説明

間欠送風装置

【課題】グラビア印刷の特殊な絵柄の高速印刷において、版面の画線部と非画線部に対し、非画線部のみに正確に送風できる間欠送風装置の提供。
【解決手段】画線部と非画線部を検出するセンサーの信号を用いて、送風を制御する切替バルブの開閉動作を行い、さらに吹き出しノズルの構成を2重の円筒体8とし、かつ内側の円筒体9は前記信号を用いて印刷機の速度に同期回転をさせ、前記円筒体8のそれぞれのスリット12が重なったときのみ送風可能な間欠送風装置を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷機において版胴面の余分なインキを乾燥させて、版かぶりという品質不良を防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷とは、表面に凹凸の彫刻加工が施されているグラビアロールをインキ液層の中に浸し、その凸部に付着したインキをドクターブレードで掻き落とし、凹部に残っているインキを支持体に転移させる印刷方式(ダイレクトグラビアの場合)である。従って、支持体の全面に印刷するためには、凹凸の模様が非常に細かく、小さな点々の連続であるが、印刷インキの調製と彫刻方法によって、あたかも全面平滑ロール塗工をしたような、模様のない均一な表面仕上げを得ることができる。塗布量の調節は、グラビアセルの形状、深さ、メッシュ、インキの固形分濃度などによる。また、ドクターブレードは焼入れ鋼板からできており、0.2〜0.3mmの厚さで弾性があり、グラビアロールに対して一定の圧力を保ちつつ、エッジの摩耗を均一にするために左右に往復運動(±10mm程度)をさせる。
【0003】
さて、今回の発明に係る昇華転写用インクリボンは、グラビア印刷法によって、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック及び保護層の各色を、グラビア印刷機のそれぞれの印刷ユニットに於いて塗り分けて印刷することにより作られている。つまり、各印刷ユニットでは各色矩形パタンの絵柄がシリンダーの略4分の1のエリアに画線部として彫刻されており、その画線部をフィルム基材に印刷し、他の4分の3のエリアは非画線部としてインキを塗布せず、順次、各印刷ユニットでは各色の定位置のみを印刷する絵柄構成になっている。以下、このような絵柄印刷を順次印刷という。従って、今回扱うグラビア版(以下、版胴)の画線部は図5に示すように、矩形部の一辺の方向が版胴軸に平行となっている。
【0004】
ところで、グラビア印刷の場合、印刷する際は、インキが付着した版に対してドクタリングを行うため、本来、非画線部にはインキが掻き取られて無いはずであるが、印刷速度を高速化すると、インキが版面とドクターブレードの僅かな隙間からすり抜けて、版の非画線部にインキの極薄膜が残留する。このインキの極薄膜が本来インキが転移されるべきでない色の基材に転写される不良を「版かぶり」と呼んでいる。
【0005】
昇華熱転写用インクリボンの印刷において、通常、画線部のインキの厚みは10〜100μm程度に対し、非画線部に残留するインキ膜厚は0.1〜1μmであるが、このインキがかぶった部分に別の印刷ユニットで別のインキが上塗りされると、いわゆるインキのコンタミ状態になり、後工程において、印画紙に熱転写するとき、特定色の色濃度ムラの発生という不良品の要因となるものである。この濃度ムラを発生させる「版かぶり」は版面上からフィルム基材に残留インキが転移されなければ問題とならないことは経験上、判明している。
【0006】
そこで、従来技術では版面上の残留した極薄膜インキを送風乾燥させる方法を用いて「版かぶり」を防止していた(特開昭63−227341公報参照)。該公報によれば、送風乾燥を画線部に実施すると、版深が浅く、インキの固形分も多く、かつ溶剤の蒸発速度が速いものを使った場合は、版の「目詰まり」(セルの中にインキが堆積すること。セルとは版面を彫刻で掘った穴)が発生するため、非画線部のみに送風するように、版の回転と送風のタイミングを同期させた間欠送風を行っている。なお、この「目詰り」を起こした版には新しいインキがセルの中に入らないので、当然のことながら、フィルム基材に転移されることもなく、印刷不良となる。
【0007】
この間欠送風を用いた版かぶり防止装置の構成要素は送風機、電磁弁、送風管、送風ノズル、及び絵柄検出部からなる。作動原理としては、まず、送風機で発生したエアーを絵柄検出部から来る信号に基づき、電磁弁で間欠に送風し、そのエアーが送風管に送られ、版胴の軸方向に面している送風管に取り付けられた相当数の送風ノズルからエアーが版面に間欠送風される仕組みである。従って、設計上ではノズルからの送風は、非画線部(非絵柄部)領域では送風し、画線部(絵柄部)では送風が停止するはずである。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−227341公報参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、印刷速度が高速化時代になって来ると、電磁弁に対するノズルからのエアーの吐出、吐止のタイミングが、エアー慣性抵抗及び圧縮性等の影響で遅れはじめた。版胴の高速回転時、画線部の始まりの境界線でエアーの吹きだしが遅れて止まったり、後の境界線ではエアーの吹き出しが遅れて始まったりすることになった。つまり、エアーを吹いてはいけない画線部にエアを吹いたり、エアを吹くべき非画線部にエアを吹かない現象が発生することになった。
【0010】
本来、版胴が回転中、先にやってくる画線部の境界線でエアーが吐止し、後の境界線の位置でエアーが吐出しなければならないのであるが、ある一定の速度を超えて高速化すると、この現象が発生する。したがって、画線部にエアーが吹きつけられるため、前記に説明した版の「目詰まり」が発生し、非画線部の一部にエアーが吹かないため「版かぶり」を招くという問題を発生することになった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明者は、上記問題を解決するために種々検討の結果、印刷機の版胴の円周面の一定の場所に、一定量のエアーを吹きつける装置であって、 送風機から送られるエアーの送風を開閉できるエアー切替バルブと、モーターに直結した変速機により回転するとともに、前記エアーを吹き込まれる閉じた内側回転円筒体と、該内側回転円筒体の円周面にはエアーを逃がすスリットを該内側回転円筒体の回転軸と平行に有し、さらに、該内側回転円筒体の外側には該内側回転円筒体を保持する閉じた外側固定円筒体とを有し、該外側固定円筒体は印刷機のフレームに固定されて成り、また、該外側固定円筒体の円周面にもスリットが形成され、かつ、互いに平行関係にあること、を特徴とする間欠送風装置を見出して、本発明に至ったものである。
【0012】
さらに、本発明者は、前記エアーをタイミングよく吹き出すために、前記間欠送風装置にあって、前記版胴円周面送風部に対する間欠送風制御は、前記版胴の回転軸の端部に設けられた画線検出部と、該画線検出部から検出された画線部の信号を前記モーターの制御部へ送ることにより、印刷機の印刷速度と内側回転円筒体の回転周速度とを同期させ得る制御部と、さらに、前記信号により内側回転円筒体のスリットの位置が前記外側固定円筒体のスリットの位置に重なる位置でエアーを吹き出せるようにエアー切替バルブも制御できる前記制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の間欠送風装置を見出して、本発明の完成に至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、印刷機の版胴の円周面の一定の場所に、一定量のエアーを吹きつける装置であって、送風機から送られるエアーの送風を開閉できるエアー切替バルブと、モーターに直結した変速機により回転するとともに、前記エアーを吹き込まれる閉じた内側回転円筒体と、該内側回転円筒体の円周面にはエアーを逃がすスリットを該内側回転円筒体の回転軸と平行に有し、さらに、該内側回転円筒体の外側には該内側回転円筒体を保持する閉じた外側固定円筒体とを有し、該外側固定円筒体は印刷機のフレームに固定されて成り、また、該外側固定円筒体の円周面にもスリットが形成され、かつ、互いに平行関係にあること、さらに、前記エアーをタイミングよく吹き出すために、前記版胴円周面送風部に対する間欠送風制御は、前記版胴の回転軸の端部に設けられた画線検出部と、該画線検出部から検出された画線部の信号を前記モーターの制御部へ送ることにより、印刷機の印刷速度と内側回転円筒体の回転周速度とを同期させ得る制御部と、さらに、前記信号により内側回転円筒体のスリットの位置が前記外側固定円筒体のスリットの位置に重なる位置でエアーを吹き出せるようにエアー切替バルブも制御できる前記制御部と、を備えたことを特徴とする間欠送風装置に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明の間欠送風装置によれば、回転中の版胴面における画線部から非画線部の境界線上ではエアーの吹き出しが、また非画線部から画線部の境界線上ではエアーの吹き止めが正確に行われることができるようになった。従って従来、画線部へエアーを吹くことにより発生していた「目詰り」や、非画線部へのエアーの吹き遅れにより発生していた「版かぶり」などの印刷不良現象を確実に解消することが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面等を用いて上記の本発明について更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0016】
図1はグラビア印刷機の印刷構成を示す断面図であり、版胴1と圧胴2が圧接し、両胴
間に印刷物3を通過させて印刷を行う。図1において版胴1はインキパン4の中に浸漬しているインキ5内にどぶ漬けされてあり、インキ5が版面28に転移した後、図上、時計回りで回転している途中で、版面28に当接されたドクターブレード6により版面28のセル内のインキ以外のインキを掻き落とした後、本発明の間欠送風装置の版面送風部7により、非画線部27は送風を受けてドクターブレードによる掻き落とし残しのわずかなインキを乾燥させ、画線部26は送風を受けずに版胴面が圧胴に入り、セル内のインキのみが印刷物3に転移される。
【0017】
図2は版面送風部7の断面図であり、外側固定円筒体8の中に内側回転円筒体9が収納されている構成を示している。外側固定円筒体8の一部には、エア吹き出しスリット部12が設けてあり、外側固定円筒軸に平行で、スリットの長さはシリンダー巾とほぼ同じである。スリットの巾は5mm前後でよい。内側回転円筒体9は実線部分がエアの遮蔽部10であり、点線部分はエア吹き出し部(網目形状)11を示している。遮蔽部10と吹き出し部11の円周方向の長さは略1対3である。この比率は画線部26と非画線部27の版胴円周方向の長さの比率が略1対3であることに対応しており、遮蔽部は画線部へのエア吹き出し遮蔽の役目を有している。
【0018】
図3は内側回転円筒体9の斜視図である。該円筒体の胴体に当たる面の4分の3は網目形状をしており、該円筒体内に吹き込まれたエアの吹き出し部11に相当し、残りの4分の1の面積がエアの遮蔽部10に相当する。
【0019】
図4は外側固定円筒体8の斜視図である。該外側固定円筒体の胴体面にエアー吹き出し用スリット部12が設けてあり、方向は円筒軸に平行で、長さはシリンダー巾と略同じである。
また、外側固定円筒体の左側面23と右側面24はエアーが吹き込まれたエアーが漏れ出さないように壁面を形成しているが、左側面(または右側面でもよい)の一部にエアー導入用ノズル開口部21と内側回転円筒体を駆動するための駆動軸貫通用開口部22が配設されている。
【0020】
図5は本発明の版かぶり防止用間欠送風装置を版胴付近に取り付けたときの関係位置を
示した斜視図である。版胴1のチャック部には画線部検出部13が設置されている。画線部検出部13はA検出部14とB検出部15とを交互摺動させて、画線部26の円周上の長さとするものである。このように検出部13は版胴1の円周には関係なくセットできる。
【0021】
版面送風部7はドクターブレード6と圧胴2との間にあり(図1参照)、エアー送風管18とその先端に版胴1の巾全体に開口するエアー送風ノズル(スリット部)12とで形成されている。エアー送風管18にはエアー切替バルブ17取り付けられており、切替バルブ17はセンサー16の信号により開閉する。センサー16は光電式、近接式等、いずれの形式でもよく、画線部検出部13からの信号16により切替バルブ17の開閉を制御している。すなわち、画線部位置を検出した信号(A検出部14とB検出部15により形成される巾の長さで決められる)により切替バルブを閉じ、送風を停止し、その他の間は
切替バルブ17を開き、エアー送風ノズル12へ送風を行う。
【0022】
また、版面送風部7は外側固定円筒体8と内側回転円筒体9とで形成されており、内側回転円筒体9の回転軸は外側固定円筒体8の外部に配設されている変速機19の駆動軸と連結され、この変速機19は専用のモーター20で駆動されている。当該モーター20の回転制御は、画線部26の位置を検出しているセンサー16の信号を取り込んで行われている。すなわち、印刷速度が上がれば版胴1の回転数が増え、画線部26の位置を検出する回数が増えるため、その画線部26の位置検出信号を取り込んで内側回転円筒体9を駆動しているモーター20の回転数を比例的に増加させることが出来る。
【0023】
すなわち、本発明によれば版胴の回転速度が早くなれば、エアー切替バルブの開閉時間が短くなると同時に、内側回転円筒体の回転速度も速くなり、内側回転円筒体のスリットの巾は一定であるからエアーの送風時間、送風停止時間もそれぞれ短くなり、また外側固定円筒体のスリットの下を通過する非画線部、画線部の時間も短くなることが解る。
【0024】
このように、版面にエアーを間欠に送風する場合、エアーそのものを切替バルブ等を用いて開閉すると同時に、吹き出し末端部での物理的開閉を併せて行うことにより当初の正確な送風効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】グラビア印刷機の印刷ユニットの断面図であり、本発明の送風部7の位置がド クターブレード6と圧胴2の間にあることがわかる。
【図2】版面送風部7の断面図であり、外側固定円筒体8の中に内側回転円筒体9があ る。外側固定円筒体のスリット12と内側回転円筒体のスリット11(点線部 、網目形状)の関係図でもある。
【図3】内側回転円筒体9の斜視図であり、送風を止めるエアー遮蔽部10に対し、エ アー吹き出し部11のエリアが略3倍であることがわかる。
【図4】外側固定円筒体8の斜視図である。送風口であるエアー吹き出しスリット部1 2以外は密封状態にして使用する。
【図5】間欠送風装置を版胴1付近に取り付けた斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 版胴
2 圧胴
3 印刷物
4 インキパン
5 インキ
6 ドクターブレード
7 版面送風部
8 外側固定円筒体
9 内側回転円筒体
10 エアー遮蔽部
11 エアー吹き出し部(網目形状)
12 エアー吹き出しスリット部
13 画線部検出部
14 A検出部
15 B検出部
16 センサー
17 エアー切替バルブ
18 送風管
19 変速機
20 モーター
21 エアーノズル用開口部
22 駆動軸貫通用開口部
23 外側固定円筒左側面
24 外側固定円筒右側面
25 送風機
26 画線部
27 非画線部
28 版面




【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機の版胴の円周面の一定の場所に、一定量のエアーを吹きつける装置であって、
送風機から送られるエアーの送風を開閉できるエアー切替バルブと、モーターに直結した変速機により回転するとともに、前記エアーを吹き込まれる閉じた内側回転円筒体と、該内側回転円筒体の円周面にはエアーを逃がすスリットを該内側回転円筒体の回転軸と平行に有し、さらに、該内側回転円筒体の外側には該内側回転円筒体を保持する閉じた外側固定円筒体とを有し、該外側固定円筒体は印刷機のフレームに固定されて成り、また、該外側固定円筒体の円周面にもスリットが形成され、かつ、互いに平行関係にあること、を特徴とする間欠送風装置。
【請求項2】
前記間欠送風装置にあって、前記版胴円周面送風部に対する間欠送風制御は、前記版胴の回転軸の端部に設けられた画線検出部と、該画線検出部から検出された画線部の信号を前記モーターの制御部へ送ることにより、印刷機の印刷速度と内側回転円筒体の回転周速度とを同期させ得る制御部と、さらに、前記信号により内側回転円筒体のスリットの位置が前記外側固定円筒体のスリットの位置に重なる位置でエアーを吹き出せるようにエアー切替バルブも制御できる前記制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の間欠送風装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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