説明

防曇性積層体及びその製造方法

【課題】 基材と優れた密着性を有し、力学物性や耐熱性が高く、かつ透明性に優れた防曇性積層体、および極短時間で且つ均質な塗膜を形成可能な防曇性積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 水溶性有機ポリマーと、水膨潤性粘土鉱物とが三次元網目を形成してなり、厚さが1〜500μmの範囲にある透明ゲル乾燥体層を基材表面に有する防曇性積層体、及び非水溶性の重合開始剤を水媒体中に分散させた溶液中で、水膨潤性粘土鉱物の共存下において、水溶性のアクリル系モノマーをエネルギー線の照射により反応させることからなる有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性有機ポリマーと、水膨潤性粘土鉱物とが三次元網目を形成してなる、有機無機複合ヒドロゲルの透明乾燥体を、基材上に有する防曇性積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料表面の曇りは、雰囲気の温度低下により、空気中の水分が材料(例えばガラスやプラスチックなど)の表面に小さな水滴となり結露し、本来透明な材料が不透明になる現象のことである。例えば、電車や車のガラス部、ガラスショーウィンド、家庭の窓ガラスや浴室の鏡などに結露による曇り現象が日常に多く見受けられる。
【0003】
この曇り現象を防止する(通常防曇または曇り止めという)ために、多くの対策が講じられてきた。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩とポリスチレンスルホン酸またはその塩からなる共重合体を含む親水性表面処理組成物が開示されている(特許文献1参照)。該表面処理組成物は他の材料表面に親水性被膜を作成して防曇効果を生じさせるものであるが、この親水性皮膜が親水性のポリ(メタ)アクリル酸またはその塩とポリスチレンスルホン酸またはその塩の共重合体であり、水に晒された時膨潤しやすいため、親水性皮膜と各種材料との間の密着性(特に湿潤時)が不十分であった。特に、当該親水性被膜を疎水性ポリマー上に形成した場合には、親水性被膜との密着性の問題が顕著であった。
【0004】
また、クレイ粘土鉱物と、酸基および水酸基を含有するガラス転移温度が40℃〜75℃のアクリル系樹脂と、非イオン系界面活性剤の3成分を主成分とした防曇組成物を、熱可塑性樹脂フィルムに塗布して、防曇性を持たせたフィルムが開示されている(特許文献2参照)。しかし、この組成物中のクレイ粘土鉱物は界面活性剤を介しアクリル系樹脂中に分散しているだけで、クレイとアクリル系樹脂の間には何らネットワーク構造が形成されていないため、更にアクリル系樹脂のガラス転移温度が低いため高温時に塗膜の変形が大きく、また形成された防曇塗膜の硬度も低いものであった。
【0005】
一方、優れた機械的強度を有する材料として、親水性有機高分子と粘土鉱物が三次元網目を形成してなる高分子ヒドロゲルまたは該高分子ヒドロゲルの乾燥体が開示されている(特許文献3、特許文献4参照)。該ヒドロゲルの乾燥体は、透明性を有し、且つ強靱な材料であるが、均質に層形成されたものは開示されておらず、また形成されたヒドロゲル乾燥体塗膜が防曇性材料として有用であることなどは記載も示唆もされていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−9361号公報
【特許文献2】特開平9−40941号公報
【特許文献3】特開2002−53762号公報
【特許文献4】特開2004−143212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基材と優れた密着性を有し、力学物性や耐熱性が高く、かつ透明性に優れた防曇性積層体、および極短時間で且つ均質な塗膜を形成可能な防曇性積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水溶性有機ポリマー(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなり、厚さが1〜500μmの範囲にある透明ゲル乾燥体層を基材表面に有する防曇性積層体により上記課題を解決した。
【0009】
さらに、(I)エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を基材上に塗布する工程、
(II)基材上に塗布された組成物(X)の塗膜にエネルギー線を照射して、水膨潤性粘土鉱物(b)の共存下において水溶性のアクリル系モノマー(a)を反応させ、基材上に有機無機複合ヒドロゲル層を形成する工程、
(III)有機無機複合ヒドロゲル層を乾燥させてゲル乾燥体層とする工程、
を有する防曇性積層体の製造方法により上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られた防曇性積層体は、広い範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が有機高分子中に均一に分散し、優れた力学物性や防曇性などを示すと同時に、ゲル乾燥体層(防曇層)の力学物性や、基材との間の密着性がよく、重合が極短時間で完了できるため生産効率が非常に高い特徴を持っており、医療や介護用具、各種工業用材料として用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の防曇性積層体における透明ゲル乾燥体層は、水溶性有機ポリマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)とが相互作用して三次元網目を形成してなるものである。ここで水溶性有機ポリマーとは水に溶解するものの他、水中で膨潤したり、大気中で水分を多量に吸湿したりする親水性ポリマーを含む。水溶性有機ポリマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との相互作用には、静電相互作用、疎水性部分の相互作用、水素結合、配位結合による相互作用、またはこれらの相互作用の組み合わせがある。これらの相互作用により、本発明の防曇性積層体の力学物性(表面硬度)や透明性および防曇性が非常に優れていると推測される。
【0012】
本発明で用いる水溶性有機ポリマー(A)は、水膨潤性粘土鉱物(B)と相互作用し三次元網目を形成し、透明ゲル乾燥体層を形成するものであれば好適に使用できるが、積層が容易であることから、エネルギー線硬化性の有機モノマーから得られるものであることが好ましい。該有機モノマーとしては、エネルギー線重合による製造の簡便さや、得られるゲルの物性などから、水溶性のアクリル系モノマーを好適に使用できる。また、ゲル乾燥体層を形成できるものであれば、他の共重合モノマー成分を共重合成分として含んでいてもよい。水溶性のアクリル系モノマー(a)としては、アクリルアミドやメタクリルアミド、又はこれらの誘導体(N−またはN,N置換(メタ)アクリルアミド等)、あるいはアクリル酸エステルなどが好ましい例として挙げられる。また、重合に使用するモノマーは一種であっても複数種であってもよい。
【0013】
本発明においては、上記水溶性のアクリル系モノマーのなかでも、アクリルアミド、メタクリルアミド、またはこれらの誘導体(N−またはN,N置換(メタ)アクリルアミド)を好ましく使用でき、更に望ましくは、下記式(1)〜(6)で表されるアクリル系モノマーから選ばれる少なくとも一種のモノマーを好ましく使用できる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
(式(1)〜(6)中、Rは水素原子またはメチル基、R,Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜2のアルキル基である。nは1〜9である。)
【0021】
これらのアクリル系モノマーの使用により、重合時に使用する非水溶性の光重合開始剤を、より微細且つ均一に分散できるため、エネルギー線による重合時酸素の影響を受けにくく、より物性の優れるゲル乾燥体積層物が得られる。
【0022】
また、他の共重合モノマーとしては、例えば、スルホン基やカルボキシル基のようなアニオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基のようなカチオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基と燐酸基とを持つ両性イオン基を有するアクリル系モノマー、カルボキシル基とアミノ基とをもつアミノ酸残基を有するアクリル系モノマー、糖残基を有するアクリル系モノマー、また、水酸基を有するアクリル系モノマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール鎖を有するアクリル系モノマー、更にポリエチレングリコールのような親水性鎖とノニルフェニル基のような疎水基を合わせ持つ両親媒性アクリル系モノマー、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどを用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる水膨潤性粘土鉱物(B)としては、層状に剥離可能な膨潤性粘土鉱物が挙げられ、好ましくは水または水と有機溶剤との混合溶液中で膨潤し均一に分散可能な粘土鉱物、特に好ましくは水中で分子状(単一層)またはそれに近いレベルで均一分散可能な無機粘土鉱物が用いられる。具体的にはナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリライト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母等が挙げられる。これらの粘土鉱物を混合して用いても良い。
【0024】
透明ゲル乾燥体層中における水溶性有機ポリマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との重量比(A)/(B)は、0.01〜10の範囲であることが好ましく、0.03〜5の範囲であることがより好ましく、0.05〜3の範囲であることが特に好ましい。重量比(A)/(B)が0.01以上であるとゲル乾燥体層の水による膨潤度が小さく、充分な力学物性を得ることができ、10以下であると粘土鉱物が良好に分散し、均一なゲルが得られやすい。
【0025】
本発明においては、本発明においてはゲル乾燥体層の厚みを1〜500μmの範囲とすることで防曇性積層体の表面層として優れた強度や表面防曇性を発揮することができる。ゲル乾燥体層の厚さが1μm未満であると均質な膜が得られにくく、強度も充分で無く、また500μmを越えると、乾燥時のゲルの変形や基材からの剥離が生じやすくなる。該ゲル乾燥体層の厚さは、ゲル乾燥体層の防曇性や平滑性および疎水性ポリマー層との密着性などの観点から、ゲル乾燥体層の厚みが1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmであることがより好ましい。
【0026】
本発明の防曇性積層体に使用する基材としては、防曇性即ち透明性を保つ観点から、透明基材であることが望ましい。例えば、ガラスや鏡のようなガラス類、ポリカーボネートやポリエチレンのような透明プラスチック類などが挙げられる。
【0027】
基材上に形成するゲル乾燥体層は透明基材の表面に直接接触し一体化することもできるし、また、両者の間に透明なプライマー層や接着層などを介して一体化してもよい。その接着層が製造の簡便さや接着強度などの面から疎水性のアクリル系モノマーの重合体からなる疎水性ポリマーであることが望ましい。
【0028】
該疎水性ポリマーとしては、透明ゲル乾燥体層との密着性に優れることから、疎水性のアクリル系モノマーの重合体からなる疎水性ポリマーであることが望ましい。疎水性のアクリル系モノマーの具体例としては、例えば、1分子内にアクリロイル基を一つ以上有するアクリル酸エステルや、アクリル酸のエポキシエステル、1分子内にアクリロイル基を一つ以上有するウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
【0029】
本発明の防曇性積層体は、耐摩耗性などの要求に応じて、ゲル乾燥体層の硬度を幅広く調整することができ、その表面硬度は、通常の取り扱いやすさの観点から、表面鉛筆硬度がHB以上であることが望ましく、H以上であることが特に望ましい。
【0030】
本発明の防曇性積層体は、ゲル乾燥体層表面の親水性度合い(水接触角)を適宜調製することによりその防曇特性を調整することができる。防曇材料として特に好適に使用できる範囲としては、ゲル乾燥体層表面の水接触角が40°以下であることが望ましく、20°以下であることが更に望ましい。ゲル乾燥体層の親水性度合いは、水溶性有機ポリマーの種類や、水溶性有機ポリマーとその他の疎水性ポリマーとの共重合体を適宜選択することにより調製することができる。
【0031】
本発明の防曇性積層体は、下記の(I)〜(III)の工程により好適に製造できる。
(I)エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を基材上に塗布する工程、
(II)基材上に塗布された組成物(X)の塗膜にエネルギー線を照射して、水膨潤性粘土鉱物(b)の共存下において水溶性のアクリル系モノマー(a)を反応させ、基材上に有機無機複合ヒドロゲル層を形成する工程、
(III)有機無機複合ヒドロゲル層を乾燥させてゲル乾燥体層とする工程。
【0032】
組成物(X)中のエネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)および基材は、それぞれ上記したゲル乾燥体層における水溶性有機ポリマー(A)を得る際に使用する水溶性有機モノマー、水膨潤性粘土鉱物(B)および基材と同様のものを好ましく使用できる。
【0033】
水媒体(c)としては、水溶性のアクリルモノマーや水膨潤性粘土鉱物などを含むことができ、エネルギー線による重合によって、力学物性のよい有機無機複合ヒドロゲルが得られれば良く、特に限定されない。例えば水、または水と混和性を有する溶剤及び/またはその他の化合物を含む水溶液であってよく、その中には更に、防腐剤や抗菌剤、着色剤、香料、酵素、たんぱく質、糖類、アミノ酸類、細胞、DNA類、塩類、水溶性有機溶剤類、界面活性剤、レベリング剤などを含むことができる。
【0034】
本発明に用いられる非水溶性の重合開始剤(d)としては、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−メチルチオキサントンなどのケトン類、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシケトン類、メチルベンゾイルホルメートなどのフェニルグリオキシレート類、メタロセン類などが挙げられる。
【0035】
ここで言う非水溶性とは、重合開始剤の水に対する溶解量が0.5重量%以下であることを意味する。水に対する溶解性が高いと、得られるヒドロゲルの力学物性が不十分になりやすく、好ましくない。
【0036】
本発明の製造方法においては、エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を、直接基材に塗布してエネルギー線を照射しても良いし、またはゲルと基材との密着性を上げる必要のある場合は、予め基材の上にプライマー(例えば親水性または疎水性ポリマー)層を塗布したり、或いは疎水性のアクリル系モノマーと重合開始剤を含む前記組成物(Y)を基材に塗布し、未硬化のまま、または二重結合がまだ残る程度に半硬化させた状態で、水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物、水媒体及び重合開始剤を含有する前記組成物(X)を塗布して、エネルギー線を照射して全体を重合させるものである。この際、上記水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物、水媒体及び重合開始剤を含有する前記組成物(X)を基材に塗布し、マスクを介してエネルギー線を照射することにより、任意のパターンを持つ防曇性積層体を作ることもできる。
【0037】
基材上に疎水性ポリマー層を形成する場合には、下記の(i)〜(iii)の工程の製造方法により、疎水性ポリマー層とヒドロゲル乾燥体層とが優れた密着性を有する防曇性積層体を得ることができる。
(i)エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を、エネルギー線硬化性の疎水性モノマー(e)及び重合開始剤(f)を含有する組成物(Y)を塗布した基材上に塗布する工程、
(ii)基材上に塗布された組成物(X)の塗膜にエネルギー線を照射して、水膨潤性粘土鉱物(b)の共存下において水溶性のアクリル系モノマー(a)を反応させると共に疎水性モノマーを反応させ、基材上に疎水性ポリマー層及び有機無機複合ヒドロゲル層を形成する工程、
(iii)有機無機複合ヒドロゲル層を乾燥させてゲル乾燥体層とする工程。
【0038】
組成物(Y)中のエネルギー線硬化性の疎水性モノマー(e)は、上記した疎水性ポリマー層を形成できる疎水性モノマーを好ましく使用できる。
【0039】
重合開始剤(f)としては、上記した非水溶性の重合開始剤(d)と同じものを好ましく使用できる。
【0040】
本発明においては、上記非水溶性の重合開始剤(d)を前記水媒体(c)に分散させ、この状態でエネルギー線を照射し重合させることが重要である。この際、重合開始剤(d)を分散させるには溶媒(g)に溶解させた状態で分散させることが好ましい。
【0041】
ここで使用する溶媒(g)としては、非水溶性重合開始剤を溶解できる水溶性の溶剤、または非水溶性重合開始剤を溶解し、且つHLB(親水疎水バランス)値が8以上のアクリル系モノマーを用いることができる。ここのHLB値はデービス式(「界面活性剤−物性・応用・化学生態学」、北原文雄ら編、講談社、p24−27(1979))に従って求められた値である。例えば、トリプロピレングリコールジアクリレートのようなポリプロピレングリコールジアクリレート類、ポリエチレングリコールジアクリレート類、ペンタプロピレングリコールアクリレートのようなポリプロピレングリコールアクリレート類、ポリエチレングリコールアクリレート類、メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートのようなメキシポリエチレングリコールアクリレート類、ノニルフェノキシポリエチレングリコ−ルアクリレート類、ジメチルアクリルアミドのようなN置換アクリルアミド類、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、などが挙げられる。溶媒としてのアクリル系モノマーのHLB値が8以下であると、水媒体への溶解または分散性に優れるため好ましい。これらのアクリル系モノマーは、一種以上を混合して用いることができる。
【0042】
また、溶媒(g)としては、非水溶性重合開始剤(d)を溶解でき、且つ一定以上の水溶性を有する溶剤を用いることができる。ここで言う水溶性を有する溶剤とは、水100gに対し50g以上溶解できる溶剤であることが好ましい。水への溶解性が50g未満であると、非水溶性の重合開始剤の水媒体への分散性が低下し、得られるゲル乾燥体層の力学物性が低い場合があり、望ましくない。
【0043】
例えば、水溶性溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらの溶剤を混合して用いても良い。
【0044】
非水溶性の重合開始剤(d)を溶媒(g)に溶解させた溶液中における非水溶性の重合開始剤(g)と溶媒(g)の重量比/は、0.001〜0.1であることが好ましく、0.01〜0.05が更に好ましい。0.001以上であると、エネルギー線の照射によるラジカルの発生量が十分に得られるため好適に重合反応を進行させることができ、0.1以下であれば、開始剤による発色や、臭気を実質的に生じることがなく、またコストの低減が可能である。
【0045】
これらHLB(親水疎水バランス)値が8以上のアクリル系モノマーおよび水溶性を有する溶剤のいずれを使用する場合においても、非水溶性の重合開始剤(d)を溶媒(g)に溶解させた溶液の組成物(X)中の分散量が、組成物(X)の総重量に対し、0.1重量%〜5重量%であることが好ましく、0.2重量%〜2重量%であることが更に好ましい。0.1重量%以上であると、重合が良好に開始され、また、5重量%以下であると、複合ゲルに参加しないリニアポリマーの生成やゲル中の重合開始剤の増加による臭気の発生が生じにくくなり、更に一旦分散された重合開始剤または重合開始剤と溶媒との溶液の再凝集が生じにくいため好ましい。
【0046】
本発明で力学物性のよいゲル乾燥体層を得るためには、重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液を水媒体に、1μm以下に分散させることが好ましく、0.1μm以下が特に好ましく、0.01μm以下が最も好ましい。1μm以下であると、反応溶液(水媒体)の均一性に優れるため、より均一で透明なヒドロゲルが得られる。
【0047】
本発明に用いられるエネルギー線としては、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光などを用いることができる。中でも装置や取り扱いの簡便さから紫外線を用いることが好ましい。照射する紫外線の強度は10〜500mW/cm2が好ましく、照射時間は一般に0.1秒〜200秒程度である。通常の加熱によるラジカル重合においては、酸素が重合の阻害因子として働くが、本発明では、必ずしも酸素を遮断した雰囲気で溶液の調製およびエネルギー線照射による重合を行う必要がなく、空気雰囲気でこれらを行うことが可能である。但し、紫外線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことによって、更に重合速度を速めることが可能で、望ましい場合がある。
【0048】
本発明における防曇性積層体の製造方法における組成物(X)及び組成物(Y)の塗布方法は、必要に応じて適宜選択することができる。例えば、コーターによる塗布や浸漬や噴霧などの方法が挙げられる。また、ベルト状の支持体を用いることにより、枚葉式または連続して防曇性積層体を製造することができる。
【0049】
本発明により得られた防曇性積層体は、表面のゲル乾燥体層(防曇層)が、広い範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が有機高分子中に均一に分散した均質膜であることから、優れた力学物性(表面硬度)、防曇性及び透明性を有する。さらに、ゲル乾燥体層(防曇層)は基材との密着性に優れており、特にゲル乾燥体層と疎水性ポリマー層とが共有結合で結合されたものは、極めて優れた密着性を有する。また、重合が極短時間で完了でき、且つ均質な膜を形成可能であるため生産効率が非常に高い特徴を持っており、医療や介護用具、各種工業用材料として用いられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
[水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物を含む水媒体の調製]
水溶性のアクリル系モノマーとしてN,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)2g、粘土鉱物としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.8g、水20g、を均一に混合して水媒体(c1)を調製した。
【0052】
[重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液]
溶媒として、ポリオキシプロピレンモノアクリレート「ブレンマーAP−400」(日本油脂株式会社製)98g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)2gを、均一に混合して溶液1を調製した。
【0053】
[有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体の作製]
上記水媒体(c1)全量に、溶液1を50μl入れ、超音波分散機で均一に分散させた後、その溶液を、バーコーターを用い、厚み150μmになるように厚み3mmのガラス板に塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射しN,Nージメチルアクリルアミドを重合させて、有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体(DNC5M1/glass)を作製した。
【0054】
[ゲル乾燥体積層物の作製]
上記有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体(DNC5M1/glass)を80℃の熱風乾燥機で20分間乾燥させて、ゲル乾燥体積層物DNC5M1glassを作製した。
【0055】
[ゲル乾燥体積層物の物性]
上記作製したゲル乾燥体積層物DNC5M1glassが、目視で無色透明であった。鉛筆法で測定した該ゲル乾燥体積層物のゲル乾燥体側の表面硬度がHであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は31°であった。
【0056】
[ゲル乾燥体積層物の防曇性試験]
上記作製したゲル乾燥体積層物DNC5M1glassを、ゲル乾燥体が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間曇らないことを確認した。試験後、ゲル乾燥体の膨潤やガラス板からの剥離はなかった。
【0057】
(実施例2)
[水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物を含む水媒体の調製]
水溶性のアクリル系モノマーとしてNーイソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)2.3g、粘土鉱物としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)1.28g、水20g、を均一に混合して水媒体(c2)を調製した。
【0058】
[重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液]
溶媒として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬工業株式会社製)95g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)5gを、均一に混合して溶液2を調製した。
【0059】
[有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体の作製]
上記水媒体(c2)全量に、溶液2を100μl入れ、超音波分散機で均一に分散させた後、予め接着層として2重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む疎水性のウレタンアクリレート(V−4263、大日本インキ化学工業株式会社製)を厚み約20μmになるように塗布したポリカーボネート板(厚み3mm)に塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射し接着層部分とNーイソプロピルアクリルアミドを重合させて、有機無機複合ヒドロゲル/接着層/基材複合体(NNC8M1/PC)を作製した。
【0060】
[ゲル乾燥体積層物の作製]
上記有機無機複合ヒドロゲル/接着層/基材複合体(NNC8M1/PC)を80℃の熱風乾燥機で20分間乾燥させて、ゲル乾燥体積層物NNC8M1PCを作製した。
【0061】
[ゲル乾燥体積層物の物性]
上記作製したゲル乾燥体積層物NNC8M1PCが、目視で無色透明であった。鉛筆法で測定した該基材のゲル乾燥体側の表面硬度がHであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は30°であった。
【0062】
[ゲル乾燥体積層物の防曇性試験]
上記作製したゲル乾燥体積層物NNC8M1PCを、ゲル乾燥体が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間曇らないことを確認した。試験後、ゲル乾燥体の膨潤やPC板からの剥離はなかった。
【0063】
(実施例3)
[水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物を含む水媒体の調製]
水溶性のアクリル系モノマーとしてアクリロイルモルホリン(株式会社興人製)2.8g、粘土鉱物としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)1.6g、水20g、を均一に混合して水媒体(c3)を調製した。
【0064】
[重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液]
溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬工業株式会社製)95g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)5gを、均一に混合して溶液3を調製した。
【0065】
[有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体の作製]
上記水媒体(c3)全量に、溶液3を80μl入れ、ミキサーで溶液を均一に混合した後、その溶液を、バーコーターを用い、厚み150μmになるように厚み200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートに塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射しアクリロイルモルホリンを重合させて、有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体(ACMONC10M1/PET)を作製した。
【0066】
[ゲル乾燥体積層物の作製]
上記有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体(ACMONC10M1/PET)を80℃の熱風乾燥機で20分間乾燥させて、ゲル乾燥体積層物ACMONC10M1PET を作製した。
【0067】
[ゲル乾燥体積層物の物性]
上記作製した有機無機複合ゲル乾燥体積層物ACMONC10M1PETが、目視で無色透明であった。鉛筆法で測定した該基材のゲル乾燥体側の表面硬度が2Hであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は33°であった。
【0068】
[ゲル乾燥体積層物の防曇性試験]
上記作製した有機無機複合ゲル乾燥体積層物ACMONC10M1PETを、ゲル乾燥体が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間曇らないことを確認した。試験後、ゲル乾燥体の膨潤やPC板からの剥離はなかった。
【0069】
(比較例1)
[アクリル系モノマー組成物の調製]
メチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)4.5g、ブチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)3.5g、ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製)1g、アクリル酸(和光純薬工業株式会社製)0.3g、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)0.2g、2−プロパノール(和光純薬工業株式会社製)10g、を均一に混合してアクリル系モノマー組成物AC1を調製した。
【0070】
[粘土鉱物分散液の調製]
粘土鉱物(B)としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.4gを、2−プロパノール(和光純薬工業株式会社製)4.8gと水4.8gの混合溶液に分散して、粘土鉱物分散液1を調製した。
【0071】
[防曇組成物の調製]
上記調製したアクリル系モノマー組成物AC1 0.2g、粘土鉱物分散液1 5g、2−プロパノール20g、水30g、を均一に混合して防曇組成物1を調製した。
【0072】
[防曇塗膜の作製]
上記防曇組成物1を、塗布厚10μmのバーコーターを用いてガラス板に塗布し、90℃の熱風乾燥機中で10分間加熱乾燥し、防曇塗膜を作製した。
【0073】
[防曇塗膜の物性]
上記作製した防曇塗膜が、目視で白く濁っていた。これはクレイが水と2−プロパノールの混合液には溶解しなかったためであった。鉛筆法で測定した該防曇塗膜の表面硬度がBであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は32°であった。
【0074】
[防曇塗膜の防曇性試験]
上記作製した防曇塗膜を、塗膜が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間曇ることを確認した。試験後、塗膜の膨潤やガラス板からの剥離はなかった。
【0075】
(比較例3)
[水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物を含む水媒体の調製]
水溶性のアクリル系モノマーとしてN,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)2g、粘土鉱物としてLaponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.5g、水50g、を均一に混合して水媒体(c3’)を調製した。
【0076】
[重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液]
溶媒として、ポリオキシプロピレンモノアクリレート「ブレンマーAP−400」(日本油脂株式会社製)98g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)2gを、均一に混合して溶液3’を調製した。
【0077】
[有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体の作製]
上記水媒体(c3’)全量に、溶液1を150μl入れ、超音波分散機で均一に分散させた後、その溶液を、バーコーターを用い、厚み10μmになるように厚み3mmのガラス板に塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射しN,Nージメチルアクリルアミドを重合させて、有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体を作製した。
【0078】
[ゲル乾燥体積層物の作製]
上記有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体を80℃の熱風乾燥機で20分間乾燥させて、ゲル乾燥体積層物を作製した。該ゲル乾燥体層の厚みは約0.5μmであった。
【0079】
[ゲル乾燥体積層物の物性]
上記作製したゲル乾燥体積層物が、目視で無色透明であった。鉛筆法で測定した該ゲル乾燥体積層物のゲル乾燥体側の表面硬度がBであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は42°であった。
【0080】
[ゲル乾燥体積層物の防曇性試験]
上記作製したゲル乾燥体積層物を、ゲル乾燥体が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間静置したところ、ゲル乾燥体層側がやや曇った。試験後、ゲル乾燥体の膨潤やガラス板からの剥離はなかった。
【0081】
(比較例4)
予め接着層として2重量%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含む疎水性のウレタンアクリレート(V−4263、大日本インキ化学工業株式会社製)を厚み約20μmになるように塗布したガラス板(厚み3mm)の上で、厚み約4mm、幅約5mmのシリコーン板で囲いを作り、その中に実施例1の水溶性のアクリル系モノマー、水膨潤性粘土鉱物を含む水媒体c1を流し込み(厚み約4mm)、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射し接着層部分とN,Nージメチルアクリルアミドを重合させて、有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体を作製した。
【0082】
上記有機無機複合ヒドロゲル/基材複合体を80℃の熱風乾燥機で20分間乾燥させて、ゲル乾燥体積層物を作製した。該ゲル乾燥体層の厚みは約550μmであった。
【0083】
[防曇塗膜の物性]
上記作製した防曇塗膜は、四週がやや厚く、中央部分がやや薄く、厚みがやや均一ではなかった。ゲル乾燥体の周辺部分にガラス板からやや剥離したところが見られた。鉛筆法で測定した該防曇塗膜の表面硬度がHであった。接触角測定装置(CA−X200型、協和界面科学株式会社製)を用いて測定した結果、水接触角は30°であった。
【0084】
[ゲル乾燥体積層物の防曇性試験]
上記作製したゲル乾燥体積層物を、ゲル乾燥体が下向きになるよう、60℃の熱水を100ml入れた200mlビーカーの上にかぶせ、1分間曇らないことを確認した。試験後、吸湿によるゲル乾燥体の膨潤やガラス板からの剥離はなかった。
【0085】
上記実施例及び比較例から明らかなように、本発明の防曇性積層体は、ゲル乾燥体層(防曇層)が均質であり、優れた力学物性や防曇性及び透明性を有し、且つゲル乾燥体層と基材との間の密着性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機ポリマー(A)と、水膨潤性粘土鉱物(B)とが三次元網目を形成してなり、厚さが1〜500μmの範囲にある透明ゲル乾燥体層を基材表面に有する防曇性積層体。
【請求項2】
前記透明ゲル乾燥体層がエネルギー線の照射により重合されたものである請求項1に記載の防曇性積層体。
【請求項3】
前記基材が、表面に疎水性ポリマー層が形成された基材である請求項1又は2に記載の防曇性積層体。
【請求項4】
前記基材が透明である請求項1〜3のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項5】
前記透明ゲル乾燥体層の表面鉛筆硬度がHB以上である請求項1〜4のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項6】
前記透明ゲル乾燥体層表面の水との接触角が40°以下である請求項1〜5のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項7】
前記水溶性有機ポリマー(A)が、水溶性のアクリル系モノマーからなるポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項8】
前記水溶性有機ポリマー(A)が、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一種からなるポリマーである請求項1〜7のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項9】
前記水溶性の有機ポリマー(A)が、下記式(1)〜(6)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式(1)〜(6)中、Rは水素原子またはメチル基、R,Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素原子数1〜2のアルキル基である。nは1〜9である。)
から選ばれる少なくとも一種からなるポリマーである請求項1〜8のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項10】
前記水膨潤性粘土鉱物(B)が、水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、及び水膨潤性合成雲母から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜9のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項11】
前記透明ゲル乾燥体層中の水溶性有機ポリマー(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との重量比(A)/(B)が、0.01〜10の範囲にある請求項1〜10のいずれかに記載の防曇性積層体。
【請求項12】
下記工程を有する防曇性積層体の製造方法。
(I)エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を基材上に塗布する工程、
(II)基材上に塗布された組成物(X)の塗膜にエネルギー線を照射して、水膨潤性粘土鉱物(b)の共存下において水溶性のアクリル系モノマー(a)を反応させ、基材上に有機無機複合ヒドロゲル層を形成する工程、
(III)有機無機複合ヒドロゲル層を乾燥させてゲル乾燥体層とする工程。
【請求項13】
下記工程を有する防曇性積層体の製造方法。
(i)エネルギー線硬化性の水溶性有機モノマー(a)、水膨潤性粘土鉱物(b)、水媒体(c)及び非水溶性の重合開始剤(d)を含有する組成物(X)を、エネルギー線硬化性の疎水性モノマー(e)及び重合開始剤(f)を含有する組成物(Y)を塗布した基材上に塗布する工程、
(ii)基材上に塗布された組成物(X)の塗膜にエネルギー線を照射して、水膨潤性粘土鉱物(b)の共存下において水溶性のアクリル系モノマー(a)を反応させると共に疎水性モノマーを反応させ、基材上に疎水性ポリマー層及び有機無機複合ヒドロゲル層を形成する工程
(iii)有機無機複合ヒドロゲル層を乾燥させてゲル乾燥体層とする工程。
【請求項14】
前記組成物(X)中の非水溶性の重合開始剤(d)が、溶媒(g)に溶解させた後、水媒体(c)中に分散させたものである請求項12又は13に記載の防曇性積層体の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒(g)が、非水溶性の重合開始剤を溶解し、且つHLB値が8以上のアクリル系モノマーである請求項12〜14に記載の防曇性積層体の製造方法。
【請求項16】
前記溶媒(g)が、非水溶性の重合開始剤を溶解できる水溶性溶剤である請求項14に記載の防曇性積層体の製造方法。
【請求項17】
前記非水溶性の重合開始剤(d)を溶媒(g)に溶解させた溶液中における非水溶性の重合開始剤(d)と溶媒(g)の重量比(d)/(g)が、0.001〜0.1の範囲にある請求項12〜16のいずれかに記載の防曇性積層体の製造方法。
【請求項18】
前記組成物(X)中の、非水溶性の重合開始剤(d)を溶媒(g)に溶解させた溶液の分散量が、組成物(X)の総重量に対し、5重量%以下の範囲である請求項12〜17のいずれかに記載の防曇性積層体の製造方法。
【請求項19】
前記非水溶性の重合開始剤(d)を溶媒(g)に溶解させた溶液を水媒体中に分散させる際の分散径を1μm以下とする請求項12〜18のいずれかに記載の防曇性積層体の製造方法。

【公開番号】特開2006−168033(P2006−168033A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361221(P2004−361221)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】