説明

間仕切壁を用いた通気システム

【課題】間仕切壁を挟んで隣接する二室について、相互間における空気の流通により室内環境の好適化を図る。
【解決手段】建物10において第1室31と第2室32とは間仕切壁30により仕切られている。間仕切壁30において、一対の壁パネル間には通気通路43が形成されている。一対の壁パネルにはそれぞれ、天井付近に開口する上開口部44,46と床付近に開口する下開口部45,47とが設けられており、第1室31側の上開口部44と第2室32側の下開口部47とが通気通路43を介して連通される第1連通状態と、第1室31側の下開口部45と第2室32側の上開口部46とが通気通路43を介して連通される第2連通状態との2状態について、いずれかの状態となるよう通気通路43における通気経路が切り替えられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間仕切壁を用いた通気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては一般に複数の部屋が設けられており、それらは間仕切壁により仕切られている。この場合、間仕切壁を挟んで隣接する二室について、この間仕切壁に設けた開口部(窓部)を通じて相互間で空気の出し入れを行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、間仕切壁を挟んだ両室で空気を出し入れする際にこれら両室での空調を行うことも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−129837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既存の技術では、間仕切壁の開口部(窓部)を通じて相互間で空気の出し入れが行われる場合に、その空気の出し入れが基本的に同じ高さ位置で行われるものとなっており、それは単に部屋内の床付近や天井付近の空気を、隣接する別の部屋の床付近や天井付近に横流ししているに過ぎない。そのため、仮に一方の部屋において床付近に比較的冷たい空気が溜まっており、部屋内空調の観点から望ましくない状況にあっても、それを解消することが困難なものとなっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、間仕切壁を挟んで隣接する二室について、相互間における空気の流通により室内環境の好適化を図ることができる間仕切壁を用いた通気システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明は、
建物内の屋内空間を第1室と第2室とに仕切る間仕切壁を備え、該間仕切壁を用いた通気システムであり、
前記間仕切壁は、
対向配置される一対の壁パネルを有し、該一対の壁パネルの間には上下方向に延びる壁内通路が形成されており、
前記一対の壁パネルにはそれぞれ、天井付近及び床付近に開口する天井側開口部と床側開口部とが設けられており、
前記第1室側の天井側開口部と前記第2室側の床側開口部とが前記壁内通路を介して連通される第1連通状態と、前記第1室側の床側開口部と前記第2室側の天井側開口部とが前記壁内通路を介して連通される第2連通状態との2状態について、いずれかの状態となるよう前記壁内通路における通気経路を切り替える通気経路切替手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、間仕切壁を通じて第1室と第2室との両室間の通気が可能となる。この場合特に、通気経路切替手段の操作により第1連通状態及び第2連通状態のいずれかの状態とすることにより、
一方の室の天井側開口部から他方の室の床側開口部への空気の流通、
一方の室の床側開口部から他方の室の天井側開口部への空気の流通、
のいずれかを行わせることが可能となる。かかる構成では、一方の室で天井付近に暖気が溜まっている場合に、その暖気を他方の室の床付近に送り出すことが可能となる。また、一方の室で床付近に冷気が溜まっている場合に、その冷気を他方の室の天井付近に送り出すことが可能となる。その結果、間仕切壁を挟んで隣接する二室について、相互間における空気の流通により室内環境の好適化を図ることができる。
【0009】
第2の発明では、前記間仕切壁は、前記壁内通路内に気流を生じさせる気流発生手段を備え、前記気流発生手段は、前記壁内通路内において上向きに気流を生じさせる状態と下向きに気流を生じさせる状態とを切替可能である。
【0010】
上記構成によれば、気流発生手段により、壁内通路内において上向き及び下向きのいずれかの気流を生じさせることができる。これにより、第1室と第2室との両室間の通気を積極的に実施できる。この場合、壁内通路内に強制的に上昇気流又は下降気流を生じさせることにより、壁内通路を通過させる空気が冷気(重い空気)か暖気(軽い空気)かにかかわらず、第1室と第2室との両室間での通気を任意に実施することができる。
【0011】
第3の発明では、少なくとも前記第1室には、空調装置から供給される空調空気を吹き出す吹出口が設けられており、前記第1室及び前記第2室のうち前記第1室だけで前記空調空気が吹き出されている空気吹出状態において、前記通気経路切替手段により前記第1連通状態と前記第2連通状態とのいずれかの状態への切替を行わせる切替制御を実施するとともに、前記気流発生手段により前記壁内通路内での気流の向きを制御する気流制御を実施する第1制御手段と、同じく空気吹出状態において、前記第2室の出入口用の建具に設けられた通気開口を開閉するための通気開閉手段を制御する第2制御手段と、を備える。
【0012】
要するに、第1室にのみ空調用の吹出口が設けられている場合や、第1室及び第2室の両方に空調用の吹出口が設けられているがそのうち第1室でのみ空調空気が吹き出される場合がある。このうち前者のような場合は、例えば、建物の改築により間仕切壁を増設し一室を二室に変更する場合に生じ得ると考えられる。こうした事態を想定すると、空調空気が吹き出されていない第2室について通気が好適に実施できないことが懸念される。この点、第3の発明では、第1室だけで吹出口から空調空気が吹き出されている空気吹出状態において、通気経路切替手段による切替制御と気流発生手段による気流制御とが実施されるとともに、吹出口から空調空気が吹き出されていない第2室の建具について通気開閉手段により通気開口が開閉される。かかる場合、第2室(空調空気の吹出が行われていない室)では、間仕切壁を介して第1室(空調空気が吹き出されている室)から空気が導入されるとともに、建具の通気開口を介して室内空気が室外に排出され、第1室→間仕切壁→第2室→建具の通気開口といった順序での空気の流れにより、第2室での通気を好適に実施できる。
【0013】
第4の発明では、前記建具には、前記通気開口として、上下に離間して上側通気開口と下側通気開口とが設けられており、前記第1室において前記吹出口から空調空気として冷房用空気が吹き出されている場合に、前記第1制御手段は、前記第1室の天井側開口部から前記第2室の床側開口部への気流が発生するように前記切替制御と前記気流制御とを実施し、前記第2制御手段は、前記上側通気開口を開放、前記下側通気開口を閉鎖するよう前記通気開閉手段を制御する。
【0014】
上記構成によれば、夏場等における第1室の冷房時において、第1室内の天井付近の比較的暖かい空気が間仕切壁を介して第2室に送出される。これにより、第1室において冷房を効率良く実施できる。また、第2室では、第2室内の空気が建具の上側通気開口を介して室外に排出されるため、第2室において暖気が溜まりにくくすることができる。かかる場合、第2室には第1室から順次空気が送られてくるため、第2室についての冷房も可能となる。
【0015】
第5の発明では、前記壁内通路には、該壁内通路を通過する空気を冷却する冷却手段が設けられている。
【0016】
上記構成によれば、壁内通路を空気が通過する際、その空気が冷却手段により冷却される。したがって、第1室の冷房時において、第1室側の天井側開口部から第2室側の床側開口部に流れる空気が比較的暖かい空気であっても、それを冷却した上で第2室に供給することができる。これは、第1室に加えて第2室を冷房する場合に有利な構成である。
【0017】
第6の発明では、前記建具には、前記通気開口として、上下に離間して上側通気開口と下側通気開口とが設けられており、前記第1室において前記吹出口から空調空気として暖房用空気が吹き出されている場合に、前記第1制御手段は、前記第1室の床側開口部から前記第2室の天井側開口部への気流が発生するように前記切替制御と前記気流制御とを実施し、前記第2制御手段は、前記上側通気開口を閉鎖、前記下側通気開口を開放するよう前記通気開閉手段を制御する。
【0018】
上記構成によれば、冬場等における第1室の暖房時において、第1室内の床付近の比較的冷たい空気が間仕切壁を介して第2室に送出される。これにより、第1室において暖房を効率良く実施できる。また、第2室では、第2室内の空気が建具の下側通気開口を介して室外に排出されるため、第2室において冷気が溜まりにくくすることができる。かかる場合、第2室には第1室から順次空気が送られてくるため、第2室についての暖房も可能となる。
【0019】
第7の発明では、前記壁内通路には、該壁内通路を通過する空気を加熱する加熱手段が設けられている。
【0020】
上記構成によれば、壁内通路を空気が通過する際、その空気が加熱手段により加熱される。したがって、第1室の暖房時において、第1室側の床側開口部から第2室側の天井側開口部に流れる空気が比較的冷たい空気であっても、それを加熱した上で第2室に供給することができる。これは、第1室に加えて第2室を暖房する場合に有利な構成である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】建物の間取り例を示す間取り図。
【図2】間仕切壁及びドアの詳細な構成を示す断面図。
【図3】間仕切壁の正面図。
【図4】巾木の取付構造を示す斜視図。
【図5】間仕切壁の各機能を示す構成図。
【図6】夏季と冬季における間仕切壁とドアとの制御状態を説明するための図。
【図7】通気制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、建物の屋内空間において当初は1つであった所定の部屋を、後付けの間仕切壁により2つに分割する場合を例示して説明する。図1は、建物の間取り例を示す間取り図であり、(a)は間仕切壁を設置する前の間取りを、(b)は間仕切壁を設置した後の間取りを示している。
【0023】
図1(a)に示すように、建物10は、居室11と居室12とを有しており、居室11には窓13,14が設けられ、居室12には窓15が設けられている。居室11,12は、ドア開口16,17を介して廊下20に通じている。ドア開口16,17にはそれぞれドア18,19が取り付けられている。廊下20は、階段21やトイレ22に通じる空間となっている。トイレ22において入口にはドア23が設けられ、トイレ22内には換気扇24が設けられている。
【0024】
建物10には、屋内空間を空調するための空調装置(図1では略す)が設けられており、その空調装置からの空調空気を屋内空間に吹き出すための吹出口(給気口)として、居室11には吹出口25が設けられ、居室12には吹出口26が設けられている。
【0025】
本実施形態の建物10に設けられている空調装置は、建物の同一階の屋内空間について一括して空調を行うものであり、空調装置から供給される空調空気(冷房空気や暖房空気)が各吹出口25,26から各空間に給気として供給される。また、例えば廊下20には、還気を取り込むための還気口が設けられており、その還気口を介して空調装置に還気が取り込まれる。空調装置では、還気として取り込んだ空気から給気を生成し、それを各部屋に供給する。
【0026】
図1(b)では、図1(a)の構成に対して、リフォーム(改築)により居室11に間仕切壁30が取り付けられており、この間仕切壁30により居室11が2つの部屋(以下、第1室31、第2室32という)に分割されている。この場合、第1室31には、窓13とドア開口16とが設けられており、ドア開口16を通じて第1室31への出入りが可能となっている。また、第2室32には、窓14と、新たに設けられたドア開口27とが設けられており、ドア開口27を通じて第2室32への出入りが可能となっている。ドア開口27にはドア28が設けられている。
【0027】
上記のとおり居室11が第1室31と第2室32とに分割された場合、第1室31には空調用の吹出口25が設けられているが、第2室32には空調用の吹出口が設けられていないこととなる。そこで本実施形態では、間仕切壁30を使って第1室31から第2室32への通気を積極的に行わせ、それにより第2室32の空調を行うこととしている。特に本実施形態では、第1室31及び第2室32を仕切る間仕切壁30と、第2室32の出入口に設けられたドア28に、それぞれ電気的に制御される通気機能を持たせ、空調装置による冷暖房の情報等に基づいて、間仕切壁30及びドア28を制御対象として通気制御を実施する。以下、間仕切壁30及びドア28における通気機能について詳しく説明する。
【0028】
図2は、間仕切壁30及びドア28の詳細な構成を示す断面図である。まず間仕切壁30について説明する。
【0029】
図2において、間仕切壁30は、対向配置される一対の壁パネル41,42を有し、その一対の壁パネル41,42の間に通気通路43が形成されている。通気通路43は上下方向に延びる壁内空間であり、この通気通路43にて上向き又は下向きの気流が生じるものとなっている。各壁パネル41,42には、それぞれ天井面付近及び床面付近に複数の開口部が設けられている。すなわち、各壁パネル41,42のうち第1室31側の壁パネル41には、上開口部44と下開口部45とが設けられ、第2室32側の壁パネル42には、上開口部46と下開口部47とが設けられている。
【0030】
開口部44,45の位置を図3で説明すると、第1室31側の壁パネル41には、天井面との境界部に沿って上開口部44が横長に設けられ、床面との境界部に沿って下開口部45が横長に設けられている。第2室32側の壁パネル42についても同様の構成である。なお、各開口部の幅や通気通路43の幅は、通気のために流通させたい空気量に応じて定められればよい。図3の構成では、各開口部や通気通路43が左右方向にてほぼ中央部に1カ所のみ設けられているが、これらが中央部以外に設けられている構成、間仕切壁30の横幅全体に設けられている構成、複数箇所に設けられている構成、上開口部と下開口部との横幅や数が異なる構成等を採用することも可能である。
【0031】
下開口部45,47について具体的には、図2に示すように、床面上に設けられた起立部51と、その外側に対向配置される巾木52とが設けられており、これら起立部51と巾木52との間に形成された隙間が下開口部45,47における空気通路となっている。また、巾木52の取り付けについてより詳細には、図4に示すように、壁パネル41,42の下端部には、上方に延びるフックを有する係止具53が取り付けられており、この係止具53のフックに、巾木52の裏面側上部に形成された被係止部52aが係止されることで、壁パネル41,42の下端部に巾木52が取り付けられるようになっている。この場合、巾木52は、係止具53に係止された状態から上方に持ち上げることで容易に取り外しが可能となっている。
【0032】
下開口部45,47においては、図示のとおり壁パネル41,42と起立部51とが離れた状態となっているが、下開口部45,47以外の部位において壁パネル41,42の下端部が起立部51に支持される構成であってもよい。この場合、起立部51が、間仕切壁30の下端部を支持する支持部材として機能する。なお、図示は略すが、間仕切壁30の上端側にも、その上端部を支持する支持部材が別途設けられている。
【0033】
また、間仕切壁30には、2つの上開口部44,46のうちいずれか1つのみを通気通路43に連通させるものであって、その連通を切り替える上側流路切替手段としての流路切替装置55が設けられるとともに、2つの下開口部45,47のうちいずれか1つのみを通気通路43に連通させるものであって、その連通を切り替える下側流路切替手段としての流路切替装置56が設けられている。流路切替装置55は、上端部が天井面に固定されたベース部55aと、その下端部に設けられた可動仕切板55bとを有している。ベース部55a及び可動仕切板55bは、いずれも上開口部44,46の長手方向における幅寸法と同じ長さ(又はそれ以上の長さ)を有する長尺材よりなり、間仕切壁30の厚さ方向においてベース部55aを挟んで両側に可動仕切板55bがそれぞれスライド移動可能となっている。可動仕切板55bがスライド移動することで、上開口部44,46のうち上開口部44のみを通気通路43に連通させる状態(図示の状態)と、上開口部46のみを通気通路43に連通させる状態とが切り替えられるようになっている。
【0034】
また、流路切替装置56は、下端部が床面に固定されたベース部56aと、その上端部に設けられた可動仕切板56bとを有している。ベース部56a及び可動仕切板56bは、いずれも下開口部45,47の長手方向における幅寸法と同じ長さ(又はそれ以上の長さ)を有する長尺材よりなり、間仕切壁30の厚さ方向においてベース部56aを挟んで両側に可動仕切板56bがそれぞれスライド移動可能となっている。可動仕切板56bがスライド移動することで、下開口部45,47のうち下開口部45のみを通気通路43に連通させる状態(図示の状態)と、下開口部47のみを通気通路43に連通させる状態とが切り替えられるようになっている。
【0035】
かかる場合、流路切替装置55,56は、第1室31側の上開口部44と第2室32側の下開口部47とが通気通路43を介して連通される「第1連通状態」と、第1室31側の下開口部45と第2室32側の上開口部46とが通気通路43を介して連通される「第2連通状態」との2状態について、いずれかの状態となるよう通気経路を切り替えるものとなっている。また、流路切替装置55,56は、各壁パネル41,42の間にベース部55a,56aが設けられるものであり、かかる構成によれば、一方の室から他方の室への光漏れを抑制できる効果や、二室間における遮音効果が期待できる。
【0036】
通気通路43内には、通気ファン61が設けられている。通気ファン61は、通気通路43内に上向き及び下向きのいずれかの気流を生じさせるための気流発生手段である。通気ファン61は、通気通路43内において上向きの気流(上昇気流)を生じさせる状態と下向きの気流(下降気流)を生じさせる状態とを切り替えられるものとなっている。
【0037】
また、間仕切壁30は、通気通路43内を通過する空気に対して加熱を行う加熱機能や、同空気に対して冷却を行う冷却機能、同空気に対して加湿を行う加湿機能を有しており、その具体的な構成を図5により説明する。図5には、上記の各機能を具体化するための各種アクチュエータと、そのアクチュエータに関する電気的な制御系統とが示されている。
【0038】
図5において、通気通路43内には、加熱手段としての加熱装置62と、冷却手段としての冷却装置63と、加湿手段としての加湿装置64とが設けられている。加熱装置62は、例えば熱線ヒータにより構成されている。冷却装置63は、例えばペルチェ素子により構成されている。冷却装置63には、冷却により生じたドレン水や廃熱を排出するための排出部が設けられている。冷却装置63をペルチェ素子により構成することで、騒音の発生がなく、しかも温度の微調整が可能な冷却装置を実現できる。加湿装置64は、例えばミスト発生部を有するものとなっている。加湿装置64からミスト(霧)が噴出されると、その一部が気化し周囲温度を下げることになるため、この加湿装置64は冷却手段としても機能する。その他、通気通路43内には、同通路内の温度を検出する温度センサ65と、同通路内の湿度を検出する湿度センサ66とが設けられている。
【0039】
また、図5に示す構成では、各壁パネル41,42の下開口部45,47に、空気清浄用のフィルタ68が配設されている。このフィルタ68は、壁パネル41,42と流路切替装置56(ベース部56a)との間の隙間を利用して設けられている。空気清浄手段としてプラズマ式又はイオン式の空気清浄機を用い、この空気清浄機を通気通路43に設けることも可能である。
【0040】
次に、第2室32におけるドア28の通気機能について説明する。図2において、ドア28は、図示しない回動軸を中心に回動する回動式ドアである。ドア28には上下2つの開口部71,72が設けられており、それら各開口部71,72には、それぞれ可動スラット73,74が設けられている。可動スラット73,74は、図示しない駆動部(モータ)により電気的に開閉駆動されるものであり、コントローラ80からの制御信号に基づいて開閉いずれかの状態に制御される(図5参照)。なお、第2室32の出入口を開閉する開閉体(建具)として、回動式ドア(開き戸)に代えて引き戸を用いることも可能である。
【0041】
図5の説明に戻り、コントローラ80は、CPUや各種メモリ等を有する周知の演算装置であり、コントローラ80には、センサ65,66の検出信号や、建物内の各居室等に対して空調空気を供給する空調装置81からの空調実施情報が逐次入力される。この場合、第1室31に対して吹出口25から冷房空気が吹き出されているのか暖房空気が吹き出されているのかといった、空調装置81の運転状況に関する情報が、空調実施情報としてコントローラ80に入力される。また、コントローラ80には、ユーザ操作手段としての操作装置82が接続されている。操作装置82は、間仕切壁30の動作状態を制御するための各種スイッチを備えており、ユーザが各種スイッチを操作することで、その操作信号がコントローラ80に逐次入力される。
【0042】
コントローラ80は、各種の入力信号に基づいて、間仕切壁30の各アクチュエータ(流路切替装置55,56、通気ファン61、加熱装置62、冷却装置63、加湿装置64)や、ドア28の各アクチュエータ(可動スラット73,74)の駆動を制御し、間仕切壁30及びドア28を使っての通気制御を実施する。特に、コントローラ80は、第1室31に対して吹出口25から空調空気が吹き出されている状態において、流路切替装置55,56により「第1連通状態」と「第2連通状態」とのいずれかの状態への切替を行わせる切替制御を実施するとともに、通気ファン61により通気通路43内での気流の向きの制御を実施し、さらにドア28に設けられた可動スラット73,74の開閉制御を実施する。
【0043】
間仕切壁30とドア28による通気制御に関して、夏季と冬季とでは制御内容が異なっており、その詳細を図6を用いて説明する。図6(a)は、夏季において吹出口25から空調空気として冷房用空気が吹き出される場合を示し、(b)は、冬季において吹出口25から空調空気として暖房用空気が吹き出される場合を示している。
【0044】
図6(a)では、第1室31が冷房されている状態で、第1室31側の上開口部44と第2室32側の下開口部47とが通気通路43を介して連通された状態、すなわち「第1連通状態」となっており、通気ファン61は下降気流を生じさせるように駆動されている。また、第2室32のドア28において、可動スラット73,74の制御により、上側の開口部71が開放、下側の開口部72が閉鎖されている。
【0045】
この場合、第1室31内の天井付近の比較的暖かい空気が間仕切壁30を介して第2室32に送出される。これにより、第1室31において冷房を効率良く実施できる。また、第2室32では、第2室32内の空気がドア28の上側の開口部71を介して廊下20に順次排出されるため、第2室32において暖気が溜まりにくくすることができる。かかる場合、第2室32には第1室31から空気が順次送られてくるため、第2室32についての冷房も実施できる。
【0046】
また、図6(a)の状態において、冷却装置63により通気通路43内が冷却されるとよい。この場合、通気通路43内を空気が通過する際、その空気が冷却装置63により冷却されるため、第1室31側の上開口部44から第2室32側の下開口部47に流れる空気が比較的暖かい空気であっても、それを冷却した上で第2室32に空気を供給することができる。
【0047】
他方、図6(b)では、第1室31が暖房されている状態で、第1室31側の下開口部45と第2室32側の上開口部46とが通気通路43を介して連通された状態、すなわち「第2連通状態」となっており、通気ファン61は上昇気流を生じさせるように駆動されている。また、第2室32のドア28において、可動スラット73,74の制御により、上側の開口部71が閉鎖、下側の開口部72が開放されている。
【0048】
この場合、第1室31内の床付近の比較的冷たい空気が間仕切壁30を介して第2室32に送出される。これにより、第1室31において暖房を効率良く実施できる。また、第2室32では、第2室32内の空気がドア28の下側の開口部72を介して廊下20に順次排出されるため、第2室32において冷気が溜まりにくくすることができる。かかる場合、第2室32には第1室31から空気が順次送られてくるため、第2室32についての暖房も実施できる。
【0049】
また、図6(b)の状態において、加熱装置62により通気通路43内が加熱されるとよい。この場合、通気通路43内を空気が通過する際、その空気が加熱装置62により加熱されるため、第1室31側の下開口部45から第2室32側の上開口部46に流れる空気が比較的冷たい空気であっても、それを加熱した上で第2室32に空気を供給することができる。
【0050】
次に、間仕切壁30及びドア28に関する制御内容を説明する。図7は、通気制御の処理手順を示すフローチャートであり、本処理はコントローラ80により所定周期で繰り返し実行される。
【0051】
図7において、ステップS11では、今現在、吹出口25から空調空気が吹き出されているか否かを判定する。そして、YESの場合にステップS12に進み、吹出中の空調空気が冷房用空気か暖房用空気かを判定する。冷房用空気である場合、ステップS21に進み、暖房用空気である場合、ステップS31に進む。
【0052】
ステップS21に進んだ場合、流路切替装置55,56を制御することで、通気通路43の連通経路を第1連通状態(第1室31側の上開口部44と第2室32側の下開口部47とが連通された状態)とする。続くステップS22では、通気ファン61を制御することで、通気通路43内に下降気流を発生させる。ステップS23では、冷却装置63をオンして通気通路43内を冷却する。また、同ステップS23では、加湿装置64を適宜オンしてミストを発生させる。その後、ステップS24では、ドア28の可動スラット73,74を制御することで、上側の開口部71を開放、下側の開口部72を閉鎖させる。
【0053】
また、ステップS31に進んだ場合、流路切替装置55,56を制御することで、通気通路43の連通経路を第2連通状態(第1室31側の下開口部45と第2室32側の上開口部46とが連通された状態)とする。続くステップS32では、通気ファン61を制御することで、通気通路43内に上昇気流を発生させる。ステップS33では、加熱装置62をオンして通気通路43内を加熱する。また、同ステップS33では、加湿装置64を適宜オンしてミストを発生させる。その後、ステップS34では、ドア28の可動スラット73,74を制御することで、上側の開口部71を閉鎖、下側の開口部72を開放させる。
【0054】
なお、通気ファン61や加熱装置62、冷却装置63、加湿装置64の制御に際し、温度センサ65や湿度センサ66の検出値に基づくフィードバック制御を実施するとよい。この場合、通気通路43内の温度や湿度の目標値を、空調装置81の運転状況(冷暖房、空調強さ等の情報)や外気温に基づいて設定するとともに、それら目標値に対する検出値の偏差を算出し、その偏差を解消するようにしてフィードバック制御を実施するとよい。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0056】
間仕切壁30において、第1室31側の上開口部44と第2室32側の下開口部47とが通気通路43を介して連通される「第1連通状態」と、第1室31側の下開口部45と第2室32側の上開口部46とが通気通路43を介して連通される「第2連通状態」との2状態についてそれら両状態の切替が行われる構成とした。これにより、間仕切壁30を通じて第1室31と第2室32との両室間の通気が可能となる。また、一方の室で天井付近に暖気が溜まっている場合には、その暖気を他方の室の床付近に送り出すことが可能となり、一方の室で床付近に冷気が溜まっている場合には、その冷気を他方の室の天井付近に送り出すことが可能となる。その結果、間仕切壁30を挟んで隣接する二室について、相互間における空気の流通により室内環境の好適化を図ることができる。
【0057】
間仕切壁30に通気ファン61を設け、通気通路43内において上昇気流を生じさせる状態と下降気流を生じさせる状態とを切替可能としたため、通気通路43を通過させる空気が冷気(重い空気)か暖気(軽い空気)かにかかわらず、第1室31と第2室32の両室間での通気を任意に実施することができる。
【0058】
各室31,32のうち第1室31だけで空調空気が吹き出されている状態において、間仕切壁30で空気流路の切替(第1連通状態と第2連通状態との切替)や壁内気流方向の切替を実施するとともに、ドア28の上下の各開口部71,72の開閉状態を制御する構成とした。これにより、第2室32(空調空気の吹出が行われていない室)では、間仕切壁30を介して積極的に第1室31(空調空気が吹き出されている室)から空気が導入されるとともに、ドア28の開口部71,72を介して室内空気が室外に排出されることになり、第1室→間仕切壁→第2室→ドア開口部といった順序での空気の流れにより第2室32での通気を好適に実施できる。
【0059】
第1室31において吹出口25から冷房用空気が吹き出されている場合に、第1室31側の上開口部44から第2室32側の下開口部47への気流が発生するように切替制御と気流制御とを実施し、さらにドア28の上側の開口部71を開放、下側の開口部72を閉鎖させるようにした。これにより、夏場等における第1室31の冷房時において、第1室31において冷房を効率良く実施できる。また、第2室32では、暖気が溜まりにくくなり、さらに間仕切壁30から供給される空気による冷房も可能となる。
【0060】
また、通気通路43内を空気が通過する際、その空気を冷却装置63により冷却する構成としたため、第1室31の冷房時において、第1室31側の上開口部44から第2室32側の下開口部47に流れる空気が比較的暖かい空気であっても、それを冷却した上で第2室32に供給することができる。これは、第1室31に加えて第2室32を冷房する場合に有利な構成である。
【0061】
第1室31において吹出口25から暖房用空気が吹き出されている場合に、第1室31側の下開口部45から第2室32側の上開口部46への気流が発生するように切替制御と気流制御とを実施し、さらにドア28の上側の開口部71を閉鎖、下側の開口部72を開放させるようにした。これにより、冬場等における第1室31の暖房時において、第1室31において暖房を効率良く実施できる。また、第2室32では、冷気が溜まりにくくなり、さらに間仕切壁30から供給される空気による暖房も可能となる。
【0062】
また、通気通路43内を空気が通過する際、その空気を加熱装置62により加熱する構成としたため、第1室31の暖房時において、第1室31側の下開口部45から第2室32側の上開口部46に流れる空気が比較的冷たい空気であっても、それを加熱した上で第2室32に供給することができる。これは、第1室31に加えて第2室32を暖房する場合に有利な構成である。
【0063】
リフォームにより間仕切壁30が設けられ、それにより第1室31と第2室32とが分割される建物では、それら両室31,32において一方にのみ吹出口が設けられていない構成があり得るが、こうした場合にも、吹出口を増やすことなく、両室31,32の空調を実現できる。
【0064】
間仕切壁30には、加湿装置64が設けられているため、第2室32の加湿も実施できる。
【0065】
間仕切壁30において下開口部45,47に空気清浄用のフィルタ68を配設したため、間仕切壁30を通過する空気の清浄化を実施できる。この場合、巾木52が取り外し可能になっている構成からすれば、フィルタ68のメンテナンスを容易に実施できる。なお、巾木52が取り外せれば、その内側の起立部51はビス抜き等により容易に取り外すことができる。
【0066】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0067】
・上記実施形態では、第1室31と第2室32とにおいて一方にのみ空調用の吹出口(吹出口25)が設けられている構成としたが、これを変更し、両方に吹出口が設けられている構成であってもよい。かかる構成では、両室31,32の吹出口から共に空調空気の吹出が可能になるが、第1室31の吹出口からのみ空調空気が吹き出されている場合に、上記のとおり間仕切壁30とドア28とを用いた通気制御を実施するとよい。
【0068】
また、第1室31のドア18にも、ドア28と同様に上下の開口部や可変スラットを設けておけば、第1室31と第2室32とを逆にした制御を実施することが可能となる。かかる場合、間仕切壁30を介して第2室32から第1室31への通気が行われることとなり、上記同様、間仕切壁30やドアによる通気制御が実施される。
【0069】
・間仕切壁30を第1連通状態及び第2連通状態のいずれかとした場合において、通気ファン61を駆動させず、屋内の自然対流により間仕切壁30を通じた両室間の通気を実施する構成であってもよい。
【0070】
・間仕切壁30の壁パネル41,42に、メンテナンス用の開口部(点検口)と、その開口部を開閉する扉体とを設けておいてもよい。この場合、間仕切壁30の内部に設置された通気ファン61等の各種アクチュエータのメンテナンスを容易に実施できる。また、加湿装置64の水補給も容易に実施できる。
【0071】
・居室を間仕切壁30により二室(第1室31、第2室32)に仕切る前の状態において、間仕切壁30が設置されると事前に想定される場所に、電源口を設けておく構成としてもよい。また、その想定場所に、間仕切壁30を固定するための固定部材を先行して配置しておき、その固定部材に電源口を設けておいてもよい。例えば、天井に電源口を設けておく構成なら、その電源口に照明装置を付けて利用するとよい。間仕切壁30の設置後は、電源口を間仕切壁30の電源口として利用できる。本構成では、間仕切壁30を事後的に設置する場合における電源の設置作業を簡易化できる。
【0072】
・間仕切壁30において、第1室31と第2室32とが常に何らかの通気経路により連通される状態ではなく、第1室31と第2室32とが完全に遮断される状態に移行できるようにしてもよい。例えば、流路切替装置55,56が、第1室31側及び第2室32側のいずれか一方を開放、他方を閉鎖するだけの構成ではなく、第1室31側及び第2室32側の両方を同時に閉鎖できる構成とする。
【0073】
・第1室31及び第2室32に人感センサを設けておき、人感センサにより検出される人の有無に基づいて、間仕切壁30やドア28による通気制御を実施する構成としてもよい。例えば、第1室31及び第2室32のうち少なくともいずれかに人がいることを条件に、上記の通気制御を実施する。
【符号の説明】
【0074】
10…建物、25…吹出口、28…ドア(建具)、30…間仕切壁、31…第1室、32…第2室、41,42…壁パネル、43…通気通路(壁内通路)、44,46…上開口部(天井側開口部)、45,47…下開口部(床側開口部)、55,56…流路切替装置(通気経路切替手段)、61…通気ファン(気流発生手段)、62…加熱装置(加熱手段)、63…冷却装置(冷却手段)、71,72…開口部(通気開口)、73,74…可動スラット(通気開閉手段)、80…コントローラ(第1制御手段、第2制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の屋内空間を第1室と第2室とに仕切る間仕切壁を備え、該間仕切壁を用いた通気システムであり、
前記間仕切壁は、
対向配置される一対の壁パネルを有し、該一対の壁パネルの間には上下方向に延びる壁内通路が形成されており、
前記一対の壁パネルにはそれぞれ、天井付近及び床付近に開口する天井側開口部と床側開口部とが設けられており、
前記第1室側の天井側開口部と前記第2室側の床側開口部とが前記壁内通路を介して連通される第1連通状態と、前記第1室側の床側開口部と前記第2室側の天井側開口部とが前記壁内通路を介して連通される第2連通状態との2状態について、いずれかの状態となるよう前記壁内通路における通気経路を切り替える通気経路切替手段と、
を備えることを特徴とする間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項2】
前記間仕切壁は、前記壁内通路内に気流を生じさせる気流発生手段を備え、前記気流発生手段は、前記壁内通路内において上向きに気流を生じさせる状態と下向きに気流を生じさせる状態とを切替可能である請求項1に記載の間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項3】
少なくとも前記第1室には、空調装置から供給される空調空気を吹き出す吹出口が設けられており、
前記第1室及び前記第2室のうち前記第1室だけで前記空調空気が吹き出されている空気吹出状態において、前記通気経路切替手段により前記第1連通状態と前記第2連通状態とのいずれかの状態への切替を行わせる切替制御を実施するとともに、前記気流発生手段により前記壁内通路内での気流の向きを制御する気流制御を実施する第1制御手段と、
同じく空気吹出状態において、前記第2室の出入口用の建具に設けられた通気開口を開閉するための通気開閉手段を制御する第2制御手段と、
を備える請求項2に記載の間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項4】
前記建具には、前記通気開口として、上下に離間して上側通気開口と下側通気開口とが設けられており、
前記第1室において前記吹出口から空調空気として冷房用空気が吹き出されている場合に、前記第1制御手段は、前記第1室の天井側開口部から前記第2室の床側開口部への気流が発生するように前記切替制御と前記気流制御とを実施し、前記第2制御手段は、前記上側通気開口を開放、前記下側通気開口を閉鎖するよう前記通気開閉手段を制御する請求項3に記載の間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項5】
前記壁内通路には、該壁内通路を通過する空気を冷却する冷却手段が設けられている請求項4に記載の間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項6】
前記建具には、前記通気開口として、上下に離間して上側通気開口と下側通気開口とが設けられており、
前記第1室において前記吹出口から空調空気として暖房用空気が吹き出されている場合に、前記第1制御手段は、前記第1室の床側開口部から前記第2室の天井側開口部への気流が発生するように前記切替制御と前記気流制御とを実施し、前記第2制御手段は、前記上側通気開口を閉鎖、前記下側通気開口を開放するよう前記通気開閉手段を制御する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の間仕切壁を用いた通気システム。
【請求項7】
前記壁内通路には、該壁内通路を通過する空気を加熱する加熱手段が設けられている請求項6に記載の間仕切壁を用いた通気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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