説明

閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器

【課題】組立が容易で信頼性が高く、かつ、機器の大型化を招くことなく電流が検出できる機能を備えた回路電流検出方法を用いたパワー機器を提供することを目的としている。
【解決手段】電流が流れる回路基板1と、回路基板1の電流検出部に立設された1次導体3と、1次導体3に流れる電流を計測できるように上記1次導体3に通して回路基板1に伏せて固定された電流検出器2と、電流検出器2の信号線を回路基板1に接合する接着剤7とを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電流を検出する必要があるパワー機器において、電流検出器を回路基板上に実装したパワー機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流を検出する必要があるパワー機器には、例えば、特許文献1に開示されているように、閉磁路型の電流検出器を用いて回路に流れる電流を計測するトロイダル型電流検出器があり、トロイダル型電流検出器において電流を計測するためには、電流が流れる1次導体をトロイダル型の電流検出器の内径に貫通させる必要がある。
【0003】
従来、1次導体(電線、金属バーなど)を貫通させるための孔を絶縁板にあけ、絶縁板にあけた孔に電流検出器の内径を合わせて電流検出器を絶縁板に固定し、電流検出器及び孔に1次導体を貫通させて電流検出部に接続し、電流検出器の2次導体については、別途、信号処理回路基板までワイヤハーネス(電線など)で配線するものがある。
【0004】
また、電流検出器に固定用の台座を付けて、電流検出器を絶縁板に垂直に立てて固定するとともに、電流検出器の近傍に1次導体を固定する端子を設けて1次導体を電流検出器の内径に貫通させて端子に固定する方法がある。
【0005】
また、電流検出器の内径に1次導体を貫通させ、電流検出器を1次導体に、直接、固定する方法がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3575643号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の方法においては、1次導体を電流検出器に通して電流検出部に接続する必要があるため、その作業性を考慮し、例えば、1次導体を長くしておく、あるいは、機器内の空間を広く取るなどの施策が求められ、結局、機器の大型化につながるという問題があった。
【0008】
また、電流検出器を立てて実装した場合、機器の輸送時などに発生する振動、特に、電流検出器を取り付けている板と平行方向の振動により電流検出器の固定部分にストレスがかかるため、電流検出器が脱落する、あるいは、破損するという問題があった。
【0009】
この発明は、上記のような問題を解消するためになされたもので、組立が容易で信頼性が高く、かつ、機器の大型化を招くことなく電流が検出できる機能を備えたパワー機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る回路電流検出方法を用いたパワー機器は、電流が流れる回路基板と、
上記回路基板の電流検出部に立設された入出力端子と、
上記入出力端子に流れる電流を計測できるように上記入出力端子に内径部を通して上記回路基板に固定されたリング状の電流検出器と、
上記電流検出器の信号線を上記回路基板に接合する接合部材と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る回路電流検出方法を用いたパワー機器よれば、1枚の回路基板に構成部品を全て実装することができるので組立が容易になるとともに構成部分の小型化が実現できる。
【0012】
また、重量部品である電流検出器を回路基板に立設された入出力端子に内径を通して回路基板に固定するので、耐振動性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態1を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【0014】
図に示したように、この実施の形態1では、電流が流れる回路基板1の電流検出部に、入出力端子を兼ねた1次導体3を立設し、1次導体3に流れる電流を計測できるようにトロイダル型等、リング状の電流検出器2の内径部を1次導体3に通して回路基板1面に電流検出器2の平面を合わせて接着剤7で固定し、電流検出器2の2次導体(信号線)6を回路基板1にはんだ付けなどで接続するとともに、入出力端子を兼ねた1次導体3から入出力電線4により外部へ引き出す。
【0015】
この実施の形態1によれば、回路基板1の電流検出部に、電流検出器2と1次導体3を実装するので、機器の小型化ができるとともに、電流検出器2の平面を回路基板1の面に合わせて実装するため耐振動性の向上が期待できる。
【0016】
また、回路基板1の組立工程のみで電流計測回路が構成できるため、機器全体の作業工程を短縮することができる。
【0017】
実施の形態2.
図2は、この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態2を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)であり、上記実施の形態1の構成を基本としている。
【0018】
図2に示したように、この実施の形態2では、入出力端子を兼ねた1次導体3と入出力電線4の接続部分に放熱補助部材8を設けている。
【0019】
この実施の形態2によれば、基本的効果は上記実施の形態1と同様であるが、加えて、入出力端子を兼ねた1次導体3に流れる電流によって発生する熱、及び1次導体3と入出力電線4を接続することにより、その接触抵抗を要因として発生する熱を放熱補助部材8により放熱させることができるため、構成部品の温度上昇が抑えられ機器の信頼性が向上する。また、1次導体を小型化することができる。
【0020】
実施の形態3.
図3は、この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態3を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)であり、上記実施の形態1の構成を基本としている。
【0021】
図3に示したように、この実施の形態3では、入出力端子を兼ねた1次導体3と入出力電線4との接続部の間に固定板9を設け、電流検出器2を回路基板1と固定板9とで挟み込んでいる。
【0022】
この実施の形態3によれば、基本的効果は実施の形態1と同様であるが、電流検出器2を回路基板1と固定板9とで挟み込んで取り付けるため、接着剤7が不要となり、組立の作業性が向上する。
【0023】
また、固定板9に銅箔を施したプリント基板を使用することにより、実施の形態2で示した放熱補助部材8と同様、放熱性を向上することができる。
【0024】
また、固定板9にプリント基板を使用し、プリント基板上に別途入出力端子を設けることにより、プリント基板の銅箔に入出力電線4の機能を持たせることができるので、組立作業性が向上する。
【0025】
実施の形態4.
図4は、この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態4を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)であり、上記実施の形態3の構成を基本としている。
【0026】
図4に示したように、この実施の形態4では、回路基板1と固定板9(プリント基板)に電流検出器2の位置決めをするための実装位置決め用穴9aを設けている。電流検出器2は実装位置決め用穴9aに嵌りあう凸部2aが設けられている。
【0027】
この実施の形態4によれば、基本的効果は上記実施の形態3と同様であるが、加えて、回路基板1と固定板9に電流検出器2の実装位置決め用穴9aを設け、電流検出器2は実装位置決め用穴9aに嵌りあう凸部2aを設けたので、電流検出器2の位置決めが容易にできるとともに、電流検出器2の位置ズレを防止することができる。
【0028】
また、電流検出器2の取り付けにあたっては、強固に挟み込む必要がないので固定板9にかかるストレスが緩和できる。
【0029】
実施の形態5.
図5及び図6は、この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態5を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【0030】
図5に示したように、この実施の形態5では、計測する電流経路が複数にわたる構成例であり、各電流検出器2の1次導体3に流れる電流を、入出力端子を兼ねた金属バー(結合材)10で接続し、金属バー10に設けた入出力端子11に入出力電線4を接続する。
【0031】
この実施の形態5によれば、より大きな電流の計測ができる。また、大型で高価な電流検出器2で構成するよりも、小型で安価な電流検出器2を複数個使用することで、省スペースで安価なパワー機器が提供できる。また、小型の電流検出器2を使用することにより耐振動性も向上する。
【0032】
また、図6に示したように、上記実施の形態4の構成を基本とし、計測する電流経路が複数にわたる構成の場合に、複数の電流検出器2を通した1次導体3に共通の固定板(プリント基板)9で1次導体3同士を接続することにより、上記図5の効果に加え、組立性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、車両等に搭載される電流検出器を実装したパワー機器として有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態1を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図2】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態2を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図3】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態3を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図4】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態4を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図5】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態5を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図6】この発明に係る閉磁路型電流検出器を回路基板に実装したパワー機器の実施の形態5を示す平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【符号の説明】
【0035】
1 回路基板、2 電流検出器、2a 凸部、3 1次導体、4 入出力電線、
5 接続部材、6 2次導体、7 接着剤、8 放熱補助部材、9 固定板、
9a 実装位置決め用穴、10 金属バー、11 入出力端子、12 絶縁板、
13 接続端子、14 固定具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる回路基板と、
上記回路基板の電流検出部に立設された入出力端子と、
上記入出力端子に流れる電流を計測できるように上記入出力端子に内径部を通して上記回路基板に固定されたリング状の電流検出器と、
上記電流検出器の信号線を上記回路基板に接合する接合部材と、
を有する回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項2】
上記入出力端子に、熱を放熱するための放熱補助部材を設けた請求項1記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項3】
上記入出力端子に固定板を取り付け、上記固定板と上記回路基板とで上記電流検出器を挟み込んで固定する請求項1記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項4】
上記固定板が、銅箔を設けたプリント基板である請求項3記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項5】
上記回路基板及び固定板に電流検出器位置決め用穴を設け、上記電流検出器に上記電流検出器位置決め用穴と嵌りあう凸部を設けた請求項3記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項6】
上記電流検出器と、上記電流検出器それぞれに対応する上記入出力端子が複数あり、上記入出力端子同士を電気的に結合する結合部材を有する請求項1記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。
【請求項7】
上記結合部材が、プリント基板である請求項6記載の回路電流検出方法を用いたパワー機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−224339(P2008−224339A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61146(P2007−61146)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】