説明

開封検知用ICタグ付容器蓋

【課題】ICタグを用いて不正な詰め替えやいたずらを防止して、安全性や品質を確保することができると共に、成形が容易で、キャッピングの際の破壊のおそれのない開封検知用ICタグ付容器蓋を提供する。
【解決手段】外蓋3は、頂板部35及びスカート部36から成り容器口部に固定されるキャップ本体31、及び該頂板部を覆い内面から下方に延びるインナーリング(突部)44を有する上蓋33から成っている容器蓋において、前記キャップ本体頂板部35には開口部34が形成されており、前記頂板部35内面には、前記開口部34を覆うようにICチップ及びアンテナからなるICタグ4が、頂板部35内面及びインナーリング44先端で固定されており、前記上蓋33をキャップ本体31から取外すことにより、ICチップの直近でアンテナが破断されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封検知用ICタグ付容器蓋に関するものであり、より詳細には、ICタグのアンテナを破壊しなければ開封することができず、内容物の詰め替え等が有効に防止された容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不正な詰め替えやいたずらを防止してその安全性や品質を確保するために、開封履歴を明示する機能を有するキャップが種々提案されている。
近年、製造年月日や製造・販売者等の製品情報を表示するためにICタグを用いた情報表示の技術が利用されるようになってきた。ICタグとは、RFID(Radio Frequency Identification)とも呼ばれるものであり、所定の情報が記憶されたICチップを無線アンテナとともに樹脂やガラス等の誘電体材料に埋め込んでタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末である。このようなICタグは、無線通信により、ICチップに記憶された製品情報を読取るものであり、例えばICチップのメモリには、数百バイトのデータを記録することができ、多くの製品情報を記録できるという利点があることから、かかるICタグを開封履歴明示に用いることも提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ICチップ、リード線およびアンテナからなるICタグを備えたボトルにおいて、ボトルの本体または該本体に属する部分にICチップが設けられ、前記本体に螺着するキャップにアンテナが設けられたことを特徴とするボトルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−222452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたボトルにおいては、キャップを開封するとリード線が破断され、開封後はICタグの情報が読み取れなくなることにより一旦開封されたものであることを示すものではあるが、特許文献1に記載されたボトルでは、ICチップはボトルの本体又は該本体に属する部分に設けられ、一方アンテナはキャップに設けられており、ICタグがキャップとボトルの2部品にわたって設置されるため、その成形は容易でない。しかもキャップ側面に長いリード線がわたっているため、キャッピングの際にリード線が破断されてしまうおそれもあり、未だ十分満足し得るものではない。
【0006】
従って本発明の目的は、ICタグを用いて不正な詰め替えやいたずらを防止して、安全性や品質を確保することができると共に、成形が容易で、キャッピングの際の破壊のおそれのない開封検知用ICタグ付容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、容器を密封可能な内蓋、及び該内蓋を外側から覆う外蓋から成り、該外蓋は、頂板部及びスカート部から成り容器口部に固定されるキャップ本体、及び該頂板部を覆い内面から下方に延びる突部を有する上蓋から成っている容器蓋において、前記キャップ本体頂板部には開口部が形成されており、前記上蓋に形成された突部先端が該開口部内に位置すると共に前記キャップ本体頂板部の内面と同一平面上に位置しており、前記頂板部内面には、前記開口部を覆うようにICチップ及びアンテナからなるICタグが、頂板部内面及び突部先端で固着されており、前記上蓋をキャップ本体から取外すことにより、ICチップの直近でアンテナが破断されることを特徴とする容器蓋が提案される。
【0008】
本発明の容器蓋においては、
1.キャップ本体頂板部の開口部端縁に、下方に鋭利な先端を有する環状突起が形成されていること、
2.外蓋が、上蓋とキャップ本体がヒンジ連結されたヒンジキャップであり、上蓋をキャップ本体の頂板部から開けた後下方に引っ張ることによってキャップ本体を破断可能な軸方向に延びるスコアがキャップ本体に形成されており、前記内蓋が螺子係合により容器を密封する螺子キャップであること、
3.突部の先端部分の外周面とキャップ本体頂板部の開口部の端縁の間に微小間隙が形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器蓋においては、ICタグが外蓋のキャップ本体頂板部内面及び上蓋の突部先端の両方に固着されているため、上蓋をキャップ本体頂板部を覆っている状態から開けた後キャップ本体から上蓋を取外すことにより、ICチップの直近でアンテナが破断されるため、確実にICタグを破壊することができ、開封されたことを確実に検知することができる。
また、キャップの頂板部内面にICタグが設けられているため、外蓋を打栓する際、キャップが半径方向に拡張した場合にも影響を受けることがなく、ICタグの破損が有効に防止されている。
更にキャップ本体頂板部の開口部端縁に、下方に鋭利な先端を有する突起を形成し、或いは更に突部の先端部分の外周面と外蓋頂板部の開口部の端縁の間に微小間隙(非接着領域)が形成されていることが好ましく、これにより、上蓋の取り外しに際して、突起の鋭利な先端で上記非接着領域を破断することが可能になり、ICタグの破断を確実且つ容易に行うことが可能になる。
【0010】
本発明の容器蓋においては、外蓋から上蓋を開けて、ICタグが破壊された後、外蓋を容器口部から取外すことにより、通常のキャップ付容器の形態になる。かかる外蓋の取り外しに際して、外蓋が上蓋とキャップ本体がヒンジ連結されたヒンジキャップであり、且つキャップ本体から上蓋を開けた後下方に引っ張ることによってキャップ本体を破断可能な軸方向に延びるスコアがキャップ本体に形成されていることにより、外蓋を容易に容器口部から取り外すことができるので、開封性にも優れている。
また本発明の容器蓋においては、内蓋が密封性に優れているため、外蓋が装着された、未開封の状態は勿論、外蓋を取外した後も、内蓋によって再密封することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の容器蓋の一例の側断面図である。
【図2】図1に示した容器蓋の上蓋を開けてICタグを破壊した状態を示す側断面図である。
【図3】図1に示した外蓋の上蓋を開いた状態における平面図である。
【図4】図3に示した外蓋の側面図である。
【図5】図3に示した外蓋の側断面図である。
【図6】図3に示した外蓋の底面図である。
【図7】図3に示した外蓋の上方からの斜視図である。
【図8】図3に示した外蓋の下方からの斜視図である。
【図9】図3に示した外蓋の下方からの他の斜視図である。
【図10】外蓋の一例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の容器蓋の一例を示す図1乃至図10において、本発明の容器蓋は図1及び図2から明らかなように、螺子係合により容器口部1に固定される内蓋2、及び内蓋2を外側から完全に覆い、容器口部1に固定される外蓋3、及びICタグ4とから成っている。
内蓋2は、天面部21及び筒状側壁22から成り、天面部21の内面には密封性を確保するための密封材23が全面に形成されている。また筒状側壁22の内面には、容器口部1に形成された螺子山11と係合可能な螺子山24が形成されている。
【0013】
また図3乃至7から明らかなように、外蓋3は、概略的に言って、キャップ本体31及びキャップ本体31とヒンジ32により一体的に成形されている上蓋33から成っている。キャップ本体31は、中央に開口部34を有する頂板部35及びスカート部36とから成っており、スカート部36の内面下方には、容器口部に1に形成された環状突起12と係合してキャップ本体31を容器口部に固定するための係合突起37,37が複数形成されている。また頂板部35の外面側の周縁には上蓋33を固定するための環状突起38及び上蓋33を開封する際に指を上蓋に当て易くするための凹部39が形成されている。更に頂板部35に形成された開口部34の端縁には、下方に鋭利な先端を有する突起40,40が複数形成されており、この突起40,40の間に微小間隙41が形成されている
【0014】
上蓋33は、天面42及び天面42から垂下する側部43から成り、天面42の内側には突部であるインナーリング44が形成されていると共に、側部43の内面下部には、キャップ本体31の環状突起38と係合して上蓋33をキャップ本体31に固定するための環状突条45が形成されている。またヒンジ32の対称位置には、上蓋33を持ち上げるための鍔部46が形成されている。
図1から明らかなように、本発明の容器蓋においては、上蓋33を閉じた状態において、上蓋33のインナーリング44の下端が、キャップ本体31に形成された開口部34内に位置すると共に、インナーリング44の先端がキャップ本体頂板部35の内面と同一平面上に位置することが重要な特徴である。これにより、図1に示すように、上蓋33を閉じた状態で、開口部34を覆うように、キャップ本体頂板部35の内面及びインナーリング44の先端の両方でICタグ4を固着することが可能になり、ICタグ4が設置された外蓋3を形成できる。
【0015】
本発明の容器蓋は、上記構成を有する内蓋2を容器口部1に適用した後、ICタグ4が設置された外蓋3を内蓋2付容器口部に嵌合固定することにより、容器口部への適用が完了する。
開封に際しては、前述したように、まず外蓋3の上蓋33を上方に持ち上げる。この際、ICタグ4は、キャップ本体31の頂板部内面及び上蓋33のインナーリング44先端の両方に固着されているため、上蓋33を上方に持ち上げることにより、ICタグ4は、キャップ本体31の開口部34の端縁に形成された突起40,40の下方に形成された鋭利な先端に当接して弱められ、この位置で破断し、インナーリング44の先端形状部分(開口部形状部分)4a及びキャップ本体頂板部側の環状部分4bの2つに分離される。その結果、破断部分にICタグのアンテナが位置することによって、ICタグの情報は読み取り不可能となり、一旦開封されたものであることが認識されるようになる。
【0016】
図8乃至図10から明らかなように、図に示した具体例においては、外蓋3の取り外しを容易にするために、外蓋3のキャップ本体31のスカート部36の内面に、ヒンジ32の一方の付け根近傍32aからスカート部36の下端まで延びるスコア47a、及びヒンジ32の他方の付け根近傍32bから下方に向かって、スカート部36の途中まで延びる補助スコア47bが形成されている。そして、更にスカート部36と頂板部35の境界領域には、スコア47aに連続して補助スコア47b側に延びる周方向スコア47cが設けられている。この周方向スコア47cは、周方向に弧状に延びてスコア47aの手前で終わっていることが好ましい。これにより、上蓋33を持ち上げてICタグを破壊した後、上蓋33をヒンジ32側で下方に引き下げることにより、スコア47aが破断され、続いて補助スコア47b側に引っ張ることにより周方向スコア47cが破壊され、外蓋3を容器口部から容易に取り除くことが可能になる。
【0017】
本発明においては、前述した具体例に示した態様に限定されず、種々の変更を行うことができる。
例えば、図に示した具体例においては、ICタグの破断をキャップ本体の開口部の端縁に形成された突起を設けて行う場合について説明を行ったが、この突起を設けることなく、ICタグの一端部分をキャップ本体の頂板部側で固着し、上蓋の突部に固着されたICタグの他端部分を強制的に引っ張ることによって破断することもできる。
また、図に示した具体例においては、外蓋はキャップ本体及び上蓋から成るヒンジキャップであったが、ヒンジ連結されずに、キャップ本体から完全に分離可能な上蓋であってもよく、キャップ本体への固定の方法も、図に示したようなキャップ本体と係合固定するタイプの他、キャップ本体に螺子固定されるものであってもよい。この場合にも、キャップ本体を容器口部から容易に取外すために、スカート部を破壊可能な弱化部を形成することが望ましく、具体的には、キャップの分別廃棄のために形成される弱化部と同様のものを形成することができる。
更に図に示した具体例においては、ICタグの破断を容易にするために、キャップ本体の開口部端縁に下方に鋭利な先端を有する複数の突起が形成されていたが、開口部端縁の全周にわたって下方に鋭利な先端が形成されていてもよい。
上蓋に形成される、キャップ本体の開口部内に位置する突部は、図に示した具体例においては、環状突起であるインナーリングであったが、ICタグを固定し得る限りこれに限定されるものでなく、複数の突起であってもよい。
【0018】
内蓋は、図に示した具体例においては、螺子キャップであったが、これに限定されるものではなく、係合突起により嵌合固定されるタイプのものであっても勿論よい。また内蓋は、スカート部下部にタンパーエビデントバンドを有するものであってもよい。
ICタグは、従来キャップに使用されている、基板上にICチップ及びアンテナが一体的に形成されてなる物を使用することができ、前述したように、破断位置にアンテナが位置するように設置されることが重要である。
本発明の容器蓋においては、ICタグは、上蓋の突部先端及びキャップ本体の頂板部内面の両方に離脱することなく固着されていることが重要であり、ICタグの基板がキャップ本体及び上蓋と同一プラスチックから成る場合には、外蓋内にICタグを設置し、これを高周波加熱等によって溶着固定することが望ましいが、勿論接着剤などによって固着することもできる。
本発明の外蓋は、射出成形、圧縮成形等の従来公知の手段によって成形することができ、ヒンジキャップの場合でも、キャップ本体及び上蓋を一体的に成形することができる。外蓋を形成後、上蓋をキャップ本体に組み合わせた状態で、ICタグをキャップ本体の開口部を覆うように設置し、キャップ本体頂板部内面及び上蓋の突部先端の両方に固着することにより、ICタグ付外蓋を作製することができる。
【0019】
本発明の容器蓋に用いられる外蓋としては、従来キャップシェルに使用されていた、ポリエチレン、ポリプロピレン等を使用することができ、特にポリプロピレン又は高密度ポリエチレンを好適に用いることができる。
また内蓋は、アルミニウム等から成る金属製キャップであってもよいし、上述した樹脂から成る及び樹脂製キャップの何れでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の開封検知用ICタグ付容器蓋においては、開封と同時に確実にICタグが破壊されるため、内容物の詰め替えやいたずらが確実に防止され、内容品の安全性や品質を確保することができ、飲料や食品等のキャップとして使用することができる。特に正規の内容品に対して廉価な内容品を詰め替えて販売する犯罪が発生している、高額のアルコール類のキャップとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 容器口部、2 内蓋、3 外蓋、4 ICタグ、21 天面部、22 筒状側壁、23 密封材、24 螺子山、31 キャップ本体、32 ヒンジ、33 上蓋、34 開口部、35 頂板部、36 スカート部、40 突起、41 微小間隙、42 上蓋天面、43 上蓋側部、44 インナーリング(突部)、47 スコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を密封可能な内蓋、及び該内蓋を外側から覆う外蓋から成り、該外蓋は、頂板部及びスカート部から成り容器口部に固定されるキャップ本体、及び該頂板部を覆い内面から下方に延びる突部を有する上蓋から成っている容器蓋において、
前記キャップ本体頂板部には開口部が形成されており、前記上蓋に形成された突部先端が該開口部内に位置すると共に前記キャップ本体頂板部の内面と同一平面上に位置しており、前記頂板部内面には、前記開口部を覆うようにICチップ及びアンテナからなるICタグが、頂板部内面及び突部先端で固着されており、前記上蓋をキャップ本体から取外すことにより、ICチップの直近でアンテナが破断されることを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
前記キャップ本体頂板部の開口部端縁に、下方に鋭利な先端を有する突起が形成されている請求項1記載の容器蓋。
【請求項3】
前記外蓋が、上蓋とキャップ本体がヒンジ連結されたヒンジキャップであり、上蓋をキャップ本体の頂板部から開けた後下方に引っ張ることによってキャップ本体を破断可能な軸方向に延びるスコアがキャップ本体に形成されており、前記内蓋が螺子係合により容器を密封する螺子キャップである請求項1又は2記載の容器蓋。
【請求項4】
前記突部の先端部分の外周面とキャップ本体頂板部の開口部の端縁の間に微小間隙が形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の容器蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−213378(P2011−213378A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82962(P2010−82962)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】