説明

防湿化粧シート及び化粧板

【課題】 古紙として再利用可能な紙基材であり、耐溶剤性に優れた防湿化粧シートを得る。
【解決手段】 紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂、含窒素化合物と平板状顔料を含む防湿層を有し、該合成樹脂がオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体である防湿化粧シート。防湿層中にヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくは二酸化チタンの少なくともいずれかが含まれる前項記載の防湿化粧シート。前項に記載の防湿化粧シートが木質ボードに貼合されていることを特徴とする化粧板。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、住宅の壁面、天井面、あるいはドアや襖等を初めとする各種建具、又はキッチン等の収納部に設けられた扉などの住宅設備機器、各種調度品等には、合板や平行合板、もしくはパーティクルボードやファイバーボード等の各種木質ボードを基材とする化粧板等、様々な木質材料が使用されている。
この中でも、機械的処理あるいは化学的処理等により得られた木材繊維を接着剤と混合し熱圧成型してなるファイバーボードは、均質で異方性がないこと、また原料として未利用廃材や低質木材が主に利用されるリサイクル製品であって、コスト面でも優れていることから、化粧板用の基材として多く使用されている。
このようなファイバーボードは、主に密度によって大別され、密度の低い方から、インシュレーションボード、中密度ファイバーボード(Mid Density Fiber Board,以下MDF)、ハードボードと呼ばれている。この中で、通常は、MDFが化粧板用基材として使用されている。
ところで、木質材料は、温度や湿度の変化によってその含水率が変化する性質がある。従って、従って、温度や湿度条件による水分量の変動の結果、材料の収縮や膨張によって形状が変化し、「反り」や「ネジレ」等が発生するおそれがある。
特に、建具の場合、室内と室外等、異なる空間を仕切るものであって、表面と裏面が各々温度や湿度が異なる環境にさらされる。従って、このような用途に使用する場合、温度・湿度条件の変動に対して耐性を有し、形状変化が起こりにくいという特性がより重要となる。例えばドアの場合、反りやねじれが生じると、開閉できなくなったり、ドア枠とドア間に隙間が生じるという問題が発生する。
特に、木質ボードの中でもMDF等のファイバーボードの場合、構造上の特徴から、温度・湿度条件の変動により、通常8〜9%である含水率がかなり変化し、その結果、反りやネジレが生じ易いという問題があった。
【0002】
そこで、上記木質ボードを基材として化粧板を製造する場合は、防湿・防水加工を施して使用するのが一般的である。
例えば、木質ボードの表側面にはプラスチック系化粧シート、裏側面に防湿・防水加工としてプラスチックフィルムを貼合した構成の木質系化粧板がある。
あるいは、木質ボードの表側面には上記同様にプラスチック系化粧シートを貼合し、裏側面には、紙/プラスチックフィルム/紙(表裏を紙で覆ったプラスチックフィルム)からなる積層体を貼合した構成、金属箔/紙からなる積層体を貼合した構成の木質系化粧板が存在する。なお、裏側面に貼着するプラスチックフィルムや金属箔の表裏等に紙を貼合するのは、紙の多孔質性によってプラスチックフィルム等を木質板に接着し易くすると同時に、これにより得られた木質系化粧板を他の物に接着し易くする効果を有する。
具体的に述べると、特許文献1では、防湿性を有する内装材として、基板の少なくとも片面に、プラスチックフィルムや金属箔等からなる防湿シートを芯層としてその表裏に紙を積層した構成の防湿紙を、基板に接する内側の紙層内に接着剤が含浸されるように貼着した構成を開示している。
また、特許文献2には、木質板の表裏両面に塩化ビニリデン系樹脂を含む防湿防水塗膜層が形成され、さらに表側の防湿防水塗膜層上に接着剤層を介して紙系化粧シートが貼着されてなる、木質系化粧板が開示されている。
しかし、このような従来の化粧シート(防湿化粧シート)は、紙を使用していても、フィルムや金属箔と貼合されているため、古紙として再利用が困難であった。従って、紙を基材として再生可能であって、しかも防湿性に優れた化粧シートが求められていた。
再生可能な防湿紙としては、ワックスを含有する防湿層を有する防湿紙等が存在するが(特許文献3等)、化粧シートとして使用可能な防湿紙としては、防湿性の他に、印刷適性と表面強度が優れていることが要求されるため、ワックスを含む防湿層を有する防湿紙は、その点においては化粧シートとしては使用することはできない。
また、印刷適性と表面強度を有する再生可能な防湿紙としては、合成樹脂と平板状顔料による防湿層を有する特許文献4が開示されている。
また、紙基材に、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体を含む塗料を塗工した例として特許文献5が開示されている。ただし、防湿性については考慮がなされておらず、防湿紙の用途には適していない。
さらに、防湿紙で、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体と、平板状顔料による防湿層を有する例が特許文献6に開示されている。ただし、これは化粧シートとしての使用がなされていない。
【0003】
【特許文献1】特開平7−251407号公報
【特許文献2】特開平11−348180号公報
【特許文献3】特公昭59−66598号公報
【特許文献4】特開平9−291499号公報
【特許文献5】特開2007−238730号公報
【特許文献6】特開2001−355195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような防湿紙を化粧シートとして使用する際には、新たな問題が発生することが判明した。即ち、化粧シートを木質ボードに貼合して化粧板とした後、該化粧板にペンキや木工用ニスを塗工した場合、化粧板の表面に発生した傷等からトルエンなどの溶剤が滲みこみ防湿紙が膨潤する。これらは、美観や耐久性を損なうものであって、化粧板、化粧シートとしては非常に問題であった。
従って、古紙として再利用可能な紙基材であり、化粧板製品となった後もペンキやニスの塗工が可能な、耐溶剤性に優れた防湿化粧シートが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
即ち本発明の第1は、紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂、含窒素化合物と平板状顔料を含む防湿層を有し、該合成樹脂がオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体である防湿化粧シートである。
【0006】
本発明の第2は、防湿層中にヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくは二酸化チタンの少なくともいずれかが含まれる本発明の第1に記載の防湿化粧シートである。
【0007】
本発明の第3は、本発明の第1〜2のいずれかに記載の防湿化粧シートが木質ボードに貼合されている化粧板である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、古紙として再利用可能な紙基材であり、耐溶剤性に優れた防湿化粧シートを得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の防湿化粧シートは、紙基材に、合成樹脂と、無機層状化合物と、酸化防止剤を含有する防湿層を設けたものである。
【0010】
本発明において合成樹脂として使用するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンとの共重合体とは、オレフィン由来の構成単位を共重合体中に50質量%以上(即ちα,β−エチレン性不飽和カルボン酸由来の構成単位が50質量%以下)含有する重合体であり、オレフィンと不飽和カルボン酸を公知の方法によって共重合することにより得られる。重合方法としては、ランダム共重合、ブロック共重合、不飽和カルボン酸がグラフトした共重合などが挙げられる。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン等が挙げられるが、エチレンが最も好ましい。
【0011】
前記共重合体に使用できるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸をあげることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0012】
前記共重合体中のカルボキシル基は、水分散性、紙基材及び印刷層への密着性を向上させるため、また、一般的に行われる造膜時の、皮膜の性状向上のための反応基として使用される。そのため、共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸由来の構成単位の比率は5〜30質量%であれば好ましく、10〜25質量%であればより好ましい。該単量体単位が少なすぎると紙基材及び印刷層との密着性が不十分であり、多すぎるとブロッキング性、耐水性の低下が見られ実用的でなくなる。
【0013】
また、本発明で用いるオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体は、本発明の効果である紙基材及び印刷層への密着性、接着性を損なわない範囲でその他の単量体に由来する構成単位を含んでもよい。オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体中において、その他の単量体に由来する構成単位量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、最も好ましいオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体の例として、エチレン−アクリル酸共重合体があげられる。
【0014】
本発明で用いるオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合体の質量平均分子量は1,000〜100,000であるが、分散性の点で好ましくは3,000〜70,000、より好ましくは5,000〜40,000である。
【0015】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、合成樹脂として、前述のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とオレフィンの共重合体以外の他の樹脂成分を加えたものを用いることが可能である。具体的には、芳香族ビニル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるメチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体(MBR)、などを加えて用いることができる。なお、これら共重合体は、他の単量体と共重合させて使用してもかまわない。
【0016】
次に、本発明の防湿層に好適に使用できる平板状顔料としては、第1にはフィロケイ酸塩鉱物があげられる。フィロケイ酸塩鉱物に属するものは板状又は薄片状で明瞭な劈開性を有し、雲母族、パイロフィライト、タルク(滑石)、緑泥石、セプテ緑石、蛇紋石、スチルプノメレーン、粘土鉱物などがある。これらの中でも産出される時の粒子が大きく産出量が多い鉱物、例えば雲母族やタルクが好ましい。雲母族には、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母、合成マイカ)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母、カリ四ケイ素雲母、ナトリウム四ケイ素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどがあげられる。組成的にタルクに類似する合成雲母などの合成品も本発明の範疇に含むものとする。
また、カオリンのうち、意識的に結晶層を剥離して平板状にしたデラミカオリンなどは、本発明における平板状顔料として用いることができる。
また、平板状顔料の粒子径は、防湿層の膜厚に対応したものを使用することが好ましい。その場合は、平板状顔料をボールミル、サンドグラインダー、コボルミル、ジェットミルなどの粉砕機で粉砕分級して所望の粒子径を得た後、本発明に使用するものとする。
【0017】
本発明に好適に用いられる平板状顔料の第2として、膨潤性無機層状化合物が挙げられる。その具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等をあげることができる。
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0018】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等をあげることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等をあげることができる。
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物をあげることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等をあげることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどをあげることができる。
【0019】
粘土性鉱物(天然品)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OH及び/又はF)1.5〜2.5で示されるものがあげられる。合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため一般に大きな粒子のものが得られなく、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
【0020】
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400℃〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがるつぼの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、分級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0021】
合成平板状顔料としては、フッ素金雲母(KMgAlSi10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si10、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMgLiSi10、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMgLiSi10、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4.010(OH)、水熱反応法)などの合成スメクタイトがあげられる。
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts、NTO−5(熔融法、ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等をあげることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
【0022】
本発明により好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65mL/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60mL/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30mL/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20mL/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38mL/2g以上)等である。
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0023】
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0024】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100g当り、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するものが本発明において特に好ましいものである。
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160-163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液を約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CHCOONH)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNH4を蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)当りのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity,CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0025】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1〜100μmが好ましく、とりわけ0.5〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
【0026】
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
また、本発明で使用する平板状顔料は水、あるいは溶剤中で分散された状態での平均粒子径が20nm〜100μmの間にあるものが好適であり、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜30μmである。平均粒子径が20nm未満であると、アスペクト比が小さくなり防湿性向上効果が小さい。一方100μmを越えると塗工層表面から顔料が突き出し、外観不良や防湿性低下を招き好ましくない。
【0027】
本発明で用いる平板状顔料の水あるいは溶剤に分散された平均粒子径は、平均粒子径が0.1μm以上のものは光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。また、水あるいは溶剤に分散された平均粒子径が0.1μmのものについは動的光散乱法を用いて測定した値である。
また、本発明で使用する平板状顔料の好ましいアスペクト比は5以上であり、特に好ましくはアスペクト比が10以上である。アスペクト比が5未満のものは曲路効果が小さいために防湿性が低下する。アスペクト比は大きいほど平板状顔料の塗工層中における層数が大きくなるため高い防湿性能を発揮する。平板状顔料の厚みは、防湿膜の断面写真より測定する。厚みが0.1μm以上のものは電子顕微鏡写真より画像解析して求める。厚みが0.1μm未満のものは透過型電子顕微鏡写真より画像解析して求める。本発明でいうアスペクト比は、上記水、又は溶剤に分散された平均粒子径を防湿膜の断面写真より求めた厚さで除したものである。
防湿層における合成樹脂と平板状顔料の配合量は、質量換算で99/1〜30/70が好ましく、より好ましくは93/7〜35/65、特に好ましくは95/5〜40/60である。平板状顔料の配合量が1%未満になると、防湿性向上効果及び離解性向上効果が小さくなる。平板状顔料が70%を越えて大きくなると、平板状顔料の間を埋める樹脂が不足して、空隙やピンホールの増大を招き防湿性が悪化する。
【0028】
なお、防湿層には、前述の合成樹脂、平板状顔料に加えて、防湿性向上のために含窒素化合物が含まれた方が好ましい。
本発明で使用できる含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gがさらに好ましく、0.5〜5meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため防湿性が悪くなり、9meq/gを越えて大きいと、塗料が凝集しやすくなり取扱いが困難となるばかりでなく、防湿性も悪化する。
含窒素化合物を具体的にあげると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンなどがある。また、含窒素化合物は特開平9−291499号公報に記載の含窒素化合物も使用できる。
【0029】
さらに、含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられるものが代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示すものとしては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂があげられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。さらに、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0030】
また、含窒素化合物はカチオン性を示すために、平板状顔料のアニオン部分やアニオン性の合成樹脂エマルジョンと混合した時にショック(塗料凝集)を起こすことがある。このようなショックを防止するために塩基性物質を含窒素化合物、平板状顔料の水溶液や合成樹脂エマルジョン中に加えてアルカリ側(pH7〜10が好ましい)に調整した方が好ましい。特に含窒素化合物に塩基性化合物を添加する方法がショック防止の効果が大きい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0031】
本発明においては、防湿層に含まれる合成樹脂が、空気中の酸素や加工時の加熱による酸化によって変質、変色が発生することを防ぐため、酸化防止剤を防湿層中に加えることが望ましい。
【0032】
本発明で使用できる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、二酸化チタン等があげられる。これらの酸化防止剤は、単独で、又は必要に応じて適宜混合して使用することが可能である。
なお、酸化防止剤の中でも、フェノール系酸化防止剤の一種であるヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び二酸化チタンの変色抑制効果が優れており、特に好適である。
【0033】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、フェノールの水酸基に隣接する位置にアルキル基を有する構造を持つ、フェノール由来の水酸基を有する有機化合物である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−第3ブチル−4−メチルフェノール、2−第3ブチル−4−メトキシ−フェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−エチリデン−ビス(2,4−第3ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−第3ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル、2,4,6−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(4−第3ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−第3ブチル)−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−第3−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキザスピロ〔5,5〕ウンデカン、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−第3ブチルフェノール)などがある。
これらの酸化防止剤は、合成樹脂に対して0.1〜10質量部添加して使用する。より好適には0.5〜7質量部、最も好適な添加には1〜5質量部である。添加量が0.1質量部未満の場合、変色防止効果が不十分となり、添加量が10質量部を超えると変色防止効果が頭打ちになり不経済である。
また、二酸化チタンはアナターゼ型とルチル型がありいずれも本発明の酸化防止剤として使用できる。二酸化チタンの粒子径は5〜300nmが好ましい。
【0034】
本発明においては、防湿層に、さらに、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物などの光安定剤を添加することによって、耐候性を改善することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5′−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3′,5′−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−第3ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾール)フェノール等のベンゾトリアゾール類、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−第3ブチルフェニル−3′−5′−ジ第3ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3−5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類があげられる。
【0035】
以上で述べた合成樹脂、平板状顔料、酸化防止剤を含有する防湿塗料を調製し、これを紙支持体に塗工して本発明の防湿層を形成する。塗工設備には特に限定はなく、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、カーテンコーター等の公知の方式から適宜選択が可能である。特に、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター等の、塗工表面をスクレイプする形式の塗工設備が、平板状顔料の配向を促し、防湿性を向上させるという点で好ましい。
本発明における防湿層の塗工量は、0.1〜20g/mが好適な範囲である。防湿層塗工量が0.1g/m未満であると、十分な防湿性を得ることができず好ましくない。また塗工量が20g/mを越えると、防湿性が頭打ちとなるため不経済であり、また防湿層の割合が大きくなることで古紙としての価値が低下する。
なお、本発明の防湿層を形成する防湿塗料には、必要に応じて、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調整剤、平板状顔料以外の顔料(炭酸カルシウム、クレー、カオリン、マイカ)などを添加することが可能である。
【0036】
また本発明に用いられる紙基材は、パルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、一般的に用いられている晒クラフト紙または未晒クラフト紙、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙などが好適である。さらに好ましくは、ヤンキ−ドライヤ−などで強制乾燥がなされた片ツヤ紙、又は、カレンダー処理が施されたクラフト紙などである。このように高平滑性を有する紙基材を用いた場合は、防湿層の厚さ方向における平板状顔料の配向性が、塗工面に対し、均一に平行に配列しやすくなるため、防湿性能が格段に向上する。さらに、化粧シートには、通常美粧性を付与するため木目模様等の各種印刷層が設けられているが、平板状顔料が均一に配列することで印刷適性も向上する。
また、本発明において、さらに印刷適性を向上させるために、防湿層を形成後、さらにカレンダー処理を施して、表面平滑性を向上させることができる。
また、防湿塗料の塗工適性や塗工量減少のために、基材と防湿層の間にアンカー層を設けてもよい。
【0037】
また、本発明の防湿化粧シートは、美観を向上させるために、防湿層の上に装飾層を設けることができる。装飾層は、グラビア印刷や転写印刷等の従来公知の方法や材料による印刷層や、アルニウム等の金属の真空蒸着等で部分又は全面に形成した金属薄膜層等により設けることができる。装飾層の模様は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、唐草模様、幾何学図形、文字等、必要に応じて任意に選択可能である。
【0038】
また、本発明の防湿化粧シートには、耐擦傷性等の表面物性の向上、塗装感等の意匠感付与の他に、防湿性の向上等の為に、その最外層に保護樹脂層を設けることがさらに好ましい。保護樹脂層としては、通常塗工に用いられる任意の合成樹脂から目的に応じて適宜選択が可能であるが、ポリアクリル、ポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等が好適に用いられこれに必要に応じ適宜体質顔料、着色剤、減摩剤、滑剤、紫外線吸収剤等を添加した塗料が使用される。
【0039】
本発明の防湿化粧シートを木質ボードの少なくとも片面に貼合することで、化粧板が得られる。
木質ボードとは、木質材料からなる面材であれば特に限定はなく、単板、合板、平行合板、パーティクルボード、さらには、インシュレーションボード、MDF、ハードボード等のファイバーボードが使用可能である。
この中でも、湿度の影響によって反りが生じ易いMDFにおいても、本発明の防湿化粧シートを貼合することで、優れた反り防止効果が発揮される。
防湿化粧シートを木質ボードに貼合する場合は接着剤を用いることが好ましい。使用する接着剤には特に制限は無く、要求物性等に応じて従来公知の接着剤から適宜選択使用することができる。例えば具体的には、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂、或いはウレタン樹脂等の硬化性樹脂等を用いることができる。
これらの接着剤は、溶液や分散液、或いは溶融物等任意の形態で木質ボードに塗工することができる。塗工は、ロールコートやスプレーコート等の従来公知の方法で行なうことができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により詳説する。
【0041】
<実施例1>
水30質量部に、25%アンモニア水(和光純薬製、特級)15部を攪拌しながら添加後、カチオン性樹脂(住友化学製、商標:SPI203、固形分50%、ポリアミンポリアミド樹脂)22質量部を添加し、10分間攪拌した。この水性分散液に無機層状化合物の水分散液(トピー工業製、商標NTO−5、固形分6.0%、合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母)247質量部を添加し、10分間攪拌した。さらに、合成樹脂成分としてオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(エチレン-アクリル酸共重合体、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーの化学等量比=98/2、東邦化学製、商標ハイテックS−3123、固形分25%)を1000質量部添加し10分間攪拌した。この水性分散液に酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤である4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリブチル−3−メチルフェノール)(分子量383、融点205℃以上、川口化学工業製、商標:アンテージ W−300)の水分散液(固形分30%、ポリカルボン酸系分散剤を酸化防止剤に対して1質量%添加して、カウレス分散機で30分間分散した液)21質量部を添加し10分間攪拌して防湿塗料を得た。
得られた防湿塗料を、片艶晒クラフト紙(王子特殊紙製、商標:フレックスS−45、坪量45g/m)の艶面に防湿層の塗工量が固形分で4g/mとなるように、バー塗工したのち乾燥させ(乾燥温度140℃)、二段式スーパーカレンダーを2回通過させてカレンダー処理を行いコート紙を得た。
さらに、防湿層表面に、溶剤系インキ(大日本インキ製、商標:ユニビアNT)を用い、グラビア印刷機で印刷した後、一旦80℃で乾燥させて、さらに40℃条件で24時間静置した。
その上に、2液硬化型アクリルウレタン樹脂(大橋化学工業株式会社製、商標:ウタナール)を6g/m(dry)の塗布し、80℃で乾燥させて防湿化粧シートを得た。
【0042】
<実施例2>
合成樹脂成分を、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(エチレン-アクリル酸共重合体、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーの化学等量比=96/4、東邦化学製、商標ハイテックS−3121、固形分25%)に変更した以外は、実施例1と同様に防湿化粧シートを製造した。
【0043】
<実施例3>
合成樹脂成分を、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(エチレン-アクリル酸共重合体、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーの化学等量比=98/2、東邦化学製、商標ハイテックS−3123、固形分25%)を800質量部、及び、SBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)を107質量部に変更して添加したこと以外は、実施例1と同様に防湿化粧シートを製造した。
【0044】
<実施例4>
合成樹脂成分を、オレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体(エチレン-アクリル酸共重合体、エチレンモノマーとアクリル酸モノマーの化学等量比=95/5、東邦化学製、商標ハイテックS−3127、固形分35%)714質量部に変更して添加したこと以外は、実施例1と同様に防湿化粧シートを製造した。
【0045】
<比較例1>
合成樹脂成分を、SBRラテックス(日本ゼオン製、商標LX407S12、固形分46%)511質量部に変更して添加したこと以外は、実施例1と同様に防湿化粧シートを製造した。
【0046】
実施例、比較例で得た防湿化粧シートを以下の方法で評価、結果を表1に示す。
[評価方法]
1.防湿化粧シートの耐溶剤性
防湿化粧シートの防湿層上の1ヶ所にメチルエチルケトン2mlを滴下し、ウェスにて強く30回こする。防湿層が溶けたり傷ついたりしなければ○、防湿層が溶けたり傷ついたりした場合を×とした。
【0047】
2.透湿度の測定
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で、防湿包装紙の塗工面を外側にして透湿度を測定した。(単位:g/m・24hr)
【0048】
3.化粧板の反り評価
木質ボードとしてMDF(一優科学技術製、厚さ2.7mm)を用意し、MDFの片面に、酢酸ビニル樹脂系接着剤を、ロールコート法によって50g/m(固形分基準)塗布した後、実施例、比較例で得た防湿化粧シートを貼り合わせた後、80℃で加熱乾燥した。乾燥後、さらにMDFのもう片面に、同様に防湿化粧シートを貼り合わせた後、80℃で加熱乾燥して木質系化粧板を得た。
得られた木質系化粧板を、表裏のそれぞれの面材に使用して扉を作製し、この扉について、温度・湿度変化に対する耐性テストを行った。
なお、耐性テスト条件は、5℃、湿度70%に保ったA室と、30℃、湿度30%に保ったB室との間に扉を設置し、24時間経過した後に、扉に反りやネジレが発生の有無を目視で評価したところ、実施例、比較例とも、全て反りやネジレは発生していなかった。
なお、対照実験として、前記MDFの両面に、片艶晒クラフト紙(王子特殊紙製、商標:フレックスS−45、坪量45g/m)を貼合して得た化粧板を製造したものを面材として扉を作製し、同様に耐性テストを行なったところ、反りが発生した。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂、含窒素化合物と平板状顔料を含む防湿層を有し、該合成樹脂がオレフィンとα,β−エチレン性不飽和カルボン酸との共重合体であることを特徴とする防湿化粧シート。
【請求項2】
防湿層中にヒンダードフェノール系酸化防止剤もしくは二酸化チタンの少なくともいずれかが含まれることを特徴とする請求項1記載の防湿化粧シート。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の防湿化粧シートが木質ボードに貼合されていることを特徴とする化粧板。

【公開番号】特開2009−172896(P2009−172896A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14733(P2008−14733)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000191320)王子特殊紙株式会社 (79)
【Fターム(参考)】