説明

防湿フィルム及びその製造方法

【課題】 防湿フィルムのカールや皺の発生を防止しつつ高度の防湿性が付与された防湿フィルム、並びにその防湿フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】 高分子フィルム基材の少なくとも片面に金属蒸着層が形成された防湿フィルムであって、
前記金属蒸着層が、該金属蒸着層のXPSスペクトルの金属と酸素に関するピーク高さをそれぞれHMe、Hと定義した場合に、H/HMeの値が0.5以上である金属酸化物層と、H/HMeの値が0.5未満である金属及び金属酸化物の複合層とを備えており、
前記金属酸化物層の密度が2.0〜10.0g/cmであり、且つ、前記金属酸化物層が前記金属蒸着層の表面から該金属蒸着層全体の厚みに対し6〜50%の厚みを占めていることを特徴とする防湿フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光素子(EL)、真空断熱材、集積回路(IC)、食品、医薬品、生活素材等の包装材や防湿材等として有用な防湿フィルム、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業、食品分野等の包装材料には、内容物の品質劣化を防ぐ機能が要求されるが、特に内容物が変質しやすい包装分野では、水蒸気ガスバリア性等のガスバリア性に優れていることが求められている。そして、包装材料においてガスバリア性を付与するために、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分けん化物(EVOH)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、ケイ素酸化物蒸着フィルム等が、それぞれ単独で、あるいは各種フィルムと複合して使用されていた。これらのガスバリア性フィルムには、それぞれ長所と短所があるため、例えば、フィルムを熱処理したり、二軸延伸することにより結晶性を高めたり、多層構造のラミネートフィルム化するといった方法で改良がなされていたが、未だ十分な防湿性を有する防湿フィルムは得られていなかった。
【0003】
一方で、フィルムの防湿性を改良するために、金属、金属酸化物等の無機材料を蒸着源とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONY)フィルムといった高分子フィルム基材上に、各種蒸着法によりこれら無機材料の蒸着層を形成させたものが検討され、蒸着膜上にヒートシール可能なポリエチレン(PE)フィルムやポリプロピレン(PP)フィルム等をラミネートした蒸着フィルムが、包装材料として汎用されている。
【0004】
しかしながら、金属蒸着フィルムは、一般的に、耐屈曲性に劣るため、蒸着膜上に他の熱可塑性樹脂フィルムを溶融押出やドライラミネーションといった方法によりラミネートすると、蒸着膜にクラック(亀裂)が生じ、結果として十分な防湿性が得られないという問題があった。
【0005】
そのため、例えば、特開平8−142255号公報(特許文献1)においては、無機材料の蒸着フィルムの蒸着膜上に、ポリビニルアルコールとポリカルボン酸又はその部分中和物とを所定の割合で含有する混合物の溶液を塗工して乾燥皮膜を形成させた後、100℃以上で熱処理することにより耐水性フィルムを形成させた防湿複合フィルムが開示されている。また、特開平8−142256号公報(特許文献2)においては、無機材料の蒸着フィルムの蒸着膜上に、ポリカルボン酸又はその部分中和物と糖類とを所定の割合で含有する混合物の溶液を塗工して乾燥皮膜を形成させた後、100℃以上で熱処理することにより耐水性フィルムを形成させた防湿複合フィルムが開示されている。そして、特許文献1、2の明細書中においては、熱処理工程として蒸着フィルムを表面温度230℃の熱ロールに所定の時間接触させることが記載されている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献等に記載の従来の防湿複合蒸着フィルムは、必ずしも十分な防湿性が得られるものではなかった。また、熱処理工程において表面温度230℃の熱ロールに接触させることによって熱収縮による基材フィルムのカールや皺が発生するといった問題もあり、品質管理が難しいものであった。
【特許文献1】特開平8−142255号公報
【特許文献2】特開平8−142256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、防湿フィルムのカールや皺の発生を防止しつつ高度の防湿性が付与された防湿フィルム、並びにその防湿フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高分子フィルム基材の少なくとも片面に金属蒸着層が形成された防湿フィルムにおいて、前記金属蒸着層が、特定の金属酸化物層と、特定の金属及び金属酸化物の複合層とを備えており、前記金属酸化物層の密度が2.0〜10.0g/cmであり、且つ、前記金属酸化物層が前記金属蒸着層の表面から前記金属蒸着層全体の厚みに対し6〜50%の厚みを占めるようにすることによって高度の防湿性が実現でき、同時に防湿フィルムのカールや皺の発生を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の防湿フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも片面に金属蒸着層が形成された防湿フィルムであって、
前記金属蒸着層が、前記金属蒸着層の金属に関するXPSスペクトルのピーク高さをHMe、酸素に関するXPSスペクトルのピーク高さをHと定義した場合に、H/HMeの値が0.5以上である金属酸化物層と、H/HMeの値が0.5未満である金属及び金属酸化物の複合層とを備えており、
前記金属酸化物層の密度が2.0〜10.0g/cmであり、且つ、前記金属酸化物層が前記金属蒸着層の表面から前記金属蒸着層全体の厚みに対し6〜50%の厚みを占めていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の防湿フィルムは、前記金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における金属に関するXPSスペクトルの積分値をSMe、酸素に関するXPSスペクトルの積分値をSと定義した場合に、前記金属酸化物層におけるS/SMeの値が0.5〜1.5であり、且つ、前記金属及び金属酸化物の複合層におけるS/SMeの値が0.5未満であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の防湿フィルムは、前記高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって金属の蒸着層を形成させた後に、前記金属の蒸着層の表面に水性液体を塗布し、次いで50℃以上100℃未満の温度で熱処理して前記金属の蒸着層の表面を酸化せしめることによって得られたものであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の防湿フィルムは、前記高分子フィルム基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、且つ、前記金属がアルミニウムであることが好ましい。
【0013】
本発明の防湿フィルムの製造方法は、高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって金属の蒸着層を形成させた後に、前記金属の蒸着層の表面に前記水性液体を塗布し、次いで50℃以上100℃未満の温度で熱処理して前記金属の蒸着層の表面を酸化せしめることによって、前記の防湿フィルムを得ることを特徴とする方法である。
【0014】
また、本発明の防湿フィルムの製造方法においては、前記水性液体の溶存酸素濃度が6〜12mg/lであることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の防湿フィルムの製造方法においては、前記熱処理を酸素濃度が20〜100容量%に維持された雰囲気中で実施することが好ましい。
【0016】
なお、本発明におけるXPSスペクトルとは、XPS(X線光電子分光法)の測定とAr等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行い、次いで、得られた分析結果に対し、波形解析による化学結合状態の分離を組み合わせることで、各化学状態のデプスプロファイルが得られるという分析・測定法(以下、「デプスプロファイル測定」という)により得られるスペクトルであり、縦軸は原子濃度(%)、横軸はスパッタ時間(概ね厚みに相関する)により表されるスペクトルである。そして、本発明における金属蒸着層の金属に関するXPSスペクトルのピーク高さとはHMeと定義され、本発明における金属蒸着層の酸素に関するXPSスペクトルのピーク高さとはHと定義される。また、これらの値はそれぞれ金属と酸素の各スパッタ時間における原子濃度(%)を示す値である。さらに、本発明における金属酸化物層並びに金属及び金属酸化物の複合層の厚みとは、前記XPSスペクトルより、本発明において金属酸化物層並びに金属及び金属酸化物の複合層と定義される層におけるスパッタ時間の長さを読み取り、次いで、得られたスパッタ時間の長さをSiOのスパッタ速度である2.5nm/minを用いて厚みに換算して得られた値である。さらに、本発明における金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における金属に関するXPSスペクトルの積分値とはSMeと定義され、本発明における金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における酸素に関するXPSスペクトルの積分値とはSと定義される。また、これらの値は、本発明において金属酸化物層並びに金属及び金属酸化物の複合層と定義される層(以下、場合によって「各層」という)における金属と酸素に関するXPSスペクトルから求められるそれぞれの積分値である。そして、これらの積分値から求められる各層の金属と酸素の積分値比S/SMeの値は、各層における金属と酸素の存在量の比を示す値である。
【0017】
また、本発明における金属酸化物層の密度(ρ)とは、XRR(X線反射率法)の測定により得られた反射率データを観測データとして、薄膜の層構造モデルを仮定して、各層の膜厚(Å)、屈折率(n)、表面ラフネス(凹凸:Å)を、非線形の最小二乗法にて精密化することにより求め、次いで、得られた屈折率等に基づいて計算により求められた値である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、防湿フィルムのカールや皺の発生を防止しつつ高度の防湿性が付与された防湿フィルム、並びにその防湿フィルムの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明の防湿フィルムの製造方法について説明する。すなわち、本発明の防湿フィルムの製造方法は、後述する高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって後述する金属の蒸着層を形成させた後に、後述する金属の蒸着層の表面に後述する水性液体を塗布し、次いで50℃以上100℃未満の温度で熱処理して後述する金属の蒸着層の表面を酸化せしめることにより後述する防湿フィルムを得ることを特徴とする方法である。
【0021】
本発明にかかる高分子フィルム基材としては、特に制限されず、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ乳酸(PLA)等の高分子材料から形成されたフィルムを挙げることができる。これらのフィルムの中でも、耐熱性が優れていることや湿度の影響が少ないこと等の観点から、PETフィルムが特に好ましい。これらのフィルムは、未延伸フィルム、あるいは延伸フィルムであり、シート状物であってもよい。
【0022】
また、このような高分子フィルム基材は、表面平滑性、安定性付与等のために各種添加剤を含んでいてもよいが、真空蒸着時にそれらが表面にブリードすると、基材と蒸着膜との密着性が低下するので、できるだけ添加剤の含有量が少ないものの方が好ましい。さらに、このような高分子フィルム基材の厚みは、特に限定されないが、柔軟性や経済性等の観点から、通常は5〜1000μmであり、好ましくは10〜100μmである。
【0023】
本発明にかかる金属の蒸着層の蒸着源として用いられる金属としては、蒸着フィルムの製造に通常用いられている金属を使用することができ、例えば、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)が挙げられる。これらの金属の中でも、金属蒸着層表面の酸化のさせやすさ等の観点からアルミニウム、銅が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
【0024】
本発明にかかる水性液体としては、水を含有している液体であればよく、水の含有量としては5容量%以上であるものが好ましい。このような水性液体としては、例えば、純水、酸性水溶液、親水性樹脂の水分散液、水と有機溶媒の混合液が挙げられる。このような酸性水溶液としては、例えば、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、亜硝酸、安息香酸、イタコン酸、オレイン酸、過塩素酸、ぎ酸、サリチル酸、次亜塩素酸、硫酸、ステアリン酸、テレフタル酸、フタル酸、フマル酸、プロピオン酸、ほう酸、マレイン酸、マロン酸、酪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。また、このような親水性樹脂の水分散液としては、例えば、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、ポリマレイン酸、あるいはこれらの2種以上の混合物等の水分散液が挙げられる。さらに、このような親水性樹脂の水分散液としては、部分中和物を用いることができ、例えば、ポリカルボン酸のカルボキシル基をアルカリで部分的に中和して、カルボン酸塩としたものを用いてもよい。また、中和剤として用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア(アンモニア水を含む)が挙げられる。さらに、このような水と有機溶媒の混合液としては、例えば、メタノール、エタノール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール、グリセリン等の有機溶媒と水との混合液を挙げることができる。上記水性液体は、それぞれ一種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
また、本発明にかかる水性液体は、前記金属の蒸着層の酸化を促進させるために前記金属の蒸着層の表面に塗布されるものであるが、このような水性液体のpHとしては、1よりも大きく8よりも小さいことが好ましい。前記水性液体のpHが1(水溶液1リットル中に水素イオンが10−1g含まれる水溶液)以下又はpHが8(水溶液1リットル中に水素イオンが10−8g含まれる水溶液)以上では表面の蒸着粒子が溶解しやすく、得られる防湿フィルムの防湿性が不十分となる傾向がある。
【0026】
さらに、上記本発明にかかる水性液体の溶存酸素濃度としては、6〜12mg/lであることが好ましく、7.5〜12mg/lであることがより好ましく、8〜12mg/lであることが特に好ましい。前記水性液体の溶存酸素濃度が前記下限未満では、蒸着層の酸化速度がやや劣る傾向にあり、他方、前記上限を超える状態を常圧で長時間維持するのは困難な傾向にある。また、このような水性液体を得る方法としては、例えば、水性液体に対し酸素ガスを数分間吹き込むことにより水性液体の溶存酸素濃度を高める方法が挙げられる。
【0027】
本発明の防湿フィルムの製造方法においては、先ず、前記高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって前記金属の蒸着層を形成させる。このような蒸着法としては、化学的蒸着法と物理的蒸着法とがあるが、生産性の観点から、物理的蒸着法である真空蒸着法が好ましい。また、このような真空蒸着法としては、基材となる前記高分子フィルム基材を真空蒸着装置内に設置し、蒸着装置内を10−4Pa程度の真空にし、金属の蒸着源を加熱蒸発させて、高分子フィルム上に連続的に同一蒸着層を形成させる方法が好んで用いられる。さらに、形成させる金属の蒸着層の厚みとしては、所望の透明性又は不透明性、色調、光沢、可撓性等により任意に定めることができ、通常10〜500nmであり、好ましくは10〜300nmであり、特に好ましくは10〜150nmである。前記金属の蒸着層の厚みが前記下限未満では、防湿フィルムの防湿性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記金属の蒸着層が前記高分子フィルム基材から剥れ易くなる傾向にある。
【0028】
本発明の防湿フィルムの製造方法においては、次に、前記金属の蒸着層の表面に前記水性液体を塗布する。前記水性液体を塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いた塗布方法が挙げられる。また、前記水性液体の塗布量としては、前記水性液体を塗布した直後の1mあたりの質量が0.1〜30g/mであることが好ましく、1〜30g/mであることがより好ましく、3〜30g/mであることが特に好ましい。
【0029】
本発明の防湿フィルムの製造方法においては、次いで、前記金属の蒸着層の表面に前記水性液体が塗布された前記高分子フィルム基材を50℃以上100℃未満の温度で熱処理して前記金属の蒸着層の表面を酸化せしめることにより防湿フィルムを得る。本発明においては、熱処理温度を50℃以上100℃未満とする必要があり、好ましくは熱処理温度が60℃以上100℃未満とすることであり、特に好ましくは80℃以上100℃未満とすることである。前記熱処理温度が50℃未満では、水性液体の乾燥が遅くなり、また、蒸着層の酸化速度がやや劣る。他方、100℃以上では、得られる防湿フィルムにカールや皺が発生する。また、熱処理時間としては、生産効率の観点から、5秒〜60分が好ましく、5秒〜30分がより好ましく、5秒〜20分が特に好ましい。さらに、熱処理する方法としては、熱風や加熱炉等の乾熱雰囲気下で行うことが好ましく、例えば、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、フローティングドライヤー、タワードライヤー、ドラムドライヤー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いて、熱風の吹付けや赤外線照射等により水分を蒸発させる方法を挙げることができる。
【0030】
また、本発明においては、熱処理する際に雰囲気の酸素濃度を20〜100容量%に維持した状態とすることが好ましく、より好ましくは20〜70容量%に維持した状態とすることであり、特に好ましくは22〜50容量%に維持した状態とすることである。酸素濃度が前記下限未満では、蒸着層の酸化速度がやや劣る傾向があり、他方、前記上限を超える状態を長時間維持するのは困難な傾向にある。また、熱処理する際に雰囲気の酸素濃度を前記範囲に維持する方法としては、例えば、雰囲気の酸素濃度を調整しつつ高濃度の酸素ガスを加熱炉に吹き込む方法が挙げられる。
【0031】
以上説明した本発明の防湿フィルムの製造方法により、以下説明する本発明の防湿フィルムが得られるようになる。すなわち、本発明の防湿フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも片面に金属蒸着層が形成された防湿フィルムであって、
前記金属蒸着層が、前記金属蒸着層の金属に関するXPSスペクトルのピーク高さをHMe、酸素に関するXPSスペクトルのピーク高さをHと定義した場合に、H/HMeの値が0.5以上である金属酸化物層と、H/HMeの値が0.5未満である金属及び金属酸化物の複合層とを備えており、
前記金属酸化物層の密度が2.0〜10.0g/cmであり、且つ、前記金属酸化物層が前記金属蒸着層の表面から前記金属蒸着層全体の厚みに対し10〜30%の厚みを占めていることを特徴とするものである。
【0032】
本発明にかかる金属蒸着層は、後述する金属酸化物層と、後述する金属及び金属酸化物の複合層とを備える積層構造を有するものである。このような金属蒸着層の厚みとしては、所望の透明性又は不透明性、色調、光沢、可撓性等により任意に定めることができ、通常10〜500nmであり、好ましくは10〜300nmであり、特に好ましくは10〜150nmである。金属蒸着層の厚みが前記下限未満では、防湿フィルムの防湿性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記金属蒸着層が前記高分子フィルム基材から剥れ易くなる傾向にある。
【0033】
本発明にかかる金属酸化物層は、前記金属蒸着層のXPSスペクトルの金属と酸素に関するピーク高さをそれぞれHMe、Hと定義した場合に、H/HMeが0.5以上である層である。そして、このような金属酸化物層は、必ずしも金属酸化物のみを構成成分とする層である必要はないが、前記金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における金属に関するXPSスペクトルの積分値をSMe、酸素に関するXPSスペクトルの積分値をSと定義した場合に、前記金属酸化物層におけるS/SMeの値が0.5〜1.5であることが好ましく、0.55〜1.5であることがより好ましく、0.6〜1.5であることが特に好ましい。このような金属酸化物層の構成成分である金属としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛が挙げられる。これらの金属の中でも、経済性や酸化のしやすさの観点からアルミニウムが好ましい。また、このような金属酸化物層の構成成分である金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛が挙げられる。これらの金属酸化物の中でも、経済性の観点から酸化アルミニウムが好ましい。
【0034】
また、このような金属酸化物層の密度としては、2.0〜10.0g/cmとする必要があり、2.0〜7.0g/cmとすることが好ましく、2.0〜4.0g/cmとすることが特に好ましい。前記金属酸化物層の密度が2.0g/cm未満では、得られる防湿フィルムの防湿性が不十分となる。他方、10.0g/cmを超えるものを作製することは困難である。
【0035】
さらに、このような金属酸化物層の厚みとしては、前記金属蒸着層の表面から前記金属蒸着層全体の厚みに対し6〜50%の厚みを占めていることが必要であり、6〜30%の厚みを占めていることが好ましく、6〜20%の厚みを占めていることが特に好ましい。前記金属酸化物層の厚みの割合が、6%未満では得られる防湿フィルムの防湿性が不十分である。他方、50%を超える場合は得られる防湿フィルムの耐屈曲性が低下する。
【0036】
本発明にかかる金属及び金属酸化物の複合層は、前記金属蒸着層のXPSスペクトルの金属と酸素に関するピーク高さをそれぞれHMe、Hと定義した場合に、H/HMeが0.5未満である層である。そして、このような金属及び金属酸化物の複合層は、前記金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における金属に関するXPSスペクトルの積分値をSMe、酸素に関するXPSスペクトルの積分値をSと定義した場合に、前記金属及び金属酸化物の複合層におけるS/SMeの値が0.5未満であることが好ましく、0.45未満であることがより好ましく、0.4未満であることが特に好ましい。このような金属及び金属酸化物の複合層の構成成分である金属としては、前記金属酸化物層の構成成分である金属と同一でも異なっていてもよく、前記金属酸化物層の構成成分である金属と同様のものが挙げられる。また、このような金属及び金属酸化物の複合層の構成成分である金属酸化物としては、前記金属酸化物層の構成成分である金属酸化物と同一でも異なっていてもよく、前記金属酸化物層の構成成分である金属酸化物と同様のものが挙げられる。
【0037】
また、このような金属及び金属酸化物の複合層の厚みとしては、前記高分子フィルム基材の表面から前記金属蒸着層全体の厚みに対し50〜94%の厚みを占めることが好ましく、60〜94%の厚みを占めることがより好ましく、80〜94%の厚みを占めることが特に好ましい。前記金属及び金属酸化物の複合層の厚みの割合が、前記下限未満では得られる防湿フィルムの耐屈曲性が低下する傾向がある。他方、前記上限を超える場合は得られる防湿フィルムの防湿性が不十分となる傾向がある。
【0038】
さらに、このような金属及び金属酸化物の複合層は、金属及び金属酸化物が原子レベルで混合されている混合層を備える層であるが、必ずしも前記混合層のみからなる必要はなく、前記混合層と前記高分子フィルム基材の間に酸化されていない金属のみを構成成分とする層を備える積層構造を有するものであってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、水性液体のpH及び溶存酸素濃度、熱処理時の雰囲気の酸素濃度、各層の金属と酸素の積分値比、各層の厚みの割合、金属酸化物層の密度、並びに防湿フィルムの水蒸気透過度及び外観はそれぞれ以下の方法により測定又は評価した。
【0040】
(i)水性液体のpH
ISFET(半導体)測定方式pH計(pH BOY KS501;新電元社製)を用いて、温度23℃の条件で水性液体のpHを測定した。
【0041】
(ii)水性液体の溶存酸素濃度
溶存酸素メーター(OM−51;堀場製作所製)を用いて、温度23℃の条件で水性液体の溶存酸素濃度を測定した。
【0042】
(iii)熱処理の雰囲気の酸素濃度
酸素濃度計(PBI Dansensor)を用いて、温度23℃の条件で熱処理の雰囲気の酸素濃度を測定した。
【0043】
(iv)各層の金属と酸素の積分値比
先ず、デプスプロファイル測定用の装置(5400MC;PHI社製)を用い、X線源はMgKα、検出深さは4〜5nm、スパッタ速度は約2.5nm/min(SiO換算)の条件でデプスプロファイル測定を行い、XPSスペクトルを得た。次いで、得られたXPSスペクトルから各層における金属と酸素に関するXPSスペクトルの積分値(SMe,S)を求め、その値から各層の金属と酸素の積分値比(S/SMe)を求めた。
【0044】
(v)各層の厚みの割合
先ず、各層の金属と酸素の積分値比(S/SMe)の測定と同様の方法でXPSスペクトルを得た。次いで、得られたXPSスペクトルから各層におけるスパッタ時間の長さを読み取り、その値から各層の厚みの割合を求めた。
【0045】
(vi)金属酸化物層の密度
XRR(X線反射率法)の測定用の装置(ATX−G;リガク社製)を用い、走査モードは連続走査、走査範囲は0〜5°、ステップ幅は0.004°、走査速度は0.5°/minの条件で、X線反射率測定を行い、反射率データを得た。次いで、得られた反射率データから屈折率(n)を、非線形の最小二乗法にて精密化することにより求め、その値に基づいて計算により金属酸化物層の密度を求めた。
【0046】
(vii)防湿フィルムの水蒸気透過度
JIS Z−0208に記載された方法に準拠して、水蒸気透過度測定器(PERMATRAN−W 3/31;Modern Control社製)を用いて、温度40℃、試料面積50cm、片側90%相対湿度(RH)もう一方の側を0%相対湿度(RH)の条件で、防湿フィルムの水蒸気透過度を測定した。
【0047】
(viii)防湿フィルムの外観
防湿フィルムを目視によって観察し、防湿フィルムの外観を評価した。なお、防湿フィルムのカールや皺が全くない場合を合格(○)と判定し、防湿フィルムのカールや皺が発生した場合を不合格(×)と判定した。
【0048】
(実施例1)
先ず、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み50nmのアルミニウム蒸着層を形成させたアルミニウム蒸着PETフィルム(VM−PET1510;東レフィルム加工(株)製)の蒸着層の表面に、純水(水性液体)を卓上コーター(K303 Proofer;RK Print−Coat Instruments社製)を用いて、メイヤバー(水性液体を塗布した直後の1mあたりの質量が12g/m)で塗布した。次に、純水(水性液体)が塗布されたフィルムを縦16cm×横30cm×高さ3cmの紙製容器に入れ、さらにこの容器を縦20cm×横33cmのAl/CPP製のパウチに入れた後、縦15cmをキュートシーラー(V−300;FUJI IMPULSE製)でシールした。その後、直径5mmのチューブを縦の残り部分から入れ、チューブから酸素ガスを20ml/minのペースで3分間吹き込み、パウチ内の酸素濃度を23%にし、縦の残り部分をシールした。次いで、温度95℃のオーブン中で15分間熱処理して、防湿フィルムを得た。
【0049】
(実施例2)
水性液体として、純水に代えてメタノール(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した50質量%メタノール水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0050】
(実施例3)
水性液体として、純水に代えて無水酢酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した5質量%無水酢酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0051】
(実施例4)
水性液体として、純水に代えて数平均分子量150000のポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した15質量%ポリアクリル酸(PAA)水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0052】
(実施例5)
蒸着フィルムとして、アルミニウム蒸着PETフィルムに代えて厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み50nmの銅蒸着層を形成させた銅蒸着PETフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0053】
(実施例6)
先ず、純水10mlに酸素を20ml/minのペースで5分間吹き込み、溶存酸素濃度9.7mg/lの純水を得た。次いで、水性液体として、純水に代えて得られた溶存酸素濃度9.7mg/lの純水を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0054】
(実施例7)
熱処理の雰囲気の酸素濃度条件として、酸素ガスを20ml/minのペースで5分間吹き込み、パウチ内の酸素濃度を25%とした以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0055】
(実施例8)
先ず、数平均分子量150000のポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した15質量%ポリアクリル酸(PAA)水溶液に酸素を20ml/minのペースで5分間吹き込み、溶存酸素濃度9.1mg/lの15質量%ポリアクリル酸(PAA)水溶液を得た。次いで、水性液体として、純水に代えて得られた溶存酸素濃度9.1mg/lの15質量%ポリアクリル酸(PAA)水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0056】
(実施例9)
水性液体として、純水に代えて数平均分子量150000のポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した15質量%ポリアクリル酸(PAA)水溶液を用いた以外は実施例7と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0057】
(実施例10)
先ず、無水酢酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した5質量%無水酢酸水溶液に酸素を20ml/minのペースで5分間吹き込み、溶存酸素濃度9.2mg/lの5質量%無水酢酸水溶液を得た。次いで、水性液体として、純水に代えて得られた溶存酸素濃度9.2mg/lの5質量%無水酢酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0058】
(実施例11)
水性液体として、純水に代えて無水酢酸(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した5質量%無水酢酸水溶液を用いた以外は実施例7と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0059】
(実施例12)
先ず、メタノール(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した50質量%メタノール水溶液に酸素を20ml/minのペースで5分間吹き込み、溶存酸素濃度9.0mg/lの50質量%メタノール水溶液を得た。次いで、水性液体として、純水に代えて得られた溶存酸素濃度9.0mg/lの5質量%無水酢酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0060】
(実施例13)
水性液体として、純水に代えてメタノール(和光純薬工業(株)製)と純水とを用いて調製した50質量%メタノール水溶液を用いた以外は実施例7と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0061】
(実施例14)
熱処理の雰囲気の温度条件として、温度95℃のオーブンに代えて温度60℃のオーブン中で熱処理した以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0062】
(実施例15)
熱処理の雰囲気の温度条件として、温度95℃のオーブンに代えて温度70℃のオーブン中で熱処理した以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0063】
(実施例16)
熱処理の雰囲気の温度条件として、温度95℃のオーブンに代えて温度80℃のオーブン中で熱処理した以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0064】
(実施例17)
熱処理の雰囲気の酸素濃度条件として、酸素ガスを20ml/minのペースで15分間吹き込み、パウチ内の酸素濃度を35%とした以外は実施例1と同様にして、防湿フィルムを得た。
【0065】
(比較例1)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み50nmのアルミニウム蒸着層を形成させたアルミニウム蒸着PETフィルム(VM−PET1510;東レフィルム加工(株)製)を用いた。
【0066】
(比較例2)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み80nmのSiO蒸着層を形成させたSiO蒸着PETフィルム(MOS−TH;尾池工業(株)製)を用いた。
【0067】
(比較例3)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み25nmのAl蒸着層を形成させたAl蒸着PETフィルム(1011HG;東レフィルム加工(株)製)を用いた。
【0068】
(比較例4)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、厚み50nmのAlとAlとの混合物の蒸着層を形成させたAlとAlとの混合物の蒸着PETフィルム(1015MT;東レフィルム加工(株)製)を用いた。
【0069】
(比較例5)
先ず、アルミニウム蒸着PETフィルム(VM−PET1510;東レフィルム加工(株)製)の蒸着層の表面に、純水を卓上コーター(K303 Proofer;RK Print−Coat Instruments社製)を用いて、メイヤバー(水性液体を塗布した直後の1mあたりの質量が12g/m)で塗布し、1分間放置した。次いで、純水が塗布されたフィルムを温度30℃のオーブン中で15分間熱処理して、防湿フィルムを得た。
【0070】
(比較例6)
熱処理の雰囲気の温度条件として、温度30℃のオーブンに代えて温度230℃のオーブン中で熱処理した以外は比較例5と同様にして、防湿フィルムを得た。得られた防湿フィルムの金属蒸着層は酸化したが、防湿フィルムにカールや皺が発生した。
【0071】
<評価結果>
実施例1〜17における、水性液体のpH及び溶存酸素濃度並びに熱処理時の雰囲気の温度及び酸素濃度は表1に示す通りであった。また、実施例1〜17及び比較例1〜6で得られた防湿フィルムにおける、各層の金属と酸素の積分値比、各層の厚みの割合、金属酸化物層の密度、水蒸気透過度及び外観は表1に示す通りであった。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示した結果からも明らかなように、本発明の防湿フィルム(実施例1〜17)は、水蒸気透過度が十分に優れており、しかもカールや皺の発生がないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、防湿フィルムのカールや皺の発生を防止しつつ高度の防湿性が付与された防湿フィルムを提供することが可能となる。
【0075】
したがって、本発明の防湿フィルムは、面発光素子(EL)、真空断熱材、集積回路(IC)、食品、医薬品、生活素材等の包装材や防湿材等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム基材の少なくとも片面に金属蒸着層が形成された防湿フィルムであって、
前記金属蒸着層が、該金属蒸着層の金属に関するXPSスペクトルのピーク高さをHMe、酸素に関するXPSスペクトルのピーク高さをHと定義した場合に、H/HMeの値が0.5以上である金属酸化物層と、H/HMeの値が0.5未満である金属及び金属酸化物の複合層とを備えており、
前記金属酸化物層の密度が2.0〜10.0g/cmであり、且つ、前記金属酸化物層が前記金属蒸着層の表面から該金属蒸着層全体の厚みに対し6〜50%の厚みを占めていることを特徴とする防湿フィルム。
【請求項2】
前記金属酸化物層並びに前記金属及び金属酸化物の複合層における金属に関するXPSスペクトルの積分値をSMe、酸素に関するXPSスペクトルの積分値をSと定義した場合に、前記金属酸化物層におけるS/SMeの値が0.5〜1.5であり、且つ、前記金属及び金属酸化物の複合層におけるS/SMeの値が0.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の防湿フィルム。
【請求項3】
前記防湿フィルムが、前記高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって金属の蒸着層を形成させた後に、前記金属の蒸着層の表面に水性液体を塗布し、次いで50℃以上100℃未満の温度で熱処理して前記金属の蒸着層の表面を酸化せしめることによって得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防湿フィルム。
【請求項4】
前記高分子フィルム基材がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、且つ、前記金属がアルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の防湿フィルム。
【請求項5】
高分子フィルム基材の少なくとも片面に蒸着法によって金属の蒸着層を形成させた後に、前記金属の蒸着層の表面に前記水性液体を塗布し、次いで50℃以上100℃未満の温度で熱処理して前記金属の蒸着層の表面を酸化せしめることによって、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の防湿フィルムを得ることを特徴とする防湿フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記水性液体の溶存酸素濃度が6〜12mg/lであることを特徴とする請求項5に記載の防湿フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱処理を酸素濃度が20〜100容量%に維持された雰囲気中で実施することを特徴とする請求項5又は6に記載の防湿フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−334865(P2006−334865A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160837(P2005−160837)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】