説明

長鎖および中鎖トリグリセリドを有する医薬製剤

乳化剤および中鎖および長鎖トリグリセリドを有する医薬製剤を製造する。好ましい態様において、長鎖トリグリセリドは中鎖トリグリセリドにより生じる有害な中枢神経系作用を打ち消し、または減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、Ulm et al.、仮米国特許出願No.60/491,050(2003年7月29日出願)、発明の名称「ANSAMYCIN FORMULATIONS AND METHODS FOR PRODUCING AND USING SAME」; Ulm et al.、仮米国特許出願No.60/478,430(2003年6月12日出願)、発明の名称「PHOSPHOLIPID-BASED FORMULATIONS AND METHODS FOR PRODUCING AND USING SAME」; Ulm et al.、仮米国特許出願No.60/454,812(2003年3月13日)、発明の名称「HSP90-INHIBITOR FORMULATIONS AND DATA」;およびUlm et al.、PCT特許出願PCT/US03/10533、発明の名称「NOVEL ANSAMYCIN FORMULATIONS AND METHODS FOR PRODUCING AND USING SAME(2003年4月4日出願、仮米国特許出願No.60/371,668(2002年4月10日出願、発明の名称同じ)の優先権を主張する)の優先権を主張し、これらの内容は本明細書の一部を構成する。
【0002】
本発明は、一般に医薬製剤および方法、ならびにさらなる具体的態様においてアンサマイシン、例えば17-AAGのエマルジョン製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、本発明の理解に有用と思われる情報を含む。本明細書に記載のあらゆる情報が先行技術であるか、本願特許請求の範囲に記載の発明に関連すること、または具体的または暗に参照しているあらゆる刊行物が先行技術であることを承認しない。
【0004】
17-アリルアミノ-ゲルダナマイシン(17-AAG)はゲルダナマイシン(GDM)の合成類似体である。両分子は、アンサマイシンとして知られている広範なクラスの抗生物質分子に属する。微生物Streptomyces hygroscopicusから最初に単離されたGDMは、最初はある種のキナーゼの有力な阻害剤として同定され、後に、キナーゼの分解を促進することにより、具体的には「分子シャペロン」、例えば熱ショックタンパク質90(HSP90)を標的化することにより作用することが示された。その後、種々の他のアンサマイシンが多かれ少なかれそのような活性を有することが示されており、17-AAGは最も有望なものの一つであり、集中的な臨床試験が現在National Cancer Institute(NCI)により行われている。例えば、Federal Register、66(129):35443-35444; Erlichman et al.、Proc. AACR(2001)、42、要約4474参照。
【0005】
HSP90は、シグナル変換、細胞周期調節、および転写調節に関与する重要なタンパク質を含む広範囲のタンパク質のホールディング、活性化、および組み立てに関与する遍在性シャペロンタンパク質である。研究者は、HSP90シャペロンタンパク質が、例えば、Raf-1、EGFR、v-Srcファミリーキナーゼ、Cdk4、およびErbB-2を含むステロイドホルモンレセプターおよびプロテインキナーゼのような重要なシグナリングタンパク質と関連があることを報告している(Buchner J.、1999,TIBS、24:136-141; Stepanova、L. et al.、1996、Genes Dev. 10:1491-502; Dai、K. et al.、1996、J. Biol. Chem. 271:22030-4)。さらに研究は、ある種のコシャペロン、例えば、Hsp70、p60/Hop/Sti1、Hip、Bag1、HSP40/Hdj2/Hsj1、イムノフィリン、p23、およびp50がその機能においてHSP90を支援し得ることを示す(例えば、Caplan,A.、Trends in Cell Biol.、9:262-68(1999)参照)。
【0006】
アンサマイシン抗生物質、例えば、ヘルビマイシンA(HA)、ゲルダナマイシン(GM)、および17-AAGは、HSP90のN末端ATP結合ポケットの緊密な結合によりその抗癌効果を示すと考えられる(Stebbins、C. et al.、1997、Cell、89:239-250)。このポケットは高度に保存されており、DNAギラーゼのATP結合部位と相同性が低い(Stebbins、C. et al.、上記; Grenert、J. P. et al.、1997、J.Biol.Chem.、272:23843-50)。さらに、ATPおよびADPはいずれもこのポケットと低親和性に結合し、弱いATPアーゼ活性を有することが示されている(Proromou、C. et al.、1997、Cell、90:65-75; Panaretou、B. et al.、1998、EMBO J.、17:4829-36)。In vitroおよびin vivo試験は、アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤によるこのN末端ポケットの占有がHSP90機能を変化させ、タンパク質のホールディングを阻害することを示している。アンサマイシンおよび他のHSP90阻害剤は高濃度でタンパク質基質のHSP90への結合を阻害することが示されている(Scheibel、T.、H. et al.、1999、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 96:1297-302; Schulte、T. W. et al.、1995、J. Biol. Chem. 270:24585-8 ; Whitesell、L.、et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 91:8324-8328)。アンサマイシンは、シャペロン関連タンパク質基質のATP依存性放出を阻害することも示されている(Schneider、C.、L. et al.、1996、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:14536-41 ; Sepp-Lorenzino et al.、1995、J. Biol. Chem. 270:16580-16587)。いずれの場合も、基質はプロテオソーム中のユビキチン依存性プロセスにより分解される(Schneider、C. L.、上記; Sepp-Lorenzino、L. et al.、1995、J. Biol. Chem. 270:16580-16587; Whitesell、L. et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91:8324-8328)。
【0007】
この基質の不安定化は、腫瘍および非形質転換細胞に同様に生じ、シグナリング調節物質のサブセット、例えば、Raf(Schulte、T. W. et al.、1997,Biochem. Biophys. Res. Commun. 239:655-9; Schulte,T. W.et al.、1995, J. Biol. Chem. 270:24585-8)、核ステロイドレセプター(Segnitz、B. and U. Gehring. 1997、J. Biol. Chem. 272:18694-18701 ; Smith、D. F. et al.,1995、Mol. Cell. Biol. 15:6804-12)、v-src (Whitesell、L.、et al.、1994、Ploc. Natl. Acad. Sci. U S A 91:8324-8328)、およびある種の貫膜チロシンキナーゼ(Sepp-Lorenzino, L. et al.、1995、J. Biol. Chem. 270:16580-16587)、例えばEGFレセプター(EGFR)、およびHer2/Neu(Hartmann、F. et al.、1997, Int. J. Cancer 70:221-9; Miller、P. et al.、1994, Cancer Res. 54:2724-2730;Mimnaugh, E. G. et al.、1996、J. Biol. Chem. 271:22796-801; Schnur、R. et al.、1995、J. Med. Chem. 38:3806-3812)、CDK4、および突然変異体p53に対して特に有効であることが示されている。Erlichman et al.、Proc.AACR(2001)、42、要約4474。これらタンパク質のアンサマイシン誘発損失は、ある種の調節経路の選択的混乱をもたらし、そのように処理した細胞の細胞周期の特定の期での成長停止(Muise-Heimericks、R.C. et al.、1998、J. Biol. Chem. 273:29864-72)、およびアポトーシス、および/または分化をもたらす(Vasilevskaya、A. et al.、1999、Cancer Res.、59:3935-40)。
【0008】
最近、Nicchitta et al.、WO01/72779(PCT/US01/09512)は、HSP90はフルオロフォア ビス-ANSにより結合および/または熱ショックにおける異なる形態(コンフォメーション)とみなすことができることを示した。具体的には、Nicchitta et al.は、この誘導された形態はある種のHSP90リガンドに対して正常細胞で優位である異なる形のHSP90に対するより親和性が高いことを示した。本願と同一出願人のPCT/US02/39993は、さらに高親和性HSP90の優れた供給源として癌細胞溶解物の有用性および使用を証明することによりこの発見を支える。
【0009】
抗癌および抗腫瘍活性に加えて、HSP90阻害剤は、抗炎症薬、抗感染症薬、自己免疫治療薬、卒中、虚血、心臓疾患の治療薬、および神経再生を促進するのに有用な薬剤としての使用を含む種々の他の有用性にも関与してきた(例えば、Rosen et al.、WO 02/09696(PCT/US01/23640); Degranco et al.、WO 99/51223(PCT/US99/07242); Gold、米国特許6,210,974 B1;DeFranco et al.、米国特許No.6,174,875参照)。上記と幾分重複するが、限定されるものではないが硬皮症、多発性筋炎、全身性ループス、関節リウマチ、肝硬変、ケロイド形成、間質性腎炎、および肺線維症を含む繊維形成性疾患も治療しうることが文献に報告されている(Strehlow、WO 02/02123;PCT/US01/20578)。さらにHSP90調節、モジュレーター、およびその使用も、PCT/US03/04283、PCT/US02/35938、PCT/US02/16287、PCTUS02/06518、PCT/US98/09805、PCT/USOO/09512、PCTUS01/09512、PCT/US01/23640、PCT/US01/46303、PCT/US01/46304、PCT/US02/06518、PCTUS02/29715、PCTUS02/35069、PCT/US02/35938、PCT/US02/39993、60/293,246、60/371,668、60/331,893、60/335,391、06/128,593、60/337,919、60/340,762、および60/359,484に報告されている。
【0010】
現在、アンサマイシンは他の多くの脂溶性薬と同様、医薬適用について特に注射可能静脈内製剤を製造するのが難しい。今日まで、脂質小胞および水中油(oil in water)型エマルジョンを用いる試みがなされてきたが、これらは、これまでのところ複雑な処理工程、不快または医薬的に許容されない溶媒を必要とし、そして/または製剤の不安定性を生じる。一般的には、Vemuri、S. and Rhodes、C.T.、Preparation and characterization of liposomes as therapeutic delivery systems:総説、Pharmaceutica Acta Helvetiae 70、pp.95-111(1995)参照。PCT/US99/30631(2000年6月29日にWO 00/37050として公開)も参照のこと。本願と同一出願人の、本出願が優先権を主張しているPCT/US03/10533は、中鎖トリグリセリドを有するエマルジョン製剤について記載している。しかしながら、中鎖脂肪酸およびそれが保持するトリグリセリドは、望ましくない中枢神経系作用、例えば傾眠、悪心、眠気、およびEEG変化をもたらしうるオクタノエートの代謝的形成をもたらし得る。Cotter et al.、Am. J. Clin. Nutr. 50:794-800(1989); Miles et al.、Journal of Parenteral and Enteral Nutrition 15:37-41(1991); Traul et al.、Food Chem. Toxicol. 38:79-98(2000)参照。今日まで、そのような負の効果は、重要なオクタノエート経路酵素に対するより大きな結合効率と競合する、長鎖脂肪酸を栄養補助剤の形で用いることによりいくぶん相殺されてきた。しかしながら、今日までの出願人の知識では、それらは中鎖トリグリセリドおよびアンサマイシンと組み合わせられていなかった。
【0011】
したがって、比較的製造が簡単で、典型的には中鎖トリグリセリドを伴う前記欠陥の1またはそれ以上を改善する、代わりとなる製剤および製剤化方法の必要性がある。
(本発明の要約)
【0012】
本発明の製剤は、製剤の成分として該化合物を長鎖トリグリセリドとともに製剤化することにより、脂溶性化合物、例えばアンサマシンのより耐容性のよい静脈内投与をもたらすために検討される。
【0013】
第一の局面において、本発明は、医薬活性化合物、例えばアンサマイシン、例えば17-AAGを乳化剤(例えば、レシチン中にみられるようなリン脂質)および油と組み合わせて含む医薬組成物を特徴とする。該油は、長鎖トリグリセリドを含んでよく、含むことが好ましい。該組成物は中鎖トリグリセリドも含むことができる。該乳化剤および油はともに脂質相を構成する。
【0014】
ある態様において、該脂質相は全製剤の5-30重量%、より好ましくは5-20%を構成する。
【0015】
ある態様において、長鎖トリグリセリドの全w/wパーセントは、粘性の制限に適合するために、10%を超えず、より好ましくは7%またはそれ以下の範囲、さらにより好ましくは6%またはそれ以下の範囲である。
【0016】
ある態様において、中鎖トリグリセリドは長鎖トリグリセリドに対して10:0.0001〜0.0001:10、より好ましくは10:1〜1:10のw/w範囲で存在する。
【0017】
ある態様において、リン脂質は全体の3〜10%w/wの範囲で存在する。
【0018】
ある態様において、トリグリセリドは全体の5-20%w/wを構成する。
【0019】
ある態様において、トリグリセリドは、少なくとも一部は天然油、例えば、ダイズ、ゴマ、ベニバナ、およびコーンのような植物油の形で存在する。
【0020】
ある態様において、該組成物はさらに水、保存料(例えば、エデト酸ナトリウム)、抗凍結剤、緩衝剤、キレート剤、およびトニシファイアー(tonicifier)を含む。
【0021】
ある態様において、17-AAG(17-アリルアミノゲルダナマイシン 17-アリルアミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシン)は薬剤であり、総製剤重量に対して0.5mg/ml〜4mg/mlまたは0.05%w/w〜0.4%w/wの量で存在する。
【0022】
ある態様において、該組成物は以下の成分を有する:2mg/ml 17-AAG、3.3%ダイズ油、6.6%レシチン、9.9% Miglyol 812N、7.5%ショ糖、および水。
【0023】
別の態様において、該組成物は以下の成分を有する:2mg/ml 17-AAG、7.5%レシチン、15% Miglyol 812N、10%ショ糖、および水。
【0024】
17-AAGは17-アリルアミノゲルダナマイシンであり、構造:
【化1】

を有する。
【0025】
ある態様において、本発明の組成物は短鎖トリグリセリドも含む。
【0026】
ある特に好ましい態様において、該組成物は特に中鎖トリグリセリドも該組成物に存在する場合は、中鎖トリグリセリド介在性中枢神経系(CNS)作用の発生を減少させるかまたは打ち消すのに十分な量の長鎖トリグリセリドを含む。CNS作用は典型的には負の望ましくない作用であり、限定されるものではないが傾眠、悪心、眠気、およびEEG変化の1またはそれ以上を含む。しかしながら、ある態様において、そのような作用は中鎖トリグリセリドの相対量が長鎖トリグリセリドに対して増加するような特定の文脈において望ましいかもしれない。
【0027】
ある態様において、該組成物は、例えば一般的にはPCT/US03/10533に記載のごとく凍結および/または凍結乾燥される。凍結乾燥の態様において、個々のトリグリセリド、リン脂質、薬剤、および不揮発性成分の重量パーセントは、最初に存在し、その後凍結乾燥により失われる水および他のあらゆる揮発性物質の損失によりそれらの相対的分画増加に適合するように必ず上記範囲以上に増加する。
【0028】
ある態様において、該組成物は、不活性大気条件中で製剤化および/または保存される(例えば後者の場合は暗および/または遮光ボトル、バイアル、またはアンプル中)。
【0029】
前記態様の適切なあらゆる組み合わせも予期される。
【0030】
別の局面において、本発明は、医薬的活性薬ならびに中鎖脂肪酸介在性中枢神経系作用の発生を減少させるか打ち消すのに十分な量で存在する長鎖トリグリセリドを含む医薬製剤を提供し、次いで工程a)の生成物を患者に投与することを含む、患者における中鎖トリグリセリド介在性中枢神経系作用の発生を減少させる方法を特徴とする。この局面の態様は前記局面のあらゆる組成物態様およびその組み合わせを探知することができよう。
【0031】
別の局面において、本発明は、生物に医薬的有効量の生成物を投与することにより、該生物、例えば哺乳動物における疾患を治療または予防するための上記医薬組成物、方法、および生成物の使用方法を特徴とする。該疾患は、少なくとも哺乳類を治療する場合、虚血、増殖性疾患、および神経損傷からなる疾患の群から選ばれることが好ましく、HSP90阻害剤、例えば、1またはそれ以上のアンサマイシンを医薬活性薬として含む。増殖性疾患には、限定されるものではないが腫瘍および癌、炎症性疾患、真菌感染症、イースト菌感染症、およびウイルス感染症が含まれる。ある好ましい態様において、哺乳動物はヒトである。ある好ましい態様において、投与方法は静脈内であり、以下により詳細に記載するが他の投与方法も予期される。
【0032】
本発明の利点には、特定の態様に応じて、製造しやすさ、臨床的に許容される試薬(例えば、環境的および/または患者に対する毒性が低下している)の使用、製剤安定性の増大、輸送および倉庫保管が簡単、薬局や臨床での取り扱いが簡単、投与におけるIVおよび全身耐容性、およびしばしば身体への中鎖脂肪酸およびトリグリセリド投与に伴うある種の望ましくない副作用の打ち消しが含まれる。他の利点、局面、および態様は以下の図面、詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかであろう。
(図面の簡単な説明)
【0033】
図1は、中鎖トリグリセリドを含む製剤中に長鎖脂肪酸を含めることによるラットの傾眠の減少を示す。
(好ましい態様の説明)
【0034】
本発明の製剤は、水不溶性薬剤を患者への静脈内および他の種類の投与に適するようにするのに特に利点がある。本製剤方法は、比較的簡単であり、典型的には臨床的に許容される試薬を利用し、既存の方法および生成物より保存、安定性、および生物学的耐容性(biotolerability)における利点をもたらす生成物を生じる。
(定義)
【0035】
以下のクレームの用語は以下の意味を有し、以下に具体的に示さないクレームの用語は当該分野で用いられる通例の意味を有する。
【0036】
用語「医薬活性化合物」は、「薬剤」と同意語であり、培養細胞または生物に投与したときin vitroまたはin vivoで直接または間接的に生物学的作用を示すあらゆる化合物を意味する。該薬剤は好ましくはリポソームに封入するかおよび/または乳化できることが好ましく、典型的には必ずではないが脂溶性であろう。
【0037】
用語「蒸発させる」および「凍結乾燥する」は、必ずしも溶媒および溶液を100%除去することを意味せず、それより低いパーゼンテージの除去をもたらすかもしれない。しかしながら、凍結乾燥の態様において、実質的な除去、好ましくは約95%またはそれ以上が好ましい。
【0038】
「不活性大気条件」は標準大気条件の空気より比較的反応性が低い条件である。製剤時における純粋または実質的に純粋な窒素ガスの使用は、そのような不活性大気条件の一例である。当業者は他のものをよく知っている。
【0039】
用語「水和する」または「再水和する」は、水性溶液、例えば水または生理学的に適合性の緩衝剤、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩水緩衝液を加えることを意味する。
【0040】
用語「約」は、記載したものから20%の逸脱を容認することを意味する。用語「含む」を用語「〜の間」または「約〜の間」と組み合わせて用いる時は、記載した範囲の終点を含むことを意味する。
【0041】
用語「アンサマイシン」は、長鎖で架橋されたベンゾキノン、ベンゾヒドロキノン、ナフトキノン、またはナフトヒドロキノン部分のいずれかを含む「アンサ」構造を有する化合物を特徴づける広い用語である。ナフトキノンまたはナフトヒドロキノンクラスの化合物は、臨床的に重要な薬剤であるリファンピシンおよびリファマイシンによりそれぞれ例示される。ベンゾキノンクラスの化合物は、ゲルダナマイシン(その合成誘導体の17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)および17-N,N-ジメチルアミノ-エチルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(DMAG)を含む)、ジヒドロゲルダナマイシン、およびヘルバマイシンにより例示される。ベンゾヒドロキノンクラスはマクベシンにより例示される。本発明のアンサマイシンおよびベンゾキノンアンサマイシンは、合成、天然、またはその2つの組み合わせ、すなわち「半合成」であってよく、二量体およびコンジュゲート変異体、およびプロドラッグ型を含んでよい。
【0042】
本発明の方法において有用なベンゾキノンアンサマイシンおよびその製造方法の一例には、限定されるものではないが、例えば、米国特許3,595,955(ゲルダナマイシンの製造を記載)、4,261,989、5,387,584、および5,932,566に記載のものが含まれる。ゲルダナマイシンは、例えば、CN Biosciences(Darmstadt、Germany;San Diego、California、USAに本部があるMerck KGaAの支社、(cat.no.345805))からも市販されている。ゲルダナマイシン誘導体、4,5-ジヒドロゲルダナマイシン、およびそのキドロキノンのStreptomyces hygroscopicus(ATCC 55256)の培養からの生化学的精製は、国際出願番号PCT/US92/10189(Pfizer Inc.に譲渡、1993年7月22日にWO93/14215として公開、発明者:Cullen et al.)に記載されており、ゲルダナマイシンの触媒的水素添加による4,5-ジヒドロゲルダナマイシンの別の合成方法も知られている。例えば、Progress in the Chemistry of Organic Natural Products、Chemistry of the Arasamyein Antibiotics、33:278(1976)参照。本発明の種々の態様において用いることができる他のアンサマイシンは、上記「背景技術」の項に記載の文献に記載されている。
【0043】
「油」には、当該分野で知られている脂肪酸およびそれを含むグリセリド、例えば、モノ-、ジ-、およびトリグリセリドを含むグリセリドが含まれる。本発明に用いる脂肪酸およびグリセリドは、飽和および/または不飽和、天然および/または合成、荷電または中性であり得る。「合成」は、用語が当該分野で知られているように完全合成または半合成であってよい。油はその成分および/または起源中で同種または異種であってもよい。
【0044】
本明細書で用いている「中鎖トリグリセリド」は、長さが直鎖状炭素数8〜12、より好ましくは長さが炭素数8〜10の範囲のサイズの脂肪酸を有するトリグリセリド組成物である。本発明の種々の態様には、CONDEA(Cranford、NJ,USA)が提供するMiglyol(登録商標)812の使用が含まれる。Miglyol(登録商標)812は、およそ50-65%のカプリル酸(炭素数8)および30-45%のカプリン酸(炭素数10)を含む。カプロン酸(炭素数6)もラウリン酸(炭素数12)と同様、最大約2%まで存在する。まだより少量(最大1%)でミリスチン酸(炭素数14)が存在する。CondeaもMiglyol(登録商標)810、818、829、および840を提供し、これら他のMiglyol溶液、および他の中鎖トリグリセリド溶液の1またはそれ以上も本発明の種々の局面および態様において多かれ少なかれ有効に用いることができると予想される。後者については、当業者はそれらの同一性、供給源、および/または製造方法を知っており、過度な研究または実験を行うことなくそれらを得るかまたは製造することができる。Miglyol 812Nは、欧州薬局方に中鎖トリグリセリドとして、英国薬局方では分画ココナッツ油として、また、日本薬局方ではカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドとしてモノグラフがある。中鎖トリグリセリドの他の供給源にはココナッツ油、パーム核油、およびバターが含まれる。
【0045】
「短鎖トリグリセリド」は、長さが直鎖状炭素数8未満の脂肪酸を有するトリグリセリド
【0046】
「長鎖トリグリセリド」は、長さが直鎖状炭素数12より大きい脂肪酸を有するトリグリセリド組成物である。これらの一般的供給源は、例えば、典型的には55-60%リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)、22%オレイン酸(cis-9-オクタデカン酸)、およびより少量のパルミチン酸およびステアリン酸を含む植物油である。
【0047】
用語「短」、「中」、および「長」は、脂肪酸のみについても用いることができ、その場合、その定義にはそれぞれ直鎖状炭素数8未満、直鎖状炭素数8〜12、および直鎖状炭素数が12より大きいが含まれる。
【0048】
「乳化剤」は、「界面活性剤」と同義であり、限定されるものではないが、リン脂質、例えばレシチンが含まれる。「レシチン」は、リン酸のコリンエステルと結合した、ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸のジグリセリドの天然の混合物である。用語界面活性剤または乳化剤にはホスファチジルコリンも含まれ、この独特な化合物はよく知られている。本発明に用いる好ましい乳化剤には、ダイズレシチン、例えば、Phospholipon 90G(American Lecithin Company(Oxford、CT、USA)から提供される)がある。Phospholipon 90Gは、すでに非経口栄養生成物、例えばIntralipid(登録商標)に濃度約1.2%で、Doxil(登録商標)(ドキソルビシン)に約1%で、Ambisome(登録商標)(アンホテリシンB)に約2%で、およびPropofol(登録商標)に約1.2%で用いられてきた。後者については、例えば米国特許No.6,140,374参照。界面活性剤/乳化剤は、典型的には表面活性剤が溶解する水および/または他の成分の量に基づき約0.5-25%w/vの濃度で存在する。好ましくは界面活性剤は濃度約0.5-10%w/v、最も好ましくは約1-8%w/vで存在する。
【0049】
陰イオン界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート、ナトリウムポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートトリエタノールアミン、ナトリウムココイルサルコシン、ナトリウム N-ココイルメチルタウリン、ナトリウムポリオキシエチレン(ココナッツ)アルキルエーテルサルフェート、ナトリウムジエーテルヘキシルスルホスクシネート、ナトリウム a-オレフィンスルホネート、ナトリウムラウリルホスフェート、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、パーフルオロアルキルカルボン酸塩(Daikin Industries Ltd.により製造、登録商標:UNIDINE DS-101および102)が含まれる。
【0050】
陽イオン界面活性剤の例には、ジアルキル(C12-C22)ジメチルアンモニウムクロリド、アルキル(ココナッツ)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、タローアルキルプロピレンジアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキル(タロー)トリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキル(ココナッツ)トリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ビフェニルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキル(タロー)-イミダゾリン第4級塩、テトラデシルメチルベンジルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンアルキル(C12-C22)ベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンラウリルモノメチルアンモニウムクロリド、1-ヒドロキシエチル-2-アルキル(タロー)-イミダゾリン第4級塩、および疎水性基としてシロキサン基を有するシリコン陽イオン界面活性剤、疎水性基としてフルオロアルキル基を有するフッ素含有陽イオン界面活性剤(Daikin Industries Ltd.により製造、登録商標:UNIDINE DS-202)が含まれる。
【0051】
非イオン界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル修飾シリコン油(Toray Dow Coming Silicone Co.、Ltd.が製造、登録商標:SH3746、SH3748、SH3749、およびSH3771)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(Daikin Industries Ltd.が製造、登録商標:UNIDINE DS-401およびDS-403)、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物(Daikin Industries Ltd.が製造、登録商標:UNIDINE DS-406)、およびパーフルオロアルキルオリゴマー(Daikin Industries Ltd.が製造、登録商標:UNIDINE DS-451)が含まれる。
【0052】
「生理学的に許容される担体」は、生物に有意な刺激をもたらさず、投与した化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を表す。
【0053】
「賦形剤」は、さらに化合物の投与を促すために医薬組成物に加える物質をいう。賦形剤の例には、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖およびタイプのデンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが含まれる。これらはショ糖のような上記の生理学的に許容される担体でもあり得る。さらに賦形剤の定義内には充填剤が含まれる。「充填剤」は、一般的に乾燥製剤マトリックスがその構造を維持するのを可能にすることにより凍結乾燥製剤の機械的支持を提供する。好ましくは糖である。本明細書で用いている糖には、限定されるものではないが単糖、二糖、オリゴ糖、および多糖が含まれる。具体的な例には、限定されるものではないが、フルクトース、グルコース、マンノース、トレハロース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、ショ糖、デキストロース、およびデキストランが含まれる。糖には糖アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ダルシトール、キシリトール、およびアラビトールも含まれる。糖の混合物を本発明に従って用いることもできよう。種々の充填剤、例えば、グリセロール、糖、糖アルコール、および単糖および二糖も上記の等張化剤の機能も果たすかもしれない。充填剤は、薬剤に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用や毒性がないかまたは極めて限られていることが好ましい。充填剤担体に加えて、充填剤の役割を果たすかまたは果たさない他の担体には、例えば当該分野でよく知られた容易に利用可能なアジュバントおよび希釈剤が含まれる。
【0054】
本発明のための好ましい充填剤はショ糖である。理論に縛られることなく、ショ糖は凍結、次いで凍結乾燥で非晶質ガラス状物を形成し、強固なガラス状物中に活性成分を含む油滴の分散物を形成することにより製剤の潜在的安定性の増大を可能にすると考えられる。安定性は、糖が凍結乾燥により失われる水の置換物として作用することによっても増強されるかもしれない。糖分子は水分子より、水素結合を通して表面のリン脂質と結合するようになる。これらの特性を有する、置換されていてよい他の充填剤には、限定されるものではないがセルロース調製物、例えばメイズデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ガムトラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。所望により、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを加えてもよい。
【0055】
クレームの用語「中鎖トリグリセリド介在性中枢神経系作用の発現を弱めるかまたは打ち消す量」は、本明細書に記載の出発点を用いて過度な実験を要することなく当業者が経験的に決定することができる。
乳化
【0056】
油相および水性相を含むエマルジョンは治療的活性成分の担体または非経口的栄養の供給源として当該分野で広く知られている。エマルジョンは水中油または油中水型として存在しうる。本例のように、治療成分が特に油相に可溶性の場合は、水中油型が好ましい態様である。簡単なエマルジョンは油相と水性相が分離する(油滴の結合)熱力学的に不安定な系である。エマルジョン内への乳化剤の混和は、結合のプロセスを僅かなレベルまで減少させるのに重要である。
【0057】
酸化的分解または脂質脂質過酸化反応を抑制または最小化するには、例えばα-トコフェロールおよびブチル化ヒドロキシトルエン、および保存料、例えばエデンテートを酸素欠乏(deprivation)(例えば、窒素およびアルゴンのような不活性ガスの存在下で製剤、および/または遮光容器の使用)に加えてまたはその代わりに含むことができよう。
【0058】
乳化は、よく知られた種々の技術、例えば機械的混合、ホモゲナイゼーション(例えば、ポリトロンまたはGaulin高エネルギー型器具)、渦巻き撹拌(vortexing)、および超音波処理により行うことができる。超音波処理は、バス型またはプローブ型装置を用いて行うことができる。ミクロフルイダイザー(Microfluidizer)は、例えば、Microfluidics Corp.、Newton、Mass.から市販されており、さらに米国特許4,533,254に記載されており、狭い穴の圧補助通過を利用する。種々の市販のポリカーボネート膜を通す圧補助射出も利用することができよう。使用できる低圧用具も存在する。これら高および低圧用具を小胞サイズを選択および/または調節するのに用いることができる。
【0059】
ろ過技術による滅菌。ろ過にはより大きな径のフィルター、例えば0.45ミクロンフィルター、次いでより小さな径のフィルター、例えば0.2ミクロンフィルターを通す前ろ過を含むことができる。好ましいフィルター媒体は、セルロースアセテート(Sartorius-Sartobran(登録商標))である。
凍結乾燥
【0060】
凍結乾燥は、例えば昇華により、そして上記「溶媒除去」の項に記載のごとく試料から液体を除去または実質的に除去することである。
化学および物理的安定性の特性および評価
【0061】
リン脂質および分解産物はエマルジョンから抽出後に測定することができよう。次に、脂質混合物を二次元薄層クロマトグラフィ(TLC)システムまたは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムを用いて分離することができる。TLCにおいて、単一成分に対応するスポットを取り出し、リンについてアッセイすることができる。試料中の総リンは、例えば水に対して825nmで発現する青色の強度を分光光度計を用いて測定する方法により定量的に決定することができる。HPLCにおいて、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルグリセロール(PG)を分離し、正確および精密に定量することができる。脂質は203-205nmの領域で検出することができる。不飽和脂肪酸はUVスペクトルの200nm波長で高吸収を示すが、飽和脂肪酸は低吸収を示す。例として、Vemuri and Rhodes(上記)は、Licrosorb DiolおよびLicrosorb S1-60を用いる卵黄PCおよびPGの分離について記載した。分離にはアセトニトリル-メタノールおよび1% ヘキサン-水(74:16:10v/v/v)の移動相を用いた。8分でPGのPCからの分離が観察された。保持時間はそれぞれ約1.1および3.2分であった。
【0062】
エマルジョンの外観、平均滴サイズ、およびサイズ分布は、観察および維持する重要なパラメーターであり得る。これらパラメーターを評価するための多くの方法がある。例えば、動的光散乱および電子顕微鏡検査は使用できる2つの技術である。例えば、Szoka and Papahadjopoulos、Annu. Rev. Biophys. Bioeng.、9:467-508(1980)参照。特に、形態学的特徴付けは凍結割断電子顕微鏡検査を用いて達成することができる。あまり強力でない光学顕微鏡を用いることもできる。
【0063】
エマルジョン滴サイズの分布は、例えば粒径分布分析器、例えばCAPA-500(Horiba Limited製造(Ann Arbor、MI、USA)、コールターカウンター(Beckman Coulter Inc.、Brea、CA、USA)、またはZetasizer(Malvern Instruments、Southborough、MA、USA)を用いて測定することができる。
HPLCを用いる安定性の測定
【0064】
エマルジョンの脂質成分のための上記方法と同様に、治療的活性物質、例えば17-AAGの化学安定性はエマルジョンの抽出後にHPLCにより評価することができる。治療的活性アンサマイシンをその分解産物から分離することができる特定のアッセイ手順を開発することができる。分解の程度は、治療的活性アンサマイシンと関連するHPLCのピークの信号の低下および/または分解産物に関連するHPLCのピークの信号の増加により評価することができる。アンサマイシンはエマルジョン成分の他の成分に対して345nmの最大吸収で容易にはっきりと検出される。
製剤および投与方法
【0065】
静脈内投与が本発明の種々の局面および態様において好ましいが、当業者は該方法を他の投与方法、例えば経口、エアロゾル、非経口、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、膣内、腫瘍内、または腫瘍周辺に適応するように修飾または容易に適合させるさせることができることを予期するであろう。以下の議論は、大部分当業者に知られているにも関わらず、本発明の他の可能性を示す背景として提供される。下記の種々の解説はすでに上記したものと重複すると理解されよう。
【0066】
医薬組成物は常套的混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、微粒子化(levigating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスを利用して製造することができよう。
【0067】
医薬的に許容される組成物は、活性化合物を医薬的に用いることができる製剤に加工するのを促す賦形剤および助剤を含む1またはそれ以上の生理学的に許容される担体を用いて常套的方法で製剤化することができよう。適切な製剤は選択した投与経路に依存する。いくつかの賦形剤および製剤の製造へのその使用がすでに記載されている。例えば、PCT/US99/30631、Remmington's Pharmaceutical Sciences、Meade Publishing Co.、Easton、PA(最新版)、およびGoodman and Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、Pergamon Press、New York、N.Y.(最新版)に記載の他のものが当該分野で知られている。
【0068】
注射用には、薬剤をそれぞれ当該分野でよく知られている水性溶液、好ましくは生理学的適合性緩衝剤、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩水緩衝剤中で製剤化することができよう。経粘膜投与用には、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤に用いる。そのような浸透剤は一般に当該分野で知られている。
【0069】
本発明の製剤は、前記のごとく、凍結乾燥ケーキの水和により注射、例えばボーラス注射または連続注入により即時またはほぼ即時非経口投与に十分適している。注射用製剤は、保存料例えばエデテートを添加し、単位剤形、例えばアンプルまたは多用量容器中に存在してよい。前記のごとく本発明の医薬組成物は不活性環境、例えば遮光または無酸素のアンプルまたは他の包装中に保存することができる。
用量範囲
【0070】
進行性固形腫瘍を有する成人患者における17-AAGの第I相薬理試験により、5日間連続3週間、1日1時間注入の投与を行ったとき、最大耐容用量(MTD)は40mg/m2であった。Wilson et al.、Am.Soc.Clin.Oncol.、要約、Phase I Pharmacologic Study of 17-(Allylamino)-17-Demethoxygeldafaamycin(AAG) in Adult Patients with Advanced Solid Tu1nors(2001)。この試験において、最終半減期、クリアランス、および定常期容量の平均+/-SD値は、2.5+/-0.5時間、41.0+/-13.5L/時間、および86.6+/-34.6L/m2と決定された。血漿Cmaxレベルは40および56mg/m2で1860+/-660nMおよび3170+/-1310nMと測定された。これら値を手引きに用い、本発明製剤の有用な患者への用量範囲には活性成分約0.40mg/m2〜4000mg/m2が含まれると予期される。M2は表面面積を示す。標準アルゴリズムは、mg/m2をmg薬剤/kg体重に変換するために存在する。
【0071】
以下の実施例は例示のためのみに提供され、その中に含まれる成分および工程はクレーム中に特記しない限り本発明を限定するものではない。実施例1-5および9は、本願と同一出願人の出願であり、本願の優先権を主張するPCT/US03/10533、発明の名称「NOVEL ANSAMYCIN FORMULATIONS AND METHODS FOR PRODUCING AND USING SAME](出願日2003年4月4日)から取り入れている。
【実施例】
【0072】
実施例1:17-AAGの製造;代替法1
乾燥2Lフラスコ中の1.45 Lの乾燥THF中のゲルダナマイシン45.0g(80.4mmol)に50mLの乾燥THF中のアリルアミン36.0mL(470mmol)に30分間かけて滴加した。反応混合物を窒素下、室温で4時間撹拌し、その時点でTLC分析は反応が完結したことを示した[(GDM:明黄色Rf=0.40;(5%MeOH-95%CHCl3);17-AAG:紫色:Rf=0.42(5% MeOH-95%CHCl3)]。溶媒をロータリー蒸発で除去し、粗物質を25℃のH2O:EtOH(90:10)420mL中でスラリーにし、ろ過し、次いで45℃で8時間乾燥し、40.9g(66.4mmol)の17-AAGを紫色結晶として得た(収率82.6%、HPLCで254nmでモニターした純度>98%)。MP206-212℃(示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定)。1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例2:低融点形の17-AAGの製造
【0073】
別の精製方法は、80℃の2-プロピルアルコール(イソプロパノール)800mL中の実施例1から得られる粗17-AAGを溶解し、次いで室温に冷却する。ろ過し、次いで45℃で8時間乾燥して44.6g(72.36mmol)の17-AAGを紫色結晶として得る(収率90%、HPLCで254nmでモニターして純度>99%)。MP147-175℃(示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定)。1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例3:低融点型の17-AAGの製造、代替法1
【0074】
別の製造方法は25℃のH2O:EtOH(90:10)400mL中で実施例2から得た17-AAG生成物をスラリーにし、ろ過し、次いで45℃で8時間乾燥して42.4g(68.6mmol)の17-AAGを紫色結晶として得る(収率95%、HPLCで254nmでモニターした純度>99%)。MP147-175℃。1H NMRおよびHPLCは目的とする生成物と一致する。
実施例4:17-AAGエマルジョンの製造
【0075】
上記実施例1〜4のいずれかから得られた17-AAGをメタノールに溶解する。以下の表は本発明のある態様に従って行った17-AAGの4000gmバッチ製造を示す。当業者は、該方法を規模拡大または縮小することができ、該変更は個々の成分の量についてなすことができ、記載していないさらなる成分も加えてよいことを認識するであろう。

【0076】
17-AAG(CNF-101)を5Lポリプロピレンビーカーで計量する。エタノールを薬剤重量の約50x量加え、溶液を水浴中で超音波処理して薬剤を分散させる。次に、Miglyol 812(Sasol North America Inc; Houston、TX、USA)およびPhospholipon 90G(American Lecithen Co.、Oxford、CT、USA)を分散物に加え、次いで混合物を撹拌プレート上におき、固体がほぼ完全に溶解するまで撹拌した。超音波処理装置浴および/または約45℃への加熱を用いて固体の溶解を助けることができよう。溶液を光学顕微鏡を用いて目的の溶解が確実に得られたことを確認することができよう。
【0077】
勢いよく撹拌しながら、乾燥空気または窒素(National Formulary)ガス流を液体表面に吹きつけ、エタノール含有量が好ましくはその最初に存在する量の50%(w/w)以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは約5%またはそれ以下に減少するまでエタノールを蒸発させる。溶液を偏光フィルター付き光学顕微鏡下で検査し、所望のレベルの溶解、好ましくは完全な溶解(結晶または沈殿なし)を確認することができる。
【0078】
EDTA(二ナトリウム、二水和物、USP)、ショ糖、および注射用水(WFI)を5Lポリプロピレンビーカー中で計量し、固体が溶解するまで撹拌する。次に、水性相を油相に加え、表面に付着した油が「除去される(stripped off)]まで5000RPMの乳化ヘッドを備えた高速乳化装置を用いて完全に混合する。次に、剪断速度を2〜5分間10000RPMに上げ、均質な一次エマルジョンを得る。レーザー光分散(LLS)を用いて平均滴サイズを測定し、さらに溶液を例えば光学顕微鏡下で試験して結晶および固体の相対的存在または非存在を測定することができよう。
【0079】
エマルジョンのpHを0.2N NaOHで6.0+/-0.2に調節する。次に、一次エマルジョンを静圧約110psi(操作圧60-95psi)で操作するModel 110Sミクロフルイダイザー(Microfluidics Inc.、Newton、MA、USA)を通し、平均滴サイズが<190nmになるまで75ミクロンエマルジョン相互作用チャンバー(F20Y)を6-8回通す。個々の通過後にLLSを用いて進行を評価することができよう。光学顕微鏡下で偏光を用い、さらに溶液における結晶の存在を試験することができよう。
【0080】
次に、層流フード中でエマルジョンを0.45ミクロンGelmanミニカプセルフィルター(Pall Corp.、East Hills、NY、USA)に通し、次いで無菌0.2ミクロンSartorius Sartobran Pカプセルフィルター(500cm2)(Sartorius AG、Goettingen、Germany)を通す。60 PSIまでの圧を用いてなめらかで連続的な流れを維持する。ろ液を1またはそれ以上のポリプロピレンボトルに回収し、速やかに-20℃の冷凍庫に入れる。1mlの部分標本をレーザー光分散(LLS)および/または高速液体クロマトグラフィ(HPLC)用にとっておいてよい。
実施例5:17-AAGエマルジョン製剤の別の製造法
【0081】
エマルジョンの油相への17-AAGの溶解を促進するのにエタノールを用いる場合は、最初に超音波処理を用いて17-AAGをエタノールに溶解し、次いで該溶液に乳化剤および中鎖トリグリセリドを加えるのが最も一般的である。次に、超音波処理および撹拌を用いてすべての成分を溶液にする。
【0082】
あるいはまた、17-AAGは、トリグリセリド溶液中の予め形成された乳化剤、例えばMiglyol(登録商標)812中のPhospholiponを、好ましくは65℃またはそれ以上に加熱し、これに薬剤、例えば17-AAGを加え、次いで例えば撹拌および/または超音波処理により混合することによりエタノール非存在下で油相中の溶液にすることができる。エタノールより容易にイソプロパノールから17-AAGの結晶化を通して製造した実施例2の低融点形の17-AAGは室温でMiglyol中Phospholipon溶液に溶解することができることもわかった。本願と同一出願人のPCT/US01/29715、発明の名称「PROCESS FOR PREPARING...[17-AAG] AND OTHER ANSAMYCINS](2002年9月18日出願)参照。
【0083】
実施例5および6の生成物はともに平均油滴サイズが約200nmまたはそれ以下の範囲の明紫色乳状エマルジョンを生じる。油滴サイズは-20℃、2〜8℃、または室温で2ヶ月以上安定である。3mg/mlもの濃度が全体で、油相単独では20-30mg/mlもの濃度が達成された。40℃で保存すると約2週間後に17-AAGの分解がみられる。
【0084】
該薬剤の混合溶媒溶液をエタノール成分の真空蒸発にかけ、Miglyol中の17-AAGの溶液を得る。乳化は、機械的混合、超音波照射処理、および最終的にミクロフルイダイザーを通すことにより達成することができるが、用語「乳化する」および「乳化」は該処理に限定されるものではなく、他の乳化技術が存在し、前記技術の1またはそれ以上と併せて、またはその代わりに用いることができると理解されよう。
実施例6:長鎖トリグリセリドの添加
【0085】
上記プロセスの変化には、例えばダイズ油の形の長鎖トリグリセリドの添加が含まれる。17-AAGについて図1に示すように、長鎖トリグリセリド(ダイズ油)の供給源をMiglyol 812N(中鎖トリグリセリドの供給源)および乳化剤(Phospholipon 90G(PL90G))と以下の各w/w比:16.7%:50.0%:33.3%で混合する。これをPL90Gが完全に溶解するまでホモゲナイズする(〜20,000rpm、約20分間)。次に、これに1%w/w 17-AAGを加え、これを〜20,000rpmで約5分間ホモゲナイズ/溶解する。これは「油相」を構成する。次に、この油相(1部)を徐々に3.6部の水性相(注射用滅菌水中、9.375%w/wショ糖、0.0063%w/w EDTA)(後者を〜12,000〜15,000rpmでホモゲナイズしながら)に徐々に加える。次に、得られた混合物を必要に応じ水酸化ナトリウムおよび/または塩酸でpH6.0+/-0.2とする。次に、この「一次」エマルジョンを、F12Y相互作用チャンバーを通してミクロフルイダイズし、次いで0.2μmポリエチレンスルホン(PES)フィルター膜を用いてろ過滅菌する。
【0086】
前記方法を用い、以下の2製剤を製造した。

実施例7:凍結乾燥
【0087】
実施例5および6から得られたエマルジョンの凍結乾燥は下記表の記載と同様のスキームにより達成することができよう。

【0088】
2〜8℃で保存し、再構成後の凍結乾燥17-AAGエマルジョンの安定性プロフィールは以下の通りである。

実施例8:長鎖トリグリセリドは傾眠を阻害する
【0089】
Miglyol 812Nは急速に投与するとオクタノエートの代謝放出による鎮痛作用をもたらすことができる。17-AAGエマルジョン(Miglyol 812N油)のラットへの静脈内注入中に1.1gm総脂質/Kg/hr以上の注入速度で鎮痛が観察された。図2参照。17-AAGエマルジョン製剤を1.13gm総脂質/Kg/hr以上の速度で静脈内注入したイヌにおいて鎮痛が観察された。これに対応するためダイズ油を上記のごとく加え、Miglyol 812N in vivo代謝と競合し静脈注入中に生成されるオクタノエート脂肪酸を低下させた。ダイズ油/Miglyol 812N CF237エマルジョンにおいて、約40gm総脂質/Kg/hrまでの注入速度ではラットに急性の鎮痛は観察されなかった。すなわち、ダイズ油とMiglyol 812Nの組み合わせは、CF237エマルジョン製剤の鎮痛に関する耐容性を大きく改善する。同様に6用量のCF237エマルジョン製剤を12mL製剤/Kg/hr以上の静脈内注入として投与したサルにおいて鎮痛は観察されず、静脈刺激も観察されなかった。
実施例9:同様な製剤のための他のアンサマイシンの製造
17-AAG以外のアンサマイシン
【0090】
本質的にあらゆるアンサマイシンを上記実施例に記載のごとく製剤することができ、これらで17-AAGを置換することができる。種々のそのようなアンサマイシンおよびその製造法はPCT/US03/04283に詳述されている。これらの2つの製造方法を以下に記載する。
【0091】
化合物563:17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシン。EtOAc中の17-アミノゲルダナマイシン(1mmol)の溶液を室温でNaS2O4(0.1M、300ml)で処理した。2時間後、水性相をEtOAcで2回抽出し、混合有機相をNa2SO4で乾燥し、次いで減圧濃縮して黄色固体の18,21-ジヒドロ-17-アミノゲルダナマイシンを得た。この後者を無水THFに溶解し、カニューレで塩化ベンジル(1.1mmol)およびMS4Å(1.2g)の混合物に移した。2時間後、EtN(i-Pr)2(2.5mmol)をさらに反応混合物に加えた。一夜撹拌した後、反応混合物をろ過し、次いで減圧濃縮した。次に、水を残渣に加え、これをEtOAcで3回抽出し、次いで混合有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮して粗生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィで精製して17-(ベンゾイル)-アミノゲルダナマイシンを得た。Rf=0.50、80:15:5 CH2Cl2:EtOAc:MeOH中。Mp=218-220℃。1H NMR(CDCl3) 0.94(t, 6H), 1.70(br s, 2H), 1.79(br s, 4H), 2.03(s, 3H), 2.56(dd, 1H), 2.64(dd, 1H), 2.76-2.79(m, 1H), 3.33(br s, 7H), 3.44-3.46(m, 1H),4.325(d, 1H), 5.16(s, 1H), 5.77(d, 1H), 5.91(t, 1H), 6.57(t, 1H), 6.94(d, 1H), 7.48(s, 1H), 7.52(t, 2H), 7.62(t, 1H), 7.91(d, 2H), 8.47(s, 1H), 8.77(s, 1H)。
【0092】
化合物237:二量体。3,3'-ジアミノ-ジプロピルアミン(1.32g, 9.1mmol)を、N2下、火炎乾燥フラスコ中のDMSO(200ml)中ゲルダナマイシン(10g, 17.83mmol)の溶液に滴加し、室温で撹拌した。12時間後、反応混合物を水で希釈した。沈殿物が形成され、これをろ過して粗生成物を得た。粗生成物をシリカクロマトグラフィ(5%CH3OH/CH2Cl2)にかけて紫色固体の目的とする二量体を得た。フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル)後に純粋な紫色の生成物を得た;収率:93%; mp165℃; 1H NMR(CDCl3) 0.97(d, J=6.6Hz, 6H, 2CH3), 1.0(d, J=6.6Hz, 6H, 2CH3), 1.72(m, 4H, 2 CH2), 1.78(m, 4H, 2CH2), 1.80(s, 6H, 2 CH3), 1.85(m, 2H, 2CH), 2.0(s, 6H, 2CH3), 2.4(dd, J= llHz, 2H, 2CH), 2.67(d, J=15Hz, 2H, 2CH), 2.63(t, J=10 HZ, 2H, 2CH), 2.78(t, J=6.5Hz, 4H, 2CH2), 3.26(s, 6H, 2OCH3), 3.38(s, 6H, 2OCH3), 3.40(m, 2H, 2CH), 3.60(m, 4H, 2CH2), 3.75(m, 2H, 2CH), 4.60(d, J=10Hz, 2H, 2CH), 4.65(Bs, 2H, 2OH), 4.80(Bs, 4H, 2NH2), 5.19(s, 2H, 2CH), 5.83(t, J=15Hz, 2H, 2CH=), 5.89(d, J=10Hz, 2H, 2CH=), 6.58(t, J=15Hz, 2H, 2CH=), 6.94(d, J=10Hz, 2H, 2CH=), 7.17(m, 2H, 2NH), 7.24(s, 2H, 2CH=), 9.20(s, 2H, 2NH); MS(m/z)1189(M+H)。
【0093】
対応するHCl塩を以下の方法で製造した。EtOH(5ml, 0.123N)中のHCl溶液を室温でTHF(15ml)およびEtOH(50ml)中の化合物#237(1gm、上記のごとく製造)の溶液に加えた。反応混合物を10分間撹拌した。塩を沈殿し、ろ過し、次いで大量のEtOHで洗浄し、減圧乾燥した。
* * *
【0094】
当業者は、先の実施例および表に記載のパラメーターは用いる条件に応じて、そして用いる製剤方法および物質の量を互いに規模拡大若しくは縮小または変更するのに応じて調節することができることを理解するであろう。
【0095】
前記実施例は本発明の種々の局面および態様を単に例示するものであって、限定するものではない。引用したすべての文献は、本発明の属する技術分野の水準を示す。引用した各文献の開示はそれぞれを個々に完全に参照して取り込むのと同程度に本明細書の一部を構成するが、いずれも先行文献とは認められない。本明細書に記載のあらゆる従来技術または優先権書類に記載のあらゆる定義と矛盾する本明細書に明示したあらゆる定義の範囲で、本明細書に明示した定義が支配する。
【0096】
当業者は、本発明が対象を実施し、記載した目的および利点ならびにその中の固有のものを得るために十分適合していることを容易に理解するであろう。記載した方法および組成物は好ましい態様を示し、例示であって、本発明の範囲を限定することを意図しない。ある種の修飾および他の使用を当業者が思いつくであろうし、特許請求の範囲に定義した本発明の精神内に含まれる。
【0097】
本明細書に化合物試合の試薬は、市販されている(例えばSigma-Aldrichから)か、または当業者に知られたルチーン的方法を用いて過度な実験をすることなく容易に製造することができる。
【0098】
本発明の範囲および精神から離れることなく本発明に種々の置換および修飾をなしてよいことは当業者に容易に理解されよう。すなわち、そのようなさらなる態様は本発明および下記特許請求の範囲の範囲内である。
【0099】
本明細書に例示した本発明は、本明細書に具体的に開示していないあらゆる要素、限定なしに適切に実施することができよう。すなわち、本明細書ではいずれの場合も、例えば用語「を含む(comprising)」、「本質的にからなる(consisting essentially of)」、および「からなる(consisting of)」は、他の2つの用語のいずれとも置き換えてよく、それぞれは特許法内で異なる意味を有する。用いている用語および表現は、説明の用語として用いており、限定ではなく、示し、記載した特徴のあらゆる等価物、またはその部分を除外するような用語および表現の使用を意図するものではない。本発明の範囲内で種々の修飾が可能であると認識される。すなわち、本発明を好ましい態様により具体的に開示したが、当業者は本明細書に記載した概念の所望の特徴、修飾、および変化を行ってよく、そのような修飾および変化は明細書および添付の特許請求の範囲に定義した本発明の範囲内にあると考えられると理解すべきである。
【0100】
さらに、本発明の特徴および局面がマーカッシュグループまたは代わりの他のグループ分けにより説明されている場合、当業者は、本発明はマーカッシュグループまたは他のグループのあらゆる個々のメンバーもしくはメンバーのサブグループについてはそれによっても説明され、個々のメンバーが適切にもしくは但し書きにより除外されていると認識するであろう。
【0101】
他の態様は以下の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】中鎖トリグリセリドを含む製剤中に長鎖脂肪酸を含めることによるラットの傾眠の減少を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSP90阻害剤、所望によりアンサマイシン;乳化剤;および中鎖トリグリセリドおよび長鎖トリグリセリドの両方を含む油、を含む医薬組成物。
【請求項2】
該HSP90阻害剤がアンサマイシンである請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該アンサマイシンがゲルダナマイシンまたはゲルダナマイシン誘導体である請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
該ゲルダナマイシン誘導体が17-AAGおよびDMAGから選ばれる請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
該中鎖トリグリセリドが該長鎖トリグリセリドに対して10:1〜0.01:10のw/w比で存在する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
脂質相および水性相を有する水中油型エマルジョンであり、該脂質相が全体の5-30重量%を構成する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
該リン脂質がレシチンの形で存在する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
3-10%w/wの水中油型エマルジョンの量で存在する請求項4記載の医薬組成物。
【請求項9】
3-10%w/wリン脂質および5-20%w/w油である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
わずか10%w/wの長鎖トリグリセリドを含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
さらに7%w/wに等しいかまたはそれ以下の長鎖トリグリセリドを含む請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
該長鎖トリグリセリドが16-18直鎖炭素単位からなる脂肪酸エステルを含み、該トリグリセリドが所望によりリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸からなる群の1またはそれ以上のメンバーから選ばれる請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
該リン脂質がレシチン、所望によりダイズまたは卵レシチンの形である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項14】
該アンサマイシンが200℃以下の融点を有する17-AAGの低融点アイソフォームである請求項4記載の医薬組成物。
【請求項15】
該低融点アイソフォームが147-175℃の融点を有する17-AAGである請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
該油がダイズ、ゴマ、ベニバナ、およびコーンからなる群から選ばれる1またはそれ以上の天然油を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項17】
所望により凍結乾燥されたエマルジョンである請求項1記載の医薬組成物。
【請求項18】
水、保存料、抗凍結剤、緩衝剤、キレート剤、およびトニシファイアー(tonicifier)の1またはそれ以上を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項19】
Miglyol 812Nを含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項20】
0.5mg/ml〜4mg/mlの量の17-AAGを含む請求項1〜19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
0.05%w/w〜0.4%w/wの量の17-AAGを含む請求項1〜19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
下記成分:2mg/ml 17-AAG、3.3%ダイズ油、6.6%レシチン、9.9% Miglyol 812N、7.5%ショ糖、および水を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項23】
下記成分:2mg/ml 17-AAG、7.5%レシチン、15% Miglyol 812N、10%ショ糖、および水を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項24】
さらにエデト酸ナトリウムを含む請求項22または23記載の医薬組成物。
【請求項25】
該エデト酸ナトリウムが0.005%w/wで存在する請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
該長鎖トリグリセリドが中鎖トリグリセリド介在性中枢神経系作用の発生を減少させるか、打ち消す量で存在する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項27】
該中枢神経系作用が傾眠、悪心、眠気、およびEEG変化の1またはそれ以上から選ばれる請求項22記載の医薬組成物。
【請求項28】
さらに短鎖トリグリセリドを含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項29】
医薬製剤の成分として中鎖トリグリセリドを有する該製剤を投与する患者における中鎖トリグリセリド介在性中枢神経系作用の発現を減少させる方法であって、
a)アサマイシンおよび中鎖および長鎖トリグリセリド(ここで、該長鎖トリグリセリドは中鎖脂肪酸介在性中枢神経系作用の発現を減少または打ち消すのに十分な量で存在する)を含む医薬製剤を提供し、
b)工程a)の生成物を患者に投与する
ことを含む方法。
【請求項30】
該中枢神経系作用が傾眠、悪心、眠気、およびEEG変化の1またはそれ以上から選ばれる請求項29記載の方法。
【請求項31】
凍結乾燥しているか、凍結しているか、解凍しているか、または再構成されている、の1またはそれ以上である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項32】
不活性環境中で保存されている請求項1記載の医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−514994(P2006−514994A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513578(P2005−513578)
【出願日】平成15年10月4日(2003.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/031667
【国際公開番号】WO2004/082676
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504172359)コンフォーマ・セラピューティクス・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】CONFORMA THERAPEUTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】