防御的抗HIV−1抗体の産生を誘導する方法
本発明は、概して、HIVワクチン接種のための免疫原に、ならびに特にHIVエンベロープおよび非HIV免疫原の組み合わせを用いてB細胞生殖細胞系列およびクローン中間体を標的化することにより防御的抗HIV抗体の産生を誘導する方法に関する。本発明は、そのような方法における使用に適した組成物にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年2月25日に出願された米国仮出願第61/282,526号、2010年7月27日に出願された米国仮出願第61/344,457号、2010年8月25日に出願された米国仮出願第61/344,580号、および2010年9月1日に出願された米国仮出願第61/344,622号からの優先権を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
この発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により与えられた助成金第AI067854号、第AI24335号および第AI81579号の下での政府援助によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、HIV−1ワクチン接種のための免疫原に、ならびに特に非HIV−1およびHIV−1免疫原の組み合わせを用いてB細胞生殖細胞系列およびクローン中間体(intermediates)を標的化することにより防御的抗HIV−1抗体の産生を誘導する方法に関する。本発明は、そのような方法における使用に適した組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
伝染/始祖(transmitted/founder)HIV−1エンベロープに対する最初の抗体応答は非中和的であり、Env gp41を標的とし、血漿ウイルス血症の出現の平均13日後に起こる(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))。最初の抗体応答と同時に起こるHIV−1に対する最初のT細胞応答はHIV−1のT細胞エピトープ内での変異を駆動するが、HIV−1に対する最初のgp41抗体応答はそれをしない。むしろ、それは自己由来中和抗体応答であり、それは伝染のおおよそ3ヶ月後まで遅れ、それは抗体回避変異体と関係する最初の中和抗体応答である(McMichael et al, Nature Rev. Immunol. 10:11-23 (2010))。
【0005】
稀な広く反応する中和抗体が結合するHIV−1エンベロープ上の4つのエピトープは、CD4結合部位(CD4BS)(mab(モノクローナル抗体)IgG1b12)(Zwick et al, J. Virol. 77(10):5863-5876 (2003))、ヒトmab 2F5および4E10により定められる膜近位外部領域(MPER)エピトープ(Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004), Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757-759 (2003), Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005), Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996))、ならびにヒトmab 2G12により定められるマンナングリカンエピトープ(Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205-218 (2003))である。これらの4種類の稀なヒトmabは全て普通ではなく:2種類はIgG3であり(2F5および4E10)、1種類は独特のIg二量体構造を有し(2G12)、1種類は非常に疎水性のCDR3を有し(2F5)(Ofek et al, J. Virol. 198:10724 (2004))、そして4種類全てにおいて、そのCDR3が異常に長い(Burton et al, Nature Immunol. 5(3):233-236 (2004), Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755-762 (2004), Zwick et al, J. Virol. 78(6):3155-3161 (2004), Cardoso et al, Immunity 22:163-172 (2005))。これらの内で、2F5および4E10様のヒトmabは極めて稀である。急性HIV−1患者はMPERまたは2G12エピトープに対する抗体を作らず、MPERはHIVエンベロープのアミノ酸652〜683として定義することができる(Cardoso et al, Immunity 22:163-173 (2005)(例えば、QQEKNEQELLELDKWASLWNWFDITNWLWYIK)。CD4結合部位(BS)抗体は一般にHIV−1感染の早期に作られるが、これらの抗体は一般にmab IgG1b12により示される広い中和のスペクトルを有しない(Burtonet al, Nat. Immunol. 5(3):233-236 (2004))。
【0006】
HIV−1エンベロープ(Env)に対する効果的でない初期抗体応答の病因を理解するため、HIV−1の伝染の17〜30日後の5人の急性感染した対象からの単一の血球または骨髄形質細胞からの重および軽鎖(VHおよびVL)遺伝子の免疫グロブリン可変領域の増幅のためのPCRを行った。HIV−1感染により誘導される形質細胞応答の特異性を決定した。伝染したHIV−1により誘導された単一のヒト形質細胞のVHおよびVL遺伝子のPCR増幅を用いて、HIV−1に対する初期の形質細胞/形質芽球応答を研究した。HIV−1に対する最初の抗体応答はHIV−1 Env gp41に対して誘導されること、そしてgp41は既存の記憶B細胞クローンにおいて抗体応答を誘導し、結果としていくつかの宿主および細菌の分子、特にヒトの腸細菌叢の分子と交差反応する低親和性、多反応性の抗Env抗体を生じさせることが分かった。
【0007】
本発明は、少なくとも部分的に、初期の抗HIV−1 Env gp41抗体および稀な広く中和する抗体の両方の源を同定するように設計された研究の結果もたらされる。本発明はさらに、HIV−1 gp41 MPERの2F5、およびおそらく4E10に構造的に類似している、ほとんどの温血脊椎動物において発現している細胞タンパク質の同定の結果もたらされる。
【0008】
本発明は、HIV−1に対する広く中和する抗体を生じるように駆動され得るナイーブB細胞のプールを標的とするように設計されたHIV−1ワクチンを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008)
【非特許文献2】McMichael et al, Nature Rev. Immunol. 10:11-23 (2010)
【非特許文献3】Zwick et al, J. Virol. 77(10):5863-5876 (2003)
【非特許文献4】Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004)
【非特許文献5】Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757-759 (2003)
【非特許文献6】Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005)
【非特許文献7】Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996)
【非特許文献8】Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205-218 (2003)
【非特許文献9】Ofek et al, J. Virol. 198:10724 (2004)
【非特許文献10】Burton et al, Nature Immunol. 5(3):233-236 (2004)
【非特許文献11】Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755-762 (2004)
【非特許文献12】Zwick et al, J. Virol. 78(6):3155-3161 (2004)
【非特許文献13】Cardoso et al, Immunity 22:163-172 (2005)
【発明の概要】
【0010】
概して、本発明は、HIV−1ワクチン接種のための免疫原に関する。より具体的には、本発明は、非HIV−1およびHIV−1免疫原の組み合わせを用いてB細胞生殖細胞系列およびクローン中間体を標的化することにより防御的抗HIV−1抗体の産生を誘導する方法に関する。本発明は、そのような方法における使用に適した組成物にも関する。
【0011】
本発明の目的および利点は、以下の記述から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1.H1ソロモン諸島(Soloman Islands)ヘマグルチニンに対する代表的なインフルエンザ抗体クローン。
【図2】図2.HIV−1の伝染の約20日後の患者684−6における形質細胞抗体レパートリー。
【図3】図3.推定される中間クローン抗体の生成。
【図4】図4.そのクローンの発生のどこでgp41との反応性が獲得されたのかを決定するために、クレードB gp41、自己由来gp140およびグループMコンセンサスgp140との反応性に関してアッセイされた、推定される生殖細胞系列およびクローンメンバー中間体。
【図5】図5.2番目の中間前駆体抗体において獲得されたクローン684−6Bの反応性(図4も参照)。
【図6】図6.mgの量で産生され、gp41に対する抗体結合の解離定数(Kd)に関して分析された、追加の推定される中間抗体クローン。
【図7】図7.患者684−6のクローン684−6B生殖細胞系列におけるgp41反応性の獲得および推定される中間抗体。
【図8】図8.6846クローン52の生殖細胞系列および推定される中間gp41抗体の多反応性。
【図9】図9.好気性腸細菌叢のクローン684−6B抗体との反応性。
【図10】図10Aおよび10B.腸抽出物のBlue Native−PAGEおよびMojo抗体に対するウェスタンブロット画像。図10A.クーマシーブルー画像。図10B.ウェスタンブロット画像。
【図11】図11.腸抽出物のMojo抗体に対するウェスタンブロット画像−非還元的、HV00276に対して。
【図12】図12.腸抽出物のMojo抗体に対するウェスタンブロット画像−還元的、HV00276に対して。
【図13】図13Aおよび13B.1b12生殖細胞系列抗体は脂質(PC:CLリポソーム)に結合する。図13A.HIV89.6 gp120への結合。図13B.脂質(PC:カルジオリピン)への結合。
【図14】図14.4E10 VHノックインマウスでは、骨髄において4E10 VHを発現するB細胞の大部分がプレB〜未熟B細胞期において削除される(deleted)。
【図15】図15.広く中和する抗体の誘導に関する2つの障害。第1の障害は、稀な広く中和する抗体を産生するB細胞を刺激するように現在設計されているワクチンは、免疫原に応答することが必要とされているナイーブB細胞の生殖細胞系列B細胞受容体と反応しないことである。HIV−1 Envに対する初期のB細胞応答は感染後早期に開始されるが、初期のgp41抗体応答を作るそのB細胞抗体クローンが既存の多反応性の自然B細胞クローン(それの生殖細胞系列はgp41とも反応せず、gp41との交差反応性は宿主または外来の抗原に駆動されるクローン拡大により獲得されるため、それのgp41に対する反応性はクローン性抗体発生の後期に獲得される)に由来するような、gp41の宿主または既存の外来分子との交差反応性が存在する。一度gp41の反応性が獲得されたら、次いでgp41はクローンの拡張を駆動する。ワクチン開発に対する第2の障害は、これらの抗体の両方が中和するために脂質反応性を有する長い疎水性のCDR3を必要とすること(Alam et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106:20234-9 (2009))、ならびに2F5および4E10 VHはノックインマウスにおいて削除を促進するのに十分に自己反応性であることを示す研究から来ている(Verkoczy et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:181-186 (2010))。
【図16A】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16B】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16C】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16D】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16E】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16F】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図17】図17.HIV−1 Env gp140コンストラクトの設計。
【図18】図18.Blue Native−PAGEおよびSDS−PAGEによる、急性HIV−1 EnvおよびグループMコンセンサスHIV−1 Envの分析。
【図19A】図19Aおよび19B.図19A.グループMコンセンサスHIV−1 Env、CON−Sおよび亜型C急性HIV−1 Env、1086C、亜型B慢性HIV−1 Env、JRFLの免疫原性。図19B.方法。
【図19B】図19Aおよび19B.図19A.グループMコンセンサスHIV−1 Env、CON−Sおよび亜型C急性HIV−1 Env、1086C、亜型B慢性HIV−1 Env、JRFLの免疫原性。図19B.方法。
【図20】図20.JRFL Env gp140 CFのPNGaseによる糖鎖除去。
【図21A】図21Aおよび21B.ELISAにおけるJRFL HIV Env gp140CFの抗原性。
【図21B】図21Aおよび21B.ELISAにおけるJRFL HIV Env gp140CFの抗原性。
【図22】図22.SPRにおけるJRFL gp140 Envの抗原性。
【図23】図23.広く中和する抗体により標的とされるHIV−1 gp41の融合中間体状態。
【図24A】図24Aおよび24B.図24A.膜に固定されたgp41−interの設計。図24B.2F5および4E10 mAbは、膜にコンジュゲートされたgp41−interに、nMのKdおよびほとんど不可逆的な解離速度で結合する。
【図24B】図24Aおよび24B.図24A.膜に固定されたgp41−interの設計。図24B.2F5および4E10 mAbは、膜にコンジュゲートされたgp41−interとnMのKdおよびほとんど不可逆的な解離速度で結合する。
【図25】図25.リード候補免疫原。
【図26】図26.TLRリガンドおよび封入された免疫調節性リガンドを有するgp41−interリポソーム。
【図27】図27.HIV−1の伝染始祖Env 1086.C、089.C、040_C9、および63521に関するアミノ酸配列およびコドン最適化されたコーディング配列。
【図28】図28.クレードB JRFLおよび6240 gp140 Env配列およびコーディング配列。
【図29−1】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−2】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−3】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−4】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−5】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−6】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−7】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−8】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−9】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−10】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−11】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−12】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−13】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−14】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−15】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−16】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−17】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−18】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−19】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−20】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−21】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年2月25日に出願された米国仮出願第61/282,526号、2010年7月27日に出願された米国仮出願第61/344,457号、2010年8月25日に出願された米国仮出願第61/344,580号、および2010年9月1日に出願された米国仮出願第61/344,622号からの優先権を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
この発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により与えられた助成金第AI067854号、第AI24335号および第AI81579号の下での政府援助によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、HIV−1ワクチン接種のための免疫原に、ならびに特に非HIV−1およびHIV−1免疫原の組み合わせを用いてB細胞生殖細胞系列およびクローン中間体(intermediates)を標的化することにより防御的抗HIV−1抗体の産生を誘導する方法に関する。本発明は、そのような方法における使用に適した組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
伝染/始祖(transmitted/founder)HIV−1エンベロープに対する最初の抗体応答は非中和的であり、Env gp41を標的とし、血漿ウイルス血症の出現の平均13日後に起こる(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))。最初の抗体応答と同時に起こるHIV−1に対する最初のT細胞応答はHIV−1のT細胞エピトープ内での変異を駆動するが、HIV−1に対する最初のgp41抗体応答はそれをしない。むしろ、それは自己由来中和抗体応答であり、それは伝染のおおよそ3ヶ月後まで遅れ、それは抗体回避変異体と関係する最初の中和抗体応答である(McMichael et al, Nature Rev. Immunol. 10:11-23 (2010))。
【0005】
稀な広く反応する中和抗体が結合するHIV−1エンベロープ上の4つのエピトープは、CD4結合部位(CD4BS)(mab(モノクローナル抗体)IgG1b12)(Zwick et al, J. Virol. 77(10):5863-5876 (2003))、ヒトmab 2F5および4E10により定められる膜近位外部領域(MPER)エピトープ(Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004), Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757-759 (2003), Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005), Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996))、ならびにヒトmab 2G12により定められるマンナングリカンエピトープ(Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205-218 (2003))である。これらの4種類の稀なヒトmabは全て普通ではなく:2種類はIgG3であり(2F5および4E10)、1種類は独特のIg二量体構造を有し(2G12)、1種類は非常に疎水性のCDR3を有し(2F5)(Ofek et al, J. Virol. 198:10724 (2004))、そして4種類全てにおいて、そのCDR3が異常に長い(Burton et al, Nature Immunol. 5(3):233-236 (2004), Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755-762 (2004), Zwick et al, J. Virol. 78(6):3155-3161 (2004), Cardoso et al, Immunity 22:163-172 (2005))。これらの内で、2F5および4E10様のヒトmabは極めて稀である。急性HIV−1患者はMPERまたは2G12エピトープに対する抗体を作らず、MPERはHIVエンベロープのアミノ酸652〜683として定義することができる(Cardoso et al, Immunity 22:163-173 (2005)(例えば、QQEKNEQELLELDKWASLWNWFDITNWLWYIK)。CD4結合部位(BS)抗体は一般にHIV−1感染の早期に作られるが、これらの抗体は一般にmab IgG1b12により示される広い中和のスペクトルを有しない(Burtonet al, Nat. Immunol. 5(3):233-236 (2004))。
【0006】
HIV−1エンベロープ(Env)に対する効果的でない初期抗体応答の病因を理解するため、HIV−1の伝染の17〜30日後の5人の急性感染した対象からの単一の血球または骨髄形質細胞からの重および軽鎖(VHおよびVL)遺伝子の免疫グロブリン可変領域の増幅のためのPCRを行った。HIV−1感染により誘導される形質細胞応答の特異性を決定した。伝染したHIV−1により誘導された単一のヒト形質細胞のVHおよびVL遺伝子のPCR増幅を用いて、HIV−1に対する初期の形質細胞/形質芽球応答を研究した。HIV−1に対する最初の抗体応答はHIV−1 Env gp41に対して誘導されること、そしてgp41は既存の記憶B細胞クローンにおいて抗体応答を誘導し、結果としていくつかの宿主および細菌の分子、特にヒトの腸細菌叢の分子と交差反応する低親和性、多反応性の抗Env抗体を生じさせることが分かった。
【0007】
本発明は、少なくとも部分的に、初期の抗HIV−1 Env gp41抗体および稀な広く中和する抗体の両方の源を同定するように設計された研究の結果もたらされる。本発明はさらに、HIV−1 gp41 MPERの2F5、およびおそらく4E10に構造的に類似している、ほとんどの温血脊椎動物において発現している細胞タンパク質の同定の結果もたらされる。
【0008】
本発明は、HIV−1に対する広く中和する抗体を生じるように駆動され得るナイーブB細胞のプールを標的とするように設計されたHIV−1ワクチンを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008)
【非特許文献2】McMichael et al, Nature Rev. Immunol. 10:11-23 (2010)
【非特許文献3】Zwick et al, J. Virol. 77(10):5863-5876 (2003)
【非特許文献4】Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004)
【非特許文献5】Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 51:757-759 (2003)
【非特許文献6】Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005)
【非特許文献7】Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996)
【非特許文献8】Scanlan et al, Adv. Exper. Med. Biol. 535:205-218 (2003)
【非特許文献9】Ofek et al, J. Virol. 198:10724 (2004)
【非特許文献10】Burton et al, Nature Immunol. 5(3):233-236 (2004)
【非特許文献11】Kunert et al, AIDS Res. Hum. Retroviruses 20(7):755-762 (2004)
【非特許文献12】Zwick et al, J. Virol. 78(6):3155-3161 (2004)
【非特許文献13】Cardoso et al, Immunity 22:163-172 (2005)
【発明の概要】
【0010】
概して、本発明は、HIV−1ワクチン接種のための免疫原に関する。より具体的には、本発明は、非HIV−1およびHIV−1免疫原の組み合わせを用いてB細胞生殖細胞系列およびクローン中間体を標的化することにより防御的抗HIV−1抗体の産生を誘導する方法に関する。本発明は、そのような方法における使用に適した組成物にも関する。
【0011】
本発明の目的および利点は、以下の記述から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1.H1ソロモン諸島(Soloman Islands)ヘマグルチニンに対する代表的なインフルエンザ抗体クローン。
【図2】図2.HIV−1の伝染の約20日後の患者684−6における形質細胞抗体レパートリー。
【図3】図3.推定される中間クローン抗体の生成。
【図4】図4.そのクローンの発生のどこでgp41との反応性が獲得されたのかを決定するために、クレードB gp41、自己由来gp140およびグループMコンセンサスgp140との反応性に関してアッセイされた、推定される生殖細胞系列およびクローンメンバー中間体。
【図5】図5.2番目の中間前駆体抗体において獲得されたクローン684−6Bの反応性(図4も参照)。
【図6】図6.mgの量で産生され、gp41に対する抗体結合の解離定数(Kd)に関して分析された、追加の推定される中間抗体クローン。
【図7】図7.患者684−6のクローン684−6B生殖細胞系列におけるgp41反応性の獲得および推定される中間抗体。
【図8】図8.6846クローン52の生殖細胞系列および推定される中間gp41抗体の多反応性。
【図9】図9.好気性腸細菌叢のクローン684−6B抗体との反応性。
【図10】図10Aおよび10B.腸抽出物のBlue Native−PAGEおよびMojo抗体に対するウェスタンブロット画像。図10A.クーマシーブルー画像。図10B.ウェスタンブロット画像。
【図11】図11.腸抽出物のMojo抗体に対するウェスタンブロット画像−非還元的、HV00276に対して。
【図12】図12.腸抽出物のMojo抗体に対するウェスタンブロット画像−還元的、HV00276に対して。
【図13】図13Aおよび13B.1b12生殖細胞系列抗体は脂質(PC:CLリポソーム)に結合する。図13A.HIV89.6 gp120への結合。図13B.脂質(PC:カルジオリピン)への結合。
【図14】図14.4E10 VHノックインマウスでは、骨髄において4E10 VHを発現するB細胞の大部分がプレB〜未熟B細胞期において削除される(deleted)。
【図15】図15.広く中和する抗体の誘導に関する2つの障害。第1の障害は、稀な広く中和する抗体を産生するB細胞を刺激するように現在設計されているワクチンは、免疫原に応答することが必要とされているナイーブB細胞の生殖細胞系列B細胞受容体と反応しないことである。HIV−1 Envに対する初期のB細胞応答は感染後早期に開始されるが、初期のgp41抗体応答を作るそのB細胞抗体クローンが既存の多反応性の自然B細胞クローン(それの生殖細胞系列はgp41とも反応せず、gp41との交差反応性は宿主または外来の抗原に駆動されるクローン拡大により獲得されるため、それのgp41に対する反応性はクローン性抗体発生の後期に獲得される)に由来するような、gp41の宿主または既存の外来分子との交差反応性が存在する。一度gp41の反応性が獲得されたら、次いでgp41はクローンの拡張を駆動する。ワクチン開発に対する第2の障害は、これらの抗体の両方が中和するために脂質反応性を有する長い疎水性のCDR3を必要とすること(Alam et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106:20234-9 (2009))、ならびに2F5および4E10 VHはノックインマウスにおいて削除を促進するのに十分に自己反応性であることを示す研究から来ている(Verkoczy et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:181-186 (2010))。
【図16A】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16B】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16C】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16D】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16E】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図16F】図16A〜16F.広く中和する抗体の誘導のための戦略。図16A.ワクチンは、それに多反応性ナイーブB細胞受容体(BCR)が結合する宿主の(例えば脂質)および/または外来の(例えば腸の細菌叢)抗原(一番左の矢印)のどちらか、および生じてEnvと交差反応するB細胞の中間クローンを標的化するための抗原(好ましいEnvコンストラクト)を含むことによりB細胞前駆体を刺激するように設計されなければならない。そのワクチンのこの構成要素のためのEnvのリード候補は、マラウイ1086クレードC gp140オリゴマー(それはモルモットにおいて中和抗体においてかなりの広さを誘導した)をクレードB JRFL gp140 Env(それはMPER中和エピトープを選択的に発現する)と(中央の矢印)、および/または伝染した始祖Env6240、040および63521(図16B、16Cおよび16D参照)(それは好ましくは広く中和するモノクローナル抗体により結合されるエピトープを発現する)と混合したものである。最後に、多反応性の中和抗体を作るように駆動される、B細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するため、そのワクチンは強力なTLR拮抗薬または生殖細胞系列および中間クローンを標的とするワクチンによる多反応性B細胞の活性化を駆動するための他のアジュバント(一番右の矢印)を含有する。図16E.アポフェリチンのSDS−PAGE画像。図16F.アポフェリチンのHV00274、HV00276に対するウェスタンブロット画像。急性HIV感染gp41推定中間抗体276(クローン684−6Bから)および274(クローン684−6Aから)は両方とも19Kdのアポフェリチンサブユニットに結合する。両方のmabは未変性マーカー中の60Kdのタンパク質にも結合する。
【図17】図17.HIV−1 Env gp140コンストラクトの設計。
【図18】図18.Blue Native−PAGEおよびSDS−PAGEによる、急性HIV−1 EnvおよびグループMコンセンサスHIV−1 Envの分析。
【図19A】図19Aおよび19B.図19A.グループMコンセンサスHIV−1 Env、CON−Sおよび亜型C急性HIV−1 Env、1086C、亜型B慢性HIV−1 Env、JRFLの免疫原性。図19B.方法。
【図19B】図19Aおよび19B.図19A.グループMコンセンサスHIV−1 Env、CON−Sおよび亜型C急性HIV−1 Env、1086C、亜型B慢性HIV−1 Env、JRFLの免疫原性。図19B.方法。
【図20】図20.JRFL Env gp140 CFのPNGaseによる糖鎖除去。
【図21A】図21Aおよび21B.ELISAにおけるJRFL HIV Env gp140CFの抗原性。
【図21B】図21Aおよび21B.ELISAにおけるJRFL HIV Env gp140CFの抗原性。
【図22】図22.SPRにおけるJRFL gp140 Envの抗原性。
【図23】図23.広く中和する抗体により標的とされるHIV−1 gp41の融合中間体状態。
【図24A】図24Aおよび24B.図24A.膜に固定されたgp41−interの設計。図24B.2F5および4E10 mAbは、膜にコンジュゲートされたgp41−interに、nMのKdおよびほとんど不可逆的な解離速度で結合する。
【図24B】図24Aおよび24B.図24A.膜に固定されたgp41−interの設計。図24B.2F5および4E10 mAbは、膜にコンジュゲートされたgp41−interとnMのKdおよびほとんど不可逆的な解離速度で結合する。
【図25】図25.リード候補免疫原。
【図26】図26.TLRリガンドおよび封入された免疫調節性リガンドを有するgp41−interリポソーム。
【図27】図27.HIV−1の伝染始祖Env 1086.C、089.C、040_C9、および63521に関するアミノ酸配列およびコドン最適化されたコーディング配列。
【図28】図28.クレードB JRFLおよび6240 gp140 Env配列およびコーディング配列。
【図29−1】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−2】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−3】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−4】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−5】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−6】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−7】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−8】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−9】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−10】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−11】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−12】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−13】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−14】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−15】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−16】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−17】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−18】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−19】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−20】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−21】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてHIV−1に対する広く中和する抗体の産生を誘導する方法であって、以下の:
i)前記の対象に生殖細胞系列B細胞受容体に結合する非HIV−1抗原を投与し、前記の非HIV−1抗原はHIV−1 Envと交差反応する抗体を分泌するB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与され、そして
ii)前記の対象にHIV−1抗原を、前記の広く中和する抗HIV−1抗体を分泌するナイーブB細胞または前記のB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記の対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の非HIV−1抗原が脂質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の脂質がカルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、またはそれらの誘導体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の脂質が1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の脂質がリン脂質の六方II相である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記の非HIV−1抗原がフィコエリトリン(PE)、C−フィコシアニン(C−PC)、アポフェリチン、または嫌気性もしくは好気性腸細菌叢もしくはその構成要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の非HIV−1抗原が細菌または真核生物のRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の非HIV−1抗原がキヌレニナーゼ(KYNU)またはその抗原性断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記のKYNUがCHOまたは293T細胞で発現させた組換えKYNU、またはその抗原性断片である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらにアジュバントを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のアジュバントがスクアレンに基づくアジュバント、TRL作動薬、オリゴヌクレオチド(oligonucletides)(oCpG)またはR848である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のHIV−1抗原が膜近位外部領域(MPER)抗原、またはその変種である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記のHIV−1抗原が図16B、16C、17、18、20、25または26において示した免疫原である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の変種がL669S変異を有するMPERエピトープペプチドである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記のHIV−1抗原が伝染始祖HIV−1 Env、またはその抗原性断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記の断片がgp120のCD4結合部位の一部、MPER配列、またはgp120のV2もしくはV3領域を含むgp120の一部を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
その方法が、前記の対象に前記の非HIV−1抗原を含む予備刺激免疫処置、続いて前記のHIV−1抗原を含む1回以上の追加免疫を施すことにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記の非HIV−1抗原が脂質、嫌気性または好気性腸細菌叢の細菌の構成要素、フィコビリタンパク質、またはKYNUもしくはその断片を含み、前記のHIV−1抗原がマラウイからの伝染始祖Env 1086.C、マラウイからの089.C、米国からの040_C9およびクレードB急性HIV−1に感染した米国の患者からの63521からなるグループから選択されるHIV−1 Env抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記の非HIV抗原または前記のHIV抗原がタンパク質を含み、前記のタンパク質をコードするDNA配列が、前記のDNA配列が発現し、それにより前記のタンパク質が生成されるような条件の下で前記の対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
A244gD+エンベロープが予備刺激として投与され、CHO1、CHO2、CHO3、CHO4またはCHO5により結合されるエンベロープが追加免疫として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記の非HIV−1抗原が前記のHIV−1抗原および少なくとも1種類のアジュバントと共にリポソーム中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記の非HIV−1抗原が前記のHIV−1抗原にコンジュゲートしており、1種類以上のアジュバントと配合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
CHO1、CHO2、CHO3、CHO4、およびCHO5、またはその抗原結合断片からなるグループから選択される抗体。
【請求項1】
対象においてHIV−1に対する広く中和する抗体の産生を誘導する方法であって、以下の:
i)前記の対象に生殖細胞系列B細胞受容体に結合する非HIV−1抗原を投与し、前記の非HIV−1抗原はHIV−1 Envと交差反応する抗体を分泌するB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与され、そして
ii)前記の対象にHIV−1抗原を、前記の広く中和する抗HIV−1抗体を分泌するナイーブB細胞または前記のB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記の対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の非HIV−1抗原が脂質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の脂質がカルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、またはそれらの誘導体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の脂質が1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、またはジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の脂質がリン脂質の六方II相である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記の非HIV−1抗原がフィコエリトリン(PE)、C−フィコシアニン(C−PC)、アポフェリチン、または嫌気性もしくは好気性腸細菌叢もしくはその構成要素である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の非HIV−1抗原が細菌または真核生物のRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の非HIV−1抗原がキヌレニナーゼ(KYNU)またはその抗原性断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記のKYNUがCHOまたは293T細胞で発現させた組換えKYNU、またはその抗原性断片である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらにアジュバントを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のアジュバントがスクアレンに基づくアジュバント、TRL作動薬、オリゴヌクレオチド(oligonucletides)(oCpG)またはR848である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のHIV−1抗原が膜近位外部領域(MPER)抗原、またはその変種である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記のHIV−1抗原が図16B、16C、17、18、20、25または26において示した免疫原である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の変種がL669S変異を有するMPERエピトープペプチドである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記のHIV−1抗原が伝染始祖HIV−1 Env、またはその抗原性断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記の断片がgp120のCD4結合部位の一部、MPER配列、またはgp120のV2もしくはV3領域を含むgp120の一部を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
その方法が、前記の対象に前記の非HIV−1抗原を含む予備刺激免疫処置、続いて前記のHIV−1抗原を含む1回以上の追加免疫を施すことにより達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記の非HIV−1抗原が脂質、嫌気性または好気性腸細菌叢の細菌の構成要素、フィコビリタンパク質、またはKYNUもしくはその断片を含み、前記のHIV−1抗原がマラウイからの伝染始祖Env 1086.C、マラウイからの089.C、米国からの040_C9およびクレードB急性HIV−1に感染した米国の患者からの63521からなるグループから選択されるHIV−1 Env抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記の非HIV抗原または前記のHIV抗原がタンパク質を含み、前記のタンパク質をコードするDNA配列が、前記のDNA配列が発現し、それにより前記のタンパク質が生成されるような条件の下で前記の対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
A244gD+エンベロープが予備刺激として投与され、CHO1、CHO2、CHO3、CHO4またはCHO5により結合されるエンベロープが追加免疫として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記の非HIV−1抗原が前記のHIV−1抗原および少なくとも1種類のアジュバントと共にリポソーム中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記の非HIV−1抗原が前記のHIV−1抗原にコンジュゲートしており、1種類以上のアジュバントと配合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
CHO1、CHO2、CHO3、CHO4、およびCHO5、またはその抗原結合断片からなるグループから選択される抗体。
【図29−21】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−22】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−23】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−24】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−25】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−26】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−27】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−28】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−29】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−30】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図30】図30.広く中和する抗体である2F5および4E10は、系統発生的に保存されている自己抗原と反応する。
【図31】図31.2F5はウェスタンブロットにおいて43kDa、50kDa、70kDaおよび350kDaの3T3(マウス)細胞タンパク質に特異的に結合する。
【図32】図32.2F5名目(nominal)エピトープを有する保存された自己抗原。
【図33】図33.キヌレニナーゼ(kynuereninase)(KYNU)のH3ドメインは高度に保存されている。
【図34】図34.ヒトKYNU(PDB 2HZP)の構造およびELDKWAモチーフの位置。
【図35】図35.ヒトKYNU中のDKW残基(ELDKWA)の図説。
【図36】図36.2F5抗体のヒトKYNUへの結合は、そのH3ドメインの歪みを必要とする可能性がある。
【図37】図37.KYNU二量体はおそらく潜在的2F5結合部位を覆い隠す。
【図38】図38.2F5およびおそらく4E10抗体は、ウェスタンブロットにおいて組換えヒトKYNUに結合する。
【図39】図39.KYNUは2F5ファミリー抗体により認識される。
【図40】図40.2F5抗体は標準的なELISAにおいてrhKYNUと強く(avidly)反応する。
【図41】図41.2F5抗体は2F5エピトープを含有するペプチド(DP178−Q16L)と反応する−抗KYNU抗体は反応しない。
【図42】図42.rhKYNUおよびDP178−Q16Lに対する2F5の結合は標準的なELISAにおいて比較可能である。
【図43】図43.ELISAプレートにおける抗体結合は抗原特異的である。
【図44】図44.13H11はrhKYNUに結合しない。
【図45】図45.13H11はDP178−Q16Lと反応するがMPER−656とは反応しない。
【図46】図46.JRFL、DP178−Q16LおよびR4Aによる、2F5のrhKYNUへの結合の競合阻害。
【図47】図47.2F5のrhKYNUおよびJRFLへの結合の競合阻害。
【図48】図48.可溶性KYNUは2F5により結合される。
【図49】図49.表面に捕捉されたmabへのrhKYNUの結合。
【図50−1】図50A〜50C.2F5 mAbおよび2F5 RUA(復帰未変異祖先(reverted unmutated ancestor))抗体のKYNUへの結合、(図50A)2F5、(図50B)2F5−GL1、(図50C)2F5−GL3。
【図50−2】図50A〜50C.2F5 mAbおよび2F5 RUA(復帰未変異祖先(reverted unmutated ancestor))抗体のKYNUへの結合、(図50A)2F5、(図50B)2F5−GL1、(図50C)2F5−GL3。
【図51】図51.組換えHIV−1 gp140(JRFL)、ならびにDP178およびR4Aペプチドによる、2F5の3T3細胞への結合の阻害。
【図52−1】図52A〜52D.mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物におけるタンパク質のバンドの濃縮(Enrichment)および同定。(図52A)Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析。(図52B)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に集められた約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分。(図52C)SEC画分は、クーマシーブルー(1)および銀染色(2)およびウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。(図52D)zoom等電点分画法。
【図52−2】図52A〜52D.mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物におけるタンパク質のバンドの濃縮(Enrichment)および同定。(図52A)Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析。(図52B)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に集められた約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分。(図52C)SEC画分は、クーマシーブルー(1)および銀染色(2)およびウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。(図52D)zoom等電点分画法。
【図53A】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図53B】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図53C】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図54】図54.Mab HV00276はRNAポリメラーゼのコアタンパク質に結合する。
【図55】図55.Mab HV00276はRNAポリメラーゼのコアタンパク質のαサブユニットに結合する。
【図56】図56.一次記憶B細胞培養物の中和スクリーニング。CHAVI08、慢性的にHIV−1に感染した志願者707−01−021−9の末梢血からの記憶B細胞をEBVで形質転換し、CD40リガンド、oCpGおよびCHK−2阻害剤の存在下で8細胞/ウェルの密度で14日間刺激した。刺激の終了時に、上清をレポーターである2層(tier)クレードC CAP45ウイルスに対する中和活性に関して試験した。黒い点は3,600培養物のそれぞれの中和の百分率を表す。モノクローナル抗体CH01〜CH05は白い点の記号で表した培養物から分離された。陽性対照(HIV Ig)を右端の白い点として示す。
【図57A】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図57B】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図57C】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図58】図58.CH01〜CH05モノクローナル抗体のV重鎖の系統樹。
【図59−1】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図59−2】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図59−3】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図60】図60.CH01、CH02、CH03の4次の広く中和する抗体のA244 gp120への結合。
【図61】図61.CH01、CH02、CH03の4次の広く中和する抗体の復帰未変異祖先のA244 gp120への結合。
【図62】図62.PG9およびPG16はA244 gp120および6420 T/F gp140の両方に結合する。
【図63】図63.A244gD+ gp120エンベロープと比較してA244gD− gp120エンベロープへの結合親和性が減少したCH01モノクローナル抗体。
【図64】図64.48パーセントの抗gD IgAワクチン応答(99人の対象)。
【図65】図65.81パーセントの抗gD IgGワクチン応答(99人の対象)。
【図66】図66.gDの免疫原性の強い関連性。
【図67】図67.HEP−2の結合。
【図68】図68.キフネンシン(kifunensine)処置の、CH01の中和を仲介する能力への作用。
【図69−1】図69.CH01(ここでは1−27−G2と呼ぶ)の配列のPG16 Fabとの重ね合わせ(Superimposition)。
【図69−2】図69.CH01(ここでは1−27−G2と呼ぶ)の配列のPG16 Fabとの重ね合わせ(Superimposition)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、対象(例えばヒトの対象)においてHIV−1に対する広く中和する抗体の産生を誘導する方法に関する。その方法は、対象に生殖細胞系列B細胞受容体に結合する非HIV−1抗原を投与することを含み、その非HIV−1抗原は、HIV−1 Envと交差反応する抗体を分泌するB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与される。その方法はさらに、その対象にHIV−1抗原を、広く中和する抗HIV−1抗体を分泌するナイーブB細胞またはそれらのB細胞中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与することを含む。gp120上のいくつかのエピトープに関して、それらのエピトープに結合することができる稀なナイーブB細胞が存在するであろう一方で、他のエピトープに関して、広く中和する抗体を生じることができるナイーブB細胞はEnvに結合せず、追加の非Envエピトープにより刺激される必要があるであろうと考えられる。広く中和する抗体の誘導に対する障害を図15において記述し、それらの障害を克服するための本戦略を図16Aにおいて記述する。
【0014】
本発明における使用に適した非HIV−1抗原には、宿主および/または外来抗原が含まれる。非HIV−1抗原には、例えば脂質、例えばカルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびそれらの誘導体、例えば1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、またはそれらの断片が含まれる。リン脂質の六方II相(heagonal II phase)の使用は好都合である可能性があり、(例えば生理的条件下での)六方II管状相の六方晶的に充填された円柱を容易に形成するリン脂質が好ましく、六方II相で安定化され得るリン脂質も同様である。(Rauch et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:41 12-41 14 (1990); Aguilar et al et al, J. Biol. Chem. 274: 25193-25196 (1999)を参照)。他の適切な非HIV−1抗原には、例えば、フィコエリトリン(PE)、C−フィコシアニン(C−PC)、または他のフィコビリタンパク質、アポフェリチン、および嫌気性または好気性腸細菌叢またはその構成要素(単数または複数)(例えば520Kd抗原(またはRNAポリメラーゼホロ酵素またはRNAポリメラーゼコアタンパク質、またはそのサブユニット、例えばRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットもしくはそれにmAb HV00276が結合するエピトープを含むその一部)、または60Kdもしくは50Kd抗原)が含まれる。実施例2で示すデータは、mAb HV00276が大腸菌RNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットに結合することを示している。大腸菌RNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットと他の細菌(例えば枯草菌(B. subtilis)、志賀赤痢菌(S. dysenteriaea)、サルモネラ菌(S. enterica)、結核菌(M. tuberculosis)、ピロリ菌(H. pylori)およびインフルエンザ菌(H. influenza)および真核生物からのαの相同体(例えば出芽酵母のRpb3およびRpb11と関連するヒトおよびマウスのタンパク質)の間で配列の相同性が高い(Zhang and Darst, Science 281 :262-266 (1998))。従って、本発明には、大腸菌に加えて真核生物からの、および細菌からの520Kd抗原(またはそのサブユニット、例えばRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットまたはmAb HV00276が結合するエピトープを含むそれの一部)の使用が含まれる。(例えば、大腸菌RNAポリメラーゼαサブユニット:NP_289856(gi/15803822);志賀赤痢菌:YP_404940(gi:82778591);インフルエンザ菌:NP_438962(gi:16272744);Rpb3:スイスプロット:P37382.2;Rpb3(ヒト):NP_116558.1(gi:14702171)参照。)
キヌレニナーゼ(KYNU)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼスーパーファミリーとして知られているピリドキサール5’−リン酸(PLP)依存性酵素のファミリーのメンバーである。真核生物の構成的キヌレニナーゼ類は3−ヒドロキシ−l−キヌレニンの加水分解的切断を優先的に触媒して3−ヒドロキシアントラニル酸およびl−アラニンを生成する。ヒトのKYNUのクローニング、発現、精製、特性付けおよび結晶化が報告されている(Lima et al, Biochemistry 46(10):2735-2744 (2007)。下記の実施例3で記述するように、KYNUはその保存されたH3ドメイン中にコア2F5エピトープを有する。
【0015】
実施例3で提供するデータに基づいて、この内在性のリガンドはBおよびTリンパ球の寛容化を招き、それによりHIV−1 gp41 MPERエピトープペプチドを投与されたヒトにおいてHIV−1に対する有効な免疫応答の生成を阻害することが予想される。本発明は、1態様において、この寛容を特異的に、すなわち他の無関係な自己抗原に対する寛容化に影響を及ぼすことなく壊す交差反応性抗原を投与することを含む、HIV−1に対する免疫形成を達成する方法を提供する。適切な抗原には、例えば、CHOまたは293T細胞において発現させたELDKWA配列またはELEKWA配列(ELEKWAはヒトのタンパク質には存在せず、従って寛容化されないと予想される)を有する変異gp41もしくはKYNU配列を有する組換えKYNU分子が含まれる。用いることができる他の免疫原には、ELEKWAまたはELDKWA配列のどちらかを有するリポソーム中の伝染/始祖または野生型慢性エンベロープgp140もしくはgp160またはMPERペプチドが含まれる。ELDKWA配列を有する免疫原は、強いアジュバント、例えばスクアレンに基づくモノホスホリル(monophosphosphoryl)リピドA、オリゴヌクレオチド(oligonucletides)(oCpG)およびR848(TRL−7/8作動薬)と共に投与するのが好都合である。これらのTLR作動薬およびIFNαを含むリポソームも用いることができる。(下記の注釈も参照。)
本発明における使用に適したHIV−1抗原には、膜近位外部領域(MPER)抗原(Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004), Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 512:757-759 (2003), Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005), Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996))ならびにその変種、例えばMPER Mab 2F5および4E10に対する、または他の広く中和するEnvに対するより高い中和感受性を与える変種、例えばMPER中にL669S変異を含有するMPER変異体Envペプチド脂質複合体が含まれる(Shen et al, J. Virology 83:3617-25 (2009))。好ましい免疫原には、図25および26、ならびに図16B、16C、図17、図18および図20において示した免疫原が含まれる。別の好ましい態様において、その変種はMPER mAb 2F5および4E10に対するより高い中和感受性を与えるL669S変異を有するMPERエピトープペプチドである(Shen et al, J. Virology 83: 3617-25 (2009))。
【0016】
本発明における使用に適したHIV−1抗原には、伝染始祖HIV−1 Envまたはその断片も含まれる。これらの断片は、gp120のCD4結合部位の一部(Chen et al, Science 362(5956):1123-7 (2009))、MPER配列、gp120のV2、V3領域を組み込むgp120の一部(Walker et al, Science 326(5950):285-9 (2009) Epub 2009年9月3日)等に相当するものであることができる(例えば、図27および28において示す1086、089、6240、040_C9および63521に関する配列を参照)。好ましいEnv抗原には、マラウイ1086クレードC、6321および以前に記述された(Liao et al, Virology 30:268-282 (2006))ように生成された米国クレードB 040_C9 gpl40オリゴマー(図17および18)(Keele et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:7552-7 (2008))が含まれ、それはクレードB JRFL gp140 EnvまたはMPER中和エピトープを選択的に示すその断片(図28参照)と混合されてモルモットにおいて中和抗体におけるかなりの広さを誘導した(図19A)。JRFL gp140 Envオリゴマー(図19B、20、21Aおよび21B)は構成的に2F5 mAbに結合する。500UのPNgaseエンドグリコシダーゼ(New England BioLabs,マサチューセッツ州イプスウィッチ)を用いて糖鎖除去されたJRFLオリゴマーは、2F5の増進された結合および4E10 mAbの新規の結合(gp41上の4E10エピトープの露出)を有する(図21Aおよび21B)。4E10の糖鎖除去されたJRFLへの増進された結合は、図22の表面プラズモン共鳴(reasonance)分析においても示されている。
【0017】
本発明の方法は、対象に非HIV−1免疫原を含む予備刺激(prime)免疫処置、続いてHIV−1 Env抗原の1回以上の追加免疫を施すことにより達成することができる。上記で指摘したように、適切な非HIV−1免疫原には脂質(例えばカルジオリピン、ホスファチジルセリン、または他の陰イオン性脂質)、嫌気性または好気性腸細菌叢の細菌の構成要素、フィコビリタンパク質(例えばPE)およびKYNUまたはその断片が含まれる。やはり上記で指摘したように、適切なHIV−1 Env抗原にはマラウイからの伝染始祖Env 1086.C、マラウイからの089.C、米国からの040_C9およびクレードB急性HIV−1に感染した米国の患者からの63521が含まれる。本方法における使用に適した予備刺激および追加免疫の両方が非HIV−1およびHIV−1免疫原の両方を含むことができる。当業者は予備刺激/追加免疫計画(regimes)を容易に最適化することができる。そのような投与計画のタンパク質性構成要素をコードするDNA配列を、そのタンパク質性構成要素がインビボで生成されるような条件下で投与することができる。
【0018】
下記の実施例5で記述するように、広く中和する抗体(CH01〜05)を産生するクローン的に関連するB細胞を、1人の患者から分離した。そのクローン的に関連する抗体の可能性のある復帰未変異祖先を推定し、実際の抗体として発現させた。これらの抗体の系統樹を再現した。自然抗体および推定される祖先抗体の両方を、一群の(a panel of)HIVエピトープタンパク質に結合する、および一群のHIV分離株を中和するそれらの能力に関して特性付けした。その復帰未変異祖先(RUA)がA244gD+エンベロープに結合することを特筆するのは重要である。従って、そのようなエンベロープまたはそのRUAにより中和されることが記述されている他のエンベロープを、本発明の好ましいワクチン戦略における“予備刺激”として用いることができる。この戦略に従って、“追加免疫”を例えば本明細書で記述する成熟抗体により結合されるエンベロープを用いて達成することができる。さらなる“追加免疫”を、例えば6420または63521(または結合する他のタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)を用いて達成することができる。
【0019】
DNAでの予備刺激または追加免疫を用いる場合、適切な配合物には、DNAでの予備刺激および組換えアデノウイルスでの追加免疫ならびにDNAでの予備刺激および組換えマイコバクテリアでの追加免疫が含まれ、ここでそのDNAまたはそのベクターは、例えばHIV−1エンベロープまたはタンパク質性非HIV−1抗原、例えば腸細菌叢もしくはKYNU構成要素をコードしている。これらのベクターの他の組み合わせを、HIV−1抗原および/または非HIV−1抗原有りまたは無しのどちらにおいても、予備刺激または追加免疫として用いることができる。
【0020】
本発明に従って、その非HIV−1抗原はHIV−1 Env抗原および1種類以上のアジュバントを含むリポソーム中に存在することができる。あるいは、その非HIV−1抗原は、例えばヘテロ二官能性(hetero−bifunctional)薬剤、例えばDSSPを用いてHIV−1 Env抗原にコンジュゲートさせて1種類以上のアジュバントと配合することができる。
【0021】
Toll様受容体(TLR)作動薬有りまたは無しでMPER抗原を発現する(expressing)リポソーム(Dennison, et al, J. Virology 83:10211-23 (2009))が記述されている(例えばWO 2008/127651を参照)。Gp41中間体状態タンパク質(図23)は、(Frey et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105-3739-44 (2008))により記述されている。そのgp41中間体は、リポソームと配合して(図24Aおよび24B)2F5および4E10に十分に結合する安定な免疫原を形成することができる(図25)。本発明のGp41 MPER免疫原は、例えばモノホスホリルリピドA(monophosphorylipid A)(MPL−A)(Avanti Polar Lipids,アラバマ州アラバスター)およびTLR9作動薬、例えばoCpG 10103(5’−TCGTCGTTTTTCGGTCGTTTT−3’)およびR848 TLR7作動薬(Enzo Life Sciences,ニューヨーク州ファーミングデール)を組み込むことにより抗原性を増強することができる(図26)。加えて、B細胞クラススイッチのサイトカイン刺激物質、例えばBAFF(BLYS)および/またはAPRIL(He et al, Immunity 26:812-26 (2007); Cerutti and Rescigno, Immunity 28: 740-50 (2008))を、最適なB細胞の刺激のためにそのリポソーム中に組み込むことができる。
【0022】
本発明における使用に適したリポソームには、POPC、POPE、DMPA(またはスフィンゴミエリン(SM))、リゾホスホリルコリン(lysophosphorylcholine)、ホスファチジルセリン、およびコレステロール(Ch)を含むリポソームが含まれるが、それらに限定されない。最適な比率は当業者が決定することができるが、例には45:25:20:10の比率でのPOPC:POPE(またはPOPS):SM:ChまたはPOPC:POPE(またはPOPS):DMPA:Chが含まれる。用いることができるリポソームの代替配合物には、9:7.5:1のモル比で配合されたDMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(またはリゾホスホリルコリン)、コレステロール(Ch)およびDMPG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)が含まれる(Wassef et al, ImmunoMethods 4:217-222 (1994); Alving et al, G. Gregoriadis (ed.), Liposome technology 第2版, vol. Ill CRC Press, Inc., フロリダ州ボカラトン(1993); Richards et al, Infect. Immun. 66(6):285902865 (1998))。上記の脂質組成物は、リピドAと複合体化してリン脂質に対する抗体応答を誘導するための免疫原として用いることができる(Schuster et al, J. Immunol. 122:900-905 (1979))。好ましい配合物は、Schuster et al, J. Immunol. 122:900-905 (1979)に従ってリピドAと複合体化された60:30:10の比率のPOPC:POPS:Chを含む。ペプチドの総脂質に対する最適な比率は、例えばそのペプチドおよびそのリポソームによって異なり得る。
【0023】
本発明において、様々なアジュバントを用いることができる(上記で言及したアジュバントが含まれる)。上記のペプチド−リポソーム免疫原およびコンジュゲートは、アジュバント、例えばスクアレンに基づくアジュバント(Kaldova, Biochem. Biophys. Res. Communication, Dec. 16, 2009 印刷物に先駆けたE-pub)、および/またはTLR作動薬(例えばTRL3、TRL5、TRL4、TRL9またはTRL7/8作動薬、またはそれらの組み合わせ)と共に配合する、および/または投与することができ、それは強い抗体応答を促進する(Rao et al, Immunobiol. Cell Biol. 82(5):523 (2004))。用いることができる他のアジュバントには、ミョウバンおよびQ521が含まれる。油エマルジョン、例えばEmulsigen(水中油エマルジョン)中のオリゴCpG類(Tran et al, Clin. Immunol. 109(3):278-287 (2003))も用いることができる。追加の適切なアジュバントには、2005年12月14日に出願された11/302,505において記述されているアジュバントが含まれ、それにはその中で開示されているTRL作動薬が含まれる。(Tran et al, Clin. Immunol. 109:278-287 (2003),米国出願第20030181406号、第20040006242号、第20040006032号、第20040092472号、第20040067905号、第20040053880号、第20040152649号、第20040171086号、第20040198680号、第200500059619号も参照)。免疫応答を増進するTLRリガンド、例えばリピドA、オリゴCpGおよびR−848を、それらの中にコンジュゲートされたHIV−1 Envを有するリポソーム中に個別に、または組み合わせで配合することができる。
【0024】
強いアジュバント(例えば強力なTLR作動薬)を装填された(loaded)リポソームは、多反応性中和抗体を作るように駆動されたB細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するために用いることができる免疫原の例である。
【0025】
HIV−1 gp41ペプチドをリポソームに固定する膜貫通ドメインを用いて、機能的なエピトープの提示を達成することができる。HIV−1 gp41の膜貫通ドメインを用いて、そのペプチドを合成脂質を含むリポソーム中に固定することができる。TMDの三量体化の誘導は、gp41 MPERの三量体型の形成を促進することができる。あるいは、Env gpl40のHisタグ化(c末端)バージョンは、HIV−1 gp41の中間体型(gp41−inter)に関して記述したようにリポソーム中に固定することができる。
【0026】
非HIV−1免疫原および/またはHIV−1タンパク質/ポリペプチド/ペプチド、またはコーディング配列の投与の方式は、その免疫原、患者および求められる作用、同様に、投与される用量により異なり得る。典型的には、投与経路は筋肉内、静脈内、腹腔内または皮下注射であろう。加えて、その配合物は鼻内経路により、または直腸内もしくは膣内に坐剤様のビヒクルとして投与することができる。一般に、そのリポソームは水性の液体、例えば通常の生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水pH7.0中で懸濁される。当業者は最適な投与計画を容易に決定することができる。その免疫原は予防的に使用されるのが好ましいが、感染した人へのそれらの投与はウイルス負荷を低減させる可能性がある。
【0027】
ヒトモノクローナル抗体(hu mAb)2F5および4E10は、HIV−1 gp41 MPERに相当するポリペプチドに高い特異性およびナノモル濃度(nM)の親和性で結合する。両方のhu mAbは、免疫蛍光顕微鏡検査およびウェスタンブロッティングにより決定されるように、別個のヒトおよびマウスの細胞抗原とも反応する。これらの特性は、2F5および4E10が、哺乳類細胞から生化学的に抽出され、標準的な免疫沈降法により回収される、変性した形およびポリペプチドが含まれる細胞タンパク質の単離に理想的であることを示している。2F5および4E10の同じ特性は、それらを抽出された細胞タンパク質/ポリペプチドの標準的な質量分析の方法による同定に適したものにする。簡潔には、2F5または4E10に特異的に結合する、免疫沈降された細胞タンパク質/ポリペプチドに酵素消化を施し、得られた断片の質量および電荷を用いてその親分子(単数または複数)を同定することができる。
【0028】
本発明の特定の観点を以下の限定的でない実施例においてより詳細に記述する(Maksyutov et al, J. Clin. Virol. Dec; 31 Suppl 1:S26-38 (2004), Haynes et al, Science 308:1906 (2005), Gurgo et al, Virology 164:531-536 (1988),米国特許第7,611,704号、2007年6月22日に出願された米国出願第11/812,992号、2007年4月13日に出願された米国出願第11/785,077号、2006年4月12日に出願されたPCT/US2006/013684、PCT/US04/30397(WO2005/028625)、WO 2006/110831、WO 2008/127651、米国公開出願第2008/0031890号および第2008/0057075号、2008年12月22日に出願された米国出願第11/918,219号、2007年2月28日に出願された米国仮出願第60/960,413号、ならびに全て2009年4月3日に出願された米国仮出願第61/166,625号、第61/166,648号、および第61/202,778号、2010年2月25日に出願された米国仮出願第61/282,526号、2010年7月27日に出願された米国仮出願第61/344,457号、2010年8月25日に出願された米国仮出願依頼人ファイル番号01579−1597、PCT/US2010/01018、PCT/US2010/030011、ならびにPCT/US2010/01017も参照、その全内容を本明細書に援用する)。
【実施例】
【0029】
実施例1
実験の詳細
急性のHIV−1に感染した患者。研究のために選択された患者は、患者の履歴およびFiebigの分類(Fiebig et al, AIDS 17:1871-1879 (2003))から見積もられた伝染の日により、伝染後17から30日までであった。患者065−0およびFIKEはFiebig第1期であり、一方で患者068−9、684−6およびMCERはFiebig第2期であった。
【0030】
対照の対象。単一形質芽球/形質細胞選別を、感染していない対象および3価不活化(TVI)インフルエンザワクチン(FLUZONE(登録商標)2007または2008)をワクチン接種した対象の骨髄、白血球除去または末梢血単核球(PBMC)に対して実施した。TVIで免疫した対象を、免疫処置の7日後に試験した(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9, (2009); Wrammert et al, Nature 453 :667-71 (2008); Smith et al, Nature Protocols 4:372-84 (2009))。
【0031】
流動選別戦略。PBMC、白血球除去または骨髄試料を、以前に記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2009))抗B細胞抗体と反応させた。Wrammertら(Nature 453:667-71 (2008))は、ヒトPBMC中の抗体分泌細胞である細胞は、CD19+、CD38hi+、IgD−、CD20lo+/−B細胞の範囲内の細胞であることを示した。従って、急性HIV感染(AHI)およびインフルエンザワクチンでワクチン接種した対照の両方において、単一の抗体分泌形質芽球/形質細胞を分離するために、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2008); Wrammert et al, Nature 453:667-71 (2008))CD19+、CD38hi+、IgD−、CD20lo+/−細胞をフローサイトメトリーによりRNA抽出緩衝液を含有する単一の96ウェルプレートの中に選別した。正確な形質芽球/形質細胞集団の分離の成功の明確化のための陽性対照として、同じ集団を3価インフルエンザワクチン(FLUZONE(登録商標)2007または2008)ワクチン後の7日目から分離した。予想されたように、それらの選別された細胞の75%が実際にインフルエンザ特異的抗体であったことが実証された(Wrammert et al, Nature 453 :667-71 (2008))。
【0032】
伝染/始祖エンベロープの同定および発現。患者684−6およびFIKEの伝染/始祖Envを、以前に記述されたように(Keele et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:7552-7(2008))単一ゲノム増幅およびEnv遺伝子の配列決定により同定した。Env gp140C(gp120/41切断部位が変異している)、gp120およびgp41タンパク質を、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2008))293T細胞の一過性形質移入により発現させた。
【0033】
形質芽球/形質細胞の免疫グロブリンVHおよびVL遺伝子のPCR増幅。選別されたB形質芽球/形質細胞のVHおよびVL Ig鎖を単一細胞PCRにより分離し、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2009) ; Wrammert et al, Nature 453:667-71 (2008) ; Smith et al, Nature Protocols 4:372-84 (2009))組換え抗体を産生させた。
【0034】
Ig VHおよびVLの配列の配列決定、配列の注釈、品質管理、およびデータの管理。Ig VHおよびVL遺伝子の全てのPCR産物はQiagen(カリフォルニア州ヴァレンシア)PCR精製キットを用いて精製され、ABI 3700機器およびBigDye(登録商標)配列決定キット(Applied Biosystems,カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて順方向および逆方向で配列決定された。それぞれの試料に関する塩基呼び出し(Base calling)は、Phred(Ewing et al, Genome Res. 8:175-85 (1998); Ewing and Green, Genome Res. 8:186-94 (1998))を用いて行われる。その抗体遺伝子の順方向および逆方向の鎖を、それぞれの位置における品質スコア(quality scores)に基づく新規の組み立てアルゴリズム(Kepler et al,投稿中)を用いて1つの最終的なヌクレオチド配列へと組み立てる。見積もられるPCRアーティファクト率は.28または増幅された5個の遺伝子あたりおおよそ1個のPCRアーティファクトであった。免疫グロブリンのアイソタイプを局所的整列アルゴリズム(Smith and Waterman, J. Mol. Biol. 147:195-7 (1981))により決定する。質を保証された抗体配列の生殖細胞系列再編成を、SoDAを用いて決定する(Volpe et. al, Bioinformatics 22:438-44 (2006))。SoDAに由来するゲノム情報、例えば遺伝子断片利用、体細胞変異およびCDR3領域を、容易なアクセスのためにORACLEデータベース中で保管する。
【0035】
同じ対象からの抗体がクローン的に関連しているかどうかを決定するため、以下の3個の基準を利用した。第1に、問題の抗体の重鎖は同じVHおよびJH遺伝子断片を用いなければならない。D断片における長さおよび高い変異のため、これらは同定するのがより難しい。従って、D断片の類似性は、クローンの関連性に関する基準として用いなかった。同様に、両方の軽鎖は同じVκ/VλおよびJκ/Jλを用いなければならない。第2に、問題の抗体の重鎖は同じCDR3の長さを有していなければならない。これは軽鎖にも適用される。第3に、その重鎖のCDR3のヌクレオチド配列は70%同一でなければならない。同じことがその軽鎖のCDR3に適用される。これらの3個の基準を守る抗体を、クローン的に関連するものとして分類する。PHYLIP 3.63パッケージ(Felsenstein, Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. 360:1427-34 (2005))を用いて、推定されるSoDAからの生殖細胞系列を根として用いて最尤樹を構築してそのクローンの間の系統的関係を決定した。その祖先配列も同じパッケージを用いて推定した。
【0036】
推定される生殖細胞系列および中間抗体の設計および生成。抗体クローンファミリーのそれぞれのメンバーに関して、生殖細胞系列抗体前駆体および多数の抗体の中間的な型を推定するために最尤分析を用いた(Felsenstein, J. Mol. Evol. 17:368-76 (1981); Volpe et al, Bioinformatics 22:438-44 (2006))。これらのVHおよびVL遺伝子を合成し(GeneScript,ニュージャージー州ピスカタウェイ)、上記のような組換え技法によりIgG1 mAbとして発現させた。
【0037】
VHおよびVLの組換えmAbとしての発現。単離されたIg VHおよびVL遺伝子対をPCRにより組み立てて、記述されたような方法(Liao et al, J. Virol. Methods 158:171-9 (2009))を用いるヒト胚腎臓細胞株293T(ATCC,バージニア州マナサス)中への形質移入による組換えmAbの産生のための線状の完全長Ig重および軽鎖遺伝子発現カセットにした。対になるIg重および軽鎖遺伝子発現カセットの精製されたPCR産物を、6ウェル組織培養プレート(Becton Dickson,ニュージャージー州フランクリンレイク)で増殖させた80〜90%コンフルエントの293T細胞中に、PolyFect(Qiagen,カリフォルニア州バレンシア)および製造業者により推奨されるプロトコルを用いて同時形質移入した(ウェルあたりそれぞれ2μg)。形質移入の6〜8時間後に、その293T細胞に2%ウシ胎児血清(FCS)を補った新しい培地を与え、5%CO2培養器中で37℃で培養した。培養上清を形質移入の3日後に回収し、発現したIgGのレベルに関して定量化し、抗体の特異性に関してスクリーニングした。スクリーニングアッセイにより同定された選ばれた抗体の将来の特性付けのため、その線状Ig重および軽鎖遺伝子コンストラクトを、精製された組換えmAbの産生のために、標準的な分子プロトコルを用いてpcDNA3.3の中にクローニングした。
【0038】
単離されたVHおよびVL遺伝子ならびに推定される生殖細胞系列および中間前駆体抗体配列に由来する精製された組換えmAbの産生のため、T175フラスコ中で培養した293T細胞に重および軽鎖Ig遺伝子を含有するプラスミドをPolyFect(Qiagen,カリフォルニア州バレンシア)を用いて同時形質移入し、2%FCSを補ったDMEM中で培養した。組換えmAbをその形質移入した293T細胞の培養上清から、抗ヒトIg重鎖特異的抗体−アガロースビーズ(Sigma,ミズーリ州セントルイス)を用いて精製した。
【0039】
ELISAおよびLuminexアッセイによる抗体特異性に関するスクリーニング。上清中の組換えmAbの濃度を、記述されたような方法(Liao et al, J. Virol. Meth. 158:171-179 (2009))を用いて決定した。発現した組換えmAbの特異性を、HIV−1抗原に対する、および一群の非HIV−1抗原に対する抗体反応性に関してアッセイした。HIV抗原には、Envペプチドgp41免疫優性領域(RVLAVERYLRDQQLLGIWGCSGKLICTTAVPWNASWSNKSLNK)、gp41 MPER領域(QQEKNEQELLELDKWASLWN)、HIV−1 MN gp41(Immunodiagnostics,マサチューセッツ州ウォバーン)、HIV−1グループMコンセンサスgp120(Liao et al, Virology 353:268-82 (2006))、HIV−1グループMコンセンサスgp140 CFI(Liao et al, Virology 353:268-82 (2006))、p66(Worthington Biochemical,ニュージャージー州レイクウッド)、p55(Protein Sciences,コネチカット州メリデン)、p31(Genway,カリフォルニア州サンディエゴ)、nef(Genway,カリフォルニア州サンディエゴ)、tat(Advanced Bioscience,メリーランド州ケンシントン)、およびAT−2不活化HIV−1 ADAビリオン(Rutebemberwa et al, AIDS Res. Human Retrovirol. 23:532-42 (2007));NIH,NCI,Frederick癌研究施設のJeffrey Lifsonから頂いたもの)が含まれていた。加えて、684−6 mAbを自己由来gp140、gp120およびgp41に対してアッセイし、FIKE mAbを自己由来gp140およびgp120に対してアッセイした。非HIV−1抗原には、3価インフルエンザワクチン2007(FLUZONE 2007)、H1A/ソロモン諸島/03/2006からの組換えインフルエンザHAタンパク質(Protein Sciences Corp.コネチカット州メリデン)、破傷風トキソイド(toxiod)(Calbiochem,カリフォルニア州サンディエゴ)、HEP−2細胞(Inverness Medical Professional Diagnostics,ニュージャージー州プリンストン)、カルジオリピン(Avanti Polar Lipids,所在地(アラバマ州アラバスター)(Haynes et al, Science 308:1906-8 (2005))およびリピドA(Avanti Polar Lipids,アラバマ州アラバスター)が含まれていた。腸細菌叢と呼ばれる嫌気性および好気性細菌抽出物の全細胞溶解物を、下記で記述するように調製した。簡潔には、細菌を患者からの4つの便の標本から接種し、寒天プレート上で嫌気性または好気性条件下で30℃において増殖させた。コンフルエントの細菌を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、商業的に入手可能な細菌タンパク質抽出試薬(Pierce,イリノイ州ロックフォード)を用いて処理した。得られた抽出物を0.22μmフィルターを用いて濾過し、使用まで−80℃で保管した(Kawatsu et al, J. Clin. Microbiol. 46:1226-31 (2008))。FLUZONE(登録商標)、インフルエンザHA、gp41免疫優性およびMPER領域、ならびに腸細菌叢全細胞溶解物に対するアッセイを、ELISA(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))およびLuminexビーズアッセイ(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))の両方により実施した。破傷風トキソイド、カルジオリピン(Sigma,ミズーリ州セントルイス)、死菌クリプトコッカスおよびカンジダアルビカンスに対するアッセイはHep−2上皮細胞との反応性に関するELISAアッセイであり、間接的な免疫蛍光アッセイであった(Mietzner et al, Proc. Natl. Acad.. Sci. USA 105:9727-32 (2009))。
【0040】
抗体反応性の表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon reasonance)(SPR)分析。SPR結合アッセイを、20℃で維持されたBIAcore 3000(BIAcore Inc,ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で実施した。HIV−1 gp41またはオリゴマー状gp140タンパク質(Con S gp140、自己由来Env gp140)を、以前に記述されたように(Alam et al, J. Immunol. 178:4424-35 (2007))標準的なアミンカップリングによりCM5センサーチップ上に固定した。ヒトmAbを抗ヒトFc抗体を結合させた表面上に捕捉し、次いでそれぞれのヒトmAbを約200〜500RUまで捕捉した。対照表面上の非特異的結合の減算の後、mAb結合の特異的な結合応答が得られた(Envが固定された表面に関してHIV−1 gp120およびmAbが固定された表面に関してヒトIgG、IS6)。(2価Ig分子の結合力を説明するために)2価分析物モデルおよびmAbの抗体価測定から得られた結合曲線への全体的な曲線当てはめを用いて速度定数を測定した。MAbを30μL/分で2〜6分間注入し、グリシン−HCl pH2.0および界面活性剤P20(0.01%)を再生緩衝液として用いた。
【0041】
結果
インフルエンザワクチン接種。インフルエンザワクチン接種された対象からの、単一細胞選別された形質細胞/形質芽球に由来する抗体のクローンを試験し、その応答が高度にクローン的であることが分かった。そのクローンメンバーはほぼ全て試験したインフルエンザ抗原と反応した。図1は、H1ソロモン諸島(Soloman Islands)ヘマグルチニンに対する代表的なインフルエンザ抗体クローンを示す。合計450の抗体を3人のインフルエンザワクチン接種された対象の形質細胞/形質芽球から分離し、これらの内で57.7%がインフルエンザ特異的であった。インフルエンザに感染した対象から分離された全部で265の抗体のうちで、クローン的に関連した抗体の20種類の独立したクローンが同定され、その中で115の抗体(92%)がインフルエンザ抗原と反応した。
【0042】
急性HIV−1感染におけるクローン性抗体応答。約75%の形質細胞/形質芽球がインフルエンザ特異的であるインフルエンザワクチン接種とは対照的に、5人のAHI患者の形質芽球/形質細胞から分離された合計1074の組換え抗体の内で、89または8.3%の発現した抗体(3.3%〜13.3%の範囲)がHIV−1特異的であり、一方で残りの大部分は非HIV抗原に対するものであるか(約6%)、または未知の特異性を有するか(882または82.1%)のどちらかであった。一群の非HIV−1関連抗原アッセイにより、Hep−2上皮細胞(27または2.5%)、腸細菌叢(5または0.5%)、カルジオリピン(4または0.4%)、インフルエンザ(9または0.8%)、クリプトコッカス(4または0.4%)、カンジダアルビカンス(2または0.2%)、および破傷風トキソイド(8または0.7%)に対する高い親和性の抗体を実証することが可能であった。追加の38または3.5%は、これらの抗原の少なくとも2種類と反応した。その患者の3人はリピドA抗体を有し、1人の患者は腸細菌叢抗体を有し、それは非常に早期の腸の損傷の開始、微生物の移行および抗リピドAおよび腸細菌叢抗体の誘導を示唆している。注目すべきことには、これらの早期AHI患者のいずれも、HIV−1の伝染後17〜30日の内にgp41以外のHIV−1特異性が検出されたmAbを全く有していなかった。
【0043】
gp41に対するAHI応答の検出においてコンセンサスEnvが自己由来Envに等しいことが以前に報告された(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))。しかし、AHI B細胞分析において応答が失われていた可能性を除外するため、684−6およびFIKEからのmAbをそれらの自己由来組換えgp140 Envを用いてスクリーニングした。概して、自己由来gp140 envに対する応答はクレードB gp41に対するものよりもはるかに小さかった。
【0044】
従って、伝染/始祖ウイルスに対する初期の形質芽球/形質細胞レパートリーの応答は、血漿抗体応答(Tomaras et al, J. Virol. 82:12440-63 (2008))と同様に、Env gp41エピトープに焦点が合わせられた。加えて、HIV−1は以前のワクチン接種または感染性因子抗原、例えばクリプトコッカス、カンジダアルビカンス、および破傷風トキソイドからの既存の記憶B細胞を最終分化へと活性化し、駆動する。さらに、AHIの過程において、Hep−2細胞自己反応性B細胞の多反応性クローンはその初期の形質芽球/形質細胞応答に加わるように誘導される。
【0045】
AHI形質芽球/形質細胞レパートリー内の抗体クローンの分析。一般に、報告されたインフルエンザワクチン接種により誘導された形質芽球/形質細胞レパートリー(Wrammert et al, Nature 453:667-72 (2009))または血漿中に広く中和する抗体活性を有する対象におけるgp140+B細胞の記憶B細胞レパートリー(Scheid et al, Nature 458:636-40 (2009))と比較して、AHI形質芽球/形質細胞レパートリーからは少数のクローンしか分離されなかった。広く中和する抗体を有する6人の患者における慢性HIV−1感染において、Scheidら(Nature 458:636-40 (2009))は、そのB細胞クローンの数がそれらの6人の患者から分離された502の抗体において患者の間で22から50まで異なっていたことを見出した。
【0046】
AHIの研究において、5人のAHIの患者から分離された1074のmAbにおいて、わずか8種類の抗体のクローンしか見付からなかった。これらには、AHI患者の1人において同定された6種類の独立した抗体のクローンの中のgp41と反応する3種類の抗体のクローンが含まれていた。興味深いことに、その3種類のAHI gp41クローンの全部で52のクローン性メンバーの内で、17(37%)のみがgp41と反応した。これは、インフルエンザ反応性インフルエンザクローンメンバーの94%と対照的である。
【0047】
図2は、52のメンバーを有するAHIクローン685−6B−注目すべきVH3−7、DH1−26、JH5、VK1−39、JK4、IgG3変異クローンを示し、変異していないメンバーは無い。その57の抗体の内で、4(8%)のみがgp41と反応した。
【0048】
gp41の推定される生殖細胞系列および中間抗体のクローンとの反応性の分析。HIV−1 gp41がナイーブB細胞の生殖細胞系列B細胞受容体と反応しており、低い抗原駆動(antigen drive)を有する低親和性クローンを刺激しているのか、またはgp41が既存の記憶B細胞のクローンと交差反応してクローン性メンバーを同時のgp41および自己抗原駆動を経るように命じる可能性があるのかを推論した。これらの2つの可能性を区別するため、最尤分析を用いて生殖細胞系列未変異抗体および部分的に変異したクローン中間体がそれらのgp41との反応性を決定するために用いられたと推定した(図3)。そのクローンの発生のどこでgp41との反応性が獲得されたのかを決定するために(すなわち生殖細胞系列VH+VLまたはより後の中間体)、推定される生殖細胞系列およびクローンメンバー中間体をクレードB gp41、自己由来gp140およびグループMコンセンサスgp140との反応性に関してアッセイした(図4)。クローン684−6Bの反応性は2番目の中間前駆体抗体において獲得されたことが分かった(図4および5)。
【0049】
問われた次の疑問は、gp41との反応性はgp41による抗原駆動を表しているのかどうかであった。図6は、さらなる推定された中間抗体クローンをmgの量で生成し、gp41に対する抗体結合の解離定数(Kd)に関して分析したことを示している。図7は解離定数をKdのLog10としてプロットしたヒートマッププロットを示し、実際、中間体が実際の分離された抗体へと進行するにつれて、gp41に対する結合に関する親和性の成熟の進行が存在することを実証している。
【0050】
AHIの間に多反応性非HIV−1 gp41クローンが誘導されるとして、問われる次の疑問は、クローン684−6BメンバーがカルジオリピンおよびHep−2上皮細胞との反応性により多反応性であるかどうかであった。Hep−2間接免疫蛍光アッセイにおいて、クローン684−6Bの反応性はgp41反応性と同じ推定される中間前駆体期において獲得された(図8)。生殖細胞系列未変異抗体を含む684−6Bの全てのクローンメンバーはカルジオリピンと反応し、一方でHep−2反応性はクローンの発達の間に大きくなったり小さくなったりし、カルジオリピンとの反応性は最終クローン307および350までの中間体全体を通して比較的安定していた。生殖細胞系列および他のクローンメンバーのカルジオリピンとの多反応性は、HIVに対する初期の抗体応答はHIV−1 gp41が既存の多反応性の自然抗体のクローンを刺激することに由来し、gp41は最初のクローンが体細胞超変異によりgp41に対する交差反応性を獲得するとすぐにB細胞のクローンを多反応性gp41クローンになるように補充する(recruits)ことを強く示唆している。この発見は、HIVワクチン設計にかなりの波及を有する。
【0051】
非HIV−1抗原に対する生殖細胞系列反応性の性質。それぞれのクローンの生殖細胞系列抗体においてではなく推定されるクローン中間体における684−6Bクローンの反応性の獲得の驚くべき結果を考慮して、HIVにおいて活性化される抗体クローンの起源だと思われるものを同定するため、それに対してその生殖細胞系列が反応する可能性のある宿主抗原を同定するための努力がなされた。
【0052】
腸においてAHIによる早期の腸の微生物の移行が存在するため、およびAHIにおける初期の抗原刺激の多くが粘膜表面において生じるため、初期の抗体応答は腸微生物性抗体応答に何らかの方法で結び付けられる、または関連する可能性があるという仮説が立てられた。これを研究するため、嫌気性および好気性腸細菌叢の全細胞溶解物に対する684−6Bクローンからのクローン性抗体ならびに推定される生殖細胞系列および推定される中間体の測定可能な反応性が存在するかどうかに関する決定がなされた。加えて、EBVによる形質転換を用いて、AHIまたは未感染の対象の腸、骨髄または血液から一群の五量体IgM mAbを分離した。
【0053】
最初に、一連のIgM抗体をAHIから分離し、未感染の対象からgp41反応性またはgp41非反応性のどちらかである2種類のIgM抗体を分離した。問われた疑問は、gp41と反応性であるIgMが腸細菌叢とも反応性であるかどうかであった。表1は、実際にgp41と反応性であった全てのmAbが腸細菌叢抗原とも反応性である一方で、gp41と反応性でなかったmAbは腸細菌叢と反応性でなかったことを示している。
【0054】
【表1】
【0055】
注目すべきことに、試験した全てのクローンからの生殖細胞系列および中間前駆体を好気性および嫌気性腸細菌叢の全細胞溶解物を用いてアッセイした際に、そのクローンの全てにおける抗体の全てが腸細菌叢全細胞溶解物と反応した。図9は、それぞれのmAbにおいて好気性全細胞溶解物(WCL)と反応する684−6Bクローンのヒートマップを示す。嫌気性WCLを用いて同様の結果が得られた。腸細菌叢により仲介される抗原駆動を決定するための分析を実施した際、gp41に関してほどではないが、実際にAHIクローンにおける進行的な体細胞超変異と同時に起こる抗体親和性の増大が存在することが分かった。
【0056】
AHI gp41 mAbの嫌気性および好気性腸細菌叢全細胞溶解物とのウェスタンブロット。次に、図6における推定される中間体#2(HV00276)の反応性を、嫌気性および好気性WCLの両方を用いて、blue native PAGEで(図10AおよびB)、およびSDS−PAGEで(図11および12)決定した。blue nativeゲルでの分析において、684−6BクローンのmAbは好気性および嫌気性腸試料の両方において520,000Daの分子と反応した(図10Aおよび10B)。さらに、mAb 276は480KDaのMWマーカーとも反応し、それはフィコエリトリン(phycoerthryn)である(図10Aおよび10B)。図11および12は、非還元(図11)および還元(図12)条件のSDS−PAGEの下で、約520,000Daにおいてまた強いバンドが見られることを示している。還元条件下での未変性マーカーにおいても同様に、おおよそ60および50Kdにおいてより小さいバンドが見られる(図12)。その未変性マーカーはまたもフィコエリトリン(PE)であり、それは684−6BクローンのmabによるPEに対する多反応性を示している。
【0057】
重要なことだが、体細胞変異した元の2F5および4E10の広く中和する抗体も腸細菌叢WCLにおいてタンパク質のバンドと反応し、2F5は好気性WCLにおいて約300,000Daの分子および約80,000Daの分子と反応し、4E10は好気性WCLにおいて約80,000および100,000Daの分子と反応する。図12(還元条件下でのSDS−PAGE)において、HV00276(中間体684−6 ab #2)は好気性および嫌気性WCLにおいて約520,000Daのバンドに結合し、一方で2F5は好気性WCLにおいて約80,000Daのバンドと反応し、4E10はおおよそ60,000daのバンドと反応することが分かる。
【0058】
広く中和する抗体2F5、4E10および1b12は多数の宿主抗原に結合する多反応性抗体であることが以前に示されている。従って、疑問は、HIVに対する初期応答が多反応性抗体応答によるものであるならば、広く中和する多反応性抗体はなぜ作られないのかである。2つの可能性が考えられている。
【0059】
第1に、1b12、2F5および2G12の生殖細胞系列はHIVのgp120またはgp41に結合せず、一方で体細胞超変異した抗体は結合することが示されている(Xiao et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 390:404-9 (2009))。従って、広く中和する抗体のエピトープの多くに関して、当分野が用いてきた免疫原はそれらが標的としているナイーブB細胞のB細胞受容体を標的としないことが考えられる。1b12の生殖細胞系列はここで脂質反応性に関して、および腸細菌叢全細胞溶解物活性に関して研究されており、実際にその生殖細胞系列1b12の反応性はHIV gp120エンベロープに対して陰性であり、一方でその体細胞変異した1b12の反応性はHIV gp120に対して非常に高いことが分かっている(図13)。それに対し、1b12の生殖細胞系列の反応性はカルジオリピンに対して非常に高く、一方で体細胞変異した多反応性の最初の1b12のカルジオリピンに対する反応性は陰性ではないが非常に低い(図13)。さらに、1b12の生殖細胞系列は腸細菌叢全細胞溶解物とも反応性であり、一方で成熟した最初の体細胞変異した1B12 mAbはごく弱く反応性である(表2)。
【0060】
【表2】
【0061】
第2に、2F5、4E10および1b12の多反応性はこれらのタイプの抗体を作るB細胞を削除またはアネルギーに向けるという仮説が立てられた(Haynes et al, Science 308:1906-8 (2005); Haynes et al, Human Antibodies 14:59-67 (2005); Alam et al, J. Immunol. 178:4424-35 (2007))。この仮説は最近2F5 VHに関して2F5 FHホモ接合性ノックインマウスにおいて証明されており(Verkoczy et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:181-6 (2010))、ここで4E10 VHホモ接合性マウスにおいて証明された(図14)。その広く反応する体細胞変異したVHのノックインの両方の動物モデルにおいて、その変異したVHは骨髄において削除を引き起こすのに、および抹消において多数の寛容性機構を誘起するのに十分に自己反応性である。
【0062】
要約すると、上記で記述した結果は以下のことを示している:
・HIVに対する初期の抗体応答は、非中和性Env gp41エピトープに焦点が合わせられている。
【0063】
・初期のgp41抗体応答は、その生殖細胞系列Abはgp41とは反応しないがその推定される中間Abはgp41と反応する、既存の体細胞変異した多反応性の“自然”抗体クローンから生じる。
【0064】
・gp41抗体反応性クローンの抗体メンバーは多反応性であり、脂質および他の自己細胞性抗原と交差反応するが、抗gp41抗体の親和性は体細胞超変異が起こるにつれて増大し、これはgp41抗原駆動を示している。
【0065】
・しかし、初期のHIVに誘導されるクローンの発達は、おそらく自己模倣(self mimicry)のため効率的でも高親和性でもなく、それはHIV Env反応性および非反応性抗体クローンメンバーの混在につながる。
【0066】
・広く中和する抗体1b12、2F5および2G12の生殖細胞系列はそれらの推定される生殖細胞系列抗体と反応しないようである。
・AHIまたは未感染の対象から分離されたgp41に結合するIgM抗体は腸細菌叢にも結合するが、gp41陰性IgMは腸細菌叢抗原に結合しない。
【0067】
・1b12の生殖細胞系列は脂質および腸細菌叢と反応し、これはおそらく元々腸細菌叢に対して標的化されていたB細胞クローンに由来する既存の多反応性自然抗体産生ナイーブB細胞に由来することを暗示している。
【0068】
・体細胞変異した2F5、4E10および1b12の広く中和する抗体は全て腸細菌叢全細胞溶解物中の抗原と反応し、これはこれらの抗体がおそらく元々腸細菌叢に対して標的化されていたナイーブB細胞のクローンに由来することを示している。
【0069】
実施例2
mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物中のタンパク質のバンドの濃縮および同定を図52に示す。Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析は、mAb HV00276が嫌気性および好気性腸細菌溶解物中の約520kDaのタンパク質のバンドに結合することを示している。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に、約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分を集めた。SEC画分は、クーマシーブルー(1)、銀染色(2)およびmAb HV00276によるウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。zoom等電点分画法は、mAb反応性タンパク質のpH6.2〜7を有するゲル区画A4への移動を示す。
【0070】
濃縮された画分からの520kDaのバンドに対して、タンパク質の同定のためにLC−MS分析を行った。RNAポリメラーゼβ、β’およびαサブユニットが同定された(図53)。
【0071】
大腸菌RNAポリメーラーゼコアタンパク質およびホロ酵素(コアタンパク質+σサブユニット)(Epicentre Biotechnologies,ウィスコンシン州マディソン)をNativePAGEゲル上で泳動し、mAb HV00276の反応性をウェスタンブロッティングを用いて検出した。コアおよびホロ酵素の両方に対する反応性が検出され、それはmAb HV00276がRNAポリメーラーゼコアタンパク質に結合することを示している。
【0072】
大腸菌RNAポリメーラーゼコアタンパク質(Epicentre Biotechnologies,ウィスコンシン州マディソン)を変性SDS−PAGEゲル上で、還元(Red)および非還元(NR)条件下の両方で泳動した(左のパネル)。変性SDS−PAGEにおいて、コアタンパク質の個々のサブユニット(β、β’、αおよびω)を分解し、クーマシーブルー染色の後に可視化することができる(右のパネル)。転写したゲルのウェスタンブロット分析は、276mAbがRNAポリメーラーゼコアタンパク質の37kDaのαサブユニットにのみ結合することを示している。腸細菌溶解物タンパク質に関して陰性であったHV00503 mAbの反応性がないことは、そのコアタンパク質サブユニットのいずれに関しても観察された。
【0073】
実施例3
自己寛容がどのようにHIV−1に対する防御的体液性応答に影響を及ぼす可能性があるかを理解するためには、どの自己抗原がHIV−1エピトープにより模倣されるのか、およびどこで/いつこれらの自己抗原がTおよびBリンパ球に晒されるのかを決定することが重要である。図30において、HIV−1 gp41 MPERのエピトープに特異的なモノクローナルヒト抗体はアセトン固定されたマウス3T3細胞中に存在する自己抗原とも反応することが示されている。図31において示されているように、少なくとも4種類の別個の分子がマウス3T3細胞からビオチン化2F5抗体により免疫沈降され得る。沈降した主要な種は、おおよそ50〜54kDaの見た目の分子量を有する。
【0074】
保存された哺乳類のタンパク質KYNUはコア2F5エピトープを有し、51kDaの分子量を有する(図32)。その2F5コアエピトープは多くの脊椎動物種のKYNU中に存在し(図33)、KYNUの保存されたH3ドメイン中に存在している(図34)。図35で示したように、ELDKWA領域は秩序正しいアルファらせん中にある。DKWモチーフは表面に露出していない。
【0075】
2F5抗体のヒトKYNUへの結合はH3ドメインの歪みを必要とする可能性があり、それは結果として遅くなったKONをもたらす可能性がある。図36で示したように、H3において、DおよびW残基はおそらく露出した側鎖を有するが、Kは埋まっている。2F5抗体はELDKWAエピトープに結合するために必然的にH3らせんを“歪める”可能性がある。生理的条件下では、KYNUはホモ二量体であると考えられる。ELDKWAモチーフはKYNU単量体にとって利用可能である可能性があるが、KYNUが2量体を形成した際はアクセス可能でありそうもない(図37および38)。
【0076】
推定上の生殖細胞系列2F5抗体は、rhKYNUとも反応する(図39および40)。これは、それがKYNUは最終的に変異した高親和性2F5抗体を産生したB細胞の本来のリガンドである可能性があることを実証している点で、重要な点である。図41において示したように、2F5抗体は2F5エピトープを含有するペプチド(DP178−Q16L)と強く反応する一方で、抗KYNU抗体は反応しない(図42および43も参照)。
【0077】
13H11は、2F5決定基に近位のエピトープを認識する非中和性マウスHIV−1 MPERモノクローナル抗体であり、rhKYNUと結合しない(図44)。図45は、2F5および13H11モノクローナル抗体のHIV−1 gp41 MPERへの結合部位を区別する残基のマッピングを提供する。図46において示したデータは、組換えHIV−1 gp140 env(JRFL)、DP178−Q16L、および無関係なペプチド抗原R4Aによる、2F5のrhKYNUへの結合の競合阻害を示す。
【0078】
JRFL組換えHIV−1 gp140は2F5のJRFLへの(同種阻害)、およびrhKYNUへの(異種阻害)結合を比較可能なほどに阻害する(図47)。その阻害曲線の類似性は、単一の共通のエピトープが2F5のJRFLおよびrhKYNUへの結合の両方に寄与していることを示している。
【0079】
図48において示したように、2F5モノクローナル抗体はプレートに結合したrhKYNUおよび可溶性rhKYNUの両方に比較可能なほどに結合する。表面プラズモン共鳴による研究は、2F5およびその未変異前駆体がrhKYNUに強く結合することができることを実証している(図49)。より遅いKonは、2F5抗体が最大限の相互作用を達成するために自然なKYNUの構造を歪めることと一致している。Koff速度は非常に遅く、これは結合したKYNUが全ての2F5のタイプと安定して相互作用することを示している。
【0080】
SPR結合分析は、2F5 mAbおよびそのRUA(2F5−GL1および2F5−GL3)がKYNUに結合することを示している(図50)。その抗体のそれぞれがヒト抗Fc(human anti−Fc)が固定されたセンサー表面上に捕捉され、可溶性KYNUが50、30、20、および10μg/mLの濃度で注入された。結合曲線の重ね合わせは、KYNUのそれぞれの抗体への特異的な結合を示している。非特異的結合は、KYNUへの結合を示さない対照mAb(Synagis,抗RSV)を用いて測定された。
【0081】
実施例4
2F5の固定された3T3細胞への反応性が、2F5 MPERコアエピトープ(ELDKWA)を含有するタンパク質/ポリペプチドにより阻害され得るかどうかを決定するため、2F5モノクローナル抗体(10μg/ml)を増大するモル濃度の同種(JRFLおよびDP178)または異種(R4A)阻害剤と反応させた(1時間、25℃)。続いてこれらの混合物を、メタノール/アセトンで固定した3T3細胞で覆われた水和された/ブロッキングされたスライドに添加した(2時間、25℃)。スライドをすすぎ、次いで250mlの(0.1%Tween−20および0.5%BSAを含むPBS)中で一夜洗浄した。洗浄されたスライドを、ヤギ抗ヒトIgG−FITC(0.1%Tween−20および0.5%BSAを含むPBS中1:400)で覆った。1時間後、スライドを洗浄し、Fluoromount−G中でカバーガラスを乗せた(coversliped)。24時間後、Zeiss Axiovert 200M共焦点顕微鏡を200倍の倍率および固定された300msecの露光時間で用いて蛍光画像を得た。
【0082】
同種阻害剤であるJFRLタンパク質、およびより低い程度でDP178ポリペプチドは、2F5の3T3細胞への結合を阻害した。無関係なポリペプチドであるR4Aは阻害を示さなかった(図51参照)。これらのデータは、2F5の固定された3T3細胞に対する反応性の相当量が非特異的脂質結合ではなくタンパク質−タンパク質相互作用により決定されていることを実証している。従って、KYNUと同様に、タンパク質は2F5に関する主要な自己リガンド(autoligand)であることができる。
【0083】
実施例5
上記で記述したように、本発明は、HIVエンベロープタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)を投与して、第1に広く中和する成熟した抗体を生じることができる未変異祖先抗体を発現するB細胞を標的とし、次いでその体細胞成熟を経ているB細胞を選択されたHIVエンベロープタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)により追加免疫することにより、B細胞クローンの成熟を望まれる中和の広さに向けて駆動することを含むワクチン戦略に関する。その戦略の開発には、この成熟経路の再構築が含まれていた。望まれる最終的な(成熟した)抗体を広く中和する抗体を産生する患者から分離し、その抗体を特性付けした。そのそれぞれの推定上の祖先抗体を推定し、実際の抗体として発現させ、何にそれらが結合するかに関する決定を行った。未変異の“祖先”および中間抗体を発現するB細胞は、適切なタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)により引き金を引くと親和性が成熟してその患者において観察される広く中和する抗体を分泌するB細胞をもたらすであろうと考えられる。
【0084】
クレードをまたぐ(cross−clade)中和モノクローナル抗体CH01、CH02、CH03、CH04およびCH05の選択および分離
対象707−01−021−9の凍結されたPBMCから得られたおおよそ30,000個の記憶B細胞をスクリーニングし、CAP45の感染性を50%より大きく中和する28の培養物を見つけた(図56)。モノクローナル抗体CH01、CH02、CH03、CH04およびCH05(CH01〜CH05)をこれらの培養ウェルの4つから分離した(1−27−G2、1−27−G11、1−19−Fl0および1−19−B7)(図56)。
【0085】
スクリーニングの時点で凍結した、RNAを後で処理した(RNA−later−treated)記憶B細胞から得られたV重鎖およびV軽鎖の増幅および配列決定を実施した。培養物1−27−G2および1−19−Fl0は1つの対のみ(3〜20/κ3〜20;それぞれCH01およびCH02モノクローナル抗体)を含有しており、それはその培養物がモノクローナルであったことおよびCH01およびCH02が自然抗体であることを示している。逆に、1−27−G11および1−19−B7は多数のV重鎖およびV軽鎖を含有しており、それはその培養物がオリゴクローナルであったことを示している。
【0086】
これらの後者の培養物からの自然対(natural pairs)を同定するため、最初のスクリーニングの時点で集められた単一細胞選別された記憶B細胞を増幅し、配列決定した。CH03およびCH04(共に3〜20/κ3〜20)は、それぞれ培養物1−27−G11および1−19−B7から分離された自然対であった。
【0087】
培養物1−19−B7から、その記憶B細胞をおおよそ4週間の間連続限界希釈によりさらに拡張およびクローニングすることにより、ヒトB細胞ハイブリドーマを生成した。この手段により、CH04自然抗体を得てCH05を同定し、それは拡張された記憶B細胞のより少ない集団により生成され、CH04と同じ3〜20V重鎖を発現していたが、異なるκ1〜6V軽鎖と対になっていた。
【0088】
そのCH01〜CH03モノクローナル抗体は、V重鎖およびV軽鎖の対を293T細胞中に形質移入し、以前に記述されたように(Liao et al, J Virol Methods. 158(1-2):171-9 (2009))IgG1主鎖中で発現させることにより得られた。モノクローナル抗体CH04およびCH05は代わりにハイブリドーマB細胞株から精製された。
【0089】
これらのデータは、その戦略が中和するモノクローナル抗体のおおよそ2週間での迅速な同定および1ヶ月もの早さでの自然モノクローナル抗体の産生を可能にすることを実証している。さらに、この方法は、インビボでのレパートリーにおいて表されている自然抗体と違いのないモノクローナル抗体の正確な特性付けに関して、古典的なファージディスプレイライブラリーの不確実性を解決する。最後に、HIV−1を広く中和する2種類の自然ヒトB細胞ハイブリドーマの生成を初めて報告した。
【0090】
CH01〜CH05抗体のゲノム的特性付け
CH01〜CH05抗体は、以下の要因に基づいて全て同じクローンファミリーのメンバーであることが決定された:(1)V(D)Jファミリー;(2)HCDR3の長さ;(3)HCDR3領域およびn−挿入のヌクレオチド配列。
【0091】
重鎖の分析は、CH01〜CH05がIgG1抗体であり、同じV3〜20*1/J2*01再編成(表3)を共有していることを示した(表3)。それらは同じD領域も共有しており、それは3〜10*1および2OF15*2/inv領域のD−D融合の結果生じる(表3)。そのHCDR3は26アミノ酸長である(表3)。N−挿入も同じ長さであり、ヌクレオチド構成を共有しており、それはCH01〜CH05モノクローナル抗体がクローン的に関連しているという考えと一致する(図57A)。CH04およびCH05のV重鎖配列は同じであり(図57A)、それはV軽鎖の末梢での編集が起こる瞬間が妨害されたことを示唆している。
【0092】
【表3】
【0093】
そのV重鎖を見た限りでは、CH01〜CH04は同じVLκ3〜20/JLκ1再編成(図57B)、同じ長さ(9アミノ酸)のLCDR3および類似のn−挿入(図57B)を共有していた。モノクローナル抗体CH05のV軽鎖は代わりに無関係であり(図57C)、異なるVLκ1/JLκ2再編成、LCDR3の長さおよびn−挿入を有していた。V軽鎖のVH3〜20鎖への対合の基礎をなす生物学は、より大きなVLκの数はJκの位置により近く、従って祖先抗体は最初にVLκ3を、次いでVLκ1を再編成しなければならなかったと考えられるため、VH3〜20/VLκ3〜20鎖の対(CHO1〜CH04)がVH3〜20/VLκ1〜6の対合(CH05)に先行したことであると考えられる。さらに、小さい数のJκの位置は大きい数のJκの位置より前に来なければならない。従って、VLκ3/JLκ1からVLκ1/JLκ2への移行は単純な編集と一致する。最後に、図58に示した、以下で論じる系統樹は、さらにVLκ3/JLκ2の再編成が最初に起こったという非常に強い証拠を提供する。
【0094】
次に、V重鎖の系統樹を構築することにより、CH01〜CH05モノクローナル抗体の遺伝的関係の決定を行った(図58)。それを行うために、観察された抗体に全体として最尤分析を適用することにより、CH01〜CH05抗体の推定上の復帰未変異祖先を推定した。この方法を用いて、位置329における1個の沈黙ヌクレオチド置換(GまたはT)に関してのみ異なる2種類の可能性のあるRUA(0219−RUA1および0219−RUA2)が予想された(図59)。その推定上のRUAは、それぞれの観察されたモノクローナル抗体を独立して分析することによっても予想された。この方法を用いて、9個のRUA抗体の候補を同定した:CH01に関して1個(CH01−RUA1)、CH02に関して2個(CH02−RUA1およびCH02−RUA2)、CH03に関して4個(CH03−RUA1、CH03−RUA2、CH03−RUA3およびCH03−RUA4)CH04に関して2個(CH04−RUA1およびCH04−RUA2)。全ての算出された推定上のRUAの配列比較を図59において示す。
【0095】
V重鎖の系統樹(図58)は、CH02およびCH03が互いに遺伝的に近く、CH03はそのファミリーの内で最も体細胞変異したモノクローナル抗体であることを示している。
【0096】
まとめると、これらのデータは、CH01〜CH05はクローン的に関連した重度に体細胞変異したモノクローナル抗体であり、それらは長いHCDR3を共有し、D−D融合再編成を有することを示している。さらに、これはヒトにおける末梢での軽鎖の編集の最初の記述である。
【0097】
CH01〜CH05モノクローナル抗体は2層HIV−1分離株を広く中和し、単量体性gp120/gp140 HIV−1エンベロープタンパク質の限られたセットに結合する。
【0098】
CH01〜CH05抗体の中和の広さを、96種類のHIV−1初代分離株の集団に対して試験した。その集団は、4種類の1A層分離株、3種類の1B層分離株(2種類のクレードBおよび1種類のクレードAE)ならびに10種類のクレードA、21種類のクレードB、27種類のクレードC、4種類のクレードD、7種類のクレードG、1種類のクレードAE、1種類のクレードAD、9種類のCRF01_AEおよび9種類のCRF02_AGウイルスが含まれる89種類の2層分離株を含んでいた。
【0099】
遺伝的分析により予想されたように、CH01〜CH05は非常に類似した中和のパターンを共有していた(表4)。全ての抗体は多数のクレードからのウイルスを中和し、その中和の広さはCH01の44.9%(43/96分離株)からCH02の34.7%(33/95分離株)までの範囲であった。CH03、CH04およびCH05はそれぞれ43.2%(41/95)、43.2%(41/95)および44.2%(42/95)の分離株を中和した。1A層分離株を中和した抗体は無かった。1B層分離株は、CH01(3種類の内2種類)、CH02およびCH03(3種類の内1種類)によってのみ中和され、CH04またはCH05によっては中和されなかった。逆に、CH01〜CH05は2層ウイルスに対してより大きい中和の広さを示した。CH01はCRF02_AG分離株(7/9;77.8%)を優先的に中和し、クレードA(7/10;70%)、CRF01_AE(5/9;55.6%)、クレードB(9/21;42.9%)、クレードC(11/27;40.7%)、およびクレードG(1/7;14.3%)分離株が続いた。クレードDウイルスは中和されなかった。逆に、CH01〜CH05モノクローナル抗体はAE.CM244.ec1を強く中和したことを特筆するのは重要である(表4)。1層ウイルスを上回る2層ウイルスの優先的な中和は、以前の研究により中和しやすい1層分離株の広い中和はより中和しにくい2層分離株に対する広さに変換されないことが実証されており、従ってそれらの種類の抗体はHIV−1の感染の予防または制御において限られた助けにしかならない可能性がある点で重要である。
【0100】
【表4−1】
【0101】
【表4−2】
【0102】
【表4−3】
【0103】
比較すると、表中に示した最近記述されたPG9およびPG16 4次抗体は、それぞれ73/83(88%)および69/83(83.1%)の2層分離株を中和した。興味深いことに、ただ1つの例外(T251−18)を除き、PG16はPG9により中和された分離株の亜集団を中和し、CH01〜CH05の広く中和する抗体はPG16により中和されるウイルスの亜集団を中和する。この発見は、CH01〜CH05のエピトープがPG9/PG16のエピトープと関連しているという仮説と一致する。
【0104】
次に、CH01〜CH05抗体の中和感受性分離株に対する効力を評価した。全体的に、IC50の中央値はおおよそ1μg/mlであり、IC50の平均値は2.4から5.6μg/mlまでの範囲であった。CH03はCH01〜CH05抗体の中で最も強い効力を示し、IC50の平均値は2.4μg/ml、IC50の中央値は0.46μg/mlであり、PG9のそれら(IC50の平均値=2.1μg/ml;IC50の中央値=0.11μg/ml)と比較可能であったが、PG16のそれら(平均値=0.67μg/ml;中央値<0.02μg/ml)より弱かった。最も広い中和剤(neutralizer)であるCH01は、それぞれ3.7および1.1μg/mlのIC50の平均値および中央値を示した。CH02、CH04およびCH05のIC50の平均値はそれぞれ4.9、4.7および4.3μg/ml、IC50の中央値はそれぞれ0.97、0.8および0.79であった。
【0105】
伝染した始祖ウイルスを中和する能力は、評価すべき別の重要なパラメーターである。表4で示したように、CH01〜CH05 bNabは3/3(100%)のクレードA、2/9(22.2%)のクレードBおよび2/3(66.7%)のクレードCの伝染した始祖ウイルスを中和することができた。
【0106】
まとめると、これらのデータはCH01〜CH05抗体のクローンファミリーは伝染した始祖ウイルスを含む多数のクレードからの2層分離株を広く中和することを示している。これは広く中和する抗体のクローンファミリーの最初の報告である。CH05の中和のパターンには、そのクローンファミリーの他の広く中和する抗体の中和のパターンと比較して有意な違いがないため、これらの結果は、編集されたVLκ1〜6鎖がVLκ3〜20鎖と比較可能なレベルでの試験された分離株の中和を可能にしたことも示している。
【0107】
成熟した抗体とは対照的に、推定される推定上のRUAはそのような中和の広さを示さなかった。それでも、少数の分離株しか強く中和されなかった。24種類の分離株の集団に対して試験した6種類の推定されたRUAの中和プロフィールを表5に示す。CH03−RUA1、CH03−RUA4およびCH03−RUA3がAE.CM244.ecl分離株をそれぞれ4.45、5.26および18.8μg/mlのIC50で中和したことを特筆するのは重要である。また、B.WITO4160.33は試験した全てのRUAにより強く中和された(0.06から0.47μg/mlまでのIC50)。A.Q23.17分離株も、CH01−RUA1、CH03−RUA1、CH03−RUA3およびCH03−RUA4により0.02μg/ml未満のIC50で非常に強く中和された。逆に、CH02−RUA1およびCH03−RUA2はA.Q23.17を3桁高いIC50で中和し、これはC.ZM233M.PB6と同じ中和のパターンを示している。
【0108】
【表5】
【0109】
CH01〜CH05抗体の単量体性gp120/gp140 HIV−1エンベロープへの結合。
B細胞に結合させてCH01〜CH05様抗体の産生を誘発するためにどの単量体性エンベロープをワクチン配合物中で用いることができるかを決定するために、CH01〜CH05モノクローナル抗体およびRUAを32種類の単量体性エンベロープの集団への結合に関して試験した。表6は、μMで表したEC50を示す。
【0110】
【表6】
【0111】
単量体性エンベロープへの結合はgp120 A244gD+を除いて弱く、それはCH01〜CH05抗体により7.8μΜ(CH01)から150μΜ(CH02)までの範囲のEC50で結合された。加えて、そして広く中和する抗体を分泌することができるB細胞の前駆体の選択的標的化と非常に関連して、2種類の推定上のRUAもいくらかの結合を示した(表6)。5種類の成熟した抗体全てにより結合された他のHIV−1エンベロープは、そのEC50の平均値はより高かったが、gp120 CM243であった。A244(CM244)エンベロープの配列は、L124P、N196S、K198E、A212PおよびD284Nのaa置換を除き、McCutchanら(AIDS Res. Hum. Retrovir. 8(11):1887-1895 (1992))からのものである。加えて、gp120 A144(CM244)のN末端に、単純ヘルペスウイルスのgDタンパク質からの30AA配列(KYALVDASLKMADPNRFRGKDLPVLDQ)が存在する。この配列は、HSVの侵入および感染に必要なgDタンパク質の受容体結合部位を含む(Yoon et al, J. Virol. 77:9221 (2003), Connolly et al, J. Virol. 79:1282-1295 (2005), Campadelli-Fiume et al, Rev. Med. Virol. 17:313-326 (2007))。このA244 gp120が免疫原として用いられたRV144タイワクチン試験において、その対象はMN gp120およびA244 gp120の両方においてそのgDタンパク質に、IgA(図60)およびIgG(図61)gD抗体の両方で応答した。図62は、gDペプチド中に2個の可能性のある目的の部位が存在することを示しており、それはgp120のアルファ4ベータ7結合部位であるLPVおよびLDQを模倣している可能性がある。従って、これは3つの可能性を生じさせる:
1.gp120のa4b7への結合のためのモチーフはLDVおよびLDIである
HSV gD LPVおよびLDQ
これは、gDに対する抗体はHIV gp120のa4b7への結合を妨害することができるかどうかという疑問を生じさせる。
【0112】
2.HSV−gDのLDQは、宿主の細胞の受容体のヘパラン硫酸に関する受容体結合部位である(Yoon et al, J.Virol. 77:9221 (2003))。
これは、gDに対する抗体はHIV Envのヘパラン硫酸への結合を妨害することができるかどうかという疑問を生じさせる。
【0113】
3.LDQは第2のHSV受容体HVEMに関する受容体結合部位でもある。LDQに対する抗HSV抗体応答は、HSVに対して防御的であることができた(Yoon et al, J.Virol. 77:9221 (2003))。
【0114】
従って、抗gD応答は有効な感染を低減することによりHIVに関して防御的であることができるであろう。
ほとんどの単量体性gp120/gp140エンベロープへの結合の欠如は、CH01〜CH05が三量体性エンベロープ上で優先的に発現している立体構造感受性の4次抗体に結合することを示している。同様の発見がPG9およびPG16抗体に関して報告されている(Walker et al, Science 326(5950):285-9 (2009))。逆に、A244gD+ gp120エンベロープへの強い結合は、HSV−1糖タンパク質Dの同時発現が機能性エピトープを回復したことを示唆していた。
【0115】
HSV−1の糖タンパク質DのCH01〜CH05抗体の結合の増進における役割を調べるため、そしてRUAのエンベロープへの結合を標準的なELISAの検出の閾値より下であるがなお生理学的に関連性がある可能性のあるレベルで検出するため、CH01〜CH05抗体およびRUAのA244gD+およびA244gD− gp120エンベロープに対する解離定数(kd)を、表面プラズモン共鳴を用いて測定した(表7)。A244gD+は一貫してA244gD−よりも少なくとも1桁低いkdを示したが、さらにもっと重要なことには、全てのRUAがA244gD+ gp120に790nMから26.7nMまでの範囲のkdで結合した。これらのデータに関する表面プラズモン共鳴パターンを図63〜66に示す。伝染した始祖ウイルス6240がPG9にナノモル濃度のKdで結合したことは、図66においても示されている。まとめると、これらのデータは、A244 gD+エンベロープおよび6240伝染始祖エンベロープは天然のEnv三量体において見出されるgp120と類似の立体構造にあり、従って免疫原としての使用に関して正しい立体構造にあるはずであることを示している。
【0116】
【表7】
【0117】
CH01〜CH05の広く中和する抗体の自己反応性および多反応性プロフィール。
表8は、CH03はRNP、ヒストンおよびセントロメアB自己抗原と自己反応性であることを示している。CH03におけるセントロメアに結合する抗体の存在は、HEp−2細胞における間接蛍光抗体染色を用いても見出された(図67)。表12は、CH01〜CH05の4種類の非HIV抗原への結合(Luminexアッセイにより測定した)を報告する。そのデータは、CH01〜CH03が強く多反応性であることを示している。CH04およびCH05の多反応性は、さらに低いレベルにおいてさえもなお検出可能である。逆に、PG9およびPG16は多反応性能力を示さなかった。これらのデータは、CH01〜CH05ならびにPG9およびPG16抗体の間のそれぞれの発生の生物学における関連する可能性のある違いを指摘する。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
CH01〜CH05の広く中和する抗体により標的とされるエピトープの特性付け。PG16様表現型(phehotype)
CH01〜CH05抗体は、Walkerらにより最近記述された(PLoS Pathog. 6(8).pii:el 001028 (2010年8月5日))4次の広く中和するPG9およびPG16抗体と独特の特徴を共有している。特に、CH01〜CH05 bNabは、以下の4つの基準に基づいて“PG様”抗体として特性付けられた:(1)gp120タンパク質の位置160におけるアスパラギンのリシンへの点変異(N160K)が、そうでなければ中和感受性である分離株の中和を抑止する(abrogates)、(2)そうでなければ中和感受性である分離株の中和が、そのウイルスがマンノシダーゼI−阻害剤キフネンシンで処理された細胞中でのそれの産生により部分的に糖鎖除去された際に抑止される、(3)そのエピトープはエンベロープ三量体の状況において優先的に提示されるが、単量体性gp120またはgp140エンベロープ上には見付からない、そして(4)スレッディング(threading)がPG9またはPG16 bNabとの高い類似性を示す。bNabのCH01〜CH05クローンファミリーの代表として、CH01をそれがその4つの基準を全て満たすかどうか決定するために試験した。
【0121】
表9は、一群の野生型および変異した分離株(クレードA Q23.17およびクレードB JR−CSF JRFLおよび7165.18分離株)に対するPG9およびPG16の中和活性と比較した、CH01の中和活性(IC50およびIC80)へのN160K点変異の作用を示す。CH01、PG9およびPG16は全て野生型Q23.17(それぞれIC50=0.014、0.002および0.001μg/ml)およびJR−CSF(それぞれIC50=0.07、0.003および0.003μg/ml)分離株を強く中和する。Q23.17およびJR−CSFのgp120タンパク質中のN160K変異の導入は、その3種類の抗体による中和活性の完全な抑止につながる(IC50>50μg/ml)。また、CH01、PG9およびPG16はJRFLおよびその変異体に対して同じ中和パターンを共有している。それらのいずれも野生型のJRFLを中和しない。位置168における単一の変異(E168K)は正しく適合された(conformed)エピトープを再構成し、結果として強力な中和(CH01、PG9およびPG16に関してそれぞれIC50=0.044、0.008および0.003μg/ml)をもたらすが、それに続くN160K変異の導入はE168K変異の作用を復帰させ、そのJRFL/E168K/N160K分離株をその3種類のbNab全てに対して中和抵抗性(IC50>50μg/ml)にする。最後に、7165.18はCH01(IC50=5.82μg/ml)およびPG16(IC50=11.8μg/ml)により中和されるが、PG9(IC50>50μg/ml)によっては中和されず、またもN160K変異はCH01およびPG16の両方による中和を抑止する。まとめると、これらのデータは、CH01の中和活性はPG9およびPG16と同様にgp120における署名(signature)N160K変異により影響を受ける。
【0122】
【表10】
【0123】
PG9およびPG16の別の特徴は、そうでなければ中和感受性であるウイルスが、そのウイルスを産生するために用いられる293T細胞をキフネンシンで処理した場合に抵抗性になることである。図68は、293T細胞中で産生されたYU2のCH01による中和が50μMのキフネンシンを用いた処理により見た限りでは無効にされていることを示している。
【0124】
上記で記述された単量体性gp120およびgp140エンベロープへの限られた結合の広さを有する広く中和する抗体は、そのエピトープが三量体性エンベロープの状況において正しく露出される4次抗体の典型的なものである。
【0125】
7種類の別個のモノクローナル抗体のスレッド(threads)上へのCH01の重ね合わせは、PG16の構造はHC01の3D立体構造を予想するのに最も適していることを示した(表10)。図69は、CH01のPG16のスレッド上への重ね合わせを示す。PG9およびPG16はHCDR3領域の独特の形状により特性付けられ、それはその抗体の構造の先端から“ハンマー様の”形状で突き出している(Pancera et al, J. Virol. 84(16):8098-110 (2010))。そのような特徴を有する他の抗体は以前に記述されていなかった。特に、CH01の構造は非常に類似しており、その“ハンマー”の“頭部”はPG16のそれとよく重なり合う(図69)。HCDR3はPG9およびPG16よりも短いため、その配列はいくつかの部分で異なっており、これはCH01〜CH05抗体およびPG9/PG16の間の異なる反応性の広さの構造的説明である可能性がある。
【0126】
【表11】
【0127】
4次抗体の興味深い特徴は、それらがCD4i抗体と同じ方法でチロシン硫酸化され得ることである(Huang et al, PNAS 101(9):2706-2711 (2004) Epub 2004年2月23日、およびPejchal et al, PNAS 107(25):11483-8 (2010))。チロシン硫酸化予想プログラムである“sulfinator”を用いて実施されたCH01の配列分析は、硫酸化されそうな1個のチロシンを予想した(ARGTDYTIDDAGIHYQGSGTFWYFDL)(表11)。(CH01が1−27−G2と呼ばれていることに注意。)
【0128】
【表12】
【0129】
まとめると、これらのデータは、CH01〜CH05 bNabがgp120のV2領域を含む4次エピトープを認識するPG様の抗体であるという考えを強く支持している。
要約すると、上記で示したデータは以下のことを実証している:(1)ファージディスプレイライブラリーを生成する必要のない自然抗体の迅速な同定および分離を可能にする戦略を開発した;(2)5種類のクローン的に関連する広く中和する抗体のファミリーを記述し、それらの発達を追跡した;(3)ヒトにおける末梢での受容体の編集の予備的な証拠を提供した;(4)以前に記述されたPG9およびPG16の広く中和する抗体に遺伝的に関連しない、PG様ファミリーの広く中和する抗体の新規のメンバーを記述した;そして(5)1個より多くのモノクローナル抗体が入手可能である場合に推定上の復帰未変異祖先の予想の正確さを増大するための方法を開発した。
【0130】
4次V2、V3抗体の誘導のための免疫原の設計に関して、実施例5において、単純ヘルぺスのgDの配列を有するgp120 Env A244は、V2、V3の立体構造決定的な(conformational determinant)広く中和するAb PG9、PG16、CH01〜CH05に十分に結合することができ、CH01、02および03抗体の復帰未変異祖先にも結合することができることが実証された。さらに、6240伝染始祖EnvはPG9、およびPG16 mabに十分に結合することができる。従って、V2、V3の広く中和する抗体の誘導のための強力な免疫処置計画は、N末端においてgD配列を有するA244 gp120エンベロープで数回(例えば1〜3回)予備刺激し、次いで例えば6240伝染始祖gp140で(例えば1〜3回)全身的に(例えばIMまたは皮下で)または粘膜に(例えば鼻内に、舌下に(sublingualy)、膣内に、または直腸に)のどちらかで追加免疫することである。A224 gp120中のHSV受容体結合領域の免疫原性を考えれば、そのgDペプチドを含有するこのコンストラクトはHSVワクチンコンストラクトにも用いることができる。同様に、あらゆるHIV−1エンベロープのN末端に類似の方法で挿入されたそのgDペプチドは、1型および2型単純ヘルペスウイルスに対する防御抗体を誘導するために用いることができる。
【0131】
上記で引用されたすべての文献および他の情報源を、本明細書にそのまま援用する。
【図27−1】
【図27−2】
【図27−3】
【図28−1】
【図28−2】
【図57A】
【図57B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図29−1】
【図29−2】
【図29−3】
【図29−4】
【図29−5】
【図29−6】
【図29−7】
【図29−8】
【図29−9】
【図29−10】
【図29−11】
【図29−12】
【図29−13】
【図29−14】
【図29−15】
【図29−16】
【図29−17】
【図29−18】
【図29−19】
【図29−20】
【図29−21】
【図29−22】
【図29−23】
【図29−24】
【図29−25】
【図29−26】
【図29−27】
【図29−28】
【図29−29】
【図29−30】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50−1】
【図50−2】
【図51】
【図52−1】
【図52−2】
【図53A】
【図53B】
【図53C】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57C】
【図58】
【図59−1】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69−1】
【図69−2】
【図29−22】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−23】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−24】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−25】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−26】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−27】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−28】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−29】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図29−30】図29.HIV−1に対する早期B細胞応答:生得的B細胞の役割。
【図30】図30.広く中和する抗体である2F5および4E10は、系統発生的に保存されている自己抗原と反応する。
【図31】図31.2F5はウェスタンブロットにおいて43kDa、50kDa、70kDaおよび350kDaの3T3(マウス)細胞タンパク質に特異的に結合する。
【図32】図32.2F5名目(nominal)エピトープを有する保存された自己抗原。
【図33】図33.キヌレニナーゼ(kynuereninase)(KYNU)のH3ドメインは高度に保存されている。
【図34】図34.ヒトKYNU(PDB 2HZP)の構造およびELDKWAモチーフの位置。
【図35】図35.ヒトKYNU中のDKW残基(ELDKWA)の図説。
【図36】図36.2F5抗体のヒトKYNUへの結合は、そのH3ドメインの歪みを必要とする可能性がある。
【図37】図37.KYNU二量体はおそらく潜在的2F5結合部位を覆い隠す。
【図38】図38.2F5およびおそらく4E10抗体は、ウェスタンブロットにおいて組換えヒトKYNUに結合する。
【図39】図39.KYNUは2F5ファミリー抗体により認識される。
【図40】図40.2F5抗体は標準的なELISAにおいてrhKYNUと強く(avidly)反応する。
【図41】図41.2F5抗体は2F5エピトープを含有するペプチド(DP178−Q16L)と反応する−抗KYNU抗体は反応しない。
【図42】図42.rhKYNUおよびDP178−Q16Lに対する2F5の結合は標準的なELISAにおいて比較可能である。
【図43】図43.ELISAプレートにおける抗体結合は抗原特異的である。
【図44】図44.13H11はrhKYNUに結合しない。
【図45】図45.13H11はDP178−Q16Lと反応するがMPER−656とは反応しない。
【図46】図46.JRFL、DP178−Q16LおよびR4Aによる、2F5のrhKYNUへの結合の競合阻害。
【図47】図47.2F5のrhKYNUおよびJRFLへの結合の競合阻害。
【図48】図48.可溶性KYNUは2F5により結合される。
【図49】図49.表面に捕捉されたmabへのrhKYNUの結合。
【図50−1】図50A〜50C.2F5 mAbおよび2F5 RUA(復帰未変異祖先(reverted unmutated ancestor))抗体のKYNUへの結合、(図50A)2F5、(図50B)2F5−GL1、(図50C)2F5−GL3。
【図50−2】図50A〜50C.2F5 mAbおよび2F5 RUA(復帰未変異祖先(reverted unmutated ancestor))抗体のKYNUへの結合、(図50A)2F5、(図50B)2F5−GL1、(図50C)2F5−GL3。
【図51】図51.組換えHIV−1 gp140(JRFL)、ならびにDP178およびR4Aペプチドによる、2F5の3T3細胞への結合の阻害。
【図52−1】図52A〜52D.mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物におけるタンパク質のバンドの濃縮(Enrichment)および同定。(図52A)Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析。(図52B)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に集められた約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分。(図52C)SEC画分は、クーマシーブルー(1)および銀染色(2)およびウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。(図52D)zoom等電点分画法。
【図52−2】図52A〜52D.mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物におけるタンパク質のバンドの濃縮(Enrichment)および同定。(図52A)Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析。(図52B)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に集められた約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分。(図52C)SEC画分は、クーマシーブルー(1)および銀染色(2)およびウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。(図52D)zoom等電点分画法。
【図53A】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図53B】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図53C】図53A〜53C.RNAポリメラーゼの液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)による同定。(図53A)RNAポリメラーゼβサブユニットのLC−MS同定。(図53B)RNAポリメラーゼβ’サブユニットのLC−MS同定。(図53C)RNAポリメラーゼαサブユニットのLC−MS同定。
【図54】図54.Mab HV00276はRNAポリメラーゼのコアタンパク質に結合する。
【図55】図55.Mab HV00276はRNAポリメラーゼのコアタンパク質のαサブユニットに結合する。
【図56】図56.一次記憶B細胞培養物の中和スクリーニング。CHAVI08、慢性的にHIV−1に感染した志願者707−01−021−9の末梢血からの記憶B細胞をEBVで形質転換し、CD40リガンド、oCpGおよびCHK−2阻害剤の存在下で8細胞/ウェルの密度で14日間刺激した。刺激の終了時に、上清をレポーターである2層(tier)クレードC CAP45ウイルスに対する中和活性に関して試験した。黒い点は3,600培養物のそれぞれの中和の百分率を表す。モノクローナル抗体CH01〜CH05は白い点の記号で表した培養物から分離された。陽性対照(HIV Ig)を右端の白い点として示す。
【図57A】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図57B】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図57C】図57A〜57C.モノクローナル抗体CH01〜CH05のV重およびV軽鎖の配列比較。CH01〜CH05のV重鎖(図57A)、CH01〜CH04(図57B)およびCH05(図57C)のV軽鎖の配列の配列比較。推定上の復帰未変異祖先の配列を、V重鎖およびCH01〜CH04V軽鎖両方の配列比較のための鋳型として用いた。CH05は関連のないVκ1〜6鎖を有するため、それは別に示した。
【図58】図58.CH01〜CH05モノクローナル抗体のV重鎖の系統樹。
【図59−1】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図59−2】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図59−3】図59.推定される推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較。V重鎖を適用することにより推定される、全ての推定上の復帰未変異祖先抗体の配列比較は、“〜〜〜”によりV軽鎖から隔てられている。
【図60】図60.CH01、CH02、CH03の4次の広く中和する抗体のA244 gp120への結合。
【図61】図61.CH01、CH02、CH03の4次の広く中和する抗体の復帰未変異祖先のA244 gp120への結合。
【図62】図62.PG9およびPG16はA244 gp120および6420 T/F gp140の両方に結合する。
【図63】図63.A244gD+ gp120エンベロープと比較してA244gD− gp120エンベロープへの結合親和性が減少したCH01モノクローナル抗体。
【図64】図64.48パーセントの抗gD IgAワクチン応答(99人の対象)。
【図65】図65.81パーセントの抗gD IgGワクチン応答(99人の対象)。
【図66】図66.gDの免疫原性の強い関連性。
【図67】図67.HEP−2の結合。
【図68】図68.キフネンシン(kifunensine)処置の、CH01の中和を仲介する能力への作用。
【図69−1】図69.CH01(ここでは1−27−G2と呼ぶ)の配列のPG16 Fabとの重ね合わせ(Superimposition)。
【図69−2】図69.CH01(ここでは1−27−G2と呼ぶ)の配列のPG16 Fabとの重ね合わせ(Superimposition)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、対象(例えばヒトの対象)においてHIV−1に対する広く中和する抗体の産生を誘導する方法に関する。その方法は、対象に生殖細胞系列B細胞受容体に結合する非HIV−1抗原を投与することを含み、その非HIV−1抗原は、HIV−1 Envと交差反応する抗体を分泌するB細胞の中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与される。その方法はさらに、その対象にHIV−1抗原を、広く中和する抗HIV−1抗体を分泌するナイーブB細胞またはそれらのB細胞中間クローンが生成されるような量で、およびそのような条件の下で投与することを含む。gp120上のいくつかのエピトープに関して、それらのエピトープに結合することができる稀なナイーブB細胞が存在するであろう一方で、他のエピトープに関して、広く中和する抗体を生じることができるナイーブB細胞はEnvに結合せず、追加の非Envエピトープにより刺激される必要があるであろうと考えられる。広く中和する抗体の誘導に対する障害を図15において記述し、それらの障害を克服するための本戦略を図16Aにおいて記述する。
【0014】
本発明における使用に適した非HIV−1抗原には、宿主および/または外来抗原が含まれる。非HIV−1抗原には、例えば脂質、例えばカルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびそれらの誘導体、例えば1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](POPS)、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、またはそれらの断片が含まれる。リン脂質の六方II相(heagonal II phase)の使用は好都合である可能性があり、(例えば生理的条件下での)六方II管状相の六方晶的に充填された円柱を容易に形成するリン脂質が好ましく、六方II相で安定化され得るリン脂質も同様である。(Rauch et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:41 12-41 14 (1990); Aguilar et al et al, J. Biol. Chem. 274: 25193-25196 (1999)を参照)。他の適切な非HIV−1抗原には、例えば、フィコエリトリン(PE)、C−フィコシアニン(C−PC)、または他のフィコビリタンパク質、アポフェリチン、および嫌気性または好気性腸細菌叢またはその構成要素(単数または複数)(例えば520Kd抗原(またはRNAポリメラーゼホロ酵素またはRNAポリメラーゼコアタンパク質、またはそのサブユニット、例えばRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットもしくはそれにmAb HV00276が結合するエピトープを含むその一部)、または60Kdもしくは50Kd抗原)が含まれる。実施例2で示すデータは、mAb HV00276が大腸菌RNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットに結合することを示している。大腸菌RNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットと他の細菌(例えば枯草菌(B. subtilis)、志賀赤痢菌(S. dysenteriaea)、サルモネラ菌(S. enterica)、結核菌(M. tuberculosis)、ピロリ菌(H. pylori)およびインフルエンザ菌(H. influenza)および真核生物からのαの相同体(例えば出芽酵母のRpb3およびRpb11と関連するヒトおよびマウスのタンパク質)の間で配列の相同性が高い(Zhang and Darst, Science 281 :262-266 (1998))。従って、本発明には、大腸菌に加えて真核生物からの、および細菌からの520Kd抗原(またはそのサブユニット、例えばRNAポリメラーゼコアタンパク質のαサブユニットまたはmAb HV00276が結合するエピトープを含むそれの一部)の使用が含まれる。(例えば、大腸菌RNAポリメラーゼαサブユニット:NP_289856(gi/15803822);志賀赤痢菌:YP_404940(gi:82778591);インフルエンザ菌:NP_438962(gi:16272744);Rpb3:スイスプロット:P37382.2;Rpb3(ヒト):NP_116558.1(gi:14702171)参照。)
キヌレニナーゼ(KYNU)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼスーパーファミリーとして知られているピリドキサール5’−リン酸(PLP)依存性酵素のファミリーのメンバーである。真核生物の構成的キヌレニナーゼ類は3−ヒドロキシ−l−キヌレニンの加水分解的切断を優先的に触媒して3−ヒドロキシアントラニル酸およびl−アラニンを生成する。ヒトのKYNUのクローニング、発現、精製、特性付けおよび結晶化が報告されている(Lima et al, Biochemistry 46(10):2735-2744 (2007)。下記の実施例3で記述するように、KYNUはその保存されたH3ドメイン中にコア2F5エピトープを有する。
【0015】
実施例3で提供するデータに基づいて、この内在性のリガンドはBおよびTリンパ球の寛容化を招き、それによりHIV−1 gp41 MPERエピトープペプチドを投与されたヒトにおいてHIV−1に対する有効な免疫応答の生成を阻害することが予想される。本発明は、1態様において、この寛容を特異的に、すなわち他の無関係な自己抗原に対する寛容化に影響を及ぼすことなく壊す交差反応性抗原を投与することを含む、HIV−1に対する免疫形成を達成する方法を提供する。適切な抗原には、例えば、CHOまたは293T細胞において発現させたELDKWA配列またはELEKWA配列(ELEKWAはヒトのタンパク質には存在せず、従って寛容化されないと予想される)を有する変異gp41もしくはKYNU配列を有する組換えKYNU分子が含まれる。用いることができる他の免疫原には、ELEKWAまたはELDKWA配列のどちらかを有するリポソーム中の伝染/始祖または野生型慢性エンベロープgp140もしくはgp160またはMPERペプチドが含まれる。ELDKWA配列を有する免疫原は、強いアジュバント、例えばスクアレンに基づくモノホスホリル(monophosphosphoryl)リピドA、オリゴヌクレオチド(oligonucletides)(oCpG)およびR848(TRL−7/8作動薬)と共に投与するのが好都合である。これらのTLR作動薬およびIFNαを含むリポソームも用いることができる。(下記の注釈も参照。)
本発明における使用に適したHIV−1抗原には、膜近位外部領域(MPER)抗原(Armbruster et al, J. Antimicrob. Chemother. 54:915-920 (2004), Stiegler and Katinger, J. Antimicrob. Chemother. 512:757-759 (2003), Zwick et al, Journal of Virology 79:1252-1261 (2005), Purtscher et al, AIDS 10:587 (1996))ならびにその変種、例えばMPER Mab 2F5および4E10に対する、または他の広く中和するEnvに対するより高い中和感受性を与える変種、例えばMPER中にL669S変異を含有するMPER変異体Envペプチド脂質複合体が含まれる(Shen et al, J. Virology 83:3617-25 (2009))。好ましい免疫原には、図25および26、ならびに図16B、16C、図17、図18および図20において示した免疫原が含まれる。別の好ましい態様において、その変種はMPER mAb 2F5および4E10に対するより高い中和感受性を与えるL669S変異を有するMPERエピトープペプチドである(Shen et al, J. Virology 83: 3617-25 (2009))。
【0016】
本発明における使用に適したHIV−1抗原には、伝染始祖HIV−1 Envまたはその断片も含まれる。これらの断片は、gp120のCD4結合部位の一部(Chen et al, Science 362(5956):1123-7 (2009))、MPER配列、gp120のV2、V3領域を組み込むgp120の一部(Walker et al, Science 326(5950):285-9 (2009) Epub 2009年9月3日)等に相当するものであることができる(例えば、図27および28において示す1086、089、6240、040_C9および63521に関する配列を参照)。好ましいEnv抗原には、マラウイ1086クレードC、6321および以前に記述された(Liao et al, Virology 30:268-282 (2006))ように生成された米国クレードB 040_C9 gpl40オリゴマー(図17および18)(Keele et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:7552-7 (2008))が含まれ、それはクレードB JRFL gp140 EnvまたはMPER中和エピトープを選択的に示すその断片(図28参照)と混合されてモルモットにおいて中和抗体におけるかなりの広さを誘導した(図19A)。JRFL gp140 Envオリゴマー(図19B、20、21Aおよび21B)は構成的に2F5 mAbに結合する。500UのPNgaseエンドグリコシダーゼ(New England BioLabs,マサチューセッツ州イプスウィッチ)を用いて糖鎖除去されたJRFLオリゴマーは、2F5の増進された結合および4E10 mAbの新規の結合(gp41上の4E10エピトープの露出)を有する(図21Aおよび21B)。4E10の糖鎖除去されたJRFLへの増進された結合は、図22の表面プラズモン共鳴(reasonance)分析においても示されている。
【0017】
本発明の方法は、対象に非HIV−1免疫原を含む予備刺激(prime)免疫処置、続いてHIV−1 Env抗原の1回以上の追加免疫を施すことにより達成することができる。上記で指摘したように、適切な非HIV−1免疫原には脂質(例えばカルジオリピン、ホスファチジルセリン、または他の陰イオン性脂質)、嫌気性または好気性腸細菌叢の細菌の構成要素、フィコビリタンパク質(例えばPE)およびKYNUまたはその断片が含まれる。やはり上記で指摘したように、適切なHIV−1 Env抗原にはマラウイからの伝染始祖Env 1086.C、マラウイからの089.C、米国からの040_C9およびクレードB急性HIV−1に感染した米国の患者からの63521が含まれる。本方法における使用に適した予備刺激および追加免疫の両方が非HIV−1およびHIV−1免疫原の両方を含むことができる。当業者は予備刺激/追加免疫計画(regimes)を容易に最適化することができる。そのような投与計画のタンパク質性構成要素をコードするDNA配列を、そのタンパク質性構成要素がインビボで生成されるような条件下で投与することができる。
【0018】
下記の実施例5で記述するように、広く中和する抗体(CH01〜05)を産生するクローン的に関連するB細胞を、1人の患者から分離した。そのクローン的に関連する抗体の可能性のある復帰未変異祖先を推定し、実際の抗体として発現させた。これらの抗体の系統樹を再現した。自然抗体および推定される祖先抗体の両方を、一群の(a panel of)HIVエピトープタンパク質に結合する、および一群のHIV分離株を中和するそれらの能力に関して特性付けした。その復帰未変異祖先(RUA)がA244gD+エンベロープに結合することを特筆するのは重要である。従って、そのようなエンベロープまたはそのRUAにより中和されることが記述されている他のエンベロープを、本発明の好ましいワクチン戦略における“予備刺激”として用いることができる。この戦略に従って、“追加免疫”を例えば本明細書で記述する成熟抗体により結合されるエンベロープを用いて達成することができる。さらなる“追加免疫”を、例えば6420または63521(または結合する他のタンパク質、ペプチドまたはポリペプチド)を用いて達成することができる。
【0019】
DNAでの予備刺激または追加免疫を用いる場合、適切な配合物には、DNAでの予備刺激および組換えアデノウイルスでの追加免疫ならびにDNAでの予備刺激および組換えマイコバクテリアでの追加免疫が含まれ、ここでそのDNAまたはそのベクターは、例えばHIV−1エンベロープまたはタンパク質性非HIV−1抗原、例えば腸細菌叢もしくはKYNU構成要素をコードしている。これらのベクターの他の組み合わせを、HIV−1抗原および/または非HIV−1抗原有りまたは無しのどちらにおいても、予備刺激または追加免疫として用いることができる。
【0020】
本発明に従って、その非HIV−1抗原はHIV−1 Env抗原および1種類以上のアジュバントを含むリポソーム中に存在することができる。あるいは、その非HIV−1抗原は、例えばヘテロ二官能性(hetero−bifunctional)薬剤、例えばDSSPを用いてHIV−1 Env抗原にコンジュゲートさせて1種類以上のアジュバントと配合することができる。
【0021】
Toll様受容体(TLR)作動薬有りまたは無しでMPER抗原を発現する(expressing)リポソーム(Dennison, et al, J. Virology 83:10211-23 (2009))が記述されている(例えばWO 2008/127651を参照)。Gp41中間体状態タンパク質(図23)は、(Frey et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105-3739-44 (2008))により記述されている。そのgp41中間体は、リポソームと配合して(図24Aおよび24B)2F5および4E10に十分に結合する安定な免疫原を形成することができる(図25)。本発明のGp41 MPER免疫原は、例えばモノホスホリルリピドA(monophosphorylipid A)(MPL−A)(Avanti Polar Lipids,アラバマ州アラバスター)およびTLR9作動薬、例えばoCpG 10103(5’−TCGTCGTTTTTCGGTCGTTTT−3’)およびR848 TLR7作動薬(Enzo Life Sciences,ニューヨーク州ファーミングデール)を組み込むことにより抗原性を増強することができる(図26)。加えて、B細胞クラススイッチのサイトカイン刺激物質、例えばBAFF(BLYS)および/またはAPRIL(He et al, Immunity 26:812-26 (2007); Cerutti and Rescigno, Immunity 28: 740-50 (2008))を、最適なB細胞の刺激のためにそのリポソーム中に組み込むことができる。
【0022】
本発明における使用に適したリポソームには、POPC、POPE、DMPA(またはスフィンゴミエリン(SM))、リゾホスホリルコリン(lysophosphorylcholine)、ホスファチジルセリン、およびコレステロール(Ch)を含むリポソームが含まれるが、それらに限定されない。最適な比率は当業者が決定することができるが、例には45:25:20:10の比率でのPOPC:POPE(またはPOPS):SM:ChまたはPOPC:POPE(またはPOPS):DMPA:Chが含まれる。用いることができるリポソームの代替配合物には、9:7.5:1のモル比で配合されたDMPC(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(またはリゾホスホリルコリン)、コレステロール(Ch)およびDMPG(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−(1−グリセロール)が含まれる(Wassef et al, ImmunoMethods 4:217-222 (1994); Alving et al, G. Gregoriadis (ed.), Liposome technology 第2版, vol. Ill CRC Press, Inc., フロリダ州ボカラトン(1993); Richards et al, Infect. Immun. 66(6):285902865 (1998))。上記の脂質組成物は、リピドAと複合体化してリン脂質に対する抗体応答を誘導するための免疫原として用いることができる(Schuster et al, J. Immunol. 122:900-905 (1979))。好ましい配合物は、Schuster et al, J. Immunol. 122:900-905 (1979)に従ってリピドAと複合体化された60:30:10の比率のPOPC:POPS:Chを含む。ペプチドの総脂質に対する最適な比率は、例えばそのペプチドおよびそのリポソームによって異なり得る。
【0023】
本発明において、様々なアジュバントを用いることができる(上記で言及したアジュバントが含まれる)。上記のペプチド−リポソーム免疫原およびコンジュゲートは、アジュバント、例えばスクアレンに基づくアジュバント(Kaldova, Biochem. Biophys. Res. Communication, Dec. 16, 2009 印刷物に先駆けたE-pub)、および/またはTLR作動薬(例えばTRL3、TRL5、TRL4、TRL9またはTRL7/8作動薬、またはそれらの組み合わせ)と共に配合する、および/または投与することができ、それは強い抗体応答を促進する(Rao et al, Immunobiol. Cell Biol. 82(5):523 (2004))。用いることができる他のアジュバントには、ミョウバンおよびQ521が含まれる。油エマルジョン、例えばEmulsigen(水中油エマルジョン)中のオリゴCpG類(Tran et al, Clin. Immunol. 109(3):278-287 (2003))も用いることができる。追加の適切なアジュバントには、2005年12月14日に出願された11/302,505において記述されているアジュバントが含まれ、それにはその中で開示されているTRL作動薬が含まれる。(Tran et al, Clin. Immunol. 109:278-287 (2003),米国出願第20030181406号、第20040006242号、第20040006032号、第20040092472号、第20040067905号、第20040053880号、第20040152649号、第20040171086号、第20040198680号、第200500059619号も参照)。免疫応答を増進するTLRリガンド、例えばリピドA、オリゴCpGおよびR−848を、それらの中にコンジュゲートされたHIV−1 Envを有するリポソーム中に個別に、または組み合わせで配合することができる。
【0024】
強いアジュバント(例えば強力なTLR作動薬)を装填された(loaded)リポソームは、多反応性中和抗体を作るように駆動されたB細胞の末梢での削除および/またはアネルギーを克服するために用いることができる免疫原の例である。
【0025】
HIV−1 gp41ペプチドをリポソームに固定する膜貫通ドメインを用いて、機能的なエピトープの提示を達成することができる。HIV−1 gp41の膜貫通ドメインを用いて、そのペプチドを合成脂質を含むリポソーム中に固定することができる。TMDの三量体化の誘導は、gp41 MPERの三量体型の形成を促進することができる。あるいは、Env gpl40のHisタグ化(c末端)バージョンは、HIV−1 gp41の中間体型(gp41−inter)に関して記述したようにリポソーム中に固定することができる。
【0026】
非HIV−1免疫原および/またはHIV−1タンパク質/ポリペプチド/ペプチド、またはコーディング配列の投与の方式は、その免疫原、患者および求められる作用、同様に、投与される用量により異なり得る。典型的には、投与経路は筋肉内、静脈内、腹腔内または皮下注射であろう。加えて、その配合物は鼻内経路により、または直腸内もしくは膣内に坐剤様のビヒクルとして投与することができる。一般に、そのリポソームは水性の液体、例えば通常の生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水pH7.0中で懸濁される。当業者は最適な投与計画を容易に決定することができる。その免疫原は予防的に使用されるのが好ましいが、感染した人へのそれらの投与はウイルス負荷を低減させる可能性がある。
【0027】
ヒトモノクローナル抗体(hu mAb)2F5および4E10は、HIV−1 gp41 MPERに相当するポリペプチドに高い特異性およびナノモル濃度(nM)の親和性で結合する。両方のhu mAbは、免疫蛍光顕微鏡検査およびウェスタンブロッティングにより決定されるように、別個のヒトおよびマウスの細胞抗原とも反応する。これらの特性は、2F5および4E10が、哺乳類細胞から生化学的に抽出され、標準的な免疫沈降法により回収される、変性した形およびポリペプチドが含まれる細胞タンパク質の単離に理想的であることを示している。2F5および4E10の同じ特性は、それらを抽出された細胞タンパク質/ポリペプチドの標準的な質量分析の方法による同定に適したものにする。簡潔には、2F5または4E10に特異的に結合する、免疫沈降された細胞タンパク質/ポリペプチドに酵素消化を施し、得られた断片の質量および電荷を用いてその親分子(単数または複数)を同定することができる。
【0028】
本発明の特定の観点を以下の限定的でない実施例においてより詳細に記述する(Maksyutov et al, J. Clin. Virol. Dec; 31 Suppl 1:S26-38 (2004), Haynes et al, Science 308:1906 (2005), Gurgo et al, Virology 164:531-536 (1988),米国特許第7,611,704号、2007年6月22日に出願された米国出願第11/812,992号、2007年4月13日に出願された米国出願第11/785,077号、2006年4月12日に出願されたPCT/US2006/013684、PCT/US04/30397(WO2005/028625)、WO 2006/110831、WO 2008/127651、米国公開出願第2008/0031890号および第2008/0057075号、2008年12月22日に出願された米国出願第11/918,219号、2007年2月28日に出願された米国仮出願第60/960,413号、ならびに全て2009年4月3日に出願された米国仮出願第61/166,625号、第61/166,648号、および第61/202,778号、2010年2月25日に出願された米国仮出願第61/282,526号、2010年7月27日に出願された米国仮出願第61/344,457号、2010年8月25日に出願された米国仮出願依頼人ファイル番号01579−1597、PCT/US2010/01018、PCT/US2010/030011、ならびにPCT/US2010/01017も参照、その全内容を本明細書に援用する)。
【実施例】
【0029】
実施例1
実験の詳細
急性のHIV−1に感染した患者。研究のために選択された患者は、患者の履歴およびFiebigの分類(Fiebig et al, AIDS 17:1871-1879 (2003))から見積もられた伝染の日により、伝染後17から30日までであった。患者065−0およびFIKEはFiebig第1期であり、一方で患者068−9、684−6およびMCERはFiebig第2期であった。
【0030】
対照の対象。単一形質芽球/形質細胞選別を、感染していない対象および3価不活化(TVI)インフルエンザワクチン(FLUZONE(登録商標)2007または2008)をワクチン接種した対象の骨髄、白血球除去または末梢血単核球(PBMC)に対して実施した。TVIで免疫した対象を、免疫処置の7日後に試験した(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9, (2009); Wrammert et al, Nature 453 :667-71 (2008); Smith et al, Nature Protocols 4:372-84 (2009))。
【0031】
流動選別戦略。PBMC、白血球除去または骨髄試料を、以前に記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2009))抗B細胞抗体と反応させた。Wrammertら(Nature 453:667-71 (2008))は、ヒトPBMC中の抗体分泌細胞である細胞は、CD19+、CD38hi+、IgD−、CD20lo+/−B細胞の範囲内の細胞であることを示した。従って、急性HIV感染(AHI)およびインフルエンザワクチンでワクチン接種した対照の両方において、単一の抗体分泌形質芽球/形質細胞を分離するために、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2008); Wrammert et al, Nature 453:667-71 (2008))CD19+、CD38hi+、IgD−、CD20lo+/−細胞をフローサイトメトリーによりRNA抽出緩衝液を含有する単一の96ウェルプレートの中に選別した。正確な形質芽球/形質細胞集団の分離の成功の明確化のための陽性対照として、同じ集団を3価インフルエンザワクチン(FLUZONE(登録商標)2007または2008)ワクチン後の7日目から分離した。予想されたように、それらの選別された細胞の75%が実際にインフルエンザ特異的抗体であったことが実証された(Wrammert et al, Nature 453 :667-71 (2008))。
【0032】
伝染/始祖エンベロープの同定および発現。患者684−6およびFIKEの伝染/始祖Envを、以前に記述されたように(Keele et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105:7552-7(2008))単一ゲノム増幅およびEnv遺伝子の配列決定により同定した。Env gp140C(gp120/41切断部位が変異している)、gp120およびgp41タンパク質を、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2008))293T細胞の一過性形質移入により発現させた。
【0033】
形質芽球/形質細胞の免疫グロブリンVHおよびVL遺伝子のPCR増幅。選別されたB形質芽球/形質細胞のVHおよびVL Ig鎖を単一細胞PCRにより分離し、記述されたように(Liao et al, J. Virologic Methods 158:171-9 (2009) ; Wrammert et al, Nature 453:667-71 (2008) ; Smith et al, Nature Protocols 4:372-84 (2009))組換え抗体を産生させた。
【0034】
Ig VHおよびVLの配列の配列決定、配列の注釈、品質管理、およびデータの管理。Ig VHおよびVL遺伝子の全てのPCR産物はQiagen(カリフォルニア州ヴァレンシア)PCR精製キットを用いて精製され、ABI 3700機器およびBigDye(登録商標)配列決定キット(Applied Biosystems,カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて順方向および逆方向で配列決定された。それぞれの試料に関する塩基呼び出し(Base calling)は、Phred(Ewing et al, Genome Res. 8:175-85 (1998); Ewing and Green, Genome Res. 8:186-94 (1998))を用いて行われる。その抗体遺伝子の順方向および逆方向の鎖を、それぞれの位置における品質スコア(quality scores)に基づく新規の組み立てアルゴリズム(Kepler et al,投稿中)を用いて1つの最終的なヌクレオチド配列へと組み立てる。見積もられるPCRアーティファクト率は.28または増幅された5個の遺伝子あたりおおよそ1個のPCRアーティファクトであった。免疫グロブリンのアイソタイプを局所的整列アルゴリズム(Smith and Waterman, J. Mol. Biol. 147:195-7 (1981))により決定する。質を保証された抗体配列の生殖細胞系列再編成を、SoDAを用いて決定する(Volpe et. al, Bioinformatics 22:438-44 (2006))。SoDAに由来するゲノム情報、例えば遺伝子断片利用、体細胞変異およびCDR3領域を、容易なアクセスのためにORACLEデータベース中で保管する。
【0035】
同じ対象からの抗体がクローン的に関連しているかどうかを決定するため、以下の3個の基準を利用した。第1に、問題の抗体の重鎖は同じVHおよびJH遺伝子断片を用いなければならない。D断片における長さおよび高い変異のため、これらは同定するのがより難しい。従って、D断片の類似性は、クローンの関連性に関する基準として用いなかった。同様に、両方の軽鎖は同じVκ/VλおよびJκ/Jλを用いなければならない。第2に、問題の抗体の重鎖は同じCDR3の長さを有していなければならない。これは軽鎖にも適用される。第3に、その重鎖のCDR3のヌクレオチド配列は70%同一でなければならない。同じことがその軽鎖のCDR3に適用される。これらの3個の基準を守る抗体を、クローン的に関連するものとして分類する。PHYLIP 3.63パッケージ(Felsenstein, Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. 360:1427-34 (2005))を用いて、推定されるSoDAからの生殖細胞系列を根として用いて最尤樹を構築してそのクローンの間の系統的関係を決定した。その祖先配列も同じパッケージを用いて推定した。
【0036】
推定される生殖細胞系列および中間抗体の設計および生成。抗体クローンファミリーのそれぞれのメンバーに関して、生殖細胞系列抗体前駆体および多数の抗体の中間的な型を推定するために最尤分析を用いた(Felsenstein, J. Mol. Evol. 17:368-76 (1981); Volpe et al, Bioinformatics 22:438-44 (2006))。これらのVHおよびVL遺伝子を合成し(GeneScript,ニュージャージー州ピスカタウェイ)、上記のような組換え技法によりIgG1 mAbとして発現させた。
【0037】
VHおよびVLの組換えmAbとしての発現。単離されたIg VHおよびVL遺伝子対をPCRにより組み立てて、記述されたような方法(Liao et al, J. Virol. Methods 158:171-9 (2009))を用いるヒト胚腎臓細胞株293T(ATCC,バージニア州マナサス)中への形質移入による組換えmAbの産生のための線状の完全長Ig重および軽鎖遺伝子発現カセットにした。対になるIg重および軽鎖遺伝子発現カセットの精製されたPCR産物を、6ウェル組織培養プレート(Becton Dickson,ニュージャージー州フランクリンレイク)で増殖させた80〜90%コンフルエントの293T細胞中に、PolyFect(Qiagen,カリフォルニア州バレンシア)および製造業者により推奨されるプロトコルを用いて同時形質移入した(ウェルあたりそれぞれ2μg)。形質移入の6〜8時間後に、その293T細胞に2%ウシ胎児血清(FCS)を補った新しい培地を与え、5%CO2培養器中で37℃で培養した。培養上清を形質移入の3日後に回収し、発現したIgGのレベルに関して定量化し、抗体の特異性に関してスクリーニングした。スクリーニングアッセイにより同定された選ばれた抗体の将来の特性付けのため、その線状Ig重および軽鎖遺伝子コンストラクトを、精製された組換えmAbの産生のために、標準的な分子プロトコルを用いてpcDNA3.3の中にクローニングした。
【0038】
単離されたVHおよびVL遺伝子ならびに推定される生殖細胞系列および中間前駆体抗体配列に由来する精製された組換えmAbの産生のため、T175フラスコ中で培養した293T細胞に重および軽鎖Ig遺伝子を含有するプラスミドをPolyFect(Qiagen,カリフォルニア州バレンシア)を用いて同時形質移入し、2%FCSを補ったDMEM中で培養した。組換えmAbをその形質移入した293T細胞の培養上清から、抗ヒトIg重鎖特異的抗体−アガロースビーズ(Sigma,ミズーリ州セントルイス)を用いて精製した。
【0039】
ELISAおよびLuminexアッセイによる抗体特異性に関するスクリーニング。上清中の組換えmAbの濃度を、記述されたような方法(Liao et al, J. Virol. Meth. 158:171-179 (2009))を用いて決定した。発現した組換えmAbの特異性を、HIV−1抗原に対する、および一群の非HIV−1抗原に対する抗体反応性に関してアッセイした。HIV抗原には、Envペプチドgp41免疫優性領域(RVLAVERYLRDQQLLGIWGCSGKLICTTAVPWNASWSNKSLNK)、gp41 MPER領域(QQEKNEQELLELDKWASLWN)、HIV−1 MN gp41(Immunodiagnostics,マサチューセッツ州ウォバーン)、HIV−1グループMコンセンサスgp120(Liao et al, Virology 353:268-82 (2006))、HIV−1グループMコンセンサスgp140 CFI(Liao et al, Virology 353:268-82 (2006))、p66(Worthington Biochemical,ニュージャージー州レイクウッド)、p55(Protein Sciences,コネチカット州メリデン)、p31(Genway,カリフォルニア州サンディエゴ)、nef(Genway,カリフォルニア州サンディエゴ)、tat(Advanced Bioscience,メリーランド州ケンシントン)、およびAT−2不活化HIV−1 ADAビリオン(Rutebemberwa et al, AIDS Res. Human Retrovirol. 23:532-42 (2007));NIH,NCI,Frederick癌研究施設のJeffrey Lifsonから頂いたもの)が含まれていた。加えて、684−6 mAbを自己由来gp140、gp120およびgp41に対してアッセイし、FIKE mAbを自己由来gp140およびgp120に対してアッセイした。非HIV−1抗原には、3価インフルエンザワクチン2007(FLUZONE 2007)、H1A/ソロモン諸島/03/2006からの組換えインフルエンザHAタンパク質(Protein Sciences Corp.コネチカット州メリデン)、破傷風トキソイド(toxiod)(Calbiochem,カリフォルニア州サンディエゴ)、HEP−2細胞(Inverness Medical Professional Diagnostics,ニュージャージー州プリンストン)、カルジオリピン(Avanti Polar Lipids,所在地(アラバマ州アラバスター)(Haynes et al, Science 308:1906-8 (2005))およびリピドA(Avanti Polar Lipids,アラバマ州アラバスター)が含まれていた。腸細菌叢と呼ばれる嫌気性および好気性細菌抽出物の全細胞溶解物を、下記で記述するように調製した。簡潔には、細菌を患者からの4つの便の標本から接種し、寒天プレート上で嫌気性または好気性条件下で30℃において増殖させた。コンフルエントの細菌を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、商業的に入手可能な細菌タンパク質抽出試薬(Pierce,イリノイ州ロックフォード)を用いて処理した。得られた抽出物を0.22μmフィルターを用いて濾過し、使用まで−80℃で保管した(Kawatsu et al, J. Clin. Microbiol. 46:1226-31 (2008))。FLUZONE(登録商標)、インフルエンザHA、gp41免疫優性およびMPER領域、ならびに腸細菌叢全細胞溶解物に対するアッセイを、ELISA(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))およびLuminexビーズアッセイ(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))の両方により実施した。破傷風トキソイド、カルジオリピン(Sigma,ミズーリ州セントルイス)、死菌クリプトコッカスおよびカンジダアルビカンスに対するアッセイはHep−2上皮細胞との反応性に関するELISAアッセイであり、間接的な免疫蛍光アッセイであった(Mietzner et al, Proc. Natl. Acad.. Sci. USA 105:9727-32 (2009))。
【0040】
抗体反応性の表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon reasonance)(SPR)分析。SPR結合アッセイを、20℃で維持されたBIAcore 3000(BIAcore Inc,ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で実施した。HIV−1 gp41またはオリゴマー状gp140タンパク質(Con S gp140、自己由来Env gp140)を、以前に記述されたように(Alam et al, J. Immunol. 178:4424-35 (2007))標準的なアミンカップリングによりCM5センサーチップ上に固定した。ヒトmAbを抗ヒトFc抗体を結合させた表面上に捕捉し、次いでそれぞれのヒトmAbを約200〜500RUまで捕捉した。対照表面上の非特異的結合の減算の後、mAb結合の特異的な結合応答が得られた(Envが固定された表面に関してHIV−1 gp120およびmAbが固定された表面に関してヒトIgG、IS6)。(2価Ig分子の結合力を説明するために)2価分析物モデルおよびmAbの抗体価測定から得られた結合曲線への全体的な曲線当てはめを用いて速度定数を測定した。MAbを30μL/分で2〜6分間注入し、グリシン−HCl pH2.0および界面活性剤P20(0.01%)を再生緩衝液として用いた。
【0041】
結果
インフルエンザワクチン接種。インフルエンザワクチン接種された対象からの、単一細胞選別された形質細胞/形質芽球に由来する抗体のクローンを試験し、その応答が高度にクローン的であることが分かった。そのクローンメンバーはほぼ全て試験したインフルエンザ抗原と反応した。図1は、H1ソロモン諸島(Soloman Islands)ヘマグルチニンに対する代表的なインフルエンザ抗体クローンを示す。合計450の抗体を3人のインフルエンザワクチン接種された対象の形質細胞/形質芽球から分離し、これらの内で57.7%がインフルエンザ特異的であった。インフルエンザに感染した対象から分離された全部で265の抗体のうちで、クローン的に関連した抗体の20種類の独立したクローンが同定され、その中で115の抗体(92%)がインフルエンザ抗原と反応した。
【0042】
急性HIV−1感染におけるクローン性抗体応答。約75%の形質細胞/形質芽球がインフルエンザ特異的であるインフルエンザワクチン接種とは対照的に、5人のAHI患者の形質芽球/形質細胞から分離された合計1074の組換え抗体の内で、89または8.3%の発現した抗体(3.3%〜13.3%の範囲)がHIV−1特異的であり、一方で残りの大部分は非HIV抗原に対するものであるか(約6%)、または未知の特異性を有するか(882または82.1%)のどちらかであった。一群の非HIV−1関連抗原アッセイにより、Hep−2上皮細胞(27または2.5%)、腸細菌叢(5または0.5%)、カルジオリピン(4または0.4%)、インフルエンザ(9または0.8%)、クリプトコッカス(4または0.4%)、カンジダアルビカンス(2または0.2%)、および破傷風トキソイド(8または0.7%)に対する高い親和性の抗体を実証することが可能であった。追加の38または3.5%は、これらの抗原の少なくとも2種類と反応した。その患者の3人はリピドA抗体を有し、1人の患者は腸細菌叢抗体を有し、それは非常に早期の腸の損傷の開始、微生物の移行および抗リピドAおよび腸細菌叢抗体の誘導を示唆している。注目すべきことには、これらの早期AHI患者のいずれも、HIV−1の伝染後17〜30日の内にgp41以外のHIV−1特異性が検出されたmAbを全く有していなかった。
【0043】
gp41に対するAHI応答の検出においてコンセンサスEnvが自己由来Envに等しいことが以前に報告された(Tomaras et al, J. Virology 82:12449-63 (2008))。しかし、AHI B細胞分析において応答が失われていた可能性を除外するため、684−6およびFIKEからのmAbをそれらの自己由来組換えgp140 Envを用いてスクリーニングした。概して、自己由来gp140 envに対する応答はクレードB gp41に対するものよりもはるかに小さかった。
【0044】
従って、伝染/始祖ウイルスに対する初期の形質芽球/形質細胞レパートリーの応答は、血漿抗体応答(Tomaras et al, J. Virol. 82:12440-63 (2008))と同様に、Env gp41エピトープに焦点が合わせられた。加えて、HIV−1は以前のワクチン接種または感染性因子抗原、例えばクリプトコッカス、カンジダアルビカンス、および破傷風トキソイドからの既存の記憶B細胞を最終分化へと活性化し、駆動する。さらに、AHIの過程において、Hep−2細胞自己反応性B細胞の多反応性クローンはその初期の形質芽球/形質細胞応答に加わるように誘導される。
【0045】
AHI形質芽球/形質細胞レパートリー内の抗体クローンの分析。一般に、報告されたインフルエンザワクチン接種により誘導された形質芽球/形質細胞レパートリー(Wrammert et al, Nature 453:667-72 (2009))または血漿中に広く中和する抗体活性を有する対象におけるgp140+B細胞の記憶B細胞レパートリー(Scheid et al, Nature 458:636-40 (2009))と比較して、AHI形質芽球/形質細胞レパートリーからは少数のクローンしか分離されなかった。広く中和する抗体を有する6人の患者における慢性HIV−1感染において、Scheidら(Nature 458:636-40 (2009))は、そのB細胞クローンの数がそれらの6人の患者から分離された502の抗体において患者の間で22から50まで異なっていたことを見出した。
【0046】
AHIの研究において、5人のAHIの患者から分離された1074のmAbにおいて、わずか8種類の抗体のクローンしか見付からなかった。これらには、AHI患者の1人において同定された6種類の独立した抗体のクローンの中のgp41と反応する3種類の抗体のクローンが含まれていた。興味深いことに、その3種類のAHI gp41クローンの全部で52のクローン性メンバーの内で、17(37%)のみがgp41と反応した。これは、インフルエンザ反応性インフルエンザクローンメンバーの94%と対照的である。
【0047】
図2は、52のメンバーを有するAHIクローン685−6B−注目すべきVH3−7、DH1−26、JH5、VK1−39、JK4、IgG3変異クローンを示し、変異していないメンバーは無い。その57の抗体の内で、4(8%)のみがgp41と反応した。
【0048】
gp41の推定される生殖細胞系列および中間抗体のクローンとの反応性の分析。HIV−1 gp41がナイーブB細胞の生殖細胞系列B細胞受容体と反応しており、低い抗原駆動(antigen drive)を有する低親和性クローンを刺激しているのか、またはgp41が既存の記憶B細胞のクローンと交差反応してクローン性メンバーを同時のgp41および自己抗原駆動を経るように命じる可能性があるのかを推論した。これらの2つの可能性を区別するため、最尤分析を用いて生殖細胞系列未変異抗体および部分的に変異したクローン中間体がそれらのgp41との反応性を決定するために用いられたと推定した(図3)。そのクローンの発生のどこでgp41との反応性が獲得されたのかを決定するために(すなわち生殖細胞系列VH+VLまたはより後の中間体)、推定される生殖細胞系列およびクローンメンバー中間体をクレードB gp41、自己由来gp140およびグループMコンセンサスgp140との反応性に関してアッセイした(図4)。クローン684−6Bの反応性は2番目の中間前駆体抗体において獲得されたことが分かった(図4および5)。
【0049】
問われた次の疑問は、gp41との反応性はgp41による抗原駆動を表しているのかどうかであった。図6は、さらなる推定された中間抗体クローンをmgの量で生成し、gp41に対する抗体結合の解離定数(Kd)に関して分析したことを示している。図7は解離定数をKdのLog10としてプロットしたヒートマッププロットを示し、実際、中間体が実際の分離された抗体へと進行するにつれて、gp41に対する結合に関する親和性の成熟の進行が存在することを実証している。
【0050】
AHIの間に多反応性非HIV−1 gp41クローンが誘導されるとして、問われる次の疑問は、クローン684−6BメンバーがカルジオリピンおよびHep−2上皮細胞との反応性により多反応性であるかどうかであった。Hep−2間接免疫蛍光アッセイにおいて、クローン684−6Bの反応性はgp41反応性と同じ推定される中間前駆体期において獲得された(図8)。生殖細胞系列未変異抗体を含む684−6Bの全てのクローンメンバーはカルジオリピンと反応し、一方でHep−2反応性はクローンの発達の間に大きくなったり小さくなったりし、カルジオリピンとの反応性は最終クローン307および350までの中間体全体を通して比較的安定していた。生殖細胞系列および他のクローンメンバーのカルジオリピンとの多反応性は、HIVに対する初期の抗体応答はHIV−1 gp41が既存の多反応性の自然抗体のクローンを刺激することに由来し、gp41は最初のクローンが体細胞超変異によりgp41に対する交差反応性を獲得するとすぐにB細胞のクローンを多反応性gp41クローンになるように補充する(recruits)ことを強く示唆している。この発見は、HIVワクチン設計にかなりの波及を有する。
【0051】
非HIV−1抗原に対する生殖細胞系列反応性の性質。それぞれのクローンの生殖細胞系列抗体においてではなく推定されるクローン中間体における684−6Bクローンの反応性の獲得の驚くべき結果を考慮して、HIVにおいて活性化される抗体クローンの起源だと思われるものを同定するため、それに対してその生殖細胞系列が反応する可能性のある宿主抗原を同定するための努力がなされた。
【0052】
腸においてAHIによる早期の腸の微生物の移行が存在するため、およびAHIにおける初期の抗原刺激の多くが粘膜表面において生じるため、初期の抗体応答は腸微生物性抗体応答に何らかの方法で結び付けられる、または関連する可能性があるという仮説が立てられた。これを研究するため、嫌気性および好気性腸細菌叢の全細胞溶解物に対する684−6Bクローンからのクローン性抗体ならびに推定される生殖細胞系列および推定される中間体の測定可能な反応性が存在するかどうかに関する決定がなされた。加えて、EBVによる形質転換を用いて、AHIまたは未感染の対象の腸、骨髄または血液から一群の五量体IgM mAbを分離した。
【0053】
最初に、一連のIgM抗体をAHIから分離し、未感染の対象からgp41反応性またはgp41非反応性のどちらかである2種類のIgM抗体を分離した。問われた疑問は、gp41と反応性であるIgMが腸細菌叢とも反応性であるかどうかであった。表1は、実際にgp41と反応性であった全てのmAbが腸細菌叢抗原とも反応性である一方で、gp41と反応性でなかったmAbは腸細菌叢と反応性でなかったことを示している。
【0054】
【表1】
【0055】
注目すべきことに、試験した全てのクローンからの生殖細胞系列および中間前駆体を好気性および嫌気性腸細菌叢の全細胞溶解物を用いてアッセイした際に、そのクローンの全てにおける抗体の全てが腸細菌叢全細胞溶解物と反応した。図9は、それぞれのmAbにおいて好気性全細胞溶解物(WCL)と反応する684−6Bクローンのヒートマップを示す。嫌気性WCLを用いて同様の結果が得られた。腸細菌叢により仲介される抗原駆動を決定するための分析を実施した際、gp41に関してほどではないが、実際にAHIクローンにおける進行的な体細胞超変異と同時に起こる抗体親和性の増大が存在することが分かった。
【0056】
AHI gp41 mAbの嫌気性および好気性腸細菌叢全細胞溶解物とのウェスタンブロット。次に、図6における推定される中間体#2(HV00276)の反応性を、嫌気性および好気性WCLの両方を用いて、blue native PAGEで(図10AおよびB)、およびSDS−PAGEで(図11および12)決定した。blue nativeゲルでの分析において、684−6BクローンのmAbは好気性および嫌気性腸試料の両方において520,000Daの分子と反応した(図10Aおよび10B)。さらに、mAb 276は480KDaのMWマーカーとも反応し、それはフィコエリトリン(phycoerthryn)である(図10Aおよび10B)。図11および12は、非還元(図11)および還元(図12)条件のSDS−PAGEの下で、約520,000Daにおいてまた強いバンドが見られることを示している。還元条件下での未変性マーカーにおいても同様に、おおよそ60および50Kdにおいてより小さいバンドが見られる(図12)。その未変性マーカーはまたもフィコエリトリン(PE)であり、それは684−6BクローンのmabによるPEに対する多反応性を示している。
【0057】
重要なことだが、体細胞変異した元の2F5および4E10の広く中和する抗体も腸細菌叢WCLにおいてタンパク質のバンドと反応し、2F5は好気性WCLにおいて約300,000Daの分子および約80,000Daの分子と反応し、4E10は好気性WCLにおいて約80,000および100,000Daの分子と反応する。図12(還元条件下でのSDS−PAGE)において、HV00276(中間体684−6 ab #2)は好気性および嫌気性WCLにおいて約520,000Daのバンドに結合し、一方で2F5は好気性WCLにおいて約80,000Daのバンドと反応し、4E10はおおよそ60,000daのバンドと反応することが分かる。
【0058】
広く中和する抗体2F5、4E10および1b12は多数の宿主抗原に結合する多反応性抗体であることが以前に示されている。従って、疑問は、HIVに対する初期応答が多反応性抗体応答によるものであるならば、広く中和する多反応性抗体はなぜ作られないのかである。2つの可能性が考えられている。
【0059】
第1に、1b12、2F5および2G12の生殖細胞系列はHIVのgp120またはgp41に結合せず、一方で体細胞超変異した抗体は結合することが示されている(Xiao et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 390:404-9 (2009))。従って、広く中和する抗体のエピトープの多くに関して、当分野が用いてきた免疫原はそれらが標的としているナイーブB細胞のB細胞受容体を標的としないことが考えられる。1b12の生殖細胞系列はここで脂質反応性に関して、および腸細菌叢全細胞溶解物活性に関して研究されており、実際にその生殖細胞系列1b12の反応性はHIV gp120エンベロープに対して陰性であり、一方でその体細胞変異した1b12の反応性はHIV gp120に対して非常に高いことが分かっている(図13)。それに対し、1b12の生殖細胞系列の反応性はカルジオリピンに対して非常に高く、一方で体細胞変異した多反応性の最初の1b12のカルジオリピンに対する反応性は陰性ではないが非常に低い(図13)。さらに、1b12の生殖細胞系列は腸細菌叢全細胞溶解物とも反応性であり、一方で成熟した最初の体細胞変異した1B12 mAbはごく弱く反応性である(表2)。
【0060】
【表2】
【0061】
第2に、2F5、4E10および1b12の多反応性はこれらのタイプの抗体を作るB細胞を削除またはアネルギーに向けるという仮説が立てられた(Haynes et al, Science 308:1906-8 (2005); Haynes et al, Human Antibodies 14:59-67 (2005); Alam et al, J. Immunol. 178:4424-35 (2007))。この仮説は最近2F5 VHに関して2F5 FHホモ接合性ノックインマウスにおいて証明されており(Verkoczy et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:181-6 (2010))、ここで4E10 VHホモ接合性マウスにおいて証明された(図14)。その広く反応する体細胞変異したVHのノックインの両方の動物モデルにおいて、その変異したVHは骨髄において削除を引き起こすのに、および抹消において多数の寛容性機構を誘起するのに十分に自己反応性である。
【0062】
要約すると、上記で記述した結果は以下のことを示している:
・HIVに対する初期の抗体応答は、非中和性Env gp41エピトープに焦点が合わせられている。
【0063】
・初期のgp41抗体応答は、その生殖細胞系列Abはgp41とは反応しないがその推定される中間Abはgp41と反応する、既存の体細胞変異した多反応性の“自然”抗体クローンから生じる。
【0064】
・gp41抗体反応性クローンの抗体メンバーは多反応性であり、脂質および他の自己細胞性抗原と交差反応するが、抗gp41抗体の親和性は体細胞超変異が起こるにつれて増大し、これはgp41抗原駆動を示している。
【0065】
・しかし、初期のHIVに誘導されるクローンの発達は、おそらく自己模倣(self mimicry)のため効率的でも高親和性でもなく、それはHIV Env反応性および非反応性抗体クローンメンバーの混在につながる。
【0066】
・広く中和する抗体1b12、2F5および2G12の生殖細胞系列はそれらの推定される生殖細胞系列抗体と反応しないようである。
・AHIまたは未感染の対象から分離されたgp41に結合するIgM抗体は腸細菌叢にも結合するが、gp41陰性IgMは腸細菌叢抗原に結合しない。
【0067】
・1b12の生殖細胞系列は脂質および腸細菌叢と反応し、これはおそらく元々腸細菌叢に対して標的化されていたB細胞クローンに由来する既存の多反応性自然抗体産生ナイーブB細胞に由来することを暗示している。
【0068】
・体細胞変異した2F5、4E10および1b12の広く中和する抗体は全て腸細菌叢全細胞溶解物中の抗原と反応し、これはこれらの抗体がおそらく元々腸細菌叢に対して標的化されていたナイーブB細胞のクローンに由来することを示している。
【0069】
実施例2
mAb HV00276と反応する腸細菌溶解物中のタンパク質のバンドの濃縮および同定を図52に示す。Native PAGEゲル泳動後のウェスタンブロット分析は、mAb HV00276が嫌気性および好気性腸細菌溶解物中の約520kDaのタンパク質のバンドに結合することを示している。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の後に、約500kDaの分子量を有する細菌溶解物からのタンパク質画分を集めた。SEC画分は、クーマシーブルー(1)、銀染色(2)およびmAb HV00276によるウェスタンブロッティング(3、矢印)により520kDaのタンパク質の濃縮を示す。zoom等電点分画法は、mAb反応性タンパク質のpH6.2〜7を有するゲル区画A4への移動を示す。
【0070】
濃縮された画分からの520kDaのバンドに対して、タンパク質の同定のためにLC−MS分析を行った。RNAポリメラーゼβ、β’およびαサブユニットが同定された(図53)。
【0071】
大腸菌RNAポリメーラーゼコアタンパク質およびホロ酵素(コアタンパク質+σサブユニット)(Epicentre Biotechnologies,ウィスコンシン州マディソン)をNativePAGEゲル上で泳動し、mAb HV00276の反応性をウェスタンブロッティングを用いて検出した。コアおよびホロ酵素の両方に対する反応性が検出され、それはmAb HV00276がRNAポリメーラーゼコアタンパク質に結合することを示している。
【0072】
大腸菌RNAポリメーラーゼコアタンパク質(Epicentre Biotechnologies,ウィスコンシン州マディソン)を変性SDS−PAGEゲル上で、還元(Red)および非還元(NR)条件下の両方で泳動した(左のパネル)。変性SDS−PAGEにおいて、コアタンパク質の個々のサブユニット(β、β’、αおよびω)を分解し、クーマシーブルー染色の後に可視化することができる(右のパネル)。転写したゲルのウェスタンブロット分析は、276mAbがRNAポリメーラーゼコアタンパク質の37kDaのαサブユニットにのみ結合することを示している。腸細菌溶解物タンパク質に関して陰性であったHV00503 mAbの反応性がないことは、そのコアタンパク質サブユニットのいずれに関しても観察された。
【0073】
実施例3
自己寛容がどのようにHIV−1に対する防御的体液性応答に影響を及ぼす可能性があるかを理解するためには、どの自己抗原がHIV−1エピトープにより模倣されるのか、およびどこで/いつこれらの自己抗原がTおよびBリンパ球に晒されるのかを決定することが重要である。図30において、HIV−1 gp41 MPERのエピトープに特異的なモノクローナルヒト抗体はアセトン固定されたマウス3T3細胞中に存在する自己抗原とも反応することが示されている。図31において示されているように、少なくとも4種類の別個の分子がマウス3T3細胞からビオチン化2F5抗体により免疫沈降され得る。沈降した主要な種は、おおよそ50〜54kDaの見た目の分子量を有する。
【0074】
保存された哺乳類のタンパク質KYNUはコア2F5エピトープを有し、51kDaの分子量を有する(図32)。その2F5コアエピトープは多くの脊椎動物種のKYNU中に存在し(図33)、KYNUの保存されたH3ドメイン中に存在している(図34)。図35で示したように、ELDKWA領域は秩序正しいアルファらせん中にある。DKWモチーフは表面に露出していない。
【0075】
2F5抗体のヒトKYNUへの結合はH3ドメインの歪みを必要とする可能性があり、それは結果として遅くなったKONをもたらす可能性がある。図36で示したように、H3において、DおよびW残基はおそらく露出した側鎖を有するが、Kは埋まっている。2F5抗体はELDKWAエピトープに結合するために必然的にH3らせんを“歪める”可能性がある。生理的条件下では、KYNUはホモ二量体であると考えられる。ELDKWAモチーフはKYNU単量体にとって利用可能である可能性があるが、KYNUが2量体を形成した際はアクセス可能でありそうもない(図37および38)。
【0076】
推定上の生殖細胞系列2F5抗体は、rhKYNUとも反応する(図39および40)。これは、それがKYNUは最終的に変異した高親和性2F5抗体を産生したB細胞の本来のリガンドである可能性があることを実証している点で、重要な点である。図41において示したように、2F5抗体は2F5エピトープを含有するペプチド(DP178−Q16L)と強く反応する一方で、抗KYNU抗体は反応しない(図42および43も参照)。
【0077】
13H11は、2F5決定基に近位のエピトープを認識する非中和性マウスHIV−1 MPERモノクローナル抗体であり、rhKYNUと結合しない(図44)。図45は、2F5および13H11モノクローナル抗体のHIV−1 gp41 MPERへの結合部位を区別する残基のマッピングを提供する。図46において示したデータは、組換えHIV−1 gp140 env(JRFL)、DP178−Q16L、および無関係なペプチド抗原R4Aによる、2F5のrhKYNUへの結合の競合阻害を示す。
【0078】
JRFL組換えHIV−1 gp140は2F5のJRFLへの(同種阻害)、およびrhKYNUへの(異種阻害)結合を比較可能なほどに阻害する(図47)。その阻害曲線の類似性は、単一の共通のエピトープが2F5のJRFLおよびrhKYNUへの結合の両方に寄与していることを示している。
【0079】
図48において示したように、2F5モノクローナル抗体はプレートに結合したrhKYNUおよび可溶性rhKYNUの両方に比較可能なほどに結合する。表面プラズモン共鳴による研究は、2F5およびその未変異前駆体がrhKYNUに強く結合することができることを実証している(図49)。より遅いKonは、2F5抗体が最大限の相互作用を達成するために自然なKYNUの構造を歪めることと一致している。Koff速度は非常に遅く、これは結合したKYNUが全ての2F5のタイプと安定して相互作用することを示している。
【0080】
SPR結合分析は、2F5 mAbおよびそのRUA(2F5−GL1および2F5−GL3)がKYNUに結合することを示している(図50)。その抗体のそれぞれがヒト抗Fc(human anti−Fc)が固定されたセンサー表面上に捕捉され、可溶性KYNUが50、30、20、および10μg/mLの濃度で注入された。結合曲線の重ね合わせは、KYNUのそれぞれの抗体への特異的な結合を示している。非特異的結合は、KYNUへの結合を示さない対照mAb(Synagis,抗RSV)を用いて測定された。
【0081】
実施例4
2F5の固定された3T3細胞への反応性が、2F5 MPERコアエピトープ(ELDKWA)を含有するタンパク質/ポリペプチドにより阻害され得るかどうかを決定するため、2F5モノクローナル抗体(10μg/ml)を増大するモル濃度の同種(JRFLおよびDP178)または異種(R4A)阻害剤と反応させた(1時間、25℃)。続いてこれらの混合物を、メタノール/アセトンで固定した3T3細胞で覆われた水和された/ブロッキングされたスライドに添加した(2時間、25℃)。スライドをすすぎ、次いで250mlの(0.1%Tween−20および0.5%BSAを含むPBS)中で一夜洗浄した。洗浄されたスライドを、ヤギ抗ヒトIgG−FITC(0.1%Tween−20および0.5%BSAを含むPBS中1:400)で覆った。1時間後、スライドを洗浄し、Fluoromount−G中でカバーガラスを乗せた(coversliped)。24時間後、Zeiss Axiovert 200M共焦点顕微鏡を200倍の倍率および固定された300msecの露光時間で用いて蛍光画像を得た。
【0082】
同種阻害剤であるJFRLタンパク質、およびより低い程度でDP178ポリペプチドは、2F5の3T3細胞への結合を阻害した。無関係なポリペプチドであるR4Aは阻害を示さなかった(図51参照)。これらのデータは、2F5の固定された3T3細胞に対する反応性の相当量が非特異的脂質結合ではなくタンパク質−タンパク質相互作用により決定されていることを実証している。従って、KYNUと同様に、タンパク質は2F5に関する主要な自己リガンド(autoligand)であることができる。
【0083】
実施例5
上記で記述したように、本発明は、HIVエンベロープタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)を投与して、第1に広く中和する成熟した抗体を生じることができる未変異祖先抗体を発現するB細胞を標的とし、次いでその体細胞成熟を経ているB細胞を選択されたHIVエンベロープタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)により追加免疫することにより、B細胞クローンの成熟を望まれる中和の広さに向けて駆動することを含むワクチン戦略に関する。その戦略の開発には、この成熟経路の再構築が含まれていた。望まれる最終的な(成熟した)抗体を広く中和する抗体を産生する患者から分離し、その抗体を特性付けした。そのそれぞれの推定上の祖先抗体を推定し、実際の抗体として発現させ、何にそれらが結合するかに関する決定を行った。未変異の“祖先”および中間抗体を発現するB細胞は、適切なタンパク質(ペプチドまたはポリペプチド)により引き金を引くと親和性が成熟してその患者において観察される広く中和する抗体を分泌するB細胞をもたらすであろうと考えられる。
【0084】
クレードをまたぐ(cross−clade)中和モノクローナル抗体CH01、CH02、CH03、CH04およびCH05の選択および分離
対象707−01−021−9の凍結されたPBMCから得られたおおよそ30,000個の記憶B細胞をスクリーニングし、CAP45の感染性を50%より大きく中和する28の培養物を見つけた(図56)。モノクローナル抗体CH01、CH02、CH03、CH04およびCH05(CH01〜CH05)をこれらの培養ウェルの4つから分離した(1−27−G2、1−27−G11、1−19−Fl0および1−19−B7)(図56)。
【0085】
スクリーニングの時点で凍結した、RNAを後で処理した(RNA−later−treated)記憶B細胞から得られたV重鎖およびV軽鎖の増幅および配列決定を実施した。培養物1−27−G2および1−19−Fl0は1つの対のみ(3〜20/κ3〜20;それぞれCH01およびCH02モノクローナル抗体)を含有しており、それはその培養物がモノクローナルであったことおよびCH01およびCH02が自然抗体であることを示している。逆に、1−27−G11および1−19−B7は多数のV重鎖およびV軽鎖を含有しており、それはその培養物がオリゴクローナルであったことを示している。
【0086】
これらの後者の培養物からの自然対(natural pairs)を同定するため、最初のスクリーニングの時点で集められた単一細胞選別された記憶B細胞を増幅し、配列決定した。CH03およびCH04(共に3〜20/κ3〜20)は、それぞれ培養物1−27−G11および1−19−B7から分離された自然対であった。
【0087】
培養物1−19−B7から、その記憶B細胞をおおよそ4週間の間連続限界希釈によりさらに拡張およびクローニングすることにより、ヒトB細胞ハイブリドーマを生成した。この手段により、CH04自然抗体を得てCH05を同定し、それは拡張された記憶B細胞のより少ない集団により生成され、CH04と同じ3〜20V重鎖を発現していたが、異なるκ1〜6V軽鎖と対になっていた。
【0088】
そのCH01〜CH03モノクローナル抗体は、V重鎖およびV軽鎖の対を293T細胞中に形質移入し、以前に記述されたように(Liao et al, J Virol Methods. 158(1-2):171-9 (2009))IgG1主鎖中で発現させることにより得られた。モノクローナル抗体CH04およびCH05は代わりにハイブリドーマB細胞株から精製された。
【0089】
これらのデータは、その戦略が中和するモノクローナル抗体のおおよそ2週間での迅速な同定および1ヶ月もの早さでの自然モノクローナル抗体の産生を可能にすることを実証している。さらに、この方法は、インビボでのレパートリーにおいて表されている自然抗体と違いのないモノクローナル抗体の正確な特性付けに関して、古典的なファージディスプレイライブラリーの不確実性を解決する。最後に、HIV−1を広く中和する2種類の自然ヒトB細胞ハイブリドーマの生成を初めて報告した。
【0090】
CH01〜CH05抗体のゲノム的特性付け
CH01〜CH05抗体は、以下の要因に基づいて全て同じクローンファミリーのメンバーであることが決定された:(1)V(D)Jファミリー;(2)HCDR3の長さ;(3)HCDR3領域およびn−挿入のヌクレオチド配列。
【0091】
重鎖の分析は、CH01〜CH05がIgG1抗体であり、同じV3〜20*1/J2*01再編成(表3)を共有していることを示した(表3)。それらは同じD領域も共有しており、それは3〜10*1および2OF15*2/inv領域のD−D融合の結果生じる(表3)。そのHCDR3は26アミノ酸長である(表3)。N−挿入も同じ長さであり、ヌクレオチド構成を共有しており、それはCH01〜CH05モノクローナル抗体がクローン的に関連しているという考えと一致する(図57A)。CH04およびCH05のV重鎖配列は同じであり(図57A)、それはV軽鎖の末梢での編集が起こる瞬間が妨害されたことを示唆している。
【0092】
【表3】
【0093】
そのV重鎖を見た限りでは、CH01〜CH04は同じVLκ3〜20/JLκ1再編成(図57B)、同じ長さ(9アミノ酸)のLCDR3および類似のn−挿入(図57B)を共有していた。モノクローナル抗体CH05のV軽鎖は代わりに無関係であり(図57C)、異なるVLκ1/JLκ2再編成、LCDR3の長さおよびn−挿入を有していた。V軽鎖のVH3〜20鎖への対合の基礎をなす生物学は、より大きなVLκの数はJκの位置により近く、従って祖先抗体は最初にVLκ3を、次いでVLκ1を再編成しなければならなかったと考えられるため、VH3〜20/VLκ3〜20鎖の対(CHO1〜CH04)がVH3〜20/VLκ1〜6の対合(CH05)に先行したことであると考えられる。さらに、小さい数のJκの位置は大きい数のJκの位置より前に来なければならない。従って、VLκ3/JLκ1からVLκ1/JLκ2への移行は単純な編集と一致する。最後に、図58に示した、以下で論じる系統樹は、さらにVLκ3/JLκ2の再編成が最初に起こったという非常に強い証拠を提供する。
【0094】
次に、V重鎖の系統樹を構築することにより、CH01〜CH05モノクローナル抗体の遺伝的関係の決定を行った(図58)。それを行うために、観察された抗体に全体として最尤分析を適用することにより、CH01〜CH05抗体の推定上の復帰未変異祖先を推定した。この方法を用いて、位置329における1個の沈黙ヌクレオチド置換(GまたはT)に関してのみ異なる2種類の可能性のあるRUA(0219−RUA1および0219−RUA2)が予想された(図59)。その推定上のRUAは、それぞれの観察されたモノクローナル抗体を独立して分析することによっても予想された。この方法を用いて、9個のRUA抗体の候補を同定した:CH01に関して1個(CH01−RUA1)、CH02に関して2個(CH02−RUA1およびCH02−RUA2)、CH03に関して4個(CH03−RUA1、CH03−RUA2、CH03−RUA3およびCH03−RUA4)CH04に関して2個(CH04−RUA1およびCH04−RUA2)。全ての算出された推定上のRUAの配列比較を図59において示す。
【0095】
V重鎖の系統樹(図58)は、CH02およびCH03が互いに遺伝的に近く、CH03はそのファミリーの内で最も体細胞変異したモノクローナル抗体であることを示している。
【0096】
まとめると、これらのデータは、CH01〜CH05はクローン的に関連した重度に体細胞変異したモノクローナル抗体であり、それらは長いHCDR3を共有し、D−D融合再編成を有することを示している。さらに、これはヒトにおける末梢での軽鎖の編集の最初の記述である。
【0097】
CH01〜CH05モノクローナル抗体は2層HIV−1分離株を広く中和し、単量体性gp120/gp140 HIV−1エンベロープタンパク質の限られたセットに結合する。
【0098】
CH01〜CH05抗体の中和の広さを、96種類のHIV−1初代分離株の集団に対して試験した。その集団は、4種類の1A層分離株、3種類の1B層分離株(2種類のクレードBおよび1種類のクレードAE)ならびに10種類のクレードA、21種類のクレードB、27種類のクレードC、4種類のクレードD、7種類のクレードG、1種類のクレードAE、1種類のクレードAD、9種類のCRF01_AEおよび9種類のCRF02_AGウイルスが含まれる89種類の2層分離株を含んでいた。
【0099】
遺伝的分析により予想されたように、CH01〜CH05は非常に類似した中和のパターンを共有していた(表4)。全ての抗体は多数のクレードからのウイルスを中和し、その中和の広さはCH01の44.9%(43/96分離株)からCH02の34.7%(33/95分離株)までの範囲であった。CH03、CH04およびCH05はそれぞれ43.2%(41/95)、43.2%(41/95)および44.2%(42/95)の分離株を中和した。1A層分離株を中和した抗体は無かった。1B層分離株は、CH01(3種類の内2種類)、CH02およびCH03(3種類の内1種類)によってのみ中和され、CH04またはCH05によっては中和されなかった。逆に、CH01〜CH05は2層ウイルスに対してより大きい中和の広さを示した。CH01はCRF02_AG分離株(7/9;77.8%)を優先的に中和し、クレードA(7/10;70%)、CRF01_AE(5/9;55.6%)、クレードB(9/21;42.9%)、クレードC(11/27;40.7%)、およびクレードG(1/7;14.3%)分離株が続いた。クレードDウイルスは中和されなかった。逆に、CH01〜CH05モノクローナル抗体はAE.CM244.ec1を強く中和したことを特筆するのは重要である(表4)。1層ウイルスを上回る2層ウイルスの優先的な中和は、以前の研究により中和しやすい1層分離株の広い中和はより中和しにくい2層分離株に対する広さに変換されないことが実証されており、従ってそれらの種類の抗体はHIV−1の感染の予防または制御において限られた助けにしかならない可能性がある点で重要である。
【0100】
【表4−1】
【0101】
【表4−2】
【0102】
【表4−3】
【0103】
比較すると、表中に示した最近記述されたPG9およびPG16 4次抗体は、それぞれ73/83(88%)および69/83(83.1%)の2層分離株を中和した。興味深いことに、ただ1つの例外(T251−18)を除き、PG16はPG9により中和された分離株の亜集団を中和し、CH01〜CH05の広く中和する抗体はPG16により中和されるウイルスの亜集団を中和する。この発見は、CH01〜CH05のエピトープがPG9/PG16のエピトープと関連しているという仮説と一致する。
【0104】
次に、CH01〜CH05抗体の中和感受性分離株に対する効力を評価した。全体的に、IC50の中央値はおおよそ1μg/mlであり、IC50の平均値は2.4から5.6μg/mlまでの範囲であった。CH03はCH01〜CH05抗体の中で最も強い効力を示し、IC50の平均値は2.4μg/ml、IC50の中央値は0.46μg/mlであり、PG9のそれら(IC50の平均値=2.1μg/ml;IC50の中央値=0.11μg/ml)と比較可能であったが、PG16のそれら(平均値=0.67μg/ml;中央値<0.02μg/ml)より弱かった。最も広い中和剤(neutralizer)であるCH01は、それぞれ3.7および1.1μg/mlのIC50の平均値および中央値を示した。CH02、CH04およびCH05のIC50の平均値はそれぞれ4.9、4.7および4.3μg/ml、IC50の中央値はそれぞれ0.97、0.8および0.79であった。
【0105】
伝染した始祖ウイルスを中和する能力は、評価すべき別の重要なパラメーターである。表4で示したように、CH01〜CH05 bNabは3/3(100%)のクレードA、2/9(22.2%)のクレードBおよび2/3(66.7%)のクレードCの伝染した始祖ウイルスを中和することができた。
【0106】
まとめると、これらのデータはCH01〜CH05抗体のクローンファミリーは伝染した始祖ウイルスを含む多数のクレードからの2層分離株を広く中和することを示している。これは広く中和する抗体のクローンファミリーの最初の報告である。CH05の中和のパターンには、そのクローンファミリーの他の広く中和する抗体の中和のパターンと比較して有意な違いがないため、これらの結果は、編集されたVLκ1〜6鎖がVLκ3〜20鎖と比較可能なレベルでの試験された分離株の中和を可能にしたことも示している。
【0107】
成熟した抗体とは対照的に、推定される推定上のRUAはそのような中和の広さを示さなかった。それでも、少数の分離株しか強く中和されなかった。24種類の分離株の集団に対して試験した6種類の推定されたRUAの中和プロフィールを表5に示す。CH03−RUA1、CH03−RUA4およびCH03−RUA3がAE.CM244.ecl分離株をそれぞれ4.45、5.26および18.8μg/mlのIC50で中和したことを特筆するのは重要である。また、B.WITO4160.33は試験した全てのRUAにより強く中和された(0.06から0.47μg/mlまでのIC50)。A.Q23.17分離株も、CH01−RUA1、CH03−RUA1、CH03−RUA3およびCH03−RUA4により0.02μg/ml未満のIC50で非常に強く中和された。逆に、CH02−RUA1およびCH03−RUA2はA.Q23.17を3桁高いIC50で中和し、これはC.ZM233M.PB6と同じ中和のパターンを示している。
【0108】
【表5】
【0109】
CH01〜CH05抗体の単量体性gp120/gp140 HIV−1エンベロープへの結合。
B細胞に結合させてCH01〜CH05様抗体の産生を誘発するためにどの単量体性エンベロープをワクチン配合物中で用いることができるかを決定するために、CH01〜CH05モノクローナル抗体およびRUAを32種類の単量体性エンベロープの集団への結合に関して試験した。表6は、μMで表したEC50を示す。
【0110】
【表6】
【0111】
単量体性エンベロープへの結合はgp120 A244gD+を除いて弱く、それはCH01〜CH05抗体により7.8μΜ(CH01)から150μΜ(CH02)までの範囲のEC50で結合された。加えて、そして広く中和する抗体を分泌することができるB細胞の前駆体の選択的標的化と非常に関連して、2種類の推定上のRUAもいくらかの結合を示した(表6)。5種類の成熟した抗体全てにより結合された他のHIV−1エンベロープは、そのEC50の平均値はより高かったが、gp120 CM243であった。A244(CM244)エンベロープの配列は、L124P、N196S、K198E、A212PおよびD284Nのaa置換を除き、McCutchanら(AIDS Res. Hum. Retrovir. 8(11):1887-1895 (1992))からのものである。加えて、gp120 A144(CM244)のN末端に、単純ヘルペスウイルスのgDタンパク質からの30AA配列(KYALVDASLKMADPNRFRGKDLPVLDQ)が存在する。この配列は、HSVの侵入および感染に必要なgDタンパク質の受容体結合部位を含む(Yoon et al, J. Virol. 77:9221 (2003), Connolly et al, J. Virol. 79:1282-1295 (2005), Campadelli-Fiume et al, Rev. Med. Virol. 17:313-326 (2007))。このA244 gp120が免疫原として用いられたRV144タイワクチン試験において、その対象はMN gp120およびA244 gp120の両方においてそのgDタンパク質に、IgA(図60)およびIgG(図61)gD抗体の両方で応答した。図62は、gDペプチド中に2個の可能性のある目的の部位が存在することを示しており、それはgp120のアルファ4ベータ7結合部位であるLPVおよびLDQを模倣している可能性がある。従って、これは3つの可能性を生じさせる:
1.gp120のa4b7への結合のためのモチーフはLDVおよびLDIである
HSV gD LPVおよびLDQ
これは、gDに対する抗体はHIV gp120のa4b7への結合を妨害することができるかどうかという疑問を生じさせる。
【0112】
2.HSV−gDのLDQは、宿主の細胞の受容体のヘパラン硫酸に関する受容体結合部位である(Yoon et al, J.Virol. 77:9221 (2003))。
これは、gDに対する抗体はHIV Envのヘパラン硫酸への結合を妨害することができるかどうかという疑問を生じさせる。
【0113】
3.LDQは第2のHSV受容体HVEMに関する受容体結合部位でもある。LDQに対する抗HSV抗体応答は、HSVに対して防御的であることができた(Yoon et al, J.Virol. 77:9221 (2003))。
【0114】
従って、抗gD応答は有効な感染を低減することによりHIVに関して防御的であることができるであろう。
ほとんどの単量体性gp120/gp140エンベロープへの結合の欠如は、CH01〜CH05が三量体性エンベロープ上で優先的に発現している立体構造感受性の4次抗体に結合することを示している。同様の発見がPG9およびPG16抗体に関して報告されている(Walker et al, Science 326(5950):285-9 (2009))。逆に、A244gD+ gp120エンベロープへの強い結合は、HSV−1糖タンパク質Dの同時発現が機能性エピトープを回復したことを示唆していた。
【0115】
HSV−1の糖タンパク質DのCH01〜CH05抗体の結合の増進における役割を調べるため、そしてRUAのエンベロープへの結合を標準的なELISAの検出の閾値より下であるがなお生理学的に関連性がある可能性のあるレベルで検出するため、CH01〜CH05抗体およびRUAのA244gD+およびA244gD− gp120エンベロープに対する解離定数(kd)を、表面プラズモン共鳴を用いて測定した(表7)。A244gD+は一貫してA244gD−よりも少なくとも1桁低いkdを示したが、さらにもっと重要なことには、全てのRUAがA244gD+ gp120に790nMから26.7nMまでの範囲のkdで結合した。これらのデータに関する表面プラズモン共鳴パターンを図63〜66に示す。伝染した始祖ウイルス6240がPG9にナノモル濃度のKdで結合したことは、図66においても示されている。まとめると、これらのデータは、A244 gD+エンベロープおよび6240伝染始祖エンベロープは天然のEnv三量体において見出されるgp120と類似の立体構造にあり、従って免疫原としての使用に関して正しい立体構造にあるはずであることを示している。
【0116】
【表7】
【0117】
CH01〜CH05の広く中和する抗体の自己反応性および多反応性プロフィール。
表8は、CH03はRNP、ヒストンおよびセントロメアB自己抗原と自己反応性であることを示している。CH03におけるセントロメアに結合する抗体の存在は、HEp−2細胞における間接蛍光抗体染色を用いても見出された(図67)。表12は、CH01〜CH05の4種類の非HIV抗原への結合(Luminexアッセイにより測定した)を報告する。そのデータは、CH01〜CH03が強く多反応性であることを示している。CH04およびCH05の多反応性は、さらに低いレベルにおいてさえもなお検出可能である。逆に、PG9およびPG16は多反応性能力を示さなかった。これらのデータは、CH01〜CH05ならびにPG9およびPG16抗体の間のそれぞれの発生の生物学における関連する可能性のある違いを指摘する。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
CH01〜CH05の広く中和する抗体により標的とされるエピトープの特性付け。PG16様表現型(phehotype)
CH01〜CH05抗体は、Walkerらにより最近記述された(PLoS Pathog. 6(8).pii:el 001028 (2010年8月5日))4次の広く中和するPG9およびPG16抗体と独特の特徴を共有している。特に、CH01〜CH05 bNabは、以下の4つの基準に基づいて“PG様”抗体として特性付けられた:(1)gp120タンパク質の位置160におけるアスパラギンのリシンへの点変異(N160K)が、そうでなければ中和感受性である分離株の中和を抑止する(abrogates)、(2)そうでなければ中和感受性である分離株の中和が、そのウイルスがマンノシダーゼI−阻害剤キフネンシンで処理された細胞中でのそれの産生により部分的に糖鎖除去された際に抑止される、(3)そのエピトープはエンベロープ三量体の状況において優先的に提示されるが、単量体性gp120またはgp140エンベロープ上には見付からない、そして(4)スレッディング(threading)がPG9またはPG16 bNabとの高い類似性を示す。bNabのCH01〜CH05クローンファミリーの代表として、CH01をそれがその4つの基準を全て満たすかどうか決定するために試験した。
【0121】
表9は、一群の野生型および変異した分離株(クレードA Q23.17およびクレードB JR−CSF JRFLおよび7165.18分離株)に対するPG9およびPG16の中和活性と比較した、CH01の中和活性(IC50およびIC80)へのN160K点変異の作用を示す。CH01、PG9およびPG16は全て野生型Q23.17(それぞれIC50=0.014、0.002および0.001μg/ml)およびJR−CSF(それぞれIC50=0.07、0.003および0.003μg/ml)分離株を強く中和する。Q23.17およびJR−CSFのgp120タンパク質中のN160K変異の導入は、その3種類の抗体による中和活性の完全な抑止につながる(IC50>50μg/ml)。また、CH01、PG9およびPG16はJRFLおよびその変異体に対して同じ中和パターンを共有している。それらのいずれも野生型のJRFLを中和しない。位置168における単一の変異(E168K)は正しく適合された(conformed)エピトープを再構成し、結果として強力な中和(CH01、PG9およびPG16に関してそれぞれIC50=0.044、0.008および0.003μg/ml)をもたらすが、それに続くN160K変異の導入はE168K変異の作用を復帰させ、そのJRFL/E168K/N160K分離株をその3種類のbNab全てに対して中和抵抗性(IC50>50μg/ml)にする。最後に、7165.18はCH01(IC50=5.82μg/ml)およびPG16(IC50=11.8μg/ml)により中和されるが、PG9(IC50>50μg/ml)によっては中和されず、またもN160K変異はCH01およびPG16の両方による中和を抑止する。まとめると、これらのデータは、CH01の中和活性はPG9およびPG16と同様にgp120における署名(signature)N160K変異により影響を受ける。
【0122】
【表10】
【0123】
PG9およびPG16の別の特徴は、そうでなければ中和感受性であるウイルスが、そのウイルスを産生するために用いられる293T細胞をキフネンシンで処理した場合に抵抗性になることである。図68は、293T細胞中で産生されたYU2のCH01による中和が50μMのキフネンシンを用いた処理により見た限りでは無効にされていることを示している。
【0124】
上記で記述された単量体性gp120およびgp140エンベロープへの限られた結合の広さを有する広く中和する抗体は、そのエピトープが三量体性エンベロープの状況において正しく露出される4次抗体の典型的なものである。
【0125】
7種類の別個のモノクローナル抗体のスレッド(threads)上へのCH01の重ね合わせは、PG16の構造はHC01の3D立体構造を予想するのに最も適していることを示した(表10)。図69は、CH01のPG16のスレッド上への重ね合わせを示す。PG9およびPG16はHCDR3領域の独特の形状により特性付けられ、それはその抗体の構造の先端から“ハンマー様の”形状で突き出している(Pancera et al, J. Virol. 84(16):8098-110 (2010))。そのような特徴を有する他の抗体は以前に記述されていなかった。特に、CH01の構造は非常に類似しており、その“ハンマー”の“頭部”はPG16のそれとよく重なり合う(図69)。HCDR3はPG9およびPG16よりも短いため、その配列はいくつかの部分で異なっており、これはCH01〜CH05抗体およびPG9/PG16の間の異なる反応性の広さの構造的説明である可能性がある。
【0126】
【表11】
【0127】
4次抗体の興味深い特徴は、それらがCD4i抗体と同じ方法でチロシン硫酸化され得ることである(Huang et al, PNAS 101(9):2706-2711 (2004) Epub 2004年2月23日、およびPejchal et al, PNAS 107(25):11483-8 (2010))。チロシン硫酸化予想プログラムである“sulfinator”を用いて実施されたCH01の配列分析は、硫酸化されそうな1個のチロシンを予想した(ARGTDYTIDDAGIHYQGSGTFWYFDL)(表11)。(CH01が1−27−G2と呼ばれていることに注意。)
【0128】
【表12】
【0129】
まとめると、これらのデータは、CH01〜CH05 bNabがgp120のV2領域を含む4次エピトープを認識するPG様の抗体であるという考えを強く支持している。
要約すると、上記で示したデータは以下のことを実証している:(1)ファージディスプレイライブラリーを生成する必要のない自然抗体の迅速な同定および分離を可能にする戦略を開発した;(2)5種類のクローン的に関連する広く中和する抗体のファミリーを記述し、それらの発達を追跡した;(3)ヒトにおける末梢での受容体の編集の予備的な証拠を提供した;(4)以前に記述されたPG9およびPG16の広く中和する抗体に遺伝的に関連しない、PG様ファミリーの広く中和する抗体の新規のメンバーを記述した;そして(5)1個より多くのモノクローナル抗体が入手可能である場合に推定上の復帰未変異祖先の予想の正確さを増大するための方法を開発した。
【0130】
4次V2、V3抗体の誘導のための免疫原の設計に関して、実施例5において、単純ヘルぺスのgDの配列を有するgp120 Env A244は、V2、V3の立体構造決定的な(conformational determinant)広く中和するAb PG9、PG16、CH01〜CH05に十分に結合することができ、CH01、02および03抗体の復帰未変異祖先にも結合することができることが実証された。さらに、6240伝染始祖EnvはPG9、およびPG16 mabに十分に結合することができる。従って、V2、V3の広く中和する抗体の誘導のための強力な免疫処置計画は、N末端においてgD配列を有するA244 gp120エンベロープで数回(例えば1〜3回)予備刺激し、次いで例えば6240伝染始祖gp140で(例えば1〜3回)全身的に(例えばIMまたは皮下で)または粘膜に(例えば鼻内に、舌下に(sublingualy)、膣内に、または直腸に)のどちらかで追加免疫することである。A224 gp120中のHSV受容体結合領域の免疫原性を考えれば、そのgDペプチドを含有するこのコンストラクトはHSVワクチンコンストラクトにも用いることができる。同様に、あらゆるHIV−1エンベロープのN末端に類似の方法で挿入されたそのgDペプチドは、1型および2型単純ヘルペスウイルスに対する防御抗体を誘導するために用いることができる。
【0131】
上記で引用されたすべての文献および他の情報源を、本明細書にそのまま援用する。
【図27−1】
【図27−2】
【図27−3】
【図28−1】
【図28−2】
【図57A】
【図57B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図29−1】
【図29−2】
【図29−3】
【図29−4】
【図29−5】
【図29−6】
【図29−7】
【図29−8】
【図29−9】
【図29−10】
【図29−11】
【図29−12】
【図29−13】
【図29−14】
【図29−15】
【図29−16】
【図29−17】
【図29−18】
【図29−19】
【図29−20】
【図29−21】
【図29−22】
【図29−23】
【図29−24】
【図29−25】
【図29−26】
【図29−27】
【図29−28】
【図29−29】
【図29−30】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50−1】
【図50−2】
【図51】
【図52−1】
【図52−2】
【図53A】
【図53B】
【図53C】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57C】
【図58】
【図59−1】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69−1】
【図69−2】
【公表番号】特表2013−520498(P2013−520498A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555003(P2012−555003)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/000352
【国際公開番号】WO2011/106100
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511043965)デューク ユニバーシティー (9)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/000352
【国際公開番号】WO2011/106100
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511043965)デューク ユニバーシティー (9)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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