説明

閃光発光装置およびカメラ

【課題】 カメラの位置を自由に変化させたときにも、閃光発光装置の向きをカメラの被写体に追従させるための手段を提供する。
【解決手段】 閃光発光装置は、閃光を照射する照射部と、第1距離取得部と、第2距離取得部と、角度取得部と、演算部と、演算部と、駆動部とを備える。第1距離取得部は、カメラおよび被写体の間の第1距離の情報を取得する。第2距離取得部は、カメラおよび照射部の間の第2距離の情報を取得する。角度取得部は、被写体およびカメラを結ぶ一方の直線と、カメラおよび照射部を結ぶ他方の直線とがなす挟角の情報を取得する。照射方向取得部は、照射部の照射方向の情報を取得する。演算部は、第1距離の情報、第2距離の情報、挟角の情報を用いて、照射部から被写体への水平方向の向きを示す被写体方向を求める。駆動部は、照射方向および被写体方向との差に基づいて、照射部の水平方向の向きを被写体に追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに対して任意の位置関係で配置可能な閃光発光装置およびその周辺技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被写体を追尾して指向性の照明を行うための照明装置が種々提案されている。一例として、特許文献1には、撮影装置で撮影した画像を表示装置に表示するとともに、オペレータが表示装置の画像で指定した座標に向けて指向性の照明を行う照明装置の構成が開示されている。
【特許文献1】特開平10−27505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の従来技術の例では、撮影装置および照明装置の位置関係と、撮影装置の撮影範囲とが固定されていることが前提となっている。そのため、上記の従来技術の例では、ユーザーがカメラの位置を自由に動かすとともに、閃光発光装置の向きをカメラの被写体に追従させて撮影を行うような場合には対応できない点で改善の余地があった。
【0004】
そこで、本発明は、カメラの位置を自由に変化させたときにも、閃光発光装置の向きをカメラの被写体に追従させるための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の態様の閃光発光装置は、カメラに対して任意の位置関係で配置可能である。この閃光発光装置は、閃光を照射する照射部と、第1距離取得部と、第2距離取得部と、角度取得部と、演算部と、演算部と、駆動部とを備える。第1距離取得部は、カメラおよび被写体の間の第1距離の情報を取得する。第2距離取得部は、カメラおよび照射部の間の第2距離の情報を取得する。角度取得部は、被写体およびカメラを結ぶ一方の直線と、カメラおよび照射部を結ぶ他方の直線とがなす挟角の情報を取得する。照射方向取得部は、照射部の照射方向の情報を取得する。演算部は、第1距離の情報、第2距離の情報、挟角の情報を用いて、照射部から被写体への水平方向の向きを示す被写体方向を求める。駆動部は、照射方向および被写体方向との差に基づいて、照射部の水平方向の向きを被写体に追従させる。
【0006】
また、上記の一の態様の演算部は、高さ演算部と、距離演算部と、角度演算部とを含んでいてもよい。高さ演算部は、被写体からカメラまでの高さと、カメラから照射部までの高さとに基づいて、被写体から照射部までの高さを求める。距離演算部は、第1距離の情報、第2距離の情報、挟角の情報を用いて、水平方向における被写体および照射部の間の第3距離を求める。角度演算部は、被写体から照射部までの高さと第3距離とを用いて、照射部から被写体へのピッチ角を求める。そして、駆動部は、ピッチ角に基づいて照射部の垂直方向の向きを被写体に追従させてもよい。
【0007】
また、上記の一の態様の閃光発光装置は、閃光発光装置の位置座標を示す第1座標情報を取得する第1座標取得部と、カメラの位置座標を示す第2座標情報をカメラから取得する第2座標取得部と、をさらに備えていてもよい。そして、第2距離取得部は、第1座標情報および第2座標情報を用いて第2距離を求めてもよい。
【0008】
他の態様のカメラは、閃光発光装置を制御する。カメラによって制御される閃光発光装置は、閃光を照射する照射部と、照射部の照射方向の情報を取得する照射方向取得部と、照射部から被写体への水平方向の向きを示す被写体方向と照射方向との差に基づいて照射部の水平方向の向きを被写体に追従させる駆動部と、を含んでいる。そして、他の態様のカメラは、第1距離取得部と、第2距離取得部と、角度取得部と、演算部と、送信部とを備える。第1距離取得部は、カメラおよび被写体間の第1距離の情報を取得する。第2距離取得部は、カメラおよび照射部間の第2距離の情報を取得する。角度取得部は、被写体およびカメラを結ぶ一方の直線と、カメラおよび照射部を結ぶ他方の直線とがなす挟角の情報を取得する。演算部は、第1距離の情報、第2距離の情報、挟角の情報を用いて、被写体方向を求める。送信部は、被写体方向の情報を閃光発光装置に送信する。
【0009】
また、上記の他の態様の演算部は、高さ演算部と、距離演算部と、角度演算部とを含んでいてもよい。高さ演算部は、被写体からカメラまでの高さと、カメラから照射部までの高さとに基づいて、被写体から照射部までの高さを求める。距離演算部は、第1距離の情報、第2距離の情報、挟角の情報を用いて、水平方向における被写体および照射部の間の第3距離を求める。角度演算部は、被写体から照射部までの高さと第3距離とを用いて、照射部から被写体へのピッチ角を求める。そして、送信部は、ピッチ角の情報を閃光発光装置にさらに送信してもよい。
【0010】
また、上記の他の態様のカメラは、閃光発光装置の位置座標を示す第1座標情報を閃光発光装置から取得する第1座標取得部と、カメラの位置座標を示す第2座標情報を取得する第2座標取得部と、をさらに備えていてもよい。そして、第2距離取得部は、第1座標情報および第2座標情報を用いて第2距離を求める。
【0011】
なお、上記の他の態様のカメラから受信した被写体方向の情報やピッチ角の情報を用いて照射部の向きを被写体に追従させる閃光発光装置も、本発明の具体的構成として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カメラの位置を自由に変化させたときにも、閃光発光装置の向きをカメラの被写体に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<一の実施形態の説明>
図1は、一の実施形態のカメラシステムの構成例を示すブロック図である。一の実施形態のカメラシステムは、カメラ1と、外付けの閃光発光装置2とを含んでいる。この閃光発光装置2は、カメラ1に対して任意の位置関係で配置可能である。
【0014】
まず、一の実施形態でのカメラ1の構成を説明する。カメラ1は、撮像レンズ11と、レンズ駆動部12と、撮像素子13と、AFE14と、画像処理部15と、AF演算部16と、第1位置情報取得部17と、第1傾斜センサ18と、第1方位センサ19と、第1通信部20と、CPU21と、バッファメモリ22と、記録I/F23と、モニタ24と、レリーズ釦25とを有している。なお、レンズ駆動部12、画像処理部15、AF演算部16、第1位置情報取得部17、第1傾斜センサ18、第1方位センサ19、第1通信部20、バッファメモリ22、記録I/F23、モニタ24およびレリーズ釦25は、それぞれCPU21と接続されている。
【0015】
撮像レンズ11は、ズームレンズ、フォーカシングレンズを含む複数のレンズ群で構成されている。この撮像レンズ11のレンズ位置は、レンズ駆動部12によって光軸方向に調整される。また、レンズ駆動部12は、フォーカシングレンズの光軸方向の位置を検出するエンコーダを内蔵している。このフォーカシングレンズのレンズ位置のデータはCPU21に入力される。なお、図1では、簡単のため、撮像レンズ11を1枚のレンズとして図示する。
【0016】
撮像素子13は、撮像レンズ11を通過した光束による結像を撮像してアナログの画像信号を生成する。この撮像素子13の出力はAFE14に接続されている。ここで、撮影モードにおいて、撮像素子13はレリーズ釦25の全押し操作に応答して記録用の静止画像(本画像)を撮像する。また、撮像素子13は、撮影モードでの撮影待機時にも所定間隔毎に観測用の画像(スルー画像)を連続的に撮像する。なお、時系列に取得されたスルー画像のデータは、AF演算部16による演算処理に使用される。
【0017】
AFE14は、撮像素子13の出力に対してアナログ信号処理を施すアナログフロントエンド回路である。このAFE14は、相関二重サンプリングや、画像信号のゲインの調整や、画像信号のA/D変換を行う。そして、AFE14の出力は画像処理部15およびAF演算部16にそれぞれ接続されている。
【0018】
画像処理部15は、デジタルの画像信号に対して各種の画像処理(色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス調整など)を施す。
【0019】
AF演算部16は、スルー画像のデータを用いて公知のコントラスト検出によるAF演算処理を実行する。
【0020】
第1位置情報取得部17は、カメラ1の三次元の位置座標を示す第1座標のデータを取得する。一例として、第1位置情報取得部17はGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)による測位装置や、あるいは上記の測位装置と高度計との組み合わせで構成される。
【0021】
第1傾斜センサ18は、水平面を基準としたときの撮像レンズ11の光軸の上下方向への傾き(撮像レンズ11のピッチ角θC)を検出するセンサである。例えば、第1傾斜センサ18は、公知の加速度センサや角速度センサで構成される。
【0022】
第1方位センサ19は、互いに直交する方向の地磁気成分を検出する2軸の磁気センサを備えている。この第1方位センサ19は、各磁気センサによる両方向の磁界検出値から、撮像レンズ11の光軸が向いている方位(第1方位)を求める。
【0023】
第1通信部20は、閃光発光装置2とのデータ通信を実行する。一例として、第1通信部20は、赤外線、電波あるいは可視光によって閃光発光装置2と無線通信を行う通信モジュールで構成される。
【0024】
CPU21は、カメラ1の各部の動作を統括的に制御するとともに、外付けの閃光発光装置2を制御するための演算処理を行うプロセッサである。なお、CPU21による演算処理の内容については後述する。
【0025】
バッファメモリ22は、揮発性の記憶媒体(例えばSDRAMなど)で構成される。バッファメモリ22は、画像処理部15による画像処理の前工程や後工程で画像のデータなどを一時的に記憶する。
【0026】
記録I/F23は、不揮発性の記憶媒体26を接続するためのコネクタを有している。そして、記録I/F23は、コネクタに接続された記憶媒体26に対してデータの書き込み/読み込みを実行する。上記の記憶媒体26は、ハードディスクや、半導体メモリを内蔵したメモリカードなどで構成される。なお、図1では記憶媒体26の一例としてメモリカードを図示する。
【0027】
モニタ24は、CPU21の指示に応じて各種画像を表示する。例えば、撮影モードでのモニタ24は、CPU21の制御によって、上記のスルー画像によるファインダ像の動画表示を行う。
【0028】
レリーズ釦25は、半押し操作による撮影前のAF動作開始の指示入力と、全押し操作による撮像動作開始の指示入力とをユーザーから受け付ける。
【0029】
次に、一の実施形態での閃光発光装置2の構成を説明する。閃光発光装置2は、照射部31と、駆動部32と、第2位置情報取得部33と、第2傾斜センサ34と、第2方位センサ35と、第2通信部36と、制御回路37と、記憶部38とを有している。
【0030】
ここで、照射部31、駆動部32、第2位置情報取得部33、第2傾斜センサ34、第2方位センサ35、第2通信部36および記憶部38は、それぞれ制御回路37に接続されている。また、第2位置情報取得部33、第2傾斜センサ34、第2方位センサ35、第2通信部36は、それぞれ第1位置情報取得部17、第1傾斜センサ18、第1方位センサ19、第1通信部20と対応するので、その構成について重複する説明は省略する。
【0031】
照射部31は、カメラ1からの指示に応じて、本画像の撮影時に発光面から閃光を照射する。例えば、照射部31は、キセノン発光管、メインコンデンサ、反射傘などを含んでいる。
【0032】
駆動部32は、閃光発光装置2の垂直軸を回転軸とするヨーイング方向の回動機構と、閃光発光装置2の水平軸を回転軸とするピッチング方向の回動機構とを有している(図2参照)。そして、駆動部32は、制御回路37の指示に応じて、照射部31の発光面の向きをピッチング方向およびヨーイング方向にそれぞれ調整する。
【0033】
第2位置情報取得部33は、閃光発光装置2の三次元の位置座標を示す第2座標のデータを取得する。また、第2傾斜センサ34は、水平面を基準としたときの照射部31の照射面の上下方向への傾き(照射部31のピッチ角θF)を検出するセンサである。また、第2方位センサ35は、照射部31の照射面が向いている方位(第2方位)を求めるためのセンサである。また、第2通信部36は、カメラ1の第1通信部20との間でデータ通信を実行する。
【0034】
制御回路37は、閃光発光装置2の各部の動作制御を行う。例えば、制御回路37は、照射部31の発光タイミングおよび照射部31の発光量の制御を行う。また、一の実施形態の制御回路37は、照射部31の照射面の向きを被写体に追従させるために駆動部32の駆動量を演算する(制御回路37による演算処理の内容は後述する)。また、記憶部38は、制御回路37による演算結果などを記憶する揮発性のメモリである。
【0035】
次に、図3の流れ図を参照しつつ、一の実施形態のカメラシステムの撮影モードでの動作例を説明する。一の実施形態での閃光発光装置2は、カメラ1から取得した情報に基づいて、照射部31の照射面の向きを撮影対象の主要被写体に追従させる。
【0036】
ここで、図3に示す一連の処理は、カメラ側でのレリーズ釦25の半押し操作をトリガとして開始される。なお、図3の流れ図において、ステップS101からS105と、S110と、S111とはそれぞれカメラ側の処理である。同様に、ステップS106からS109と、S112と、S113とは、それぞれ閃光発光装置側の処理である。
【0037】
ステップS101:カメラ1のAF演算部16は、スルー画像のデータを用いてAF演算処理を実行する。このとき、CPU21は、合焦したときのフォーカシングレンズのレンズ位置から、カメラ1から主要被写体(合焦している被写体)までの被写体距離Rを求める。
【0038】
ステップS102:CPU21は、AF時におけるカメラ側の位置および姿勢のデータを取得する。具体的には、CPU21は、第1座標のデータを第1位置情報取得部17から取得する。また、CPU21は、撮像レンズ11のピッチ角θCのデータを第1傾斜センサ18から取得する。さらに、CPU21は、第1方位のデータを第1方位センサ19から取得する。
【0039】
ステップS103:CPU21は、第1通信部20を介して、カメラ側パラメータを閃光発光装置2へ送信する。具体的には、S103での第1通信部20は、S101で取得した被写体距離Rのデータと、S102で取得したデータ(第1座標のデータ、第1方位のデータと、ピッチ角θCのデータ)とを閃光発光装置2にそれぞれ送信する。
【0040】
ステップS104:CPU21は、レリーズ釦25の半押しによるAF指示が再びあったか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)には、CPU21はS101に戻って上記動作を繰り返す。上記要件を満たさない場合(NO側)にはS105に移行する。
【0041】
ステップS105:CPU21は、レリーズ釦25の全押し操作があったか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS110に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)には、CPU21はS104に戻って上記動作を繰り返す。
【0042】
ステップS106:一方、閃光発光装置2の制御回路37は、カメラ側パラメータ(S103で送信されたもの)を第2通信部36が受信したか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS107に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)にはS112に移行する。
【0043】
ステップS107:制御回路37は、閃光発光装置側の位置および姿勢のデータを取得する。具体的には、制御回路37は、第2座標のデータを第2位置情報取得部33から取得する。また、制御回路37は、照射部31のピッチ角θFのデータを第2傾斜センサ34から取得する。さらに、制御回路37は、第2方位のデータを第2方位センサ35から取得する。
【0044】
ステップS108:制御回路37は、閃光発光装置2を基準として主要被写体の位置を求める追従演算処理を実行する。具体的には、S108での制御回路37は、以下の(イ)から(ト)の演算を実行する。
【0045】
(イ)制御回路37は、水平方向(図中xy方向)における主要被写体−カメラ間の被写体距離RXYと、主要被写体の合焦点からカメラ1までの垂直方向(図中z方向)の高さHCとをそれぞれ求める(図4参照)。具体的には、制御回路37は、被写体距離R(S101)と撮像レンズ11のピッチ角θC(S102)とを用いて、被写体距離RXYおよび高さHCをそれぞれ下式(1)、(2)により求める。
XY=R・cosθC ・・・(1)
C=R・sinθC ・・・(2)
(ロ)制御回路37は、カメラ1の第1座標と閃光発光装置2の第2座標とを用いて、水平方向におけるカメラ−閃光発光装置間の距離R1を求める。また、制御回路37は、第1方位をさらに用いて、主要被写体−カメラ間を結ぶ直線(RXY)とカメラ−閃光発光装置を結ぶ直線(R1)とがなす水平面上での挟角αの大きさを求める(図5参照)。
【0046】
(ハ)制御回路37は、水平方向における主要被写体−閃光発光装置間の距離LXYを求める(図5参照)。具体的には、制御回路37は、直線RXY、直線R1および挟角αの各値を用いて、距離LXYを下式(3)により求める。
【0047】
【数1】

(ニ)制御回路37は、カメラ−閃光発光装置間を結ぶ直線(R1)と閃光発光装置−主要被写体間を結ぶ直線(LXY)とがなす水平面上での挟角βの大きさを求める。具体的には、制御回路37は、直線RXY、直線R1および直線LXYの値を用いて、挟角βの大きさを下式(4)により求める。
【0048】
【数2】

そして、制御回路37は、直線R1と挟角βとの関係から、閃光発光装置2から主要被写体への水平方向の向きを示す被写体方向を求める。
【0049】
(ホ)制御回路37は、カメラ1の第1座標と閃光発光装置2の第2座標とを用いて、カメラ−閃光発光装置間の垂直方向の高さHFを求める。そして、制御回路37は、高さHCと高さHFとの和から、主要被写体の合焦点から閃光発光装置2までの垂直方向の高さ(HC+HF)を求める(図6参照)。
【0050】
(ヘ)制御回路37は、上記の距離LXYと高さHC+HFとを用いて、水平面を基準として照射部31から主要被写体への上下の傾きを示す目標ピッチ角θO-Fを下式(5)により求める(図6参照)。
θO-F=arctan{(HC+HF)/LXY} ・・・(5)
(ト)制御回路37は、駆動部32のヨーイング方向の駆動量とピッチング方向の駆動量とをそれぞれ求める。具体的には、制御回路37は、照射部31の照射面の方位(第2方位)と上記の被写体方向との差からヨーイング方向の駆動量を求める。また、制御回路37は、照射部31のピッチ角θFと目標ピッチ角θO-Fとの差からピッチング方向の駆動量を求める。
【0051】
ステップS109:制御回路37は、S108で求めた駆動量に基づいて、駆動部32をヨーイング方向およびピッチング方向に動作させる。これにより、照射部31の照射面の向きが主要被写体に合わせて調整されることとなる。その後、制御回路37は、S112に処理を移行する。
【0052】
ステップS110:一方、カメラ1のCPU21は、レリーズ釦25の全押しに応じて、閃光発光装置2に対する発光指示を第1通信部20に送信させる。
【0053】
ステップS111:CPU21は、撮像素子13を駆動させて本画像の撮影を実行する。この本画像のデータは、AFE14および画像処理部15で所定の処理が施された後に記憶媒体26に記録される。
【0054】
ステップS112:また、閃光発光装置2の制御回路37は、カメラ1からの発光指示(S110)を第2通信部36が受信したか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS113に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)には、制御回路37はS106に戻って上記動作を繰り返す。
【0055】
ステップS113:照射部31は、制御回路37の指示に応じて、主要被写体に向けて閃光を照射する。なお、S113での閃光照射は、S111での静止画像の撮影に同期して行われる。以上で、図3の流れ図の説明を終了する。
【0056】
以下、一の実施形態における作用効果を述べる。一の実施形態の閃光発光装置2は、照射部31から主要被写体への水平方向の向き(被写体方向)を求めるとともに、駆動部32を動作させて照射部31の水平方向の向きを主要被写体に自動的に追従させる。また、閃光発光装置2は、照射部31から主要被写体への上下の傾きを示す目標ピッチ角(θO-F)を求めるとともに、駆動部32を動作させて照射部31の垂直方向の向きを主要被写体に自動的に追従させる。特に、一の実施形態の閃光発光装置2は、被写体方向や目標ピッチ角θO-Fを求めるときに、カメラ1、閃光発光装置2および主要被写体との位置関係を考慮して演算を行う。
【0057】
したがって、一の実施形態では撮影者がカメラ1の位置を自由に変化させて撮影を行った場合において、撮影者等が閃光発光装置2の照射方向の調整の手間を要することなく、主要被写体を適切に照明することができる。
【0058】
<他の実施形態の説明>
次に、図7の流れ図を参照しつつ、他の実施形態のカメラシステムの撮影モードでの動作例を説明する。他の実施形態におけるカメラシステムの構成は、図1、図2と共通するので重複説明は省略する。また、他の実施形態において、一の実施形態と共通する部分については説明を一部省略する。
【0059】
他の実施形態は上記の一の実施形態の変形例であって、カメラ1のCPU21が被写体方向や目標ピッチ角θO-Fを求める。かかる他の実施形態の構成によっても、上述の一の実施形態の構成とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0060】
ここで、図7に示す一連の処理は、カメラ側でのレリーズ釦25の半押し操作をトリガとして開始される。なお、図7の流れ図において、ステップS201からS203と、S206からS209と、S212と、S213とは、それぞれカメラ側の処理である。同様に、ステップS204と、S205と、S210と、S211と、S214と、S215とは、それぞれ閃光発光装置側の処理である。
【0061】
ステップS201:カメラ1のAF演算部16は、スルー画像のデータを用いてAF演算処理を実行する。そして、CPU21は、合焦したときのフォーカシングレンズのレンズ位置から被写体距離Rを求める。
【0062】
ステップS202:CPU21は、AF時におけるカメラ側の位置および姿勢のデータ(第1座標のデータ、撮像レンズ11のピッチ角θCのデータ、第1方位のデータ)を取得する。
【0063】
ステップS203:CPU21は、第1通信部20を介して、情報取得要求を閃光発光装置2に送信する。その後、CPU21はS206に処理を移行する。
【0064】
ステップS204:一方、閃光発光装置2の制御回路37は、情報取得要求(S203で送信されたもの)を第2通信部36が受信したか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS205に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)にはS214に移行する。
【0065】
ステップS205:制御回路37は、閃光発光装置側の位置および姿勢のデータ(第2座標のデータ、照射部31のピッチ角θFのデータ、第2方位のデータ)を取得する。そして、制御回路37は、第2通信部36を介して、第2座標のデータをカメラ1に送信する。その後、制御回路37は、S210に処理を移行する。
【0066】
ステップS206:一方、カメラ1のCPU21は、第2座標のデータ(S205で送信されたもの)を受信すると、閃光発光装置2を基準として主要被写体の位置を求める追従演算処理を実行する。
【0067】
ここで、S206での追従演算処理は、上述したS108の(イ)から(へ)までの処理と同様である。これにより、CPU21は、閃光発光装置2から主要被写体への水平方向の向きを示す被写体方向と、水平面を基準として照射部31から主要被写体への上下の傾きを示す目標ピッチ角θO-Fとを求める。
【0068】
ステップS207:CPU21は、第1通信部20を介して、被写体方向および目標ピッチ角θO-Fのデータ(S206)を閃光発光装置2に送信する。
【0069】
ステップS208:CPU21は、レリーズ釦25の半押しによるAF指示が再びあったか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)には、CPU21はS201に戻って上記動作を繰り返す。上記要件を満たさない場合(NO側)にはS209に移行する。
【0070】
ステップS209:CPU21は、レリーズ釦25の全押し操作があったか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS212に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)には、CPU21はS208に戻って上記動作を繰り返す。
【0071】
ステップS210:一方、閃光発光装置2の制御回路37は、被写体方向および目標ピッチ角θO-Fのデータを受信すると、駆動部32のヨーイング方向の駆動量とピッチング方向の駆動量とをそれぞれ求める。なお、S210の演算は、上述したS108の(ト)の処理と同様である。
【0072】
ステップS211:制御回路37は、S210で求めた駆動量に基づいて、駆動部32をヨーイング方向およびピッチング方向に動作させる。これにより、照射部31の照射面の向きが主要被写体に合わせて調整されることとなる。その後、制御回路37は、S214に処理を移行する。
【0073】
ステップS212:一方、カメラ1のCPU21は、レリーズ釦25の全押しに応じて、閃光発光装置2に対する発光指示を第1通信部20に送信させる。
【0074】
ステップS213:CPU21は、撮像素子13を駆動させて本画像の撮影を実行する。
【0075】
ステップS214:また、閃光発光装置2の制御回路37は、カメラ1からの発光指示(S212)を第2通信部36が受信したか否かを判定する。上記要件を満たす場合(YES側)にはS215に移行する。上記要件を満たさない場合(NO側)には、制御回路37はS204に戻って上記動作を繰り返す。
【0076】
ステップS215:照射部31は、制御回路37の指示に応じて、主要被写体に向けて閃光を照射する。なお、S215での閃光照射は、S213での静止画像の撮影に同期して行われる。以上で、図7の流れ図の説明を終了する。
【0077】
<実施形態の補足事項>
(1)上記の実施形態では、コンパクト型の電子カメラと閃光発光装置でカメラシステムを構成した例を説明したが、一眼レフレックス型のカメラと閃光発光装置でカメラシステムを構成してもよい。また、本発明のカメラシステムは電子カメラに限定されることなく、銀塩カメラに適用することも勿論可能である。
【0078】
(2)上記の実施形態では、閃光発光装置の照射部の向きを水平方向および垂直方向に調整する例を説明したが、本発明は、閃光発光装置の照射部を水平方向のみ調整するものであってもよい。また、本発明は、1つのカメラで複数台の閃光発光装置を同時に制御するものであってもよい。
【0079】
(3)上記の実施形態では、カメラ−閃光発光装置間の通信を無線で行う例を説明したが、有線で通信を行うようにしてもよい。
【0080】
(4)本発明の位置情報取得部の構成はGPSによる測位装置に限定されるものではない。例えば、位置情報取得部は、移動体通信網などの複数の基地局から発信されるデータを利用して測位を行う測位装置などであってもよい。
【0081】
(5)上記の実施形態において、主要被写体からカメラまでの高さHCの値や、カメラ−閃光発光装置間の垂直方向の高さHFの値は、撮影者が予め入力した固定値を利用するものでもよい。
【0082】
(6)上記の実施形態において、閃光発光装置の制御回路は、駆動部の駆動量の演算のときに求めた各種のパラメータを記憶部に記録するようにしてもよい。そして、カメラのAF動作が繰り返し行われた場合には、制御回路は、記憶部に記憶された前回演算時のパラメータを用いて演算量を削減するようにしてもよい。例えば、制御回路は、前回演算時のパラメータと今回の演算時のパラメータの差分のみを演算するようにしてもよい。
【0083】
(7)なお、上記の実施形態において、閃光発光装置を雲台に乗せた自動撮影カメラに置き換えて、上記の実施形態と同様の制御により自動撮影カメラの向きを主要被写体に追従させるようにしてもよい。
【0084】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】一の実施形態のカメラシステムの構成例を示すブロック図
【図2】一の実施形態の閃光発光装置の構成例を示す外観図
【図3】一の実施形態のカメラシステムの撮影モードでの動作例を説明する流れ図
【図4】一の実施形態における主要被写体−カメラ間の位置関係の例を示す図
【図5】一の実施形態における主要被写体−カメラ−閃光発光装置間の位置関係の例を示す図
【図6】一の実施形態における主要被写体−閃光発光装置間の位置関係の例を示す図
【図7】他の実施形態のカメラシステムの撮影モードでの動作例を説明する流れ図
【符号の説明】
【0086】
1…カメラ、2…閃光発光装置、11…撮像レンズ、12…レンズ駆動部、13…撮像素子、16…AF演算部、17…第1位置情報取得部、18…第1傾斜センサ、19…第1方位センサ、20…第1通信部、21…CPU、25…レリーズ釦、31…照射部、32…駆動部、33…第2位置情報取得部、34…第2傾斜センサ、35…第2方位センサ、36…第2通信部、37…制御回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラに対して任意の位置関係で配置可能な閃光発光装置であって、
閃光を照射する照射部と、
前記カメラおよび被写体の間の第1距離の情報を取得する第1距離取得部と、
前記カメラおよび前記照射部の間の第2距離の情報を取得する第2距離取得部と、
前記被写体および前記カメラを結ぶ一方の直線と、前記カメラおよび前記照射部を結ぶ他方の直線とがなす挟角の情報を取得する角度取得部と、
前記照射部の照射方向の情報を取得する照射方向取得部と、
前記第1距離の情報、前記第2距離の情報、前記挟角の情報を用いて、前記照射部から前記被写体への水平方向の向きを示す被写体方向を求める演算部と、
前記照射方向および前記被写体方向との差に基づいて、前記照射部の水平方向の向きを前記被写体に追従させる駆動部と、
を備えることを特徴とする閃光発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の閃光発光装置において、
前記演算部は、
前記被写体から前記カメラまでの高さと、前記カメラから前記照射部までの高さとに基づいて、前記被写体から前記照射部までの高さを求める高さ演算部と、
前記第1距離の情報、前記第2距離の情報、前記挟角の情報を用いて、水平方向における前記被写体および前記照射部の間の第3距離を求める距離演算部と、
前記被写体から前記照射部までの高さと前記第3距離とを用いて、前記照射部から前記被写体へのピッチ角を求める角度演算部と、を含み、
前記駆動部は、前記ピッチ角に基づいて前記照射部の垂直方向の向きを前記被写体に追従させることを特徴とする閃光発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の閃光発光装置において、
閃光発光装置の位置座標を示す第1座標情報を取得する第1座標取得部と、
前記カメラの位置座標を示す第2座標情報を前記カメラから取得する第2座標取得部と、をさらに備え、
前記第2距離取得部は、前記第1座標情報および前記第2座標情報を用いて前記第2距離を求めることを特徴とする閃光発光装置。
【請求項4】
閃光を照射する照射部と、前記照射部の照射方向の情報を取得する照射方向取得部と、前記照射部から被写体への水平方向の向きを示す被写体方向と前記照射方向との差に基づいて前記照射部の水平方向の向きを前記被写体に追従させる駆動部と、を含む閃光発光装置を制御するカメラであって、
前記カメラおよび前記被写体間の第1距離の情報を取得する第1距離取得部と、
前記カメラおよび前記照射部間の第2距離の情報を取得する第2距離取得部と、
前記被写体および前記カメラを結ぶ一方の直線と、前記カメラおよび前記照射部を結ぶ他方の直線とがなす挟角の情報を取得する角度取得部と、
前記第1距離の情報、前記第2距離の情報、前記挟角の情報を用いて、前記被写体方向を求める演算部と、
前記被写体方向の情報を前記閃光発光装置に送信する送信部と、
を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載のカメラにおいて、
前記演算部は、
前記被写体から前記カメラまでの高さと、前記カメラから前記照射部までの高さとに基づいて、前記被写体から前記照射部までの高さを求める高さ演算部と、
前記第1距離の情報、前記第2距離の情報、前記挟角の情報を用いて、水平方向における前記被写体および前記照射部の間の第3距離を求める距離演算部と、
前記被写体から前記照射部までの高さと前記第3距離とを用いて、前記照射部から前記被写体へのピッチ角を求める角度演算部と、を含み、
前記送信部は、前記ピッチ角の情報を前記閃光発光装置にさらに送信することを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項4に記載のカメラにおいて、
閃光発光装置の位置座標を示す第1座標情報を前記閃光発光装置から取得する第1座標取得部と、
前記カメラの位置座標を示す第2座標情報を取得する第2座標取得部と、をさらに備え、
前記第2距離取得部は、前記第1座標情報および前記第2座標情報を用いて前記第2距離を求めることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
カメラに対して任意の位置関係で配置可能な閃光発光装置であって、
請求項4に記載のカメラから被写体方向の情報を受信する受信部と、
閃光を照射する照射部と、
前記照射部の照射方向の情報を取得する照射方向取得部と、
前記被写体方向と前記照射方向との差に基づいて前記照射部の水平方向の向きを前記被写体に追従させる駆動部と、
を備えることを特徴とする閃光発光装置。
【請求項8】
カメラに対して任意の位置関係で配置可能な閃光発光装置であって、
請求項5に記載のカメラから被写体方向の情報とピッチ角の情報とをそれぞれ受信する受信部と、
閃光を照射する照射部と、
前記照射部の照射方向の情報を取得する照射方向取得部と、
前記被写体方向と前記照射方向との差に基づいて前記照射部の水平方向の向きを前記被写体に追従させるとともに、前記ピッチ角に基づいて前記照射部の垂直方向の向きを前記被写体に追従させる駆動部と、
を備えることを特徴とする閃光発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−48877(P2010−48877A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210630(P2008−210630)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】