説明

防水防塵薄膜アセンブリ及びそれを用いた装置

【課題】十分な防水性、防塵性、通音性、通気性を有すると共に、優れた支持強度と耐圧性とを有する、防水防塵薄膜アセンブリを提供する。
【解決手段】本体と支持体とを有する防水防塵薄膜アセンブリであって、前記本体は、第1表面と第2表面とを有する薄膜状の非対称性多孔質構造体であり、前記支持体は、高分子材料により構成され、第1接触面と第2接触面とを含み、前記支持体の空隙率(第2空隙率)は第1空隙率より大きく、10%〜99.9%であり、前記本体の第1表面と前記支持体の第1接触面とが貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水防塵薄膜アセンブリ及びそれを用いた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
科学の発達が人類の生活の質を向上させ、各種の電子機器が人類の生活にとって不可欠な存在となっている。このような電子機器としては、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、MP3プレーヤ、MP4プレーヤ、PDAなどの消費型電子機器や監視カメラシステム、屋外照明、交通信号灯、水中用電子機器、船舶用電子機器、通信機器などの一般的な屋外用電子機器や医療用電子機器が挙げられる。
【0003】
種々の屋外用電子機器の函体は、温度変化、風雨の侵食、太陽の輻射に常にさらされている。そのうえ、急激な環境温度の低下は函体内外の気圧の不均衡を生じる。このため、空気や湿気が函体内に侵入し、空気や湿気に敏感な電子回路が函体内で腐食を起こし、故障や損害を招く。また、誤ってあるいは頻繁に使用される場合に、水や他の液体がはねかかる、防水防塵機能を有さない消費型電子機器は、液体や埃が電子回路内に入り込むために、損害を受けやすい。そのため、関連メーカーは、存在する電子機器の実用性と持久性をたえず改良することに関心を有している。
【0004】
電子機器の耐用年数を延ばすための一つの主要な要因は、内部の電子回路が正常に機能し続けることである。電子機器に長期の耐用年数とするように、電気機器の感度を保障し、内部電子回路の正常な駆動を確保するために、さらに劣悪な環境下でも電子機器が有効に稼動することを可能にするためにも、防水機能、防埃機能、耐腐食性、通気性を含む要因をさらに検討する必要がある。
【0005】
現在、保護膜として多孔性フィルムを用いるのが一般的である。特に、多くの多孔性フィルムは、フッ化重合体、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ化高分子材料で作られている。
【0006】
PTFE多孔質膜は、その表面に優れた撥水性を有し、上記材料の中で最も大きい水接触角を示す。そのため、PTFE多孔質膜は、普通の液体に濡れにくく、その他の材料と粘着しにくい。
【0007】
PTFE多孔質膜は、開示されたプロセス(例えば、特許文献1〜3など)に基づいて製造される。得られたPTFE多孔質膜は、優れた通気性を有する、1平方インチあたり10億〜150億個の微小孔を有する多孔性フィルムとすることができる。さらに、上記PTFE多孔質膜は、雨滴の1万分の1の大きさで、汗粒や蒸気の粒子の700倍の大きさの、平均粒径0.25〜0.55μmを有するので、PTFE多孔質膜は、通気性と防防水性膜として有利である。
【0008】
PTFE多孔質膜のマイクロファイバーで構成された内部網目構造は、本来耐熱性と表面潤滑性があり、膜表面に吸着された塵埃を容易に除去することができる。上記PTFE多孔質膜は、異なる孔径のものを作ることができ、防塵機能が要求される材料へ利用するために種々の布地を積層することもできる。したがって、PTFE多孔質膜は、防塵やフィルタリング目的に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3953566号公報
【特許文献2】米国特許第3962153号公報
【特許文献3】米国特許第4902423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
防水性、音響透過性、防塵性、通気性を有するPTFE多孔質膜で作成されたこの種の保護膜は、異なる機器に適用する場合に、異なるレベルの耐水性、音響透過性、通気性を与える必要がある。PTFE多孔質膜の防水性は、平均孔径を減少させることで向上することが知られている。一方、防水性と通気性は、通常お互いの性能を損なう。言い換えると、防水性と通気性は、トレード・オフの関係にある。さらに、音響透過性と防水性もまたトレード・オフの関係にある。要するに、平均孔径を減少させると、通気性と音響透過性が低下する。したがって、通気性と音響透過性を低下させることなく、防水性を向上させるのは容易ではない。PTFE多孔質膜で形成された保護膜製品を製品が存在するが、高い通気性と高い音響透過性とを有する保護膜製品は、比較的大きい孔径を有しており、防水性が弱いことが示唆される。一方、良好な防水性がある比較的小さい孔径を有する製品は、しばしば通気性が低く、音響透過性が低くなる。
【0011】
上記一般的な電子機器や防水性の電子機器は、内部電気回路を保護するためにPTFE多孔質膜で作られる適切な保護膜を必要とし、防水能力や通気性に関して特別な要求を求める多くの非電子機器もまた、このような保護膜を必要としている。それゆえ、十分な防水性、防塵能力や通気性を有し、製品を保護し、製品の耐用年数を延ばすために、種々の製品に広く適用することのできる保護膜をどのように作成するのかが解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の主目的は、十分な防水性、防塵性、通音性、通気性を有すると共に、優れた支持強度と耐圧性とを有する、防水防塵薄膜アセンブリを提供することにある。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、本体と支持体とを備える防水防塵膜アセンブリを提供する。この本体は、第1表面と第2表面とを有する薄膜状の非対称性多孔質構造体である。前記非対称性多孔質構造体は、その厚みが1〜1000μm、その空隙率(第1空隙率)が5%〜99%、各気孔の孔径が0.01〜15μm、フレイジャー気体流量が10〜60×104ft3/minft2、ガーレー数が0.3〜25秒である。前記支持体は、高分子材料により構成され、第1接触面と第2接触面とを含み、前記支持体の空隙率(第2空隙率)は第1空隙率より大きく、10%〜99.9%であり、前記本体の第1表面と前記支持体の第1接触面とが貼り付けられている。
【0014】
前記非対称性多孔質構造体は、緻密性の高いスキン層と連続気泡性の多孔質層とを有し、前記スキン層は、非対称性多孔質構造体の厚みの0.04〜40%を占めるとよい。前記スキン層の接触角が、120°〜135°であるとよい。
【0015】
前記非対称性多孔質構造体は、前記第1表面または第2表面のいずれかの表面にスキン層を有するものであってもよい。前記非対称性多孔質構造体は、前記第1表面と第2表面の両側にスキン層を有するものであってもよい。
【0016】
前記非対称性多孔質構造体は、対称性多孔質構造体を加熱処理して製造されており、加熱処理前から加熱処理後のフレイジャー気体流量の変化量が1.1〜2.5倍であるとよい。
【0017】
前記非対称性多孔質構造体は、その捕集効率が、99.50〜99.99%であるとよい。
【0018】
前記スキン層が前記第1表面側または前記第2表面側のいずれか一方に設けられている非対称性多孔質構造体を用いる防水防塵薄膜アセンブリの耐水圧が3,000〜20,000mmH2Oで、通気度が0.42〜6.1cm3/cm2/秒、音響損失が0.5〜2.5dBであるとよい。前記スキン層が前記第1表面側および前記第2表面側に設けられている非対称性多孔質構造体を用いる防水防塵薄膜アセンブリの耐水圧が5,000〜20,000mmH2Oで、通気度が0.1〜0.34cm3/cm2/秒、音響損失が0.5〜2.5dBであるとよい。
【0019】
前記本体は、樹脂系多孔質膜およびフッ素重合体膜から選択され膜で形成されるとよい。前記樹脂系多孔質膜は、超高分子量ポリエチレン多孔質膜またはポリテトラフルオロエチレン膜であるよい。前記フッ素重合体膜は、部分フッ素化ポリマーまたは完全フッ素化ポリマーであるとよい。
【0020】
本発明の別の目的は、優れた支持強度と耐圧性とを有し、水中用製品に適用することができる防水防塵薄膜アセンブリを提供することにある。
【0021】
また、本発明のさらに別の目的は、十分な防水性、防塵性、通音性、通気性を有する防水防塵薄膜アセンブリを備えた、電子デバイス、照明装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の防水防塵薄膜アセンブリは、本体と支持体とを備える。本体は、第1表面と第2表面とを有する薄膜状の非対称性多孔質構造体であり、前記非対称性多孔質構造体は、その厚みが1μm〜1000μm、その空隙率(第1空隙率)が5%〜99%、各気孔の孔径が0.01μm〜15μm、フレイジャー気体流量が10〜60×104ft3/minft2、ガーレー数が0.3〜25秒である。このような本体を用いることで、防水性と通気性または音響透過性と防水性のように通常トレード・オフの関係にある性能を損なうことなく、十分な防水性、防塵性、通音性、通気性を有する防水防塵薄膜アセンブリを提供することができる。
【0023】
また、本発明の防水防塵薄膜アセンブリは、支持体を備える。この結果、優れた支持強度と耐圧性とを有する防水防塵薄膜アセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリの概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリの概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリにおいてスキン層を形成するための加熱処理の仕方を説明する概略図である。
【図5】図5は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを用いた携帯電話の概略図である。
【図6】図6は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを用いた水中デジタルカメラの概略図である。
【図7】図7は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを用いた照明装置の概略図である。
【図8】図8は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを用いた容器の概略図である。
【図9】図9は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリのガーレー数と音響透過損失との関係を評価したグラフである。
【図10】10は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリのガーレー数と耐水圧(水侵入圧力)との関係を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
以下に、本発明の第1の実施の形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリを、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリの概略断面図である。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態にかかる防水防塵薄膜アセンブリ10は、本体11と支持体12とを有する。本体11は、第1表面111と第2表面112とを有する薄膜状の非対称性多孔質構造体113である。薄膜状の非対称性多孔質構造体113は、スキン層1131と連続気泡性の多孔質層1132とから構成される。支持体12は、高分子材料により構成され、第1接触面121と第2接触面122とを含本体11と支持体12とは、本体の第1表面111と前記支持体の第1接触面121間で貼り付けられている
【0026】
[本体]
(材料)
本体の材料は、薄膜状の非対称性多孔質構造体を形成することができるものであれば特に制限はない。好ましい材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂、部分フッ素化ポリマー、完全フッ素化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン以外の)などのフッ素重合体である。特に好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)である。以下に、PTFEを用いて薄膜状の非対称性多孔質構造体113を形成する方法を説明する。
【0027】
なお、本明細書において、対称性多孔質膜とは、膜全体に所定の平均孔径を有する孔が均質に存在しているものをいう。また、非対称性多孔質構造体113とは、対称性多孔質膜表面を加熱処理することで、多孔構造がより緻密化された表面(スキン層1131)を有するものをいう。全体に所定の平均孔径を有する孔が均質に存在しているものをいう。連続気泡性とは、実質的に加熱前の膜と同じ構造の多孔質構造を示すことをいう。
【0028】
本実施の形態で使用する非対称性多孔質構造体113は基本的に、以下に示す公知の6つの工程によって製造できる。
【0029】
(1)PTFEファインパウダーのペースト押出し工程乳化重合法で得られたPTFEファインパウダーとナフサなどの押出助剤とのペースト状混合物を、押出機で押出し、円柱状、角柱状、シート状の押出物を得る。
【0030】
なお、PTFEファインパウダーとは、乳化重合法で得られた重合体の水性分散液を凝析することにより重合体を分離し、これを乾燥した粉末である。重合体の構成はテトラフルオロエチレン(TFE)単独重合体、またはTFEと少量、通常0.5重量%以下のパーフルオロアルキルビニルエーテルもしくはヘキサフルオロプロピレンなどとの共重合体(変性PTFE)である。
【0031】
この工程において、PTFEの配向を極力押さえることが、次の延伸工程を円滑に進めることができる点で好ましい。配向の抑制は、ペースト押出しにおけるリダクション比(好ましい範囲は100:1以下、通常20〜60:1)、PTFE/押出助剤比(通常77/23〜80/20)、押出機のダイ角度(通常60°前後)などの適切な選定により達成することができる。
【0032】
(2)ペースト押出物の圧延工程(1)で得たペースト押出物をカレンダーロールなどにより押出方向または押出方向に直交する方向に圧延し、シート状とする。
【0033】
(3)押出助剤の除去工程(2)で得た圧延物を加熱またはトリクロロエタン、トリクロロエチレンなどの溶剤を用いて抽出することにより押出助剤を除去する。
【0034】
加熱温度は押出助剤によって適宜選択することができるが、200〜300℃であることが好ましい。特に250℃前後で加熱することが好ましい。300℃をこえる温度、特にPTFEの融点である327℃よりも高いと、焼成される傾向がある。
【0035】
(4)延伸工程(3)で得た押出助剤を含まない圧延物を一軸方向または二軸方向に延伸する。延伸前に約300℃前後に予熱してもよい。また、二軸延伸をするときは逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
【0036】
延伸倍率は膜の引張強度などに影響を与えるので慎重に選ぶべきである。通常面積倍率で300〜1000%、好ましくは400〜800%の範囲内とする。300%よりも低いと、目的とする孔径、空隙率を得られない傾向にあり、1000%よりも高いと、やはり目的とする孔径、空隙率を得られない傾向にある。
【0037】
(5)ヒートセット工程(4)で得た延伸物をPTFEの融点(約327℃)よりも少し高く分解温度よりも低い340〜380℃で比較的短時間(5〜15秒間)加熱処理してヒートセットする。340℃よりも低いと、セットが不充分となり、380℃よりも高いとセット時間が短くなり、時間のコントロールが難しくなる傾向がある。
【0038】
本発明では、このようにして得られた延伸多孔質PTFE膜を、一方の面を冷却しながら、他方の面を加熱処理し、その後冷却することによって、非対称性多孔質PTFE膜を製造する。
【0039】
このとき、加熱条件は、延伸多孔質PTFE膜を、260℃〜380℃、好ましくは340℃〜360℃で5〜15秒間、好ましくは6〜10秒間、加熱処理する。加熱処理温度が、260℃より小さいと、スキン層1131の形成が不充分になる傾向にあり、380℃を超えるとスキン層1131の厚みが過大になり、通音性、通気性が低下する傾向にある。
【0040】
前記のように、ヒートセットされた対称性多孔質PTFE膜の一方の面を再び加熱処理することで、一方の膜表面のみが変性され、多孔構造、表面粗度、接触角などの特性を有する非対称性多孔質PTFE膜が得られる。
【0041】
多孔構造は、SEM写真によると、従来の対称性多孔質PTFE膜全体がほぼ均一な多孔構造を形成しているのに対して、本発明にかかる非対称性多孔質PTFE膜は、スキン層1131が緻密な層として形成され、多孔質層1132は従来の対称性多孔質PTFE膜と同等の多孔構造を有していた。また、膜全体の空隙率は5〜90%、好ましくは20〜90%,50〜90%である。これは、対称性多孔質PTFE膜の空隙率が45〜90%であることからみて、かなり緻密化されていることがわかる。空隙率が5%より小さいと、透過量が低下して、通気性が悪くなり、90%を超えると、防水性が低下する。ここで、前記空隙率は、密度の測定から下記の式により求められる。
空隙率(%)=(1−PTFE見掛密度/PTFE真密度)×100ただし、PTFE見掛密度(g/cc)=多孔質PTFE膜の重量(W)/容積(V)、真密度(g/cc)=2.15(文献値)とする。
【0042】
本発明の非対称性多孔質PTFE膜多孔質層の孔径は、0.01〜15μm、好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.2〜3μmである。本明細書中で、孔径は、ASTM F316の方法に基づいて測定する。孔径が0.01μmより小さいと、透過量が低下して、通気量、通音性が低下し、15μmを超えると、防水性が低下する。また、多孔質層1132の孔径は、0.04〜0.80μmであることが好ましい。
【0043】
まず、対称性多孔質PTFE膜と、これを熱処理することにより得られた非対称性PTFE膜について、SEM写真(×20,000倍)から熱処理前後において多孔質層の孔径、構造などに変化がないことを確認する。この熱処理後において、多孔質層1132の孔径、構造などは変化せず、スキン層1131のみが変性する点が本発明の特徴の1つである。
【0044】
導入気体の圧力が低い間は、試料膜がバリヤーとなり、室内の圧力は連続的に徐々に高くなる。圧力が高くなり試料膜のバリヤー性が失われると気体の透過が始まり、試料室の昇圧が停止するのでその圧力を測定する。
【0045】
また、本発明の非対称性多孔質構造体113を作成するにあたり、他の混合物を添加してもよい。混合する添加物は、二酸化チタン、二酸化シリコン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、無機酸化物、有機酸化物である。これらの添加物は、単独で使用してもよく、2種以上の添加物を組み合せて使用してもよい。添加剤の含有量は、約15〜30%である。
【0046】
本発明で用いる非対称性多孔質構造体113は、例えばその厚みが1〜1000μm、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜200μmである。非対称性多孔質構造体113の厚みが1μm未満であると、機械的強度が十分でなく、実用性に乏しい。一方、非対称性多孔質構造体113の厚みが1000μmより大きいと、通気度が低下する。
【0047】
本発明で用いる非対称性多孔質構造体113は、フレイジャー気体流量が(10〜60)×104ft3/minft2、好ましくは(25〜45)×104ft3/minft2、より好ましくは(30〜45)×104ft3/minft2である。
フレイジャー気体流量測定
フレイジャー気体流量は、ASTM D−726−58に準じて測定する。
【0048】
本発明で用いる非対称性多孔質構造体113は、ガーレー数が0.3〜25秒、好ましくは0.5〜2.5秒、より好ましくは0.6〜1.0秒の対称性多孔質構造体を上記条件で処理をし、以下のような物性を取得したものである。ガーレー数は、JISP8117の方法に基づいて測定する。
【0049】
また、前記スキン層1131は、スキン層1131を連続気泡性の多孔質層1132の第1表面に形成する場合、非対称性多孔質構造体113の厚みの0.04〜40%を占めればよい。この割合でスキン層1131を設けることにより、本願発明の防水防塵薄膜アセンブリ10の機能を奏することができる。
【0050】
また、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10においてスキン層113の水への接触角が、120°〜135°であると好ましい。スキン層113の水への接触角がこの範囲にあると、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は十分な防水性を有する。
【0051】
ここで、対水接触角は、下記式により求められる。
接触角=2tan-1(h/r)
ただし、h=球状の水滴の高さ、r=球状の水滴の半径である
【0052】
また、非対称性多孔質構造体113は、対称性多孔質膜を加熱処理して製造されており、加熱処理前から加熱処理後のフレイジャー気体流量の変化量が1.1〜2.5倍、好ましくは1.2〜2.0倍、さらに好ましくは1.3〜1.9倍であるとよい。本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、対称性多孔質構造体113にスキン層1131を設けることにより、通気量が増加する。これにより、十分な通気性を有する防水防塵薄膜アセンブリ10を得ることができる。
【0053】
また、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10にかかる非対称性多孔質構造体1131の音響損失は、0.5〜2.5dB、好ましくは0.5〜1.8dB、さらに好ましくは0.5〜1.3dBである。このように、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10では、防水性が高くても、高い音響透過性を有する。音響損失は、IEEE269の方法に準じて測定する。
【0054】
スキン層1131を非対称性多孔質構造体113の第1表面側に形成する場合の耐水圧は、3,000〜20,000mmH2O(=29,400〜196,000Pa)、好ましくは8,000〜19,000mmH2O(=78,400〜186,200Pa)、さらに好ましくは10,000〜16,000mmH2O(=98,000〜156,800Pa)である。
【0055】
また、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10にかかる非対称性多孔質構造体113の捕集効率は、99.50〜99.99%、好ましくは99.70〜99.99%、さらに好ましくは、99.90〜99.99%である。このように非対称性多孔質構造体113の捕集効率が極めて良好であるため、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、優れた防塵性を有する。なお、捕集効率はフィルターホルダーMODEL8130(TSI社製)に多孔質PTFE膜をセットし、圧力調整により出口側の空気流量を35.9L/minに調整し、粒子径0.3μmのコロイド粒子を含む空気の濾過を行ない、粒子計測器により透過粒子数を測定後、次式により捕集効率を算出した。
捕集効率(%)=〔1−(下流側の透過粒子濃度)/(上流側の空気中の粒子濃度)〕×100
【0056】
上記するように、本発明の本体を構成する非対称性多孔質構造体113は、耐熱性、難燃性、耐酸性、耐アルカリ性、防水性、撥水性、撥油性を有する。また、非対称性多孔質構造体113の網目の結合交点が全方向に存在する。したがって、本体はクリープを起こしにくい。
【0057】
また、本体11の非対称性多孔質構造体113は、その孔径と第一空隙率を調整することで、個々の製品に要求される防水性、防塵性、通音性、通気性を満たすことができる。例えばPTFE膜を上記延伸成形方法により加工する場合は、延伸温度、延伸速度などを制御して、孔径を制御する。次に、スキン化工程により、第一空隙率と非対称性多孔質構造体の均一性を改善する。
【0058】
[支持体]
本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10において、支持体12は高分子材料で形成される。支持体12の材料としては、特に制限はなく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。支持体12は、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ状、発泡体、多孔質体などであればよい。
【0059】
また、支持体12は、多孔質であり、前記支持体12の空隙率(第2空隙率)は第1空隙率より大きく、10%〜99.9%である。このような支持体を用いることで、本体11と支持体12とを貼り付けても、防水性、防塵性、通音性、通気性などの機能はほとんど低下しない。また、本体11に支持体12を貼り付けることで、支持強度、耐水圧性が補強される。
【0060】
本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、本体11と支持体12とを貼り付けて得られる。具体的には、本体11の第1表面111と支持体12の第1接触面121とを貼り付ける。本体11と支持体12との貼り付けは、特に制限はなく、熱圧着、接着剤、超音波接着、両面接着テープなどを用いて行うことができる。好ましい貼り付け方法は、熱圧着である。熱圧着を用いれば、本体の機能の損失をほとんど失うことがなく、支持強度、耐水圧性の効果を確保することができるからである。
【0061】
図1の例では、本体の第1表面側111にスキン層1131が設けられている。本実施の形態によれば、十分な通気性が得られ、装置内の結露を有効に防止することができる。
【0062】
本発明の防水防塵薄膜アセンブリは、適用する製品に応じて、任意の形状にすることができる。例えば、円形、楕円形、多角形、不定形などである。
【0063】
本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、適用する製品や製品の色彩に応じて、染色してもよい。染色は、本体11、支持体12のいずれであってもよく、また両方であってもよい。また、染色は、上記本体11、支持体12の製造時であってもよく、製造後であってもよく、両者を張り合わせた後であってもよい。染色する色彩は、特に制限はなく、適用する製品や製品の色彩に応じて適宜選択することができる。染色の方法は、公知の方法で行えばよい。例えば、染料を溶解した溶液に浸漬するなどである。
【0064】
また、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、撥油処理を施してもよい。撥油処理を施すことで、撥油性を向上させることができる。撥油処理は、公知のフッ素系撥油剤、シリコーン系撥油剤を用いればよい。これにより、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10の防油レベルを向上させ、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を特殊な作業環境下でも利用することができる。撥油処理は、本体11、支持体12のいずれであってもよく、また両方であってもよい。また、撥油処理は、上記本体11、支持体12の製造時であってもよく、製造後であってもよく、両者を張り合わせた後であってもよい。撥油性は、公知の撥油剤を塗布、含浸させることで行う。撥油性の評価は、AATCC188に準じて行う。
【0065】
[実施の形態2]
図2に本発明の実施の形態2の防水防塵薄膜アセンブリを示す。符号は、図1に示すものと同じである。図2の例による防水防塵薄膜アセンブリ10は、スキン層1131が第2の表面112側に設けられている点で、スキン層1131が第1の表面111側に設けられている図1の防水防塵薄膜アセンブリと異なる以外は、実施の形態1の防水防塵薄膜アセンブリと同様である。
【0066】
図2の例の防水防塵薄膜アセンブリ10は、スキン層1131が本体11の第2の表面112側に設けられている。この結果、同一の本体11を用いた場合に、通気量は、実施の形態1より低下し、耐水圧、音響透過損失は、実施の形態1より向上する。したがって、図2の例の防水防塵薄膜アセンブリは、水中カメラなど水中などで用いる場合に好ましい。また、本体の構成を変更することで、通気性などを向上させることもできる。したがって、図2の例の防水防塵薄膜アセンブリも、図1の例の防水防塵薄膜アセンブリと同様の機能を有する。
【0067】
[実施の形態3]
図3に本発明の実施の形態3の防水防塵薄膜アセンブリを示す。符号は、図1に示すものと同じである。図3の例による防水防塵薄膜アセンブリは、スキン層1131が第1の表面111側にも、第2の表面112側にも設けられている点を除けば、実施の形態1の防水防塵薄膜アセンブリと同様である。
【0068】
図3の構成とすることで、図1の例と比べ、耐水圧を向上させることができる点を除けば、図1と同様の機能、効果を奏する。これは、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を構成する本体の孔径が空気分子(〜0.0004μm)よりはるかに大きいためである。また、第2の表面112側にもスキン層1131が設けられているので、実施の形態2と同様に耐水圧を向上させることができる。
【0069】
本実施の形態における耐水圧は、5,000〜20,000mmH20(=49,000〜196,000Pa)、好ましくは11,000〜19,000mmH20(=107,800〜186,200Pa)、さらに好ましくは13,000〜16,000mmH20(=127,400〜156,800Pa)である。したがって、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを使用する製品が耐水圧を要求するかどうかで、使用する本体の薄膜状の非対称性多孔質構造体を代えればよい。
【0070】
スキン層1131を連続気泡性の多孔質層1132の第1表面111と第2表面112の両側にスキン層1131を形成する場合は、以下の方法で行えばよい。
【0071】
まず、均質な対称性多孔質構造体13を、縦方向(MD)の延伸を行う。延伸割合を3〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは10〜50で、延伸温度を200〜400℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは280〜330℃で行うとよい。なお、延伸割合が、3とは、1の長さの多孔質構造体を3倍に延伸すること(1:3)を意味する。
【0072】
次に、縦方向(MD)の延伸を行った多孔質構造体13を、横方向(TD)の延伸を行う。延伸割合を2〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜12で、延伸温度を200〜400℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは280〜330℃で行うとよい。
【0073】
まず、均質な対称性多孔質構造体13を、加熱されたローラ14を用いて加熱して緻密化してスキン層1131を形成する。加熱処理は、図4(a)に示すように、均質な対称性多孔質構造体13を加熱ローラで上下から挟み、同方向に移動させて加熱処理を行う、または図4(b)に示すように、均質な対称性多孔質構造体13の一面を加熱ローラ14で処理して、緻密化させ、その後に、他面を別の加熱ローラ13で処理して、緻密化させてもよい。また、対称性多孔質構造体13の両面を別個に加熱ローラで処理する場合は、図4(b)の例に限らず、ローラなどでフィルムの進行方向を変えて一の加熱ローラ14で加熱処理をしてもよい。加熱してスキン層1131を形成する。加熱ローラ14の温度は例えば100〜400℃である。加熱ローラ14で対称性多孔質構造体13の上下を挟んで加熱処理をする場合は、温度が低い(例えば、250〜300℃)ほうが好ましく、スキン層1131を上下別個に形成する場合は、温度が高い(例えば、350〜400℃)ほうが好ましい。スキン層1131を上下別個に形成するほうが、フィルムがローラによる加圧の影響を受けにくいので好ましい。
【0074】
その後、加熱緻密化した延伸多孔質PTFE膜を2度目の横方向への延伸処理を行う。2度目の横方向(TD)の延伸では、延伸割合を1.5〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜6で、延伸温度を200〜400℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは280〜330℃で行うとよい。
【0075】
延伸処理後、さらに加熱されたローラ14を用いて加熱処理を行う。加熱ローラ14の温度は例えば100〜400℃である。加熱処理の方法は、上記と同様である。
【0076】
なお、2回目の横延伸およびその後の加熱処理は省略することもできる。
【0077】
上記したように本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、防水性、防塵性、通気性、耐水圧に優れる。したがって、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、一般の電子機器、水中用の電子機器、それ以外の製品まで広く使用することができる。
【0078】
一般の電子機器としては、デジタルカメラ、携帯電話、MP3プレーヤ、イヤホン、マイクロフォン、スピーカ、無線機、電子書籍、自動車用バックアップレーダ、トランシーバ、プロジェクタ、インクカートリッジ、バッテリーボックス、屋外照明設備、自動車用ランプ、LED照明装置、ガス検知器、医療用電子機器、軍用特殊電子機器などが挙げられる。
【0079】
水中用の電子機器としては、例えば水中用デジタルビデオカメラ、水中用デジタルカメラ、水中MP3プレーヤ、水中用照明器具、防水アダプタなどのような比較的高い防水規格が要求される機器が挙げられる。
【0080】
または、特殊な条件を要する防水防塵通気容器あるいはその他缶包装容器などのそれ以外の製品(例えば、ペトリ皿、太陽電池接続箱と容器など)にも適用することができる。
【0081】
図5は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を用いた携帯電話を示す概略図である。図5(a)に示すように、携帯電話20は、函体21と少なくとも一つの電子回路部品(図示せず)とを備える。函体の正面には、少なくとも一つの開口部22(この図の例では3個)が設けられている。それぞれの開口部22は、送受信機221、スピーカ222、マイクロフォン223が設けられている。また、図5(b)は、図5(a)に示す携帯電話の函体21の内部を示す図である。図5(b)に示すように、それぞれの開口部22に対応させて、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10が配置されている。このように、開口部22に対応させて防水防塵薄膜アセンブリ10を配置することで、蒸気、塩分やその他の液体が、開口部22を通じて、機器内部に侵入することを防止することができる。この結果、函体内の電子回路部品を保護し、携帯電話の耐用年数を向上させることができる。他の電子機器においても、同様の効果を有する。
【0082】
図6は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を用いた水中デジタルカメラ30を示す概略図である。図6に示すように、水中デジタルカメラ30は、函体31と少なくとも一つの電子回路部品(図示せず)とを備える。函体31の正面には、少なくとも一つの開口部32(この図の例では1個)が設けられている。この開口部32は、ビデオ録画の際の音響透過、あるいはマイクロフォンとして使用される。水中デジタルカメラ30にとって、防水の機能と同様に、ビデオ録画の際に透過する音質は重要である。図6の例では、函体内で、開口部32に対応させて本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10が配置されている。このように、開口部32に対応させて防水防塵薄膜アセンブリ10を配置することで、水などの液体が、開口部22を通じて、機器内部に侵入することを防止することができる。一方、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、音響透過性に優れる。また、耐水圧性に優れる。この結果、水中で使用しても函体内の電子回路部品を保護し、水中デジタルカメラの耐用年数を向上させるとともに、音響透過性に優れる。
【0083】
図7は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を用いた照明装置を示す概略図である。図7に示すように、照明装置40は、中空函体41と、カバー42と、少なくとも一つの光源装置(例えば、発光ダイオード)43とを備える。上記中空函体41は、上記カバー42と嵌合する窓部411を有する。上記カバー42は、少なくとも一つの開口部421を有する。上記少なくとも一つの光源装置43は、前記少なくとも一つの開口部421に対応して中空函体41の内部に配置されている。上記カバー42に設けられた開口部421に、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10が配置されている。本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、優れた防水性、防塵性、通気性を有する。したがって、水蒸気がカバー42の開口部421を通じて、照明装置40内に自由に出入りすることができる。この結果、照明装置の中空函体41内の結露の除去と減少を速やかに行うことができる。同時に外部の埃や雨水などの液体の装置内への侵入を防ぐことができる。
【0084】
図8は、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10を用いた容器を示す概略図である。図8に示すように、容器50は、中空函体51と、蓋52とを備える。上記中空函体51は、上記蓋52と嵌合する窓部511を有する。上記蓋52は、少なくとも一つの開口部521を有する。上記蓋52に設けられた開口部521に、本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10が配置されている。本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10は、優れた防水性、防塵性、通気性を有する。したがって、水蒸気が蓋52の開口部521を通じて、容器50内に自由に出入りすることができる。この結果、容器50の中空函体51内の結露の除去と減少を速やかに行うことができるので、容器50の内側を湿気から保護することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限られるものではない。
【0086】
(実施例1)
(実施例A)
本発明の防水防塵薄膜アセンブリ10で、図1に示すようにスキン層1131が本体1132の第1表面111側に設けられているものを用いた。
(実施例B)
本発明の防水防塵薄膜アセンブリで、図2に示すようにスキン層1131が本体1132の第2表面112側に設けられているものを用いた。
【0087】
上記実施例A、Bのガーレー数、通気度、耐水圧、音響透過損失を調べた。結果は、以下の表に示す。以下の値は、10個の測定結果による値である。
【0088】
【表1】

【0089】
この表から、同一の非対称性多孔質構造体を用いた場合に、スキン層を第1表面側に設けたもののほうがガーレー数が小さく、通気度が大きいことがわかる。したがって、実施の形態1の構造のほうが、非電子部品の結露防止のために使用すると好ましいことがわかった。
【0090】
一方、スキン層を第2表面側に設けたもののほうが通気度は小さいが、耐水圧が大きく、音響透過損失が小さいことがわかる。したがって、実施の形態2の構造のほうが、非電子部品の結露防止のために使用すると好ましいことがわかった。したがって、この構造のほうが水中電子機器などに適していることがわかった。
【0091】
(実施例2−1)
空隙率60%、厚み20〜25μm、孔径0.20〜0.45μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
表2から、特に300〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0094】
(実施例2−1)
空隙率70%、厚み20〜25μm、孔径0.20〜0.45μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
表3から、特に300〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0097】
(実施例2−3)
空隙率80%、厚み20〜25μm、孔径0.20〜0.45μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
表4から、260〜380℃、特に300〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0100】
(実施例2−4)
空隙率90%、厚み20〜25μm、孔径0.20〜0.45μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表5に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
表5から、260〜380℃、特に300〜340℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0103】
(実施例2−5)
空隙率60%、厚み〜10μm、孔径0.7〜1.3μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表6に示す。
【0104】
【表6】

【0105】
表6から、260〜380℃、特に300〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0106】
(実施例2−6)
空隙率70%、厚み〜10μm、孔径0.7〜1.3μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表7に示す。
【0107】
【表7】

【0108】
表7から、260〜380℃、特に300〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0109】
(実施例2−7)
空隙率80%、厚み〜10μm、孔径0.7〜1.3μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表8に示す。
【0110】
【表8】

【0111】
表8から、260〜380℃、特に340〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0112】
(実施例2−8)
空隙率90%、厚み〜10μm、孔径0.7〜1.3μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表9に示す。
【0113】
【表9】

【0114】
表9から、260〜380℃、特に340〜380℃で加熱すると、防水性、防塵性、通音性、通気性に優れる非対称性多孔質構造体が得られることがわかる。
【0115】
(比較例2−1)
空隙率60%、厚み50μm、孔径0.05〜0.08μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表10に示す。
【0116】
【表10】

【0117】
表10から、孔径が小さすぎるため、防水性、通気性に劣ることがわかった。
【0118】
(比較例2−2)
空隙率70%、厚み50μm、孔径0.05〜0.08μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表11に示す。
【0119】
【表11】

【0120】
表11から、孔径が小さすぎるため、防水性、通気性に劣ることがわかった。
【0121】
(比較例2−3)
空隙率80%、厚み50μm、孔径0.05〜0.08μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。結果を表12に示す。
【0122】
【表12】

【0123】
表12から、孔径が小さすぎるため、防水性、通気性に劣ることがわかった。
【0124】
(実施例3−1)
空隙率86%、厚み22μm、孔径0.20〜0.45μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。また、得られた非対称性多孔質構造体を染色及び撥油処理をした。なお、染色は、フッ素系ポリマーの染料をイソプロパノールに溶解したものに浸漬した。また、撥油処理は、公知の撥油剤を用いて処理した。結果を表13に示す。
【0125】
【表13】

【0126】
表13から、染色、撥油処理をしても、防水性、防塵性、通音性、通気性に大きな影響を与えないことがわかる。
【0127】
(実施例3−2)
空隙率90%、厚み11μm、孔径0.72〜1.3μmの対称性多孔質構造体を用いて、一面を冷却しながら、他面を以下の表に示すように加熱した。また、得られた非対称性多孔質構造体を染色及び撥油処理をした。結果を表14に示す。
【0128】
【表14】

【0129】
表11から、染色、撥油処理をしても、防水性、防塵性、通音性、通気性に大きな影響を与えないことがわかる。
【0130】
(実施例4)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。その後、380℃の環境下で1:6の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。加熱後、この非対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。結果を表12に示す。
【0131】
(実施例5)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。その後、380℃の環境下で1:5の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。加熱後、この非対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。結果を表12に示す。
【0132】
(実施例6)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。その後、380℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。加熱後、この非対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。得られた非対称性多孔質構造体の特性の評価をした。結果を表12に示す。
【0133】
(実施例7)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。その後、380℃の環境下で1:3の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。加熱後、この非対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラで加熱した(加熱温度270℃)。得られた非対称性多孔質構造体の特性の評価をした。結果を表12に示す。
【0134】
(実施例8)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:10の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体を図4(b)に示すように加熱ローラ(直径250mm×長さ2m)で加熱した(加熱温度270℃)。得られた非対称性多孔質構造体の特性の評価をした。結果を表12に示す。
【0135】
(比較例1)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:6の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体の特性の評価をした。結果を表12に示す。
【0136】
(比較例1)
PTFE対称性多孔質構造体を用いて、320℃の環境下で1:8の倍率で縦方向(MD)に延伸をした。その後、320℃の環境下で1:6の倍率で縦方向(TD)に延伸をした。得られた対称性多孔質構造体の特性の評価をした。結果を表15に示す。
【0137】
【表15】

【0138】
また、上記実施例5〜8(図中、実施例A〜D)をガーレー数に対する音響透過係数の関係およびガーレー数に対する耐水圧との関係を評価した。図9、10に示す。図9、10において、■は、従来の膜を用いた場合である。図9から、従来の膜では、ガーレー数が増加する(通気量が減少する)に従って、音響透過損失は減少している。一方、本発明の対称膜では、通気量は多く、音響透過損失は少ないことがわかる。また、図10から、従来の膜では、ガーレー数が増加する(通気量が減少する)に従って、耐水圧が増加している。一方、本発明の対称膜では、通気量は多く、耐水圧は大きいことがわかる。
以上から、本発明の防水防塵薄膜アセンブリを用いると、通気性、通音性、耐水圧が良好であることがわかる。
また、加熱処理は、1回であっても、2回であってもよいことがわかる。
【符号の説明】
【0139】
10 防水防塵薄膜アセンブリ
11 本体
12 支持体
13 多孔質構造体
14 加熱ローラ
20 携帯電話
21 函体
22 開口部
30 水中デジタルカメラ
31 函体
32 開口部
40 照明装置
41 中空函体
42 カバー42
43 光源装置
50 容器
51 中空函体
52 蓋
111 第1表面
112 第2表面
113 非対称性多孔質構造体
121 第1接触面
122 第2接触面
221 送受信機
222 スピーカ
223 マイクロフォン
411 窓部
421 開口部
511 窓部
521 開口部
1131 スキン層
1132 多孔質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と支持体とを有する防水防塵薄膜アセンブリであって、
前記本体は、第1表面と第2表面とを有する薄膜状の非対称性多孔質構造体であり、
前記非対称性多孔質構造体は、その厚みが1〜1000μm、その空隙率(第1空隙率)が5%〜90%、各気孔の孔径が0.01μm〜15μm、フレイジャー気体流量が(10〜60)×104ft3/minft2、ガーレー数が0.3〜25秒であり、
前記支持体は、高分子材料により構成され、第1接触面と第2接触面とを含み、前記支持体の空隙率(第2空隙率)は第1空隙率より大きく、10%〜99.9%であり、
前記本体の第1表面と前記支持体の第1接触面とが貼り付けられている、
防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項2】
前記非対称性多孔質構造体は、スキン層と連続気泡性の多孔質層とを有し、
前記スキン層は、非対称性多孔質構造体の厚みの0.04〜40%を占める、請求項1記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項3】
前記スキン層の接触角が、120°〜135°である、請求項2記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項4】
前記非対称性多孔質構造体は、前記第1表面または第2表面のいずれかの表面にスキン層を有する、請求項2記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項5】
前記非対称性多孔質構造体は、前記第1表面と第2表面の両側にスキン層を有する、請求項2記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項6】
前記非対称性多孔質構造体は、対称性多孔質構造体を加熱処理して製造されており、加熱処理前から加熱処理後のフレイジャー気体流量の変化量が1.1〜2.5倍である、請求項1記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項7】
前記非対称性多孔質構造体は、その捕集効率が、99.50〜99.99%である、請求項1記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項8】
前記スキン層が前記第1表面側または前記第2表面側のいずれか一方に設けられている非対称性多孔質構造体を用いる防水防塵薄膜アセンブリの耐水圧が3,000〜20,000mmH2Oで、通気度が0.42〜6.1cm3/cm2/秒、音響損失が0.5〜2.5dBである、請求項2記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項9】
前記スキン層が前記第1表面側および前記第2表面側に設けられている非対称性多孔質構造体を用いる防水防塵薄膜アセンブリの耐水圧が5,000〜20,000mmH2Oで、通気度が0.1〜0.34cm3/cm2/秒、音響損失が0.5〜2.5dBである、請求項2記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項10】
前記本体は、樹脂系多孔質膜およびフッ素重合体膜から選択され膜で形成される、請求項1記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項11】
前記樹脂系多孔質膜は、超高分子量ポリエチレン多孔質膜またはポリテトラフルオロエチレン膜である、請求項9記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項12】
前記フッ素重合体膜は、部分フッ素化ポリマーまたは完全フッ素化ポリマーである、請求項9記載の防水防塵薄膜アセンブリ。
【請求項13】
函体と少なくとも一つの電子回路部品とを備える電子機器であって、
前記函体は少なくとも1つの開口部を有し、
前記開口部に、請求項1〜11のいずれかに記載の防水防塵薄膜アセンブリが配置されている電子機器。
【請求項14】
中空函体とカバーと少なくとも一つの光源装置とを備える照明装置であって、
前記中空函体は、前記カバーと嵌合する窓部を有し、
前記カバーは、少なくとも一つの開口部を有し、
前記少なくとも一つの光源装置は、前記少なくとも一つの開口部に対応して中空函体の内部に配置され、
前記開口部に、請求項1〜11のいずれかに記載の防水防塵薄膜アセンブリが配置されている照明装置。
【請求項15】
中空函体とカバーとを備える容器であり、
前記中空函体は、前記カバーと嵌合する窓部を有し、
前記カバーは、少なくとも一つの開口部を有し、
前記開口部に、請求項1〜11のいずれかに記載の防水防塵薄膜アセンブリが配置されている容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−25160(P2012−25160A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162638(P2011−162638)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(511180673)群揚材料工股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】