説明

防汚特性を有し、水中用途、特に海洋用途に用いるための物品

本発明は、防汚特性を有し、水中用途、特に海洋用途に用いるための物品、及び潜水又は半潜水構造物上での水中生物の成長を遅らせるための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚特性を有し、水中用途、特に海洋用途に用いるための物品、及び潜水又は半潜水構造物上での水中生物の成長を遅らせるための方法に関する。
【0002】
本発明は、防汚性海洋(船舶)用塗料の分野に関する。防汚性海洋用塗料は、船体の下方部分に動物や植物が付着するのを防止するためのトップコート(仕上げ被覆)である。これらは、安全性のため、船舶の操縦性を維持するため、燃料消費を減らすため、構造物が腐食して重くなるのを防ぐためといった理由で、用いられる。
【背景技術】
【0003】
「生物付着(物)」の問題は、海洋環境中に材料が浸漬することの結果として生じる大きな問題を構成する。この現象の防止は、かなりのメンテナンス費用となっている。
【0004】
特に、「生物付着」又は「付着物(fouling)(汚れ)」の形成は、海水中に浸漬している間に起こり、有機分子及び無機分子の層が材料の表面に極めて迅速に吸着される。この被吸着材料の層(バイオフィルム)は、海洋環境中に浮遊して存在する細菌が付着するための媒介物としての働きをする。
【0005】
この海洋細菌による表面の住み着きは迅速であり、数時間から数日で定常状態に達する。最後には、付着した細菌が他の海洋生物を呼び寄せて、これらの他の海洋生物が表面に住み着くようになる。表面に付着したこれらすべての生きた生物が、生物付着又は付着物を構成する。
【0006】
海洋付着物の付着は、海中に浸漬されるあらゆる構造物:船舶、パイプライン、冷却塔及び循環路、港湾構造物、海洋センサー、水産養殖システム等:に関連することである。もたらされる損害はかなりのものであり、そして様々なものである。特に、これらの構造物が例えば構造物の性能レベルに負の影響を持つ生物で覆われることになる。
【0007】
特に船体については、様々な海洋生物の堆積物が船体と海水との間の摩擦を増大させ、これが速度を低下させ、より大きい燃料消費につながることがある。例えば、防汚システムによって保護されていない船の底は、海において6か月も経たない内に、1m2当たり150kgの付着物で覆われてしまうことがある。
【0008】
この経済的ロスを回避するために、そして腐食現象をより一層首尾よく防止するために、海洋生物の堆積による汚れを防ぎ又は特に減らすことを目的とする防汚塗料が水にさらされる構造物の浸漬部分に塗布される。防汚塗料の原理は、表面と海水との間の界面における活性物質の制御された放出に基づく。塗料の有効性は、表面において活性物質が一定の有効濃度で放出されている限り、維持される。従って、ほとんどの防汚塗料は殺生物剤を含有し、この殺生物剤は最も一般的には、その毒性のせいで海洋付着物の付着を防止する有機金属化合物(スズ、銅若しくは亜鉛をベースとするもの)又は有機化合物(殺真菌剤、殺藻剤、殺細菌剤)である。
【0009】
しかしながら、これらの塗料の使用に関連する問題は、それらが海洋動植物に対して有害な物質を海中に放出することである。さらに、このコーティングは次第に粗くなり、段々分解し、これが燃料消費を増大させ、浸漬した構造体が発生させる水力学的騒音を増大させる。
【0010】
この新たな難点は、自動研磨性防汚塗料を用いることによって解消された。殺生物剤を有することに加えて、これらの塗料は、海水による表面加水分解の作用及び船舶の移動による浸食の作用下で、時間が経つにつれての一定で且つ制御された厚さの損失を示す。海水と接触するコーティングのゆっくりした浸食は、表面を殺生物剤で常にリフレッシュすることを可能にする。
【0011】
1960年代から開発されてきた自動研磨性防汚塗料はスズ塩をベースとするものだった。これらは、一定の浸出度を有するトリブチルスズ(TBT)メタクリレートコポリマーから配合された自動研磨性塗料だった。アクリルバインダーにグラフトされたTBTは、水中で加水分解によってゆっくり放出される。このタイプの塗料の例は、仏国特許第2266733号明細書、仏国特許第2557585号明細書、欧州特許公開第0051930A号公報及び英国特許第2118196号明細書に記載されている。
【0012】
しかもトリブチルスズ(TBT)は非常に効果的でもあるので、防汚塗料に特によく用いられる殺生物剤だったが、しかしこの物質、その分解分子及びその代謝産物は深刻で持続する汚染性があることが認められた。これらの理由で、国際海事機関はスズをベースとする防汚塗料の使用を禁止した。
【0013】
今日用いられている防汚塗料は主として銅含有化合物及び/又は合成化合物をベースとするものであるが、シリコーンポリマーをベースとするものも用いられている。
【0014】
銅をベースとする塗料はスズ塩よりは毒性が低いが、これらは実質上常に莫大な割合の酸化第一銅を用いて配合され(例えば欧州特許公開第051930A号公報や仏国特許第2557585号明細書を参照されたい)、主要なバインダーは一般的にアクリルタイプの特殊ポリマーをベースとする。しかも、これらは海洋動物に対してのみ効果的であり、藻類の成長を防除するためには除草剤を加えることが必須であり、これが環境に対する新たな脅威を招くことがある。
【0015】
従って、この別法は、重質イオンの多量の排出、特にスズを含まないが銅に富んだ塗料の集中的な使用の結果としての銅イオンの多量の排出に対して環境を保護するための持続性のある解決策を提供しない。
【0016】
海水と接触する構造物の表面の汚れを防止するための別の解決策は、これらの表面を少なくとも1つの保護コーティングで覆うことから成るものであり、水と接触するコーティングの外側層はシリコーンエラストマーである。これらのコーティングは、「付着物放出コーティング(fouling-release coating)」と称される塗料を用いて調製される。これらの新たな防汚塗料の原理は、生物が付着するのが非常に難しい低表面エネルギーの非常に平滑な表面を作るものである。このような表面が静止状態にある時は、海洋生物はその上にそれら自体を付着させることができる。しかしながら、シリコーンをベースとするトップコートの柔軟性及び低い表面張力のために、これらの生物は水が動く力や船舶が動くことによって引き起こされる摩擦作用によって非常に簡単に取り除かれる。これは、船体周辺で充分な水の動きがあれば、自然の自動洗浄効果が起こることも意味する。
【0017】
これらの特性のおかげで、それほど頻繁には海や水中に滞在せず、動きが少ない船舶でさえ、洗浄の間隔を長くすることができるという利点がある。これは、海洋生物が表面に付着しにくくなるという事実によるものである;これもまた洗浄を容易にする。
【0018】
防汚性コーティングを形成するこれらのシリコーンをベースとする塗料は、従って、非常に革新的である:
・これらは、海洋環境に非常に優しい:金属廃棄物がない;
・これらは、船舶の滑り(滑走)を改善し、燃料消費を1〜5%減少させ、従って温室効果ガスの放出を減少させる。
【0019】
多くの特許文献、例えば仏国特許第2083029号明細書及び米国特許第3702778号明細書に、このようなコーティングであってトップコートが熱硬化又は常温硬化シリコーンエラストマーであるものが記載されている。
【0020】
例えば1992年3月6日付け米国特許出願第07/847401号の明細書には、少なくとも1つのエポキシプライマーコート(下塗り)と、少なくとも1つの粘着性プライマーコート(タイコート)と、少なくとも1つのシリコーンエラストマーをベースとする防汚性コート(トップコート)とを含む3構成型防汚システムが記載されている。この最後のエポキシプライマーコートは通常薄い層であり、タイコートが粘着できるきれいで新鮮な表面を得るために塗布される。前記タイコートは、オルガノポリシロキサン及び硬化用成分を含む。前記防汚性コートは、オルガノポリシロキサン、ケイ酸アルキル、硬化剤及びスズベース触媒を含む。エポキシプライマーコートは、支持体に直接塗布される。タイコートは、エポキシプライマーコートに塗布される。シリコーンコーティングとしての防汚性コートが次いで塗布され、タイコートの一部が硬化した後、タイコート上で架橋する。
【0021】
シリコーンエラストマーをベースとする防汚性コート(トップコート)には、「防汚」効果を改善する流体、特に次のものをも含ませることができる。
・メチルフェニルポリシロキサンオイル(米国特許第4025693号明細書)、
・液状炭化水素系化合物、例えばポリオレフィン、
・可塑剤、
・潤滑油(仏国特許第2375305号明細書)、
・流動パラフィン及びペトロラタムタイプのワックス状物質(特開昭58−013673号公報)、
・PVC等の熱可塑性ポリマー、
・塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー(特開昭54−026826号公報)、又は
・カチオン性、アニオン性、ノニオン性若しくは両性界面活性剤(特開昭60−258271号公報)。
【0022】
シリコーンエラストマーコーティングを形成させるために用いられるシリコーン配合物は一般的に、シリコーンオイル、一般的にヒドロキシ末端基を有する反応性ポリジメチルシロキサン(これは随意にアルコキシ末端を有するように前もってシランで官能化されていてもよい)、架橋剤及び重縮合触媒(慣用的にはスズ塩又はチタン酸アルキル)、補強用フィラー並びに随意としての他の添加剤(例えば増量用フィラー、粘着促進剤、染料等)を含む。
【0023】
これらの室温加硫(硬化)性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物はよく知られており、1構成型(1成分型、1液型とも称される)組成物(RTV−1)と2構成型(2成分型、2液型とも称される)組成物(RTV−2)との2つのグループに分類される。用語「RTV」とは、「室温加硫性(room-temperature vulcanizing)」についての頭文字である。
【0024】
架橋の際に、水(RTV−1組成物の場合には大気中の湿分によって提供され、RTV−2組成物の場合には組成物の一部に導入される)が重縮合反応を可能にし、これがエラストマー性(弾性)網状構造の形成をもたらす。
【0025】
一般的に、1構成型(RTV−1)組成物は空気からの湿分に曝されたときに架橋し、即ちそれらは閉じ込められた媒体中では架橋することができない。例えば、1構成型シリコーン組成物は、アセトキシシラン、ケチミノキシシラン、アルコキシシラン等のタイプの反応性官能基の加水分解及び続いての生成したシラノール基と他の残留反応性官能基との間の縮合反応というメカニズムに従って常温架橋する。この加水分解は一般的に、大気に曝された表面から材料中に広がる水蒸気によって実施される。一般的に、重縮合反応の反応速度は極めて遅い。従って、これらの反応は好適な触媒によって触媒される。用いられる触媒としては、大抵の場合、スズベース触媒(スズを基剤/主体とする触媒)、チタンベース触媒、アミンベース触媒又はこれらの触媒の組合せ物が用いられる。スズベース触媒(特に仏国特許第2557582号明細書を参照されたい)及びチタンベース触媒(特に仏国特許第2786497号明細書を参照されたい)は、非常に効果的な触媒である。−Si(OR)末端基を有する1構成型シリコーンエラストマーは、アルコキシエラストマーと称されることがある。
【0026】
2構成型組成物に関しては、これらは2つの構成品の形で販売されて貯蔵される。その第1の構成品はベースポリマー材料を含有し、第2の構成品は触媒を含有する。これら2つの構成品は使用時に混合され、この混合物が架橋して比較的硬いエラストマーの形になる。これらの2構成型組成物はよく知られており、特にWalter Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、第2版、第395〜398頁に記載されている。
【0027】
これらの組成物は、本質的に次の4種の成分を含む。
・反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマー、
・架橋剤、一般的にシラン、ケイ酸塩又はポリケイ酸塩、
・スズ触媒、及び
・水。
【0028】
大抵の場合、縮合触媒は有機スズ化合物をベースとするものである。実際、多くのスズベース触媒がすでにこれらのRTV−1又はRTV−2組成物用の架橋用触媒として提唱されている。慣用の重縮合触媒は、ジアルキルスズ化合物、特にジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジアルキルスズジラウレート及びジブチルスズジアセテート、チタン酸アルキル化合物、例えばチタン酸テトラブチル若しくはチタン酸テトライソプロピル、又はチタンキレートを含む(欧州特許公開第0885933A号公報、米国特許第5519104号明細書、米国特許第4515932号明細書、米国特許第4563498号明細書、米国特許第4528353号明細書)。
【0029】
アルキルスズベース触媒は、非常に有効であり、大抵の場合は無色であり、液状であり、シリコーンオイル中に可溶という利点を有するが、しかし毒性があるという欠点を有する(生殖毒性物質CMR2)。
【0030】
別のアプローチに従えば、国際公開WO2004/020525号に記載されたテトラメチルグアニジンのようなグアニジン構造を有するシリコーン重縮合反応触媒が報告されている。また、シリル化グアニジン構造を有する他の触媒も開発されており、例えば米国特許第4248993号明細書に記載されている。これらの特許文献には防汚塗料は記載されていないが、これらの有機触媒を用いることに関連する問題点は、これら触媒は非常に反応性が高くて高価な特定の架橋剤(1−メチルビニルオキシ官能基を含むシラン)の存在下で用いなければならないということであり、即ち、1−メチルビニルオキシ官能基を含むシランのような高反応性架橋剤を存在させることなく1構成型又は2構成型RTV配合物に非常に広く用いられている単純構造の慣用の架橋剤(例えばアルキルトリアルコキシシラン、ケイ酸アルキル又はポリケイ酸アルキル)をそれらと組み合わせることはできない。と言うのも、この高反応性シランの存在無しでは、エラストマーを得るための組成物の架橋は不充分であり、良好な機械的特性を得ることができないからである。例えば、メチルビニルオキシ官能基を含む特定の反応性シランを存在させることなく例えばポリケイ酸アルキルのような慣用の架橋剤と共に1,1,3,3−トリメチルグアニジン誘導体を用いた場合には、系の架橋は不充分であり、シリコーンエラストマーを生成させることができない。
【0031】
この問題は、多量の塗料を用いる防汚用途においては、最終使用者に融通性をほとんど提供しない非常に反応性が高くて高価な特定の架橋剤を用いることによって引き起こされるコスト増大のせいで、全く許容できないことである。
【0032】
従って、持続性のある発展のために、毒性触媒を含まない新規の防汚塗料を開発することが必要だと思われる。加えて、これらの触媒は、用いられる架橋剤のタイプに拘らず利用可能であって、従って健康及び安全性により一層優しい架橋剤を使用することを可能にするものであるべきである。
【0033】
例えば、硬化性シリコーン組成物の重要な特徴は、架橋速度である。乾いた表面を得るのに必要な時間(又は不粘着時間)は短くなければならない。一般的に1時間未満の不粘着時間が要求される。
【0034】
硬化性シリコーン組成物の別の重要な特徴は、可使時間(ポットライフ、作業時間)、即ち混合後に硬化することなく組成物が使用できる時間である。この時間は、その使用を可能にするのに充分長くなければならないが、硬いコーティングを得るためには充分短くなければならない。例えば、タイコート又はトップコートタイプのコーティングについては、外部温度が20〜30℃の範囲である場合に一般的に1時間超のポットライフが必要とされる。このポットライフを調節するための1つの手段は、触媒のような用いる成分の性状である。
【0035】
これらすべての理由で、水性付着物、特に海洋付着物の付着を防除するための新たな戦略が今日も開発され続けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】仏国特許第2266733号明細書
【特許文献2】仏国特許第2557585号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第0051930A号公報
【特許文献4】英国特許第2118196号明細書
【特許文献5】仏国特許第2083029号明細書
【特許文献6】米国特許第3702778号明細書
【特許文献7】米国特許出願第07/847401号明細書
【特許文献8】米国特許第4025693号明細書
【特許文献9】仏国特許第2375305号明細書
【特許文献10】特開昭58−013673号公報
【特許文献11】特開昭54−026826号公報
【特許文献12】特開昭60−258271号公報
【特許文献13】仏国特許第2557582号明細書
【特許文献14】仏国特許第2786497号明細書
【特許文献15】欧州特許公開第0885933A号公報
【特許文献16】米国特許第5519104号明細書
【特許文献17】米国特許第4515932号明細書
【特許文献18】米国特許第4563498号明細書
【特許文献19】米国特許第4528353号明細書
【特許文献20】国際公開WO2004/020525号
【特許文献21】米国特許第4248993号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の目的は、禁止された成分(殺生物剤又は触媒)を含まず、スズを含有しない防汚塗料を用いて得られたコーティングによる防汚特性を有する物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
従って、本発明は、防汚特性を有し、水中用途、特に海洋用途に用いるための物品であって、
(a)支持体、
(b)随意としての、前記支持体上の、少なくとも1種の腐食防止性物質を含む少なくとも1つのプライマーコート、
(c)随意としての、コート(コーティング)間の粘着を促進する少なくとも1つの中間コート、
(d)前記プライマーコート上又は該プライマーコートが存在しない場合には前記支持体上に設けられる、少なくとも1つの粘着促進用コート(タイコートと称される)、及び
(e)前記粘着促進用コート又はタイコート上に設けられる、少なくとも1つの防汚性コート(トップコートと称される)
を含み、以下の点を特徴とする、前記物品に関する:
・前記防汚性コート及び/又はタイコートが、金属触媒を含有しない硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rから調製されること、並びに
・該組成物が、重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒Aとを含み、該重縮合触媒Aが、シリル化有機化合物であり、次の一般式(I)に相当すること。
【化1】

[ここで、
1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基(この環は置換されていても置換されていなくてもよく、1個の以上ヘテロ原子を含んでいることができる)、アリールアルキル基、フルオロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又はR111213Si(ここで、R11、R12及びR13は直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基である)を表わし、
3は水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは非置換の環(これは1個以上のヘテロ原子を含んでいることができる)で置換されたアルキル基、アリールアルキル基、フルオロアルキル基、アルキルアミン基、アルキルグアニジン基、置換若しくは非置換アリール基、又はアルキルアルコキシシラン基を表わし、
4は1〜50個、好ましくは1〜20個の原子(そのいくつかはO、S及びNから選択されるヘテロ原子であることができる)を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル鎖を表わし、
5、R6及びR7は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、芳香族基、アルコキシ基又は下記式(I'):
【化2】

(ここで、R、R'及びR''は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C12アルキル基又は芳香族基を表わす)
のトリアルキルシリルオキシ基を表わし、
3が水素原子である場合にはR1及びR2がいずれも直鎖状一価炭化水素ベース基ではないものとする。]
【発明の効果】
【0039】
この目的を達成するために、本出願人は、全く驚くべきことに、そして予期しなかったことに、三置換又は四置換シリル化グアニジンである一般式(I)に相当するシリル化有機化合物が防汚用途におけるタイコート又はトップコートとして有用なコーティングを製造することを可能にすることを見出すという功績を挙げた。本発明に従って得られるコーティングは、こうして処理された支持体上で顕著な粘着特性を有すると同時に、低い表面エネルギーを有し、生物が非常に付着しにくい非常に平滑な被処理平面を与える。
【0040】
また、例えば国際公開WO2004/020525号に教示されたような、1,3−ジフェニルグアニジンや1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン等の構造上類似した触媒はRTV配合物を架橋させるためには非常に反応性が高くて高価な特定の架橋剤(1−メチルビニルオキシ官能基を含むシラン)と組み合わせることが必要だというそれまでの技術上の偏見を克服したことも、本発明者の功績である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一般式(I)に相当する本発明に従うシリル化化合物は、得るのが特に容易であって触媒として特にうまく働くグアニジンである。これらは、液状であり、無色であり、無臭であり、防汚用途において用いられるシリコーンマトリックス中に可溶であるという利点を有する。さらに加えて、本発明に従うシリル化グアニジンは、架橋されるべきシリコーン系中に非常に低含有率で用いられ、その含有率に応じてポットライフを適合させることができると同時に、得られるエラストマーについて優れた結果を保証することができる。
【0042】
興味深いことに、生態学的利点(スズ及び銅の不在)に加えて、本発明に従う金属触媒を含有しない硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rを使用した場合には、酸化銅が存在しないことのおかげで、白を含めた様々な色であることができる塗料を製造することが可能となる。
【0043】
水性環境中で用いられ、汚れが付きやすい任意の材料が、本発明にとっての支持体であることができる。可能な支持体は、船を建造するための材料、例えばステンレス鋼、アルミニウム、木材、樹脂を含浸させたガラス繊維、及び他の任意の複合材料である。また、運河開設のために用いられる材料、例えばコンクリート、プラスチック、鉄鋼、鉄及び他の金属をコーティングすることもできる。水を入れるプール(水泳用プールを含む)も汚れが付きやすい。プールを製造するために用いられる材料は、運河を製造するために用いられるものと同じ又は同様である。
【0044】
支持体は、少なくとも1種の腐食防止性物質を含むプライマーコートでコーティングしてもよく、コーティングしなくてもよい。腐食防止性コートは腐食防止性物質を含有し、この腐食防止性物質は、環境との反応の結果としての支持体の腐食又は分解を防止する任意の物質であることができる。このような腐食防止性物質は、当技術分野においてよく知られている。これらは2構成型の形にあり、エポキシ官能基を持つベース物質及び硬化触媒を含む。腐食防止性コートは通常、0.10〜0.75nmの厚さを有する。
【0045】
コート(コーティング)間の粘着を促進する中間プライマーコートは、既知の/市販の物質から製造することができる。一般的にこれらは、エポキシ−アミン系をベースとする当業者に周知の2構成型物質から製造される。
【0046】
腐食防止性コート又は中間粘着促進プライマーコートを製造するための組成物の例は、C.H. Hareによる手引き書「Protective Coatings, Fundamentals of Chemistry and Composition」(米国ピッツバーグ州所在のTechnology Publishing Company社発行、1994年)に記載されている。
【0047】
本発明に従う物品のそれぞれのコート(コーティング)は当技術分野においてよく知られた方法によって塗布できる。斯かる方法には、刷毛塗りによる塗布、吹付、浸漬、ローラーによる塗布、又は塗料の塗布のために通常用いられる任意の方法が含まれる。さらに加えて、本発明に従う物品の様々なコートは、この分野における通常の手法に従って乾燥される。
【0048】
本発明に従う防汚性コート(又はトップコート)を用いる場合、この防汚性コートは、様々な別種の性状の粘着促進用コート(又はタイコート)と組み合わせることができる。粘着促進用コート(又はタイコート)を本発明に従う組成物から製造しない場合、この下塗りは様々な別種の性状のものであることができる。これは例えば、ポリウレタン製、クロロプレン及びネオプレン等の天然若しくは合成ゴム(随意に塩素化されたもの)製、又はブチラール/シリコーンゴム製のものであることができる(特開昭53−137231号公報、特開昭53−137233号公報及び特開昭53−137234号公報)。別のアプローチ(例えば米国特許第5449553号明細書に記載されたもの)に従えば、タイコートが記載され、これは、スズベース重縮合触媒;ケイ酸エチルのような架橋剤;及びシリルヒドロキシ末端基含有オルガノポリシロキサンとスチレン又は共役ジオレフィン(例えば1,3−ブタジエン)等の重合可能モノマーとの反応生成物から由来するコポリマー:を含む、空気中の湿分で硬化可能な組成物から調製されている。欧州特許公開第1670866号公報に記載された別の例に従えば、次のものを含む組成物からタイコートが形成される:
(i)顔料及びフィラー:0〜60湿重量%;及び
(ii)以下のものを含むバインダーベース相:残部:
・1種以上のアミン官能基含有ポリシロキサン1〜90湿重量%、
・1種以上のエポキシ官能基含有ポリシロキサン1〜90湿重量%、及び
・ヒドロキシル官能基含有ポリシロキサン、ヒドロキシアルキル官能基含有ポリシロキサン及びC1〜C4アルコキシ官能基含有ポリシロキサンより成る群から選択される粘着促進剤0〜20湿重量%。
【0049】
慣用のタイコートの別の例は米国特許第4861670号明細書に記載されている。
【0050】
1つの好ましい実施態様に従えば、重縮合触媒Aは、次の化合物(1)〜(54)より成る群から選択されるシリル化有機化合物である。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0051】
本発明に従って用いられる式(I)の化合物は、例えば式(II):
【化7】

のカルボジイミドと式(III):
【化8】

の第1又は第2アミンとを反応させることを含む製造方法に従って、得られる。
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は上で定義した通りである。)
【0052】
前記カルボジイミドは、一般的に尿素又はチオ尿素から得られ、これら自体は例えば第1アミンR1NH2とイソシアネートR2NCOとを反応させることによって得られる。前記カルボジイミドは、それ自体周知の商品として入手できる物質である。
【0053】
本発明において用いられる式(III)の第1又は第2アミンは、少なくとも1個のシリル化基を含む。斯かるアミンはそれ自体周知であり、一般的にシリコーン分野において粘着促進剤として用いられている。R5=R6=R7=OR8、又はR5=Me且つR6=R7=OR8、又はR5=R6=Me且つR7=OR8(ここで、Meはメチル基であり、R8はメチル又はエチル基である)のアミンは、商品として入手できる。
【0054】
こうして採用される方法は、通常の物質から出発する簡単且つ安上がりな合成から成る。
【0055】
1つの変法に従えば、カルボジイミド及びシリル化アミンを溶媒の存在下又は不在下で加熱する。
【0056】
別の可能な変法に従えば、式(II)のカルボジイミドと式(III)のアミンとの反応が溶媒無しで実施される。この反応は周囲温度において実施することができるが、しかしアミン(III)の置換に応じて充分な温度に加熱するのが好ましい。例えば、R3がHである場合には、100℃の温度を超えないのが望ましく、R3がHではない場合には、温度が高いほど反応時間が短くなる。例えば、温度は20〜150℃の範囲、好ましくは70〜130℃の範囲とする。
【0057】
1種又はそれより多くの成分を過剰量で用いることが可能である。揮発性カルボジイミドを過剰に用いる場合には、この過剰分は反応の最後に(溶媒が存在するならばこの溶媒と同時に)除去され、アミンを過剰に用いる場合には、これは触媒反応だけではなくて粘着促進剤としても関与するだろう。過剰分は数%から数当量までであることができ、好ましくは10%〜1当量の範囲であることができる。不足する方の化合物が完全に消費したら、溶媒(用いた場合)及び随意としてのその他の化合物の過剰分を蒸発除去し、生成した物質(大抵の場合は高粘度ではない液体)をそのまま重縮合反応における触媒として用いる。
【0058】
本発明に従う重縮合触媒Aの量は、1構成型調製物であるか2構成型調製物であるかに拘らず、全質量の0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.1〜5重量%の範囲とする。
【0059】
1つの特に好ましい実施態様に従えば、硬化して防汚性コートを形成することができるポリオルガノシロキサン組成物はまた、触媒として有効量の前記の本発明に従う少なくとも1種の重縮合触媒Aと、以下のものを含むシリコーンベースBとを含む:
・少なくとも1種の、重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC;
・少なくとも1種の、エラストマーネットワークが形成された時に防汚性コートの表面に浸出して「防汚」効果を改善する化合物L;
・少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF;
・随意としての少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の着色用ベース又は少なくとも1種の着色剤H;並びに
・随意としての少なくとも1種の溶剤K。
【0060】
エラストマーネットワークが形成された時に防汚性コートの表面に浸出して「防汚」効果を改善する化合物Lの例には、例えば次のものがある:
(a)下記一般式(II)に相当するポリオルガノシロキサンオイル
【化9】

{ここで、
2はアルキル、アリール又はアルケニル基であり、メチル及びフェニル基が好ましく(特に好ましい例は、例えば米国特許第4025693号明細書に記載されたようなメチルフェニルポリシロキサンオイルである)、
Xは酸素原子又は1〜8個の炭素原子を有する二価炭化水素ベース基であり、
nは25℃において10〜1×106mm2/秒の粘度を有するジオルガノポリシロキサンが得られるように規定される数である}
(これらのポリオルガノシロキサンオイルは、随意にグラフトされていることができ、アクリル、アミド、アミン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、チオール、チオエーテル、尿素、第四級アンモニウム、フルオロアルキル又はペルフルオロアルキル基を含むことができる。
また、少なくとも1個のポリエーテルブロックを(例えばポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール基と共に)含むグラフト又はブロックポリジメチルシロキサンオイルを用いることもできる。);
(b)炭化水素ベース液状化合物:例えばエチレン/プロピレンコポリマー等のポリオレフィン及び特に低分子量ポリイソブテン(5000g/モルまで、好ましくは300〜500g/モルの範囲);
(c)ポリジエン、ポリエステル、ポリイソシアネート、ポリウレタン、ポリエポキシド、フルオロアルキル類、フルオロエーテル類、潤滑油(例えば仏国特許第2375305号明細書を参照されたい)及び可塑剤(例えば随意にヘテロ原子で置換されていてよい脂肪酸エステル又はリン酸エステル又はハロ炭化水素ベース化合物)(また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はひまし油を用いることもでき、それらは組成物の使用の際に抗流動特性をも提供する);
(d)流動パラフィン及びペトロラタムタイプのワックス状物質(特開昭58−013673号公報);
(e)PVC等の熱可塑性ポリマー;
(f)塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー(特開昭54−026826号公報)、又は
(g)カチオン性、アニオン性若しくは両性界面活性剤(特開昭60−258271号公報)。
【0061】
溶剤Kの例には、例えば:脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素ベース誘導体、例えばホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、オクタメチルトリシロキサン又はキシレン、並びにエステル溶剤、例えば酢酸メトキシプロピル、酢酸n−ブチル及び酢酸2−エトキシエチル、並びにそれらの混合物:がある。溶剤の量は、用途や処理されるべき支持体に応じて、許容できる粘度を有する塗料が得られるように、決定される。
【0062】
シリコーンベースBの説明:
【0063】
本発明において用いられる、重縮合反応によって架橋して硬化するシリコーンベースは、よく知られている。これらのベースは、特に多くの特許文献に詳細に記載されており、商品として入手できる。
【0064】
これらのシリコーンベースは、1構成型ベース、即ち単一の包装体の形で包装され、湿分の不在下において貯蔵安定性であり、湿分、特に周囲空気によって提供される湿分の存在下で架橋できるベース又は使用の際に該ベース内で発生する水によって架橋できるベースであることができる。
【0065】
1構成型ベースの他に、2構成型ベース、即ち2つの包装体の形で包装され、本発明に従う重縮合触媒を加えたらすぐに硬化するベースを用いることができる。これらは、触媒を加えた後に、2つの別個の部分として包装され、その内の一方の部分は例えば本発明に従う触媒のみ又は架橋剤との混合物を含有することができる。
【0066】
ポリオルガノシロキサンオイルCは、25℃において50〜5000000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであるのが好ましく、架橋剤Dは、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子当たり2個以上有する有機ケイ素化合物であるのが好ましい。ポリオルガノシロキサンオイルCはまた、ヒドロキシル官能基を有する前駆体と加水分解性基を有する架橋用シランとの縮合によって得られる加水分解性基で末端を官能化されたものであることもできる。この重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルCは随意に、1個以上のポリエーテルブロック(例えばポリエチレングリコール及び/若しくはポリプロピレングリコール基を持つもの)、ポリアクリレートブロック又はポリメタクリレートブロックをグラフトされていることができる。
【0067】
架橋剤(D)としては、次の一般式を有するシラン(及びこのシランの部分加水分解生成物)を挙げることができる。
1k Si(OR2)(4-k)
(ここで、
記号R1は同一であっても異なっていてもよく、C1〜C10炭化水素ベース基を表わし、この炭化水素ベース基は、
・C1〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル及びデシル基、
・ビニル、アリル及びヘキセニル基、並びに
・C5〜C8シクロアルキル基、例えばフェニル、トリル及びキシリル基
を包含し、
記号R2は同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくは2−エチルヘキシル基、又はC3〜C6オキシアルキレン基を表わし、
kは0、1又は2である。)
【0068】
3〜C6アルコキシアルキレン基の例としては、次の基を挙げることができる:
CH3OCH2CH2
CH3OCH2CH(CH3)−
CH3OCH(CH3)CH2
25OCH2CH2CH2−。
【0069】
架橋剤Dは、シリコーン市場において入手できる製品である;さらに、室温硬化性組成物中にそれらを使用することは周知である;特に、仏国特許第1126411号明細書、仏国特許第1179969号明細書、仏国特許第1189216号明細書、仏国特許第1198749号明細書、仏国特許第1248826号明細書、仏国特許第1314649号明細書、仏国特許第1423477号明細書、仏国特許第1432799号明細書及び仏国特許第2067636号明細書に記載されている。
【0070】
架橋剤Dの中では、より特定的には、有機基が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルキルトリアルコキシシラン、ケイ酸アルキル及びポリケイ酸アルキルが好ましい。
【0071】
用いることができる架橋剤Dの別の例としては、より特定的には、次のシランを挙げることができる:
・プロピルトリメトキシシラン;
・メチルトリメトキシシラン;
・エチルトリメトキシシラン;
・ビニルトリエトキシシラン;
・メチルトリエトキシシラン;
・プロピルトリエトキシシラン;
・テトラエトキシシラン;
・テトラプロポキシシラン;
・1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン若しくは1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン等の1,2−ビス(トリアルコキシシリル)エタンタイプのシラン;及び
・テトライソプロポキシシラン、又は
CH3Si(OCH3)3;C25Si(OC25)3;C25Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)3;CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3
65Si(OCH3)3;[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH3] 2
Si(OCH3)4;Si(OC25)4;Si(OCH2CH2CH3)4
Si(OCH2CH2CH2CH3)4;Si(OC24OCH3)4
CH3Si(OC24OCH3)3;ClCH2Si(OC25)3
【0072】
架橋剤Dの別の例としては、ポリケイ酸エチルやポリケイ酸n−プロピルを挙げることができる。
【0073】
用いることができる他の架橋剤Dは、次の一般式を有するシラン(及びこのシランの部分加水分解生成物)である。
1kSi(Y)(4-k)
(ここで、
記号R1は同一であっても異なっていてもよく、上で定義した通りであり、
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、加水分解性基、例えばアミノ、アミド、アミノオキシ、オキシム、アシルオキシ及びアルケニルオキシ基を表わす。)
【0074】
一般的に、重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンC100重量部当たり0.1〜60重量部の架橋剤Dが用いられる。
【0075】
本発明に従う組成物はまた、少なくとも1種の粘着促進剤E、例えば次の(1)及び(2)の両方を有する有機ケイ素化合物等を含むことができる。
(1)ケイ素原子に結合した1個以上の加水分解性基;及び
(2)窒素原子を含む基で又は(メタ)アクリレート、エポキシ及びアルケニル基から選択される基で置換された1個以上の有機基、より一層好ましくは次の化合物より成る群から選択される有機基(単独のもの又は混合物として):
ビニルトリメトキシシラン(VTMO);
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO);
[H2N(CH2)3]Si(OCH2CH2CH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OC25)3
[H2N(CH2)4]Si(OCH3)3
[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH3)2
[H2NCH2]Si(OCH3)3
[n−C49−HN−CH2]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH2CH2OCH3)3
[CH3NH(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H(NHCH2CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
【化10】

3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン若しくは3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等の3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランタイプのシラン、
又はこのような有機基を20%超の含有率で含有するポリオルガノシロキサンオリゴマー。
【0076】
1構成型及び2構成型ベースについて、無機フィラーFとして、平均粒径0.1μm未満の非常に微細に粉砕された物質が用いられる。これらのフィラーの中には、ヒュームドシリカ及び沈降シリカがある;それらのBET比表面積は一般的に40m2/g超である。これらのフィラーはまた、もっと粗大な平均粒径0.1μm超の物質の形にあってもよい。斯かるフィラーの例としては、石英粉末、ケイ藻土シリカ、炭酸カルシウム、焼成クレー、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム又はマグネシウムの酸化物、様々な形のアルミナ(水和又は非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウム及びガラスミクロビーズを挙げることができる;それらの比表面積は一般的に30m2/g未満である。
【0077】
これらのフィラーは、様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面変性されたものであってよい。これらの有機ケイ素化合物は、この目的で慣用的に用いられているものであり、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであることができる(仏国特許第1126884号明細書、仏国特許第1136885号明細書及び仏国特許第1236505号明細書、並びに英国特許第1024234号明細書)。処理されたフィラーは、大抵の場合、それらの重量の3〜30%の有機ケイ素化合物を含有する。該フィラーは、様々な粒子寸法のいくつかのタイプのフィラーの混合物から成ることができる;従って、例えばこれらは、BET比表面積が40m2/g超の微粉砕シリカ30〜70%と、BET比表面積が30m2/g未満の粗粉砕シリカ70〜30%とから成ることができる。
【0078】
フィラーを導入する目的は、本発明に従う組成物を硬化させることによって得られるエラストマーに良好な機械的特性及びレオロジー特性を与えることである。
【0079】
これらのフィラーと組み合わせて、無機及び/又は有機顔料を用いることもできる。顔料Hの例は、指標として、赤色酸化鉄(べんがら)、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、鉄黄、酸化チタンホワイト、酸化クロム、酸化コバルト、リサージ(一酸化鉛)、群青並びにモリブデンレッド及びイエローや、水性塗料分野において広く用いられる既知の有機顔料がある。
【0080】
他の慣用的な補助剤及び添加剤(チキソトロープ剤、流動防止剤等)を本発明に従う組成物中に加えることができる。
【0081】
主な成分に加えて、好ましくは本発明に従う組成物の物理的特徴に対して及び/又はこれらの組成物を硬化させることによって得られるエラストマーの機械的特性に対して作用させることを目的として、非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGを導入することができる。
【0082】
これらの非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGはよく知られている;これらはより特定的には:本質的にジオルガノシロキシ単位から成り且つ少なくとも1%のモノオルガノシロキシ及び/又はシロキシ単位を有し、25℃において少なくとも10mPa・sの粘度を有するα,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサンポリマーであって、ケイ素原子に結合した有機基がメチル、ビニル及びフェニル基から選択され、これらの有機基の内の少なくとも60%がメチル基であり、ビニルは最大でも10%であるものを含む。これらのポリマーの粘度は、25℃において数千万mPa・sに達することもできる;従ってこれらは流体乃至粘性外観を持つオイル及び軟質乃至硬質ゴムを包含する。これらは、より特定的には仏国特許第978058号明細書、仏国特許第1025150号明細書、仏国特許第1108764号明細書及び仏国特許第1370884号明細書に記載された通常の技術に従って調製される。25℃において10mPa・s〜1000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサンオイルを用いるのが好ましい。これらのポリマーは、可塑剤としての働きをし、重縮合によって架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルC100部当たり最大70部、好ましくは5〜20部の割合で導入することができる。
【0083】
本発明に従う組成物はまた、少なくとも1種のシリコーン樹脂H1をも含むことができる。これらのシリコーン樹脂は、よく知られていて商品として入手できる分岐鎖状オルガノポリシロキサンポリマーである。これらは、式R'''3SiO1/2(M単位)、R'''2SiO2/2(D単位)、R'''SiO3/2(T単位)及びSiO4/2(Q単位)のものから選択される少なくとも2個の異なる単位を1分子当たりに有する。R'''基は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基並びにビニル、フェニル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。好ましくは、アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する(境界を含む)。より特定的には、アルキル基Rとしては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を挙げることができる。これらの樹脂は好ましくはヒドロキシル化されたものであり、この場合には5〜500ミリ当量/100gの範囲のヒドロキシル基重量含有率を有する。
【0084】
樹脂の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、DT樹脂及びMDT樹脂を挙げることができる。
【0085】
本発明に従う組成物を製造するためには、1構成型組成物の場合には、湿分なしで熱を加えて又は熱を加えることなく、様々な基本成分(随意に前記補助剤及び添加剤を添加したもの)を緊密に混合することが可能な装置を用いることが必要である。これらすべての成分は、任意の導入順序で装置中に装填することができる。
【0086】
本発明はまた、水中用途において用いることが予定される支持体に防汚性コーティングを塗布するための方法にも関するものであり、この方法は、
(a)随意としての、前記支持体に少なくとも1種の腐食防止用物質を含む少なくとも1つのプライマーコートを塗布する工程、
(b)随意としての、コート間の粘着を促進する少なくとも1つの中間プライマーコートを塗布して硬化させる工程、
(c)前記プライマーコートに又は前記プライマーコートを存在させない場合には前記支持体に粘着促進用コート又はタイコートを塗布する工程、
(d)前記タイコートを硬化させる工程、
(e)防汚性コート又はトップコートを塗布する工程、並びに
(f)前記防汚性コートを硬化させる工程
を含み、前記防汚性コート及び/又はタイコートが本発明に従う前記の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rから調製されたものであることを特徴とする。
【0087】
塗布されるコートの厚さは可変的であり、厚さ12〜1000μmのフィルムコーティング(但し、付着物は均一であるものとする)が良好な結果を与えた。様々なコートの標準的な厚さはおおよそのところ、プライマーについては50μm、タイコートについては150μm、トップコートについては150μmである。もちろん、当業者であれば望まれる結果に応じて様々なコートの厚さを調節することができる。
【0088】
本発明の最後の主題は、本発明に従う上記の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rを、水中生物の付着から物品を保護することが意図される塗料のタイコート粘着促進用コーティング又はトップコート防汚性コーティングを形成させるために使用することに関する。
【0089】
1構成型ベースは、例えば欧州特許公開第141685号公報、欧州特許公開第147323号公報、欧州特許公開第102268号公報、欧州特許公開第21859号公報、仏国特許第2121289号明細書及び仏国特許第2121631号明細書に詳細に記載されているので、これらを参考文献とする。
【0090】
2構成型ベースは、例えば欧州特許公開第118325号公報、欧州特許公開第117772号公報、欧州特許公開第10478号公報、欧州特許公開第50358号公報、欧州特許公開第184966、米国特許第3801572号明細書及び米国特許第3888815号明細書に詳細に記載されているので、これらを参考文献とする。
【0091】
本発明のさらなる利点及び特徴は、非限定的な例示として与えた以下の実施例を読めば、より一層明らかになるだろう。
【実施例】
【0092】
(I)本発明に従う触媒の調製
【0093】
1. 1,2−ジイソプロピル−3−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン(1)
【化11】

【0094】
(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン11.74g(0.0654モル)とジイソプロピルカルボジイミド9.9g(0.0785モル、20%過剰)との混合物を80℃に6時間30分加熱する。次いでGC分析は97%超のアミンが転化したことを示した。無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間蒸発乾固させて、所期のグアニジンに相当する無色の低粘度液体22.5gを得た。
【0095】
1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.69 (2H, m), 1.12 (12H, d), 1.63 (2H, quint.), 2.99 (2H, t), 3.48 (11H, bs - イソプロピルプロトンのシフトがメトキシプロトンと重なった)。
【0096】
2. 1−(3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピル)−2,3−ジイソプロピルグアニジン(5)
【化12】

【0097】
3−(ジエトキシ(メチル)シリル)プロピルアミン28.94g(0.151モル、20%過剰)とジイソプロピルカルボジイミド15.9g(0.126モル)との混合物を80℃に9時間加熱する(カルボジイミドの転化率97.3%)。
【0098】
無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンと過剰分のシリル化アミン(9.8重量%)との混合物に相当する無色の低粘度液体44gを得た。
【0099】
シリル化グアニジンの1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.0 (3H, s), 0.54 (2H, m), 1.01 (12H, d), 1.1 (6H, t), 1.49 (2H, m), 2.88 (2H, t), 3.46 (2H, m), 3.64 (4H, quad.)。
【0100】
3. 2,3−ジイソプロピル−1−メチル−1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン(7)
【化13】

【0101】
N−メチル−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン60.5g(0.313モル)とジイソプロピルカルボジイミド47.6g(0.376モル、20%過剰)との混合物を100℃に3時間30分加熱する(アミンの転化率99%超)。無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンに相当する無色の低粘度液体99.5gを得た。
【0102】
1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.5 (2H, m), 1.0 (12H, 2 d), 1.53 (2H, quint.), 2.61 (3H, s), 2.98 (2H, t), 3.21 (1H, sept), 3.32 (1H, sept), 3.48 (9H, s)。
【0103】
4. 2,3−ジイソプロピル−1−メチル−1−(3−(メチルジメトキシシリル)プロピル)グアニジン(10)
【化14】

【0104】
N−メチル−(3−(メチルジメトキシシリル)プロピル)アミン27g(0.152モル、20%過剰)とジイソプロピルカルボジイミド16g(0.127モル)との混合物を100℃に8時間加熱する(カルボジイミドの転化率98%)。無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンに相当する無色の低粘度液体(出発アミンを2重量%含有するもの)39.3gを得た。
【0105】
グアニジンの1H−NMR/CDCl3(ppm) : 0.0 (3H, s), 0.46 (2H, m), 0.97 (12H, m), 1.46 (2H, m), 2.58 (3H, s), 2.95 (2H, t), 3.18 (1H, m), 3.28 (1H, m), 3.40 (6H, s)。
【0106】
5. 1−ブチル−2,3−ジイソプロピル−1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン(13)
【化15】

【0107】
N−ブチル−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン45g(0.191モル)とジイソプロピルカルボジイミド28.95g(0.229モル、20%過剰)との混合物を120℃に20時間加熱する(アミンの転化率93%)。無色の最終混合物を1ミリバール下で120℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンに相当する無色の低粘度液体(出発アミンを4重量%含有するもの)67gを得た。
【0108】
グアニジンの1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.58 (2H, m), 0.88 (3H, t), 1.07 (12H, 2 d), 1.26 (2H, sext.), 1.44 (2H, quint.), 1.58 (2H, quint.), 3.06 (4H, t), 3.30 (1H, m), 3.41 (1H, m), 3.55 (9H, s)。
【0109】
6. 1,1−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)−2,3−ジイソプロピルグアニジン(19)
【化16】

【0110】
ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン30.84g(0.0903モル)とジイソプロピルカルボジイミド13.68g(0.1084モル、20%過剰)との混合物を110℃に31時間加熱する(アミンの転化率94%)。無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンに相当する無色の低粘度液体(出発アミンを4重量%含有するもの)42gを得た。
【0111】
グアニジンの1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.56 (4H, m), 1.07 (12H, m), 1.57 (4H, m), 3.05 (4H, t), 3.30 (1H, sept.), 3.43 (1H, sept.), 3.54 (18H, s)。
【0112】
7. 2,3−ジシクロヘキシル−1−メチル−1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン(34)
【化17】

【0113】
N−メチル−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン23.23g(0.12モル、20%過剰)とジシクロヘキシルカルボジイミド20.65g(0.1モル)との混合物を100℃に6時間加熱する(カルボジイミドの転化率94%)。無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、所期のグアニジンに相当する中庸粘度の無色液体41.3g(出発アミン6%を含有するもの)を得た。
【0114】
グアニジンの1H−NMR/CDCl3(ppm): 0.58 (2H, m), 1-1.4 (10H, m), 1.5-2 (12H, m), 2.69 (3H, s), 2.8-3.1 (2H, m), 3.07 (2H, t), 3.56 (9H, s)。
【0115】
8. 2,3−ジイソプロピル−1−[(3−エトキシシリル)プロピル]−1−[2−[2,3−(ジイソプロピル)グアニジノ]エチル]グアニジン(54)
【化18】

【0116】
N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン20.01g(0.09モル)とジイソプロピルカルボジイミド27.26g(0.216モル、20%過剰)との混合物を90℃に8時間加熱し、そして70℃に72時間加熱する(ジアミンについての転化率100%、モノグアニジン中間体についての転化率93%)。
【0117】
無色の最終混合物を2ミリバール下で100℃において2時間脱蔵して、非常に粘性のある液体41.6gが得られ、これは数分後に結晶化した。この固体を2−プロパノール50ミリリットルで取り出し、この溶液を3時間還流しながら生成するメタノールを留去させ、次いで再び蒸発乾固させて所期のグアニジン(平均してSiOMe(OiPr)2置換体)に相当する中庸粘度の液体を得た。
【0118】
9. 2,3−ジイソプロピル−1−メチル−1−(3−(ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリル)プロピル)グアニジン(12)
【化19】

【0119】
2,3−ジイソプロピル−1−メチル−1−(3−(メチルジメトキシシリル)プロピル)グアニジン2gとヘキサメチルジシロキサン10gとカリウムシラノラート50mgとの混合物を100℃に24時間加熱する。冷却後に、濁った媒体をヘプタンで希釈する。この懸濁液を濾過し、次いで蒸発乾固させて、非粘性無色液体2.5gを得た。1H−NMR分析は90%超まで交換が行われたことを示した。
【0120】
(II)トップコートの調製
【0121】
配合物:すべての量は重量部で表わされる。
【0122】
・粘度3500cPのα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル:80部
・ケイ酸エチル:10部
・Bluestar Silicones社よりRhodorsil Huile 510V100(登録商標)の名称で販売されているメチルフェニルポリシロキサンオイル:5部
・Bluestar Silicones社よりRhodorsil Huile 550(登録商標)の名称で販売されているメチルフェニルポリシロキサンオイル:2部
・Degussa社より販売されているAerosil 200(登録商標)シリカ:3部
・ひまし油:1部
・Bayer社より販売されているBayferrox 130F(登録商標)顔料:0.7部
・Byk社より販売されているDisperbyk 140(登録商標)分散剤:0.1部
・キシレン:20部。
【0123】
この配合物に、以下のものを加える:
・配合物1:2ミリモルの触媒(7):2,3−ジイソプロピル−1−メチル−1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン。
・配合物2:2.2ミリモルの触媒(34):2,3−ジシクロヘキシル−1−メチル−1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)グアニジン。
・比較例1:2ミリモルのテトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン(五置換シリル化グアニジン)
【化20】

【0124】
これら3つの配合物についての乾いた表面を得るのに必要な時間(不粘着時間)及びポットライフを、下記の表に示す。
【0125】
【表1】

「不粘着時間」=乾いた表面を得るのに必要な時間
【0126】
本発明に従う触媒(配合物1及び2、四置換シリル化グアニジン)は、塗布後30〜36分で不粘着性表面を得ることを可能にした。他方、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン(比較例1、五置換シリル化グアニジン)は不粘着性表面を得るのに65分を要した(即ち100%の時間増加)。
【0127】
(III)防汚性評価
【0128】
サンドブラスト仕上げして脱脂した鉄鋼から作られた2つの金属シートを、厚さほぼ50μmのエポキシプライマーコート[Sigmakalon社より販売されているSigmaShield 610(登録商標)から調製されたもの]でコーティングする。周囲温度において72時間乾燥させた後に、厚さほぼ150μmのタイコート[Sigmakalon社より販売されているSigmaGlide 790(登録商標)から調製されたもの]を塗布する。周囲温度において48時間乾燥させた後に、上記(II)に記載した配合物1、2に従って調製したトップコート約150μmを塗布する。
【0129】
周囲温度において48時間乾燥させた後に、これらのシートを海洋媒体中(海水中)に浸漬し、12週間浸漬後及び23週間浸漬後に検査する。
【0130】
水で充分洗浄した後に、防汚性の評価は100だった。これはコーティングされたシート上に生物が全く存在しないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚特性を有し、水中用途、特に海洋用途に用いるための物品であって、
(a)支持体、
(b)随意としての、前記支持体上の、少なくとも1種の腐食防止性物質を含む少なくとも1つのプライマーコート、
(c)随意としての、コート間の粘着を促進する少なくとも1つの中間プライマーコート、
(d)前記プライマーコート上又は該プライマーコートが存在しない場合には前記支持体上に設けられる、少なくとも1つの粘着促進用コート又はタイコート、及び
(e)前記粘着促進用コート又はタイコート上に設けられる、少なくとも1つの防汚性コート又はトップコート
を含み、以下の点:
・前記防汚性コート及び/又はタイコートが、金属触媒を含有しない硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rから調製されること;並びに
・該組成物が、重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒Aとを含み、該重縮合触媒Aが、シリル化有機化合物であり、次の一般式(I):
【化1】

[ここで、
1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基(この環は置換されていても置換されていなくてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでいることができる)、アリールアルキル基、フルオロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、又はR111213Si(ここで、R11、R12及びR13は直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基である)を表わし、
3は水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状一価アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは非置換の環(これは1個以上のヘテロ原子を含んでいることができる)で置換されたアルキル基、アリールアルキル基、フルオロアルキル基、アルキルアミン基、アルキルグアニジン基、置換若しくは非置換アリール基、又はアルキルアルコキシシラン基を表わし、
4は1〜50個、好ましくは1〜20個の原子(その一部はO、S及びNから選択されるヘテロ原子であることができる)を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル鎖を表わし、
5、R6及びR7は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、芳香族基、アルコキシ基又は下記式(I'):
【化2】

(ここで、R、R'及びR''は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、直鎖状若しくは分岐鎖状C1〜C12アルキル基又は芳香族基を表わす)
のトリアルキルシリルオキシ基を表わし、
3が水素原子である場合にはR1及びR2がいずれも直鎖状一価炭化水素ベース基ではないものとする]
に相当すること:
を特徴とする、前記物品。
【請求項2】
前記重縮合触媒Aが次の化合物(1)〜(54)より成る群から選択されるシリル化有機化合物である、請求項1に記載の物品。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
硬化して防汚性コートを形成することができるポリオルガノシロキサン組成物Rが触媒として有効量の請求項1又は2に記載の少なくとも1種の重縮合触媒Aと、シリコーンベースBとを含み、該シリコーンベースBが、
・少なくとも1種の、重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC;
・少なくとも1種の架橋剤D;
・少なくとも1種の、エラストマーネットワークが形成された時に防汚性コートの表面に浸出して「防汚」効果を改善する化合物L;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF;
・随意としての少なくとも1種の着色用ベース又は着色剤H;並びに
・随意としての少なくとも1種の溶剤K
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
水中用途に用いることが意図される支持体に防汚性コーティングを塗布するための方法であって、
次の工程:
(a)随意としての、前記支持体に少なくとも1種の腐食防止用物質を含む少なくとも1つのプライマーコートを塗布する工程、
(b)随意としての、コート間の粘着を促進する少なくとも1つの中間プライマーコートを塗布して硬化させる工程、
(c)前記プライマーコートに又は前記プライマーコートを存在させない場合には前記支持体に粘着促進用コート又はタイコートを塗布する工程、
(d)前記タイコートを硬化させる工程、
(e)前記タイコートに防汚性コート又はトップコートを塗布する工程、並びに
(f)前記防汚性コートを硬化させる工程
を含むこと、並びに
前記防汚性コート及び/又はタイコート(存在させる場合)が請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rから調製されたものであること
を特徴とする、前記方法。
【請求項5】
水中生物の付着から物品を保護することが意図される塗料のタイコート粘着促進用コーティング又はトップコート防汚性コーティングを形成させるための、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物Rの使用。

【公表番号】特表2011−524433(P2011−524433A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511051(P2011−511051)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000620
【国際公開番号】WO2009/156608
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーンズ・フランス (62)
【Fターム(参考)】