説明

防振装置

【課題】ストッパーの内周面に塗布した潤滑剤の有無確認を容易に行うことができると共に、ストッパーの内周面における潤滑剤の塗布量を安定させることができる防振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】振動受体に取り付けられると共に筒状のストッパー部41を有する第一ブラケット4と、第一ブラケット4の一方側に配設された取付体5と、第一ブラケット4と取付体5とを弾性的に連結する弾性体6と、第一ブラケット4の他方側に配設されて振動発生体に取り付けられる第二ブラケット8と、第二ブラケット8に固定されていると共にストッパー部41の内側に遊挿されて取付体5に連結された連結体9と、を備えた防振装置1であって、ストッパー部41の内周面に、ストッパー部41の軸線に交差する方向に沿って延在する溝状の潤滑剤溜まり部44が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や産業機械等に適用され、エンジン等の振動発生部の振動を吸収および減衰する防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した防振装置として、従来、車体に支持されてエンジンを懸吊する吊り下げ式のエンジンマウントが知られている。このエンジンマウントの概略構成としては、車体に取り付けられる第一ブラケットと、その第一ブラケットの上側に配設された取付体と、第一ブラケットと取付体とを弾性的に連結する弾性体と、第一ブラケットの下面に突設された筒状のストッパーゴムと、第一ブラケットの下側に配設されてエンジンに取り付けられる第二ブラケットと、その第二ブラケットに突設されていると共にストッパーゴムの内側に遊挿されて取付体に連結された連結体と、を備えている。上記した構成のエンジンマウントによれば、エンジンの振動が第二ブラケット、連結体及び取付体を介して弾性体に伝達されて弾性体が弾性変形する。このとき、弾性体の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、第一ブラケットを介して車体に伝播する振動が低減される。
【0003】
また、上記したエンジンマウントでは、ストッパーゴムの内側に遊挿された連結体がストッパーゴムの内周面に当接することで、第一ブラケットと第二ブラケットとの相対的な横方向の変位が制限され、エンジンの車両前後方向及び車両幅方向の揺れが抑えられる。ところが、連結体がストッパーゴムの内周面に当接した状態で上下動すると異音(スティックスリップ音)が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、従来、例えば下記特許文献1に示されているように、ストッパーゴムの内周面にシリコーンオイルやシリコーングリース等の潤滑剤を塗布する技術が提案されている。これにより、ストッパーゴムの内周面に連結体が当接しても異音が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−3073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の技術では、ストッパーゴムの内周面のうちの略平滑な箇所に潤滑剤を塗布するため、潤滑剤の塗布工程後の検査時に潤滑剤の有無確認が行いにくいという問題がある。仮に特許文献1に示されているように、ストッパーゴムの内周面にシボ加工が施されていても、シボ加工で形成される凹部の深さは浅いため、透明や半透明の潤滑剤を塗布する場合には、潤滑剤の有無確認が困難となる場合が多い。
【0007】
また、上記した従来の技術では、ストッパーゴムの内周面のうちの略平滑な箇所に潤滑剤を塗布するため、潤滑剤の塗布量にばらつきが生じやすいという問題がある。仮に特許文献1に示されているように、ストッパーゴムの表面にシボ加工が施されていても、シボ加工で形成される凹部の寸法精度は低いため、潤滑剤の塗布量を安定させるのは難しい。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、ストッパーの内周面に塗布した潤滑剤の有無確認を容易に行うことができると共に、ストッパーの内周面における潤滑剤の塗布量を安定させることができる防振装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防振装置は、振動受体に取り付けられると共に筒状のストッパー部を有する第一ブラケットと、該第一ブラケットの一方側に配設された取付体と、前記第一ブラケットと前記取付体とを弾性的に連結する弾性体と、前記第一ブラケットの他方側に配設されて振動発生体に取り付けられる第二ブラケットと、該第二ブラケットに固定されていると共に前記ストッパー部の内側に遊挿されて前記取付体に連結された連結体と、を備えた防振装置であって、前記ストッパー部の内周面に、該ストッパー部の軸線に交差する方向に沿って延在する溝状の潤滑剤溜まり部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、潤滑剤溜まり部はストッパー部の軸線に交差する方向に沿って延在する溝状の凹部であるため、ストッパー部の軸線方向に沿って潤滑剤を塗布することで、潤滑剤が潤滑剤溜まり部に保持され易い。
また、潤滑剤の塗布作業後に、潤滑剤溜まり部に潤滑剤が充填されているかを目視などで確認することで潤滑剤の有無が確認される。
また、溝状の潤滑剤溜まり部は精度良い形状寸法で形成することが可能であるため、潤滑剤溜まり部に保持される潤滑剤の量が安定し、ストッパー部の内周面に塗布される潤滑剤の塗布量が安定する。
【0011】
また、本発明に係る防振装置は、前記ストッパー部の内周面に、該ストッパー部の軸線に沿った方向に延在して前記潤滑剤溜まり部に対して交差する緩衝凸条部が形成されており、該緩衝凸条部を切り欠いて前記潤滑剤溜まり部が形成され、該潤滑剤溜まり部の深さ寸法が前記緩衝凸条部の突出寸法よりも小さいことが好ましい。
【0012】
これにより、ストッパー部の内周面を成形する金型の型抜き時の抵抗が小さくなり、型抜きしやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る防振装置によれば、ストッパー部の内周面に潤滑剤を塗布した際に、その潤滑剤が潤滑剤溜まり部に保持され易いので、ストッパー部の内周面に潤滑剤を確実に保持させることができ、その潤滑剤による異音防止効果を確実に発揮させることができる。
また、ストッパー部の内周面に塗布した潤滑剤の有無確認を容易に行うことができるので、潤滑剤の有無確認を行う検査の効率を向上させることができ、防振装置の生産性の向上を図ることができる。
また、ストッパー部の内周面における潤滑剤の塗布量を安定させることができるので、防振装置の品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための防振装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための防振装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための第一ブラケット、取付体及び弾性体を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための潤滑剤溜まり部の拡大断面図である。
【図5】本発明の変形例を説明するための潤滑剤溜まり部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0016】
図1、図2に示す防振装置1は、例えばペンデュラム懸架方式のエンジンマウントシステムにおいて図示せぬエンジン(振動発生体)の慣性主軸方向の端部を吊持するエンジンマウントとして特に好適な防振装置であり、以下、前記したエンジンマウントとして用いる場合について説明する。なお、図1に示すX方向が車両幅方向であり、図1に示すY方向が車両前後方向であり、図1に示すZ方向が車両高さ方向(上下方向)である。また、図3に示す鎖線Oは、後述するストッパー部41の中心軸線を示しており、以下「軸線O」と記す。
【0017】
図1、図2に示すように、防振装置1は、図示せぬ車体(振動受体)側に固定される車体側部材2と、図示せぬエンジン側に固定されるエンジン側部材3と、から構成されている。
【0018】
まず、車体側部材2の構成について説明する。
車体側部材2は、図示せぬ車体に取り付けられる第一ブラケット4と、第一ブラケット4の上方に配設された取付体5と、第一ブラケット4と取付体5とを弾性的に連結する弾性体6と、を備えている。
【0019】
図1〜図3に示すように、第一ブラケット4には、図示せぬ車体に固定された支持ブラケットAにボルト等で接合された板状のフランジ部40と、筒状のストッパー部41と、を備えている。
【0020】
フランジ部40は、例えば炭素鋼やステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属板からなる板状部であり、略水平に配置されている。このフランジ部40の車両前後方向の両端部には、支持ブラケットAに締結するためのボルト孔47が形成されている。また、フランジ部40の中央部には、ストッパー部41に連通する開口46が形成されている。
【0021】
ストッパー部41は、上下方向に延在する角筒状の筒状部であり、フランジ部40の下面に突設されている。このストッパー部41は、ゴムや合成樹脂などの変形容易な緩衝材料からなる。また、ストッパー部41の内部には、フランジ部40の下面に突設された筒状のインサート金具42が埋設されており、ストッパー部41をインサート金具42と共に加硫成形することでストッパー部41がインサート金具42に接着されている。
【0022】
また、ストッパー部41は、上下方向に貫通する内周孔を有しており、ストッパー部41の下端は下側に開放されており、ストッパー部41の上端はフランジ部40の開口46を介して上側に開放されている。また、ストッパー部41の内周孔は、ストッパー部41製作時の型抜きのため、下端から上方に向かうに従い漸次縮径されており、ストッパー部41の内周面は、上端側に向かって軸線O側に傾斜している。なお、このストッパー部41の内周面の傾斜角度(軸線Oとストッパー部41の内周面とが成す角度)は、0.5度〜2度程度である。
【0023】
ストッパー部41の内周面には、上下方向に延在する複数の緩衝凸条部43が形成されている。この緩衝凸条部43は、横断面視矩形状(略台形状)の凸部であり、ストッパー部41の下端から上方に向かって延在している。また、緩衝凸条部43は、ストッパー部41の内周面に沿って延設されており、上端側に向かって軸線O側に傾斜している。また、緩衝凸条部43は、ストッパー部41の四方の内面(車両幅方向及び車両前後方向にそれぞれ対向する面)にそれぞれ複数本ずつ形成されており、複数の緩衝凸条部43は、ストッパー部41の周方向に間隔をあけて平行に並設されている。また、隣り合う緩衝凸条部43の上端部同士は、ストッパー部41の内周面に形成された連結凸部45を介して連結されている。
【0024】
また、ストッパー部41の内周面には、ストッパー部41の軸線Oに交差(直交)する方向に沿って延在する複数の潤滑剤溜まり部44が形成されている。この潤滑剤溜まり部44は、縦断面視円弧状の溝部であり、ストッパー部41の内周面に沿って水平方向に延在して潤滑剤溜まり部44に対して交差している。また、複数の潤滑剤溜まり部44は、ストッパー部41の四方の内面にそれぞれ形成されており、上下方向に間隔をあけて平行に並設されている。
【0025】
上記した潤滑剤溜まり部44は、上端側に向かって軸線O側に傾斜した緩衝凸条部43の先端面を切り欠いて形成されている。そして、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法は、上記した緩衝凸条部43の突出寸法よりも小さく、隣り合う緩衝凸条部43の間の縦溝部分48の位置に潤滑剤溜まり部44が形成されていない。つまり、潤滑剤溜まり部44は、ストッパー部41の軸線Oに交差(直交)する方向に間欠的に形成されている。具体的に説明すると、図4に示すように、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法h(潤滑剤溜まり部44のうちの最も深い箇所の深さ寸法)は、0.1〜2.0mmの範囲内で、且つ、緩衝凸条部43の突出寸法Hに対して5%〜40%であることが好ましい。なお、潤滑剤溜まり部44の幅寸法wは、0.1〜10mmの範囲内であることが好ましい。
【0026】
図1〜図3に示すように、取付体5は、例えば炭素鋼やステンレス鋼等の金属板からなる板状部であり、第一ブラケット4の上方に略水平に配置されている。この取付体5の中央部には、後述する連結体9に連結するためのボルト孔50が形成されている。
【0027】
弾性体6は、フランジ部40と取付体5との間に介在されてフランジ部40と取付体5とを繋ぐ部材であり、例えばゴムや合成樹脂等の弾性材料からなる。この弾性体6の車両前後方向の中央部分には、車両幅方向に貫通したスグリ61が形成されており、弾性体6は、側面視(車両幅方向からの矢視)においてハ字状に配設された一対の弾性脚部60,60からなる。弾性脚部60の上端は、取付体5と共に加硫成形することで取付体5の下面に接着されており、弾性脚部60の下端は、第一ブラケット4のフランジ部40と共に加硫成形することでフランジ部40の上面に接着されている。なお、この弾性体6と上記したストッパー部41とは同一材料で一体に形成されている。なお、弾性体6とストッパー部41とを別々に形成してもよい。
【0028】
次に、エンジン側部材3の構成について説明する。
図1、図2に示すように、エンジン側部材3は、第一ブラケット4の下側に配設されて図示せぬエンジンに取り付けられる第二ブラケット8と、第二ブラケット8に固定されていると共にストッパー部41の内側に遊挿されて取付体5に連結された連結体9と、を備えている。
【0029】
第二ブラケット8は、例えば炭素鋼やアルミニウム合金等の金属からなる鋳造部材であり、側面視(車両幅方向からの矢視)において略三角形状に形成されている。この第二ブラケット8の3つの角部には、図示せぬエンジンに締結するためのボルト孔80がそれぞれ形成されている。
【0030】
連結体9は、第二ブラケット8と一体に鋳造される金属製の柱状部であり、第二ブラケット8の上端面から上方に向けて立設されている。この連結体9の外形寸法は、ストッパー部41の内寸法よりも小さく、連結体9はストッパー部41の内側に隙間をあけた状態で挿入されている。また、連結体9の上端面には、図示せぬボルト孔が形成されており、このボルト孔に締結ボルト90が螺合されている。この締結ボルト90は、上記した取付体5のボルト孔50(図3に示す。)に挿通されており、取付体5の上面側から図示せぬ締結具(例えばナット等)によって取付体5に締結されている。これにより、連結体9が締結ボルト90を介して取付体5に連結され、エンジン側部材3が車体側部材2に組み付けられている。
【0031】
次に、上記した構成からなる防振装置1の製作工程について説明する。
【0032】
まず、車体側部材2及びエンジン側部材3をそれぞれ製作する。
詳しく説明すると、図示せぬ金型に、インサート金具42が接合されたフランジ部40及び取付体5をセットする。続いて、その金型に弾性材料を流し込んで加硫工程を行う。これにより、弾性体6がフランジ部40および取付体5に接着されると共にストッパー部41がインサート金具42に接着され、車体側部材2が製作される。次に、上記した金型を取り外す。ストッパー部41の内周面を成形する中子金型は、ストッパー部41の下端側から引き抜いて取り外される。このとき、中子金型の金型面に、潤滑剤溜まり部44を形成する凸部が形成されており、その凸部が中子金型を引き抜く際にアンダーカット状態となるが、軸線Oに交差する方向に延在する潤滑剤溜まり部44が、上端側に向かって軸線O側に傾斜したストッパー部41の内周面に形成されているため、中子金型を引き抜く際に上記した中子金型の凸部が引っ掛かりにくくなり、型抜きしやすい。特に、潤滑剤溜まり部44が緩衝凸条部43を切り欠いて形成されており、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法hが緩衝凸条部43の突出寸法Hよりも小さいため、型抜き時の抵抗が小さくなり、型抜きしやすい。
また、第二ブラケット8及び連結体9を一体に鋳造することでエンジン側部材3が製作される。
【0033】
次に、ストッパー部41の内周面に潤滑剤を塗布する。潤滑剤を塗布する方法としては、例えば、塗布具(例えばウエス等)を用いて手作業で塗布する方法がある。詳しく説明すると、まず、潤滑剤を塗布するに潤滑剤を付ける。その後、その塗布具をストッパー部41の下端からストッパー部41内に挿入し、潤滑剤が付いた面をストッパー部41の内周面に当てる。そして、その塗布具をストッパー部41の下端側に向かって軸線O方向に沿って動かすことで、潤滑剤をストッパー部41の内周面に塗布する。このとき、ストッパー部41の内周面に形成された溝状の潤滑剤溜まり部44が軸線Oに交差(直交)する方向に沿って延在しているため、潤滑剤が潤滑剤溜まり部44に保持され易い。
【0034】
次に、潤滑剤の有無を検査する。具体的には、溝状の潤滑剤溜まり部44に充填材が充填されているかを目視などで確認することで潤滑剤の有無を確認する。
【0035】
次に、車体側部材2にエンジン側部材3を組み付ける。詳しく説明すると、連結体9の先端に締結ボルト90を螺着させた後、ストッパー部41の下端からストッパー部41の内側に連結体9を挿入して締結ボルト90を取付体5のボルト孔50に挿通させる。そして、その締結ボルト90を図示せぬ締結具で取付体5に締結し、締結ボルト90を介して連結体9を取付体5に連結する。
以上により、防振装置1が完成する。
【0036】
上記した防振装置1によれば、ストッパー部41の内周面に潤滑剤を塗布した際に、その潤滑剤が潤滑剤溜まり部44に保持され易いので、ストッパー部41の内周面に潤滑剤を確実に保持させることができる。これにより、潤滑剤による異音防止効果を確実に発揮させることができる。
【0037】
また、溝状の潤滑剤溜まり部44に潤滑剤が充填されていることを確認することで、ストッパー部41の内周面に塗布した充填材の有無確認を行なうことができるので、潤滑剤の有無確認を容易に行うことができる。したがって、潤滑剤の有無確認を行う検査の効率を向上させることができ、防振装置の生産性の向上を図ることができる。
【0038】
また、溝状の潤滑剤溜まり部44は精度良い形状寸法で形成することが可能であるため、潤滑剤溜まり部44に保持される潤滑剤の量が安定し、ストッパー部41の内周面に塗布される潤滑剤の塗布量が安定する。これにより、防振装置1の品質を安定させることができる。
【0039】
潤滑剤溜まり部44が緩衝凸条部43を切り欠いて形成されており、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法hが緩衝凸条部43の突出寸法Hよりも小さくなっており、型抜きしやすいため、車体側部材2の製作時の生産効率を向上させることができる。また、型抜き時のストッパー部41の内周面の破損等を防止することができ、不良品発生率を低減させることができる。
【0040】
以上、本発明に係る防振装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、弾性体6にスグリ61が形成されており、ハ字状に配設された一対の弾性脚部60,60からなる弾性体6を備える防振装置1について説明しているが、本発明は、スグリが形成されていない弾性体を備える防振装置であってもよい。この構成の防振装置では、弾性体の中心部分に、連結体9や締結ボルト90を挿通させる貫通孔が形成される。
【0041】
また、上記した実施の形態では、ストッパー部41の内周面に断面視円弧状の潤滑剤溜まり部44が形成されているが、潤滑剤溜まり部44の形状は適宜変更可能である。例えば、図5(a)に示すように下側に向かうに従い漸次深くなった断面視略直角三角形状の潤滑剤溜まり部144であってもよい。これにより、潤滑剤塗布方向に向かって徐々に潤滑剤溜まり部144が深くなっているため、潤滑剤の塗布時に潤滑剤溜まり部144に潤滑剤が特に保持されやすい。また、図5(b)に示すように断面視矩形状の潤滑剤溜まり部244や、図5(c)に示すように断面視台形状の潤滑剤溜まり部344や、図5(d)に示すように断面視略V字形状の潤滑剤溜まり部444であってもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態では、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法hが緩衝凸条部43の突出寸法Hよりも小さくなっているが、本発明は、潤滑剤溜まり部44の深さ寸法が緩衝凸条部43の突出寸法以上にすることも可能である。
【0043】
また、上記した実施の形態では、ストッパー部41の内周面の各面(四面)に緩衝凸条部43と潤滑剤溜まり部44がそれぞれ形成されているが、本発明は、緩衝凸条部43や潤滑剤溜まり部44がストッパー部41の内周面の全面に形成されていなくてもよく、例えば、ストッパー部41の内周面のうち、車両前後方向に対向する面、若しくは車両幅方向に対向する面にだけ、緩衝凸条部43や潤滑剤溜まり部44が形成されていてもよい。
さらに、本発明は、上記した緩衝凸条部43を省略することも可能である。
【0044】
また、上記した実施の形態では、ストッパー部41の軸線Oが上下方向に延在しているが、本発明は、防振装置1の向きは適宜変更可能であり、例えば、ストッパー部41の軸線Oが水平方向に延在する向きに防振装置1が配設されていてもよい。
【0045】
また、本発明に係る防振装置は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に防振装置に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0046】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 防振装置
4 第一ブラケット
5 取付体
6 弾性体
8 第二ブラケット
9 連結体
41 ストッパー部
43 緩衝凸条部
44 潤滑剤溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動受体に取り付けられると共に筒状のストッパー部を有する第一ブラケットと、該第一ブラケットの一方側に配設された取付体と、前記第一ブラケットと前記取付体とを弾性的に連結する弾性体と、前記第一ブラケットの他方側に配設されて振動発生体に取り付けられる第二ブラケットと、該第二ブラケットに固定されていると共に前記ストッパー部の内側に遊挿されて前記取付体に連結された連結体と、を備えた防振装置であって、
前記ストッパー部の内周面に、該ストッパー部の軸線に交差する方向に沿って延在する溝状の潤滑剤溜まり部が形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置において、
前記ストッパー部の内周面に、該ストッパー部の軸線に沿った方向に延在して前記潤滑剤溜まり部に対して交差する緩衝凸条部が形成されており、
該緩衝凸条部を切り欠いて前記潤滑剤溜まり部が形成され、該潤滑剤溜まり部の深さ寸法が前記緩衝凸条部の突出寸法よりも小さいことを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−36977(P2012−36977A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177949(P2010−177949)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】