説明

開き扉を備えた引戸装置

【課題】
扉体が全閉状態にある時にロック手段を自動的に解除状態として開き扉の開放を可能とする。
【解決手段】
扉体1に設けられ、開き扉8に係脱可能であり、通常時には付勢手段により係止状態が保持されているロック手段と、扉体1の戸先側に位置して設けられ、第1の位置と第2の位置の間で移動可能であり、通常時の第1の位置において扉体1から突出する突出部位を備えている作動手段と、扉体1に設けられ、作動手段が第1の位置から第2の位置に移動することでロック手段が解除状態となるように、前記作動手段の作動を前記ロック手段に伝動する伝動手段と、枠体の戸先側に位置して設けられ、閉鎖移動中の扉体が全閉状態に接近した時あるいは全閉状態において第1の位置にある作動手段の前記突出部位を押し込むことで作動手段を第2の位置へと移動させる押圧手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き扉を備えた引戸装置に係り、典型的な態様では、開き扉を備えた防火自動引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火自動引戸装置は、通常時には、建物開口部を開閉する自動引戸として機能し、火災時には、自動引戸の機能を停止し、自動閉鎖装置によって強制的に自閉する防火戸として機能する。また、扉体に開き扉を設けることで、火災時に全閉状態となった扉体に避難口を形成して避難できるようにした避難用開き扉付き引戸装置も提案されている。
【0003】
従来、防火自動引き戸に避難用開き扉が付いたものでは、開き扉の閉鎖状態は、開き扉に設けたラッチ付きの錠前によって保持されており、自動引き戸として機能している時でも、錠前を操作するという1つのアクションで開き扉の開放が可能な機構であることが多い。
【0004】
特許文献1には、スライド式の自動扉に設けた避難口を開閉する非常扉が開示されており、非常扉には、平常時には避難口を閉じた位置で固定する錠が設けてある。錠の具体的な構成は特許文献1には開示されていないが、錠は非常扉に設けてあることから、上記ラッチ付きの錠前と同様の錠であると考えられる。
【0005】
このようなラッチ付きの錠前を用いたものでは、万が一自動引き戸として機能中に開き戸を誤って開けた場合、戸袋部(方立)に開き扉が当り、開き扉や戸袋部が傷んでしまい、また、不意に開き扉が開くことは危険でもある。したがって、火災等非常時で、引き戸が強制自閉した時にのみ、開き戸の保持(固定)が開錠されることが望ましい。
【0006】
ここで、開き扉に設けた錠装置を、防災盤からの作動信号により解錠される電気錠とすることが考えられるが、防災盤からの作動信号を、引戸装置の扉体及び開き扉に引き込んで電気錠を作動させるために通線するには、扉体の移動距離が大きいため、容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59−147892
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、扉体が全閉状態にある時にロック手段を自動的に解除状態として開き扉の開放を可能とする開き扉を備えた引戸装置を提供することにある。
本発明のより具体的な目的の1つは、扉体側に通線を行なうことなく、開口部閉鎖時かつ火災時等の非常時にロック手段を自動的に解除して開き扉の開放を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が採用した技術手段は、
避難用開口を備え、建物開口部の幅方向に移動して当該建物開口部を開閉する扉体と、前記避難用開口を開閉するように前記扉体に設けられた開き扉と、を備えた引戸装置において、
前記扉体に設けられ、前記開き扉に係脱可能であり、通常時には付勢手段により係止状態が保持されているロック手段と、
前記扉体の戸先側に位置して設けられ、第1の位置と第2の位置の間で移動可能であり、通常時の第1の位置において前記扉体から突出する突出部位を備えている作動手段と、
前記扉体に設けられ、作動手段が第1の位置から第2の位置に移動することでロック手段が解除状態となるように、前記作動手段の作動を前記ロック手段に伝動する伝動手段と、
建物開口部の枠体の戸先側に位置して設けられ、閉鎖移動中の扉体が全閉状態に接近した時あるいは全閉状態において第1の位置にある作動手段の前記突出部位を押し込むことで作動手段を第2の位置へと移動させる押圧手段と、を有する開き扉を備えた引戸装置、である。
【0010】
1つの典型的な態様では、前記引戸装置は、防火自動引戸装置であり、引戸の扉体は上吊り式であり、モータにより電動駆動されて左右方向に移動して建物開口部を開閉する。
1つの態様では、前記防火自動引戸装置は、自動閉鎖装置を備えており、火災時に防災盤からの作動信号に基づいて、自動閉鎖装置が作動して(主電源が切られた後に)扉体が自動閉鎖して全閉状態となる。
【0011】
1つの態様では、前記突出部位は、前記扉体の戸先側において扉体の上端面から上方に突出しており、
前記押圧手段は、火災時に生成される作動信号に基づいて下方に突出して前記突出部位を下方に押し込むものである。
1つの態様では、押圧手段は、火災時に防災盤からの作動信号に基づいて作動する電磁レリーズによって下方に突出するように構成される。
【0012】
1つの態様では、前記突出部位と前記押圧手段の互いに当接する部位の形状の組み合わせは、前記扉体の閉鎖移動時に、下方に突出した押圧手段に前記突出部位が当接した時に、前記押圧手段と前記突出部位とが当接しながら前記扉体の閉鎖移動に伴って前記作動手段が下方に移動するような形状となっている。
横方向に移動する第1部材が第2部材に当接した時に、横方向の力を縦方向に変換しながら第1部材の横方向の移動を許容しつつ第1部材を縦方向に移動させるような、第1部材と第2部材の当接部の具体的な形状は当業者に適宜設計し得る。
1つの態様では、当接部の一方に傾斜面を形成することで、扉体(突出部位)の戸先側への移動を許容しつつ、作動手段(突出部位)を下動させる。より具体的な態様では、前記突出部位あるいは前記押圧手段のいずれかの当接部は、戸先側に向かって上側から下側に傾斜状に延出するガイド部である。
【0013】
1つの態様では、前記突出部位は、前記扉体の戸先側端面から側方(1つの態様では水平状)に突出しており、前記押圧手段は、前記枠体の戸先側縦枠である。1つの態様では、前記突出部位は、前記扉体の戸先側端面の上側部位(意識して手を伸ばさないと届かない)から突出させることで、扉体の通常の開閉時に、誤って突出部位を押し込むようなことがないようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、閉鎖移動中の扉体が全閉状態に接近した時あるいは全閉状態において第1の位置にある作動手段の前記突出部位を押し込むことで作動手段を第2の位置へと移動させてロック手段を解除するものであり、前記扉体が全閉状態にある時にロック手段は自動的に解除状態となるものであり、扉体の通常時の開閉時に誤って開き扉が開いてしまうことを可及的に防止できる。
【0015】
請求項2に記載したものでは、開口部幅方向に移動する扉体に通線することなく、防災信号と連動して、火災時等の非常時にのみ、扉体内の開き扉を開放させることが可能となる。
請求項3に記載したものでは、自動閉鎖装置を作動させるための作動信号、押圧手段を作動させるための作動信号のタイミングの制御を厳格に行なうことなく、防災信号と連動して、火災時等の非常時にのみ、扉体内の開き扉を開放させることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載したものでは、押圧手段として既存の戸先側縦枠を利用することができ、押圧手段の構成をシンプルとすることができ、装置全体の部品点数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】扉閉鎖時における引戸装置の姿図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示す図であり、図1における扉体の戸先側角部(点線の丸で囲んだ部分)に対応する図および側面図を示す。ラッチ及び作動部については、第1の位置、第2の位置の両方を示している。
【図3】本発明の第2実施形態を示す図であり、図1における扉体の戸先側角部(点線の丸で囲んだ部分)に対応する図及び平面図を示す。ラッチ及び作動部については、第1の位置(第1の姿勢)、第2の位置(第2の姿勢)の両方を示している。
【図4】本発明の第3実施形態を示す図であり、図1における扉体の戸先側角部(点線の丸で囲んだ部分)に対応している。ロック手段及び作動手段については、第1の位置、第2の位置の両方を示している。説明の都合上、作動手段の第1の位置を点線で示すが、実際には、戸先側縦枠内に延出するものではない。
【図5】本発明の第4実施形態を示す図であり、図1における扉体の戸先側角部(点線の丸で囲んだ部分)に対応している。作動手段については、第1の位置、第2の位置の両方を示している。説明の都合上、作動手段の第1の位置を点線で示すが、実際には、戸先側縦枠内に延出するものではない。
【図6】防火自動引戸装置の扉体の移動機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は扉体全閉時における引戸装置の姿図であり、引戸装置は上吊り式の扉体1を備え、扉体1は一方の縦枠2を戸先側、他方の縦枠3を戸尻側として、縦枠2、3間で左右方向に移動可能となっている。左右の縦枠2、3の上端間には上枠4が延設されている。縦枠2、3間の幅方向の縦枠3側の半部は袖壁ないし戸袋部となっており、扉体1は、縦枠2、3間の幅方向の縦枠2側の半部の空間(上端は上枠4、下端は床面5)を開閉する。
【0019】
上枠4の内部空間には、扉体1の移動方向に延出するレール6が設けてあり、扉体1は上端に設けたハンガーローラユニット7を介してレール6から吊持されており、ハンガーローラユニット7がレール6上を転動することで、扉体1は左右方向に移動可能となっている。扉体1は通常時には電動で開閉駆動される自動引戸であり、火災時には、防災信号に基づいて、主電源を切った後に作動される自動閉鎖装置によって自動的に閉鎖して開口部を閉鎖するように構成されている。これらの具体的な構成については、図6に基づいて後述する。
【0020】
扉体1には、避難用の開口、及び、当該避難用開口を開閉する開き扉8が設けてある。図示の態様では、正面視長方形状の扉体1は、戸先側縦框10、戸尻側縦框11、上框12、下框13を備え、扉体1のこれらの框10、11、12、13に囲まれた部位に避難用開口が形成されていると共に、避難用開口の周縁には開き扉8の閉鎖時に、開き扉8が当接する戸当り片14(図2乃至図5参照)が形成されている。
【0021】
扉体1の戸先側、戸尻側と、開き扉8の戸先側、戸尻側は対応している。具体的には、開き扉8の戸先側縦框80、戸尻側縦框81、上框82、下框83は、それぞれ、扉体1の戸先側縦框10、戸尻側縦框11、上框12、下框13に対応しており、開き扉8の戸尻側縦框81は、図示しないヒンジ(例えば、開き扉8を閉鎖方向に付勢するオートヒンジ)を介して扉体1の戸尻側縦框11に連結されている。開き扉8の面部の戸先側の高さ方向中間部位には、図示しない取手が設けてある。
【0022】
本発明の実施形態に係る引戸装置は、さらに、ロック手段、作動手段、伝動手段、押圧手段と、を備えている。
【0023】
ロック手段は、扉体1の戸先側に位置して設けられ、開き扉8に係脱可能である。より具体的には、扉体1の戸先側(上框12の戸先側部位あるいは戸先側縦框10)に形成されたロック手段の係止部が、開き扉8の戸先側(上框82の戸先側部位あるいは戸先側縦框80)に形成された受け部に対して係脱可能となっている。通常時には付勢手段により、受け部に対する係止部の係止状態が保持されている。
【0024】
作動手段は、扉体1の戸先側に位置して、第1の位置と第2の位置の間で移動可能なように扉体1(上框12の戸先側部位あるいは戸先側縦框10)に設けられる。通常時には、作動手段が第1の位置にあって、ロック手段は係止状態にある。作動手段が第1の位置から第2の位置に移動することで、ロック手段は係止状態から解除状態になる。作動手段は、第1の位置において扉体1の端面(上端面の戸先側部位あるいは戸先側端面)から突出する突出部位を備えている。作動手段が第1の位置から第2の位置へ移動することで、前記突出部位の突出寸法は小さくなって行くが、1つの態様では、第2の位置においても、前記突出部位は扉体1の端面から突出している。
【0025】
伝動手段は、扉体1の戸先側(上框12の戸先側部位あるいは戸先側縦框10)に設けられ、作動手段が第1の位置から第2の位置に移動することでロック手段が解除状態となるように、前記作動手段の作動を前記ロック手段に伝動する。伝動手段としては、後述する実施形態では、ラックとピニオン、プッシュプル錠の機構、を示すが、ある部材の動きに連動してもう1つの部材に所望の動作を行なわせるための伝動手段としては様々な機構が採用され得ることが当業者に理解され、作動手段とロック手段を連動させる伝動手段についても、ラックとピニオン、プッシュプル錠の機構に限定されるものではなく、様々な機構が採用され得る。
【0026】
押圧手段は、建物開口部の枠体の戸先側(上枠4の戸先側部位あるいは戸先側縦枠2)に位置して設けられ、自閉移動中の扉体1が全閉状態に接近した時あるいは全閉状態において第1の位置にある作動部の前記突出部位を押し込むことで作動部を第2の位置へと移動させる。1つの典型的な態様では、押圧手段は、火災検知に基づく作動信号によってのみ作動するように構成され、火災時等の非常時にのみ開き扉8のロック手段が解除される。
【0027】
[第1実施形態]
第1実施形態について図2に基づいて説明する。扉体1の上框12の戸先側部位には、ロック手段としてのラッチ15が下側に位置する第1の位置と上側に位置する第2の位置との間で上下方向に移動可能に設けてある。ラッチ15の下端部が係止部15Aとなっており、ラッチ15が第1の位置にある時に、開き扉8の上框82の戸先側部位に形成した凹状のラッチ受け16にラッチ15の下端の係止部15Aが係止するようになっている。ラッチ15の上端と扉体1の上端面120との間に位置して付勢手段としてのコイルスプリング17が設けてあり、コイルスプリング17がラッチ15を下向きに押圧することで、通常時には、ラッチ15は第1の位置を維持しており、ロック手段は係止状態にある。
【0028】
扉体1の上框12の戸先側部位には、作動部18が、ラッチ15と離間対向して上側に位置する第1の位置と下側に位置する第2の位置との間で上下方向に移動可能に設けてある。ラッチ15及び作動部18のそれぞれの対向する面には、それぞれラック150、180が上下方向(ラッチ15及び作動部18の移動方向)に亘って形成されており、ラッチ15と作動部18との間にはそれぞれのラック150、180に噛合するピニオン19が設けてある。
【0029】
作動部18の第1の位置、第2の位置は、それぞれ、ラッチ15の第1の位置、第2の位置に対応しており、したがって、第1の位置ではロック手段は係止状態にあり、第2の位置でロック手段は解除状態となる。第1の位置にある作動部18が下動すると、作動部18のラック180に噛合したピニオン19が反時計回り方向に回転し、ピニオン19の回転に連動して、ピニオン19に噛合したラック150を介してラッチ15が第1の位置から上動して、ラッチ15の下端の係止部15Aがラッチ受け16から抜け出てロック手段は解除状態となる。このように、第1実施形態では、ラック150、180とピニオン19から伝動手段が構成されている。ラッチ15、コイルスプリング17、作動部18、ピニオン19は、扉体1の上框12の戸先側部位内に設けたケース体Cに内装されている。ラッチ15、コイルスプリング17、作動部18は、図示しないガイド(ケース体Cの内壁でもよい)に沿って上下動させることが望ましく、このようなガイドは当業者にとって適宜設計することができる。
【0030】
第1の位置において、作動部18の上端側は、扉体1の上端面120から上方に突出する突出部位20となっている。上枠4内には、戸先側に位置して、押圧手段としての押圧ブロック21が設けてある。押圧ブロック21は直方体状の形状を有しており、下端の水平面と、垂直状の複数の側面を備えている。押圧ブロック21は、防災盤からの作動信号に基づくソレノイド式電磁レリーズ22の作動によって、下方に突出して、作動部18の上端側の突出部位20を下方に押し込んで作動部18を第1の位置から第2の位置へと作動させるように構成されている。
【0031】
1つの態様では、防災盤からの作動信号に基づく自動閉鎖装置による扉体1の自動閉鎖、ソレノイド式電磁レリーズ22による押圧ブロック21の作動のタイミングを、扉体1が全閉状態となった後に、押圧ブロック21を押圧作動させるように設定することで、全閉状態の扉体1の上端に突出する作動部18の突出部位20を押圧ブロック21が下方に押し込んで作動部18を下動させて、ラック150、180とピニオン19からなる伝動手段によってコイルスプリング17を圧縮しながらラッチ15が第1の位置から第2の位置へと上動して、ロック手段が解除状態となる。
【0032】
扉体1が全閉状態となる前に押圧ブロック21を作動させてもよい。突出部位20には、戸先側に向かって上側から下側に傾斜状に延出するガイド部200が形成されており、扉体1の閉鎖移動時に、下方に突出した押圧ブロック21(戸尻側の垂直面と下端の水平面との角部)にガイド部200が当接した時には、ガイド部200が押圧ブロック21に当接しながら扉体1の移動に伴って作動部18が下動して行き、ラック150、180とピニオン19からなる伝動手段によってコイルスプリング17を圧縮しながらラッチ15が第1の位置から第2の位置へと上動して、ロック手段が解除状態となる。図示の態様では、突出部位20に傾斜状のガイド部200を形成し、直方体状の押圧ブロック21の角部がガイド部200に当接して案内されるものを示したが、突出部位20と押圧ブロック21の形状の組み合わせは逆でもよく、押圧ブロック21に傾斜状のガイド部を形成し、突出部位20を案内するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態において、押圧ブロック21、電磁レリーズ22は上枠4内の戸先側に近接した位置に設けてあり、全閉状態にある扉体1の上端の戸先側のハンガーローラユニット7よりも戸先側に位置している。したがって、押圧ブロック21、電磁レリーズ22が扉体1の上端に設けたハンガーローラユニット7と干渉することがなく、扉体1の通常の開閉移動に支障を来たすことがない。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態について図3に基づいて説明する。同一の構成要素については、図2と図3との間で共通の参照番号を付与してある。扉体1の戸先側縦框10の上側部位には、ロック手段としてのラッチ15´が設けてあり、ラッチ15´は、開き扉8の戸先側縦框80の上側部位に形成した凹状のラッチ受け16´に対して係脱可能となっている。ラッチ15´は、第1の姿勢と第2の姿勢の間で回転可能となっており、ロック手段は、ラッチ15´が第1の姿勢にある時に係止状態にあり、ラッチ15´が第2の姿勢にある時に解除状態にある。通常時には、図示しない付勢手段(スプリング)によって、ラッチ15´の第1の姿勢が保持されている。
【0035】
扉体1の上框12の戸先側部位には、作動部18´が、上側の第1の位置と下側の第2の位置との間で上下方向に移動可能に設けてある。作動部18´の第1の位置、第2の位置は、それぞれ、ラッチ15´の第1の姿勢、第2の姿勢に対応しており、したがって、第1の位置ではロック手段は係止状態にあり、第2の位置でロック手段は解除状態となる。
【0036】
第1の位置において、作動部18´の上端側は、扉体1の上端面120から上方に突出する突出部位20となっている。上枠4内には、戸先側に位置して、押圧手段としての押圧ブロック21が設けてある。押圧ブロック21は直方体状の形状を有しており、下端の水平面と、垂直状の複数の側面を備えている。押圧ブロック21は、防災盤からの作動信号に基づくソレノイド式電磁レリーズ22の作動によって、下方に突出して、作動部18´の上端側の突出部位20を下方に押し込んで作動部18´を第1の位置から第2の位置へと作動させるように構成されている。
【0037】
作動部18´とラッチ15´は、伝動手段19´を介して伝動連結されている。作動部18´は、上下方向に延出するロッドであり、作動部18´の下端側は、伝動手段19´に連結されている。伝動手段19´は、作動部18´の下動を、ラッチ15´の回動に変換する機構であり、玄関扉等に一般に用いられているプッシュプル錠の機構を用いることができる。
【0038】
第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、ロック手段(ラッチ15´、ラッチ受け16´)、作動手段(作動部18´)、伝動手段19´の構成が異なるものであり、その他の要素の構成や動きについては、適宜第1実施形態の記載を援用することができる。また、第1実施形態、第2実施形態において、自閉移動した扉体1によってロック手段が解除された後の復帰動作について説明する。先ず、全閉状態の扉体1を開放方向に移動し、次いで、下方に突出した押圧ブロック21を押し上げて待避姿勢とし、そして、電源を投入することで電磁レリーズ22によって押圧ブロック21の待避姿勢が維持され、自動引戸装置としての使用が可能となる。
【0039】
[第3実施形態]
第3実施形態について図4に基づいて説明する。同一の構成要素については、図2及び図3と図4との間で共通の参照番号を付与する。第3実施形態は、第1実施形態に対して、ロック手段、作動手段、伝動手段が設けられる部位が、上框12の戸先側部位から戸先側縦框10の上側部位に変わった態様であり、ロック手段、作動手段、伝動手段の構成要素は基本的に同じである。
【0040】
扉体1の戸先側縦框10の上側部位には、ロック手段としてのラッチ15が戸尻側に位置する第1の位置と戸先側に位置する第2の位置との間で水平方向に移動可能に設けてある。ラッチ15の戸尻側端部が係止部15Aとなっており、ラッチ15が第1の位置にある時に、開き扉8の戸先側縦框80の上側部位に形成した凹状のラッチ受け16´にラッチ15の係止部15Aが係止するようになっている。ラッチ15の戸先側端面と扉体1の戸先側端面100との間に位置して付勢手段としてのコイルスプリング17が設けてあり、コイルスプリング17がラッチ15を戸尻側に押圧することで、通常時には、ラッチ15は第1の位置を維持しており、ロック手段は係止状態にある。
【0041】
扉体1の戸先側縦框10の上側部位には、作動部18が、ラッチ15と離間対向して戸先側に位置する第1の位置と戸尻側に位置する第2の位置との間で水平方向に移動可能に設けてある。ラッチ15及び作動部18のそれぞれの対向する面には、それぞれラック150、180が水平方向(ラッチ15及び作動部18の移動方向)に亘って形成されており、ラッチ15と作動部18との間にはそれぞれのラック150、180に噛合するピニオン19が設けてある。
【0042】
作動部18の第1の位置、第2の位置は、それぞれ、ラッチ15の第1の位置、第2の位置に対応しており、したがって、第1の位置ではロック手段は係止状態にあり、第2の位置でロック手段は解除状態となる。第1の位置にある作動部18が戸尻側に移動すると、作動部18のラック180に噛合したピニオン19が時計回り方向に回転し、ピニオン19の回転に連動して、ピニオン19に噛合したラック150を介してラッチ15が第1の位置から戸先側に移動して、ラッチ15の戸尻側端部の係止部15Aがラッチ受け16´から抜け出てロック手段は解除状態となる。
【0043】
第1の位置において、作動部18の戸先側は、扉体1の戸先側端面100から水平状に突出する突出部位20´となっている。通常時において、扉体1の全閉時には、突出部位20´が押し込まれることで作動部18が第2の位置となって、開き扉8のロック手段は解除状態となる。防災盤からの作動信号に基づく自動閉鎖装置の作動によって、扉体1が自閉移動すると、扉体1が全閉状態に接近した時に、突出部位20´が戸先側縦枠2に当接し、扉体1の自閉移動に伴って、突出部位20´が押し込まれることで作動部18が戸尻側に移動して第2の位置へと作動し、これに伴ってラッチ15が第1の位置から第2の位置へ移動して係止状態が解除される。
【0044】
作動部18の突出部位20´は、扉体1の戸先側端面100の上側部位(手を伸ばさないと届かない)から突出しているので、扉体1の通常の開閉操作時に、誤って突出部位20´が押し込まれてしまうような可能性は低い。また、開き扉8にドアクローザ機能を備えたオートヒンジを採用しておけば、ロック手段が解除されても、開き扉8の閉鎖姿勢は保持されており、開き扉8が開かれるためには、突出部位20´の押し込み動作と、図示しない取手(取手は操作し易い位置に設けられ、突出部位20´から離間している)の操作の2アクションが必要となり、開き扉8が誤って開放される可能性は低い。
【0045】
[第4実施形態]
第4実施形態について図5に基づいて説明する。同一の構成要素については、既述の実施形態に係る図面(図2乃至図4)と図5との間で共通の参照番号を付与する。第4実施形態は、第2実施形態に対して、ロック手段、作動手段、伝動手段が設けられる部位が変わった態様であり、ロック手段、作動手段、伝動手段の構成要素は基本的に同じである。
【0046】
扉体1の上框12の戸先側部位には、ロック手段としてのラッチ15´が設けてあり、ラッチ15´は、開き扉8の上框82の戸先側部位に形成した凹状のラッチ受け16に対して係脱可能となっている。ラッチ15´は、第1の姿勢と第2の姿勢の間で回転可能となっており、ロック手段は、ラッチ15´が第1の姿勢にある時に係止状態にあり、ラッチ15´が第2の姿勢にある時に解除状態にある。通常時には、図示しない付勢手段(スプリング)によって、ラッチ15´の第1の姿勢が保持されている。
【0047】
扉体1の上框12の戸先側部位には、作動部18´が、戸先側の第1の位置と戸尻側の第2の位置との間で水平方向に移動可能に設けてある。作動部18´の第1の位置、第2の位置は、それぞれ、ラッチ15´の第1の姿勢、第2の姿勢に対応しており、したがって、第1の位置ではロック手段は係止状態にあり、第2の位置でロック手段は解除状態となる。
【0048】
第1の位置において、作動部18´の戸先側は、扉体1の戸先側端面100から水平状に突出する突出部位20´となっている。通常時において、扉体1の全閉時には、突出部位20´が押し込まれることで作動部18´が第2の位置となって、開き扉8のロック手段は解除状態となる。防災盤からの作動信号に基づく自動閉鎖装置の作動によって、扉体1が自閉移動すると、扉体1が全閉状態に接近した時に、突出部位20´が戸先側縦枠2に当接し、扉体1の自閉移動に伴って、突出部位20´が押し込まれることで作動部18´が戸尻側に移動して第2の位置へと作動し、これに伴ってラッチ15´が第1の位置から第2の位置へ移動して係止状態が解除される。
【0049】
図6に示すように、上枠4の内部空間にはモータ23が設けてあり、モータ23の駆動により、駆動側スプロケット24、従動側スプロケット25間に巻き掛けしたチェーン26を左右方向に移動させる。チェーン26は扉体1の戸尻側のハンガーローラユニット7に連結されており、チェーン26の移動によって扉体1が左右方向に移動する。さらに、上枠4内には火災時に防災盤からの作動信号によって作動する自動閉鎖装置が設けてある。自動閉鎖装置は、上枠4の戸先側に設けた非常時強制閉鎖駆動装置27と、非常時強制閉鎖駆動装置27から戸尻側に向かって水平状に引き出されたガイドワイヤ28と、ガイドワイヤ28の戸先側端部を保持する非常時閉鎖装置29と、ガイドワイヤ28と扉体1とを連結するブロック30と、を備えている。非常時強制閉鎖駆動装置27は、ガイドワイヤ28を戸先側(閉鎖方向)に引っ張った状態で、戸尻側先端が非常時閉鎖装置29により保持(例えばソレノイドによって)されており、作動信号によって非常時閉鎖装置29の保持が解除されると、ガイドワイヤ28が戸先側(閉鎖方向)に移動してブロック30に係止し、ブロック30に係止した状態で戸先側に移動することで扉体1が自閉移動する。このような自動閉鎖装置は公知であって、例えば、類似の構成が特開2006−328636号に開示されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、自動防火引戸装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 扉体
8 開き扉
15、15´ ラッチ
150 ラック
16、16´ラッチ受け
17 コイルスプリング
18 作動部
180 ラック
19 ピニオン
19´ 伝動手段
20 突出部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難用開口を備え、建物開口部の幅方向に移動して当該建物開口部を開閉する扉体と、前記避難用開口を開閉するように前記扉体に設けられた開き扉と、を備えた引戸装置において、
前記扉体に設けられ、前記開き扉に係脱可能であり、通常時には付勢手段により係止状態が保持されているロック手段と、
前記扉体の戸先側に位置して設けられ、第1の位置と第2の位置の間で移動可能であり、通常時の第1の位置において前記扉体から突出する突出部位を備えている作動手段と、
前記扉体に設けられ、作動手段が第1の位置から第2の位置に移動することでロック手段が解除状態となるように、前記作動手段の作動を前記ロック手段に伝動する伝動手段と、
建物開口部の枠体の戸先側に位置して設けられ、閉鎖移動中の扉体が全閉状態に接近した時あるいは全閉状態において第1の位置にある作動手段の前記突出部位を押し込むことで作動手段を第2の位置へと移動させる押圧手段と、
を有する開き扉を備えた引戸装置。
【請求項2】
前記突出部位は、前記扉体の戸先側において扉体の上端面から上方に突出しており、
前記押圧手段は、火災時に生成される作動信号に基づいて下方に突出して前記突出部位を下方に押し込むものである、
請求項1に記載の開き扉を備えた引戸装置。
【請求項3】
前記突出部位と前記押圧手段の互いに当接する部位の形状の組み合わせは、前記扉体の閉鎖移動時に、下方に突出した押圧手段に前記突出部位が当接した時に、前記押圧手段と前記突出部位とが当接しながら、前記扉体の閉鎖移動に伴って前記作動手段が下方に移動するような形状となっている、請求項2に記載の開き扉を備えた引戸装置。
【請求項4】
前記突出部位は、前記扉体の戸先側端面から側方に突出しており、前記押圧手段は、前記枠体の戸先側縦枠である、
請求項1に記載の扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−216204(P2010−216204A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67615(P2009−67615)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】