説明

防水材

【課題】紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの影響による劣化の原因を徹底的に除去し屋根上葺材や外壁・外装材の耐用年数に匹敵するような耐用年数が確保できる防水材を提供する。
【解決手段】本願防水材1は主材であるアスファルト層3の外表面を紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射でき、かつ、アスファルト中の揮発分を封緘できるバリア層4で被覆し、アスファルト層3が紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの影響により劣化することをなくし、揮発分が飛んでアスファルト層3が脆化することもないようにし、本願防水材1をして、瓦等の屋根上葺材や外壁・外装材の耐用年数に匹敵するような耐用年数或いはそれ以上が確保できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦等の屋根上葺材や外壁・外装材の下側或いは内側に適用する屋根下葺材或いは壁下張材などの防水材、特に、屋根上葺材や外壁・外装材の高耐久性に匹敵する高耐久性が得られるようにした防水材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根や壁の防水を目的として使用される防水材で、瓦等の屋根上葺材の下の野地板の上に敷設施工する屋根下葺材として、特開平6−166962号が開示されている。このものは、勾配屋根下地面に対し貼着施工できるとともに、高温や低温の温度変化に対し安定であり、常に良好な釘穴シール性を保持する屋根下葺材であり、上面にアスファルト粘着防止層とを有するアスファルト含浸基材の下面に、ストレートアスファルトなどの粘着剤塗布層を設けてなる。ここに示した屋根下葺材もそうであるが、これに限らず一般に屋根下葺材は、瓦等の屋根上葺材が60年の耐用年数があるとしても、屋根下葺材自身の耐用年数がそれより短命であるならば、その耐用年数の尽きた時点で屋根上葺材を撤去して屋根下葺材を施工し直して再び屋根上葺材を施工しなければならない面倒があったり、そのために経費が嵩むという問題があった。また、壁の防水を目的として使用される壁下張材においても外壁・外装材の耐久性に対して同様の問題があった。
【特許文献1】特開平6−166962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
屋根下葺材や壁下張材などの主材であるアスファルトは、元来、耐久性に優れているが長期にわたっては劣化する。すなわち、瓦等の屋根上葺材の下に施工されている屋根下葺材や外壁・外装材に隠れて施工されている壁下張材は、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの影響を徐々に受けているため、近年のように高耐久化した屋根上葺材や外壁・外装材との関係では、未だ、屋根上葺材や外壁・外装材の耐用年数に匹敵するような耐用年数の屋根下葺材や外壁・外装材などの防水材が存在しない。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みて案出したもので、その目的とするところは、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの影響による劣化の原因を徹底的に除去し、高耐久性の屋根上葺材や外壁・外装材の耐用年数に匹敵するような耐用年数が確保できる屋根下葺材や壁下張材などの防水材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、主材であるアスファルト層の外表面を、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射でき、かつアスファルト中の軽い揮発分を封緘できるバリア層で被覆したことを特徴とし、アスファルト層の軟化状態を長期にわたって保持できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記アスファルト層がアスファルトにブチルゴム、SBS等のゴム成分又は樹脂を配合してなる改質アスファルト層であることを特徴とし、アスファルト層自身に低温時の脆性や高温時のダレの改善及び機械的強度の向上と、低温時の耐折性を向上させ得るように構成した。
【0007】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記バリア層が金属箔又は該金属箔を蒸着した樹脂フィルム或いはガスバリア性を有するポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリカーボネート、EVA等の樹脂皮膜であることを特徴とし、紫外線、熱線、水分、酸素、オゾンなどを跳ね返す能力を備えるとともに、これらがアスファルト層まで達することがないように構成した。
【0008】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記バリア層が、表面にアスファルトを介して鉱物粉粒を付着するか、10〜50g/m2 の合成繊維不織布をラミネートしてなることを特徴とし、屋根下葺材としての施工中に作業者が滑り難くするように構成した
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、主材であるアスファルト層の外表面を、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射でき、かつアスファルト中の揮発分を封緘できるバリア層で被覆したことを特徴としているので、アスファルト層が紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの影響により劣化することはないし、揮発分が飛んで脆化が進んでしまうともない。したがって、高耐久性の瓦等の屋根上葺材や外壁・外装材の耐用年数に匹敵するような耐用年数、或いはそれ以上が確保できるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記アスファルト層が、アスファルトにブチルゴム、SBS等のゴム成分を配合してなる改質アスファルトであることを特徴とし、通常のアスファルト層に比して改質アスファルト層はそれ自身の高耐久性が得られるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記バリア層が、金属箔又は該金属箔を蒸着した樹脂フィルム或いはガスバリア性を有するポリエチレン、ナイロン、ビニロン等の皮膜であることを特徴としているので、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを跳ね返し、アスファルト層まで及ばせないという優れた効果を奏するものである。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記バリア層が、表面にアスファルトを介して鉱物粉粒を付着するか、10〜50g/m2 の合成繊維不織布をラミネートしてなることを特徴とし、屋根下葺材としての施工中に作業者が滑り難くなるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の最良の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願防水材の略示的断面図、図2は本願防水材の他の例を示す略示的断面図、図3(a)(b)は本願防水材にノンスリップ加工をした場合の断面図である。
【0014】
本願防水材(屋根下葺材、壁下張材など)1は、主材であるアスファルト層3を有している。該アスファルト層3の外表面は、図1の如く、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射させ、かつ、アスファルト中の軽い揮発分を封緘できるバリア層4で被覆されている。すなわち、アスファルト層3を劣化させる原因となる紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどの透過を排除し、アスファルト層3を脆化させる原因となる揮発分の放散から保護できるように構成している。
【0015】
前記アスファルト層3は、図2の如く、基材(合成繊維からなる織布又は不織布、アスファルトを含浸させた原紙等)2を中心にその両面に積層(塗布を含む)して構成したものでもよい。図示していないが、基材2の片面に積層(塗布を含む)して構成したものでもよい。
【0016】
前記基材2に使用する合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエステル等の伸縮性の比較的小さいものを選択するとよい。目付は50〜100g/m2 のものが好ましい。また、基材2としてアスファルトを含浸させた原紙を使う場合において、原紙はできれば自然環境に優しい故紙を利用するとよい。
【0017】
前記アスファルト層3は、ベースアスファルトとしてストレートアスファルトであってもブローンアスファルトであってもよい。また、ベースアスファルトにはゴム成分を混入して改質アスファルトとするとよい。改質アスファルトには必要に応じてタルク、消石灰等のフィラーを混入させてもよい。
【0018】
前記ベースアスファルトに混入するゴム成分としては、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロックコポリマー(SBS)を使用すると、低温時の脆性や高温時のダレの改善に優れる上に、低温時の耐折性と、高温時の機械的強度を大幅に向上させ得るし、釘穴シール性も大幅に向上することとなる。
【0019】
前記バリア層4は、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射し、かつ揮発分を封緘できる素材であれば、特に、限定されないが、金属箔又はその金属箔を蒸着した樹脂フィルム、或いはガスバリア性を有するプラスチックフィルム、特に、プラスチック素材の種類は限定されるものではないが、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリカーボネート、EVA等を用いて満足できる。これらの素材からなるバリア層4はアスファルト層3を劣化させる原因を排除し、アスファルト層3を脆化させる原因から保護するために有用である。前記バリア層4の厚さは、金属箔、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリカーボネート、EVA等の皮膜の種類により異なるが、9〜50μmの範囲内で選択されるとよい。
【0020】
前記バリア層4の表面には、図3(a)及び(b)の如く、アスファルトなどの接着力を利用して鉱物粉粒5を付着させるか、10〜50g/m2 の合成繊維不織布6をラミネートし、屋根下葺材として屋根に用いた場合に施工中に作業者が足を滑らせないノンスリップ加工をすることもある。
【実施例1】
【0021】
いま、図2の如く、100g/m2 厚のポリエステル不織布の両面に、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロックコポリマー(SBS)を10重量%を入れた改質アスファルト層を0.5mm厚に積層し、その改質アスファルト層の外表面(両面)にバリア層(アルミ、PET、PE)を所望の厚さで被覆した本願品と、改質アスファルト層の外表面を剥き出しにした比較品とを用意し、80°Cの雰囲気に保持されたオーブン内に6カ月放置し、改質アスファルト層が脆化しているか否かを確認するために、改質アスファルト層の軟化点が初期値と6カ月後の値との変化の状況を測定したところ、次の表1の結果を得た。
【0022】
表1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
初期値 6カ月後値
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改質アスファルト層+ 106°C
108°C
両面アルミ12μmm
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改質アスファルト層+ 106°C
111°C
両面PET25μmm
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改質アスファルト層+ 106°C
116°C
両面PE30μmm
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改質アスファルト層 106°C
129°C
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【0023】
上表より明らかな如く、本願品は、アルミ、PET、PEで被覆された改質アスファルト層は、初期値と6カ月後値とで軟化点に変化が少ない。これは改質アスファルト層が脆化してないことを示している。一方、改質アスファルト層の外表面が剥き出しの比較品では初期値の軟化点に比し、6カ月後値が大きく変化している。これは改質アスファルト層が脆化していることを示している。このように、バリア層(アルミ、PET、PE)に保護された本願品(本願屋根下葺材)は、アスファルト層が脆化し難く、長期使用に耐えられるものであり、瓦等の屋根上葺材の高耐久性に匹敵するような高耐久性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、バリア層に保護され、瓦等の屋根上葺材の高耐久性に匹敵するような高耐久性を示す屋根下葺材が提供できるので、屋根上葺材の耐用年数に至るより早く屋根下葺材の耐用年数が尽きてしまい、屋根上葺材を撤去して屋根下葺材を施工し直すような面倒や経費の嵩むことがなくなるというものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願防水材の略示的断面図である。
【図2】本願防水材の他の例を示す略示的断面図である。
【図3】(a)(b)は本願防水材にノンスリップ加工をした場合の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 本願屋根下葺材
2 基材
3 アスファルト層
4 バリア層
5 鉱物粉粒
6 合成繊維不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主材であるアスファルト層の外表面を、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射でき、かつアスファルト中の揮発分を封緘できるバリア層で被覆したことを特徴とする防水材。
【請求項2】
前記アスファルト層が、アスファルトにブチルゴム、SBS等のゴム成分又は樹脂を配合してなる改質アスファルト層であることを特徴とする請求項1に記載の防水材。
【請求項3】
前記バリア層が、金属箔又は該金属箔を蒸着した樹脂フィルム或いはガスバリア性を有するポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリカーボネート、EVA等の樹脂皮膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水材。
【請求項4】
前記バリア層が、表面にアスファルトを介して鉱物粉粒を付着するか、10〜50g/m2 の合成繊維不織布をラミネートしてなることを特徴とする請求項1〜3のうちの1に記載の防水材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290136(P2007−290136A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117265(P2006−117265)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(391011548)田島応用化工株式会社 (19)
【Fターム(参考)】