説明

開閉式噴出ヘッド

【課題】ヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じてピン部材の開閉動作を生起させる機構に影響を与えることなく、シール性能の向上が図られた新規な開閉式噴出ヘッドを提供する。
【解決手段】本体3の内側に注出筒4を横向きに配置すると共に、この注出筒4の内側にその先端開口4eを開閉するピン6を摺動可能に配置し、このピン6の開閉動作を本体3の押し下げ及び復帰に応じて生起させる梃子部材8をジョイントとヘッド本体との間に介在させたものであって、本体3は、ノズル4を配置する空間3eと梃子機構8を配置する空間3fとを仕切る隔壁3cを有し、この隔壁3cから、ノズル4の内周面4fを密閉保持する周壁9を延在させ、この周壁9と共に、ノズル4を配置する空間3eを形作る内周面5で、ノズル4の内周面4f及び外周面4gを密閉保持してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内側に配置したポンプを駆動させる操作片として機能すると共に、そのポンプ動作に伴う内容物の注出を可能とし、併せて、注出後における内容物の垂れや詰まりを生じにくい開閉式噴出ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
噴出ヘッドには、液切れの悪さや内容物の固化を防止することを目的として、ポンプにジョイントを連結すると共に、このジョイントに対してヘッド本体を上下動可能に連結する一方、このヘッド本体の内側に注出筒を配置すると共に、この注出筒の内側に先端開口を開閉するピン部材を摺動可能に配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる梃子機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式の噴出ヘッド(以下、「開閉式噴出ヘッド」という)が存在する(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2008−6410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の開閉式噴出ヘッドは、ヘッド本体の内側に注出筒を配置するとき、注出筒を形作る内周面で当該注出筒の外周面を密閉保持しているのみだが、この注出筒の外周面を保持する内周面はヘッド本体と共に比較的に肉厚の部位で形作られるため、当該部位を成形後にヒケが生じると、内容物に対するシール性能(密閉性能)の低下を免れ得ない。
【0004】
また、こうした開閉式噴出ヘッドでは、ヘッド本体とジョイントとの間に梃子機構等を介在させ、こうした機構でピン部材の動作を制御している。このため、内部構造が複雑であることから、かかる機構の動作に影響を与えることなく、シール性能を向上させることが望ましい。
【0005】
本発明の目的とするところは、ヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じてピン部材の開閉動作を生起させる機構がジョイントとヘッド本体との間に介在しても当該機構に影響を与えることなく、シール性能の向上が図られた新規な開閉式噴出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の内側に配置したポンプに連結されるジョイントと、このジョイントに対して上下動可能に連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプを駆動させるヘッド本体とを有し、このヘッド本体の内側に注出筒を横向きに配置すると共に、この注出筒の内側に当該注出筒の先端開口を開閉するピン部材を摺動可能に配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式噴出ヘッドであって、
ヘッド本体は、注出筒を配置する空間と前記機構を配置する空間とを仕切る隔壁を有し、
この隔壁から、注出筒の内周面を密閉保持する周壁を延在させ、
この周壁と共に、注出筒を配置する空間を形作る内周面で、
注出筒の内周面及び外周面を密閉保持してなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、ピン部材の摺動部位とヘッド本体の隔壁との間に、ピン本体を初期位置に復帰させるための弾性部材を介在させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ヘッド本体に注出筒を配置したとき、この注出筒を配置する空間とヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じてピン部材の開閉動作を生起させる機構を配置する空間とを仕切る隔壁から、注出筒の内周面を密閉保持する周壁を延在させることで、注出筒の内周面を密閉保持してなるから、梃子機構等の機構を用いることでヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じてピン部材の開閉動作を生起させても、当該機構の動作には何ら影響を与えない。
【0009】
しかも、かかる構成によれば、上記周壁と共に、注出筒を配置する空間を形作る内周面で、注出筒の内周面及び外周面を密閉保持してなるため、注出筒の内周面又は外周面のみをシールしたときに比べて、注出筒とヘッド本体との間のシール性能が向上する。
【0010】
従って、本発明によれば、ヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じてピン部材の開閉動作を生起させる機構に影響を与えることなく、シール性能の向上が図られた新規な開閉式噴出ヘッドを提供することができる。
【0011】
特に、本発明によれば、ピン部材の摺動部位とヘッド本体の隔壁との間は、シール性能の高い密閉空間となるため、この密閉空間内に、ピン本体を初期位置に復帰させるための弾性部材を介在させれば、弾性部材が内容物に触れることなく、弾性部材の耐久性能が高まるため、シール性能の向上の利点を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第一の形態である開閉式噴出ヘッド1の初期状態を側面から示す縦断面図である。また、図2及び図3はそれぞれ、図1のX−X断面図及び図2のY−Y断面図である。
【0014】
図1にて、符号2は、容器20の内側に配置したポンプPに連結されるジョイントである。ジョイント2は、ステムSを介してポンプPに通じる通路が形成され、軸線OYに沿って起立する上筒部2aを有する。ポンプPは、容器20の内側に配置される既存のプランジャポンプであり、ステムSの押し下げ及び復帰の繰り返しにより、容器20の内容物を圧送する。なお、ポンプPは、容器20の口部21にリングキャップ30を介して固定されている。
【0015】
符号3は、ジョイント2の上筒部2aに連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプPを駆動させるヘッド本体である。ヘッド本体3は、その外観形状が、使用者が押し下げの際に使用する天壁3aと、この天壁3aの外縁から垂下する外周部3bとで形作られている。
【0016】
また、ヘッド本体3は、その内側に、天壁3aから垂下する隔壁3cと、この隔壁3cから前方に向かって延在し外周部3bに繋がる隔壁3dとを有し、これら隔壁3c,3dで取り囲まれた領域内に、ヘッド本体3の前方に開口する筒状の凹部をなす流路空間3eが形成されている。
【0017】
また、隔壁3cは、ヘッド本体3の外周部3bとの間に、後述の梃子機構8の配置空間たる副室3fを形成する。副室3fは、隔壁3cに形成された貫通孔3gを通して流路空間3eに通じる。
【0018】
また、ヘッド本体3は、隔壁3dから垂下する下筒部3hを有し、この下筒部3hの内側には、流路空間3eに通じる通路が形成されている。また、下筒部3hの内側には、ジョイント2の上筒部2aを摺動可能に嵌合させることができる。これにより、ヘッド本体3は、その下筒部3hとジョイント2の上筒部2aとの間の密閉状態を維持しつつ、ジョイント2の上筒部2aに対して軸線OYに沿って上下方向に摺動させることができる。
【0019】
符号4は、流路空間3e内に横向きに配置されるノズル(注出筒)である。ノズル4は、周壁4aを有し、その内側に貫通孔としてなる注出路4bを形作る。
【0020】
符号5は、ヘッド本体3の流路空間3eを形作る内周面である。この内周面5には、その前側に、ヘッド本体3の軸線OX周りに沿って形成される環状の凹部5aが設けられている。この凹部5aは、ノズル4の外周面4gに形成された環状突起4hと嵌合し、ヘッド本体3にノズル4を抜け止め保持すると共に、全周に亘って密着させることで、当該外周面4gを密閉保持している。なお、ノズル4に形成される環状突起4hは、必ずしも連続して形成する必要はなく、断続的に形成される突起又はリブに置き換えることも可能であり、さらにはヘッド本体3とノズル4とに形成される上述した凹凸関係を逆転して配置することも可能である。
【0021】
ノズル4の外周面4gは、その後端側に、軸線OX周りに沿って突出する環状の隆起部4cを形成し、この隆起部4cを、ヘッド本体3の内周面5に全周に亘って密着させることで当該外周面4gの後端側を密閉保持されている。これにより、ヘッド本体3とノズル4との間に形成される内容物の通路は、実質、仕切られた流路空間3eとなる。
【0022】
更に、ノズル4の周壁4aには、その軸線OX周りに間隔を空けて複数の開孔4dが形成されている。これにより、ノズル4の内側に形成された注出路4bは、開孔4dを通してヘッド本体3の仕切られた流路空間3eに通じる。なお、開孔4dは、必ずしも複数形成する必要はなく、少なくとも1つ形成されていればよい。
【0023】
符号6は、注出路4b内に配置され、ノズル4の先端開口たる注出口4eを開閉するノズルピン(ピン部材)である。ノズルピン6は、ノズルピン6と一体に設けられた、摺動部位たる環状のピストン6aを有し、このピストン6aを介して注出路4b内に摺動可能に保持されている。
【0024】
また、ピストン6aと隔壁3cとの間には、スプリング(弾性部材)7が介在する。これにより、ノズルピン6は、スプリング7の付勢力(弾性力)により、図1に示すように、注出口4eを閉じた状態を初期位置とする一方、スプリング7の付勢力(弾性力)に抗して移動させることで、注出口4eを開放することができる。
【0025】
符号8は、ヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン4の開閉動作を生起させる梃子機構である。梃子機構8は、図1に示すように、ヘッド本体3の隔壁3d下側に固定保持される基部8aと、レバー8bとを有する。
【0026】
レバー8bは、基部8aに回転可能に保持される軸部8cを有し、ヘッド本体3の内側で揺動させることができる。また、軸部8cには、図2等に示すように、ジョイント2に向かって二股に分かれて延在し、ジョイント2に接触する2つの脚部8dと、ノズルピン6に向かって延在するアーム8eとが一体に形成されている。
【0027】
アーム8eは、ヘッド本体3の副室3f内に配置され、その先端には、貫通孔3gを通して突出したノズルピン6の後端6bを、自由度をもって嵌合させる切欠8fが形成されている。
【0028】
これにより、ヘッド本体3の押し下げる前の状態にあっては、ノズルピン6は、スプリング7の付勢力によって依然、注出口4eを密閉しているが、ヘッド本体3が押し下げられると、レバー8bが軸部8cを基点に後傾することで、スプリング7の付勢力に抗してノズルピン6を後退させ、注出口4eを外界に開放する。
【0029】
これに対し、ヘッド本体3の押し下げを解除すると、スプリング7の付勢力によってノズルピン6が注出口4eに向かって前進するため、レバー8bも軸部8cを基点に初期位置に復帰するように前傾するため、脚部8dを介してヘッド本体3を押し上げる。即ち、ヘッド本体3の押し下げを解除すると、ノズルピン6が初期位置に復帰することで、注出口4eを再度密閉すると共に、ヘッド本体3も、ジョイント2に対して初期位置に復帰する。
【0030】
従って、ジョイント2とヘッド本体3との間に梃子機構7を介在させることによって、ヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン6の開閉動作を生起させることができる。
【0031】
符号9は、隔壁3cから軸線OXに沿って注出口4eに向かって一体に延在する周壁である。この周壁9は、その外周面9aがノズル4の内周面4fのうち、その後端側に対して全周に亘って密着して当該内周面4fの後端側を密閉保持する。これにより、ノズル4の内周面4f及び外周面4gは、ヘッド本体3の内周面5及び周壁9の外周面9aで密閉保持されることになる。
【0032】
本発明は、ヘッド本体3にノズル4を配置したとき、このノズル4を配置する空間3eと梃子機構8を配置する空間3fとを仕切る隔壁3cから、ノズル4の内周面4fを密閉保持する周壁9を延在させることで、ノズル4の内周面4fを密閉保持してなるから、梃子機構8を用いることでヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン6の開閉動作を生起させても、梃子機構8の動作には何ら影響を与えない。
【0033】
しかも、かかる構成によれば、上記周壁9と共に、ノズル4を配置する空間3fを形作る内周面5で、ノズル4の内周面4f及び外周面4gを密閉保持してなるため、ノズル4の内周面4f又は外周面4gのみをシールしたときに比べて、ノズル4とヘッド本体3との間のシール性能が向上する。
【0034】
従って、本発明によれば、ヘッド本体3の押し下げ及び復帰に応じてノズルピン6の開閉動作を生起させる梃子機構8に影響を与えることなく、シール性能の向上が図られた新規な開閉式噴出ヘッドを提供することができる。
【0035】
特に、本形態によれば、ノズルピン6のピストン6aとヘッド本体3の隔壁3cとの間は、シール性能の高い密閉空間となるため、同形態の如く、この密閉空間内に、ノズルピン6を初期位置に復帰させるためのスプリング7を介在させれば、スプリング7が内容物に触れることなく、スプリング7の耐久性能が高まるため、シール性能の向上の利点を有効に活用することができる。
【0036】
図4は、本発明の第二の形態である開閉式噴出ヘッド1の変形例を、その初期状態で側面から示す縦断面図である。なお、以下の説明において、第一の形態と同一部分は、同一符号をもって、その説明を省略する。
【0037】
本形態では、ノズルピン6の内側に、その後端に開口する凹部6cを形成し、この凹部6cにスプリング7を配している。これにより、ノズルピン6は、同図に示すように、スプリング7を介してヘッド本体3の後端側内周面3b1に弾支されている。
【0038】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、用途に応じて様々に設計変更することができる。例えば、本発明である開閉式噴出ヘッドは、本形態のような手動式ポンプを備えた容器に限らず、エアゾール容器にも適用することができる。加えて、各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、シャンプーやリンス、液体石鹸、化粧料等の内容物を入れる容器は勿論のこと、内容物を入れた様々な容器に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第一の形態である開閉式噴出ヘッドの初期状態を側面から示す縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】図2のY−Y断面図である。
【図4】本発明の第二の形態である開閉式噴出ヘッドの初期状態を側面から示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 開閉式噴出ヘッド
2 ジョイント
3 ヘッド本体
4 ノズル(注出筒)
5 ヘッド本体内でノズルを配置する空間を形作る内周面
6 ノズルピン
7 スプリング(弾性部材)
8 梃子機構
8a 梃子機構基部
8b レバー
9 周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に配置したポンプに連結されるジョイントと、このジョイントに対して上下動可能に連結され、その押し下げ及び復帰によりポンプを駆動させるヘッド本体とを有し、このヘッド本体の内側に注出筒を横向きに配置すると共に、この注出筒の内側に当該注出筒の先端開口を開閉するピン部材を摺動可能に配置し、このピン部材の開閉動作をヘッド本体の押し下げ及び復帰に応じて生起させる機構をジョイントとヘッド本体との間に介在させた開閉式噴出ヘッドであって、
ヘッド本体は、注出筒を配置する空間と前記機構を配置する空間とを仕切る隔壁を有し、
この隔壁から、注出筒の内周面を密閉保持する周壁を延在させ、
この周壁と共に、注出筒を配置する空間を形作る内周面で、
注出筒の内周面及び外周面を密閉保持してなることを特徴とする開閉式噴出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、ピン部材の摺動部位とヘッド本体の隔壁との間に、ピン本体を初期位置に復帰させるための弾性部材を介在させたことを特徴とする開閉式噴出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104922(P2010−104922A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280247(P2008−280247)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】