説明

防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造

【課題】構造体を屋根に固定することができながら、軸部の挿通部分にわたってシールすることができ、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができる防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造を提供すること。
【解決手段】本発明の防水ねじは、頭部および軸部を備えるねじ部材と、軸部の周囲を被覆するシール材とを備え、シール材の、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造、詳しくは、建築物の屋根などに、構造物を設置するために用いられる防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールなどの構造体は、通常、建築物の屋根に、ねじにより固定されている。
【0003】
そのため、屋根に形成されたねじ穴から、雨水などが屋根の内部に浸入して、屋根を腐食する場合がある。
【0004】
そこで、構造体を固定することができ、かつ、屋根の内部への水の浸入を抑制することができる防水ねじが、種々検討されている。
【0005】
このような防水ねじとしては、頭部に、防水用のゴム弾性体が設けられているスクリューネジが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−74068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリューネジを用いて、構造物を屋根に固定しても、防水用のゴム弾性体が、屋根に形成されたねじ穴の上面をシールするのみであって、屋根におけるスクリューネジの挿通部分はシールされず、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができないという不具合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、構造体を屋根に固定することができながら、軸部の挿通部分にわたってシールすることができ、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができる防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の防水ねじは、頭部および軸部を備えるねじ部材と、前記軸部の周囲を被覆するシール材とを備え、前記シール材は、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の防水ねじでは、構造体を屋根上に設置するために用いられることが好適である。
【0011】
また、本発明の防水ねじでは、前記シール材が、ブチルゴムおよび液状ゴムを含有することが好適である。
【0012】
また、本発明の防水ねじでは、前記シール材が、さらに、充填剤を含有し、前記充填剤の配合割合が、前記ブチルゴム100質量部に対して、300質量部未満であることが好適である。
【0013】
また、本発明の防水ねじでは、前記シール材が、さらに、粘着付与剤を含有することが好適である。
【0014】
また、本発明のシール材は、ねじ部材の軸部に被覆され、前記軸部の挿通部分をシールするために用いられるシール材であって、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の構造体設置方法は、屋根上に構造体を設置する構造体設置方法であって、屋根上に、構造体を配置する工程と、上記の防水ねじにより、前記構造体を前記屋根に固定する工程とを備えることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の構造体設置構造は、屋根上に構造体を設置した構造体設置構造であって、屋根上に、構造体が配置され、前記構造体が、上記の防水ねじにより、前記屋根に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防水ねじは、頭部および軸部を備えるねじ部材と、軸部の周囲を被覆するシール材とを備え、そのシール材の、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下である。そのため、本発明の防水ねじを用いて、構造物を屋根に固定すれば、シール材が、屋根における軸部の挿通部分をシールすることができるので、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができる。
【0018】
したがって、本発明の防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造は、構造体を屋根に固定することができながら、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の防水ねじの一実施形態の側断面図を示す。
【図2】本発明の防水ねじに用いられるシール材の一実施形態の側面図を示す。
【図3】本発明の防水ねじに用いられるシール材の他の実施形態(支持層を備える態様)の側面図を示す。
【図4】本発明の防水ねじに用いられるシール材の他の実施形態(弾性層を備える態様)の側面図を示す。
【図5】建築物の屋根に構造体を設置する、本発明の構造物設置方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、屋根に、構造体を配置する構造体配置工程を示し、(b)〜(e)は、図1に示す防水ねじにより、構造体を屋根に固定する構造体固定工程を示す。
【図6】ねじ密着性試験の評価基準を説明するための説明図であって、(a)は、ねじ密着性が○の場合を示し、(b)は、ねじ密着性が×の場合を示す。
【図7】ルーフィング材密着性試験の評価基準を説明するための説明図であって、(a)は、ルーフィング材密着性が○の場合を示し、(b)は、ルーフィング材密着性が×の場合を示す。
【図8】各実施例および比較例における、ねじ止水試験の試験方法を説明するための説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の防水ねじの一実施形態の側断面図である。
【0021】
防水ねじ1は、ねじ穴の内部への水の浸入を防止する防水機能を備えるねじであって、ねじ部材2と、シール材5とを備えている。
【0022】
ねじ部材2は、頭部3および、ねじ山(ねじ溝)が形成される軸部4を備える公知のねじ部材であって、特に限定されず、例えば、木ねじ、金属ねじなどが挙げられ、好ましくは、金属ねじが挙げられる。
【0023】
シール材5は、ねじ部材2の軸部4の周囲を被覆し、軸部4の挿通部分をシールするために用いられるものであって、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下、好ましくは、40000Pa以下であって、例えば、10000Pa以上、好ましくは、15000Pa以上である。
【0024】
貯蔵剪断弾性率G’は、実施例で詳述する粘弾性試験によって算出される。
【0025】
また、シール材5の25℃、周波数1Hzにおける、損失剪断弾性率G”は、例えば、5000〜20000Pa、好ましくは、10000〜18000Paである。
【0026】
損失剪断弾性率G”は、上記した貯蔵剪断弾性率G’とともに、算出される。
【0027】
シール材5は、好ましくは、ブチルゴムおよび液状ゴムを含有する。
【0028】
ブチルゴムは、イソブテン(イソブチレン)および少量のイソプレンの共重合体(イソブチレン・イソプレンゴム)である。
【0029】
このようなブチルゴムのムーニー粘度は、例えば、30〜70(ML1+4、100℃)、好ましくは、40〜60(ML1+4、100℃)である。
【0030】
また、このようなブチルゴムとしては、例えば、再生ブチルゴムなどの公知のブチルゴムが挙げられる。
【0031】
ブチルゴムの配合割合は、シール材全量に対して、例えば、10〜50質量%、好ましくは、20〜40質量%である。
【0032】
液状ゴムは、ブチルゴムと相溶可能な常温液状のゴムであって、例えば、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、ポリブテン(具体的には、液状ポリブテン)などが挙げられる。
【0033】
このような液状ゴムは、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0034】
また、このような液状ゴムのなかでは、好ましくは、ポリブテンが挙げられる。
【0035】
ポリブテンは、その40℃における動粘度が、例えば、10〜200000mm/s、好ましくは、1000〜100000mm/sであり、その100℃における動粘度が、例えば、2.0〜4000mm/s、好ましくは、50〜2000mm/sである。
【0036】
液状ゴムの配合割合は、ブチルゴム100質量部に対して、例えば、70〜140質量部、好ましくは、80〜120質量部である。
【0037】
このようなポリブテンを配合することにより、ブチルゴムを軟化することができる。
【0038】
また、シール材5は、さらに、好ましくは、充填剤、粘着付与剤を含有する。
【0039】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、タルク、マイカ、クレー、雲母粉、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、酸化チタン、ガラス粉(パウダ)などが挙げられる。
【0040】
このような充填剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0041】
このような充填剤のなかでは、好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0042】
充填剤の配合割合は、ブチルゴム100質量部に対して、300質量部未満、好ましくは、250質量部以下、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上である。
【0043】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂(例えば、テルペン−芳香族系液状樹脂など)、クマロンインデン系樹脂、石油系樹脂(例えば、C5系石油樹脂など)などが挙げられる。
【0044】
このような粘着付与剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0045】
このような粘着付与剤のなかでは、好ましくは、C5系石油樹脂(C5系粘着付与剤)などの石油系樹脂が挙げられる。
【0046】
粘着付与剤の配合割合は、ブチルゴム100質量部に対して、例えば、20〜80質量部、好ましくは、40〜60質量部である。
【0047】
また、シール材5には、上記成分に加えて、架橋剤、さらに、必要に応じて、例えば、発泡剤、垂れ防止剤(チクソ性付与剤)、低極性ゴム、顔料、揺変剤、滑剤、スコーチ防止剤、安定剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0048】
架橋剤としては、例えば、硫黄、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、キノイド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属塩系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミノ系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(シランカップリング剤など)などが挙げられる。
【0049】
このような架橋剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0050】
このような架橋剤のなかでは、好ましくは、キノイド系架橋剤が挙げられる。
【0051】
架橋剤の配合割合は、ブチルゴム100質量部に対して、例えば、0.5〜10質量部、好ましくは、1〜5質量部である。
【0052】
図2は、本発明の防水ねじに用いられるシール材の一実施形態の側面図である。また、図3および4は、本発明の防水ねじに用いられるシール材の他の実施形態の側面図である。
【0053】
次に、本発明の防水ねじ1の作製方法について、図2〜4を参照して、説明する。
【0054】
防水ねじ1を作製するには、まず、シール材5を調製する。
【0055】
シール材5を調製するには、上記した各成分を、上記した配合割合において配合し、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などによって混練して、粘着性組成物を得る。
【0056】
なお、粘着性組成物に架橋剤を添加する場合には、上記混練または下記圧延において、粘着性組成物を架橋する温度で実施する。
【0057】
その後、得られた粘着性組成物を、例えば、カレンダー成形、押出成形またはプレス成形などによって圧延することにより、離型紙21の表面などに、粘着層22として積層する。これによって、シール材5は、シート状に調製される。
【0058】
このような粘着層22(シール材5)の厚みは、例えば、0.5〜5mm、好ましくは、0.5〜3mm、より好ましくは、0.5〜1.5mmである。
【0059】
また、図3に示すように、シール材5は、シール材5に靱性を付与するための支持層6を備えることもできる。
【0060】
支持層6は、2つの粘着層22に挟み込まれるように、積層される。
【0061】
支持層6としては、例えば、ガラスクロス、樹脂含浸ガラスクロス、不織布、金属箔、カーボンファイバー、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0062】
ガラスクロスは、ガラス繊維を布にしたものであって、公知のガラスクロスが挙げられる。
【0063】
樹脂含浸ガラスクロスは、上記したガラスクロスに、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの合成樹脂が含浸処理されているものであって、公知のものが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、EVA−塩化ビニル樹脂共重合体などが挙げられる。また、上記した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、単独使用または併用することができる。
【0064】
不織布は、例えば、木材繊維(木材パルプなど)、セルロース系繊維(例えば、レーヨンなどの再生セルロース系繊維、例えば、アセテートなどの半合成セルロース系繊維、例えば、麻、綿などの天然セルロース系繊維、例えば、それらの混紡糸など)、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、セルロース系繊維(麻、あるいは麻および他のセルロース系繊維)などの繊維から形成される不織布が挙げられる。
【0065】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔やスチール箔などの公知の金属箔が挙げられる。
【0066】
カーボンファイバーは、炭素を主成分とする繊維を布にしたものであって、公知のものが挙げられる。
【0067】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0068】
このような支持層6のなかでは、好ましくは、不織布が挙げられる。
【0069】
また、このような支持層6の厚みは、例えば、0.1〜0.3mm、好ましくは、0.1〜0.2mmである。
【0070】
支持層6の厚みが、0.3mmを超過すると、シール材の巻回性が低下し、0.1mm未満では、シール材の生産性が低下する場合がある。
【0071】
このような支持層6を備えるシール材5を調製するには、離型紙21の表面などに、粘着層22を積層した後、その粘着層22における離型紙21の積層側と反対側の表面に、上記支持層6を貼り合わせ、その支持層6に、再度、粘着層22を積層する。
【0072】
また、図4に示すように、シール材5は、粘着層22に積層される弾性層7を備えることもできる。
【0073】
弾性層7としては、シール材5に靱性を付与するものであれば、特に限定されず、例えば、各種ゴムの成形体などから形成される。
【0074】
また、弾性層7を形成する材料としては、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、例えば、1−ブテンなどのα−オレフィン・ジシクロペンタジエン、例えば、エチリデンノルボルネンなどの非共役二重結合を有する環状または非環状のポリエンを成分とするゴム系共重合体、例えば、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレンターポリマー、シリコーンゴム、ポリウレタン系ゴム、ポリアミド系ゴムなどの各種ゴムが挙げられる。
【0075】
このような弾性層7を形成する材料のなかでは、好ましくは、EPDMが挙げられる。
【0076】
また、EPDMのムーニー粘度は、例えば、10〜60(ML1+4、100℃)、好
ましくは、20〜50(ML1+4、100℃)である。
【0077】
また、このような弾性層7の厚みは、例えば、0.1〜1.0mm、好ましくは、0.3〜0.8mmである。
【0078】
このような弾性層7を備えるシール材5を調製するには、離型紙21の表面などに、粘着層22を積層した後、その粘着層22における離型紙21の積層側と反対側の表面に、弾性層7を貼り合わせる。
【0079】
次いで、例えば、上記したねじ部材2の軸部4に、上記したシール材5を巻き付けることによって、防水ねじ1を作製する。
【0080】
軸部4に、シール材5を巻き付けるには、特に制限されないが、軸部4のねじ山(ねじ溝)を被覆するように、軸部4の外周面に沿って、シール材5を巻回する。これによって、シール材5が軸部4の周囲を被覆する。
【0081】
具体的には、図2に示すシール材5(離型紙21に粘着層22が積層されるシール材5)、および、図3に示すシール材5(離型紙21に、粘着層22、支持層6および粘着層22が順次積層されるシール材5)を軸部4にそれぞれ巻き付けるには、離型紙21を剥離することなく、離型紙21が最外層(最表面)に位置するように、シール材5を軸部4に巻回する。
【0082】
そのため、図2に示すシール材5を軸部4に巻き付けた場合、粘着層22は、軸部4のねじ山(ねじ溝)と接触するとともに、離型紙21により被覆される。また、図3に示すシール材5を軸部4に巻き付けた場合、支持層6に対して離型紙21と反対側の粘着層22は軸部4のねじ山(ねじ溝)と接触し、支持層6に対して離型紙21側の粘着層22は離型紙21により被覆される。
【0083】
すなわち、図2に示すシール材5を軸部4に巻き付けた場合、および、図3に示すシール材5を軸部4に巻き付けた場合のいずれの場合においても、粘着層22は離型紙21により被覆され、離型紙21が最表面に位置する。
【0084】
その結果、図2および図3に示すシール材5を備える防水ねじ1は、輸送時などにおいて、防水ねじ1同士がブロッキング(粘着層22同士が互いに接着)することを抑制できる。
【0085】
一方、図4に示すシール材5(離型紙21に粘着層22および弾性層7が順次積層されるシール材5)を軸部4に巻き付けるには、離型紙21を剥離した後、弾性層7が最外層(最表面)に位置するように、シール材5を軸部4に巻回する。
【0086】
そのため、図4に示すシール材5を軸部4に巻き付けた場合、粘着層22は、軸部4のねじ山(ねじ溝)と接触するとともに、弾性層7により被覆される。つまり、弾性層7が、最表面に位置する。
【0087】
その結果、図4に示すシール材5を備える防水ねじ1においても、輸送時などにおいて、防水ねじ1同士がブロッキング(粘着層22同士が互いに接着)することを抑制できる。
【0088】
また、図4に示すシール材5を備える防水ねじ1では、粘着層22が、弾性層7により被覆され、最表面に露出しないので、構造体(後述)を屋根に設置する設置作業時において、粘着層22がユーザの手などに粘着することを抑制できる。そのため、図4に示すシール材5を備える防水ねじ1は、取扱性に優れている。
【0089】
また、図4に示すシール材5を備える防水ねじ1では、離型紙21を剥離した後に、シール材5が軸部4に巻回されているので、構造体(後述)を屋根に設置する設置作業時において、離型紙21を剥離する工程を省略できる。そのため、構造体(後述)の設置作業の円滑化を図ることができる。
【0090】
このとき、シール材5は、軸部4の軸方向において、軸部に対して、50〜95%、好ましくは、60〜90%、具体的には、20〜100mm被覆する。
【0091】
より具体的には、ねじ部材2は、軸部4の挿通部分の長さにより、適宜選択される。
【0092】
そして、シール材5は、軸部4の挿通部分の長さより長く、例えば、軸部4の軸方向において、軸部4に、挿通部分の長さよりも、15〜30mm、好ましくは、5〜15mm長く被覆する。
【0093】
そして、このような防水ねじ1は、例えば、建築物の屋根9に、構造体8を設置するために用いることができる。
【0094】
図5は、建築物の屋根に構造体を設置する、本発明の構造物設置方法の一実施形態を示す説明図であって、(a)は、屋根に、構造体を配置する構造体配置工程を示し、(b)〜(e)は、図1に示す防水ねじにより、構造体を屋根に固定する構造体固定工程を示す。
【0095】
構造体8を屋根9に設置するためには、まず、構造体8を屋根9に配置する(構造体配置工程)。
【0096】
構造体8としては、特に制限されないが、例えば、太陽電池モジュール、エア・コンディショナーの室外機などを屋根に固定するための取付金具(屋根架台など)などが挙げられる。
【0097】
屋根9は、例えば、図5(a)に示すように、垂木13上に、下地板としての野地板12が積層され、野地板12上に、防水シートとしてのルーフィング材11が積層されている。そして、ルーフィング材11上には、スレート板10が、階段状に配置されており、ルーフィング材11とスレート板10との間には、空間(隙間)が形成されている。
【0098】
そして、まず、構造体8を、スレート板10上に配置する。
【0099】
次いで、図1に示す防水ねじにより、構造体8を屋根9に固定する(構造体固定工程)。
【0100】
構造体8を屋根9に固定するには、まず、図5(b)に示すように、構造体8および屋根9のスレート板10に、ねじ部材2の軸部4を挿通するための貫通穴をそれぞれ設ける。
【0101】
貫通穴の形成には、公知の穿孔方法が用いられる。
【0102】
また、必要に応じて、ルーフィング材11に、下穴を設けることもできる。
【0103】
貫通穴の直径は、軸部4の直径よりも大きく形成され、好ましくは、軸部4の直径と、シール材5の厚みの総和よりも小さく形成される。
【0104】
そして、図5(c)に示すように、貫通穴に、シール材5により周囲を被覆された軸部4を挿通する。
【0105】
貫通穴の直径が、軸部4の直径と、シール材5の厚みの総和よりも小さく形成されている場合、挿通時において、軸部4の周囲に被覆されているシール材5の一部が、構造体8の上面と接触する。そのため、構造体8の上面と接触するシール材5は、貫通穴の内部に挿入されず、貫通穴の上面に粘着する。
【0106】
一方、構造体8の上面と接触しないシール材は、軸部4の周囲を被覆したまま、貫通穴内を通過し、ルーフィング材11とスレート板10との間の空間に到達する。
【0107】
次いで、図5(d)に示すように、防水ねじ1を、ねじ込む。これにより、ルーフィング材11にねじ穴が形成され、軸部4がルーフィング材11および野地板12に螺合される。これにより、構造体8が、防水ねじ1によって、屋根9に固定される。
【0108】
その後、図示しないが、取付金具に、太陽電池モジュールや、エア・コンディショナーの室外機などを取り付ける。
【0109】
ルーフィング材11および野地板12への螺合時において、図5(e)に示すように、軸部4に形成されているねじ山(ねじ溝)部分に粘着するシール材5は、軸部4を被覆したまま、軸部4とともにねじ穴の内部に挿入される。
【0110】
そのため、ねじ山(ねじ溝)部分に粘着しているシール材5が、軸部4と、ルーフィング材11および野地板12との間に介在して、軸部4の螺合部分をシールする。
【0111】
一方、ねじ穴形成時において、ねじ山(ねじ溝)部分以外に粘着していたシール材5は、ルーフィング材11の抵抗により、ねじ穴の内部に挿入されず、ねじ穴の上面に粘着する。そのため、ねじ穴の上面が、シールされる。
【0112】
また、貫通穴の上面に粘着したシール材5は、ねじ部材2の頭部3と、構造体8とに挟み込まれることにより、貫通穴の上面をシールする。
【0113】
これによって、構造体8に設けられた貫通穴の上面、軸部4の挿通部分および螺合部分、ルーフィング材11に形成されたねじ穴の上面が、シールされている。
【0114】
このように、防水ねじ1は、頭部3および軸部4を備えるねじ部材2と、軸部4の周囲を被覆するシール材5とを備え、そのシール材5の、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下である。
【0115】
このようなシール材5は、軸部4との密着性が良好であるので、例え、防水ねじ1を挿通または螺合させても、軸部4から剥離することなく、挿通部分および螺合部分をシールすることができる。そのために、上記のように、防水ねじ1を用いて、構造体8を屋根9に固定すれば、シール材5が、屋根9における軸部4の挿通部分および螺合部分をシールすることができ、さらには、ルーフィング材11に形成されるねじ穴もシールすることができる。その結果、屋根9の内部への水の浸入を十分に抑制することができる。
【0116】
したがって、上記した防水ねじ、シール材、構造体設置方法および構造体設置構造は、構造体を屋根に固定することができながら、屋根の内部への水の浸入を十分に抑制することができる。
【実施例】
【0117】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0118】
実施例1〜4および比較例1〜2
表1に示す処方において、各成分を配合し、ミキシングロールで混練(120℃、20分)することにより粘着性組成物を得た。
【0119】
次いで、得られた粘着性組成物を、プレス成形(120℃、10分)により、シート状に圧延して、離型紙21の表面に積層し、厚み1.0mmのシール材5を調製した。
【0120】
そして、シート状に圧延された粘着性組成物(粘着層22)が、ねじ部材2の軸部4と接触するとともに、離型紙21が最外層(最表面)に位置するように、ねじ部材2の軸部4にシール材5を1周巻き付けた。その後、シール材5から離型紙21を剥離することにより、防水ねじ1を作製した。なお、シール材5の軸方向長さは、20mmであった。
【0121】
(評価)
各実施例および各比較例において得られたシール材5について、粘弾性試験を次のように実施し、各実施例および各比較例において得られた防水ねじ1について、ねじ密着性試験、ルーフィング材密着性試験、ねじ止水試験を、次のように実施した。その結果を表1に示す。
(1)粘弾性試験
各実施例および各比較例において得られたシール材5を、直径7.9mmの大きさの円筒形状に加工して試験片を得た。得られた試験片を、粘弾性測定装置(商品名ARES、レオメトリック社製)にて、25℃における貯蔵剪断弾性率G’、損失剪断弾性率G”をそれぞれ算出した。
【0122】
測定条件を、昇温速度5℃/分、振動数1Hz、歪み0.1%に設定した。
(2)ねじ密着性試験
各実施例および各比較例において得られた防水ねじ1を、それぞれ、ルーフィング材11(厚み2mm)と野地板12(厚み20mm)との合板に貫通させて、貫通したねじ部材2の軸部4と、シール材5との密着性を確認した。
【0123】
図6(a)に示すように、シール材5が、合板を貫通したねじ部材2の軸部4を被覆している場合、ねじ密着性を○、図6(b)に示すように、シール材5が、貫通したねじ部材2の軸部4を被覆していない場合、ねじ密着性を×とした。
(3)ルーフィング材密着性試験
各実施例および各比較例において得られた防水ねじ1を、それぞれ、ルーフィング材11(厚み2mm)と野地板(厚み20mm)との合板に貫通させた後、防水ねじ1を巻き戻して、ルーフィング材11と、シール材5との密着性を確認した。
【0124】
図7(a)に示すように、防水ねじ1を巻き戻しても、シール材5が伸長して、ルーフィング材11から離間しない場合、ルーフィング材密着性を○、図7(b)に示すように、防水ねじ1を巻き戻すと、シール材5がルーフィング材11から離間する場合、ルーフィング材密着性を×とした。
(4)ねじ止水試験
図7に示すように、各実施例および各比較例において得られた防水ねじ1を、直径7mmの貫通穴を設けたスレート板10(2枚)(厚み6mm)に挿通した後、ルーフィング材11(厚み2mm)と野地板12(厚み20mm)との合板に貫通させた。このとき、スレート板10と、ルーフィング材11との間には、木片スペーサ−16を介して6mmの間隔を設けた。次いで、合板上に、ねじ部材2の頭部3およびスレート板10を囲うように、透明アクリル管14(高さ20mm、直径76.5mm)を配置し、合板と透明アクリル管14とを、シリコーンコーキング15で接着した。次いで、透明アクリル管14内に、水深15mmとなるように、水性インクを溶解した水を充填し、24時間放置した。
【0125】
24時間後、ルーフィング材11と野地板12との間の水漏れの有無を確認することにより、ねじ止水性を評価した。
【0126】
【表1】

【0127】
なお、表1の略号などを以下に示す。
再生ブチルゴム:ムーニー粘度44(±6)(ML1+4、100℃)
ポリブテン:動粘度600mm/s(at100℃)
【符号の説明】
【0128】
1 防水ねじ
2 ねじ部材
3 ねじ部材の頭部
4 ねじ部材の軸部
5 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部および軸部を備えるねじ部材と、
前記軸部の周囲を被覆するシール材とを備え、
前記シール材は、25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下であることを特徴とする、防水ねじ。
【請求項2】
構造体を屋根上に設置するために用いられることを特徴とする、請求項1に記載の防水ねじ。
【請求項3】
前記シール材が、ブチルゴムおよび液状ゴムを含有することを特徴とする、請求項1および2に記載の防水ねじ。
【請求項4】
前記シール材が、さらに、充填剤を含有し、
前記充填剤の配合割合が、前記ブチルゴム100質量部に対して、300質量部未満であることを特徴とする、請求項3に記載の防水ねじ。
【請求項5】
前記シール材が、さらに、粘着付与剤を含有することを特徴とする、請求項3または4に記載の防水ねじ。
【請求項6】
ねじ部材の軸部に被覆され、前記軸部の挿通部分をシールするために用いられるシール材であって、
25℃、周波数1Hzにおける、貯蔵剪断弾性率G’が、50000Pa以下であることを特徴とする、シール材。
【請求項7】
屋根上に構造体を設置する構造体設置方法であって、
屋根上に、構造体を配置する構造体配置工程と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の防水ねじにより、前記構造体を前記屋根に固定する構造体固定工程とを備えることを特徴とする、構造体設置方法。
【請求項8】
屋根上に構造体を設置した構造体設置構造であって、
屋根上に、構造体が配置され、
前記構造体が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防水ねじにより、前記屋根に固定されていることを特徴とする、構造体設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140844(P2012−140844A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268728(P2011−268728)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】