも所要の条件を満たすことは可能である。しかしながら、表4に示した内割(P)の中で、25.0%まで増加すると強度が著しく低下する。
【0062】
したがって、石灰石微粉末(LS)の適量範囲は、内割り計算をする材料のうち0.0〜25.0%である。
【0063】
(6)−5 膨張材
膨張材(CSA)は、吹付け材料を膨張させることによって収縮を低減させることを目的として使用している。
【0064】
単位体積あたりの添加量を30kg/m3程度とした時が最も効率的に収縮低減の効果を発揮する。添加量を低減すると比例して収縮低減効果も低減する。添加量が10kg/m3以下になると、初期の時点で表面にひび割れが発生する。しかしながら、添加量を30kg/m3よりも増加すると添加量に応じて膨張する。40kg/m3以上添加することで、打設後1ヶ月を経過した頃から再度膨張が始まり、内部から膨張破壊を起こす。
【0065】
したがって、膨張材(CSA)の適量範囲としては、単位体積あたりの添加量が10〜40kg/m3となるようにするのが望ましい。
【0066】
(6)−6 尿素
尿素(U)は、主に吹付け材料の収縮低減を目的として使用している。
【0067】
添加率は使用水量を体積割合で2.0%尿素に置換することで収縮低減効果を得られる。しかしながら、添加率を20.0%まで増加すると硬化後に尿素が結晶化し、内部から膨張破壊する。
【0068】
したがって、尿素(U)の適量範囲としては、使用水量を体積割合で2.0〜20.0%置換するのが望ましい。
【0069】
(6)−7 AE剤
AE剤(AE)は、微細な気泡を混入することによって強度を低下させずに試料の軽量化および増量を目的としている。
【0070】
添加量は、Pに対して重量比で200ppm添加することで軽量化が期待できる。しかしながら、添加率を350ppmまで増加すると硬化後の圧縮強度が著しく低下し、十分な強度が得られない。
【0071】
したがって、AE剤(AE)の適量範囲はとしては、Pに対する重量比で200〜350ppmが望ましい。
【0072】
(6)−8 高性能減水剤
高性能減水剤(SP)は、使用水量を低減させること、およびフレッシュ性状を操作することを目的として使用している。
【0073】
添加量は、Pに対して重量比で0.15%添加することで十分な使用水量の低減効果が得られる。また、フレッシュ性状についても0.15%程度で適度な性状が得られる。しかしながら、添加率を0.20まで増加すると適度なフレッシュ性状が得られない。
【0074】
したがって、高性能減水剤(SP)の適量範囲としては、Pに対する重量比で0.15〜0.20%が望ましい。
【0075】
2. 性能確認試験
上述の比較試験の結果を基に、性能確認試験として、1kmを目標とした長距離のポンプ圧送を想定した最適と考えられる配合において、性能確認試験を行った。
【0076】
(1) 使用材料
使用材料は、比較試験でもちいた表2と同じである。
【0077】
(2) 使用配合
配合条件は、単位水量421kg/m3、水結合材比44%、細骨材体積割合を結合材:細骨材=1.0:0.8とした。
【0078】
(3) 使用機材
使用機材を表7に示す。機材は全て一般的な吹付け現場で使用されているものを用いた。
【0079】
【表7】

【0080】
(4) 評価性能
長距離のポンプ圧送可能な法面吹付け用の材料として必要な性能は、大きく分けて2つに分類される。
a.施工性に関する性能(長距離のポンプ圧送を可能とするために必要な性能)
b.力学的性能(法面吹付け材として必要な性能)
【0081】
ここでは、土木学会によって規格されている「吹付けコンクリート指針(案)」(非特許文献1)を参考に、これらを評価するために実施した試験項目を表8に示す。
【0082】
【表8】

【0083】
(5) 試験方法
(5)−1 圧送圧測定試験
圧送圧測定のための機材の配置図を、図3に示す。
【0084】
フレキシブルなタイプの耐圧ホースを500m用意し、吹付け材料を圧送した時にホースおよびポンプにかかる圧力を測定した。この圧力を2倍した値を1000m圧送するために必要なポンプ圧力と仮定して評価を行った。
【0085】
ホース根元を0m地点とし、管内の圧力を0〜100mまで25mおきに5箇所、100〜500mまで50mおきに7箇所の計12 箇所において管内の圧力をブルドン管によって測定した。なお、圧送圧力は流量によって異なるため10L/minの時の圧力を評価した。
【0086】
(5)−2 流量測定試験
十分な施工効率が確保されているか確認するために、ホース根元に流量計を設置した。
【0087】
(5)−3 圧縮強度試験
JIS A 1108 に準じて試験を行った。圧縮強度供試体は20℃水中養生を行い、材齢28日において試験を行った。
【0088】
(5)−4 長さ変化試験
JIS A 1171 に準じて試験を行った。長さ変化試験供試体は、材齢24時間の時点で脱型した後、相対湿度60%、温度20℃±2℃の条件下に静置し、脱型後1,3,7,14,21,28日において測定を行った。
【0089】
(6) 試験結果および考察
(6)−1 圧送圧測定試験結果
各測定地点と管内圧力の関係を図4に示す。前述の条件のもとで、吹付け材料を500m圧送するために必要なポンプ圧力は1.42MPa であった。図より、ホース根元からの距離とホース内の圧力の関係はほぼ比例していると言える。これより、1000mの圧送に必要なポンプの圧送圧力は2.84MPa程度となることが予想され、一般的な現場で使用されているポンプ(最大圧送圧3MPa)で1000mの圧送が可能であると言える。
【0090】
(6)−2 圧縮強度試験結果
国内の高性能法面吹付けコンクリートの規格値は32N/mm2 である(非特許文献1参照)。本材料の28日圧縮強度は、43N/mm2であった。これより、本材料は法面吹付け材としての十分な強度を有していることが分かる。
【0091】
(6)−3 長さ変化試験結果
本材料の28日までの長さ変化試験の結果を図5に示す。収縮は28日でほぼ収まり、0.10%程度となった。
【0092】
法面吹付け材料は、長さ変化に対する規格が定められていないが、本材料は断面修復材の規格値(0.15%)を満足する結果となった。
【0093】
(7) まとめ
以上の試験結果から、本発明の吹付け材の特徴は、以下のようにまとめることができる。
【0094】
1)圧送距離と管内圧力には比例関係がある。本発明の吹付け材は、500mの圧送を1.5MPa未満で行うことができたため、一般的に現場で使用されているポンプ(最大圧送圧3.0MPa)を使用しても1000mの圧送が可能であると考えられる。
【0095】
2)高性能法面吹付けコンクリートの目標強度を十分に満足する圧縮強度を有する。
【0096】
3)長さ変化は0.10%程度である。
【0097】
4)内径1インチのホースを使用することにより、ホースの先を支えるノズルマンへの負担を軽減できる。
【0098】
5)全面にフレキシブルホース使用可能であり、施工準備や片付けにかかる手間や時間を縮小できる。さらに、1000m圧送が可能なため中継点などの必要がなくなり、工期やコストの大幅な削減になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】比較試験としての圧縮強度試験の結果を示す棒グラフである。
【図2】比較試験としての長さ変化試験の結果を示すグラフである。
【図3】圧送圧測定試験における圧送圧測定のための機材の配置を示す図である。
【図4】圧送圧測定試験における各測定地点と管内圧力の関係を示すグラフである。
【図5】長さ変化試験における28日までの長さ変化の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材と、細骨材と、混練水と、尿素と、高性能減水剤とを含み、前記結合材として、少なくともセメントと、シリカヒュームと、膨張材とを含み、前記結合材:細骨材の体積比が1:0.2〜1:2であることを特徴とする長距離圧送用吹付け材。
【請求項2】
前記尿素が、前記混練水に対する体積置換率で2〜20%配合されていることを特徴とする請求項1記載の長距離圧送用吹付け材。
【請求項3】
前記膨張材が10〜40kg/m3配合されていることを特徴とする請求項1または2記載の長距離圧送用吹付け材。
【請求項4】
前記シリカヒュームが前記結合材の内割で5.0〜15.0%配合されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の長距離圧送用吹付け材。
【請求項5】
さらに、AE剤が前記結合材に対する重量比で200〜350ppm、高性能減水剤が前記結合材に対する重量比で0.15〜0.20%混合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の長距離圧送用吹付け材。
【請求項6】
前記結合材として、さらに、石灰石微粉末が結合材の内割で0.0〜25.0%混合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の長距離圧送用吹付け材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59002(P2010−59002A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224559(P2008−224559)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)社団法人日本コンクリート工学協会 関東支部 栃木地区 研究発表会 講演概要集 発行日:平成20年3月3日、(2)第35回土木学会関東支部 技術研究発表会講演概要集(CD−ROM)頒布日:平成20年3月10日,平成20年3月11日
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】