説明

関節装置及び関節装置を用いたメカニカルユニバーサルハンド

【課題】 ソフトウェアによる制御を全く必要とせずメカニカルグリッパのような機械的動作のみで、把持対象物の位置・姿勢のズレや形状・寸法の異なる対象物を適切に把持できる安価な関節装置及び関節装置を用いたメカニカルユニバーサルハンドを提供する。
【解決手段】 把持フレーム30と、前記把持フレーム30に回転自在に軸支されたシャフト33,34と、前記シャフトにトルク制限機構36を介して連結されたリンクプレート38と、前記シャフトを回転駆動する駆動機構31を備えて第一の関節装置3aを構成し、前記リンクプレート38の先端に第二の関節装置3bの把持フレーム30を連結し、第一及び第二の関節装置3a,3bのシャフト33を駆動連結する駆動連結機構39が設けられたフィンガーユニット2を基端側で連結してメカニカルユニバーサルハンドを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルユニバーサルハンド、当該メカニカルユニバーサルハンドに好適な関節装置、及び、フィンガーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場において利用されている産業用ロボットの把持装置(以下、「ハンド」とも記す。)にはプライヤのような開閉機構で対象物を掴む形態のメカニカルグリッパが多用されているが、多くの場合、対象物を把持するために相対的に運動する二つのリンクまたは三爪チャックのような三リンクを有する機構で構成されている。
【0003】
このようなメカニカルグリッパは高度な制御を必要とせず、機械的に開閉するために、確実な繰り返し動作が保証されているが、把持動作を機械的に実現することから、生産現場の定められた位置・姿勢に整列された既知形状の対象物に対しては確実な把持を保証するが、鋳造部品やプレス成形部品のような様々な曲面を持つ複雑形状の部品を適切に把持することが困難であり、バラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢、或いは対象物の形や寸法が少しでも異なると、最早一つのメカニカルグリッパでは対応できない。
【0004】
そのため、生産現場では、視覚センサを導入して複雑な形状認識処理によって部品の位置・姿勢を測定してメカニカルグリッパで把持可能な把持点を決定したり、対象物の形状・寸法の種類に応じて複数のメカニカルグリッパを準備して、対象物に応じてその都度グリッパを交換するといった多大なコストを必要とする複雑なロボットシステムの導入を余儀なくされている。
【0005】
このような問題を解決するため、人間の手のような機構と人間の手のような巧みな作業機能を有したロボットハンドを実現すべく、人間の手を模した複数の関節を備えた複数の指から構成されるユニバーサルロボットハンドが研究開発されてきた。
【特許文献1】特許第3174848号公報
【非特許文献1】加藤一郎 編著「図解メカニカルハンド」工業調査会出版、1979年、p.127
【非特許文献2】広瀬茂男「多自由ロボットの干渉駆動」、日本ロボット学会誌、Vol.7,No.2、p.128−135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した人間の手を模したロボットハンドは未だ開発途上であり、限られたハンド形状の中に複雑な関節駆動機構をいかに組み込むかという機構設計上の課題、並びに、多くの関節をいかに制御するかという制御ソフトウェア上の課題は未だ十分に解決されておらず、何れも極めて複雑且つ高価であるため、生産現場での実用に供することのできるユニバーサルロボットハンドは実現されていない。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑み、ソフトウェアによる制御を全く必要とせずメカニカルグリッパのような機械的動作のみで、把持対象物の位置・姿勢のズレや形状・寸法の異なる対象物を適切に把持できる安価な関節装置及び関節装置を用いたメカニカルユニバーサルハンドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による関節装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、把持フレームと、前記把持フレームに回転自在に軸支されたシャフトと、前記シャフトにトルク制限機構を介して連結されたリンクプレートと、前記シャフトを回転駆動する駆動機構を備えて構成され、前記リンクプレートの先端に他の把持フレームが連結可能に構成されている点にある。
【0009】
上述の特徴構成によれば、駆動機構により回転駆動されるシャフトと、トルク制限機構を介して連結されたリンクプレートとが一体的にシャフトの回転軸芯周りに回転し、前記リンクプレートの先端に連結された他の把持フレームも一体となって回転する。前記他の把持フレームまたはリンクプレートが例えば把持対象物に接当すると、対象物からの反力によってトルク制限機構に反力トルクが作用し、設定値を超えるとリンクプレートとシャフトがスリップし、前記他の把持フレームまたはリンクプレートは対象物に一定の接触力で接触し続ける。この状態で駆動機構による回転方向を反転させると、前記他の把持フレームまたはリンクプレートは対象物から離間する。つまり、複雑なソフトウェアによる制御アルゴリズムが無くとも、トルク制限機構による反力トルクに対する設定値を適切に設定することにより、対象物に安定した押圧力を付与できる関節を構築することができるようになるのである。
【0010】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記トルク制限機構が、転動軸心が前記シャフトの径方向対して所定の傾斜角度で転動自在に且つ前記シャフトの回転軌道に沿って保持体に保持されたローラ群を、前記シャフトと前記リンクプレートの対向面間に所定の締付力で挟持する回転摩擦機構で構成されている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、シャフトを軸方向の荷重を加えた状態で回転させると、各ローラがシャフト及びリンクプレートに接しながら転動する。その際、各ローラはシャフトの回転軌道に対して所定角度だけ傾斜した方向に転動しようとするのを保持体で規制されながらシャフトの回転軌道に沿って移動するため、各ローラとシャフト及びリンクプレートとの間に軸方向の荷重に比例した摩擦力が発生する。その際、各ローラは、転動しながら滑り摩擦を発生させるので、静摩擦は発生せずに常に動摩擦による安定した抵抗力が得られる。従って、軸方向加重を適切に設定することにより、対象物に極めて安定した押圧力を付与できる関節を構築することができるようになるのである。
【0012】
本発明によるフィンガーユニットの第一の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に記載の関節装置が複数段連結され、各関節装置のシャフトに前記駆動機構からの回転駆動力を順次伝達する駆動伝達機構が設けられている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、各リンクプレートの先端に同様の関節装置を連結し、各関節装置のシャフトを駆動伝達機構を介して駆動伝達できるようにフィンガーユニットを構成してあるので、駆動機構による回転駆動力を先端側の関節装置のシャフトまで伝えることができる。従って、基端側の第一の関節装置のリンクプレートに連結された第二の関節装置の把持フレームが対象物に接当して、対象物からの反力によってトルク制限機構が作動してリンクプレートとシャフトがスリップすると、当該第一の関節装置の回転駆動力により第二の関節装置の把持フレームが対象物に一定の接触力で接触し続けながら、その把持フレームに設けられたシャフトが前記駆動連結機構を介して同様に回転し、第二の関節装置のリンクプレートに連結された第三の関節装置の把持フレームが対象物に接当する。対象物からの反力によって第二の関節装置のトルク制限機構が作動してリンクプレートとシャフトがスリップすると、当該第二の関節装置の回転駆動力により第三の関節装置の把持フレームが対象物に一定の接触力で接触する。このような動作が繰り返されることで、対象物に対して複数点で接当支持されるようになるのである。
【0014】
同第二の特徴構成は、銅請求項4に記載した通り、上述の第一特徴構成によるフィンガーユニットに加えて、前記関節装置の把持フレームに当該関節装置のリンクプレートに連結された他の関節装置の逆方向への回転を所定位置で阻止するストッパ機構を設けてある点にある。
【0015】
上述の特徴構成によれば、アクチュエータの回転方向を反転させることにより、逆方向に回転するシャフトに連動してリンクプレートが逆方向に回転駆動され、対象物に接当している各把持フレームが対象物から離間する。その後、ストッパ機構により他の関節装置の逆方向への回転が所定位置で阻止されるので、把持動作の後の開放動作では前記所定位置を初期位置とする一定の初期姿勢に確実に復帰させることができるようになるのである。
【0016】
本発明によるメカニカルユニバーサルハンドの特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に記載の関節装置または上述のフィンガーユニットを複数本備え、対象物に対して把持可能に対向配置されてなる点にある。
【0017】
上述の構成によれば、多様な形状の任意の対象物に対して、その具体的な形状を認識しなくとも、当該対象物に対向して配置された複数の関節装置またはフィンガーユニットによって複数点で安定した押圧力で接当支持されるので、確実に把持することができるようになるのである。そして、その場合に、各関節の駆動を複雑な制御アルゴリズムによって制御する必要が無いので、フレキシブルなメカニカルユニバーサルハンドを極めて安価に構成することができるのである。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明によれば、ソフトウェアによる制御を全く必要とせずメカニカルグリッパのような機械的動作のみで、把持対象物の位置・姿勢のズレや形状・寸法の異なる対象物を適切に把持できる安価な関節装置及び関節装置を用いたメカニカルユニバーサルハンドを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明による関節装置及び関節装置を用いたフィンガーユニット及びメカニカルユニバーサルハンドの実施の形態を説明する。図1及び図5に示すように、フィンガーユニット2は、基端側に配置される第一関節装置3aと、第一関節装置3aのリンクプレート38a先端側に連結された第二関節装置3bと、第二関節装置3bのリンクプレート38b先端側に連結された第三関節装置3cと、第三関節装置3cのリンクプレート38c先端側に連結された先端把持部4とで構成されている。
【0020】
前記第一関節装置3(3a)は、図2に示すように、サイドプレート300,301とベースプレート302で構成される把持フレーム30と、前記把持フレーム30にベアリング機構30aを介して回転自在に支持された回転軸32と、前記回転軸32に嵌入された一対のシャフト33,34と、前記シャフト33,34間にトルク制限機構36を介して挟持されたリンクプレート38aと、前記シャフト33,34を回転駆動する駆動機構31と、前記駆動機構31による駆動力を後段の関節装置3b、3cに伝達する駆動伝達機構39を備えて構成されている。
【0021】
前記駆動機構31は、前記第一関節装置3(3a)の基端側にフレーム連結されたモータブラケット50に装着されたアクチュエータとしてのエアモータ51の出力軸52からの動力で前記シャフト33を回転する機構で、前記出力軸52に嵌入固定された第一傘歯車53と噛合して回転する第二傘歯車31で構成されている。
【0022】
前記第二傘歯車31と前記シャフト33及び前記回転軸32aが一体回転するように取り付けられ、前記回転軸32に固定されたプーリ39a及びタイミングベルト39bによって前記駆動伝達機構39が構成されている。
【0023】
前記トルク制限機構36は、図4(a),(b),(c)に示すように、転動軸心bがシャフト33の径方向に対して所定の傾斜角度αで転動自在に且つ前記シャフト33の回転軌道に沿って保持体36aに保持されたローラ36b群を、前記シャフト33と前記リンクプレート38の対向面間に所定の締付力で挟持された回転摩擦機構で構成されている。尚、これらは回転摩擦機構を構成する最小限の部材であり、実際には前記シャフト33、リンクプレート38及び保持体36aは同軸状態を保つように図示しないハウジング等に組付けられている。
【0024】
詳述すると、前記シャフト33は環状に形成され、前記リンクプレート38との対向面は平面上に形成されている。各ローラ36bは軸方向に一様に延びる円柱形状をなし前記シャフト33の周方向に等間隔で配列されている。また、各ローラ36bの両端面は前記保持体36aとの摩擦を少なくするために凸球面状に形成されている。前記リンクプレート38も前記シャフト33との対向面が環状の平面状に形成されている。
【0025】
前記保持体36aも同様に環状に形成され、その軸方向の厚さはローラ36bの外径よりも小さく形成されている。前記保持体36aには各ローラ36bを保持する多数の孔36cが設けられ、各孔36cには各ローラ36bが転動自在に収容されている。また、各孔36cは、図4(c) に示すように各ローラ36bの転動軸bが前記シャフト33の径方向aに対して所定の角度αだけ傾斜するように形成されている。
【0026】
従って、図4(d)に示すように、前記シャフト33を軸方向の荷重を加えた状態で回転させると、各ローラ36bが前記シャフト33及び前記リンクプレート38に接しながら転動し、これに追従して前記保持体36aも回転する。その際、各ローラ36bは、前記シャフト33の回転軌道に対して角度αだけ傾斜した方向に転動しようとするのを前記保持体36aで規制されながら前記シャフト33の回転軌道に沿って移動するため、各ローラ36bとシャフト33及びリンクプレート38との間に軸方向の荷重に比例した摩擦力が発生する。
【0027】
その際、各ローラ36bは転動しながら滑り摩擦を発生させるので、静摩擦は発生せずに常に動摩擦による安定した抵抗力が得られ、仮に初期の段階で静摩擦が発生したとしてもローラ36bの転動によって瞬時に動摩擦に移行する。このように、上述の回転摩擦装置によれば、図2に示す締付けボルト37による締付け力によって、シャフト33の回転運動に軸方向の加重に比例した任意の抵抗力を付与することができ、しかも締付け力を調整することにより、シャフト33の抵抗力を極めて容易に制御することができる。その際、前記滑り摩擦は各ローラ36bの転動を伴なうので、スティック・スリップの原因となる静摩擦を発生させることがなく、常に安定した抵抗力を得ることができるのである。
【0028】
図1及び図3に示すように、前記第二関節装置3b、第三関節装置3cも上述の第一関節装置と同様に、サイドプレート300,301とベースプレート302で構成される把持フレーム30と、前記把持フレーム30にベアリング機構30aを介して回転自在に支持された回転軸32b,32cと、前記回転軸32b,32cに嵌入された一対のシャフト33,34と、前記シャフト33,34間にトルク制限機構36を介して挟持されたリンクプレート38b,38cと、前記シャフト33,34を回転駆動する駆動機構31とを備えて構成され、前記第二関節装置3bには、前記駆動機構31による駆動力を後段の関節装置3cに伝達する駆動伝達機構39を備えてある。前記第二関節装置3b及び第二関節装置3cの駆動機構31は、基端側の関節装置の駆動連結機構39を介して駆動されるプーリ39cで構成される。
【0029】
前記リンクプレート38a,38b,38cの先端側は夫々第二関節機構3bのベースプレート302、第三関節機構のベースプレート302、先端把持部4のベースプレート402にボルト固定されている。従って第一関節装置3aがその回転軸32a周りに回転するとリンクプレート38aと一体となって第二関節装置3bが前記回転軸32回りに回転し、第二関節装置3bがその回転軸32b周りに回転するとリンクプレート38bと一体となって第三関節装置3cが前記回転軸32b回りに回転する。
【0030】
上述のフィンガーユニット2によれば、各リンクプレート38a,38bの先端に同様の関節装置3b,3cを連結し、各関節装置3a,3b,3cのシャフトを駆動伝達機構39を介して駆動伝達できるように構成してあるので、関節装置3aの駆動機構31に付与された回転駆動力を先端側の関節装置3b,3cのシャフト33,34まで伝えることができる。
【0031】
このような構成を採用したフィンガーユニット2の把持動作について詳述する。フィンガーユニット2を把持対象物に対向させ、エアモータ51を正転方向に駆動すると、各関節装置3a,3b,3cが把持方向に回転駆動される。基端側の第一の関節装置3aのリンクプレート38aに連結された第二の関節装置3bの把持フレーム30が対象物に接当すると、対象物からの反力を受け、その値が所定値以上になるとトルク制限機構36が作動する。つまり、シャフト33,34間に挟持されるリンクプレート38aがシャフト33,34に対してスリップする。このとき、第一の関節装置3aの回転駆動力により第二の関節装置3bの把持フレーム30は対象物に一定の接触力で接触し続けながら、その把持フレーム30に設けられたシャフト33が前記駆動連結機構39を介して同様に回転する。次に、第二の関節装置3bのリンクプレート38bに連結された第三の関節装置3cの把持フレーム30が対象物に接当すると、対象物からの反力によって第二の関節装置のトルク制限機構36が作動してリンクプレート38bとシャフト33,34がスリップする。このとき、第二の関節装置3bの回転駆動力により第三の関節装置3cの把持フレーム30が対象物に一定の接触力で接触する。このような動作が繰り返されることで、対象物に対して複数点で接当支持することができるようになるのである。この動作状態が図6に示されている。
【0032】
さらに、図5及び図6に示すように、前記関節装置3b、3cの把持フレーム30には、当該関節装置3b、3cのリンクプレート38b、38cに連結された他の関節装置または把持フレームの逆方向への回転を所定位置で阻止するストッパ機構40としての板状体が前記把持フレーム30の上端部から前記リンクプレートの延出方向と同方向に延出配置されており、把持作動の後の開放作動時に常に一定姿勢に戻るように構成されている。
【0033】
つまり、エアモータ51を正方向に回転させることにより実行される上述の把持動作の後に、前記エアモータ51を逆方向に回転させることにより、逆方向に回転するシャフト33に連動してリンクプレート38(38a,38b,38c)が逆方向に回転駆動され、対象物に接当している各把持フレーム30が当該対象物から離間する。その後、ストッパ機構40により関節装置の逆方向への回転が所定位置で阻止されるので、前記トルク制限機構36としての回転摩擦機構が作動して前記リンクプレートが空回りし、把持動作の後の開放動作で前記所定位置を初期位置とする一定の初期姿勢に確実に復帰させることができるようになるのである。
【0034】
尚、ストッパ機構40としての板状体が前記把持フレーム30の上端部から前記リンクプレートの延出方向と同方向に延出配置され、他の関節装置または把持フレームの逆方向への回転を所定位置で阻止するもの以外に、ストッパ機構40としての板状体が前記把持フレーム30の上端部から前記リンクプレートの延出方向と反対方向に延出配置され、他の関節装置の把持フレームに接当することで自身の把持フレームの逆方向への回転を所定位置で阻止するように構成するものであってもよく、その具体的構成は適宜変更することができる。
【0035】
尚、図5によれば、フィンガーユニットが直線状に整列する姿勢を初期姿勢としてそのような初期姿勢に復帰するようにストッパが構成されているが、ストッパ機構40の具体構成はこのようなものに限定されるものではなく、前記トルク制限機構36が所定の姿勢で作動するように前記リンクプレートに対して間接的にまたは直接的に負荷を与える機構で構成することができる。尚、全ての関節装置にストッパ機構40を備える必要は必ずしも無い。
【0036】
上述したフィンガーユニット2を複数本備え、対象物に対して把持可能に対向配置し、単一または複数のアクチュエータにより基端側の関節装置の駆動機構を駆動することにより、任意形状の対象物に対応して適切に把持動作が行なえるメカニカルユニバーサルハンドが構成される。例えば、図7に示すように、二本のフィンガーユニット2を互いに対向するように配置して、対象物を挟み且つ握るように把持するメカニカルユニバーサルハンド1が構成できる。この場合、基端側の関節装置に対する駆動方向は互いに逆方向である必要があり、単一のアクチュエータで駆動する場合、その駆動方向を反転させる反転機構が必要となる。また、図8に示すように、対象物に対して三方向から対向させた三本のフィンガーユニット2を基端側で連結することで、二方向よりも確実に把持可能なメカニカルユニバーサルハンド1を構成することも可能となる。この場合にも基端側に配置されるアクチュエータは単一または複数の何れでもよいが、互いに対向する側へ関節が作動するように駆動するように構成する点は同様である。
【0037】
即ち、上述のメカニカルユニバーサルハンドによれば、対象物を包み込むように把持することが可能となるので、対象物の形状や大きさが多少変わるものであっても、またバラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢が夫々異なるものであっても極めて正確且つ容易に把持することができる。また、把持対象物の硬度に応じて上述の締付けボルト37による締付け力を調整するだけで対応することができる。しかも、その作動時にアクチュエータのオンオフ信号、さらには駆動方向信号に対する制御のみが必要とされるに過ぎず、高価な制御ソフトウェアの開発等が不要で、従来の産業用ロボット制御装置に対する制御回路や制御ソフトウェアがほぼそのまま使用できるという経済性に富んだものとなる。
【0038】
尚、上述のフィンガーユニットやメカニカルユニバーサルハンドの構造については基本的な要素のみの説明であり、実際に設計する際には、本発明の作用効果が奏される範囲で種々の変更が許容されるものである。例えば、把持フレームを弾性を有する樹脂カバー体で被覆し、把持対象物を衝撃から保護できるように構成することも可能である。
【0039】
以下に本発明による関節装置及び関節装置を用いたフィンガーユニット及びメカニカルユニバーサルハンドの別の実施の形態を説明する。上述の実施形態では、トルク制限機構として回転摩擦機構を一対のシャフトとリンクプレートの両面に夫々配置するものを説明したが、回転摩擦機構は一方の対向面にのみ配置し、他方の対向面にはスラストベアリングを配置するものであってもよい。また、複数枚のリンクプレートまたは基端側が複数に分岐したリンクプレートの夫々を回転摩擦機構を介して複数枚のシャフトで挟持するものであってもよい。
【0040】
上述の実施形態では、前記トルク制限機構36は、転動軸心bがシャフト33の径方向対して所定の傾斜角度αで転動自在に且つ前記シャフト33の回転軌道に沿って保持体36aに保持されたローラ36b群を、前記シャフト33と前記リンクプレート38aの対向面間に所定の締付力で挟持された回転摩擦機構で構成されているものを説明したが、転動軸心bがシャフト33の径方向aとのなす角度は得に限定するものではなく適宜設定されるものであり、その具体的構成は特開平08−074843号公報に記載されているように適宜構成することが可能である。
【0041】
上述の実施形態では、トルク制限機構として回転摩擦機構を用いたものを説明したが、トルク制限機構としてはこれに限るものではなく、公知のトルクリミッタで構成することも可能である。
【0042】
上述の実施形態では、アクチュエータとしてエアモータを用いたものを説明したが、これに限るものではなく、電磁モータ、油圧モータ、電磁回転ソレノイド、パワーシリンダ等の直動アクチュエータ等、適宜使用することができることはいうまでもない。また駆動機構として傘歯車を用いたものを説明したが、これもそのように限定するものではなく、適宜公知の駆動機構を用いることができる。
【0043】
上述の実施形態では、駆動伝達機構をプーリとタイミングベルトで構成したものを説明したが、駆動伝達機構としては、ギアートレイン、コントロールワイヤ、ベルト、チェーン等の無限回転機構を採用することもできる。
【0044】
上述の実施形態では、三個の関節装置で一個のフィンガーユニットを構成するものを説明したが、フィンガーユニットを構成する関節装置の数は特に限定するものではなく、一個の関節装置でフィンガーユニットを構成するものであってもよい。さらには、メカニカルユニバーサルハンドを構成するフィンガーユニットの数も特に限定するものではない。
【0045】
上述の実施形態で説明した関節装置の具体的構造は一実施形態に過ぎず、本発明の範囲がこれによって制限されるものではなく、同様の作用効果を奏する範囲において適宜構成を変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるフィンガーユニットの平面構成図
【図2】本発明による関節装置の平面構成図
【図3】本発明によるフィンガーユニットの要部の平面構成図
【図4】トルク制限機構として回転摩擦機構の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は要部説明図、(c)はローラ群の配置姿勢の説明図、(d)は作用説明図
【図5】(a)は本発明によるフィンガーユニットの平面図、(b)は同正面図
【図6】本発明によるフィンガーユニットの動作説明図
【図7】本発明によるメカニカルユニバーサルハンドの動作説明図
【図8】別実施形態を示し、本発明によるメカニカルユニバーサルハンドの動作説明図
【符号の説明】
【0047】
1:メカニカルユニバーサルハンド
2:フィンガーユニット
3,3a,3b,3c:関節装置
4:先端把持部
30:把持フレーム
31:駆動機構(第二傘歯車)
32,32a,32b,32c:回転軸
33,34:シャフト
36:トルク制限機構(回転摩擦機構)
36a:保持体
36b:ローラ
36c:孔
38,38a,38b,38c:リンクプレート
39:駆動伝達機構
40:ストッパ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持フレームと、前記把持フレームに回転自在に軸支されたシャフトと、前記シャフトにトルク制限機構を介して連結されたリンクプレートと、前記シャフトを回転駆動する駆動機構を備えて構成され、前記リンクプレートの先端に他の把持フレームが連結可能に構成されている関節装置。
【請求項2】
前記トルク制限機構が、転動軸心が前記シャフトの径方向対して所定の傾斜角度で転動自在に且つ前記シャフトの回転軌道に沿って保持体に保持されたローラ群を、前記シャフトと前記リンクプレートの対向面間に所定の締付力で挟持する回転摩擦機構で構成されている請求項1記載の関節装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の関節装置が複数段連結され、各関節装置のシャフトに前記駆動機構からの回転駆動力を順次伝達する駆動伝達機構が設けられているフィンガーユニット。
【請求項4】
前記関節装置の把持フレームに当該関節装置のリンクプレートに連結された他の関節装置の逆方向への回転を所定位置で阻止するストッパ機構を設けてある請求項3記載のフィンガーユニット。
【請求項5】
請求項1若しくは2記載の関節装置または請求項3若しくは請求項4記載のフィンガーユニットを複数本備え、対象物に対して把持可能に対向配置されてなるメカニカルユニバーサルハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−198748(P2006−198748A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15157(P2005−15157)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(503345879)東洋プレス工業株式会社 (4)
【出願人】(504141023)
【出願人】(596132721)財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】