説明

間欠高圧空気注入装置、及びこれを用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法

【課題】1回当たりの噴出空気量を多くするとともに、弁の開閉を確実に制御しつつ、高圧空気を注入するタイミングを制御することができる間欠高圧空気注入装置、汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法を提供する。
【解決手段】汚染地盤又は汚染地下水に高圧空気を間欠的に注入し、前記汚染地盤又は前記汚染地下水を原位置で浄化するための間欠高圧空気注入装置10であって、前記高圧空気を貯留するタンク1と、前記タンク1に連通する流路が形成されており、このタンク1内に貯留された前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に注入する注入管2と、前記流路内に設けられ、前記高圧空気を前記タンク1側から前記注入管2側へ間欠的に排出する電磁弁4と、前記注入管2の先端部に設けられ、前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に対して噴出する噴出ノズル3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠高圧空気注入装置、及びこれを用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、汚染地盤の原位置浄化方法としては、例えば、汚染地盤に高圧空気を間欠的に注入して浄化する技術がある。かかる技術によれば、大規模な掘削をすることなく汚染地盤を原位置で浄化することが可能となる。そして、このような従来の汚染地盤の原位置浄化方法においては、特許文献1に示すような間欠高圧空気注入装置が用いられており、この装置はスプリング機構を利用した機械式バルブを備えている。なお、間欠高圧空気注入装置は、汚染地下水の原位置浄化方法にも用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】欧州特許0489705B1号
【特許文献2】特開2001−129577号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、次の(1)〜(3)に掲げる問題点があった。すなわち、(1)機械式バルブは、その機構上、高圧空気を貯留するタンクに内蔵せざるを得ないため、タンク容積を増大させようとしてもこれには適しておらず、1回当たりの噴出空気量が少ない。また、(2)機械式バルブは、その機構上、圧力差がある程度ないと弁が開閉しない。このため、特にシルト質飽和帯等の汚染地盤に適用した場合には、高圧空気を注入した後の背圧が大気圧に戻りにくく、弁の動作が開いた状態で停止してしまう。さらに、(3)機械式バルブは、その機構上、高圧空気を注入するタイミングを制御することが困難である。このため、間欠高圧空気注入装置を複数用いた場合には、各装置から発生する高圧空気の衝撃波が単発で発生するだけで、その相乗効果を発揮することができず、十分な浄化効果を奏するとはいえない。特に、(2)及び(3)の問題点は、機械式バルブの開閉状態を自在に制御することが困難であることが主な原因である。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、1回当たりの噴出空気量を多くするとともに、弁の開閉を確実に制御しつつ、高圧空気を注入するタイミングを制御することができる間欠高圧空気注入装置、及びこれを用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、汚染地盤又は汚染地下水に高圧空気を間欠的に注入し、前記汚染地盤又は前記汚染地下水を原位置で浄化するための間欠高圧空気注入装置であって、前記高圧空気を貯留するタンクと、前記タンクと連通する流路が形成されており、このタンク内に貯留された前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に注入する注入管と、前記流路内に設けられ、前記高圧空気を前記タンク側から前記注入管側へ間欠的に排出する弁と、前記注入管の先端部に設けられ、前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に対して噴出する噴出ノズルとを備え、前記弁は、開閉状態を外部から制御可能な電磁弁とする。
【0006】
このように間欠高圧空気注入装置を電磁弁方式とすることにより、その機構上、弁をタンク外に設けることが可能となり、その結果、タンク容量を増大させて、1回当たりの噴出空気量を多くすることができる。また、弁の開閉を確実に制御しつつ、高圧空気を注入するタイミングを制御することもできる。従って、間欠高圧空気注入装置をシルト質飽和帯等の汚染地盤に適用した場合にも、弁の動作を強制的に作動させることができるので、かかる汚染地盤であっても高圧空気を継続して供給でき、これにより原位置での浄化が可能となる。また、1回当たりの噴出空気量及び弁の開放時間を制御することにより、高圧空気の噴出による衝撃を最適化することもできる。さらに、間欠高圧空気注入装置を複数用いた場合には、各装置から発生する高圧空気の衝撃波の相乗効果により、十分な浄化効果を奏するようになる。
【0007】
また、本発明は、間欠高圧空気注入装置を用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法であって、前記間欠高圧空気注入装置を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に複数配列し、同列上に配列された複数の前記間欠高圧空気注入装置を同期して作動させることとする。
【0008】
このような構成によれば、各間欠高圧空気注入装置から高圧空気を同時に噴出させ、この噴出に伴い発生する衝撃波の相乗効果を利用して、高圧空気を汚染地盤や汚染地下水の隅々まで行き渡らせることが可能となる。従って、汚染地盤や汚染地下水を広範囲に渡って好気的環境にすることができるので、原位置での浄化効果が向上する。
【0009】
また、本発明は、間欠高圧空気注入装置を用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法であって、前記間欠高圧空気注入装置を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に複数配列し、同列上に配列された複数の前記間欠高圧空気注入装置を交互に作動させることとする。
【0010】
このような構成によれば、各間欠高圧空気注入装置から高圧空気を時間的に交互に噴出させ、汚染地盤や汚染地下水の流動性・通水性を向上させることができるので、原位置での浄化効果がいっそう向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、間欠高圧空気注入装置、汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法において、1回当たりの噴出空気量を多くするとともに、弁の開閉を確実に制御しつつ、高圧空気を注入するタイミングを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の間欠高圧空気注入装置、及びこれを用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法について説明する。
【0013】
===間欠高圧空気注入装置10===
図1は、本発明の一実施形態における間欠高圧空気注入装置10を示す説明図である。
図1に示すように、間欠高圧空気注入装置10は、油汚染土等の汚染地盤や汚染地下水に高圧空気を間欠的に注入するための装置であり、高圧空気を貯留するタンク1と、このタンク1内の高圧空気を汚染地盤や汚染地下水に注入する注入管2と、この注入管2の先端部に設けられ高圧空気を噴出する噴出ノズル3と、タンク1と注入管2とを連通する流路に設けられ開閉状態を外部から自在に制御可能な電磁弁4とを備えており、タンク1はサポータ5によって支持されている。
【0014】
タンク1は、図示しないエアコンプレッサと連結されるようになっており、タンク1内には高圧空気が供給される。供給された高圧空気はタンク1内で圧搾されながら貯留される。この時の電磁弁4は閉じた状態にあり、タンク1内で貯留された空気は次第に圧搾されて高圧状態となる。そして、タンク1内での空気圧が所定の高圧状態に達した後に、電気的なシグナルにより任意のタイミングで電磁弁4を瞬時に開放させる。これによりタンク内1で貯留されていた高圧空気は、注入管2を通り先端部の噴出ノズル3から爆発的に噴出する。一方、噴出ノズル3から高圧空気が噴出されていくと、タンク1内の空気圧は次第に減少し低圧状態となる。そして、タンク1内での空気圧が所定の低圧状態に達した後に、電気的なシグナルにより任意のタイミングで電磁弁4を瞬時に閉じさせる。これにより高圧空気の噴出が停止され、再びタンク1内には高圧空気が貯留される。
【0015】
電磁弁4は、このような開閉動作を一定の間隔で周期的に繰り返すように制御されているため、高圧空気を汚染地盤や汚染地下水に短時間の間隔で間欠的に注入することができる(例えば、1/30〜1/5HZの周期)。その結果、汚染地盤や汚染地下水は好気的環境(例えば、酸素濃度3%以上)となり、汚染地盤や汚染地下水に棲息する好気性微生物が活性化され、汚染物質である油等の分解が促進される。従って、汚染地盤を掘削することなく、また汚染地下水を揚水することもなく、これらの汚染地盤や汚染地下水を原位置で浄化することが可能となる。
【0016】
ところで、間欠高圧空気注入装置10は、従来の機械式バルブの代わりに電磁弁4を備えている。この電磁弁4は機械式バルブとは異なり、その機構上、タンク1外に設けることが可能である。このためタンク1の容量を増大する際に電磁弁4が障害となりにくく、タンク容量を容易に増大させることができる。よって、噴出ノズル3から噴出される1回当たりの噴出空気量を多くすることができる。なお、従来の機械式バルブを備えた間欠高圧空気注入装置では、例えば、約27Lのタンクに貯留された少量の高圧空気を最短でも10秒程度の間隔で噴出し得るにすぎない。しかし、電磁弁4を備えた間欠高圧空気注入装置10では、例えば、約37Lのタンクに貯留された大量の高圧空気を最短で2.5秒程度の間隔で噴出することが可能となる。これにより、好気分解に適した酸素量及び酸素供給速度を確保することができる。
【0017】
また、電磁弁4は、開閉自在に制御することが可能である。従って、電磁弁4を挟んだ圧力差がどれほどであれ弁を強制的に開閉させることができ、さらには高圧空気を任意のタイミングで噴出させることが可能となる。このような電磁弁4としては、例えば、パイロット式2ポート電磁弁(AD、APシリーズ)やパルスジェットバルブ(PDV2シリーズ;PDV2−50AX1017)等がある。パイロット式2ポート電磁弁は応答性に優れており(例えば、オン:200msec,オフ:250msec)、高圧空気を任意のタイミングで噴出させる場合に適している。一方、パルスジェットバルブは耐久性に優れており(例えば、L型の配管形状)、大量の高圧空気を高頻度且つ長期間供給する場合に適している。なお、図1に示す電磁弁4は、L型の配管形状を有しており、このパルスジェットバルブのタイプに属するものである(例えば、CV値:0.7〜0.8MPa時流量、最高使用頻度:60回/分)。
【0018】
===汚染地盤の原位置浄化方法===
次に、浄化対象領域として汚染地盤を例に挙げつつ、本発明の間欠高圧空気注入装置10を用いた汚染地盤の原位置浄化方法について説明する。
【0019】
この汚染地盤の原位置浄化方法は、間欠高圧空気注入装置10を用いて、汚染地盤に高圧空気を短時間の間隔でパルス状にして間欠的に供給し、汚染地盤内に高圧空気を爆発的に拡散させることにある。この方法により、浄化対象領域である汚染地盤を好気的環境とし、汚染地盤内に生息する好気性微生物を活性化させ、汚染地盤を原位置で浄化することができる。すなわち、注入した高圧空気の揺動によって汚染地盤から土壌粒子の溶出を促すとともに、エアスパージング効果によって汚染物質を空気と一緒に除去することができる。なお、粘性土壌を揺動することによって通水性を向上させたうえ、好気性微生物を活性化させるために栄養分(例えば、窒素源やリン源等)を添加してもよい。栄養分の添加によって好気性微生物は顕著に増加するので、汚染物質の分解は大幅に促進する。また、汚染土壌を掘削し浄化する場合と比べると、浄化期間やコストの大幅な短縮・低減が図れる。さらに、シルト質飽和帯等の通気性が悪い汚染地盤を浄化対象とする場合にも、電磁弁4を強制的に作動させることにより、高圧空気を継続して噴出させることができる。従って、かかる汚染地盤であっても好気的環境とし、原位置で浄化することが可能となる。
【0020】
また、間欠高圧空気注入装置10を複数用いた場合には、高圧空気の噴出間隔を任意に設定することにより、各装置から発生する高圧空気の衝撃波が相乗効果を発揮するように制御することもできる。さらに、間欠高圧空気注入装置10を複数用いることにより、次に説明するような優れた方法を実施することが可能となる。
【0021】
図2は、間欠高圧空気注入装置10を複数用いた汚染地盤の原位置浄化方法を説明するための概略説明図であり、(a)は間欠高圧空気注入装置10を同期して作動させた場合、(b)は間欠高圧空気注入装置10を交互に作動させた場合の概略説明図である。
【0022】
まず、図2(a)に示すように、電磁弁4を備えた間欠高圧空気注入装置10は、高圧空気を注入するタイミングを自在に制御することができるので、複数の間欠高圧空気注入装置10を同期して作動させることが可能となる。これにより、各間欠高圧空気注入装置10から高圧空気を同時に噴出させ、この噴出に伴い発生する衝撃波の相乗効果を利用して、高圧空気を汚染地盤の隅々まで行き渡らせることができる。
【0023】
すなわち、高圧空気を同時に噴出させることにより、約1/100秒ほどで消えてしまう衝撃波が隣同士干渉し、干渉を受けた土壌は二方向からの複雑な刺激を受け、より複雑な空隙が作られる。これが毎回の噴出により繰り返されることで、その度に複雑な空隙が作られることとなる。また、相互に衝突する衝撃波は反発して元に戻っていくので、いったん衝撃波が過ぎ去った場所に再び衝撃波が訪れることとなる。さらに、高圧空気はゆっくりと衝撃波を追いながら汚染地盤中を膨張していき、高圧空気が同時に噴出された場合には、その空気が高圧のまま衝突し合うことになる。そこでより高圧の空気が生まれ、左右に伝播していくことになる。このようにして土壌粒子は複雑な刺激を受け、広範囲の汚染地盤が好気的環境となるので、原位置での浄化効果が向上する。
【0024】
一方、図2(b)に示すように、電磁弁4を備えた間欠高圧空気注入装置10は、高圧空気を注入するタイミングを自在に制御することができるので、複数の間欠高圧空気注入装置10を交互に作動させることが可能となる。これにより、各間欠高圧空気注入装置10から高圧空気を時間的に交互に噴出させ、汚染地盤の流動性・通水性を向上させることができる。
【0025】
例えば、複数の間欠高圧空気注入装置10を規則的に配列した上で、一列ごとに交互に作動させる場合には、ある列が一斉に高圧空気を噴出すると、高圧空気及び衝撃波は、噴出しなかった列に向かって一列に進んでいく。高圧空気及び衝撃波が列をなして一斉に左右に広がっていくことで、その圧力は大きくなるので、単発で四方八方に進んでいく場合と比べ、高圧空気及び衝撃波による土壌粒子の破壊効果は高い。次に、今度は噴出しなかった列が一斉に噴出することにより、前回とは逆向きの波となって伝播していく。つまり、波が交互に行ったり来たりする状況となり、土壌粒子の破壊効果は格段に高くなる。従って、汚染地盤がより好気性微生物の生育に適した環境となり、原位置での浄化効果がいっそう向上する。
【0026】
なお、図2(a)及び(b)に示す複数の間欠高圧空気注入装置10は、図示しない制御盤等により一括して自動制御することも可能である。この場合には、より優れた浄化効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態における間欠高圧空気注入装置を説明するための概略説明図である。
【図2】間欠高圧空気注入装置を用いた汚染地盤の原位置浄化方法を説明するための概略説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 タンク
2 注入管
3 噴出ノズル
4 電磁弁
5 サポータ
10 間欠高圧空気注入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染地盤又は汚染地下水に高圧空気を間欠的に注入し、前記汚染地盤又は前記汚染地下水を原位置で浄化するための間欠高圧空気注入装置であって、
前記高圧空気を貯留するタンクと、
前記タンクと連通する流路が形成されており、このタンク内に貯留された前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に注入する注入管と、
前記流路内に設けられ、前記高圧空気を前記タンク側から前記注入管側へ間欠的に排出する弁と、
前記注入管の先端部に設けられ、前記高圧空気を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に対して噴出する噴出ノズルと、を備え、
前記弁は、開閉状態を外部から制御可能な電磁弁であることを特徴とする間欠高圧空気注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の間欠高圧空気注入装置を用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法であって、
前記間欠高圧空気注入装置を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に複数配列し、同列上に配列された複数の前記間欠高圧空気注入装置を同期して作動させることを特徴とする汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法。
【請求項3】
請求項1に記載の間欠高圧空気注入装置を用いた汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法であって、
前記間欠高圧空気注入装置を前記汚染地盤又は前記汚染地下水に複数配列し、同列上に配列された複数の前記間欠高圧空気注入装置を交互に作動させることを特徴とする汚染地盤又は汚染地下水の原位置浄化方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−281136(P2006−281136A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106857(P2005−106857)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】