説明

防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物

【課題】低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立することができる防振ゴム組成物の製法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化ブチルゴムと,カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製した後、このマスターバッチと,ジエン系ゴムとを混練する防振ゴム組成物の製法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動伝達系を構成する2つの部材間に介装されて、両部材を防振連結する防振ゴムは、各種の分野において広く用いられており、例えば、自動車分野においては、エンジンマウント、ボデーマウント、メンバマウント、サスペンションブッシュ等として、用いられている。このようなエンジンマウント等の自動車用防振ゴムは、周波数等の異なる複数種の振動の伝達系において使用されるため、通常、加わる振動に応じた防振特性を有効に発揮するものであることが求められる。具体的には、自動車用防振ゴムにおいては、一般に、100Hz以上の比較的に高い周波数領域の振動が加わる場合には、低動ばね特性(低動倍率化)が要求され、また、10〜20Hz程度の低周波振動が加わる場合には、高い減衰特性が必要とされている。
【0003】
この種の防振ゴムにおけるばね特性の発現機構は、その防振ゴムとなるゴム組成物を構成するポリマー分子間の結合、拘束や絡み合い、あるいはポリマー分子とゴム組成物に含有される補強剤との間の結合、拘束に基づくものである。一方、減衰特性の発現機構は、ポリマー分子同士、もしくはポリマー分子と、カーボンブラック等の補強剤との間の摩擦に基づくものである。一般に、減衰特性を高めると、それに伴って、防振ゴムのばね特性も高くなってしまい、逆に、低動ばね特性を実現すると、防振ゴムの減衰特性も低下してしまうという現象が生じていた。したがって、このような低動ばね特性と高減衰性という相反する特性を共に実現し得る防振ゴムの開発は、大きな課題となっている。
【0004】
そして、このような低動ばね−高減衰という防振特性を備えた防振ゴムを得るために、従来から、例えば、防振ゴムを構成するゴム材料として、低動ばね特性に優れる天然ゴム(NR)を用い、それにカーボンブラックを添加することにより、高減衰化を図る等の、ゴム材料の改質やその配合手法の改良等といった材質面における改善策が、各種提案されている。また、天然ゴムとブチル系ゴムとをブレンドしてなるゴム成分に、ヒドラジン誘導体と、充填材としての大粒径・ハイストラクチャーカーボンブラックと、架橋剤(加硫剤)としてのアルキルフェノールジスルフィドおよび硫黄とを配合してなる防振ゴムも提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−143860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の防振ゴム組成物の製法によると、通常、カーボンブラックが天然ゴム中に分散(偏在)するため、低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立するには不充分であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立することができる防振ゴム組成物の製法およびそれによって得られた防振ゴム組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、ハロゲン化ブチルゴムと,カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製した後、このマスターバッチと,ジエン系ゴムとを混練して、上記カーボンブラックをハロゲン化ブチルゴム中に分散させる防振ゴム組成物の製法を第1の要旨とする。また、本発明は、上記製法により得られる防振ゴム組成物を第2の要旨とする。
【0008】
本発明者らは、低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立することができる防振ゴム組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。そして、ハロゲン化ブチルゴムと、ジエン系ゴムと、カーボンブラックに着目し、これらを同時に混練するのではなく、まず、ハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製する(マスターバッチ法)ことにより好結果が得られることを見いだし、本発明に到達した。すなわち、本発明においてハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製すると、混練の際の摩擦熱等により、ハロゲン化ブチルゴムのハロゲン基と、カーボンブラックとの化学結合が促進されるためか、カーボンブラックが殆どハロゲン化ブチルゴム中に分散(偏在)するようになる。これにより、ハロゲン化ブチルゴムの減衰性と物性が向上するとともに、ジエン系ゴム中にはカーボンブラックは殆ど分散しないため、ジエン系ゴムの動倍率が、カーボンブラックの分散により上がることが防がれ、ジエン系ゴムの低動倍率が維持される。これにより、低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立することができる。
【0009】
なお、本発明において、低動ばね特性とは、100Hzにおける動的ばね定数(Kd100 )と静的ばね定数(Ks)との比である動倍率(=Kd100 /Ks)の値が小さいものをいい、また、高減衰特性とは、15Hzの振動入力時における損失係数(tanδ)の値が大きいものを意味している。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の防振ゴム組成物の製法は、ハロゲン化ブチルゴムと、ジエン系ゴムと、カーボンブラックを同時に混練するのではなく、まず、ハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製した後、このマスターバッチと、ジエン系ゴムとを混練する。そのため、カーボンブラックが殆どハロゲン化ブチルゴム中に分散することにより、ハロゲン化ブチルゴムの減衰性と物性が向上するとともに、ジエン系ゴム中にはカーボンブラックは殆ど分散しないため、ジエン系ゴムの動倍率が、カーボンブラックの分散により上がることが防がれ、ジエン系ゴムの低動倍率が維持される。これにより、低動ばね特性(低動倍率)と高減衰性とを両立することができる。
【0011】
また、上記ジエン系ゴムにシリカを添加したものを、上記マスターバッチと混練すると、より物性が高くなる。
【0012】
また、120〜180℃の高温で混練してマスターバッチを調製すると、ハロゲン化ブチルゴムのハロゲン基と、カーボンブラックとの化学結合がより効率的に行われるようになり、ハロゲン化ブチルゴム中にカーボンブラックがより分散(偏在)しやすくなり、さらに高減衰になる。
【0013】
また、マスターバッチ側にヒドラジド化合物を添加すると、より低動倍率となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0015】
本発明は、ハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製した後、このマスターバッチと、ジエン系ゴムとを混練して、上記カーボンブラックをハロゲン化ブチルゴム中に分散させる防振ゴム組成物の製法である。
【0016】
本発明では、ハロゲン化ブチルゴムと、ジエン系ゴムと、カーボンブラックとを同時に混練するのではなく、まず、ハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製して(マスターバッチ法)、ハロゲン化ブチルゴム中にカーボンブラックを分散(偏在)させた後、このカーボンブラックが分散しているハロゲン化ブチルゴムと、ジエン系ゴムとを混練するのであって、これが最大の特徴である。
【0017】
上記ハロゲン化ブチルゴム(ハロゲン化IIR)としては、例えば、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低動倍率の点で、塩素化ブチルゴムが好ましい。
【0018】
また、上記カーボンブラックとしては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0019】
なお、本発明においては、マスターバッチ工程において、粒径が異なる二種類以上のカーボンブラックを配合しても差し支えない。
【0020】
小粒径のカーボンブラックの平均粒径は、14〜40nmの範囲が好ましく、特に好ましくは20〜35nmの範囲である。また、大粒径のカーボンブラックの平均粒径は、41〜125nmの範囲が好ましく、特に好ましくは60〜125nmの範囲である。
【0021】
ここで、上記カーボンブラックの配合量は、上記ハロゲン化ブチルゴム100重量部(以下「部」と略す)に対して10〜150部の範囲が好ましく、特に好ましくは50〜100部の範囲である。すなわち、上記カーボンブラックの配合量が少なすぎると、高減衰を得ることが困難となる傾向がみられ、逆に上記カーボンブラックの配合量が多すぎると、練り加工性が悪化する傾向がみられるからである。
【0022】
なお、本発明においては、マスターバッチを調製する際に、ハロゲン化ブチルゴムおよびカーボンブラック以外に、ヒドラジド化合物、プロセスオイル、シランカップリング剤等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0023】
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボジヒドラジド(CDH),イソフタル酸ジヒドラジド(IDH),アジピン酸ジヒドラジド(ADH),セバチン酸ジヒドラジド(SDH),ドデカン二酸ジヒドラジド(N−12),コハク酸ジヒドラジド(SUDH)等のジヒドラジドや、これらの誘導体、例えば、下記の一般式(1)〜(3)で表される誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低動倍率化の点で、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
上記一般式(1)において、Aで表わされる、芳香族環由来の2価の基としては、例えば、オルト位、パラ位、またはメタ位のいずれかが連結位置となるフェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、キノリレン基等があげられる。また、上記Aで表される、炭素数1〜18の飽和または不飽和直鎖状炭化水素由来の2価の基としては、炭素数1〜18の飽和または不飽和直鎖状炭化水素の両端の炭素が連結位置となる炭化水素基、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、オクタデカメチレン基、7,11−オクタデカジエニレン基等があげられる。
【0026】
上記一般式(2)において、Bはフェニル基、ナフチル基等の1価の芳香族基であり、このBの置換基としてのXであるヒドロキシル基またはアミノ基の置換位置としては、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよいが、特にオルト位が好ましい。
【0027】
上記一般式(3)において、Yはピリジル基またはヒドラジノ基であり、その結合位置はピリジル基では2位、3位が好ましい。
【0028】
上記一般式(1)〜(3)において、R1 〜R4 は、各々独立に水素、炭素数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、1価の芳香族環基であるが、好ましくは、水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル基等があげられる。
【0029】
上記一般式(1)で表わされる具体的な化合物としては、イソフタル酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジドの誘導体であるイソフタル酸ジ(1−メチルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1−メチルエチリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1−メチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1−メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1,3−ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1,3−ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソフタル酸ジ(1−フェニルエチリデン)ヒドラジド、アジピン酸ジ(1−フェニルエチリデン)ヒドラジド等があげられるが、これらのイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドの誘導体以外でも下記のジヒドラジド化合物の誘導体も同様の効果が得られる。例えば、テレフタル酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イコサノイックジカルボン酸ジヒドラジド等の誘導体である。このなかでも、低動倍化効果に優れる点で、イソフタル酸ジヒドラジドが好ましい。
【0030】
上記一般式(2)で表わされる具体的な化合物としては、2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシ(1−メチルエチリデン)ヒドラジド、2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシ(1−メチルプロピリデン)ヒドラジド、2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシ(1,3−ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシ(1−フェニルエチリデン)ヒドラジド等の2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシヒドラジドの誘導体の他に、サリチル酸ヒドラジド、4−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、アントラニル酸ヒドラジド、1−ヒドロキシ−2−ナフタレン酸ヒドラジドの各誘導体があげられる。なかでも、特に、2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシヒドラジドの誘導体、特に2−ナフタレン酸−3−ヒドロキシ(1−メチルエチリデン)ヒドラジドは低動倍化効果に優れ、好ましい。
【0031】
上記一般式(3)で表わされる具体的な化合物としては、イソニコチン酸(1−メチルエチリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1−メチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1,3−ジメチルプロピリデン)ヒドラジド、イソニコチン酸(1−フェニルエチリデン)ヒドラジド等のイソニコチン酸ヒドラジドの誘導体の他に、炭酸ジヒドラジドの誘導体があげられる。
【0032】
なお、上記一般式(1)〜(3)で表わされるヒドラジド化合物の合成方法は、Pant,U.C.;Ramchandran,Reena;Joshi,B.C.Rev.Roum.Chim.(1979)24(3),471-82の文献に記載されている。
【0033】
上記一般式(1)〜(3)で表わされる誘導体は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0034】
上記ヒドラジド化合物の配合量は、上記ハロゲン化ブチルゴム100部に対して、0.01〜5部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜3部の範囲である。すなわち、上記ヒドラジド化合物の配合量が少なすぎると、低動倍率化の効果が小さくなる傾向がみられ、逆に上記ヒドラジド化合物の配合量が多すぎると、物性が低下する傾向がみられるからである。
【0035】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。上記プロセスオイルの配合量は、上記ハロゲン化ブチルゴム100部に対して、1〜50部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30部の範囲である。
【0036】
本発明においては、上記マスターバッチと、ジエン系ゴムとを混練して、防振ゴム組成物を調製する。このジエン系ゴムとの混練工程においては、上記ジエン系ゴム以外に、シリカ系充填剤、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、老化防止剤、プロセスオイル等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0037】
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0038】
上記シリカ系充填剤とは、シリカを有効成分とする充填剤をいい、例えば、シリカ、クレー、セリサイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、補強性の点から、シリカが好ましい。上記シリカの具体例としては、東ソーシリカ社製のニップシールERがあげられる。
【0039】
上記シリカ系充填剤の配合量は、物性の点から、上記ジエン系ゴム100部に対して5〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜60部の範囲である。
【0040】
本発明においては、上記シリカ系充填剤とジエン系ゴムとの親和性を向上させる目的で、シランカップリング剤を添加しても差し支えない。上記シランカップリング剤の具体例としては、EVONIK DEGUSSA社製のSi69があげられる。なお、上記シリカ系充填剤として、シランカップリング剤により表面が処理されたシランカップリング剤処理済みシリカ等を用いる場合には、シランカップリング剤を添加する必要はない。
【0041】
上記シランカップリング剤の配合量は、ジエン系ゴムとの親和性の点から、上記ジエン系ゴム100部に対して0.2〜20部の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜10部の範囲である。
【0042】
上記架橋剤としては、例えば、樹脂系架橋剤(アルキルフェノールジスルフィド等)、硫黄等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
上記架橋剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、0.5〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部の範囲である。
【0044】
また、上記架橋促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の架橋促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系架橋促進剤が好ましい。
【0045】
上記架橋促進剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、0.1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜5部の範囲である。
【0046】
上記チアゾール系架橋促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好ましい。
【0047】
上記スルフェンアミド系架橋促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0048】
上記チウラム系架橋促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0049】
また、上記架橋助剤としては、例えば、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
上記架橋助剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、1〜25部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜10部の範囲である。
【0051】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0052】
上記老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜5部の範囲である。
【0053】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0054】
上記プロセスオイルの配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、1〜50部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30部の範囲である。
【0055】
本発明の防振ゴム組成物の製法は、例えば、つぎのようにして行われる。まず、ハロゲン化ブチルゴムと、カーボンブラックと、必要に応じてヒドラジド化合物等を適宜に配合し、これらをバンバリーミキサー等を用いて、所定時間(通常、2〜6分間程度)混練を行い、マスターバッチを調製する。つぎに、このマスターバッチと、ジエン系ゴムと、必要に応じてシリカ系充填剤,シランカップリング剤,架橋剤等を適宜に配合し、これらをロール等を用いて、所定条件(通常、100〜130℃×2〜6分間)で混練することにより、防振ゴム組成物を調製する。そして、得られた防振ゴム組成物を、高温(通常、150〜170℃)で所定時間(通常、5〜30分間)、架橋することにより防振ゴムを得ることができる。
【0056】
本発明の製法により得られた防振ゴムは、通常、上記ハロゲン化ブチルゴム(島相)の領域にカーボンブラックのみが分散している。しかし、場合によって、上記海相領域に少量のカーボンブラックが分散していてもよい。なお、この海−島構造は、例えば、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM )を用いて、10μm×10μmの視野にて観察することができる。
【0057】
本発明において、マスターバッチの調製は、先に述べたように、高温で行うことが好ましい。本発明において、高温とは、通常、120〜180℃の範囲をいい、好ましくは140〜170℃の範囲である。
【0058】
上記ハロゲン化ブチルゴムと、ジエン系ゴムとの混合比は、重量比で、ハロゲン化ブチルゴム/ジエン系ゴム=20/80〜90/10の範囲が好ましく、特に好ましくはハロゲン化ブチルゴム/ジエン系ゴム=30/70〜50/50の範囲である。すなわち、上記ハロゲン化ブチルゴムの重量混合比が下限未満である(ジエン系ゴムの重量混合比が上限を超える)と、充分な動特性を得ることが困難となる傾向がみられ、逆に上記ハロゲン化ブチルゴムの重量混合比が上限を超える(ジエン系ゴムの重量混合比が下限未満である)と、動特性は良くなるが、物性が低下する傾向がみられるからである。
【0059】
本発明の製法により得られる防振ゴム組成物は、例えば、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント,ボデーマウント,キャブマウント,メンバマウント,ストラットマウント,スタビライザブッシュ,ストラットバークッション,ブッシュ(サスペンションブッシュ等)等の防振材料として用いられ、特にブッシュ(サスペンションブッシュ等)として好適に用いられる。
【実施例】
【0060】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0061】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0062】
〔天然ゴム〕
RSS♯3
【0063】
〔スチレン−ブタジエンゴム〕
JSR社製、SBR1500
【0064】
〔ブタジエンゴム〕
JSR社製、BR02L
【0065】
〔塩素化ブチルゴム〕
JSR社製、クロロブチル1066
【0066】
〔カーボンブラック1〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO、平均粒径:43nm)
【0067】
〔カーボンブラック2〕
HAF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シースト3、平均粒径:28nm)
【0068】
〔カーボンブラック3〕
FT級カーボンブラック(旭カーボン社製、旭♯15、平均粒径:122nm)
【0069】
〔ヒドラジド化合物1(ADH)〕
下記の化学式(4)で表されるアジピン酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製、ADH)
【化2】

【0070】
〔ヒドラジド化合物2(IDH〕
下記の化学式(5)で表されるイソフタル酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製、IDH)
【化3】

【0071】
〔ヒドラジド化合物3(SUDH)〕
下記の化学式(6)で表されるコハク酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製、SUDH)
【化4】

【0072】
〔酸化亜鉛〕
堺化学工業社製、酸化亜鉛2種
【0073】
〔ステアリン酸〕
花王社製、ルーナックS30
【0074】
〔老化防止剤〕
大内新興化学社製、ノクラック6C
【0075】
〔ワックス〕
大内新興化学社製、サンノック
【0076】
〔シリカ〕
東ソーシリカ社製、ニップシールER
【0077】
〔シランカップリング剤〕
EVONIK DEGUSSA社製、Si69
【0078】
〔アロマ系オイル〕
富士興産社製、フツコール アロマックス♯1
【0079】
〔架橋促進剤〕
大内新興化学社製、ノクセラーCZ−G
【0080】
〔架橋剤(樹脂系架橋剤)〕
アルキルフェノールジスルフィド(田岡化学社製、タッキロールAP)
【0081】
まず、上記の各材料を用いて、以下のようにしてマスターバッチを調製した。
【0082】
〔マスターバッチ1〜9の調製〕
下記の表1に示すように、同表に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらをバンバリーミキサーを用い、表1に示す所定温度で3分間混練して、マスターバッチを調製した。
【0083】
【表1】

【0084】
つぎに、上記各マスターバッチを用いて、以下のようにして防振ゴム組成物を調製した。
【0085】
〔実施例1〜11〕
下記の表2および表3に示すように、各成分を同表に示す割合で配合し、ロールで混練して防振ゴム組成物を調製した。
【0086】
〔比較例1〜6〕
マスターバッチ法によらずに、各成分を配合する以外は、実施例1と略同様にして防振ゴム組成物を調製した。すなわち、下記の表4に示すように、各成分を同表に示す割合で配合し、ロールで混練して防振ゴム組成物を調製した。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
このようにして得られた各防振ゴム組成物について、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記表2〜表4に併せて示した。
【0091】
〔初期物性〕
各防振ゴム組成物を、160℃×20分の条件でプレス成形、架橋して、厚み2mmのゴムシートを作製した。このゴムシートよりJIS5号ダンベルを打ち抜き、このダンベルを用い、JIS K6251に準拠して、引張強度(TS),破断伸び(Eb)および硬度(Hs:JIS A)をそれぞれ測定した。
【0092】
〔動特性〕
(静的ばね定数:Ks)
各防振ゴム組成物を用い、円板状金具(直径60mm、厚み6mm)をゴム片(直径50mm、高さ25mm)の上下面に170℃×30分の架橋条件でプレス、架橋接着させたテストピースを作製した。つぎに、上記テストピースを円柱軸方向に7mm圧縮させ、2回目の往きの荷重たわみ曲線から1.5mmと3.5mmのたわみ時の荷重を読み取って、静的ばね定数(Ks)を算出した。
【0093】
(動的ばね定数:Kd100)
上記テストピースを円柱軸方向に2.5mm圧縮し、この2.5mm圧縮の位置を中心とする振幅0.05mmの定変位調和圧縮振動を、周波数100Hzにおいて与え、上方のロードセルにて動的荷重を検出して、JIS K 6394に準じて、動的ばね定数(Kd100)を算出測定した。
【0094】
(tanδ)
上記テストピースを軸方向に2.5mmだけ圧縮した状態で、そのテストピースの下方から、圧縮位置を中心とする振幅:±0.5mmの定変位調和圧縮振動を、周波数15Hzにおいて加える試験を行ない、JIS K 6385−1995の「防振ゴムの試験方法」における「非共振方法(a)」に準拠して、15Hz時のtanδ(損失係数)を求めた。
【0095】
(動倍率:Kd100/Ks)
動倍率は、動的ばね定数(Kd100)/静的ばね定数(Ks)の値として求めた。
【0096】
上記表2〜表4の結果から、カーボンブラックの配合量が略同等である実施例と比較例とを対比すると、マスターバッチ法による実施例の方が、高減衰で、低動ばね特性(低動倍率)に優れていた。なお、高温(160℃)で混練したマスターバッチを使用した実施例1と、低温(110℃)で混練したマスターバッチを使用した実施例2とを対比すると、実施例1の方がより高減衰で、低動ばね特性(低動倍率)に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の製法により得られる防振ゴム組成物は、例えば、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント,ボデーマウント,キャブマウント,メンバマウント,ストラットマウント,スタビライザブッシュ,ストラットバークッション,ブッシュ(サスペンションブッシュ等)等の防振材料として用いられ、特にブッシュ(サスペンションブッシュ等)として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化ブチルゴムと,カーボンブラックとを混練してマスターバッチを調製した後、このマスターバッチと,ジエン系ゴムとを混練して、上記カーボンブラックをハロゲン化ブチルゴム中に分散させることを特徴とする防振ゴム組成物の製法。
【請求項2】
上記ジエン系ゴムにシリカを添加したものを、上記マスターバッチと混練する請求項1記載の防振ゴム組成物の製法。
【請求項3】
120〜180℃の高温で混練してマスターバッチを調製する請求項1または2記載の防振ゴム組成物の製法。
【請求項4】
ヒドラジド化合物を添加してマスターバッチを調製する請求項1〜3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の製法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製法により得られる防振ゴム組成物。

【公開番号】特開2009−96980(P2009−96980A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84579(P2008−84579)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】