説明

防曇性被膜形成塗布液、防曇性被膜及び防曇性被膜の形成方法

【課題】 防曇性ウレタン樹脂を利用し、さらに硬度及び耐摩耗性を向上させた防曇性被膜、該防曇性被膜を形成するための防曇性被膜形成用塗布液を提供する。
【解決手段】
三種の調製用原料より調製される防曇性被膜形成用塗布液であって、上記三種の調製用原料は、イソシアネート基を有するイソシアネート成分と数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオールとの反応生成物(A)を含む原料(I)、複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)、及び、金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)からなり、反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する反応生成物(A)の割合は、25〜40重量%、加水分解重縮合物(B)の割合は、21〜50重量%、金属酸化物超微粒子(C)の割合は、25〜45重量%であり、前記複数の酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するテトラアルコキシシラン(b1)の割合は、14〜27重量%、アルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)の割合は、14〜27重量%、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含むトリアルコキシシラン(b3)の割合は、46〜72重量%であることを特徴とする防曇性被膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性被膜形成塗布液、防曇性被膜及び防曇性被膜の形成方法に関する。特には、エアコンディショナー等の湿度を制御可能な機構を有する室内、例えば、自動車の室内を形成する空間用の窓ガラスとして好適に使用することが可能な防曇性被膜形成塗布液、該防曇性被膜形成塗布液を用いた防曇性被膜の形成方法、及び、該方法により形成された防曇性被膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス等の透明基材は、車両用窓ガラス、建築用窓ガラス、レンズ、ゴーグル等に使用されている。しかし、ガラスを高湿の場所又は温度差の大きい境界で使用した場合、曇りが発生する。曇りが発生するのは、ガラスが雰囲気中の露点以下の温度になった場合であり、雰囲気中の水蒸気が凝縮して表面に結露が生じ、結露した水滴により光の散乱が起こるためである。例えば、湿度の高い梅雨時、温度の低い冬季に車両を走行させた場合、窓の曇り発生は、不可避であり、視界を確保するために、窓に温風、冷風等の除湿風を送風し、乾燥状態とすることが通常行われている。
【0003】
従って、窓の視界確保のために消費されるエネルギーは大きいものとなり、車両の燃費特性向上の妨げとなっていた。特に、室内外の温度差が激しくなる冬季、中でも、氷点下環境になりうる寒冷地では、窓の視界確保のために消費されるエネルギーは、さらに大きくなってしまう。
【0004】
また、乾燥状態とすることによる車両室内の不快感が増大する等の問題もあり、これら問題を低減できる窓ガラス、すなわち防曇性物品を提供することは、環境、人にやさしい車両のためには必要不可欠である。さらには、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の電気車両では、益々防曇性被膜の必要性が高まるものと予想される。
【0005】
車両用の防曇ガラスとして、特許文献1では、紫外線低透過ガラスに有機系防曇性材料を含む組成物が塗布されてなる防曇性車両用ガラスが開示されている。また、特許文献2では、室内面にアルミナを含有する親水層を設け、水との接触角が30°以下とされた車両用ウィンドウガラスが開示されている。
【0006】
特許文献3は、氷点下環境になりうる寒冷地でも窓の視界確保を容易にせしめる車両用窓に適した防曇性被膜を提案している。該防曇ガラスでは、親水性と吸水性とを有する防曇性ウレタン樹脂による被膜が使用されている。そして、その防曇性は、被膜の吸水により先ず防曇性を発現せしめ、吸水飽和後には被膜の親水性によって防曇性を継続させるように設計されている。また、ウレタン樹脂固有の弾性により耐擦傷性も優れたものとなっている。そしてさらに、被膜の硬度等を高いものとする好適な形態として、金属酸化物微粒子又はシランカップリング剤を有する被膜を開示している。
【0007】
特許文献4は、加水分解性シリル基を有する親水性ポリウレタン、すなわち防曇性ウレタン樹脂を開示しており、加水分解性シリル基と他の加水分解性シリル基とを水分を用いて架橋させることで、表面強度が改善された被膜を提供している。
【特許文献1】特開2000−239045号公報
【特許文献2】特開2003−321251号公報
【特許文献3】特開2005−029723号公報
【特許文献4】特開2000−63470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、防曇性ウレタン樹脂を利用し、さらに硬度及び耐摩耗性を向上させた防曇性被膜、該防曇性被膜を形成するための防曇性被膜形成用塗布液、及び、該防曇性被膜形成用塗布液を用いた防曇性被膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防曇性被膜形成用塗布液は、
三種の調製用原料より調製される防曇性被膜形成用塗布液であって、
上記三種の調製用原料は、
イソシアネート基を有するイソシアネート成分と数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオールとの反応生成物(A)を含む原料(I)、
複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)、及び、
金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)からなり、
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する反応生成物(A)の割合は、25〜40重量%、加水分解重縮合物(B)の割合は、21〜50重量%、金属酸化物超微粒子(C)の割合は、25〜45重量%であり、
前記複数の酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するテトラアルコキシシラン(b1)の割合は、14〜27重量%、アルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)の割合は、14〜27重量%、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含むトリアルコキシシラン(b3)の割合は、46〜72重量%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の防曇性被膜は、
上記防曇性被膜形成用塗布液を用いて基材上に形成された防曇性被膜であって、
該防曇性被膜中では反応生成物(A)と加水分解重縮合物(B)とが化学的結合を形成しており、該化学的結合は、上記反応生成物(A)に残存していたイソシアネート基と、上記加水分解重縮合物(B)中に存在していたエポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種とから形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の防曇性被膜の形成方法は、
上記防曇性被膜の形成方法であって、
反応生成物(A)を含む原料(I)、加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)、及び、金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)を混合して防曇性被膜形成用塗布液を得る工程、
該防曇性被膜形成用塗布液を基材上に塗布する工程、及び、
上記基材上に塗布された塗布層を加熱する工程
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防曇性被膜形成塗布液から形成される防曇性被膜は、被膜の吸水による防曇性及び耐塵耗性に優れ、膜硬度も高いため、長期使用に耐えることができる。また、水膜の形成に頼らなくても防曇性を発現させることが可能なので、特に、自動車用の窓に好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の防曇性被膜形成用塗布液は、三種の調製用原料より調製される防曇性被膜形成用塗布液であり、三種の調製用原料は、反応生成物(A)25〜40重量%を含む原料(I)、加水分解重縮合物(B)21〜50重量%を含む原料(II)、及び、金属酸化物超微粒子(C)25〜45重量%を含む原料(III)からなる。
なお、反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)は、その合計100重量%に対して、それぞれ上記した重量割合になるように三種の調製用原料を加え、防曇性被膜形成用塗布液を調製する。また、上記割合は、反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を意味する。
【0014】
まず、本発明の防曇性被膜の作用・効果について、詳しく説明する。
反応生成物(A)は、イソシアネート基を有するイソシアネート成分と数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオールとの反応生成物(A)であり、ウレタン結合を有するとともに、未反応のイソシアネート基を有し、形成された防曇性被膜に吸水性、すなわち防曇性をもたらす役割を果たす。
【0015】
加水分解重縮合物(B)は、複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物(B)であり、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含んでおり、これらの基は、反応生成物(A)中の未反応のイソシネート基と反応することが可能であるので、反応生成物(A)と結合しうる。
【0016】
このように、本発明の防曇性被膜形成用塗布液(以下、塗布液ともいう)から形成される被膜は、反応生成物(A)と加水分解重縮合物(B)との化学的な結合を有するとともに、反応生成物(A)と加水分解重縮合物(B)とで形成される架橋構造を有しており、加水分解重縮合物(B)は、被膜の硬度を向上させる役割を果たしている。すなわち、加水分解重縮合物(B)の割合が増加するに従い、被膜の耐摩耗性が向上する傾向がある。
尚、エポキシ基は、加水分解により、開環して水酸基(−OH基)を形成し、この開環された基がイソシネート基と反応する。
【0017】
また、金属酸化物超微粒子(C)も被膜の硬度を向上させる役割を果たしており、金属酸化物超微粒子(C)の割合が増加するに従い、被膜の耐摩耗性が向上する傾向がある。
【0018】
吸水性樹脂を防曇性被膜に適用しようとした場合、二律背反の関係が生じやすく、防曇性と膜硬度の双方を向上させることは難しいとされてきた。その理由は、本発明のようなタイプの防曇性被膜は、ポリウレタン結合を有する高分子の吸水性で防曇性を発現させており、防曇性被膜の硬度を向上させようと無機成分の含有量を増加させると、相対的に吸水性をもたらす成分が減少するからである。
【0019】
防曇性被膜を構成する反応生成物(A)は、被膜が吸水した際に、吸水性ポリオールを構成するオキシアルキレン鎖が、直線状の構造から曲がりくねった構造のメアンダー型構造へと構造変化が生じるものと考えられ、反応生成物(A)と化学的に結合させる無機成分の導入にあたって、この構造変化を阻害することのない加水分解縮合物を導入できれば、被膜の防曇性と硬度とを両立せしめることができると考えられる。
【0020】
本発明の防曇性被膜を形成する際には、上述した反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)を上述した比率で用い、かつ、加水分解縮合物(B)を形成する各種アルコキシシランとして、テトラアルコキシシラン(bl)、アルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含むトリアルコキシシラン(b3)を用いることにより、オキシアルキレン鎖の直線状構造から曲がりくねった構造への構造変化が阻害されることがなく、被膜の防曇性と硬度とを両立せしめることができたのではないかと考えられる。
【0021】
すなわち、加水分解縮合物(B)を形成する成分を、緻密なシロキサンネットワークを形成するテトラアルコキシシラン(b1)、ある程度疎で、空間的な隙間を持つシロキサンネットワークを形成するアルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)(以下、トリアルコキシシラン(b2)ともいう)、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含むトリアルコキシシラン(b3)(以下、トリアルコキシシラン(b3)ともいう)の量を選択的に調製することで、反応生成物(A)の吸水時の構造変化が阻害されなくなったのではないかと考えられる。
【0022】
また、塗布液を基板上に塗布した後に固化された防曇性被膜を得る際に、加水分解縮合物(B)の部分には、収縮が生じうる。そのため、被膜形成過程中、加水分解縮合物(B)には応力が発生しうるが、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)由来の成分により発生する応力が緩和されるため、本発明の塗布液からは、例えば、100μmといった厚い防曇性被膜を形成しても収縮時に大きな応力は作用しにくく、特性に優れた防曇性被膜を形成することができると考えられる。
【0023】
次に、三種の調製用原料について説明する。
まず、反応生成物(A)、及び、反応生成物(A)を含む原料(I)を調製する方法について説明する。
反応生成物(A)は、イソシアネート基を有するイソシアネート成分と数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオールとの反応生成物である。
【0024】
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する反応生成物(A)の割合は、25〜40重量%であるが、28〜38重量%が好ましく、30〜34重量%がより好ましい。
反応生成物(A)の割合が25重量%未満であると、形成される防曇性被膜の防曇性が不充分となりやすく、一方、反応生成物(A)の割合が40重量%を超えると、形成される防曇性被膜の硬度が不足しやすくなる。
【0025】
上記イソシアネート成分としては、例えば、有機ジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを出発原料としたビウレット、イソシアヌレート構造を有する3官能のポリイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は、耐候性、耐薬品性、耐熱性を有し、特に耐候性に優れている。また、上記化合物以外イソシアネート成分としては、例えば、ジイソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(メチルシクロヘキシル)ジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
上記吸水性ポリオールとしては、例えば、オキシエチレン鎖を有するポリオールが挙げられ、上記ポリオールのなかでは、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖を有するものが好ましく、特には、水を結合水として吸収する能力に特に優れるポリエチレングリコールが好ましい。
【0027】
本発明の吸水性ポリオールの数平均分子量は、400〜5000である。数平均分子量が400未満の場合は、水を結合水として吸収する能力が低くなり、数平均分子量が5000を超える場合は、被膜の強度が低下しやすくなる。吸水性と膜硬度を考慮すると、該数平均分子量は、400〜2000とすることが好ましい。
【0028】
また、反応生成物(A)の吸水性を阻害させない程度に、疎水性ポリオールとしてポリエステルポリオール等のポリオールを使用して反応生成物(A)を形成させてもよい。
さらに、被膜の親水性も活用して防曇性発揮させる用途、例えば、被膜が建築用窓ガラス、鏡、眼鏡レンズ、ゴーグル等の用途に使用させることもありえる。これら用途向けの場合、反応生成物(A)に親水性を付与させてもよい。そして、この目的のためには、界面活性剤が反応性生成物(A)に導入されうる。
【0029】
そして、界面活性剤が防曇性被膜から溶出しないようにするためには、樹脂架橋と結合した状態とすることが好ましい。樹脂架橋と結合した状態とするために、反応性基含有の界面活性剤とすることが好ましい。該反応性基を、水酸基、アミノ基、メルカプト基等とすると、反応性基がイソシアネート基と反応し、界面活性剤を樹脂架橋と化学的に結合させることができる。また、界面活性剤にイソシアネート基を設け、吸水性ポリオールと反応させてもよい。
【0030】
反応生成物(A)を含む原料(I)を調製する際には、イソシアネート基を有するイソシアネート成分、数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオール、有機溶媒、及び、硬化触媒を所定量配合し、よく攪拌することにより混合を行う。これにより、塗布液(I)(原料(I))が調製される。
【0031】
攪拌のための時間は、10分から20日が好ましく、特に2時間から5時間が好ましいが、室温以外で攪拌するときはこれに限定されるわけではない。また、加熱することで、反応を促進させ、攪拌時間を短くすることも可能である。攪拌の際の液温は、15〜80℃が好ましい。
【0032】
上記イソシアネート成分に存在するイソシアネート基の数は、吸水性ポリオール成分に存在する水酸基の数に対して、0.5倍量〜3倍量が好ましく、0.8倍量〜1.2倍量がより好ましい。イソシアネート成分0.5倍量未満の場合は、塗布液の硬化性が悪化するとともに、形成された膜は軟らかく、また、被膜を長期間放置すると、吸水性ポリオールが溶出する。一方、3倍量を超える場合は、過剰硬化により、水蒸気の吸脱水が阻害されるために防曇性が低下する。
【0033】
有機溶媒は、イソシアネート基に対して活性のない溶媒である必要があり、反応生成物(A)との相溶性の観点から、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジアセトンアルコール等が好ましい。
有機溶媒の配合量は、反応生成物(A)100重量部に対して100〜400重量部が好ましい。
【0034】
硬化触媒は被膜の硬化速度を速くするために添加しており、硬化触媒としては、例えば、有機錫化合物が挙げられる。該化合物としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫マーカブチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカブチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等が挙げられる。
硬化触媒の配合量は、反応生成物(A)100重量部に対して0.01〜0.2重量部が好ましい。
【0035】
このように、イソシアネート基を有するイソシアネート成分、数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオール、有機溶媒、及び、硬化触媒を所定量配合し、よく攪拌を行うことにより、反応生成物(A)を含む塗布液(I)(原料(I))を得ることができる。
【0036】
反応生成物(A)を含む原料(I)中では、イソシアネート成分と吸水性ポリオールとが反応することによりウレタン結合が形成されて高分子となるが、一部未反応のイソシアネート基が存在しており、イソシアネート基の量が少ない場合には、水酸基も存在している。
【0037】
次に、複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物(B)、及び、該加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)の調製方法について説明する。
【0038】
加水分解重縮合物(B)は、複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物であり、反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する加水分解重縮合物(B)の割合は、25〜50重量%であるが、25〜45重量%が好ましく、32〜36重量%がより好ましい。
加水分解重縮合物(B)の割合が25重量%未満であると、形成される防曇性被膜の硬度が不足しやすくなり、一方、加水分解重縮合物(B)の割合が50重量%を超えると、形成される防曇性被膜の硬度は充分であるが、防曇性が低下しやすくなる。
【0039】
また、酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するテトラアルコキシシラン(b1)の割合は、14〜27重量%であるが、17〜25重量%が好ましく、19〜23重量%がより好ましい。
テトラアルコキシシラン(b1)の割合が14重量%未満であると、形成される防曇性被膜の硬度が不足しやすくなり、一方、テトラアルコキシシラン(b1)の割合が27重量%を超えると、形成される防曇性被膜緻密になりすぎるため、防曇性が低下しやすくなる。
【0040】
テトラアルコキシシラン(b1)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0041】
酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するトリアルコキシシラン(b2)の割合は、14〜27重量%であるが、17〜25重量%が好ましく、19〜23重量%がより好ましい。
トリアルコキシシラン(b2)の割合が14重量%未満であると、可撓性が充分となりにくく、形成される防曇性被膜の防曇性が低下しやすくなり、一方、トリアルコキシシラン(b2)の割合が27重量%を超えると、形成される防曇性被膜の防曇性は確保されるが、硬度が不足しがちになる。
【0042】
トリアルコキシシラン(b2)としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0043】
酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するトリアルコキシシラン(b3)の割合は、46〜72重量%であるが、50〜67重量%が好ましく、56〜60重量%がより好ましい。
トリアルコキシシラン(b3)の割合が46重量%未満であると、形成される防曇性被膜の防曇性が低下しやすくなり、一方、トリアルコキシシラン(b3)の割合が72重量%を超えると、形成される防曇性被膜の防曇性は確保されるが、硬度が不足しがちになる。
【0044】
トリアルコキシシラン(b3)としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−オキセタニルプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
酸化ケイ素前駆体(b)の組み合わせとしては、(b1)として、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリメトキシシラン(b2)として、メチルトリエトキシシラン(MTES)、トリメトキシシラン(b3)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)が望ましく、このような酸化ケイ素前駆体(b)を用いることにより、耐摩耗性に優れ、低温焼成が可能な防曇性被膜を形成することができる。
【0046】
加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)を調製する際には、テトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)、有機溶媒、及び、酸触媒を所定量配合し、よく攪拌することにより混合を行う。これにより、塗布液(II)(原料(II))が調製される。
【0047】
前記攪拌のための時間は、10分から20日が好ましく、特に1時間から4日が好ましいが、室温以外で攪拌する場合はこれに限定されるわけではない。また、加熱することで、反応を促進させ、攪拌時間を短くすることが可能である。攪拌の際の液温は、15〜80℃が好ましい。
【0048】
有機溶媒としては、反応生成物(A)と混合した際に不都合が発生しないよう、イソシアネート基に対して活性のない溶媒にする必要があり、また、加水分解重縮合物(B)との相溶性から、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジアセトンアルコールが好ましい。
有機溶媒の配合量は、加水分解重縮合物(B)100重量部に対して100〜900重量部が好ましい。
【0049】
酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、フタル酸、コハク酸などの有機酸等が選択される。そして、それらは0.0001N〜10N水溶液に調製されて添加されることが好ましい。
硬化触媒の配合量は、加水分解重縮合物(B)100重量部に対して1〜10重量部が好ましい。
【0050】
このようにテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)、有機溶媒、及び、酸触媒を所定量配合し、より攪拌して混合することにより、加水分解重縮合物(B)を含む塗布液(II)(原料(II))を得ることができる。
【0051】
次に、金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)について説明する。
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する金属酸化物超微粒子(C)の割合は、25〜45重量%であるが、30〜40重量%が好ましく、32〜36重量%がより好ましい。
金属酸化物超微粒子(C)の割合が25重量%未満であると、形成される防曇性被膜の硬度が不足しやすくなり、一方、金属酸化物超微粒子(C)の割合が40重量%を超えると、形成される防曇性被膜の硬度は充分であるが、防曇性が低下しやすくなる。
【0052】
金属酸化物超微粒子(C)としては、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、酸化ニオブ、酸化タンタル等が挙げられる。
【0053】
金属酸化物超微粒子(C)は、その平均粒径が200nm以下、好適には100nm以下のものを使用することが好ましい。一般的に、ある光の波長のちょうど半分前後の粒径の粒子において、その散乱が最大になるといわれている。そのため、金属酸化物超微粒子の平均粒径は可視光線の最短波長である400nmの半分である200nm以下、より好ましくは100nm以下とすることが好ましい。平均粒径は、「JIS H7804」に準拠した方法で測定される。
【0054】
金属酸化物超微粒子(C)は分散媒中に分散された状態で供されることが望ましく、通常、塗布液(III)(原料(III))として、金属酸化物超微粒子(C)が分散媒中に分散された状態のものを用いるが、金属酸化物超微粒子(C)の粉末をそのまま用いることもできる。該分散媒には、イソシアネート基に対して活性のない分散媒が使用されることが好ましく、特に、塗布液との相溶性を考慮すると、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジアセトンアルコールを主成分とする分散媒が好ましい。
有機溶媒の配合量は、金属酸化物超微粒子(C)100重量部に対して100〜900重量部が好ましい。
【0055】
本発明の防曇性被膜の形成方法について説明する。
本発明の防曇性被膜の形成方法は、
反応生成物(A)を含む塗布液(I)(原料(I))、加水分解重縮合物(B)を含む塗布液(II)(原料(II))、及び、金属酸化物超微粒子(C)を含む塗布液(III)(原料(III))を混合して防曇性被膜形成用塗布液を得る工程、
該防曇性被膜形成用塗布液を基材上に塗布する工程、及び、
前記基材上に塗布された塗布層を加熱する工程
を含むことを特徴とする。
【0056】
まず、防曇性被膜形成用塗布液を得る工程、すなわち、防曇性被膜を形成するための塗布液の調製方法について説明する。
塗布液は、上記のようにして反応生成物(A)を含む塗布液(I)、加水分解重縮合物(B)を含む塗布液(II)、及び、金属酸化物超微粒子(C)を含む塗布液(III)を所定量配合し、攪拌してこれらをよく混合することにより得られる。
【0057】
前記攪拌のための時間は、10分から20日が好ましく、特に30分から2時間が好ましいが、室温以外で攪拌する場合はこれに限定されるわけではない。また、加熱することで、反応を促進させ、攪拌時間を短くすることが可能である。攪拌の際の液温は、15〜80℃が好ましい。
攪拌方法は、特に限定されるものではないが、例えば、攪拌羽根を用いた攪拌、スタティックミキサー等のミキサーを用いた攪拌等が挙げられる。
【0058】
次に、防曇性被膜形成用塗布液を基材上に塗布する工程について説明する。
塗布液の透明基材への塗布手段としては、例えば、スピンコート、ディップコート、フローコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段を採用することができる。
【0059】
基材としては、例えば、板ガラスが挙げられる。上記板ガラスは、自動車用、建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラスであり、製法は特に問わず、フロート法、デュープレックス法、ロールアウト法等のいずれの方法により得られたものであってもよい。
【0060】
ガラス種としては、例えば、クリアをはじめグリーン、ブロンズ等の各種着色ガラスやUV、IRカットガラス、電磁遮蔽ガラス等の各種機能性ガラス、網入りガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス等防火ガラスに供し得るガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合わせガラスのほか複層ガラス等、さらには平板、曲げ板等各種ガラス製品が挙げられる。
【0061】
板厚は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0mm以上10mm以下が好ましく、車両用としては1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。基材への防曇性被膜の形成は、基材の片面だけとすることが好ましいが、用途によっては両面に行ってもよい。又、被膜の形成は基材面の全面でも一部分であってもよい。
【0062】
ガラス基材に塗布液を塗布して被膜を形成する場合、基材と被膜との密着性を向上させるためにシランカップリング剤を有する液を前記塗布液の塗布前に塗布しておくことが好ましい。適切なシランカップリング剤には、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を使用することが可能である。
【0063】
透明基材としては、上記板ガラス以外に、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリカーボネート等の樹脂板等も使用することができる。
【0064】
次に、基材上に塗布された塗布層を加熱する工程について説明する。
加熱条件としては、50〜200℃、5分〜1時間の加熱が好ましい。加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ブロワー等を用いて熱風を吹き付けてもよいが、通常、加熱炉に搬入することにより行う。
上記加熱工程で、より架橋が進行するとともに、縮合も進行し、上記した特性を有する本発明の防曇性被膜が形成される
【0065】
本発明の防曇性被膜は、吸水性で防曇性を発現させるため、防曇性被膜の膜厚と防曇性との間には相関性が生じやすく、良好な防曇性を得るためには、防曇性被膜は、ある程度の膜厚、例えば、3μm〜100μmを有することが好ましい。該防曇性被膜の厚さは、4〜70μmがより好ましく、5〜60μmがさらに好ましい。
【0066】
本発明の防曇性被膜は、最初に説明したとおりの構造を有しており、そのため、耐摩耗性に優れ、膜硬度も高く、長期使用に耐えることができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例で得られた防曇性組成物に対し、以下に示す方法により品質評価を行った。
【0068】
〔外観評価〕:防曇性被膜の外観、透過性、クラックの有無を目視で評価し、問題ないものを合格(○)、問題のあったものを不合格(×)とした。
〔防曇性〕:25℃、60%RHの環境下でサンプルを12時間保持し、サンプル表面に息を吹きかけ、息を吹きかけても曇らない場合を合格(○)、息を吹きかけると曇りが発生した場合を不合格(×)とした。
【0069】
〔耐テーバー摩耗性〕:摩耗輪としてCF−10Fを使用して荷重4.9Nで100回実施した時の曇化変化を測定し、曇化変化ΔH≦4%のものを合格(○)、ΔH>4%のものを不合格(×)とした。
【0070】
〔耐トラバース摩耗性〕:膜表面に荷重4.9N/4cmでネル(綿300番)を5000往復させた時の外観と呼気防曇性を測定し、異常なきものを合格(○)、異常があったものを不合格(×)とした。
【0071】
〔鉛筆硬度〕:「JIS K5600」塗料一般試験方法に準拠して行い、傷跡が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。該鉛筆硬度は耐擦傷性の指標とすることができる。
【0072】
実施例1
(反応生成物(A)を有する塗布液(I)の調製)
イソシアネート基を有するイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプポリイソシアネート(商品名「N3200」、住友バイエルウレタン製)と平均分子量1000のポリエチレングリコールを用いた。イソシアネート成分に存在するイソシアネート基の数を、ポリエチレングリコールに存在する水酸基の数に対して、0.9倍量となるように、ポリエチレングリコールを27g、N3200を8gに添加混合し、(A)の総量が35重量%となるように溶媒としてメチルエチルケトンを添加混合し、塗布液(I)を調製した。
【0073】
(加水分解重縮合物(B)を有する塗布液(II)の調製)
テトラアルコキシシラン(b1)としてテトラエトキシシラン(TEOS)、アルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)としてメチルトリエトキシシラン(MTES)、エポキシ基又はメルカプト基若しくはアミノ基を含むトリアルコキシシラン(b3)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)を用いた。TEOS:12g、MTES:9g、GPTMS:16g、0.5N酢酸:27gを添加混合し、固形分濃度が17.5重量%となるように溶媒としてメチルエチルケトンを添加混合し、塗布液(II)を調製した。
【0074】
(塗布液の調製)
塗布液(I)、塗布液(II)、および、金属酸化物超微粒子(C)としてメチルエチルケトンを溶媒としたコロイダルシリカ(商品名「MEK-ST」、固形分20%、日産化学製)からなる塗布液(III)を混合したが、その際、反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比が32:34:34、加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)及びトリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比が21:21:58となるように混合し、溶媒としてメチルエチルケトンを添加混合し、塗布液を調製した。
【0075】
(塗布液の基材への塗布)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(LS−3150、信越シリコーン社製)を、メチルエチルケトンで1重量%となるように溶液を調製した。次に該溶液を吸収したセルロース繊維からなるワイパー(商品名「ベンコット」、型式M−1、50mm×50mm、小津産業製)で、フロート法によって得られた100mm×100mm(3.5mm厚)のガラス基材表面を払拭することで該溶液を塗布し、室温状態にて乾燥後、水道水を用いてワイパーで膜表面を水洗することで、透明基材を準備した。
【0076】
該透明基材に上記で得られた塗布液をスピンコートにより塗布し、該被塗布ガラス板を約150℃で約30分間熱処理することにより、膜厚10μmの防曇性被膜を得た。
上記方法で得られた防曇性被膜について、上記した評価方法を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0077】
実施例2
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を25:34:41とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が4Hと膜硬度に優れた物品であることが確認された。
【0078】
実施例3
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を40:34:26とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度に優れた物品であることが確認された。
【0079】
実施例4
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を14:25:61とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0080】
実施例5
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を27:18:55とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が4Hと膜硬度に優れた物品であることが確認された。
【0081】
実施例6
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を25:14:61とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0082】
実施例7
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を18:27:55とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0083】
実施例8
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を27:27:46とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0084】
実施例9
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を14:14:72とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0085】
実施例10
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比が34:21:45とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が4Hと膜硬度に優れた物品であることが確認された。
【0086】
実施例11
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比が25:50:25とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性が良好で、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0087】
実施例12
反応生成物(A)を有する塗布液(A)の調製において、平均分子量2000のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表1に示す。
得られた物品は、表1に示すように、外観に問題がなく、防曇性、耐傷付性に優れ、鉛筆硬度が3Hと膜硬度の良好な物品であることが確認された。
【0088】
比較例1
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を20:34:46とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さない物品であった。
【0089】
比較例2
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を45:34:21とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、膜が白濁しており外観に問題があり、トラバース試験でも1000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHと膜硬度に不十分な物品であった。
【0090】
比較例3
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を10:26:64とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、トラバース試験において3000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHBと膜硬度に不十分な物品であった。
【0091】
比較例4
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を30:16:54とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さない物品であった。
【0092】
比較例5
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を31:0:69とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さない物品であった。
【0093】
比較例6
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を26:10:64とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を示さない物品であった。
【0094】
比較例7
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を16:30:54とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、トラバース試験において3000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHBと膜硬度に不十分な物品であった。
【0095】
比較例8
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を50:50:0とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さず、テーバー試験において試験後に膜が剥離する物品であった。
【0096】
比較例9
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を30:30:40とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、テーバー試験において試験後の曇化変化ΔH=18.5%と高い物品であった。
【0097】
比較例10
加水分解重縮合物(B)中のテトラアルコキシシラン(b1)、トリアルコキシシラン(b2)、トリアルコキシシラン(b3)の固形分重量比を10:10:80とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さず、トラバース試験において3000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHBと膜硬度に不十分な物品であった。
【0098】
比較例11
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を32:10:58とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さず、テーバー試験において試験後に膜が剥離する物品であった。
【0099】
比較例12
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)、金属酸化物超微粒子(C)の固形分重量比を32:60:8とした以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、トラバース試験において2000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHBと膜硬度に不十分な物品であった。
【0100】
比較例13
反応生成物(A)を有する塗布液(A)の調製において、平均分子量200のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、防曇性を全く示さない物品であった。
【0101】
比較例14
反応生成物(A)を有する塗布液(A)の調製において、平均分子量10000のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様の手順で防曇性物品を得、上記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
得られた物品は、表2に示すように、膜が白濁しており外観に問題があり、トラバース試験でも2000往復後に膜に傷が生じ、鉛筆硬度がHと膜硬度に不十分な物品であった。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
三種の調製用原料より調製される防曇性被膜形成用塗布液であって、
前記三種の調製用原料は、
イソシアネート基を有するイソシアネート成分と数平均分子量400〜5000の吸水性ポリオールとの反応生成物(A)を含む原料(I)、
複数の酸化ケイ素前駆体(b)の加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)、及び、
金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)からなり、
反応生成物(A)、加水分解重縮合物(B)及び金属酸化物超微粒子(C)の合計量に対する反応生成物(A)の割合は、25〜40重量%、加水分解重縮合物(B)の割合は、21〜50重量%、金属酸化物超微粒子(C)の割合は、25〜45重量%であり、
前記複数の酸化ケイ素前駆体(b)の合計量に対するテトラアルコキシシラン(b1)の割合は、14〜27重量%、アルキル基含有トリアルコキシシラン(b2)の割合は、14〜27重量%、エポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種を含むトリアルコキシシラン(b3)の割合は、46〜72重量%であることを特徴とする防曇性被膜形成用塗布液。
【請求項2】
請求項1に記載の防曇性被膜形成用塗布液を用いて基材上に形成された防曇性被膜であって、
該防曇性被膜中では反応生成物(A)と加水分解重縮合物(B)とが化学的結合を形成しており、
該化学的結合は、前記反応生成物(A)に残存していたイソシアネート基と、前記加水分解重縮合物(B)中に存在していたエポキシ基、メルカプト基及びアミノ基の少なくとも一種とから形成されたものであることを特徴とする防曇性被膜。
【請求項3】
請求項2に記載の防曇性被膜の形成方法であって、
反応生成物(A)を含む原料(I)、加水分解重縮合物(B)を含む原料(II)、及び、金属酸化物超微粒子(C)を含む原料(III)を混合して防曇性被膜形成用塗布液を得る工程、
該防曇性被膜形成用塗布液を基材上に塗布する工程、及び、
前記基材上に塗布された塗布層を加熱する工程
を含むことを特徴とする防曇性被膜の形成方法。

【公開番号】特開2008−255192(P2008−255192A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97543(P2007−97543)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】