説明

防振マウント

【課題】取付に際して取付プレートが共回りしにくく、もってマウント本体に捩れ方向の力が作用せずマウント本体の耐久性を向上させる。
【解決手段】ゴム状弾性体製のマウント本体2と、マウント本体2に固定された取付プレート3と、取付プレート3の外側端面3aに設けられた取付ボルト4とを有し、取付ボルト4にナット31を締結することにより相手取付部材21に取り付けられる防振マウント1において、取付プレート3は、その外側端面3aの外周縁部に段付き形状3dを有する。マウント本体2は、一部のゴム状弾性体が取付プレート3の外周面3cから段付き形状3dへ回り込んで成形されることにより段付き形状3dに配置された取付ゴム部5を一体に有する。取付ゴム部5は、取付プレート3の外側端面3aよりも外側へ突出して相手取付部材21に密接する密接部5aを有する。密接部5aには外高形状のテーパー5bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振技術に係る防振マウントに関するものである。本発明の防振マウントは広く一般産業用機械類に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図2に示すように、ゴム状弾性体製のマウント本体52のゴム弾性を利用して防振作用をなす防振マウント51が知られており、この防振マウント51は、取付の相手方である相手取付部材21に対して着脱可能なことが求められることから、取付ボルト53にナット31等の雌ねじ部材を締結することにより相手取付部材21に取り付けられるように構成されている。図示するように取付ボルト53は、円筒状のマウント本体52の両端部にそれぞれ設けられている。
【0003】
しかしながら上記従来技術によると、一方(図では下側)の取付ボルト53が既に締結された状態で他方(図では上側)の取付ボルト53にナット31をねじ込んでゆくと、その最終の締付段階で、ねじ込みトルクに対して取付ボルト53およびこれと一体の取付プレート54が共回りするため、マウント本体52に捩れ方向の力が加わったままの状態で取り付けられ、よってこれを原因としてマウント本体52の耐久性が低下する問題がある。
【0004】
尚、本発明に対する先行技術文献として、下記特許文献1に、振動減衰体が捩じられて取り付けられることがない防振マウントが掲載されているが、この従来技術では、ボルトおよびナットを締結するものではなく、脚部および係止突部を有するピン状の取付部をスナップ係合させることにより防振マウントを相手取付部材に取り付ける構造とされている。したがって、本発明がボルトおよびナットの締結を前提としているのと構成を異にしている。
【0005】
また、下記特許文献2に、装着する際にゴム製のブロックにねじり応力が発生せず、もってブロックに亀裂が発生することがない防振マウント(弾性支持構造)が掲載されているが、この従来技術では、ボルトおよびナットを締結するものではなく、止め輪により突起部を組み付けることにより防振マウントを相手取付部材に取り付ける構造とされている。したがってやはり、本発明がボルトおよびナットの締結を前提としているのと構成を異にしている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−217686号公報
【特許文献2】特開2003−113895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ボルトおよびナットの締結により防振マウントを相手取付部材に取り付けるに際して取付プレートが共回りしにくく、もってゴム状弾性体よりなるマウント本体に捩れ方向の力が作用せずマウント本体の耐久性を向上させることが可能な防振マウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の防振マウントは、ゴム状弾性体製のマウント本体と、前記マウント本体に固定された取付プレートと、前記取付プレートの外側端面に設けられた取付ボルトとを有し、前記取付ボルトにナット等の雌ねじ部材を締結することにより相手取付部材に取り付けられる防振マウントにおいて、前記取付プレートは、その外側端面の外周縁部に段付き形状を有し、前記マウント本体は、一部のゴム状弾性体が前記取付プレートの外周面から前記段付き形状へ回り込んで成形されることにより前記段付き形状に配置された取付ゴム部を一体に有し、前記取付ゴム部は、前記取付プレートの外側端面よりも外側へ突出して前記相手取付部材に密接する密接部を有し、前記密接部には外高形状のテーパーが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0010】
すなわち、上記構成を有する本発明の防振マウントにおいては、取付ボルトにナット等の雌ねじ部材をねじ込んでゆくと、取付プレートの外側端面に設けた取付ゴム部が相手取付部材に密接し、この取付ゴム部が取付プレートと相手取付部材の間で圧縮されながら締結が行なわれる。
【0011】
このとき、取付ゴム部はマウント本体と一体のゴム状弾性体よりなるため、金属等剛材製の取付プレートと比較して摩擦係数が大きく設定されている。締結時の垂直抗力Nが一定の場合、摩擦抗力Fは摩擦係数μに比例する(F=μN)。したがって、比較的大きな摩擦抗力Fが発生する。
【0012】
また、取付ゴム部は、取付プレートの外側端面の外周縁部に設けた段付き形状に配置されているため、取付プレートの外側端面上、ねじ込みの回転中心から最も遠い位置に設けられている。締結時の摩擦抗力Fが一定の場合、摺動トルクTは回転中心からトルク作用部までの距離rに比例する(T=rF)。したがって、比較的大きな摺動トルクTが発生する。
【0013】
また、取付ゴム部は段付き形状に配置されているので、締結完了時、圧縮されて段付き形状内に収められ、取付プレートの外側端面が相手取付部材に密接するのを妨げることがない。また、取付ゴム部の密接部には外高形状のテーパーが設けられているので、締結完了時、取付ゴム部が取付プレートの外側端面と相手取付部材の間に挟み込まれることもない。したがって、締結完了時のトルクダウンが防止される。
【0014】
以上の作用により本発明によれば、取付プレートが共回りするのを有効に防止することができる。したがって本発明所期の目的どおり、ボルトおよびナットの締結により防振マウントを相手取付部材に取り付けるに際して、取付プレートが共回りしにくく、もってマウント本体に捩れ方向の力が作用せず、マウント本体の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)
(1−1)加硫時ゴムをプレート上面まで廻し摩擦を大きくする。
(1−2)プレート外周形状を段付きにすることで大きなトルクを得る。
(1−3)ゴムにテーパーを付けることでゴムを挟み込まない形状とする。
(1−4)上記(1−1)〜(1−3)を組み合わせることで共回りを防止することができる構造となる。
【0016】
(2)
(2−1)加硫時ゴムをプレート上面まで廻すこと、摩擦係数μを大きくすることで締結時の摩擦抗力Fを大きくすることができ、共回りを防止することができる。摩擦抗力Fは以下の式で表せる。
F=μN(N=垂直抗力)
(2−2)また、プレート外周側の形状を段付きにしゴムとの接触を外周側(rを大きくする)にすることで、締付時のトルクを上回るトルクを発生させることができる。トルクの式を以下に示す。
T=rF(r=回転中心から力が作用する部位までの距離)
(2−3)プレート上面のゴム部をテーパー状にすることでメタルタッチで接触する部分にゴムを挟み込まない形状にし、締結時のトルクダウンを防止する。
(2−4)上記(2−1)〜(2−3)を組み合わせることで共回りを防止することができる構造となる。
【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る防振マウント1の断面を示しており、当該防振マウント1は以下のように構成されている。
【0019】
すなわち先ず、当該マウント1は、ゴム状弾性体製のマウント本体2を有しており、このマウント本体2の両端部にそれぞれ取付プレート3が固定され、この取付プレート3の外側端面3aにそれぞれ取付ボルト4が設けられている。
【0020】
マウント本体2は、筒状の外周面2bを有して全体として円筒状に成形されており、その軸方向端面2aをもって取付プレート3の内側端面3bに接着(加硫接着)されている。取付プレート3はそれぞれ、所定の金属または硬質樹脂等により円板状に成形されており、その内側端面3bをもってマウント本体2の軸方向端面2aに接着(加硫接着)されている。取付ボルト4はそれぞれ、取付プレート3の外側端面3aに一体成形されており、その外周面に雄ねじ部4aを有している。
【0021】
上記マウント本体2、取付プレート3および取付ボルト4は、同一中心軸線上に配置されている。したがって、当該マウント1は基本的に軸対称形状とされている。
【0022】
また、当該マウント1は、図示するように取付ボルト4を相手取付部材21の貫通孔21aに挿通してその反対側からナット31等の雌ねじ部材をねじ込むことにより相手取付部材21に着脱可能に取り付けられるものであって、締結時に取付プレート3が共回りしないよう以下のように構成されている。
【0023】
すなわち、取付プレート3の外側端面3aの外周縁部に段付き形状3dが設けられており、マウント本体2の一部のゴム状弾性体がその成形(加硫成形)時に取付プレート3の外周面3cから段付き形状3dへと回り込んで成形されることにより、ここに取付ゴム部5が一体成形されている。
【0024】
この段付き形状3に設けられた取付ゴム部5には、取付プレート3の外側端面3aよりも外側(図では上側または下側)へ突出して相手取付部材21に密接する密接部5aが設けられており、この密接部5aには外高形状のテーパー5bが設けられている。
【0025】
段付き形状3dは、凹部状の段差として形成されており、取付プレート3の全周に亙って環状に設けられている。取付ゴム部5、密接部5aおよびテーパー5bもそれぞれ環状に設けられている。また、外高形状のテーパー5bはその名のとおり、密接部5aの外周側の高さ寸法が内周側の高さ寸法よりも高くなるように成形されたものであって、換言すると、密接部5aの厚み寸法が外周側から内周側へかけて漸次薄くなるように成形されている。
【0026】
上記構成の防振マウント1を相手取付部材21に取り付けるべく取付ボルト4を相手取付部材21の貫通孔21aに挿通してその反対側からナット31等の雌ねじ部材をねじ込んでゆくと、取付プレート3の外側端面3aに設けた取付ゴム部5が相手取付部材21に密接し、この取付ゴム部5が取付プレート3と相手取付部材21との間で圧縮されながら締結が行なわれる。尚、図示はしないが、図上下側の取付ボルト4は既に締結されているものとする。
【0027】
このとき、当該マウント1では、取付ゴム部5がマウント本体2と一体のゴム状弾性体よりなるために、金属等剛材製の取付プレート3と比較して摩擦係数が大きく設定されている。締結時の垂直抗力Nが一定の場合、摩擦抗力Fの大きさは摩擦係数μに比例するので(F=μN)、比較的大きな摩擦抗力Fが発生することになる。
【0028】
また、取付ゴム部5が、取付プレート3の外側端面3aの外周縁部に設けた段付き形状3dに配置されているために、この取付ゴム部5は取付プレート3の外側端面3a上、ねじ込みの回転中心0から最も遠い位置に設けられている。締結時の摩擦抗力Fが一定の場合、摺動トルクTの大きさは回転中心0からトルク作用部までの距離rに比例するので(T=rF)、比較的大きな摺動トルクTが発生することになる。
【0029】
また、取付ゴム部5が段付き形状3dに配置されているために、締結が完了したとき、この取付ゴム部5は圧縮されて段付き形状3d内に収められ、よって取付プレート3の外側端面3aが相手取付部材21に密接するのを妨げることがない。また、取付ゴム部5の密接部5aには外高形状のテーパー5bが設けられているために、締結完了時、取付ゴム部5は取付プレート3の外側端面3aと相手取付部材21との間に挟み込まれることがない。取付プレート3の外側端面3aと相手取付部材21との間にゴムが挟み込まれると、その経時的なへたり現象の発生等により締結が緩むことが懸念されるが、当該マウント1によればこのようなことがなく、よって締付けトルクが低下するのを防止することができる。
【0030】
したがって、以上の作用により、取付プレート3が共回りするのを有効に防止することができ、マウント本体2に捩れ方向の力が作用せず、マウント本体2の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係る防振マウントの断面図
【図2】従来例に係る防振マウントの断面図
【符号の説明】
【0032】
1 防振マウント
2 マウント本体
2a 端面
2b,3c 外周面
3 取付プレート
3a 外側端面
3b 内側端面
3d 段付き形状
4 取付ボルト
4a 雄ねじ部
5 取付ゴム部
5a 密接部
5b テーパー
21 相手取付部材
21a 貫通孔
31 ナット
0 回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体製のマウント本体(2)と、前記マウント本体(2)に固定された取付プレート(3)と、前記取付プレート(3)の外側端面(3a)に設けられた取付ボルト(4)とを有し、前記取付ボルト(4)にナット(31)等の雌ねじ部材を締結することにより相手取付部材(21)に取り付けられる防振マウント(1)において、
前記取付プレート(3)は、その外側端面(3a)の外周縁部に段付き形状(3d)を有し、
前記マウント本体(2)は、一部のゴム状弾性体が前記取付プレート(3)の外周面(3c)から前記段付き形状(3d)へ回り込んで成形されることにより前記段付き形状(3d)に配置された取付ゴム部(5)を一体に有し、
前記取付ゴム部(5)は、前記取付プレート(3)の外側端面(3a)よりも外側へ突出して前記相手取付部材(21)に密接する密接部(5a)を有し、
前記密接部(5a)には外高形状のテーパー(5b)が設けられていることを特徴とする防振マウント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−232166(P2007−232166A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57449(P2006−57449)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】