説明

防湿化粧シートを用いた化粧板

【課題】 印刷再現性がよく意匠性に優れ、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、剥がれや浮きが生じることがなく、また、木質系基材に容易に積層することができる防湿化粧シートおよびそれを用いた化粧板を提供することである。
【解決手段】 合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層された印刷基材の前記合成樹脂製基材層の他方の面に印刷層、表面保護層が順に積層されてなり、前記蒸着層側の面に接着剤層を介して紙層が積層されていることを特徴とする防湿化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基材に積層する防湿化粧シートおよびそれを用いる化粧板に関し、さらに詳しくは、環境温湿度の変化による木質系基材の吸湿や放湿によって生じる反りを防止すると共に、印刷再現性がよく、意匠性に優れた防湿化粧シートおよびそれを用いる化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材合板、中密度繊維板(MDF)、ハードボード、パーティクルボード等の木質系基材の表面に化粧シートを積層した化粧板がドア、引き戸、間仕切り等の表面材として用いられている。木質系基材は、その含水率が外気条件下における木質系基材の平衡含水率より小さい場合には、化粧板の化粧シートを積層していない面から吸湿、吸水し、この面を膨張させ、また、反対に木質系基材の含水率が、外気条件下における木質系基材の平衡含水率より大きい場合には、放湿、放水して収縮させるのに対し、化粧シートを積層した面は吸放湿、吸放水が殆どないために、化粧板の化粧シートを積層した面と木質系基材が表出した面との膨張率または収縮率が異なり、化粧板に反りが発生し、商品価値を落とす結果となる。
【0003】
そこで、化粧板の反りを防止する化粧シートとして、紙層/合成樹脂層/紙層からなる基材が用いられるようになり、紙層としては紙に樹脂を混抄した樹脂混抄紙や紙に樹脂を含浸した樹脂含浸紙などの紙間強度を向上させた、いわゆる紙間強化紙が用いられ、また、合成樹脂層としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるような防湿性を有するポリオレフィン系樹脂が用いられ、さらに、いずれか一方の紙層の表面に、たとえば、木目模様等の絵柄を印刷した印刷層を設け、さらに該印刷層が形成された面全面に表面保護層を設けてなるものが用いられるようになってきた。
【0004】
しかし、上記した表面保護層/印刷層/紙層/合成樹脂層/紙層からなる化粧シートは、印刷層を設ける紙層表面の平滑度が200〜350秒程度であり、印刷再現性が悪く意匠性において満足できるものではなく、この解決が強く要望された。
【0005】
上記問題を解決する一つの技術として、紙層/合成樹脂層/紙層を製造する方法を特定することにより、紙層の表面の平滑度を向上させ、この表面の平滑度を向上させた紙層面に印刷することで、印刷再現性がよく意匠性に優れた化粧シートが開示されている(たとえば、特許文献1参照)
この特許文献1に開示された技術は、確かに印刷再現性を良くして意匠性に優れるものとすることができるものであるが、印刷する基材が樹脂混抄紙や紙間強化紙であり、印刷基材が合成樹脂製シートからなり、この合成樹脂製シートに印刷層を形成した化粧シートと比べると、印刷基材が紙層/合成樹脂層/紙層からなる化粧シートは見劣りすることは否めず、また、防湿性能という点から見ると、紙層/合成樹脂層/紙層からなる化粧シートはドア、引き戸、間仕切りなど、両側の環境温湿度に大きな差がある場所、あるいは、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合などにおいては、反りを生じるという問題や紙層の層間から剥離する虞があるという問題がある。
【0006】
しかしながら、基材が紙層/合成樹脂層/紙層からなる化粧シートは、基材が合成樹脂製シートからなる化粧シートに比べて、木質系基材に積層して化粧板とする際には、通常、業界で広く使用されている木工用接着剤で容易に積層することができるという長所もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−171063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、印刷再現性がよく意匠性に優れ、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、剥がれや浮きが生じることがなく、また、木質系基材に容易に積層することができる防湿化粧シートおよびそれを用いた化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明の防湿化粧シートは、合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層された印刷基材の前記合成樹脂製基材層の他方の面に印刷層、表面保護層が順に積層されてなり、前記蒸着層側の面に接着剤層を介して紙層が積層されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2記載の本発明の化粧板は、請求項1記載の防湿化粧シートが木質系基材の一方の面に木質系基材用接着剤層を介して前記表面保護層が表出するように積層されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防湿化粧シートおよびそれを用いた化粧板は、合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層された印刷基材からなり、印刷基材が紙層/合成樹脂層/紙層からなる化粧シートに比べて格段に優れた防湿性能を有し、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、剥がれや浮きが生じることがないという効果を奏し、さらに印刷層を合成樹脂製基材層の他方の面に形成するために、印刷層を紙層に形成する場合に比べて印刷再現性が良くて意匠性に優れたものとすることができるという効果を奏し、さらにまた、本発明の防湿化粧シートは、蒸着層側の面に接着剤層を介して紙層が積層された構成からなるために、木質系基材との積層が容易であり、化粧板とする際の加工適性に優れるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる防湿化粧シートの一実施例を図解的に示す層構成図である。
【図2】本発明にかかる化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる防湿化粧シートの一実施例を図解的に示す層構成図、図2は本発明にかかる化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であり、図中の1は防湿化粧シート、2は化粧板、8は表面保護層、9は印刷層、10は合成樹脂製基材層、11は蒸着層、12は接着剤層、13は紙層、14は木質系基材用接着剤層、15は木質系基材、Sは印刷基材をそれぞれ示す。
【0014】
図1は本発明にかかる防湿化粧シートの一実施例を図解的に示す層構成図であって、防湿化粧シート1は合成樹脂製基材層10の一方の面に蒸着層11が積層された印刷基材Sの前記合成樹脂製基材層10の他方の面に印刷層9、表面保護層8が順に積層されると共に前記蒸着層11側の面に接着剤層を介して紙層13を積層したものである。
【0015】
図2は本発明にかかる化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、化粧板2は図1に示した防湿化粧シート1をその表面保護層8が表出するように木質系基材用接着剤層14を介して木質系基材15に積層したものである。
【0016】
図1、2に示す本発明の防湿化粧シートおよび化粧板は、防湿性能や印刷再現性において優れると共に防湿化粧シートを木質系基材に積層して化粧板とする際も、木工系接着剤や木工系製造装置で対応することができ、加工適性においても優れるという効果を奏するものである。
【0017】
次に、本発明の防湿化粧シート1および化粧板2を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製基材層10としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ビニルアルコール共重合体,あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記合成樹脂製基材層10は、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいが、後述する蒸着層11が少なくとも一方の面に形成される基材となることから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。前記合成樹脂製基材層10の厚さとしては、概ね9〜25μmが適当である。また、前記合成樹脂製基材層10の必要な面には必要に応じてコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理が施されているものである。
【0018】
また、蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、あるいは、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物の薄膜からなる無機酸化物蒸着層であり、この蒸着層11は真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法等の周知の蒸着法で、上記した合成樹脂製基材層10の少なくとも一方の面に薄膜形成される。なお、前記蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる蒸着層は金属光沢があるために、意匠によっては金属光沢を隠蔽しなければならないという問題、また、フラッシュドア加工の際に高周波を使用して接着を行う場合などがあり、より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。また、前記蒸着層11のガスバリアー性を一層向上させる目的で、前記蒸着層11上(前記接着剤層12が当接する側の面)にポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコールに酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物を添加した組成物をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布方法でポリビニルアルコール層あるいは前記組成物層を塗布形成してもよいものである。
【0019】
また、紙層13としては、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した樹脂混抄紙や樹脂を含浸して層間強度を強化した樹脂含浸紙などの紙間強化紙等を挙げることができ、坪量としては概ね23〜100g/m2 が適当である。なお、上記した各種紙は必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の適宜の易接着処理を施してもよいものである。
【0020】
また、前記蒸着層11と前記紙層13とを積層する接着剤層12としては、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて周知の塗布手段で形成すればよい。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができ、ロールコート法やグラビアコート法等の適宜の塗布手段を用いて形成すればよいものである。塗布量としては、1〜20g/m2 であり、好ましくは1〜5g/m2 である。
【0021】
次に、合成樹脂製基材層10の他方の面に形成する印刷層9、および、表面保護層8について説明する。前記印刷層9としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができ、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様等の絵柄印刷層および/ないし隠蔽性を有するベタ柄印刷層からなる。前記印刷層9を形成するインキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができ、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。
【0022】
また、表面保護層8としては、防湿化粧シート1および化粧板2に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐候性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層5を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であり、表面保護層の塗布量として、固形分で概ね1〜20g/m2 が適当である。
【0023】
熱硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は不飽和ポリエステル樹脂に添加される。上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、上記した熱硬化型樹脂を溶液化し、ロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥すると共に硬化させることにより形成することができる。
【0024】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0025】
電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマーからなる。これら単量体、プレポリマーまたはポリマーは、単体で用いるか、あるいは、複数種混合して用いる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレートないしメタアクリレートの意味で用いる。また、電離放射線とは、電磁波ないし荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常は紫外線ないし電子線である。
【0026】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートとは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0027】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0029】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0030】
カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0031】
上記した電離放射線硬化型樹脂を、紫外線を照射することにより硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独ないし混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独ないし混合物として用いることができる。なお、これら光重合開始剤の添加量は、一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0032】
次に、前記防湿化粧シート1と後述ずる木質系基材15とを積層する木質系基材用接着剤層14について説明する。前記木質系基材用接着剤層14は、防湿化粧シート1と木質系基材15とを積層するために用いる層であり、前記木質系基材用接着剤層14を形成する接着剤としては、たとえば、熱可塑性樹脂系、熱硬化型樹脂系、ゴム(エラストマー)系等のいずれのタイプの接着剤であってもよいものである。これらは公知のもの、ないし、市販品を適宜選択して使用することができる。熱可塑性樹脂系接着剤としては、たとえば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができる。また、熱硬化型樹脂系接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等を挙げることができる。また、ゴム系接着剤としては、天然ゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS、SIS、SEBS等)等を挙げることができる。また、木質系基材15の表面色を隠蔽して意匠性を向上させる目的で、前記木質系基材用接着剤層14は顔料等により着色してもよいものである。
【0033】
また、木質系基材15としては、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系基材やフラッシュ構造からなる基材を挙げることができる。
【0034】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げて更に詳しく説明する。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
一方の面にアルミナ蒸着層が形成されると共に、蒸着層面にポリビニルアルコールが塗布形成された12μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、12μm厚さの蒸着PETフィルムと呼称する)の蒸着層側の面に、ポリエステルポリオールを主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型接着剤をウエット状態で3〜4g/尺2 塗布すると共に乾燥し、該接着剤面に30g/m2 の紙間強化紙〔王子特殊紙(株)製:Uフレックス30(商品名)〕を積層した積層体を作製した。該積層体のPET面にコロナ放電処理を行った後に、該コロナ放電処理面に硝化綿系樹脂を主体とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をビヒクルとする印刷インキを用いてベタ柄からなるベタ柄印刷層を印刷形成すると共に、硝化綿系樹脂をビヒクルとする印刷インキを用いて木目模様からなる絵柄印刷層とをグラビア印刷法で印刷形成した後、前記印刷層面全面に、主剤としてアクリルポリオール系樹脂に、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法で塗布して透明な表面保護層を形成した防湿化粧シートを作製した。次に、3mm厚さの中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤をウエット状態で7〜8g/尺2 塗布し、乾燥した後に、該塗布面に前記防湿化粧シートを表面保護層が表出するようにロールラミネート機で積層して本発明の化粧板を作製した。
[比較例1]
一方の面にそれぞれコロナ放電処理を施した23g/m2 の紙間強化紙〔王子特殊紙(株)製:Fix23(商品名)〕と30g/m2 の紙間強化紙〔王子特殊紙(株)製:Uフレックス30(商品名)〕をコロナ放電処理面が対向するようにして40μm厚さのポリエチレン樹脂にてサンドイッチラミネーションを行い、紙間強化紙(23g/m2 )/ポリエチレン(40μm)/紙間強化紙(30g/m2 )の印刷基材を作製した。次に、前記印刷基材の紙間強化紙(30g/m2 )面に硝化綿系樹脂を主体とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をビヒクルとする印刷インキを用いて、ベタ柄からなるベタ柄印刷層を印刷形成すると共に、硝化綿系樹脂をビヒクルとする印刷インキを用いて木目模様からなる絵柄印刷層とをグラビア印刷法で印刷形成した後、前記印刷層面全面に、主剤としてアクリルポリオール系樹脂に、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法で塗布して透明な表面保護層を形成した比較例とする防湿化粧シートを作製した。次に、3mm厚さの中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤をウエット状態で7〜8g/尺2 塗布し、乾燥した後に、該塗布面に前記防湿化粧シートを表面保護層が表出するようにロールラミネート機で積層して比較例とする化粧板を作製した。
【0036】
上記で作製した実施例1、および、比較例1の防湿化粧シートおよび化粧板について、透湿度、平面引張強度、表面意匠性(調子再現性)を下記する評価方法で評価し、その結果を表1に纏めて示した。
【0037】
【表1】

〔評価方法〕
・透湿度:
JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠し
て実施例1、および、比較例1の防湿化粧シートを測定して透湿度を算出した。
【0038】
透湿度の単位は、g/m2 ・24hrである。
・平面引張強度:
JAS合板 平面引張試験に準拠して測定して平面引張強度を算出した。なお、
評価に供した化粧板は、上記で作製した化粧板を24時間コールドプレスしたもの
を用い、化粧板を5cm角にカットし、底辺が2cm角の金属治具を防湿シート面
にシアノアクリレート系接着剤にて貼り、24時間常温(約23℃)養生した後、
カッターナイフにて金属治具に沿ってMDFにまで達する切り込みを入れ、測定試
験機器により試験片に対して垂直面方向に引っ張り、その際の剥離界面を目視観察
して評価すると共に引張強度を測定した。
【0039】
測定単位は、N/cm2 である。
・表面意匠性(調子再現性)
目視評価にて調子再現性のよいものを良として○印で示し、インキ着肉性が悪く
調子再現性に劣るものを不良として×印で示して評価した。
【0040】
表1からも明らかなように、本発明の防湿化粧シートおよび化粧板はアルミナ蒸着層を設けたことにより、透湿度性能の向上が見られ、環境温湿度の変化により発生する化粧板の反りを防止することができるという効果が期待できるのみならず、防湿化粧シートとMDFとの間の接着強度を向上させることができ、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、防湿化粧シートの剥がれや浮きの生じることがないという優れた効果が期待できる。さらに、印刷基材が紙層から合成樹脂製基材層に代わったことにより、インキ着肉性が向上し、印刷再現性(調子再現性)がよく、意匠性に優れたものとすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 防湿化粧シート
2 化粧板
8 表面保護層
9 印刷層
10 合成樹脂製基材層
11 蒸着層
12 接着剤層
13 紙層
14 木質系基材用接着剤層
15 木質系基材
S 印刷基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層された印刷基材の前記合成樹脂製基材層の他方の面に印刷層、表面保護層が順に積層されてなり、前記蒸着層側の面に接着剤層を介して紙層が積層されていることを特徴とする防湿化粧シート。
【請求項2】
請求項1記載の防湿化粧シートが木質系基材の一方の面に木質系基材用接着剤層を介して前記表面保護層が表出するように積層されていることを特徴とする化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−78955(P2013−78955A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−9988(P2013−9988)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2008−85276(P2008−85276)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】