説明

関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法

【課題】
関節内視鏡手術の際、組織損傷を防ぐために、手術部位における温度を監視し、調節するための関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法を提供すること。
【解決手段】
関節内視鏡手術に使用される関節内視鏡手術温度調節システムであって、関節内視鏡装置を受容するようなサイズおよび形状を有する中心腔と、遠位部と、近位部を備え、前記に加えて更に、流入腔および流出腔を備えるシース;該シースの遠位部に配置される温度センサー;前記流入腔と液的に連通する流体供給源;前記流体供給源と熱的に連通する冷却モジュール;前記温度センサーおよび冷却モジュールと電気的に連通し、温度センサーによって測定される手術部位の温度が、安全な閾値温度を超えると、冷却モジュールを操作して、流体供給源からの流入流体の温度を下げさせることが可能な調節手段;を含むことを特徴とする関節内視鏡手術温度調節システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法に関し、より詳細には、関節内視鏡手術の際、組織損傷を防ぐために、手術部位における温度を監視し、調節するための関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
侵襲度極小手術の際、焼灼プローブ、トロカール、カニューレ、および医用光学装置などの手術装置、例えば、内視鏡、膀胱鏡、関節鏡、腹腔鏡などを含む装置が、小さい切創または門孔を通じて、患者の体または体腔の中に挿入され、患者の体内において手術を実行するために操作される。
【0003】
極小侵襲度手術法は、開放手術よりも安全であり、かつ、より速やかな患者の回復、より短い入院滞在期間、より低い保健コストをもたらす。したがって、侵襲度を極小とすることは依然として重要であり、この目的を実現する装置および方法は絶えず求められている。
【0004】
極小侵襲度手術法によって利益を受ける一つの領域として、関節内視鏡手術がある。関節内視鏡手術、例えば、肩関節手術は、過去数年の間に開放外科手術から関節内視鏡手術に進化している。この進化は、装置、器具、およびインプラントにおける技術的発達の結果である。
【0005】
関節内視鏡手術、例えば、肩関節内視鏡手術の際、高周波焼灼装置が頻繁に使用される。高周波焼灼は、いろいろ用途はあるが、特に表面を滑らかにし、関節に存在する軟骨の裂溝を封鎖するために用いられる。この治療の目的は、軟骨基質内の変性病巣の拡大を阻止しながら機械的安定性を実現することである。関節軟骨に熱エネルギーを用いることは必ず危険を伴う。成熟した軟骨の細胞、軟骨細胞を、未調節の熱に暴露することは、細胞死をもたらし、その周辺基質の機械的性質を変質させる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
関節、例えば、肩関節および膝関節は、手術部位内に少量の液量を持つ関節腔を有する。僅かな関節腔を持つ関節において、高周波焼灼プローブを用いると、関節内の周辺液は急速に過熱することがある。なぜなら、この液は、熱の吸い込み口の役目を果たすからである。標的とされない周辺組織における113°Fを超える温度は、手術部位、周辺組織、および患者に対し有害な作用を及ぼす可能性がある。113°Fを超える温度は、急速に、軟骨細胞の壊死をもたらすことがある。現在は、手術時、関節内視鏡手術部位における液温が、特にそのために監視されることもなく、焼灼中手術部における液温を安全レベルに、例えば、97°Fと108°Fの間のレベルに維持するために処置が取られることもない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、関節内視鏡手術の際、組織損傷を防ぐために、手術部位における温度を監視し、調節するための関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
(請求項1)
関節内視鏡手術に使用される関節内視鏡手術温度調節システムであって、関節内視鏡装置を受容するようなサイズおよび形状を有する中心腔と、遠位部と、近位部を備え、前記に加えて更に、流入腔および流出腔を備えるシース;該シースの遠位部に配置される温度センサー;前記流入腔と液的に連通する流体供給源;前記流体供給源と熱的に連通する冷却モジュール;前記温度センサーおよび冷却モジュールと電気的に連通し、温度センサーによって測定される手術部位の温度が、安全な閾値温度を超えると、冷却モジュールを操作して、流体供給源からの流入流体の温度を下げさせることが可能な調節手段;を含むことを特徴とする関節内視鏡手術温度調節システム。
【0010】
(請求項2)
前記流出腔と液的に連通する真空源をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0011】
(請求項3)
前記流入腔と液的に連通するように、シースの遠位部に配置される流体開口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0012】
(請求項4)
前記流出腔と液的に連通する流体開口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0013】
(請求項5)
前記流出腔からの流出流体と熱的に連通する温度警告装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0014】
(請求項6)
前記流出流体の温度が、安全閾値を超えると、前記温度警告装置が可聴警告を発することを特徴とする請求項5に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0015】
(請求項7)
前記流出流体の温度が、安全閾値を超えると、前記温度警告装置が可視警告を発することを特徴とする請求項5に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【0016】
(請求項8)
関節内視鏡装置を受容するようなサイズおよび形状を有する中心腔と、遠位部と、近位部を備え、前記に加えて更に、流入腔および流出腔を備えるシースと、該シースの遠位部に配置される温度センサーと、前記流入腔と液的に連通する流体供給源と、前記流体供給源と熱的に連通する冷却モジュールと、を含む関節内視鏡手術温度調節システムを用いた関節内視鏡手術温度調節方法において、前記システムに焼灼装置を設け、該焼灼装置を用いて手術部位の関節内視鏡手術処置を実行する際に、前記温度センサーによって、該手術部位内の流体温度測定値を採取し、前記温度センサーによって採取された温度測定値に基づいて前記手術部位における温度を閾値よりも下に維持するように、流入流体を、該手術部位に進入する前に、前記冷却モジュールによって冷却することを特徴とする関節内視鏡手術温度調節方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、関節内視鏡手術の際、組織損傷を防ぐために、手術部位における温度を監視し、調節するための関節内視鏡手術温度調節システム及び関節内視鏡手術温度調節方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係る関節内視鏡手術温度調節システムの一例を示す図で、このシステムを用いて患者の肩1に関節内視鏡手術を実施する際に、その温度調節システム2が、患者の肩の関節嚢3の中に適用される状態が示される。この図には、患者の鎖骨4、肩甲骨5、および上腕骨6を含む、様々の解剖学的目印が描かれる。
【0019】
関節内視鏡7などの関節内視鏡装置が、この温度調節システムの内部に配される。温度調節システム2は、流入/流出シース9に動作的に結合した温度センサー8、流体供給源10、該流体供給源および流入/流出シース9と液的に連通する冷却モジュール11、および、温度センサー8および冷却モジュール11と電気的に連通する調節手段12を含む。
【0020】
関節内視鏡手術の際、外科医は、術野を可視化するために、第1門孔を通じて肩に関節内視鏡を導入する。焼灼装置が、表面を滑らかにし、関節軟骨の裂溝を封鎖するために第2門孔を通じて導入される。要すれば任意に、関節を膨満し、術野を潅水し、それによって明視野を確保するために、第3門孔を通じて潅水装置が導入されてもよい。後述するように、温度調節システムは、肩の術部の液温度を調節するために使用されてもよい。
【0021】
図2は、その内部に、関節内視鏡装置、例えば、関節内視鏡を配置させた、流入/流出シースを示す。
【0022】
関節内視鏡装置は、エネルギー輸送装置例えば焼灼装置、関節内視鏡、内視鏡、錐、ピック、シェイバーなどの装置を含んでもよい。
【0023】
流入/流出シース9は、中心腔によって特徴づけられる、滅菌可能なポリマーで、軟質プラスチックまたはゴムなどの靭性材料から成るチューブである。
【0024】
非傷害性のシース9の内径は、関節内視鏡装置の外径にぴったりと適合するような大きさと形状を持つ。このチューブは、遠位先端14を有する遠位部13、および、近位部15によって特徴づけられる。シース9の遠位先端14は、平坦または丸み形状を帯び、および、関節内視鏡の遠位先端の外径よりもやや小さい直径を持つ開口が設けられる。シース9の遠位部13はさらに、流体供給源または真空源と液的に連通する、孔、またはその他の、流通口16を含む。
【0025】
非傷害性のシース9の近位部15には、エラストマーによって製造されるハブ17が設けられる。これによって、医療担当者が、この非傷害性のシース9を簡単に引き上げ、該シース9を、焼灼装置、剛性カニューレ、および/または関節内視鏡装置に固定することが可能となる。ハブ17は、流体供給源および/または真空源に結合されるように適応される。
【0026】
シース9の遠位部13の外壁には孔16が設けられる。これらの孔16は、シース9の中の一つ以上の流入または流出腔と連通する。この腔(単数または複数)は、真空源、流体供給源、治療薬供給源、または、供給源の結合体と連通する。従って、これらの孔は、処置中、手術部位に対する、液体の流入および流出を実現する。
【0027】
温度調節システム2を使用する場合、ユーザーは、関節内視鏡、またはその他の関節内視鏡装置をシース9の中に挿入する。関節内視鏡の遠位端が、滑走してシース9の遠位先端14を通り過ぎると、該遠位先端14は拡張する。該先端14の内径は、焼灼装置の外径よりも小さいために、該先端14は、関節内視鏡の外面と共に耐液性封鎖を形成する。
【0028】
シース9の遠位部13には、熱電対などの温度センサー8が配される。手術時、温度センサー8は、手術部位内部の流体と熱的に連通するように配置される。温度センサー8として、温度を測定するための他の装置、例えば、サーミスター、光ファイバー、または、温度測定が可能なその他の装置を使用してもよい。それとは別に、手術部位の温度は、手術部位から流れ出る流体の温度を測定することによって求めることも可能である。関節内視鏡シースを通じて手術部位から吸引される流体(流出液体)を、該流出液体と液的に連通するように配置される温度センサーを用いて監視し、手術部位内部の温度を求めてもよい。
【0029】
図3から図8は、温度調節システムにおける、各種形状の流入/流出シース9の断面図を示す。図3は、焼灼装置の外面20と、チューブの外壁19の内面18を用いて、流入および流出用外側腔21、22、23、および24を形成する、流入/流出シースの断面図を示す。流入腔は、流体供給源から、手術部位へ、流体が流れ込むことを可能とし、一方、流出腔は、手術部位から流体が吸引除去されることを可能とする。外壁内面から放射状に延び、シースにそって長軸方向に走る、比較的剛性のリブ25は、焼灼装置の外面と共に封鎖壁を形成し、それによって四つの外側腔を創出する。リブの末端には、リブと焼灼装置の間に形成される封鎖を強調するために弾性フランジ26または突起が設けられる。この構成によって、流入/流出シースおよび焼灼装置結合体の全体サイズが抑えられる。
【0030】
図3に示されるように、関節内視鏡7は、中心腔27を通じてシース9の中に挿入される。焼灼装置7は、挿入前に、二次的保護シースによって覆われていてもよいし、覆われていなくともよい。一旦挿入されると、焼灼装置7の外面は、リブのフランジまたは突起に接触する。リブにフランジまたは突起が無い場合は、別名ランドとも呼ばれる、明瞭な隆起線条を用いて、焼灼装置の外面に接触させてもよい。リブ25およびリブフランジまたはリブ突起に対して押しつける焼灼装置の外面の力は、リブと、焼灼装置7の外面との間に封鎖を形成する。リブ25、焼灼装置の外面20、および、流入/流出シース9の外壁の内面18によって、外腔21、22、23、および24が形成される。リブ25は、圧迫下のシースを支え、シース9が潰れるのを防止する長軸性隆線として作用する。リブ25は、横軸において、薄い外壁19の、支持されないままの長さを短縮し、それによってシースの潰れるのをさらに防止する。リブと、焼灼装置の外面との接触によって形成される封鎖は、流体が、外腔の間に流れ出るのを阻止する。外腔21、22、23、および24は、シースの孔を経由する、手術部位への、および、手術部位からの、流体の、実質的に連続的な流入および流出をさらに促進する。流出流体が、手術部位へ戻ることを防ぐために、また、流入流体が、シースの近位端から流出することを防ぐために、外腔において、チェックバルブまたはゲートを流入/流出シースの内面に結合させてもよい。流体は、関節内視ポンプを用い、または重力供給によって、流入/流出シースを通じて手術部位へ導入することが可能である。さらに、流体は、真空源、サイフォン、または重力を用い、流入/流出シースを通じて、手術部位から吸引排除される。
【0031】
図9に、冷却モジュール11が詳細に描かれる。冷却モジュールは、手術部位に進入する前に流体の温度を下げることが可能な装置である。焼灼を必要とする手術処置の際、手術部位への侵入前に流入流体は冷却される。冷却モジュールは、一つ以上の熱吸い込み口35、ファンを有する熱電またはペルチエ冷却器36、および調節手段12を含む。
【0032】
図9に示すように、流入/流出シースおよび流体供給源10と液的に連通する流体流入チューブ37は、一つ以上の熱吸い込み口35の周囲に巻きつけられる。ペルチエ冷却器36が、この熱吸い込み口35と熱的に連通するように配置される。調節手段12は、ペルチエモジュール36と電気的に連通し、温度センサー8は、シースの遠位部に配置される。熱電対を用い、調節手段12は、手術部位の温度を監視する。温度が安全レベル、例えば、113°Fを超えると、調節システムは、ユーザーの介入を要することなく、流入流体を冷却するようにペルチエモジュールに自動的に指示する。流入流体は、組織の損傷を避けるように、手術部位の温度を安全レベル以内に下げるのに十分な温度にまで冷却される。手術部位の温度が安全レベル(周辺組織に対し損傷を及ぼす危険性を持たない温度レベル)に達すると、調節手段は、流入流体の温度低下を緩和する、または停止するように冷却モジュールに自動的に指示する。ユーザーはまた、調節手段にユーザーインターフェイスを動作的に結合させることによって、流入流体の温度レベルを直接調節するために冷却システムを用いてもよい。温度センサーリーダーおよびディスプレイも、温度センサーおよび調節手段と電気的に連通させてよい。リーダーにはLCDが設けられ、温度センサーによって記録された温度、警告、グラフ表示、およびデータの表示が可能である。
【0033】
冷却モジュール11は、手術部位に進入する前に流入流体の温度を操作するのに好適な、その他の装置、例えば、熱吸収体、冷蔵庫、熱交換器、化学的および非化学的氷パック、および冷却体を含む装置を含んでもよい。冷却モジュール11は、関節内視ポンプと直列に連結する別の装置であってもよいし、あるいは、流体輸送システムと直列に動作する関節内視ポンプの中に組み込まれていてもよい。
【0034】
図10(A)および(B)は、冷却体から成るキャニスターを含む冷却モジュール11を示す。この例では、冷却モジュール11は、流入口39および、取り外し可能な蓋40を有するキャニスター38を含む。キャニスターは、流入口を通じて、氷、冷凍ゲル、またはその他の冷却体によって満される。流入チューブ37は、キャニスターの外部周囲に配され、保持タブ41によってキャニスターに取り外し可能に結合される。流入チューブは、キャニスターと熱的に連通するように配置される。図10(B)に描かれるように、流体供給源からの流入流体が流入チューブを通過すると、流入流体の温度は、手術部位に進入する前に、キャニスター内部の冷却体によって下げられる。
【0035】
図11は、流入流体の冷却または加熱のための温度調節システム2、および方法の、代替構成を示す。この例では、混合バルブ42が、温かい潅水流体を有する第1流体供給源43、冷たい潅水流体を有する第2流体供給源44、および流入/流出シース9と液的に連通するように配置される。調節手段12が、シースと混合バルブ42の上に配される温度センサー8と電気的に連通するように配置される。手術処置の際、温度センサー8は、手術部位から温度測定値を採取する。
【0036】
調節手段12は、流入流体が、手術部位の温度を安全レベルに維持するのに適当な温度を実現するように、第1流体供給源43および第2流体供給源44からの流体を混合するようバルブ42に指示する。
【0037】
図12に示すように、この温度調節システム2には、直列結合温度警告装置48を組み込んでもよい。流体は、手術部位から、流入/流出シース9を通り流体流出チューブ50によって真空源49に吸引される。直列温度センサーを有する温度警告装置が、流出流体と熱的に連通するように配置されてもよい。これは、流出流体と液的に連通するようにセンサーを配置するか、あるいは、流出チューブにセンサーを接触させるかのいずれかによって実現される。
【0038】
センサーは、温度が安全閾値を超えると、視覚的、聴覚的、または視覚・聴覚的警告を発する警告装置と動作的に結合される。温度警告装置は、温度が安全閾値を超えると、視覚的、聴覚的、または視覚・聴覚的警告を発する、流出チューブの一体的一部として、あるいは、温度警告カラーとして設けることも可能である。
【0039】
図13の(A)は、温度警告装置を示す。この温度警告装置は、手術部位から流体流出チューブの上にスリット適合する大きさ・形状を有する、ポリマー材料製のカラー51を含む。カラー51にはさらに、該カラーを流出チューブおよび流体供給源に動作的に結合させることが可能な取り付け具52が設けられてもよい。
【0040】
温度警告装置はさらに、流出チューブの壁への接触を通じて流出流体と熱的に連通するように配置されるか、あるいは、流出流体と液的に連通するように配置される、熱電対などの温度センサー53を含む。
【0041】
温度警告装置は、カラーの内部に配される、調節集積回路基板54、圧電ブザー55、および電源56に対し、熱電対を電気的に連通するように配置することによって、ユーザーに対し、手術部位内部の危険温度について可聴的警告を発する。さらに、ディジタルディスプレイ57を設けて、温度および視覚的警告を表示することが可能となるようにしてもよい。調節基板は、熱電対によって流出流体の温度を監視し、かつ、流出流体の温度が安全閾値を超えると圧電ブザーを活性化することが可能である。
【0042】
図13(B)に示す別構成の温度警告装置では、流体流出チューブの上にスリット適合する大きさ・形状の内径を有する、ポリマー材料製のカラー51に、熱発色性液晶温度計などの、視覚的温度表示器62が設けられる。熱発色性液晶(TLC)は、温度に反応する、高感度物質である。液晶は、加熱されると黒から虹の色々に変化し、冷却されると再び黒に戻ることが可能である。さらに、広いか、または狭い温度感度を有する温度計を形成するように処方し、かつ、任意のサイズ、または形状に製造することが可能である。カラーの内部に配される温度計は、カラーの中を流れる流出流体と液的に連通することによって、該流出流体と熱的に連通するように設置することが可能である。それに代わるやり方として、該温度計は、カラーの内部に配される流出チューブの壁を通して流出流体と熱的に連通するように設置することも可能である。カラーにおける熱発色性液晶温度計は、ユーザーに対し視覚的表示器となる。すなわち、関節内部の流体温度が113°Fに近づいたことを示す閾値を、流出流体の温度が超えると色を変える。
【0043】
肩の関節内視鏡手術の際に使用する場合、関節内視鏡装置は、温度調節装置のシースの中心腔に挿入される。次に、関節内視鏡は、手術部位を可視化するために、シースと共に第1門孔に導入される。外科医は、第2門孔を通じて、焼灼装置を肩の中に導入する。焼灼装置は、表面を滑らかにし、関節軟骨における裂溝を封鎖するために使われる。シースは、手術部位に流入体および流出体を供給する。外科医は、手術中、高周波焼灼装置を活性化し、手術部位内において熱を発生させる。シースの近位端に配される温度センサーは、手術部位内の流体の温度を感受する。温度が安全閾値、例えば、108°Fを上回る温度を超えると、該温度センサーと電気的に連通する調節手段および冷却モジュールは、冷却モジュールに、流入流体を冷却するように指示する。より温度の低下した流入流体が手術部位に導入され、手術部位の温度を、周辺組織に損傷をもたらすことのない安全レベル(113°F未満)に下げる。一旦受容可能な温度レベルに達したならば、冷却モジュールを用い、要時に流入流体を冷却することによって手術部位の温度レベルを維持することが可能である。関節内視鏡手術の際は、流体の血管外流出を回避し、感染の機会を減らし、合併症を抑制し、医療コストを下げるために、外科医が、タイムリーなやり方で手術を完了することが重要である。
【0044】
装置および方法の好ましい実施態様が、それらが開発された環境を参照しながら説明されたわけであるが、これら実施態様は、本発明の原理を単に例示するものであるにすぎない。本発明の精神、および付属の特許請求の範囲から逸脱することなく、他の実施態様および構成を工夫することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る関節内視鏡手術温度調節システムの一例を示す図
【図2】内部に関節内視鏡装置を配置させた温度調節用流入/流出シースを示す斜視図
【図3】流入/流出シースの一例を示す断面図
【図4】流入/流出シースの他の例を示す断面図
【図5】流入/流出シースの他の例を示す断面図
【図6】流入/流出シースの他の例を示す断面図
【図7】流入/流出シースの他の例を示す断面図
【図8】流入/流出シースの他の例を示す断面図
【図9】冷却モジュールを詳細に示す斜視図
【図10】(A)は冷却体から成るキャニスターを含む冷却モジュールを示す斜視図、(B)はその冷却モジュールの使用例を示す図
【図11】混合バルブを有する温度調節システムを示す図
【図12】直列結合温度警告装置を有する温度調節システムを示す図
【図13】(A)は温度警告装置の一例を示す図で、(B)は温度警告装置の他の例を示す図
【符号の説明】
【0046】
1:肩
2:温度調節システム
3:肩の関節嚢
4:鎖骨
5:肩甲骨
6:上腕骨
7:関節内視鏡、焼灼装置
8:温度センサー
9:流入/流出シース
10:流体供給源
11:冷却モジュール
12:調節手段
13:遠位部
14:遠位先端
15:近位部
16:流通口(孔)
17:ハブ
18:内面
19:チューブの外壁
20:焼灼装置の外面
21、22、23、24:流入および流出用外側腔
25:リブ
26:弾性フランジ
27:中心腔
35:熱吸い込み口
36:ペルチエ冷却器(ペルチエモジュール)
37:流入チューブ
38:キャニスター
39:流入口
40:蓋
41:保持タブ
42:混合バルブ
43:第1流体供給源
44:第2流体供給源
48:直列結合温度警告装置
49:真空源
50:流出チューブ
51:カラー
52:取り付け具
53:温度センサー
54:調節集積回路基板
55:圧電ブザー
56:電源
57:ディジタルディスプレイ
62:視覚的温度表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節内視鏡手術に使用される関節内視鏡手術温度調節システムであって、
関節内視鏡装置を受容するようなサイズおよび形状を有する中心腔と、遠位部と、近位部を備え、前記に加えて更に、流入腔および流出腔を備えるシース;
該シースの遠位部に配置される温度センサー;
前記流入腔と液的に連通する流体供給源;
前記流体供給源と熱的に連通する冷却モジュール;
前記温度センサーおよび冷却モジュールと電気的に連通し、温度センサーによって測定される手術部位の温度が、安全な閾値温度を超えると、冷却モジュールを操作して、流体供給源からの流入流体の温度を下げさせることが可能な調節手段;
を含むことを特徴とする関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項2】
前記流出腔と液的に連通する真空源をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項3】
前記流入腔と液的に連通するように、シースの遠位部に配置される流体開口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項4】
前記流出腔と液的に連通する流体開口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項5】
前記流出腔からの流出流体と熱的に連通する温度警告装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項6】
前記流出流体の温度が、安全閾値を超えると、前記温度警告装置が可聴警告を発することを特徴とする請求項5に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項7】
前記流出流体の温度が、安全閾値を超えると、前記温度警告装置が可視警告を発することを特徴とする請求項5に記載の関節内視鏡手術温度調節システム。
【請求項8】
関節内視鏡装置を受容するようなサイズおよび形状を有する中心腔と、遠位部と、近位部を備え、前記に加えて更に、流入腔および流出腔を備えるシースと、
該シースの遠位部に配置される温度センサーと、
前記流入腔と液的に連通する流体供給源と、
前記流体供給源と熱的に連通する冷却モジュールと、
を含む関節内視鏡手術温度調節システムを用いた関節内視鏡手術温度調節方法において、
前記システムに焼灼装置を設け、該焼灼装置を用いて手術部位の関節内視鏡手術処置を実行する際に、
前記温度センサーによって、該手術部位内の流体温度測定値を採取し、
前記温度センサーによって採取された温度測定値に基づいて前記手術部位における温度を閾値よりも下に維持するように、流入流体を、該手術部位に進入する前に、前記冷却モジュールによって冷却することを特徴とする関節内視鏡手術温度調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−508591(P2009−508591A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531393(P2008−531393)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/036190
【国際公開番号】WO2007/035574
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508002737)カンヌフロウ インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Cannuflow, Inc.
【住所又は居所原語表記】1190 Coleman Road #250, San Jose, CA 95110
【Fターム(参考)】