説明

防曇処理塗布液および塗布物品

【課題】 耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性に優れた防曇処理塗布液を提供すること。
【解決手段】 側鎖に水酸基を有するエチレン性モノマーに由来する繰返し単位からなるホモポリマーまたはこの繰り返し単位とともに側鎖にエポキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基またはアミド基もしくはアミノ基をそれぞれ有するエチレン性モノマーのいずれかに由来する繰返し単位からなるコポリマーを樹脂成分として含有する防曇処理塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇処理塗布液および塗布物品に関する。さらに詳しくは耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性および付着性に優れた塗布物品およびそれを与える防曇処理塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に防曇性を付与する技術は数多く知られている。すなわち、(1)界面活性剤を塗布したもの(特許文献1参照)、(2)基材表面に親水化処理したもの(特許文献2、特許文献3参照)、(3)親水性硬化樹脂を基材表面に塗布したもの(特許文献4参照)、(4)親水性ポリマーと各種親水性アクリレートからなるもの(特許文献5参照)、(5)架橋したポリビニルアルコール塗膜の上に親水性塗膜を形成したもの(特許文献6参照)、(6)酸化チタンの光触媒機能を利用したもの(特許文献7参照)、(7)表面を粗面化したもの(特許文献8参照)、(8)シラン化合物とポリビニルアルアルコールからなる塗膜を形成したもの(特許文献9参照)、(9)親水性モノマーと非反応性界面活性剤を組合せた塗膜を形成したもの(特許文献10参照)、(10)樹脂とジアルキル琥珀酸エステルとの組合せた塗膜を形成したもの(特許文献11参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの従来技術は耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性および付着性の少なくともいずれか1つの性能に改善すべき点を有し、これらの全ての性能を備えたものとは云えない。
【特許文献1】特公昭52− 47926号公報
【特許文献2】特公昭45− 18972号公報
【特許文献3】特公昭50− 1710号公報
【特許文献4】特開昭63−251401号公報
【特許文献5】特開平 3− 31369号公報
【特許文献6】特開平 6−220428号公報
【特許文献7】特開平 5−253544号公報
【特許文献8】特開昭61− 91042号公報
【特許文献9】特開平10−212471号公報
【特許文献10】特開平 3−215589号公報
【特許文献11】特開平 9− 13015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐擦傷性、初期防曇性、防曇維持性および付着性の良好な防曇性塗膜を与える防曇処理塗布液を提供することにあり、特に、上記の如き諸性能を備えた上記塗布液を一液型塗布液として提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記塗布液の塗膜を備えた防曇性の塗布物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
下記式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である、
で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および下記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と、下記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下からなるコポリマーを樹脂成分として含有する、ことを特徴とする防曇処理塗布液。
【0008】
【化2】

【0009】
ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはエポキシ基を有する脂肪族基である、
【0010】
【化3】

【0011】
ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基またはテトラヒドロフルフリル基である、
【0012】
【化4】

【0013】
ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である、
【0014】
【化5】

【0015】
ここで、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基またはアミノ基もしくは、アミド基またはアミノ基を有する脂肪族基である。
【0016】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなるコポリマーを樹脂成分として含有する塗膜を備え、上記X、X、X、XおよびXの合計100モル当り、Xが少なくとも65モル%存在する状態で上記塗膜が架橋されている、ことを特徴とする、塗膜付物品によって達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防曇処理塗布液は、塗膜構造中に樹脂成分に基づく水酸基を有し、薄膜化した場合においてさえ、初期防曇性、防曇維持性に優れた塗膜を与える。また、HLB値の高い界面活性剤を含有するものにあっては、界面活性剤の溶出量が少ないため、一層優れた初期防曇性、防曇維持性を与える。さらに、コロイダルシリカ等の酸化物微粒子を含有するものにあっては優れた耐擦傷性を示し、さらに架橋剤として有機珪素化合物を含むものにあっては無機系下地(基材)とも安定した付着性を示し、ブロック化イソシアネートを含むものにあっては長期間に亘り一液安定性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の防曇処理塗布液は、上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と、上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下からなるコポリマーを樹脂成分として含有する。
【0019】
上記式(1)においてRおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である。
上記式(1)で表わされる繰返し単位は、下記式(1’)
【0020】
【化6】

【0021】
ここで、R、RおよびXの定義は上記式(1)に同じである、
で表わされる化合物に由来する。
【0022】
かかる化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアリルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0023】
また、上記式(2)において、RおよびRは、互いに独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xはエポキシ基を有する脂肪族基である。
上記式(2)で表わされる繰返し単位は、下記式(2’)
【0024】
【化7】

【0025】
ここで、R、RおよびXの定義は上記式(2)に同じである、
で表わされる化合物に由来する。
【0026】
かかる化合物としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート等を挙げることができる。
【0027】
上記式(3)において、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルキルエーテル基、アルカニルエーテル基、アルケニルエーテル基またはテトラヒドロフルフリル基である。
上記式(3)で表わされる繰返し単位は、下記式(3’)
【0028】
【化8】

【0029】
ここで、R、RおよびXの定義は上記式(3)に同じである、
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0030】
上記式(4)において、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である。
上記式(4)で表わされる繰返し単位は、下記式(4’)
【0031】
【化9】

【0032】
ここで、R、RおよびXの定義は上記式(4)に同じである、
で表わされる化合物に由来する。
かかる化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
【0033】
さらに、上記式(5)において、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基またはアミノ基もしくは、アミド基またはアミノ基を有する脂肪族基である。
【0034】
上記式(5)で表わされる繰返し単位は、下記式(5’)
【0035】
【化10】

【0036】
ここで、R、R10およびXの定義は上記式(5)に同じである、
で表わされる化合物に由来する。
【0037】
かかる化合物としては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、
ヒドロキシメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルア
ミノメチル(メタ)アクリレート、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ(2−ヒドロキシメチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N一ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジブチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等を挙げることができる。
【0038】
上記ホモポリマーまたはコポリマーは、上記式(1)で表わされる繰返し単位を上記式(1)の1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位を70モル%以上および100モル%以下、より好ましくは80モル%以上および95モル%以下で含有する。
【0039】
本発明の塗布液には、さらに、コロイダルシリカ、界面活性剤、架橋剤、硬化促進のための硬化触媒および塗布性を改善するためのレベリング剤を含有することができる。
【0040】
コイダルシリカは市販品として入手することができ、その例としては、日産化学工業(株)製のIPA−ST(粒径:10〜20nm、固形分:30%、イソプロパノール溶媒)、メタノールシリカゾル(粒径:10〜20nm、固形分:30%、メタノーノ溶媒)、NPC−ST−30(粒径:10〜20nm、固形分:30%、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル溶媒)、EG−ST(粒径:10〜20nm、固形分:30%、エチレングリコール溶媒)、ST−OUP(鎖状シリカ、粒径:10〜20nm、固形分:15%、水溶媒)IPA−ST−UP(鎖状シリカ、粒径:10〜20nm、固形分:15%、イソプロパノール溶媒)等の鎖状、分岐状シリカを挙げることができる。
【0041】
また、コロイダルシリカに代えてあるいはコロイダルシリカとともに、粒径1〜100nmの範囲にある金属酸化物の微粒子を用いることもできる。
金属の種類としては、例えば、Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる1種以上が用いられる。金属酸化物の具体例としては、例えばAl,SnO,Sb,Ta,CeO,La,Fe,ZnO,WO,ZrO,In,TiOを用いることができる。
これらの酸化物は溶媒への分散性を高めるため有機シラン化合物で予め表面改質して用いることができる。
【0042】
かかる有機シラン化合物による表面改質は、酸化物微粒子に対し20重量%以下となる割合で分散媒体中で有機シラン化合物と接触させることにより行うことができる。有機シラン化合物の加水分解は上記接触後に行ってもあるいは予め行ったのち上記接触を行ってもよい。
【0043】
かかる有機シラン化合物としては、例えば
式RSiX(ここでRはアルキル基、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基を有する有機基でありそしてXは加水分解可能な基である)で表される単官能性シラン;
式RSiX(R、Xの定義は上記に同じ)で表わされる二官能性シラン;
式RSiX(R、Xの定義は上記に同じ)で表わされる三官能性シラン;
および式SiX(Xの定義は上記に同じ)で表わされる四官能性シランを挙げることができる。
【0044】
これらの有機シラン化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトブロピルジメチルエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシランの如き単官能性シラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ一グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランの如き二官能性シラン;
メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの如き三官能性シランおよびテトラエチルオルソシリケート、テトラメチルオルソシリケートの如き四官能性シランを挙げることができる。
【0045】
分散媒体としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノールの如き飽和脂肪族アルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブの如きセロソルブ;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートの如きプロピレングリコール誘導体;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類;ジエチルエーテル、メチルイソブチルエーテルの如きエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類;キシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素;およびエチレングリコール、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン等を挙げることができる。
【0046】
また、界面活性剤としては、親水性と疎水性のバランスを示す指標であるHLB値が10以上であるものが好ましく用いられる。
HLB値10以上の界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型およびポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤が好ましい。
【0047】
これらの界面活性剤は、市販品として入手することができ、それらの具体例としては、日本油脂(株)製のニッサンノニオンP−240(HLB=17.5)、E−212(HLB=13.3)、E−215(HLB=14.2)、E−230(HLB=16.6)、S−211(HLB=12.7)、S−215(HLB=14.2)、S−230(HLB=16.5)、旭電化(株)製のアデカトールLO−7(HLB=11.7)、LO−9(HLB=12.9)、LO−20(HLB=16.0)の如きポリオキシエチレンアルキルエーテル型;
ライオン(株)製のエソミンO/20(HLB=12.5)の如きポリオキシエチレンアルキルアミン型;および
ライオン(株)製のエソマイドO/15(HLB=10.4)、エソマイドHT/15(HLB=10.4)の如きポリオキシエチレンアルキルアミド型が挙げられる。
【0048】
さらに、架橋剤としては、ブロック化イソシアネート、2官能以上の多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、およびエポキシ基、シラノール基およびオキセタン基から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物、および、それ以外の架橋剤を挙げることができる。
【0049】
ブロック化イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートの如きジイソシアネートのビウレット構造、イソシアヌレート構造からなる化合物の遊離のイソシアネート基を、ブロック化剤としてメタノールとε−カプロラクタム等を用いブロック化し、熱に対する反応性を安定化したものが好ましく用いられる。これらは市販品として、住化バイエルウレタン(株)製のスミジュールBL3175、デスモジュールBL3475、デスモジュールBL3370、デスモジュール3272、デスモジュールVPLS2253、デスモジュールTPLS2134;および旭化成工業(株)製のデュラネート17B−60PX、デュラネートTPA−B80E、デュラネートMF−K60X等として入手することができる。
【0050】
多官能性有機珪素化合物としては、酸化物微粒子の表面改質に用いられる有機シラン化合物として前記した二官能性シラン、三官能性シランおよび四官能性シランと同じ化合物を用いることができる。
【0051】
エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物として、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、エチレングリコール,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸,ヘキサヒドロフタル酸などの多塩基酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、アニリン,トルイジン,4,4’−ジアミノジフェニルメタン,イソシアヌル酸等のアミンとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルアミン,シクロペンタジエンオキサイド,シクロヘキセンオキサイド等の脂環式エポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ハイドロジオーネビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ジグリシジルo−ペンタレート、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス−(3−シクロヘキセニル)修飾ε−カプロラクトン1,2:8,9ジエポキシリモネン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。これらは市販品として、ナガセケムテックス(株)製のデナコールEX−612、デナコールEX−512、デナコールEX−421、デナコールEX−314、デナコールEX−321、デナコールEX−211、デナコールEX−252、デナコールEX−810、デナコールEX−850、デナコールEX―821、デナコールEX−830、デナコールEX−841、デナコールEX−931、ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021、セロキサイド2081、セロキサイド3000、エポリードGT401等として入手することができる。
【0052】
オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物およびエポキシ基、シラノール基およびオキセタン環から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物として、1,4−ビス{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が挙げられる。これらは市販品として、東亜合成(株)製のOXT−221、OXT−610、OX−SQ、PNOX−1009、荒川化学工業(株)製のコンポラセンE102、コンポラセンE201、コンポラセンE202として入手することができる。
【0053】
その他の架橋剤としては、例えば、ヘキサメチロールメラミン、メチロールメラミン、アルキルエーテル化メチロールメラミンの如きメラミンが挙げられる。
【0054】
硬化促進のための硬化触媒は、架橋剤が作用して各成分が架橋縮合反応をして硬化する反応を効率的に促進させるために添加されるのが好ましい。硬化触媒として、酢酸ナトリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アセチルアセトンの金属塩、アンモニウム塩、エチルアセトアセテートの金属塩、アセチルアセトンとエチルアセテートが配位した金属塩、エチレンジアミンの金属塩水和物、第1〜3級アミン、ポリアルキルアミン、スルホン酸塩、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸錫等の有機金属塩、四塩化錫、四塩化チタン、塩化亜鉛等のルイス酸が挙げられる。また、これら化合物と有機メルカプタン、メルカプトアルキルシラン等を併用してもよい。硬化触媒は、硬化後に残る重量の0.001〜10重量%の範囲の量を添加するとよい。
【0055】
レベリング剤は、塗布液の塗布性を改善して塗膜の外観を改良するために添加されるのが好ましい。レベリング剤としては、ノニオン型フッ素系界面活性剤、ノニオン型シリコーン系界面活性剤が挙げられる。これらは市販品として、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−472SF、メガファックF−443、メガファックF−1405、ダイキン工業(株)製のユニダインNS−1605、ユニダインNS−2107、ユニダインDS−451(以上はフッ素系)や日本ユニカー(株)製のL−77、L−7001、L−7002、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2108、FZ−2161、FZ−2163(以上はシリコーン系)として入手することができる。
【0056】
本発明の防曇処理塗布液は、例えば、上記樹脂成分100重量部に対し、コロイダルシリカ等の酸化物微粒子0〜150重量部、より好ましくは10〜125重量部、架橋剤1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部、界面活性剤0〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部からなる。
上記塗布液は、通常、溶媒を含有する。溶媒は、好ましくは塗布液の固形分濃度が2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%となる割合で用いられる。
かかる溶媒としては、酸化物微粒子の表面改質に用いられる分散溶媒として記載した前記溶媒と同じものを挙げることができる。
【0057】
本発明の防曇処理塗布液は、直接基材に、あるいはプライマー、ハードコート等の機能性膜の塗布、またはコロナ処理、プラズマ処理等の電気的処理を施した基材に塗布し、乾燥して塗膜を形成することにより用いられる。基材としては、透明基材が好ましく用いられる。かかる基材としては、例えばガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂製の各種基材および例えば反射防止処理されたメガネレンズ基材を挙げることができる。具体的にはメガネレンズの如き光学レンズには、多くの場合、多層反射防止膜例えば最外層がSiO層からなる多層反射防止膜が施されているが、本発明の防曇処理塗布液による塗膜をこの多層反射膜の上に例えば20nm以下の膜厚で形成することにより、反射防止性能を維持したまま防曇性を付与することができる。同様にして、例えば乗車用の窓ガラスの内面、安全メガネの内面、オートバイなどのヘルメットシールドの内面、洗面化粧台の鏡面およびその他の各種鏡面に防曇性を付与することができる。
【0058】
本発明の塗布液による塗膜の厚みは、基材の種類や用途により異なるが、防曇性能は膜厚が大きいほど優れまた膜厚が大きくても透明性を維持できるので、例えば30μm以上とすることもできる。通常10μm以下であり、10nmから10μmが好ましい。
【0059】
本発明の塗布液により物品の表面上に形成された塗膜は、架橋された状態で、上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなるコポリマーを樹脂成分として含有し、上記X、X、X、XおよびXの合計100モル当り、Xが少なくとも65モル%存在するのが好ましい。
【0060】
本発明の塗布液が架橋して、耐擦傷性の優れた塗膜を形成するが、上記式(1)で表わされる繰返し単位における水酸基の残存量が塗膜の防曇性能に影響を与え、水酸基は上記定義のとおり、65モル%以上残存していることが好ましい。一方で、塗膜が十分な耐擦傷性を維持するためには、上記水酸基の残存量が約5モル%低下するように架橋反応をおこなう必要がある。
以下、実施例により本発明を詳述する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
1.樹脂成分の合成
防曇性を発現させるための樹脂成分は以下のようにして調合した。

<防曇樹脂1>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート72重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート12重量部およびメチルメタクリレート16重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートとメチルメタクリレートのコポリマーであった。
【0062】
<防曇樹脂2>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート94重量部、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート6重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーであった。
【0063】
<防曇樹脂3>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート100重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、重合させた。
得られた重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーであった。
【0064】
<防曇樹脂4>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート88重量部、アクリルアミド12重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリル0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリルアミドのコポリマーであった。
【0065】
<防曇樹脂5>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート89重量部、グリシジルメタクリレート11重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートのコポリマーであった。
【0066】
<防曇樹脂6>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート84重量部、アクリル酸16重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体は、分子量が約10,000の、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリル酸のコポリマーであった。
【0067】
<防曇樹脂7>
エチルセロソルブ320重量部に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート71重量部、メチルメタクリレート29重量部を加え、更にアゾビスイソブチロニトリルを0.4重量部加え、窒素雰囲気下90℃で4時間加熱攪拌し、共重合させた。
得られた共重合体とは、分子量が約10,000の、2ヒドロキシメチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのコポリマーであった。
【0068】
2.塗料の調整
<塗料1/調合表>
防曇樹脂1(固形分:24重量%):80重量部
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:1重量部
メチルトリメトキシシラン:1重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:2重量部
ノニオン型フッ素系レベリング剤:0.1重量部
【0069】
<塗料2/調合表>
防曇樹脂2(固形分:24重量%) :80重量部
メチルトリメトシキシラン:1重量部
BL3175(固形分:75重量%) :1重量部
IPA−ST−UP(固形分:15重量%) :50重量部
ポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0070】
<塗料3/調合表>
防曇樹脂3(固形分:24重量%) :80重量部
BL3175(固形分:75重量%) :2重量部
IPA−ST−UP(固形分:15重量%) :15重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:4重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0071】
<塗料4/調合表>
防曇樹脂3(固形分:24重量%) :80重量部
BL3175(固形分:75重量%) :2重量部
NPC−ST−30(固形分:30重量%) :32重量部
ポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤:4重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0072】
<塗料5/調合表>
防曇樹脂3(固形分:24重量%):80重量部
メチルトリメトキシシラン:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0073】
<塗料6/調合表>
防曇樹脂4(固形分:24重量%) :80重量部
ディユラートTBA−B80X:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0074】
<塗料7/調合表>
防曇樹脂5(固形分:24重量%) :80重量部
BL3175:2重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0075】
<塗料8/調合表>
防曇樹脂6(固形分:24重量%) :80重量部
BL3175:2重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:2重量部
ノニオン型フッ素系レベリング剤:0.1重量部
【0076】
<塗料9/調合表>
防曇樹脂2(固形分:24重量%) :80重量部
BL3175(固形分:75重量%) :2重量部
ヘキサメチロールメラミン:0.5重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0077】
<塗料10/調合表>
防曇樹脂2(固形分:24重量%):80重量部
BL3175(固形分:75重量%):4重量部
NPC−ST−30(固形分:30重量%):80重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:12重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
上記各塗料を上記調合表に従って各成分を均一に攪拌混合して調製した。
【0078】
<塗料11/調合表>
防曇樹脂3(固形分:24重量%) :80重量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン :1重量部
3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン:1重量部
ポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0079】
<塗料12/調合表>
防曇樹脂2(固形分:24重量%) :80重量部
メチルトリメトキシシラン :1重量部
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル:1重量部
IPA−ST−UP(固形分:15重量%):50重量部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0080】
<塗料13/調合表>
防曇樹脂2(固形分:24重量%) :80重量部
メチルトリメトキシシラン :2重量部
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート:1重量部
NPC−ST−30(固形分:30重量%):40重量部
ポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0081】
<塗料14/調合表>
防曇樹脂7(固形分:24重量%) :80重量部
メチルトリメトキシシラン :1重量部
スミジュールBL3175(固形分:75重量%):1重量部
IPA−ST−UP(固形分:15重量%):50重量部
ポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤:2重量部
ノニオン型シリコーン系レベリング剤:0.1重量部
【0082】
3.評価方法
1)初期防曇性
温度20℃、湿度50%RHの室内で、50℃の温水上に塗布物品を設置し、
処理面が曇るか曇らないかで性能を判定した。
2)防曇維持性
30℃−60%RHの恒温恒湿槽に2週間放置し、その後の防曇性を評価した。防曇性の評価は、初期防曇性能評価方法と同じ。
3)耐擦傷性/乾布
500g/cmの荷重をかけた乾いたベンコット(旭化成(株)製)で100回表面を擦った。その時の傷つき方を判定した。
1…傷つかない。
2…数本の傷がつく。
3…多数の傷がつく。
4…膜が剥がれる。
【0083】
4)耐擦傷牲/湿布
上記ベンコットを8枚重ね、水1cc/cm含有させ、500g/cmの荷重をかけて、100回表面を擦った。その時の傷つき方を判定した。
1…傷つかない。
2…数本の傷がつく。
3…多数の傷がつく。
4…膜が剥がれる。
5)耐擦傷性/エタノール
上記ベンコットを8枚重ね、エタノールを1cc/cm含有させ、500g/cmの荷重をかけて、100回表面を擦った。その時の傷つき方を判定した。
1…傷つかない。
2…数本の傷がつく。
3…多数の傷がつく。
4…膜が剥がれる。
6)防曇耐水性
流水に1分間浸漬、表面水を取り、1時間室温放置後の防曇性を確認した。
7)透明性
塗布物品のヘイズ値をヘイズメーターで測定した。
色差濁度計 型式:300A(日本電色工業(株)製)
8)膜厚
表面粗さ形状測定装置 型式:サーフコム110B((株)東京精密製)で測定した。
【0084】
実施例1〜19および比較例1〜5
表1に記載の基材の片面に各塗布液を塗布し、得られた塗布物品について、上記評価方法に従って種々の評価を行った。結果を表1に示した。
なお、比較例1〜4で用いた塗料2’,3’,5’および9’は、それぞれ塗料2,3,5および9の組成から、架橋剤であるブロック化イソシアネートおよび有機珪素化合物を除去した組成に相当する塗料である。
また、用いた基材であるガラス板は日本板硝子(株)製クリアーガラス(厚み2mm)であり、ポリカーボネート樹脂板は筒中プラスチック工業(株)製ポリカエース ECK−100(厚み2mm)でありそしてアクリル樹脂板は三菱レイヨン(株)製アクリライトE板(厚み2mm)である。実施例16は、HOYA(株)製のHOYA HYLUXマルチ処理レンズを基材とした。
【0085】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXは水酸基を有し且つ酸素原子により中断されていてもよい脂肪族基である、
で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および下記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位をそれぞれの1モルとして、上記式(1)で表わされる繰返し単位70モル%以上と、下記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位30モル%以下からなるコポリマーを樹脂成分として含有する、ことを特徴とする防曇処理塗布液。
【化2】

ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはエポキシ基を有する脂肪族基である、
【化3】

ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基またはテトラヒドロフルフリル基である、
【化4】

ここで、RおよびRは、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはカルボキシル基またはカルボキシル基を有する脂肪族基である、
【化5】

ここで、RおよびR10は、互に独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基でありそしてXはアミド基またはアミノ基もしくは、アミド基またはアミノ基を有する脂肪族基である。
【請求項2】
コロイダルシリカをさらに含有する請求項1に記載の防曇処理塗布液。
【請求項3】
界面活性剤をさらに含有する請求項1または2に記載の防曇処理塗布液。
【請求項4】
界面活性剤のHLB値が10以上である請求項3に記載の防曇処理塗布液。
【請求項5】
界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルアミン型およびポリオキシエチレンアルキルアミド型界面活性剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3または4に記載の防曇処理塗布液。
【請求項6】
ブロック化イソシアネート、多官能性有機珪素化合物、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物、オキセタン環を分子内に2個以上有する化合物、およびエポキシ基、シラノール基およびオキセタン環から選ばれる異なる基を分子内に2個以上有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤をさらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の防曇処理塗布液。
【請求項7】
上記架橋剤とは異なる架橋剤をさらに含有する請求項6に記載の防曇処理塗布液。
【請求項8】
上記式(1)で表わされる繰返し単位からなるホモポリマーおよび/または上記式(1)および上記式(2)〜(5)のそれぞれで表わされる繰返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなるコポリマーを樹脂成分として含有する塗膜を備え、上記X、X、X、XおよびXの合計100モル当り、Xが少なくとも65モル%存在する状態で上記塗膜が架橋されている、ことを特徴とする、塗膜付物品。

【公開番号】特開2006−225614(P2006−225614A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44777(P2005−44777)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(591057267)SDCテクノロジーズ・アジア株式会社 (3)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】