説明

防水パッキン構造

【課題】本体部材と蓋部材との間で押し潰される弾性部材からなる防水パッキンを備えた防水パッキン構造において、内部に空洞を設けなくても溝からはみ出さないように構成された防水パッキン構造を提供すること。
【解決手段】本発明に係る防水パッキンでは、開口部が形成された本体部材と、前記開口部を覆うための蓋部材と、前記本体部材と前記蓋部材との間で押し潰される弾性部材からなる防水パッキンとを有する防水パッキン構造において、前記本体部材には、前記開口部のまわりに沿って前記防水パッキンを嵌め込むための溝が形成され、前記防水パッキンの断面形状は、主突起と、前記主突起の幅より広い幅を持ち、前記主突起の高さより低い副突起とを備え、前記副突起の高さは、前記溝の深さより高くした。さらに、前記副突起は、前記主突起の両側に形成し、前記主突起と前記副突起の断面形状はそれぞれ略三角形状とし、前記主突起の頂角は、前記副突起の頂角より小さい角度に設定し、前記防水パッキンの両側部の高さは、前記溝の深さより低くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を備えた電子機器の筐体に用いられるパッキンを用いた防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防水機能を備えた電子機器の筐体は、例えば開口部を備えた本体部材と、前記開口部を塞ぐ蓋部材とから構成され、2つの部材の接合面に弾性体よりなるパッキンを挟み込んで構成されている。
電子機器の筐体の内部には、電子部品が実装された基板等が収納されるため、前記パッキンを用いた防水構造が実現され、筐体内部に水が浸入することを防止している。
前記防水構造は、基板等が収納される筐体の開口部を囲むように溝を形成し、この溝に弾性体からなるリング状の防水パッキンを嵌め込み、開口部を覆う蓋部材により、前記溝から突出する防水パッキンを押しつぶすことで防止機能を実現している。
前記溝は、前記開口部のまわりを一周して設けられ、前記防水パッキンは、前記溝に嵌まるように無端構造となっている。
前記溝に前記防水パッキンを嵌め込んだ状態では、前記防水パッキンの一部は前記溝からはみ出しており、前記蓋部材で押さえ込むことによって、前記防水パッキンを弾性変形させて押しつぶして、その弾性による反発力で前記防止パッキンと前記蓋部材との隙間と、前記防水パッキンと前記本体部材との隙間における防水機能を実現するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211732
【0004】
かかる防水パッキンとして、特許文献1では、接合する二面の一方の面に設けた溝へ嵌合する嵌合部と、他方の面で潰されるように溝より突出させたシール部とを、ゴム等の弾性体により一体形成した防水パッキンが提案されている。
前記防水パッキンの前記シール部は、図7に示したように、中央部の高い頂部7aと、両側の低い峰部7bとが形成され、前記頂部7aと両側の峰部7bとで3重の防水機能が得られるように構成されている。さらに、両側の峰部7bを内側に潰れ込ませて、溝の外側にはみ出さないようにするために空洞7cを形成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1によれば、3重の防水機能が得られるが、防水パッキンに空洞7dを形成する必要があるので、防水パッキンの製造過程が複雑になり、防水パッキンのコストが嵩むという問題がある。
そこで、本発明は、3重の防水機能が得られるとともに、内部に空洞を設けなくても溝からはみ出さないように構成された防水パッキンを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る防水パッキンでは、
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間で押し潰される弾性部材からなる防水パッキンとを有する防水パッキン構造において、
前記第1の部材の所定の面には前記防水パッキンを嵌め込むための溝が形成され、
前記防水パッキンの断面形状は、幅が狭く高さが高い主突起と、前記主突起の幅より広い幅を持ち、前記主突起の高さより低い副突起とを備え、
前記副突起の高さは、前記溝の深さより高くするという手段を講じた。
請求項2では、
前記副突起は、前記主突起の両側に形成されている。
請求項3では、
前記主突起と前記副突起の断面形状はそれぞれ略三角形状とし、前記主突起の頂角は、前記副突起の頂角より小さい角度に設定されている。
請求項4では、
前記防水パッキンの両側部の高さは、前記溝の深さより低くした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る防水パッキンは、
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間で押し潰される弾性部材からなる防水パッキンとを有する防水パッキン構造において、
前記第1の部材の所定の面には前記防水パッキンを嵌め込むための溝が形成され、
前記防水パッキンの断面形状は、幅が狭く高さが高い主突起と、前記主突起の幅より広い幅を持ち、前記主突起の高さより低い副突起とを備え、
前記副突起の高さは、前記溝の深さより高くしたので、
前記第1の部材を前記第2の部材に押しつけて締結したとき、
前記主突起が押し潰されることによって防水機能が得られるとともに、前記副突起が押し潰されることによって防水機能が得られるので、
主突起だけによる防水機能に比べて高い防水機能が得られる。
また、第1の部材と第2の部材との締結力が十分に強くない場合でも、前記主突起が容易に押し潰されるので、防水機能が確保される。
【0008】
請求項2では、
前記副突起は、前記主突起の両側に形成されているので、3重の防水機能が得られ、2重の防水機能の場合に比べて高い防水機能が得られる。
請求項3では、
前記主突起と前記副突起の断面形状はそれぞれ略三角形状とし、前記主突起の頂角は、前記副突起の頂角より小さい角度に設定されているので、主突起は容易に押し潰されやすく、第1の部材と第2の部材との締結力が十分に強くない場合でも、前記主突起が容易に押し潰されるので、防水機能が確保される。
請求項4では、
前記防水パッキンの両側部の高さは、前記溝の深さより低くしたので、防水パッキンに空洞を設けなくても、副突起が押し潰されて溝からはみ出すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る防水パッキン構造の構成を示す分解斜視図である。
【図2】前記防水パッキン構造に用いる防水パッキンの断面図である。
【図3】前記防水パッキン構造の要部の断面図である。
【図4】前記防水パッキン構造を説明する要部の断面図である。
【図5】前記防水パッキン構造を説明する要部の断面図である。
【図6】前記防水パッキン構造を説明する要部の断面図である。
【図7】従来例の防水パッキンを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態の使用状態の分解斜視図である。本発明に係る防水パッキン構造は、防水機能を備えた電子機器の筐体に用いられる防水構造であり、図1に示したように、筐体10は、ダイカスト製であって略長方形状の開口部11を備えた本体部材1と、鉄板製であって前記開口部11を塞ぐ蓋部材2とから構成され、2つの部材の接合面に弾性体よりなる防水パッキン3を挟み込んで防水パッキン構造が構成されている。
前記防水パッキン構造は、前記本体部材1の開口部11を囲むように形成された溝Gと、前記溝Gに嵌め込まれる弾性体からなるリング状の防水パッキン3と、前記開口部11を覆うように配設されて、ビス等の締結手段4によって前記本体部材1に押しつけられた状態で締結されて固定される蓋部材2とからなり、前記締結手段4によって前記蓋部材2を前記本体部材1に押しつける際に、前記防水パッキン3を押しつぶすことによって弾性変形させ、その弾性復元力によって、前記本体部材1の溝Gと前記防水パッキン3との間、および、前記防水パッキン3と前記蓋部材2との間を、水が浸入しないような防水状態に密閉するように構成されている。
【0011】
前記本体部材1の開口部11の周囲には例えば4箇所のネジ孔12が形成されており、前記蓋部材2に形成された透孔21に差し込んだビスを前記ネジ孔12にねじ込むことによって、締結手段4が形成されている。
前記蓋部材2は、前記開口部11の形状に合わせて略長方形状の金属製の板で形成されており、前記4本のビス4を締め付けることによって、前記溝Gに嵌め込まれた防水パッキン3を押し潰しながら、前記本体部材1に締結されるように構成されている。
なお、前記本体部材1は特許請求の範囲に記載された第1の部材に対応し、前記蓋部材は特許請求の範囲に記載された第2の部材に対応するが、逆の対応でもよい。したがって、溝は、前記本体部材側ではなく、前記蓋部材側に設けてもよい。また、図1においては、前記開口部が形成されている面が、特許請求の範囲に記載された所定の面に対応している。
【実施例1】
【0012】
本発明においては、特に、前記防水パッキン3の断面形状を特徴とするものであり、実施例1に係る防止パッキンの断面形状は、図2に示したように、中央に形成された主突起Mと、前記主突起Mの両側部に形成された副突起Sとを備えた形状となっている。
前記主突起Mは防水パッキン構造の主たる防水機能を実現するための突起であり、前記副突起Sは前記主突起Mによる防水機能を補助するための補助的な突起である。
【0013】
前記主突起Mの断面形状は略三角形の形状であり、前記主突起Mの高さHmは前記副突起Sの高さHsより高く形成されている。
前記2つの副突起Sの断面形状は略三角形の形状であり、これら2つの副突起Sの高さHsはほぼ同じ高さであり、これら2つの副突起Sの高さHsは前記主突起Mの高さHmより低く形成されている。
また、前記主突起Mの幅Wmは、副突起Sの幅Wsよりも狭く、前記主突起Mの頂角θmは、副突起Sの頂角θsよりも小さい。
【0014】
図3は、前記防水パッキン3を本体部材1の溝Gに嵌め込んだ状態の側面断面図である。
図3に示したように、前記防水パッキン3の両側の縦面(溝の内壁に接する面)の高さHpは、前記溝Gの深さHgよりも低くなるように設定されている。
前記主突起Mの高さは前記溝Gの周囲の上面から例えば0.4mm程度とし、前記副突起Sの高さは前記溝Gの周囲の上面から例えば0.15mm程度とする。
【0015】
以上の構成の防水パッキン3を、本体部材1の溝Gに嵌め込んで、前記蓋部材2を4本のビス4で締結する場合における前記防水パッキン3の変形の仕方を、図4〜6の断面図を参照して説明する。
図4は、前記蓋部材2の下面が前記防水パッキン3の主突起Mの先端に接触した状態を示している。この状態では、前記蓋部材2の下面と前記本体部材1の溝Gの周囲の天面との隙間は、前述したように例えば約0.4mm程度である。
【0016】
図5は、図4の状態から、さらにビス4を締め付けた状態を示し、前記蓋部材2の下面と前記本体部材1の溝Gの周囲の天面との隙間は、図4の状態よりさらに狭くなり、前記主突起Mを押し潰した状態となっている。なお、図5の状態では、前記副突起Sはまだ押し潰されていない状態である。
この状態では、副突起Sの高さに比べて主突起Mの高さが高いので、主突起Mが副突起Sとの間に倒れ込むようにして、副突起Sより先に押し潰されて、前記蓋部材2と前記本体部材1とが密着状態になって密閉される。
この状態では、押し潰された主突起Mの弾性復元力によって、前記蓋部材2と前記本体部材1との間は密閉されているので、ある程度の防水機能が得られる。
【0017】
図6は、図5の状態から、さらにビス4を締め付けた状態を示し、前記蓋部材2の下面と前記本体部材1の溝Gの周囲の天面とが当接した状態となり、前記副突起Sまでも押し潰した状態となっている。
この状態では、主突起Mが倒れ込むように押し潰されているとともに、副突起Sも押しつぶされているので、押し潰された主突起Mの弾性復元力によって、前記蓋部材2と前記本体部材1との間における主たる防水機能が得られるとともに、押し潰された副突起Sの弾性復元力によって、前記蓋部材2と前記本体部材1との間における補助的な防水機能が得られる。
【0018】
このようにして、前記蓋部材2を前記本体部材1に締結する際に、副突起Sの高さに比べて主突起Mの高さが高いので、主突起Mが両副突起Sの間で倒れ込むようにして、副突起Sに優先して押し潰されて、蓋部材2と本体部材1とが密閉される。このとき、押し潰された前記主突起Mによって主たる防水機能が実現される。
さらに、前記ビス4を締め込むと、前記副突起Sも押し潰されて補助的な防水機能が実現される。
しかも、前記副突起Sは、前記主突起Mの側部に2列にわたって形成されているので、前記補助的な防水機能も2つの部分で得られ、主突起Mによる主たる防水機能と合わせて、3重の防水機能が得られる。
このような3重の防水機能によって、主突起Mのみによる防水機能と比較して、より高い防止機能が得られるのである。
【0019】
なお、図6に示したような状態においては、防水パッキン3の主突起Mが倒れ込むとき、副突起Sとの間の谷部に倒れ込む余地があるので、前記溝Gからはみ出すことはない。
また、前記防水パッキン3の両側、即ち、前記副突起Sの両側の縦面の高さHpは、前記溝Gの深さHgよりも低くなるように設定されているので、前記副突起Sが押し潰されるとき、押しつぶされた副突起Sが側方に変形して膨らむ余地があり、前記溝Gからはみ出すことはない。
【0020】
以上のように主突起Mと副突起Sとで隙間を塞いで密閉するので、十分な防水機能が得られる。また、主突起Mの高さが高いので、蓋部材2が変形して歪んでいて、本体部材1の溝Gの周囲の天面との間に、部分的な隙間が生じている場合でも、蓋部材2によって主突起Mを確実に押し潰すことによって、防水機能が実現される。
また、前記主突起Mの幅は狭いので、弾性反発力が若干弱いから、ビス4による締結力が弱く副突起Sまで確実に押し潰すことができない部分、例えば、本体部材1のビスとビスの間の長い部分の中央部分でも、主突起Mを確実に押し潰して防水機能を得ることができる。
また、ビスによる締結力が低下して弱くなった場合に、副突起Sの弾性復元力によって蓋部材2が押し上げられる場合であっても、主突起Mは押し潰された状態に維持されるので、防水機能が維持され、蓋部材2が本体部材1から浮き上がって防水機能が失われることはない。
【0021】
図2、3に示したように、前記主突起Mの断面形状は略三角形の形状であり、前記主突起Mの高さHmは前記副突起Sの高さHsより高く形成されているので、蓋部材2を取り付ける際には、副突起Sより先に主突起Mが押し潰されて防水機能が得られる。また、前述したように、ビスによる締結力が弱い場合であっても、少なくとも主突起Mは押し潰されるので防水機能が得られる。
また、前記2つの副突起Sが形成されているので、主突起Mによる防水機能と合わせて、3重の防水機能が得られ、主突起Mだけの場合、もしくは副突起Sだけの場合に比べて、高い防止機能が得られる。
【0022】
また、前記主突起Mの幅Wmは、副突起Sの幅Wsよりも狭いので、副突起Sを押し潰す締結力より弱い締結力であっても、主突起Mが押し潰されるので、締結力が十分でない場合でも、防水機能が得られる。
また、前記主突起Mの頂角θmは、副突起Sの頂角θsよりも小さいので、副突起Sを押し潰す締結力より弱い締結力であっても、主突起Mは押し潰されやすいので、締結力が十分でない場合でも、防水機能が得られる。
【0023】
なお、前記2つの副突起Sは、ほぼ同じ形状で同じ大きさとしたが、主突起Mより低い高さであれば、同じ高さとする必要はなく、異なる高さで異なる形状としてもよい。
また、前記副突起Sは、1つだけ設けてもよい。この場合は、主突起Mと合わせて2重の防水機能が得られる。
【符号の説明】
【0024】
10 筐体
1 本体部材、第1の部材
11 開口部
2 蓋部材、第2の部材
3 防水パッキン
4 締結手段
G 溝
M 主突起
S 副突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間で押し潰される弾性部材からなる防水パッキンとを有する防水パッキン構造において、
前記第1の部材の所定の面には前記防水パッキンを嵌め込むための溝が形成され、
前記防水パッキンの断面形状は、主突起と、前記主突起の幅より広い幅を持ち、前記主突起の高さより低い副突起とを備え、
前記副突起の高さは、前記溝の深さより高くしたことを特徴とする防水パッキン構造。
【請求項2】
前記副突起は、前記主突起の両側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水パッキン構造。
【請求項3】
前記主突起と前記副突起の断面形状はそれぞれ略三角形状とし、前記主突起の頂角は、前記副突起の頂角より小さい角度に設定されていることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の防水パッキン構造。
【請求項4】
前記防水パッキンの両側部の高さは、前記溝の深さより低くしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の防水パッキン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−231908(P2011−231908A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105186(P2010−105186)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】