説明

開閉バルブ

【課題】閉じ状態にある弁体にこれを押し開こうとする逆圧が作用した場合であっても、弁体によって開口部を確実に閉じて流体の漏れを防ぐことができる開閉バルブを提供すること。
【解決手段】バルブボディ2に開口する開口部3をバルブボディ2内を移動する弁体6によって開閉する開閉バルブ1において、前記弁体6の外周面にネジ6aを刻設するとともに、前記バルブボディ2の前記開口部3近傍の内周面に、前記弁体6の外周面に刻設されたネジ6aに選択的に螺合するネジ2aを刻設し、弁体6側のネジ6aがバルブボディ2側のネジ2aに螺合している状態で弁体6を回転させてバルブボディ2の前記開口部3を弁体6によって開閉する。又、前記弁体6を駆動するアクチュエータとして、弁体6の直線運動と回転運動を複合的に行わせるロータリクランプシリンダ7を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディに開口する開口部をバルブボディ内を移動する弁体によって開閉する開閉バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水や空気等の流体の流動経路には開閉弁が設けられ、この開閉弁を開閉することによって流体の流動が許容又は阻止される。このような開閉弁には、例えば特許文献1に開示された真空バルブや特許文献2に開示されたゲートバルブ等の種類があるが、図5に一般的に使用されるL型バルブ(アングルバルブ)の構成を示し、その開閉動作を図6(a),(b)に示す。
【0003】
即ち、図5は従来のL型バルブの正面図、図6(a),(b)は同L型バルブの開閉動作を示す正断面図であり、図5に示すL型バルブ101は、バルブボディ102に連結されたエアシリンダ107を駆動源として弁体106をバルブボディ102内で直線移動させることによって図6(a)に示すように開口部103を開き、又、図6(b)に示すように開口部103を弁体106によって閉じる。
【0004】
而して、図6(a)に示すようにバルブボディ102の開口部103が開いた状態において開口部105側の圧力P1が開口部103側の圧力P2よりも高い正圧の場合(P1>P2)には、流体は矢印aにて示すように開口部105側から開口部103側へと流れ、逆に開口部105側の圧力P1が開口部103側の圧力P2よりも低い逆圧の場合(P1<P2)には、流体は矢印bにて示すように開口部103側から開口部105側へと流れる。
【0005】
又、図6(b)に示すようにバルブボディ102の開口部103が弁体106によって閉じられているときには流体の流動が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2883067号公報
【特許文献2】特開2008−116016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示した従来のL型バルブ101にあっては、図6(b)に示すようにバルブボディ102の開口部103が弁体106によって閉じられている状態において開口部105側の圧力P1が開口部103側の圧力P2よりも高い正圧の場合(P1>P2)には、両圧力P1,P2の差圧ΔP(=P1−P2)が弁体106の上面に作用して該弁体106が閉じ方向に押圧されるために問題は発生しない。
【0008】
ところが、逆に開口部105側の圧力P1が開口部103側の圧力P2よりも低い逆圧の場合(P1<P2)には、両圧力P1,P2の差圧ΔP’(=P2−P1)が弁体106の下面に作用し、この差圧ΔP’は弁体106にこれを押し開こうとする力を作用させるため、この力がエアシリンダ107による押圧力を超えると、図6(b)に鎖線にて示すように弁体106が弁座104から浮き上がり、その隙間から流体が漏れてしまうという問題が発生する。このように流体が漏れると、真空バルブにあっては、チャンバ等の真空が維持されないという問題が発生する。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、閉じ状態にある弁体にこれを押し開こうとする逆圧が作用した場合であっても、弁体によって開口部を確実に閉じて流体の漏れを防ぐことができる開閉バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、バルブボディに開口する開口部をバルブボディ内を移動する弁体によって開閉する開閉バルブにおいて、前記弁体の外周面にネジを刻設するとともに、前記バルブボディの前記開口部近傍の内周面に、前記弁体の外周面に刻設されたネジに選択的に螺合するネジを刻設し、弁体側のネジがバルブボディ側のネジに螺合している状態で弁体を回転させてバルブボディの前記開口部を弁体によって開閉することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弁体を駆動するアクチュエータとして、弁体の直線運動と回転運動を複合的に行わせるロータリクランプシリンダを使用し、弁体の外周に形成されたネジと前記バルブボディの内周に形成されたネジとが螺合しているときには弁体を回転させながら直線移動させ、両ネジの螺合が解除されているときには弁体を直線移動させるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、弁体側のネジがバルブボディ側のネジに螺合している状態で弁体を回転させてバルブボディの開口部を弁体によって開閉するようにしたため、バルブボディの開口部が弁体によって閉じられている状態では弁体はバルブボディに螺着されており、従って、閉じ状態にある弁体にこれを押し開こうとする逆圧が作用した場合であっても、弁体によって開口部が確実に閉じられているために流体の漏れが完全に防がれる。尚、閉じ状態にある弁体を逆回転させてバルブボディとの螺着を解除した後、該弁体を弁座から引き離す方向に直線移動させれば、バルブボディの開口部が開かれて開閉バルブが開状態となり、流体の流動が可能となる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、弁体を駆動するアクチュエータとして、弁体の直線運動と回転運動を複合的に行わせるロータリクランプシリンダを使用するため、当該開閉バルブの開閉を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る開閉バルブの構成と開閉動作を示す断面図である。
【図2】本発明に係る開閉バルブの構成と開閉動作を示す断面図である。
【図3】本発明に係る開閉バルブの構成と開閉動作を示す断面図である。
【図4】本発明に係る開閉バルブの構成と開閉動作を示す断面図である。
【図5】従来のL型バルブの正面図である。
【図6】(a),(b)は従来のL型バルブの開閉動作を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4は本発明に係る開閉バルブの構成と開閉動作を示す断面図であり、図示の開閉バルブ1は、アクチュエータである後述のロータリクランプシリンダ7によって自動開閉される自動弁であって、その有底円筒状のバルブボディ2の底部には流体の出入口である開口部3が形成され、この開口部3の周縁は後述の弁体6が選択的に着座する弁座4を構成している。又、バルブボディ2の側部には流体の出入口である開口部5が形成されており、この開口部5と前記開口部3には不図示の流体配管がそれぞれ接続されている。
【0017】
更に、バルブボディ2内には円板状の弁体6が移動可能に収容されており、この弁体6の外周にはネジ6aが刻設されている。そして、バルブボディ2の内周の開口部3の近傍(弁座4から所定長さ部分)には、弁体6の外周の形成された前記ネジ6aが選択的に螺合するネジ2aが刻設されている。
【0018】
又、バルブボディ2の上部にはアクチュエータであるロータリクランプシリンダ7が搭載されており、該ロータリクランプシリンダ7から延びるロッド7aはバルブボディ2を貫通してその内部に臨み、その下端には前記弁体6が結着されている。ここで、ロータリクランプシリンダ7は、弁体6の直線運動と回転運動を複合的に行わせるものであって、その構成の詳細は例えば特開2001−271807号公報に開示されている。
【0019】
而して、ロータリクランプシリンダ7は、弁体6の外周に形成されたネジ6aとバルブボディ2の内周に形成されたネジ2aとが図3に示すように螺合しているときにはロッド7aによって弁体6を回転させなが直線移動させ、図1に示すように両ネジ6a,2aの螺合が解除されているときにはロッド7aによって弁体6を直線移動させるよう構成されている。尚、ロータリクランプシリンダ7においてロッド7aの1回転当たりの移動ストロークは、弁体6の外周に形成されたネジ6aとバルブボディ2の内周に形成されたネジ2aのピッチに一致している。
【0020】
次に、以上のように構成された開閉バルブ1の開閉動作について説明する。
【0021】
図1は開閉バルブ1の開状態を示し、このとき、弁体6は開口部3の弁座4から離れてこれの上方に位置し、開口部3は開放状態にある。このとき、開口部5側の圧力P1が開口部側の圧力P2よりも高い正圧の場合(P1>P2)には、流体は矢印aにて示すように開口部5側から開口部3側へと流れ、逆に開口部5側の圧力P1が開口部3側の圧力P2よりも低い逆圧の場合(P1<P2)には、流体は矢印bにて示すように開口部3側から開口部5側へと流れる。
【0022】
図1に示す開状態からロータリクランプシリンダ7を駆動すれば、該ロータリクランプシリンダ7のロッド7aとその下端に結着された弁体6がバルブボディ2内を下方へと直線移動する。そして、図2に示すように、弁体6の外周の形成されたネジ6aがバルブボディ2の内周に形成されたネジ2aに当接した時点で、ロータリクランプシリンダ7がロッド7aを介して弁体6を回転させながらこれを下方へと直線移動させるため、該弁体6の外周に形成されたネジ6aとバルブボディ2の内周に形成されたネジ2aが図3に示すように螺合する。従って、弁体6は、図3に示すように図示矢印方向に回転しながらネジ2aに沿って下方へと移動し、図4に示すように弁座4に着座して開口部3を完全に閉じるとロータリクランプシリンダ7の駆動が停止し、開閉バルブ1は閉状態となって流体の流動が阻止される。尚、前述のようにロータリクランプシリンダ7のロッド7aの1回転当たりの移動ストロークは、弁体6の外周に形成されたネジ6aとバルブボディ2の内周に形成されたネジ2aのピッチに一致しているため、弁体6の回転と直線移動は抵抗なくスムーズになされる。
【0023】
而して、上述のようにバルブボディ2の開口部3が弁体6によって閉じられている状態において開口部5側の圧力P1が開口部3側の圧力P2よりも高い正圧の場合(P1>P2)には、両圧力P1,P2の差圧ΔP(=P1−P2)が弁体6の上面に作用して該弁体6が閉じ方向に押圧されるため、弁体6の弁座4からの浮き上がりは発生しない。
【0024】
これに対して、逆に開口部5側の圧力P1が開口部3側の圧力P2よりも低い逆圧の場合(P1<P2)には、両圧力P1,P2の差圧ΔP’(=P2−P1)が弁体6の下面に作用し、この差圧ΔP’は弁体6にこれを押し開こうとする力を作用させるが、本実施の形態では、バルブボディ2の開口部3が弁体6によって閉じられている状態では弁体6はバルブボディ2にネジ6a,2aによって螺着されているため、閉じ状態にある弁体6にこれを押し開こうとする差圧ΔP’(=P2−P1)が弁体6の下面に作用した場合であっても、弁体6によって開口部3が確実に閉じられているために流体の漏れが完全に防がれる。
【0025】
そして、ロータリクランプシリンダ7を駆動し、図4に示すように閉じ状態にある弁体6を逆回転させれば、該弁体6のバルブボディ2への螺着が解除され、弁体6のネジ6aがバルブボディ2のネジ2aから離れた時点で該弁体6を上方へ移動させてこれを弁座4から引き離せば、図1に示すようにバルブボディ2の開口部3が開かれて開閉バルブ1が開状態となり、流体の流動が可能となる。
【0026】
以上のように、本実施の形態に係る開閉バルブ1によれば、弁体6側のネジ6aがバルブボディ2側のネジ2aに螺合している状態で弁体6を回転させてバルブボディ2の開口部3を弁体6によって開閉するようにしたため、バルブボディ2の開口部3が弁体6によって閉じられている状態では弁体6はバルブボディ2に螺着されており、従って、閉じ状態にある弁体6にこれを押し開こうとする逆圧が作用した場合であっても、弁体6によって開口部3が確実に閉じられているために流体の漏れが完全に防がれる。
【0027】
又、本実施の形態では、弁体6を駆動するアクチュエータとして、弁体6の直線運動と回転運動を複合的に行わせるロータリクランプシリンダ7を使用したため、当該開閉バルブ1の開閉を自動で行うことができる。
【0028】
尚、以上は本発明をアクチュエータによって自動開閉される開閉バルブに対して適用した形態について説明したが、本発明は、手動によって開閉する開閉バルブに対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 開閉バルブ
2 バルブボディ
2a バルブボディのネジ
3 バルブボディの開口部
4 弁座
5 バルブボディの開口部
6 弁体
6a 弁体のネジ
7 ロータリクランプシリンダ(アクチュエータ)
7a ロータリクランプシリンダのロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディに開口する開口部をバルブボディ内を移動する弁体によって開閉する開閉バルブにおいて、
前記弁体の外周面にネジを刻設するとともに、前記バルブボディの前記開口部近傍の内周面に、前記弁体の外周面に刻設されたネジに選択的に螺合するネジを刻設し、弁体側のネジがバルブボディ側のネジに螺合している状態で弁体を回転させてバルブボディの前記開口部を弁体によって開閉することを特徴とする開閉バルブ。
【請求項2】
前記弁体を駆動するアクチュエータとして、弁体の直線運動と回転運動を複合的に行わせるロータリクランプシリンダを使用し、弁体の外周に形成されたネジと前記バルブボディの内周に形成されたネジとが螺合しているときには弁体を回転させながら直線移動させ、両ネジの螺合が解除されているときには弁体を直線移動させるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の開閉バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164164(P2010−164164A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8334(P2009−8334)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】