防火扉
【課題】消火ガスの噴出等によって室内が高圧になった場合であっても室内からの避難路を確保することができる防火扉を提供する。
【解決手段】消火ガスが供給される室R1内外を連通する通路11に開閉自在に設けられる扉21,22を備えた防火扉20において、扉20,21を、第1戸部材51と、該第1戸部材51に回動可能に連結された第2戸部材52とからなる一枚扉とし、第2戸部材52の回動に抗して該第2戸部材52を第1戸部材51との一枚扉の状態に付勢するコンプレッションスプリング53を設け、該コンプレッションスプリング53の付勢力が、室R1内に消火ガスを供給した際の室R1内の圧力によって相殺されるように構成する。
【解決手段】消火ガスが供給される室R1内外を連通する通路11に開閉自在に設けられる扉21,22を備えた防火扉20において、扉20,21を、第1戸部材51と、該第1戸部材51に回動可能に連結された第2戸部材52とからなる一枚扉とし、第2戸部材52の回動に抗して該第2戸部材52を第1戸部材51との一枚扉の状態に付勢するコンプレッションスプリング53を設け、該コンプレッションスプリング53の付勢力が、室R1内に消火ガスを供給した際の室R1内の圧力によって相殺されるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内にガスを供給することで該室内が高圧になった際であっても、扉の解錠を容易に行えることができる防火扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大型コンピュータやサーバ等の精密機器を備えた施設において、室内に火災等が発生した場合に、精密機器を保護するために迅速に消火を行なう消火システムが知られている。
【0003】
この消火システムにおいては、消火の際に水や化学消火剤で消火すると機器に損傷を与えたり故障や誤作動を招いたりするため、消火剤として一般に消火ガスが用いられている。この消火システムの一例として、例えば特許文献1には、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガスからなる消火ガスを室内に噴射して充満させるガス消火設備が開示されている。
【0004】
このようなガス消火システムにおいては、迅速な消火をすべく短時間で大量の消火ガスを室内に充満させる。したがって、室内が短時間で高圧になるため、室内に出入りするための扉には、当該高圧ガスによる高い圧力が負荷されることになる。
【0005】
ここで、精密機器を設置した室に設けた防火扉には、例えばラッチ機構が設けられている。このラッチ機構は一方の扉に設けたストライクに他方の扉に設けたラッチボルトが係合する構成とされている。例えば特許文献2に記載にされたドアロック装置においては、ラッチボルトの基部にばね部材が設けられており、ノブやレバーハンドルを操作したり扉を押したりすることで、ばね部材がその付勢力に抗して圧縮され、これによりラッチボルトが後退してストライクから外れ、扉を開放できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−60984号公報
【特許文献2】特開2000−240341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように火災発生時に高圧の消火ガスが室内に噴射(噴出)されると、機器類を設置した室と廊下等の外部空間とを区画する防火扉には、高圧が瞬時に負荷される。このため、防火扉が変形するなどして開かなくなるおそれがあった。すなわち、例えば図13及び図14に示すように、防火扉1に高圧Pが負荷されることで、扉2、3が湾曲変形し、ラッチ機構4に過大な力が作用してラッチとストライクとに咬み合いが生じたり、蝶番5に変形が生じたり、順位調整器6に故障や引っかかりが生じたり、ドアチェック7に故障が生じたり、建具枠(戸枠)8に変形が生じるなどして、レバーハンドル(取手9)を操作しても防火扉1(扉2、3)が開かなくなるおそれがあった。
【0008】
そして、このように防火扉1が開かなくなると、避難経路が確保できなくなったり、二次消火活動に支障をきたすことになるため、室R1内に消火ガスが噴射されて高圧Pが負荷された場合であっても室内外を出入りできるようにすることが強く求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、室内に消火ガスが噴射されて高圧が負荷された場合であっても確実に防火扉を開閉することを可能にした扉の解錠装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、消火ガスの噴出等によって室内が高圧になった場合であっても室内外を出入り可能な防火扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る防火扉は、消火ガスが供給される室内外を連通する通路に開閉自在に設けられる扉を備えた防火扉において、前記扉は、第1戸部材と、該第1戸部材に回動可能に連結された第2戸部材とからなる一枚扉であって、前記第2戸部材の回動に抗して該第2戸部材を前記第1戸部材との一枚扉の状態に付勢する付勢部材が設けられ、該付勢部材の付勢力が、前記室内に消火ガスが供給された際の該室内の圧力によって相殺されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このような特徴の防火扉によれば、消火ガスの供給により扉に対して圧力が負荷されされた場合に、該圧力が付勢部材の付勢力と拮抗して該付勢力を相殺する。これにより、室内が高圧になった場合に初めて、扉における第2戸部材が第1戸部材に対して回動可能となる。
【0013】
また、本発明に係る防火扉においては、前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられ、前記第2戸部材は、前記第1戸部材に対し前記室内に向かって回動可能に連結されており、これら第1戸部材と第2戸部材とからなる前記扉が折れ戸状をなしていることが好ましい。
【0014】
扉を第1戸部材と第2戸部材とからなる折れ戸状とすることにより、通常時においては付勢部材の付勢力によって扉を一枚扉として使用することができるとともに、室内が高圧となった場合には、付勢部材の付勢力が室内圧力により相殺され、第2戸部材が室内側に向かって回動することで折れ戸として開扉可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る防火扉においては、前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられるとともに、前記室内外を連通させる連通部を備え、前記第2戸部材は、前記連通部を閉塞するくぐり戸として配置され、前記第1戸部材に対し前記室外に向かって回動可能に連結されているものであってもよい。
【0016】
第2戸部材を第1戸部材の連通部に配置されたくぐり戸とすることにより、通常時においては付勢部材の付勢力によって扉を一枚扉として使用することができるとともに、室内が高圧となった場合には、付勢部材の付勢力が室内圧力により相殺され、第2戸部材が室外側に向かって回動することで避難路を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防火扉によれば、付勢部材の付勢力によって一枚扉として機能する第1戸部材及び第2戸部材とから扉を構成し、付勢部材の付勢力を消火ガス供給時の室内の圧力と拮抗させることで、室内が高圧になった場合にのみ第2戸部材と第1戸部材に対して回動可能となる。これにより、室内に消火ガスが噴射されて高圧が負荷された場合であっても室内外を出入りとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の防火扉の正面図である。
【図2】第1実施形態の防火扉の斜視図である。
【図3】第1実施形態の防火扉の平面図である。
【図4】第1実施形態の防火扉の機能を説明する平面図である。
【図5】第2実施形態の防火扉の正面図である。
【図6】第2実施形態の防火扉の斜視図である。
【図7】第2実施形態の防火扉の平面図である。
【図8】第2実施形態の防火扉の機能を説明する平面図である。
【図9】第1変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図10】第2変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図11】第3変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図12】第4変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図13】従来の防火扉を示す正面図である。
【図14】従来の防火扉を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
はじめに、本実施形態の防火扉20は、大型コンピュータやサーバ等の精密機器を設置した部屋や半導体製造装置を設置したクリーンルーム等の室R1と、この室R1の壁に開口形成された扉開口部を介して繋がる廊下等の外部空間R2とを連通/区画するように開閉可能に設置されている。また、室R1には、火災発生時に窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガス(消火ガス)を消火剤として高圧で噴射するガス消火システムが具備されている。
【0020】
以下、第1実施形態の防火扉20について説明する。この防火扉20は図1〜図4に示すように、上記室R1と外部空間R2の内外を連通する通路(建具枠)11に設けられており、一対の扉21,22を備えた観音開きとされている。これら扉21,22は複数の第1ヒンジ(蝶番)23によってそれぞれ通路11の側壁に対して回動可能に連結されることで通路11を開閉可能とされている。なお、この防火扉20の開扉方向Fは、室R1から外部空間R2に向かった方向とされている。
【0021】
上記扉21,22は、それぞれ第1戸部材51と第2戸部材52とから構成された一枚扉とされている。第1戸部材51は、扉21,22における通路11の外側半分を構成しており、通路11の上下にわたって延在する略矩形状をなすとともに、一端側が上記第1ヒンジ23によって通路11に対して回動可能に連結されている。
【0022】
第2戸部材52は、扉21,22における互いに接合する中央側の半分を構成しており、通路11の上下にわたって延在する略矩形状をなすとともに、一端が、第1戸部材51の他端に複数の第2ヒンジ54を介して接続されている。この第2ヒンジ54は、室R1側において第1戸部材51と第2戸部材52とを鉛直軸線回りに回動可能に連結しており、これにより、第2戸部材52の一端は第1戸部材51の他端に対して室R1内側へと向かって回動可能とされている。
本実施形態の扉21,22は上記のように第1戸部材51と第2戸部材52とが回動可能に連結されることで、いわゆる折れ戸状をなしている。
【0023】
また、図1に示すように、扉21,22における互い接合する中央側の対向面21a,22aには、シリンダー錠26とラッチ錠27が設けられている。なお、シリンダー錠26とともに、或いはシリンダー錠26に代えて、電気錠等の他の錠装置が設けられていてもよい。
【0024】
ラッチ錠27は、一対の扉21,22のうち、図1における右側の扉21に設けられたラッチ用ストライク40と、図1における左側の扉22に設けられ、ラッチ用ストライク40に進退可能なラッチ35とから構成されている。このラッチ錠27には、ラッチ35をストライク40から外すためのレバーハンドル30が設けられているが、レバーハンドル30に代えてドアノブを設けてもよい。
【0025】
また、図1における左側の扉21にはデッドボルト用ストライク29が設けられ、右側の扉22におけるシリンダー錠26には、上記デッドボルト用ストライク29内に受け入れられて防火扉20の開閉をロックするデッドボルト28が設けられている。さらに、各扉21,22の第1ヒンジ23側の上部には、扉21,22の閉鎖速度を調整するためのドアクローザ(ドアチェック)31が設けられている。
【0026】
そして、本実施形態の防火扉20には、図3に示すように、各扉21,22の第1戸部材51と第2戸部材52とを室R1の外側において連結するコンプレッションスプリング53が設けられている。このコンプレッションスプリング53は、金属を螺旋状に形成したコイル状をなしており、その一端が第1戸部材51に固定されるとともに他端が第2戸部材52に固定されている。そして、コンプレッションスプリング53は、第2戸部材52の第1戸部材51に対する回動に抗して、これら第1戸部材51と第2戸部材52とが一枚扉の状態となるように、即ち、第1戸部材51と第2戸部材52とが同一鉛直面内に位置するように付勢している。
【0027】
これによって、通常時においては、コンプレッションスプリング53の付勢力により第1戸部材51及び第2戸部材52の相対位置が保持されることで、扉21,22をそれぞれ一枚扉として使用することができる。
【0028】
なお、このコンプレッションスプリング53は、一のみが各扉21,22に設けられてれていても複数が各扉21,22に設けられていても構わないが、そのコンプレッションスプリング53の付勢力の総和は、室R1内に消火ガスが完全に供給された際の室内圧力と同等の値に設定されており、
【0029】
次に、上記防火扉20の作用について説明する。図1〜図3において、図示しない電気錠やシリンダー錠26は開錠されており、防火扉20の扉21,22のラッチ錠27が閉鎖された状態にあるものとする。
【0030】
そして、作業員が室R1から出入りする場合には、例えばレバーハンドル30を下方に回動させることで、図示しない連結機構を介してラッチ35が後退する。これにより、ラッチボルト36がストライク40内から後退すると開扉状態となり、コンプレッションスプリング53の付勢力により一枚扉として機能する他方の扉22を室R1の外側に開くことで、作業員が出入りすることができるようになる。
【0031】
そして、例えば室R1内で火事が起こり、室R1内に設けられたガス噴射口から高圧の消火ガスを高速で噴射されると、消火ガスが室R1内に短時間で充満し、消火が行なわれる。この際、室R1と外部空間R2とを区画する防火扉20には、開扉方向Fに向かって高圧が瞬時に負荷される。
【0032】
このような圧力に押されることにより、扉21,22は、中央部を中心に変形し始める。この状態で、作業者が高圧ガス状態の室R1内から出るためにレバーハンドル30またはノブを回転させると、ストライク40内にラッチ35が進出して咬み合っているために、回転抵抗によってレバーハンドル30またはノブが回転し難い。
【0033】
一方、室R1内が高圧となったことによって扉21,22に圧力が負荷されると、当該圧力が第2戸部材52を第1戸部材51に対して回動させようとするため、この圧力がコンプレッションスプリング53の付勢力と拮抗する。この際、コンプレッションスプリング53の付勢力は、消火ガスが完全に供給された室R1内の圧力と同等の値に設定されているため、当該付勢力は室R1内の圧力によって相殺され、第2戸部材52は第1戸部材51に対して回動可能となる。
【0034】
そして、この際、作業員が室R1内から第1戸部材51と第2戸部材52との連結部、即ち、第2ヒンジ54付近を押圧することで扉21,22に人力が加わると、図4に示すように、第1戸部材51が通路11の側壁に対して室R1外側へと向かって回動するとともに、第2戸部材52が第1戸部材51に対して室R1内側へと向かって回動し、扉21,22は折れ戸状に変形する。
【0035】
したがって、本実施形態においては、通常時は一枚扉として使用される扉21,22が、室R1内が高圧になった場合にのみ折れ戸状に変形するため、容易に扉21,22を開くことができ、室R1内外を連通させることができる。これにより、作集者の避難路を確保して安全性を担保することが可能となる。
【0036】
次に、第2実施形態の防火扉20について図5〜図8を参照して説明するが、上述した第1実施形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
第2実施形態においては、一対の扉21,22のうち、扉21のみが、連通部61aを備えた第1戸部材61と、連通部61aを閉塞する第2戸部材62とから構成された一枚扉とされている。
【0037】
第1戸部材61は、扉21の外形略矩形状を形成する枠板状をなしており、その内側に室R1内外を連通させる連通部61aが形成されている。この連通部61aは第1戸部材61の外形、即ち、扉21の外形を一回り小さくした略矩形状をなしており、作業者が容易に通過できる程度の大きさをなしている。この第1戸部材61は、一端側が上記第1ヒンジ23によって通路11に対して回動可能に連結されている。
【0038】
第2戸部材62は、上記第1戸部材61の連通部61aを閉塞すべく、該連通部61aと同様の外形をなす略矩形板状をなしており、その通路11側壁側の端部が第1戸部材61に対して複数(本実施形態においては4つ)のプリテンションヒンジ63を介して接続されている。このプリテンションヒンジ63は、室R1の内側において第1戸部材61と第2戸部材62とを鉛直軸線回りに回動可能に連結しており、これにより、第2戸部材62の一端は第1戸部材61の他端に対して室R1外側へと向かって回動可能とされている。
【0039】
ここで、プリテンションヒンジ63には、付勢部材として例えばスプリング等の弾性体が備えられており、該付勢部材は、第2戸部材62の第1戸部材61に対する回動に抗して、これら第1戸部材61と第2戸部材62とが一枚扉の状態となるように、即ち、第1戸部材61と第2戸部材62が同一鉛直面内に位置するように付勢している。これによって、通常時において扉21は、第1戸部材61の連通部61aを第2戸部材62によって閉塞した状態に保持され、該扉21を一枚扉として使用することができるようになっている。
【0040】
なお、このプリテンションヒンジ63における付勢部材の付勢力の総和は、室R1内に消火ガスが完全に供給された際の室内圧力と同等の値に設定されている。
【0041】
本実施形態の防火扉20は、上記の構成を備えているから、室R1内が高圧となったことによって扉21,22に圧力が負荷されると、当該圧力が一方の扉21の第2戸部材62を第1戸部材61に対して室R1外側に向かって回動させようとする。すると、この圧力がプリテンションヒンジ63の付勢部材の付勢力と拮抗する。この際、付勢部材の付勢力は、消火ガスが完全に供給された室R1内の圧力と同等の値に設定されているため、当該付勢力は室R1内の圧力によって相殺され、第2戸部材62を第1戸部材61に対して容易に回動することができるようになる。
【0042】
そして、この際、作業員が室R1内から第2戸部材62を室R1内側から押圧することで、図8に示すように、第2戸部材62は室R1外側へと向かって回動し、作業者はこの第2戸部材62をくぐり戸として連通部61aを通過して室R1外部へ脱出することができる。
【0043】
したがって、本実施形態においては、通常時は一枚扉として使用される扉21が、室R1内が高圧になった場合にのみ第2戸部材62が第1戸部材61に対して回動することにより、くぐり戸として利用することができるため、作集者の避難路を確保して安全性を担保することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態においては、付勢部材としてコンプレッションスプリング53やプリテンションヒンジ63を採用したものについて説明したが、これに限定されることはなく、通常時において第2戸部材52,62の第1戸部材51,61に対する回動に抗して付勢することができるならば、他のバネ部材を付勢部材として採用してもよい。この場合であってもバネ部材の付勢力を、室R1内が消火ガスにより高圧になった場合の圧力と同等に設定することで、実施形態と同様の作用効果を奏する防火扉20を実現することができる。
【0045】
なお、図9は、本発明の第1変形例を示すものである。
図9に示す防火扉20は、一対の扉21,22のうちの扉22の中央部に略矩形状をなす連通路70が形成されており、この連通路70を閉塞するスライド部材71が設けられている。該スライド部材71は、ローラー72によってガイド73に沿って下方向にスライド可能に構成されており、通常時は、連通路70を閉塞する位置にてロックされている。そして、作業員がロック解除レバー74を操作することで、スライド部材71が自重によって下方にスライドするように構成されている。
【0046】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業員は連通路70を通過することにより脱出することができる。また、ローラー72は、室R1内側から作用する圧力を受ける方向に設置されているため、高圧下であってもスライド部材71を確実にスライドさせることができる。
【0047】
図10は、本発明の第2変形例を示すものである。
図10に示す防火扉20は、一対の扉21,22のうちの扉21の下部に略矩形状をなす連通路80が形成されており、この連通路80を閉塞するスライド部材75が設けられている。該スライド部材75は、ローラー81によって上方向にスライド可能に構成されている。また、このスライド部材75には、扉21の上部に設けられた定滑車76に上方から巻き掛けられて下方に延びるロープ77の一端が固定されており、該ロープ77の他端にはウェイト78が設けられている。
【0048】
これにより、作業者がスライド部材75の取っ手79を把持して上方に押し上げようとすると、ウェイト78の重量の補助を受けることで容易にスライド部材75を上方にスライドさせることができる。したがって、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業者は、当該スライド部材75をスライドさせて連通路80を開放するとともに、該連通路80を通過することで室R1から容易に脱出することができる。また、第1変形例と同様に、ローラー81は、室R1内側から作用する圧力を受ける方向に設置されているため、高圧下であってもスライド部材75を確実にスライドさせることができる。
【0049】
図11は本発明の第3変形例を示すものである。
図11に示す防火扉20における一対の扉21,22には、それぞれ上下方向に延びる矩形状の連通路82が形成されており、該連通路82を閉塞するようにシャッター83がそれぞれ設けられている。このシャッター83の上端部には、シャッター収納部84が設けられており、シャッター83を押し上げた際には、該シャッター収納部84にシャッター83が収納される。
【0050】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業者はシャッター83を押し上げることで室R1から容易に脱出することができる。また、シャッター83を電動として、火災信号及び操作信号受信時に自動的にシャッター83が押し上がる構成としてもよい。
【0051】
図12は本発明の第4変形例を示すものである。
図12に示す防火扉20における一対の扉21,22のうち扉22の下部には、略矩形状をなす連通路85が形成されており、該連通路85を閉塞するようにして防火ダンパー86が設けられている。この防火ダンパー86は通常時は閉塞状態にあるが、操作レバー87を操作することでダンパーを開放状態として一時的に室R1内の圧力を逃がすことができる。また、このダンパーは予め閉塞する方向に付勢されており、室R1内の圧力が下がった際には自閉するように構成されている。
【0052】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合には操作レバー87を操作することで室R1内の圧力を一時的に逃がし、扉21,22を開き易くすることができる。
【符号の説明】
【0053】
20 防火扉
21 扉
22 扉
51 第1戸部材
52 第2戸部材
53 コンプレッションスプリング(付勢部材)
54 第2ヒンジ
61 第1戸部材
62 第2戸部材
63 プリテンションヒンジ(付勢部材)
R1 室
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内にガスを供給することで該室内が高圧になった際であっても、扉の解錠を容易に行えることができる防火扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大型コンピュータやサーバ等の精密機器を備えた施設において、室内に火災等が発生した場合に、精密機器を保護するために迅速に消火を行なう消火システムが知られている。
【0003】
この消火システムにおいては、消火の際に水や化学消火剤で消火すると機器に損傷を与えたり故障や誤作動を招いたりするため、消火剤として一般に消火ガスが用いられている。この消火システムの一例として、例えば特許文献1には、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガスからなる消火ガスを室内に噴射して充満させるガス消火設備が開示されている。
【0004】
このようなガス消火システムにおいては、迅速な消火をすべく短時間で大量の消火ガスを室内に充満させる。したがって、室内が短時間で高圧になるため、室内に出入りするための扉には、当該高圧ガスによる高い圧力が負荷されることになる。
【0005】
ここで、精密機器を設置した室に設けた防火扉には、例えばラッチ機構が設けられている。このラッチ機構は一方の扉に設けたストライクに他方の扉に設けたラッチボルトが係合する構成とされている。例えば特許文献2に記載にされたドアロック装置においては、ラッチボルトの基部にばね部材が設けられており、ノブやレバーハンドルを操作したり扉を押したりすることで、ばね部材がその付勢力に抗して圧縮され、これによりラッチボルトが後退してストライクから外れ、扉を開放できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−60984号公報
【特許文献2】特開2000−240341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように火災発生時に高圧の消火ガスが室内に噴射(噴出)されると、機器類を設置した室と廊下等の外部空間とを区画する防火扉には、高圧が瞬時に負荷される。このため、防火扉が変形するなどして開かなくなるおそれがあった。すなわち、例えば図13及び図14に示すように、防火扉1に高圧Pが負荷されることで、扉2、3が湾曲変形し、ラッチ機構4に過大な力が作用してラッチとストライクとに咬み合いが生じたり、蝶番5に変形が生じたり、順位調整器6に故障や引っかかりが生じたり、ドアチェック7に故障が生じたり、建具枠(戸枠)8に変形が生じるなどして、レバーハンドル(取手9)を操作しても防火扉1(扉2、3)が開かなくなるおそれがあった。
【0008】
そして、このように防火扉1が開かなくなると、避難経路が確保できなくなったり、二次消火活動に支障をきたすことになるため、室R1内に消火ガスが噴射されて高圧Pが負荷された場合であっても室内外を出入りできるようにすることが強く求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、室内に消火ガスが噴射されて高圧が負荷された場合であっても確実に防火扉を開閉することを可能にした扉の解錠装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、消火ガスの噴出等によって室内が高圧になった場合であっても室内外を出入り可能な防火扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る防火扉は、消火ガスが供給される室内外を連通する通路に開閉自在に設けられる扉を備えた防火扉において、前記扉は、第1戸部材と、該第1戸部材に回動可能に連結された第2戸部材とからなる一枚扉であって、前記第2戸部材の回動に抗して該第2戸部材を前記第1戸部材との一枚扉の状態に付勢する付勢部材が設けられ、該付勢部材の付勢力が、前記室内に消火ガスが供給された際の該室内の圧力によって相殺されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
このような特徴の防火扉によれば、消火ガスの供給により扉に対して圧力が負荷されされた場合に、該圧力が付勢部材の付勢力と拮抗して該付勢力を相殺する。これにより、室内が高圧になった場合に初めて、扉における第2戸部材が第1戸部材に対して回動可能となる。
【0013】
また、本発明に係る防火扉においては、前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられ、前記第2戸部材は、前記第1戸部材に対し前記室内に向かって回動可能に連結されており、これら第1戸部材と第2戸部材とからなる前記扉が折れ戸状をなしていることが好ましい。
【0014】
扉を第1戸部材と第2戸部材とからなる折れ戸状とすることにより、通常時においては付勢部材の付勢力によって扉を一枚扉として使用することができるとともに、室内が高圧となった場合には、付勢部材の付勢力が室内圧力により相殺され、第2戸部材が室内側に向かって回動することで折れ戸として開扉可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る防火扉においては、前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられるとともに、前記室内外を連通させる連通部を備え、前記第2戸部材は、前記連通部を閉塞するくぐり戸として配置され、前記第1戸部材に対し前記室外に向かって回動可能に連結されているものであってもよい。
【0016】
第2戸部材を第1戸部材の連通部に配置されたくぐり戸とすることにより、通常時においては付勢部材の付勢力によって扉を一枚扉として使用することができるとともに、室内が高圧となった場合には、付勢部材の付勢力が室内圧力により相殺され、第2戸部材が室外側に向かって回動することで避難路を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防火扉によれば、付勢部材の付勢力によって一枚扉として機能する第1戸部材及び第2戸部材とから扉を構成し、付勢部材の付勢力を消火ガス供給時の室内の圧力と拮抗させることで、室内が高圧になった場合にのみ第2戸部材と第1戸部材に対して回動可能となる。これにより、室内に消火ガスが噴射されて高圧が負荷された場合であっても室内外を出入りとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の防火扉の正面図である。
【図2】第1実施形態の防火扉の斜視図である。
【図3】第1実施形態の防火扉の平面図である。
【図4】第1実施形態の防火扉の機能を説明する平面図である。
【図5】第2実施形態の防火扉の正面図である。
【図6】第2実施形態の防火扉の斜視図である。
【図7】第2実施形態の防火扉の平面図である。
【図8】第2実施形態の防火扉の機能を説明する平面図である。
【図9】第1変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図10】第2変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図11】第3変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図12】第4変形例の防火扉の(a)側面図、(b)正面図である。
【図13】従来の防火扉を示す正面図である。
【図14】従来の防火扉を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
はじめに、本実施形態の防火扉20は、大型コンピュータやサーバ等の精密機器を設置した部屋や半導体製造装置を設置したクリーンルーム等の室R1と、この室R1の壁に開口形成された扉開口部を介して繋がる廊下等の外部空間R2とを連通/区画するように開閉可能に設置されている。また、室R1には、火災発生時に窒素ガス、二酸化炭素ガス、ハロゲンガス等の不活性ガスや不燃性ガス(消火ガス)を消火剤として高圧で噴射するガス消火システムが具備されている。
【0020】
以下、第1実施形態の防火扉20について説明する。この防火扉20は図1〜図4に示すように、上記室R1と外部空間R2の内外を連通する通路(建具枠)11に設けられており、一対の扉21,22を備えた観音開きとされている。これら扉21,22は複数の第1ヒンジ(蝶番)23によってそれぞれ通路11の側壁に対して回動可能に連結されることで通路11を開閉可能とされている。なお、この防火扉20の開扉方向Fは、室R1から外部空間R2に向かった方向とされている。
【0021】
上記扉21,22は、それぞれ第1戸部材51と第2戸部材52とから構成された一枚扉とされている。第1戸部材51は、扉21,22における通路11の外側半分を構成しており、通路11の上下にわたって延在する略矩形状をなすとともに、一端側が上記第1ヒンジ23によって通路11に対して回動可能に連結されている。
【0022】
第2戸部材52は、扉21,22における互いに接合する中央側の半分を構成しており、通路11の上下にわたって延在する略矩形状をなすとともに、一端が、第1戸部材51の他端に複数の第2ヒンジ54を介して接続されている。この第2ヒンジ54は、室R1側において第1戸部材51と第2戸部材52とを鉛直軸線回りに回動可能に連結しており、これにより、第2戸部材52の一端は第1戸部材51の他端に対して室R1内側へと向かって回動可能とされている。
本実施形態の扉21,22は上記のように第1戸部材51と第2戸部材52とが回動可能に連結されることで、いわゆる折れ戸状をなしている。
【0023】
また、図1に示すように、扉21,22における互い接合する中央側の対向面21a,22aには、シリンダー錠26とラッチ錠27が設けられている。なお、シリンダー錠26とともに、或いはシリンダー錠26に代えて、電気錠等の他の錠装置が設けられていてもよい。
【0024】
ラッチ錠27は、一対の扉21,22のうち、図1における右側の扉21に設けられたラッチ用ストライク40と、図1における左側の扉22に設けられ、ラッチ用ストライク40に進退可能なラッチ35とから構成されている。このラッチ錠27には、ラッチ35をストライク40から外すためのレバーハンドル30が設けられているが、レバーハンドル30に代えてドアノブを設けてもよい。
【0025】
また、図1における左側の扉21にはデッドボルト用ストライク29が設けられ、右側の扉22におけるシリンダー錠26には、上記デッドボルト用ストライク29内に受け入れられて防火扉20の開閉をロックするデッドボルト28が設けられている。さらに、各扉21,22の第1ヒンジ23側の上部には、扉21,22の閉鎖速度を調整するためのドアクローザ(ドアチェック)31が設けられている。
【0026】
そして、本実施形態の防火扉20には、図3に示すように、各扉21,22の第1戸部材51と第2戸部材52とを室R1の外側において連結するコンプレッションスプリング53が設けられている。このコンプレッションスプリング53は、金属を螺旋状に形成したコイル状をなしており、その一端が第1戸部材51に固定されるとともに他端が第2戸部材52に固定されている。そして、コンプレッションスプリング53は、第2戸部材52の第1戸部材51に対する回動に抗して、これら第1戸部材51と第2戸部材52とが一枚扉の状態となるように、即ち、第1戸部材51と第2戸部材52とが同一鉛直面内に位置するように付勢している。
【0027】
これによって、通常時においては、コンプレッションスプリング53の付勢力により第1戸部材51及び第2戸部材52の相対位置が保持されることで、扉21,22をそれぞれ一枚扉として使用することができる。
【0028】
なお、このコンプレッションスプリング53は、一のみが各扉21,22に設けられてれていても複数が各扉21,22に設けられていても構わないが、そのコンプレッションスプリング53の付勢力の総和は、室R1内に消火ガスが完全に供給された際の室内圧力と同等の値に設定されており、
【0029】
次に、上記防火扉20の作用について説明する。図1〜図3において、図示しない電気錠やシリンダー錠26は開錠されており、防火扉20の扉21,22のラッチ錠27が閉鎖された状態にあるものとする。
【0030】
そして、作業員が室R1から出入りする場合には、例えばレバーハンドル30を下方に回動させることで、図示しない連結機構を介してラッチ35が後退する。これにより、ラッチボルト36がストライク40内から後退すると開扉状態となり、コンプレッションスプリング53の付勢力により一枚扉として機能する他方の扉22を室R1の外側に開くことで、作業員が出入りすることができるようになる。
【0031】
そして、例えば室R1内で火事が起こり、室R1内に設けられたガス噴射口から高圧の消火ガスを高速で噴射されると、消火ガスが室R1内に短時間で充満し、消火が行なわれる。この際、室R1と外部空間R2とを区画する防火扉20には、開扉方向Fに向かって高圧が瞬時に負荷される。
【0032】
このような圧力に押されることにより、扉21,22は、中央部を中心に変形し始める。この状態で、作業者が高圧ガス状態の室R1内から出るためにレバーハンドル30またはノブを回転させると、ストライク40内にラッチ35が進出して咬み合っているために、回転抵抗によってレバーハンドル30またはノブが回転し難い。
【0033】
一方、室R1内が高圧となったことによって扉21,22に圧力が負荷されると、当該圧力が第2戸部材52を第1戸部材51に対して回動させようとするため、この圧力がコンプレッションスプリング53の付勢力と拮抗する。この際、コンプレッションスプリング53の付勢力は、消火ガスが完全に供給された室R1内の圧力と同等の値に設定されているため、当該付勢力は室R1内の圧力によって相殺され、第2戸部材52は第1戸部材51に対して回動可能となる。
【0034】
そして、この際、作業員が室R1内から第1戸部材51と第2戸部材52との連結部、即ち、第2ヒンジ54付近を押圧することで扉21,22に人力が加わると、図4に示すように、第1戸部材51が通路11の側壁に対して室R1外側へと向かって回動するとともに、第2戸部材52が第1戸部材51に対して室R1内側へと向かって回動し、扉21,22は折れ戸状に変形する。
【0035】
したがって、本実施形態においては、通常時は一枚扉として使用される扉21,22が、室R1内が高圧になった場合にのみ折れ戸状に変形するため、容易に扉21,22を開くことができ、室R1内外を連通させることができる。これにより、作集者の避難路を確保して安全性を担保することが可能となる。
【0036】
次に、第2実施形態の防火扉20について図5〜図8を参照して説明するが、上述した第1実施形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
第2実施形態においては、一対の扉21,22のうち、扉21のみが、連通部61aを備えた第1戸部材61と、連通部61aを閉塞する第2戸部材62とから構成された一枚扉とされている。
【0037】
第1戸部材61は、扉21の外形略矩形状を形成する枠板状をなしており、その内側に室R1内外を連通させる連通部61aが形成されている。この連通部61aは第1戸部材61の外形、即ち、扉21の外形を一回り小さくした略矩形状をなしており、作業者が容易に通過できる程度の大きさをなしている。この第1戸部材61は、一端側が上記第1ヒンジ23によって通路11に対して回動可能に連結されている。
【0038】
第2戸部材62は、上記第1戸部材61の連通部61aを閉塞すべく、該連通部61aと同様の外形をなす略矩形板状をなしており、その通路11側壁側の端部が第1戸部材61に対して複数(本実施形態においては4つ)のプリテンションヒンジ63を介して接続されている。このプリテンションヒンジ63は、室R1の内側において第1戸部材61と第2戸部材62とを鉛直軸線回りに回動可能に連結しており、これにより、第2戸部材62の一端は第1戸部材61の他端に対して室R1外側へと向かって回動可能とされている。
【0039】
ここで、プリテンションヒンジ63には、付勢部材として例えばスプリング等の弾性体が備えられており、該付勢部材は、第2戸部材62の第1戸部材61に対する回動に抗して、これら第1戸部材61と第2戸部材62とが一枚扉の状態となるように、即ち、第1戸部材61と第2戸部材62が同一鉛直面内に位置するように付勢している。これによって、通常時において扉21は、第1戸部材61の連通部61aを第2戸部材62によって閉塞した状態に保持され、該扉21を一枚扉として使用することができるようになっている。
【0040】
なお、このプリテンションヒンジ63における付勢部材の付勢力の総和は、室R1内に消火ガスが完全に供給された際の室内圧力と同等の値に設定されている。
【0041】
本実施形態の防火扉20は、上記の構成を備えているから、室R1内が高圧となったことによって扉21,22に圧力が負荷されると、当該圧力が一方の扉21の第2戸部材62を第1戸部材61に対して室R1外側に向かって回動させようとする。すると、この圧力がプリテンションヒンジ63の付勢部材の付勢力と拮抗する。この際、付勢部材の付勢力は、消火ガスが完全に供給された室R1内の圧力と同等の値に設定されているため、当該付勢力は室R1内の圧力によって相殺され、第2戸部材62を第1戸部材61に対して容易に回動することができるようになる。
【0042】
そして、この際、作業員が室R1内から第2戸部材62を室R1内側から押圧することで、図8に示すように、第2戸部材62は室R1外側へと向かって回動し、作業者はこの第2戸部材62をくぐり戸として連通部61aを通過して室R1外部へ脱出することができる。
【0043】
したがって、本実施形態においては、通常時は一枚扉として使用される扉21が、室R1内が高圧になった場合にのみ第2戸部材62が第1戸部材61に対して回動することにより、くぐり戸として利用することができるため、作集者の避難路を確保して安全性を担保することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態においては、付勢部材としてコンプレッションスプリング53やプリテンションヒンジ63を採用したものについて説明したが、これに限定されることはなく、通常時において第2戸部材52,62の第1戸部材51,61に対する回動に抗して付勢することができるならば、他のバネ部材を付勢部材として採用してもよい。この場合であってもバネ部材の付勢力を、室R1内が消火ガスにより高圧になった場合の圧力と同等に設定することで、実施形態と同様の作用効果を奏する防火扉20を実現することができる。
【0045】
なお、図9は、本発明の第1変形例を示すものである。
図9に示す防火扉20は、一対の扉21,22のうちの扉22の中央部に略矩形状をなす連通路70が形成されており、この連通路70を閉塞するスライド部材71が設けられている。該スライド部材71は、ローラー72によってガイド73に沿って下方向にスライド可能に構成されており、通常時は、連通路70を閉塞する位置にてロックされている。そして、作業員がロック解除レバー74を操作することで、スライド部材71が自重によって下方にスライドするように構成されている。
【0046】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業員は連通路70を通過することにより脱出することができる。また、ローラー72は、室R1内側から作用する圧力を受ける方向に設置されているため、高圧下であってもスライド部材71を確実にスライドさせることができる。
【0047】
図10は、本発明の第2変形例を示すものである。
図10に示す防火扉20は、一対の扉21,22のうちの扉21の下部に略矩形状をなす連通路80が形成されており、この連通路80を閉塞するスライド部材75が設けられている。該スライド部材75は、ローラー81によって上方向にスライド可能に構成されている。また、このスライド部材75には、扉21の上部に設けられた定滑車76に上方から巻き掛けられて下方に延びるロープ77の一端が固定されており、該ロープ77の他端にはウェイト78が設けられている。
【0048】
これにより、作業者がスライド部材75の取っ手79を把持して上方に押し上げようとすると、ウェイト78の重量の補助を受けることで容易にスライド部材75を上方にスライドさせることができる。したがって、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業者は、当該スライド部材75をスライドさせて連通路80を開放するとともに、該連通路80を通過することで室R1から容易に脱出することができる。また、第1変形例と同様に、ローラー81は、室R1内側から作用する圧力を受ける方向に設置されているため、高圧下であってもスライド部材75を確実にスライドさせることができる。
【0049】
図11は本発明の第3変形例を示すものである。
図11に示す防火扉20における一対の扉21,22には、それぞれ上下方向に延びる矩形状の連通路82が形成されており、該連通路82を閉塞するようにシャッター83がそれぞれ設けられている。このシャッター83の上端部には、シャッター収納部84が設けられており、シャッター83を押し上げた際には、該シャッター収納部84にシャッター83が収納される。
【0050】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合であっても、作業者はシャッター83を押し上げることで室R1から容易に脱出することができる。また、シャッター83を電動として、火災信号及び操作信号受信時に自動的にシャッター83が押し上がる構成としてもよい。
【0051】
図12は本発明の第4変形例を示すものである。
図12に示す防火扉20における一対の扉21,22のうち扉22の下部には、略矩形状をなす連通路85が形成されており、該連通路85を閉塞するようにして防火ダンパー86が設けられている。この防火ダンパー86は通常時は閉塞状態にあるが、操作レバー87を操作することでダンパーを開放状態として一時的に室R1内の圧力を逃がすことができる。また、このダンパーは予め閉塞する方向に付勢されており、室R1内の圧力が下がった際には自閉するように構成されている。
【0052】
これにより、室R1内が高圧になって扉21,22が開き難くなった場合には操作レバー87を操作することで室R1内の圧力を一時的に逃がし、扉21,22を開き易くすることができる。
【符号の説明】
【0053】
20 防火扉
21 扉
22 扉
51 第1戸部材
52 第2戸部材
53 コンプレッションスプリング(付勢部材)
54 第2ヒンジ
61 第1戸部材
62 第2戸部材
63 プリテンションヒンジ(付勢部材)
R1 室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火ガスが供給される室内外を連通する通路に開閉自在に設けられる扉を備えた防火扉において、
前記扉は、第1戸部材と、該第1戸部材に回動可能に連結された第2戸部材とからなる一枚扉であって、
前記第2戸部材の回動に抗して該第2戸部材を前記第1戸部材との一枚扉の状態に付勢する付勢部材が設けられ、
該付勢部材の付勢力が、前記室内に消火ガスが供給された際の該室内の圧力によって相殺されるように構成されていることを特徴とする防火扉。
【請求項2】
前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられ、
前記第2戸部材は、前記第1戸部材に対し前記室内に向かって回動可能に連結されており、
これら第1戸部材と第2戸部材とからなる前記扉が折れ戸状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
【請求項3】
前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられるとともに、前記室内外を連通させる連通部を備え、
前記第2戸部材は、前記連通部を閉塞するくぐり戸として配置され、前記第1戸部材に対し前記室外に向かって回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
【請求項1】
消火ガスが供給される室内外を連通する通路に開閉自在に設けられる扉を備えた防火扉において、
前記扉は、第1戸部材と、該第1戸部材に回動可能に連結された第2戸部材とからなる一枚扉であって、
前記第2戸部材の回動に抗して該第2戸部材を前記第1戸部材との一枚扉の状態に付勢する付勢部材が設けられ、
該付勢部材の付勢力が、前記室内に消火ガスが供給された際の該室内の圧力によって相殺されるように構成されていることを特徴とする防火扉。
【請求項2】
前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられ、
前記第2戸部材は、前記第1戸部材に対し前記室内に向かって回動可能に連結されており、
これら第1戸部材と第2戸部材とからなる前記扉が折れ戸状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
【請求項3】
前記第1戸部材は、その一端が前記通路の壁面に回動可能に取り付けられるとともに、前記室内外を連通させる連通部を備え、
前記第2戸部材は、前記連通部を閉塞するくぐり戸として配置され、前記第1戸部材に対し前記室外に向かって回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の防火扉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−156222(P2011−156222A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21485(P2010−21485)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
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