説明

防火装置を備えた廃棄物破砕設備及びその運転方法

【課題】 廃棄物破砕設備の防火システムの信頼性を高めると共に、火災発生時の破砕物の搬送装置外への排出を可能としすることにより、搬送装置の損傷を少なくできるようにし、更に、防火システムの作動後の搬送装置の復旧を迅速且つ容易に行えるようにする。
【解決手段】 廃棄物供給装置と,破砕機と,破砕物搬送装置と,防火装置と,制御装置とを備えた廃棄物破砕設備に於いて、前記防火装置を、破砕物搬送装置のケーシング内に設けた複数の散水ノズルと,散水ノズルへの供給水を制御する散水制御弁と,破砕物搬送装置のケーシング内に設けた内部雰囲気のCO濃度を検出する複数のCO検知器とから形成し、CO検知器からの火災検出信号により、破砕機を自動停止させると共に防火装置を作動させて破砕物の散水消火を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや産業用廃棄物を処理する廃棄物破砕設備の防火システムの改良に関するものであり、破砕設備を構成する破砕機外の搬送装置内部に於ける火災の発生を迅速且つ確実に検知し、散水消火を行うことにより防火システムの信頼性を高めると共に、防火システム作動時の損傷の発生を抑え、搬送装置の迅速な復旧を可能とした防火装置を備えた廃棄物破砕設備とその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ごみや産業廃棄物(以下廃棄物と呼ぶ)を焼却、溶融、ガス化等により処理するには、先ず破砕処理施設に於いて廃棄物を所望の大きさに破砕し、有価物や不燃物、可燃物等に選別する処理が行われる。
而して、廃棄物内にはLPガスボンベやアセチレンガスボンベ、スプレー缶、有機溶剤用容器、ガソリン用容器、灯油用容器等の可燃物が残留する容器類等(以下危険物と呼ぶ)が多数混入しており、これ等の危険物等は、廃棄物の収集段階で分別されて取り除かれているものの、現実には、廃棄物処理施設へ搬入されてくる廃棄物内には、多数の危険物等が混入している。
【0003】
そのため、廃棄物処理施設では、搬入されてきた廃棄物を破砕機へ投入する前に目視によって選別し、危険物を除去するようにしている。また、万一過誤により危険物が破砕機主体内へ投入された場合に備えて破砕機に防爆装置を設け、破砕機内での火災や爆発事故等の発生防止が図られている。
【0004】
上記破砕機の防爆装置としては、一般に希釈空気吹込方式と水蒸気吹込方式とが多く用いられており、また、火災や発火等の異常事態の検出には、温度検出器や炎検出器等が多く使用されている。
【0005】
前記希釈空気吸込方式は、破砕機内部へ多量の空気を吹込みして可燃ガス濃度を爆発下限界未満まで希釈し、爆発を未然に防止せんとするものであり、破砕機内部のような換気雰囲気内であれば優れた防爆性が得られるが、搬送装置内部のような換気雰囲気外での火災には、効果が無いという問題がある。
また、前記水蒸気吹込方式は、破砕機へ水蒸気を吹込みして破砕機内部の酸素濃度を可燃ガスの爆発限界外に保持し、爆発を抑制するものであり、上記希釈空気吹込方式の場合と同様に、搬送装置内部のような蒸気雰囲気外での火災には、効果が無いという問題がある。
【0006】
一方、前記温度や炎の検出を基本とする火災検出器は、破砕機内部のような狭い空間部での火災であれば迅速且つ正確に火災の発生を検知することができる。
しかし、搬送装置の内部では、破砕された廃棄物が0.3〜0.8m/secの高速度で搬送されるため、火災発生箇所が検知器の設置部を瞬時に通過することになり、温度検知式の検知器では火災の検知が出来ないという問題がある。
【0007】
また、この種の搬送装置では、搬送物が山盛状態で搬送されるため、火種が埋もれた状態となっていることが多く、このような状態下では、火災の検知が一層困難になると云う問題がある。
【0008】
更に、搬送装置の内部は、廃棄物の破砕により生じた粉塵が常時多量に存在する状態の雰囲気にあるため、火炎検知式等の検知器では炎の発生を検知するのが遅れたり、煙式感知器等では誤報が生じる等の問題がある。
【0009】
そのうえ、従前の温度、炎、煙等の検出を基本とする検出器は、一般に検出感度が低くて、火災がある程度進行しないとこれを検知することが出来ないうえ、搬送物が高速搬送されていること等と相俟って、所謂火災発生時の初期消火が困難である。その結果、搬送内の損傷が甚大になり易いうえ、消火後の搬送装置の復旧に時間がかかって、短時間内に破砕設備を再運転することが出来ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−80334号公報
【特許文献2】特開平7−256129号公報
【特許文献3】特開2005−13770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、従前の防火装置を備えた廃棄物破砕設備に於ける上述の如き問題、即ち、a.破砕機内の防爆性は希釈空気吹込みや水蒸気吹込みにより確保されているものの、換気雰囲気又は蒸気雰囲気の外部にある搬送装置に対しては防災効果が全く無く、搬送装置の内部における搬送物火災に有効に対処することが出来ないこと、b.搬送装置内部の高粉塵雰囲気や搬送物の高移送速度、火種が移送中の搬送物内に埋った状態になり易いこと等から、温度や炎、煙等を検出する方式の火災感知器は適用が困難であり、廃棄物破砕設備の安定且つ高精度な自動防災システムの構築が困難なこと、c.廃棄物破砕設備の防災設備、特に搬送装置の散水消火を行った場合には、搬送装置の再稼動に多くの手数と復旧時間を必要とすることになる等の問題を解決せんとするものであり、搬送装置内で火災等が発生した場合にはこれを迅速且つ確実に検知し、警報装置や散水装置を作動させると共に、防災装置の作動後には迅速且つ容易に搬送装置を復旧できるようにした防火装置を備えた廃棄物破砕設備とその運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
廃棄物破砕設備の防火性能を、特に破砕物を高速搬送する搬送装置の防炎性能を高める上での問題点は、高速移動をする搬送物に発生した火災の迅速且つ確実な検知にある。
そのため、本願発明者は、先ずこの破砕物に発生する火災の発生メカニズムを、過去20年ほどの実作動機に於ける火災発生の事故例を基にして調査し、その結果から、金属の破砕や金属類同士の衝突摩擦により生ずる熱(破砕熱)が約270℃以上になり、且つ発熱した金属破砕物の近傍に可燃性物質(発火物)が存続する場合に、破砕物が火災へ移行するケースが多いことを見出した。
【0013】
即ち、可燃性物質の発火は、一般に蓄熱→酸化の促進→温度上昇→くすぶりの過程を経て発火に至ることは周知であり、上記搬送移送中の破砕物の発火もこれと同様に、加熱された金属破砕物の近傍に存在する可燃性物質が、蓄熱→酸化の促進→温度上昇→くすぶりの過程を経て発火に至るものと想定される。
【0014】
一方、出願人は先に、貯槽内に貯蔵された固形燃料(生ごみや可燃性ごみ、プラスチックごみ等を固形化した固形燃料・RDF)の自然発火の原因調査を行い、発火原因が、RDF内に含まれている磁気テープ等の鉄粉が酸化により発熱する点にあることを見出と共に、RDFの自然発火によるくすぶりをCO検出器によって早期に、しかも高精度で検出できることを知得し、これを特開昭2003−206010号として公開している。
【0015】
本願発明者は、上記RDFの自然発火の原因及び発火の初期形態と、搬送装置内の破砕物の自然発火の原因及び発火の初期形態との類似性に着目し、CO検知器を用いて破砕物の自然発火を検出することを着想すると共に、CO検知器を用いた搬送装置内における破砕物の自然発火の検出試験を繰り返し行った。
【0016】
本願発明は、上記着想に基づく搬送装置内破砕物の発火検出試験の結果を基に創作されたものであり、請求項1の装置発明は、廃棄物供給装置と,破砕機と,破砕物搬送装置と,防火装置と,制御装置とを備えた廃棄物破砕設備に於いて、前記防火装置を、破砕物搬送装置のケーシング内に設けた複数の散水ノズルと,散水ノズルへの供給水を制御する散水制御弁と,破砕物搬送装置のケーシング内に設けた内部雰囲気のCO濃度を検出する複数のCO検知器とから形成し、CO検知器からの火災検出信号により破砕機を自動停止させると共に防火装置を作動させ,破砕物の散水消火を行う構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0017】
上記破砕物搬送装置は、少なくとも第1搬送装置と第2搬送装置の組合せにより形成すると共に、CO検知器を前記第1搬送装置の上流側と下流側に設けるのが望ましい。
【0018】
また、前記第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器の下流側近傍に弾性材製のノレンを設け、発生した内部雰囲気中のCOが上流側へ流出するのを防止するのが望ましい。
【0019】
前記複数の散水ノズルは,第1搬送装置の上流側部分と第1搬送装置の下流側部分と第2搬送装置へ散水する三つの系統に分け、各系統毎に設けた散水制御弁を通して各系統に属する散水ノズルへ水を供給すると共に、第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により第1搬送装置への散水を制御する散水制御弁を作動させると共に、第1搬送装置の下流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により第2搬送装置への散水を制御する散水制御弁を作動させる構成とするのが望ましい。また、COの発生抑制(くすぶり防止)を図るためには、第1搬送装置の上流側散水ノズルの散水を搬送物の水分影響の無い範囲の量の常時散水とすることが、効果的である。
【0020】
前記第1搬送装置及び第2搬送装置を正・逆回転が可能な搬送装置にすると共に、前記第1搬送装置の上流側端部及び第2搬送装置の上流側端部に当該第1搬送装置及び第2搬送装置の逆回転時に開放される自動ダンパを設け、逆回転する両搬送装置上の破砕物を各搬送装置の上流側端部より搬送装置の外部へ排出するようにするのが望ましい。
【0021】
請求項6の方法発明は、請求項1に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備において、破砕機の直下に位置する破砕物搬送装置に設けたCO検知器からの火災検出信号の発信により、火災警報の発信及び又は散水消火を行う構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0022】
前記請求項6の方法においては、火災検出信号の発信時に、制御装置により廃棄物供給装置と破砕機と破砕物搬送装置とを停止させるのが望ましい。
【0023】
請求項8の方法発明は、請求項4に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備に於いて、先ず破砕機直下に設けた第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により、火災警報を発すると共に第1搬送装置の上流側の散水ノズルから散水をし、更に、第1搬送装置の下流側に設けたCO検知器の火災検知信号の発信により、自動又は手動により第1搬送装置の下流側の散水ノズル及び第2搬送装置の散水ノズルから散水をして破砕物の消火を行うことを発明の基本構成とするものである。
【0024】
請求項9の方法発明では、火災警報信号の発信時に、制御装置により廃棄物供給装置と破砕機と破砕物搬送装置を停止させるのが望ましい。
【0025】
請求項10の方法発明は、請求項5に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備に於いて、第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器又は下流側に設けたCO検知器からの火災警報信号の発信により、各散水ノズルから放水をすると共に第1搬送装置及び第2搬送装置を逆回転させ、搬送物を搬送装置外へ排出するようにしたことを発明の構成とするものである。
【0026】
請求項11の方法発明では、第1搬送装置及び第2搬送装置の逆回転時に両搬送装置の上流側端部に夫々設けた自動ダンパを開放し、搬送物の搬送装置外への排出を容易するのが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、搬送物中に発生した火災をCO検知器を用いて検出するようにしているため、火種が搬送物内に埋設された状態の場合であっても、或いは搬送物が高速で移送されている場合であっても、迅速且つ確実に検出することができる。
【0028】
また、搬送装置を少なくとも第1搬送装置と第2搬送装置の組合せにより構成すると共に、散水ノズルをグループ分けし、火災の検知状態に応じて散水をする散水ノズルの系統を適宜に選択する構成としているため、消火活動時に於ける搬送装置の散水範囲を限定することができ、消火後の早期復旧が可能となる。
【0029】
更に、第1搬送装置及び第2搬送装置を逆転可能な構成とすることにより、火種を含んだ破砕物そのものを円滑に装置外部へ排出することが出来るうえ、散水消火後にも搬送装置上の残留破砕物を容易に搬送装置外へ排出することができ、搬送装置の復旧時間の短縮及び復旧工数の削減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る防火装置を備えた廃棄物破砕設備の構成説明図である。
【図2】第1搬送装置の側面概要図である。
【図3】図2のイ−イ視断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る廃棄物破砕設備の構成説明図であり、当該廃棄物破砕設備は廃棄物供給装置1、破砕機2、第1搬送装置3、第2搬送装置4、第3搬送装置5、制御装置6及び防火装置7等からその主要部が形成されている。なお、設置する搬送装置の基数は適宜に選定されるものであり、通常は2基以上の搬送装置が設けられる。
【0032】
前記破砕機2は公知のハンマー型若しくは回転刃型の破砕機であり、廃棄物供給装置1により供給されて来た廃棄物Aを所定寸法以下の大きさに破砕し、破砕物Bを排出シュート2aを介して第1搬送装置3上へ排出する。
また、破砕機2には、空気吹込式や蒸気吹込式等の公知の防爆設備が設けられているが、破砕機2そのものは公知であるため、ここではその説明は省略する。
【0033】
前記第1搬送装置3、第2搬送装置4及び第3搬送装置5はコンベア3a、4a、5a及びケーシング3b、4b、5b等から成る公知の搬送装置であり、定常運転時には矢印方向へ破砕物Bを搬送する。また、各搬送装置2、3、4は回転方向が切換自在に構成されており、復旧作業や補修作業時には適宜に逆方向に駆動され、ダンパ3c、3dの操作と相俟って破砕物Bを搬送装置3、4の外部に設けた仮貯留槽6a、6b内へ排出する。
【0034】
上記各搬送装置3、4、5は、通常0.3〜0.8m/sの速度で運転され、破砕物Bを磁選機等の次工程へ搬送する。
また、本実施形態では、破砕機1と3基の搬送装置3、4、5の組合せにより廃棄物破砕設備を構成しているが、搬送装置の組合せ数やその配置形態は任意に変更可能なものであることは勿論である。
【0035】
前記制御装置6は、後述するCO検知器10a、10bからの火災検知信号Sを受信して破砕機1、各搬送装置3、4、5及びダンパ3c・3d等の作動制御を行うと共に、各散水制御弁9a、9b、9cの作動を制御するものである。尚、Saは警報発信信号、Sbは破砕機制御信号、Scは各搬送装置制御信号、Sdはダンパ制御信号である。
【0036】
前記防火装置7は、散水ノズル8、散水制御弁9a、9b、9c及びCO検知器10a、10b等から構成されており、また、複数の散水ノズル8は3基の散水制御弁9a、9b、9cを介して三つの散水系統に分割されている。
即ち、各散水ノズル8は、破砕機の排出シュート2a及び各搬送装置3、4、5のケーシング3b、4b、5bに取付けされており、散水制御弁9aを通して第1搬送装置3の上流部側の散水ノズル8a群へ、散水制御弁9bを通して第1搬送装置3の下流部側の散水ノズル8b群へ、散水制御弁9cを通して第2搬送装置4の散水ノズル8c群へ夫々所定流量の散水が行われる。
【0037】
尚、各散水ノズル8からの散水量は、ケーシングの高さやコンベアの幅員、各散水ノズルの取付間隔等に応じて適宜に選定される。また、図1の実施形態では、散水系統を3系統としているが、搬送装置の長さや組合せ形態に応じて系統数を変え得ることは勿論である。
【0038】
前記CO検知器10a、10bは第1搬送装置3の上流側と下流側のケーシング3bに設けられており、ケーシング3b内部の雰囲気を連続的に吸引してCO濃度を計測する。
尚、本実施形態に於いては、ケーシング3b内部雰囲気のCO濃度が40〜200ppmを越えると火災検知信号Sを発信し、散水装置の作動等を行っている。
【0039】
尚、第1搬送装置3の定常運転時に於けるケーシング3b内部雰囲気のCO濃度は約0〜15ppm程度であり、破砕物Bの内部に火種が生じて所謂おこりの状態が発生すると、CO濃度は40〜200ppmに上昇することが実機を用いた予備試験により判明している。そのため、本実施形態においては、CO濃度40ppmを散水装置の作動の設定値としている。但し、このCO濃度値は破砕物の質や量に応じて異なって来るため、実施に際して適正なCO濃度値の設定調整を必要とすることは勿論である。
【0040】
図2は、第1搬送装置に於ける散水ノズル8及びCO検知器10の配置状態を示す側面図であり、図3は図2のイ−イ視断面図である。
図2に於いて、破砕物Bは下方から上方へ向けて矢印方向に搬送されており、破砕物Bの積層厚さTは約0.1m、搬送亘長は約30m、搬送高さは約21mである。
【0041】
また、ケーシング3bの高さH=約1m、横幅W=2.3m、散水ノズル8の取付ピッチL=2m〜4mであり、コンベア3aの積層部の横幅W=約1mである。
尚、図2及び図3に於いて、11はCO検知器取付座、12は散水ノズル取付座、13は架台、14は駆動輪、15、16、17は従動輪、18はローラ、19はコンベアベルト、20はガイド体である。
【0042】
次に、本発明に係る廃棄物破砕設備の作動について説明する。
図1を参照して、定常運転時には、破砕物Bは第1、第2、第3搬送装置3、4、5により矢印方向へ0.3〜0.8m/secの速度で搬送されて行く。
また、CO検知器10a、10bは第1搬送装置3のケーシング内雰囲気を吸引し、そのCO濃度を連続的に測定すると共に、測定値の記録を行う。
【0043】
搬送物B内に何等かの原因で火種が生じ、これが原因で火災が発生すると、CO検知器10a、10bの何れか一方又は両方が作動する。CO検知器10の作動はCO濃度40ppmに設定されており、CO検知器10aが作動すると、破砕機1及び各搬送装置3、4、5が停止されると共に、散水装置が作動され、ケージ内へ散水が行われる。また、同時に必要な警報が発信される。
【0044】
火災の原因となる火種は、破砕機1内から排出されてくる高温の金属破砕片等が原因となって生ずるケースが殆どであるため、火災も大部分が第1搬送装置3の上流側に於いて発生する。
また、第1搬送装置3の中央部に設けたフレキシブルな弾性材から成るノレン3eが、ケーシング3b内のシール作用を行い、火種やこれによる破砕物Bのおこりによって生じたCO或いは火災によって生じたCOがケーシング3bに沿って搬送装置の下流側外部へ逸散するのが防止される。これにより確実なCO検知が行える。
【0045】
一般的には、第1搬送装置3の上流側に設けたCO検知器10aが最初にCO濃度が設定値に達したことを感知し、警報を発すると共に、CO検知器10aから火災警報信号Sが発信されることにより、制御装置6を介して破砕機1や各搬送装置3、4、5が停止される。また、同様に、散水制御弁9a、開放されて第1搬送装置3内へ散水が行われ、火災等の消火が行われる。
【0046】
更に、散水制御弁9aの開放によってもケーシング内のCO濃度が低下せず、第1搬送装置3の下流側に設けたCo検知器10bのCO濃度が設定値を超えた状態になると、散水制御弁9b又は散水制御弁9b、9cの両方を作動させ、散水消火が行われる。
【0047】
尚、前記散水制御弁9aの開放による散水を行っても、第1搬送装置3の下流側に設けたCO検知器10bのCO検知濃度が設定値を超えた状態にある場合に、前記のように直ちに散水制御弁9b及び又は散水制御弁9cを自動開放しないで、先ず目視によって第1搬送装置3の内部状態を確認し、その後必要に応じて散水制御弁9b及び又は散水制御弁9cを手動開放するようにしてもよいことは勿論である。
【0048】
上記実施例では、CO検知器10a又は両CO検知器10a、10bが設定値を超えるCO濃度を検出した場合、散水制御弁9a、9b、9cを適宜に開放して散水を開始すると同時に破砕機1や各搬送装置3、4、5を自動停止するようにしているが、第1搬送装置3及び第2搬送装置4等を停止したままにせずに逆回転させ、搬送物Bを破砕物仮貯留槽3g内へ排出することにより、第1搬送装置3や第2搬送装置4内の火災等による損傷を低減させると共に、破砕物仮貯留槽3g内への散水により迅速に消火を行うようにしてもよい。
尚、CO検知器の作動による散水の開始と各搬送装置の逆回転の開始との間に、タイマー装置等によって適宜の時間遅れを設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上記各搬送装置の逆回転時には、破砕物Bの外部への排出を容易にするため、各搬送装置3、4の上流端に設けたダンパ3c、3dを開放位置(図1の点線位置)まで自動移動させるのが望ましい。この場合には、前記ダンパ3c、3dとして電動又は流体圧作動型のものを用いることは勿論である。
【0050】
搬送装置逆回転させて破砕物Bを外部へ排出することにより、火種を含んだ破砕物をそのまま直接に搬送装置の外部へ排出させることができるだけでなく、消火散水後の搬送装置内部の破砕物(搬送物)Bの除去や搬送装置内部の清掃が極めて容易なものになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の廃棄物破砕設備は、廃棄物以外の可燃性物質を含む物質の破砕設備に適用することができ、また、本発明で用いる防火装置は、固形燃料やチップ材等の搬送装置の防火装置にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0052】
A 廃棄物
B 破砕物
S 火災検出信号
1 廃棄物供給装置
2 破砕機
2a 排出シュート
3 第1搬送装置
3a コンベア
3b ケーシング
3c・3d 自動ダンパ
3e・3f ノレン
3g 破砕物の仮貯留槽
4 第2搬送装置
4a コンベア
4b ケーシング
5 第3搬送装置
5a コンベア
5b ケーシング
6 制御装置
Sa 警報発信信号
Sb 破砕機制御信号
Sc 搬送装置制御信号
Sd ダンパ制御信号
7 防火装置
8 散水ノズル
9a・9b・9c 散水制御弁
10a・10b CO検知器
11 CO検知器取付座
12 散水ノズル取付座
13 架台
14 駆動輪
15 従動輪
16 従動輪
17 従動輪
18 ローラ
19 コンベアベルト
20 ガイド体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物供給装置と,破砕機と,破砕物搬送装置と,防火装置と,制御装置とを備えた廃棄物破砕設備に於いて、前記防火装置を、破砕物搬送装置のケーシング内に設けた複数の散水ノズルと,散水ノズルへの供給水を制御する散水制御弁と,破砕物搬送装置のケーシング内に設けた内部雰囲気のCO濃度を検出する複数のCO検知器とから形成し、CO検知器からの火災検出信号により、破砕機を自動停止させると共に防火装置を作動させて破砕物の散水消火を行う構成とした防火装置を備えた廃棄物破砕設備。
【請求項2】
破砕物搬送装置を少なくとも第1搬送装置と第2搬送装置の組合せにより形成すると共に、CO検出器を前記第1搬送装置の上流側と下流側に設けるようにした請求項1に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備
【請求項3】
第1搬送装置の上流側に設けたCO検出器の下流側近傍に弾性材製のノレンを設けるようにした請求項2に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備。
【請求項4】
複数の散水ノズルを,第1搬送装置の上流側部分と第1搬送装置の下流側部分と第2搬送装置へ散水する三つの系統に分け、各系統毎に設けた散水制御弁を通して各系統に属する散水ノズルへ水を供給すると共に、第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により、第1搬送装置への散水を制御する散水制御弁を作動させると共に、第1搬送装置の下流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により、第2搬送装置への散水を制御する散水制御弁を作動させる構成とした請求項2に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備。
【請求項5】
前記第1搬送装置及び第2搬送装置を正・逆回転が可能な搬送装置とすると共に、前記第1搬送装置の上流側端部及び第2搬送装置の上流側端部に当該第1搬送装置及び第2搬送装置の逆回転時に開放される自動ダンパを設け、逆回転する両搬送装置上の破砕物を各搬送装置の上流側端部より搬送装置の外部へ排出するようにした請求項2に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備。
【請求項6】
請求項1に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備において、破砕機の直下に位置する破砕物搬送装置に設けたCO検知器からの火災検出信号の発信により火災警報の発信及び又は散水消火を行う構成とした防火装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。
【請求項7】
火災検出信号の発信時に、制御装置により廃棄物供給装置と破砕機と破砕物搬送装置とを停止させるようにした請求項6に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。
【請求項8】
請求項4に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備に於いて、先ず、破砕機直下に設けた第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器の火災検出信号の発信により、火災警報を発すると共に第1搬送装置の上流側の散水ノズルから散水をし、更に、第1搬送装置の下流側に設けたCO検知器の火災検知信号の発信により、自動又は手動により第1搬送装置の下流側の散水ノズル及び第2搬送装置の散水ノズルから散水をして破砕物の消火を行う構成とした防火装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。
【請求項9】
火災警報信号の発信時に、制御装置により廃棄物供給装置と破砕機と破砕物搬送装置を停止させるようにした請求項8に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。
【請求項10】
請求項5に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備に於いて、第1搬送装置の上流側に設けたCO検知器又は下流側に設けたCO検知器からの火災警報信号の発信により、各散水ノズルから放水をすると共に第1搬送装置及び第2搬送装置を逆回転させ、搬送物を搬送装置外へ排出する構成とした防災装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。
【請求項11】
第1搬送装置及び第2搬送装置の逆回転時に両搬送装置の上流側端部に夫々設けた自動ダンパを開放し、搬送装置外への搬送物の排出を容易するようにした請求項10に記載の防火装置を備えた廃棄物破砕設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−240295(P2011−240295A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116591(P2010−116591)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】