説明

防水構造、及び電子機器

【課題】防水部材を溝部に対し容易に挿入できるようにする。
【解決手段】第1の部材1の周囲に一体的に設けられる防水部材7と、第1の部材1に合体する第2の部材2の周囲に設けられ防水部材7が挿入される溝部21と、防水部材7に埋め込まれる補強部材8と、第1の部材1に対し補強部材8との間に設けられる緩衝部71と、を備える。補強部材8は、第1の部材1に対しクリアランスによる緩衝部71を設けて防水部材7に埋め込まれ、且つ、溝部21に対する挿入方向に沿った薄板状の部材である。第1の部材1と第2の部材2は、合体して筐体を構成するケースである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水部材を溝部に挿入するタイプの防水構造と、その防水構造による筐体を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
防水パッキンとして、断面がほぼ楕円形のゴムリングの内部中心に金属線を埋め込んだものが特許文献1により公知となっている。この防水パッキンは、裏側ケースの環状溝に嵌合させ表側ケースを圧接することで電子機器の防水を図るもので、金属線を埋め込んでいるため、防水パッキンが変形し難くなっており、通常の防水パッキンを環状溝に装着するのに比べ作業性が向上している。
【特許文献1】実開平5−59885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の防水パッキンは、その防水パッキンと環状溝の加工精度が良くない場合には、防水パッキンを環状溝に対し簡単には装着することができなかった。すなわち、防水パッキンを環状溝に合うように曲げながら装着する必要があり、公差が大きいものでは通常の防水パッキンの装着より手間取ってしまうものである。
【0004】
本発明の課題は、防水部材を溝部に対し容易に挿入できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の部材の周囲に一体的に設けられる防水部材と、前記第1の部材に合体する第2の部材の周囲に設けられ前記防水部材が挿入される溝部と、前記防水部材に埋め込まれる補強部材と、前記第1の部材に対し前記補強部材との間に設けられる緩衝部と、を備える防水構造を特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記補強部材は、前記第1の部材に対しクリアランスによる前記緩衝部を設けて前記防水部材に埋め込まれ、且つ、前記溝部に対する挿入方向に沿った薄板状の部材であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記第1の部材と第2の部材は、合体して筐体を構成するケースであることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の防水構造であって、前記補強部材は、前記防水部材の全周にわたって設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の防水構造であって、前記補強部材は、前記防水部材の全周にわたる連続形状の成形品で、その一部を分割して長さ調整可能な調整部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、特徴とする請求項1に記載の防水構造であって、前記防水部材は、第1の部材の端部に延長して設けられる断面L字状をなすことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の防水構造であって、前記補強部材は、前記断面L字状の防水部材を貫通することを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の防水構造による筐体を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防水部材を溝部に対し容易に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、1は上ケース、2は下ケース、3は操作部、4は表示部、5は送話部、6は受話部である。図示例において、筐体は上ケース1と下ケース2を周囲の防水構造を介してネジ止めしたもので、上ケース1に操作部3、表示部4、送話部5、受話部6等が設けられている。
【0015】
図2は図1の筐体の上ケース1を内面側から見たもので、11はネジ止め部、13は操作キーシート、14は表示窓、15は送話用小窓、16は受話用小窓である。図示のように、上ケース1には、その周囲の四隅部及び中間部にネジ止め部11が形成されて、その内側に、操作部3の操作キーシート13、表示部4の表示窓14、送話部5の送話用小窓15、受話部6の受話用小窓16がそれぞれ防水シール構造をもって取り付けられている。
【0016】
そして、上ケース1の内面周囲には、図3にも拡大して示したように、ゴム等の弾性シール材による防水部材7が一体に形成されている。この防水部材7は、ネジ止め部11の内側に位置している。さらに、防水部材7には、その全周にわたって金属や硬質樹脂材等による補強部材8が埋設されている。この補強部材8は、防水部材7から一様に若干突出している。
【0017】
(実施形態1)
図4は実施形態1の防水構造を示したもので、21は溝部、71は緩衝部である。すなわち、下ケース2の周囲内面には、上ケース1の防水部材7が挿入される溝部21が形成されている。
【0018】
また、防水部材7には、図示のように、下ケース2の溝部21に対する挿入方向と平行する薄板状の補強部材8が、上ケース1の内面に対し若干のクリアランスによる緩衝部71を設けてインサート成形により一体に埋め込まれている。この薄板状の補強部材8は、その先端が防水部材7から一様に若干突出している。
【0019】
このような防水部材7を溝部21に挿入する場合、その挿入方向と平行する薄板状の補強部材8が若干のクリアランスによる緩衝部71を設けてインサートされているので、溝部21に対し緩衝部71により矢印で示した横方向への追従性を具備しながら容易に図4(a)に示すように挿入することができる。すなわち、図4(b)に示すように、防水部材7を溝部21に挿入する場合に、溝部21と防水部材7との位置が公差によりずれていたとしても、緩衝部71が撓んで防水部材7が溝部21にみちびかれる。
【0020】
以上、実施形態1の防水構造によれば、携帯電話の筐体において、上ケース1の全周の防水部材7を下ケース2の全周の溝部21に対し容易に挿入することができる。すなわち、公差があり少しくらいずれていても緩衝部71で防水部材7がしなるため、防水部材7を曲げるなどの手直しをする必要はない。
【0021】
そして、防水部材7には、溝部21への挿入方向と平行する薄板状の補強部材8が先端を若干突出させてインサートされているので、防水部材7の溝部21に対する挿入方向への変形も抑制することができ、例えば局部的なしわの発生を抑えてリークも防止することができる。従って、良好な防水性能が得られる。
【0022】
次に、図5は防水部材7及び補強部材8の成形方法の一例を示すものである。
先ず、型に部品を組み込む。すなわち、図5(a)に示すように、成形下型100のキャビティ101内に薄板状の補強部材8をセットして、その成形下型100の上に上ケース1を載せる。このとき、補強部材8の上端と上ケース1との間に若干のクリアランスを確保しておく。なお、図中、200は成形上型である。
【0023】
その後、型を閉じる。すなわち、図5(b)に示すように、成形下型100上の上ケース1に成形上型200を重ねる。
【0024】
そして、防水部材7を成形する。すなわち、図5(c)に示すように、型閉じ状態において、成形下型100のキャビティ101内に弾性部材(弾性シール材)を充填して、薄板状の補強部材8がインサートされた防水部材7を成形する。
【0025】
その後、型を開く。すなわち、図5(d)に示すように、成形下型100上の上ケース1から上方に成形上型200を上昇させる。
【0026】
そして、部品を取り出す。すなわち、図5(e)に示すように、薄板状の補強部材8がインサートされた防水部材7を一体に備える上ケース1を取出す。
【0027】
最後に、補強部材8の余分な突出部分を切り取る。すなわち、図5(f)に示すように、防水部材7の先端から突出した補強部材8の余分な突出部分を切り取る。
【0028】
以上、インサート成形の場合を説明したが、成形方法は2色成形または3色成形でも良い。
【0029】
また、図6は補強部材8のフォーミング例を示すもので、防水のための溝部21の形状が複雑な場合、補強部材8の成形型への挿入が困難になることが予想される。
このため、予め、図示のように、溝部21の形状に合わせて前記ネジ止め部11の内側に回避させる屈曲部81を形成した補強部材8をフォーミング加工しておく。
【0030】
そして、図7は補強部材8の調整部の構成例を示すもので、熱膨張等の理由で補強部材8の周方向に調整代が必要な場合は、その一部を分割した長さ調整部を設ける。
すなわち、図7(a)に示すように、補強部材8の一部を分割した長さ調整部82は、その両端部に前記溝部21への挿入方向において上下に重なり合う端片部83・84を形成してなる。
【0031】
あるいは、図7(b)に示すように、補強部材8の一部を分割した長さ調整部85は、その両端部に前記溝部21への挿入方向において互いに挿入して上下に重なり合う中央の端片部86及び溝部87を形成してなる。
以上のように、長さ調整部82・85は、前記溝部21への挿入方向において上下に重なり合う端片部83・84または中央の端片部86及び溝部87、すなわち、挿入方向に対して変形の少ない形状とする。
【0032】
(実施形態2)
図8は実施形態2の防水構造を示したもので、図示のように、上ケース1の周囲端部に延長してクリアランスによる緩衝部71を設けた断面L字状の防水部材7を一体成形するとともに、その断面L字状の防水部材7に貫通する薄板状の補強部材8をインサート成形している。
【0033】
このような断面L字状の防水部材7を設けて、その断面L字状の防水部材7に薄板状の補強部材8を貫通させた構成としても、前述した実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0034】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書など、筐体防水構造を備えた電子機器すべてに用いることができる。
また、補強部材は分割された構造であっても良い。
また、緩衝部は防水部材と異なる部材により一体成形したものであってもよい。
さらに、防水部材及び補強部材の材質や形状、調整部の構造等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話を示した斜視図である。
【図2】図1の筐体の上ケースを内面側から見た斜視図である。
【図3】図2の矢印A部の拡大図である。
【図4】実施形態1の防水構造を示した縦断側面図であり、挿入状態を示す図(a)、挿入途中を示す図(b)である。
【図5】防水部材及び補強部材の成形方法の一例を示すもので、型に部品を組み込む工程を示す図(a)、型閉じ工程を示す図(b)、防水部材の成形工程を示す図(c)、型開き工程を示す図(d)、部品取り出し工程を示す図(e)、及び補強部材の切り取り工程を示す図(f)である。
【図6】補強部材のフォーミング例を示す斜視図である。
【図7】補強部材の調整部の構成例を示す側面図(a)(b)である。
【図8】実施形態2の防水構造を示した縦断側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 第1の部材(上ケース)
2 第2の部材(下ケース)
21 溝部
7 防水部材
71 緩衝部
8 補強部材
82 調整部
85 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の周囲に一体的に設けられる防水部材と、
前記第1の部材に合体する第2の部材の周囲に設けられ前記防水部材が挿入される溝部と、
前記防水部材に埋め込まれる補強部材と、
前記第1の部材に対し前記補強部材との間に設けられる緩衝部と、を備えることを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記第1の部材に対しクリアランスによる前記緩衝部を設けて前記防水部材に埋め込まれ、且つ、前記溝部に対する挿入方向に沿った薄板状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記第1の部材と第2の部材は、合体して筐体を構成するケースであることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項4】
前記補強部材は、前記防水部材の全周にわたって設けられることを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項5】
前記補強部材は、前記防水部材の全周にわたる連続形状の成形品で、その一部を分割して長さ調整可能な調整部を有することを特徴とする請求項4に記載の防水構造。
【請求項6】
前記防水部材は、第1の部材の端部に延長して設けられる断面L字状をなすことを特徴とする請求項1に記載の防水構造。
【請求項7】
前記補強部材は、前記断面L字状の防水部材を貫通することを特徴とする請求項6に記載の防水構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の防水構造による筐体を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−87022(P2010−87022A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251386(P2008−251386)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】