説明

関節角度計測装置

【課題】従来の関節角度計測装置は、ビデオカメラによって被験者を撮影するスペースや、画像解析を行うコンピュータ等が必要となるので、設備が大がかりなものとなり、製品コストが増大している。
【解決手段】本発明による関節角度計測装置は、例えば上腕及び前腕や腰及び上腿等の関節を挟む第1及び第2部位に第1及び第2慣性センサ1,2が取付けられ、信号処理器3の信号回路34がcos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで関節の曲げ角度φを算出する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節角度計測装置に関し、特に、関節を挟む第1及び第2部位に取り付けられた第1及び第2慣性センサからの信号に基づいて、信号処理器が関節の曲げ角度φを算出するように構成することで、大がかり設備を不要にでき、製品コストを低減できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の関節角度計測装置としては、例えば特許文献1等に示された装置が用いられている。すなわち、従来装置では、各所にマーカが貼り付けられた被験者をビデオカメラで撮影し、ビデオカメラによって撮影された画像を解析することで関節の曲げ角度を算出すめるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−2817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の関節角度計測装置では、ビデオカメラによって被験者を撮影するスペースや、画像解析を行うコンピュータ等が必要となるので、設備が大がかりなものとなり、製品コストが増大している。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大がかり設備を不要にでき、製品コストを低減できるようにする関節角度計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る関節角度計測装置は、関節を挟む第1及び第2部位に取り付けられた第1及び第2慣性センサと、前記第1及び第2慣性センサからの信号に基づいて、前記関節の曲げ角度φを算出する信号処理器とを備える。
【0007】
また、前記第1部位の方位角及びピッチ角をψ及びθとし、前記第2部位の方位角及びピッチ角をψ及びθとした場合に、
前記信号処理器は、
前記第1部位の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を次のように規定し、
【数1】

前記第2部位の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を次のように規定し、
【数2】

cos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで前記関節の曲げ角度φを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の関節角度計測装置によれば、関節を挟む第1及び第2部位に取り付けられた第1及び第2慣性センサからの信号に基づいて、信号処理器が関節の曲げ角度φを算出するので、広いスペースや複雑な画像解析を不要にできる。すなわち、大がかり設備を不要にでき、製品コストを低減できる。
【0009】
また、信号処理器は、cos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで関節の曲げ角度φを算出するので、より確実に曲げ角度φを算出でき、装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1による関節角度計測装置を示す構成図である。
【図2】図1の第1及び第2慣性センサが取付けられる第1及び第2部位の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による関節角度計測装置を示す構成図であり、図2は、図1の第1及び第2慣性センサ1,2が取付けられる第1及び第2部位5,6の関係を示す説明図である。図1において、関節角度計測装置には、第1及び第2慣性センサ1,2と信号処理器3とが設けられている。第1及び第2慣性センサ1,2は、例えば上腕及び前腕や腰及び上腿等の図2に示す関節4を挟む被験者の第1及び第2部位5,6に取付けられている。
【0012】
図1に示すように、第1慣性センサ1は、X,Y,Zの3軸のジャイロ部10と、3軸の加速度計部11と、温度センサ部12とを有しており、例えばMEMS慣性センサ等から構成されている。周知のように、ジャイロ10は各軸回りの角速度を検出するものであり、加速度計部11は各軸に沿う加速度を検出するものであり、温度センサ部12はジャイロ部10及び加速度計部11の出力信号の補償に用いられるものである。すなわち、第1慣性センサ1は、空間に対する第1部位5の姿勢を検出するためのものである。図1では具体的には示さないが、第2慣性センサ2の構成も第1慣性センサ1の構成と同様であり、第2慣性センサ2は、空間に対する第2部位6の姿勢を検出する。
【0013】
信号処理器3は、第1及び第2慣性センサ1,2に有線で接続されており、第1又は第2慣性センサ1,2とともに第1及び第2部位5,6のいずれか一方に取付けられている。信号処理器3には、充電回路30、バッテリ31、DC/DC変換器32、内部電源回路33、信号回路34、及びアンテナ35が設けられている。充電回路30は、外部電源36(商用電源)からの交流100Vの電力をバッテリ31に充電するための回路である。DC/DC変換器32は、バッテリ31からのDC電圧を適宜変圧して、内部電源回路33を通して信号回路34に電力を供給する。
【0014】
信号回路34には、MUX40、A/D変換器41、SRAM42、FRASH43、MPU44、SIO45、及びRFユニット46が設けられている。MUX40は、第1及び第2慣性センサ1,2のジャイロ部10、加速度計部11、及び温度センサ部12からそれぞれ入力される複数のアナログ信号を1つのA/D変換器41でデジタル信号に変換するために、ジャイロ信号、加速度計信号、及び温度信号を定期的に切換えるためのアナログスイッチである。SRAM42は、展開されているプログラムや演算中のデータを一次保存するための記憶素子である。FRASH43は、プログラム及び補正量を格納するとともに、計測結果及び演算結果を記憶するための記憶素子である。MPU44は、計測データ変換(電圧から物理量への変換)、姿勢角演算、及び外部との通信の制御を行う演算素子である。SIO45は、外部との通信を行うためのインターフェースである。RFユニット46は、周知の無線通信モジュールであり、アンテナ35を介して外部装置(図示せず)からの例えば計測開始指令等の情報を受信するとともに、計測結果及び演算結果を外部装置に送信する。
【0015】
信号処理器3、すなわち信号回路34は、第1及び第2慣性センサ1,2からの信号に基づいて、関節4の曲げ角度φを算出する。ここで、第1慣性センサ1が検出した第1部位5の方位角及びピッチ角をψ及びθとし、第1部位5の初期位置を(X01,Y01,Z01)=(1,0,0)とすると、信号処理器3は、次の[数3]の式から、第1部位5の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を[数4]のように規定する。[数3]の式は、第1部位5が初期位置(X01,Y01,Z01)から方位角ψ及びピッチ角θの順に回転されたことを示す座標変換式である。
【0016】
【数3】

【0017】
【数4】

【0018】
同様に、信号処理器3は、第2慣性センサ2が検出した第2部位6の方位角及びピッチ角をψ及びθとし、第2部位6の初期位置を(X02,Y02,Z02)=(1,0,0)とすると、第2部位6の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を[数5]のように規定する。
【0019】
【数5】

【0020】
第1及び第2部位5,6間の関節4の曲げ角度φを求めるためには、第1及び第2部位5,6の内積(各成分の積の和)を計算し、その値のアークコサインを求めればよい。すなわち、信号回路34は、cos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで関節4の曲げ角度φを算出する。
【0021】
このような関節角度計測装置によれば、関節4を挟む第1及び第2部位5,6に取り付けられた第1及び第2慣性センサ1,2からの信号に基づいて、信号処理器3が関節4の曲げ角度φを算出するので、広いスペースや複雑な画像解析を不要にできる。すなわち、大がかり設備を不要にでき、製品コストを低減できる。
【0022】
また、信号処理器3は、cos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで関節の曲げ角度φを算出するので、より確実に曲げ角度φを算出でき、装置の信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0023】
1,2 慣性センサ
3 信号処理器
4 関節
5,6 第1及び第2部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節(4)を挟む第1及び第2部位(5,6)に取り付けられた第1及び第2慣性センサ(1,2)と、
前記第1及び第2慣性センサ(1,2)からの信号に基づいて、前記関節(4)の曲げ角度φを算出する信号処理器(3)と
を備えることを特徴とする関節角度計測装置。
【請求項2】
前記第1部位(5)の方位角及びピッチ角をψ及びθとし、前記第2部位(6)の方位角及びピッチ角をψ及びθとした場合に、
前記信号処理器(3)は、
前記第1部位(5)の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を次のように規定し、
【数1】

前記第2部位(6)の3次元空間中の座標(X,Y,Z)を次のように規定し、
【数2】

cos−1(X・X+Y・Y+Z・Z)の演算を行うことで前記関節(4)の曲げ角度φを算出することを特徴とする請求項1記載の関節角度計測装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64483(P2011−64483A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213125(P2009−213125)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】