説明

防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法

【課題】本発明は防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を提供する。
【解決手段】砂石、或いは、粘土、或いは、砕石、或いは、混合透水コンクリート等を含む現地の土砂、或いは、一般的な道路工事のグラデーション材料を採用する以外に、最も重要な特殊作用をもつ中空体を設けて、生態グラデーション層を形成させる。それは、路面を支える作用がある以外に、更に、貯水、保水、及び土質を改良する効果があるとともに、土壌微生物と土壌内の原生動物が土壌内で生存するのに有利な環境をつくりだすことができる。グラデーション層は高い保水力と微生物の繁殖を増進させるため、大気の温度が高温の時、土壌の湿気が蒸発し、ヒートアイランド現象を減らすことができ、雨が降っている時は、保水且つ貯水して、旱魃時に使用することができるとともに、地表に水害が発生する確率を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法に関し、特に、道路、庭、空き地の敷設面に、或いは、敷設面の下に設けられ、地面の下に生態グラデーション層を形成させ、グラデーション層の上方の地表に雨水が滲みこんだ後、雨水を効果的且つ素早く導きグラデーション層内に貯蔵させることができ、短い時間内に保水することで水害の発生を減らすとともに、土壌内の微生物菌種や土壌内の原生動物に優れた繁殖環境を与え、土壌を環境の温度と湿度を調整することができ、土質を改善することができる、防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから知られていることだが、土壌は水分を吸着する機能があり、また、大気層に接触するため、大気環境が乾燥或いは非常に熱い状態にある時、湿り気が十分にある土壌は水蒸気を発し、大気環境と熱交換を行う作用がある。また、それ自体に湿度を調整する機能があるため、ヒートアイランド現象が生じるのを避けることができる。
【0003】
従来の技術では、地底のグラデーション層には、大多数が、一般的な道路工事のグラデーション材料、或いは、現地の土砂(砂石、或いは、粘土、或いは、砕石、或いは、混合透水コンクリートを含む)が採用される。このような構造は、雨水を滲みこませる機能をもち、しかも、このグラデーション層の上層の敷設面の荷重を支えることができる。しかしながら、このような従来のグラデーション層は、素早く雨水を排出する機能が優れていないため、地面に豪雨が降り注いだ時、地面に水たまりができて水害が起きやすくなる。
【0004】
水が滲みこむ作用と保水作用の優れた生態グラデーション層を構築することは極めて重要である。適切な保水作用をもたせることにより、土の中の生態環境を改善することができ、土壌の中の微生物と土壌の中の原生動物が生存しやすい土壌内の環境を作り出すことができる。土壌微生物は、主に、細菌(真性細菌と古細菌)、真菌(糸状真菌と酵母菌)、藻類である。また、土壌原生動物は、変形虫類、繊毛虫類、鞭毛虫類等の数が非常に多く、有機質の分解への貢献が大きい。また、土壌内の昆虫、例えば、蟻、ムカデ、ダニ、節足動物等は、土壌を動かしたり、生物の残骸を消化し有機質を提供したりする。ミミズは、土壌団粒を形成するのに役立っており、通気や排水をよくする。線虫は、有機物やその他の小さい生物を消化する。土壌内には、ネズミ類等の脊椎動物も存在し、それらは、土壌を軟らかくするとともに、その排泄物によって土壌に栄養を与えており、地下の生物連鎖の一員となっている。
【0005】
土壌微生物は、土壌を高い品質に保つ上で重要な役割を演じているとともに、地球の環境にも影響を与えている。土壌生物の生存と、土壌環境の変化及び優劣が密接な関係があることは既に知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、地表の敷設面の雨水が下に滲みこんだ後、素早く貯蔵して保存することができ、それにより、地表の水害の発生する確率を下げるとともに、地下水を補充して旱魃時に使用することができる、防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、地面の下の土壌グラデーション層を多くの水分を含む生態グラデーションにアップグレードさせることができ、外界の気温が熱い時、そのグラデーション層の水分を水蒸気に変換させて外界環境へ排出し、環境内の全体の温度と湿度を調整することができるため、ヒートアイランド現象が生じるのを防ぐことができる、或いは、ヒートアイランド現象を減らすことができ、地球の温暖化作用を改善することができる、防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、地底の土壌が大量の微生物及び土壌の原生動物に極めて優れた生息環境を与え、微生物は優れた繁殖環境空間で効果的に培養され、土壌微生物と原生動物が有機物質を分解し、硝化作用と脱窒素作用を行うことにより、土質の生態環境を改善することができる、防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明による防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法は、砂石、或いは、粘土、或いは、砕石、或いは、混合透水コンクリート等を含む現地の土砂、或いは、一般的な道路工事のグラデーション材料を採用する以外に、最も重要な特殊作用をもつ中空体を設けて、生態グラデーション層を形成させる。生態グラデーション層は、路面を支える作用がある以外に、更に、貯水、保水、及び土質を改良する効果があるとともに、土壌微生物と土壌内の原生動物が土壌内で生存するのに有利な環境をつくりだすことができる。グラデーション層は高い保水力と微生物の繁殖を増進させるため、大気の温度が高温の時、土壌の湿気が蒸発し、ヒートアイランド現象を減らすことができる。そして、雨が降っている時は、保水且つ貯水して、旱魃時に使用することができるとともに、地表に水害が発生する確率を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のグラデーション層を用いて作られた人工地層の構造を示した説明図である。
【図2】本発明のグラデーション層に中空体を設けた状態を示した説明図である。
【図3】本発明のグラデーション層内の異なる機能をもつ中空体の構造を示した説明図である。
【図4】本発明のグラデーション層の上に透水性敷設面を構築している途中の状態を示した説明図である。
【図5】本発明のグラデーション層の上の透水性敷設面が完成した状態を示した説明図である。
【図6】本発明のグラデーション層の中空体が袋に集められた実施例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照する。本発明による防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を用いて構築した、図の実施例の地質構造は、水源層10と、地底土壌層20と、グラデーション層30と、隔離層40と、水誘導層50と、地表敷設面60と、によって構成する。その内、グラデーション層30には、現地の土砂や、一般的な道路工事のグラデーション材料(砂石、或いは、粘土、或いは、砕石、或いは、混合透水コンクリートなどを含む)が用いられ、また、最も重要なグラデーション層30には、特殊作用をもつ中空体31が設けられ、各要素を混ぜ合わせた後、地底の底層に敷設し、適度な圧力をかけて固める。
【0012】
図2と図3を参照する。本発明のグラデーション層の構造は、主に、一般的な道路工事のグラデーション材料、或いは、現地の土砂内に、特殊機能をもつ中空体31を設けてなり、前記中空体の殻には複数の透孔32が設けられる。
【0013】
また、グラデーション層に使用される土砂は、砂石、或いは、粘土、或いは、砕石、或いは、混合透水コンクリート以外に、その他の環境に無害で敷設物となるグラデーション材料を混ぜて使用することができる。また、特殊作用をもつ中空体31は円形状を呈するのが好ましい。なぜなら、円形は、いずれの面も、最大の圧縮応力を受けることができ、しかも、グラデーション層内に最大の隙間空間を提供することができるためである。ただし、中空体31はその他の各種の幾何形態にすることもできる。
【0014】
図3に示すように、前記中空体31は、二等分された半分の殻31a、31bにすることができ、それらを粘着・結合させて中空体にすることや、接合端部に階段状面を設けて相互に嵌合させ中空体を形成させることや、係合構造を設けて相互に係合させ中空体を形成させる方法や、ブロー成形や、注入成形で加工して一体成型の中空体にすることができる。中空体の材料は、プラスチックからなるのが好ましいが、 従来技術に属するその他の適切な材料や、環境保護に役立つ再生材料にすることもできる。また、中空体の殼は、厚い壁を備え、殻には複数の透孔32が設けられる。なお、本発明で使用される中空体31は、ニーズに応じて、異なる機能をもつ中空体にすることができる。それは、防災貯水中空体、或いは、土質改良中空体、或いは、微生物培養中空体、或いは、保水中空体、或いは、現地の生態が必要な機能をもつ中空体である。
【0015】
前記中空体を防災貯水中空体として使用したい時は、殻に透孔32を設けた中空体31をグラデーション層30内に混ぜる。それにより、地面に大量の雨が降りそそいだ時、地表敷設面60によって雨水が下へ流れ、前記グラデーション層30の材料内の各中空の中空体31の内部空間は水を含むことができるため、グラデーション層の水分は中空体の殻の透孔32から中空体内の空間へと流れ込み、短時間で地域の水害の発生の確率を下げることができる。そして、地表面の雨水が下へと滲みこまなくなった後、一定の時間が経過するとゆっくり地底土壌層20及び地下水源層10へと滲みこんでいく。このように、防災貯水中空体は一時的に貯水し、その後、ゆっくりと内部に含まれた水を放出していくため、地面は、短い時間内に効果的に素早く排水が行われるとともに、地下水を補充する機能を得ることができる。
【0016】
土質改良中空体31の中空体内には、炭素物質33(例えば、活性炭、或いは、備長炭)が詰め込まれるか、或いは、現地の土質の必要性に応じて土質改良剤が詰め込まれる。土質改良中空体をグラデーション層内に混ぜると、水が滲みこんでいく過程の中で、炭素物質33によって、土壌内や水中内の酸化物質や有害物質が吸収されるとともに活性化され、土質を改善することができる。
【0017】
微生物培養中空体31の中空体内には、微生物菌種34が詰め込まれる。それにより、大量の微生物に、極めて優れた生息環境を提供することができる。微生物培養中空体をグラデーション層材料内に混ぜると、微生物は優れた繁殖環境空間で効果的に培養され、土壌微生物が有機物質を分解し、硝化作用と脱窒素作用が行われることにより、土質の生態環境を改善することができる。
【0018】
保水中空体31の中空体内には、含水物質35(例えば、スポンジ、或いは、水分を吸収でき且つ微生物に分解されにくい物質)が詰められる。保水中空体をグラデーション層内に混ぜると、水が滲みこんでいく過程の中で、含水物質35が水分を吸収するため水分が流失しにくく、微生物に水分の養分を与えることができる。それにより、干魃地域の土壌の保水状態や土質に含まれる水の量を改善することができる。さらに、地面が非常に熱くなり高温度の時、地質には多くの水分が含まれているため、それが水蒸気に変化して外へ排出され、外部環境との熱交換が行われる。それにより、ヒートアイランド現象が生じるのを防ぐこと、或いは、ヒートアイランド現象を減らすことができる。
【0019】
図4と図5を参照する。図は、本発明のグラデーション層30を敷設した後、グラデーション層30の上に地表敷設面60を敷設した状態を示した説明図である。図の実施例の地表敷設面は透水性の敷設面である。前記透水性敷設面にはフレーム61を設け、フレーム61内には複数の排水管62を設け、前記フレーム61に、排水管に繋がれるプラスチック部材を設け、さらに、生コンクリート63を注ぎ込んで固めると、硬いコンクリート敷設面が形成される。また、前記地表敷設面60を透水性敷設面にしなかった場合、透水機能を備えた地表を敷設することができる。例えば、ドリルで透水孔をあけた敷設面にすることや、芝生や、透水レンガ、透水アスファルト、透水コンクリート等を敷設することによって透水機能を形成させる。そうすることで、本発明のグラデーション層30を環境保護の生態機能を備えたグラデーション層にすることができ、同様に、環境の温暖化を改善することができる。
【0020】
本実施例において、前記グラデーション層30は、現地の土砂、或いは、一般的な道路工事のグラデーション材料に、本発明の特殊作用をもつ中空体31を混ぜるが、図6に示すように、この実施例では、複数の中空体31を網袋内に集めて、袋状の中空体ユニット32を形成させ、さらに、集めた複数の中空体ユニット32を現地の土砂に混ぜてグラデーション層を形成させる。このようにすることで、前述した実施例と同じ効果を得ることができる。
【0021】
上述したことをまとめると、本発明のグラデーション層は高い保水力を備えており、地表面の雨水が下方のグラデーション層へと排出された後、滲みこんだ雨水は、中空体の殻の透孔から素早く入り込み貯蔵される。それにより、その貯蔵された水分は、土壌内の微生物や原生動物の土壌が旱魃した時に生存するのに必要な水分となる。また、旱魃地区の地下水の温度と湿度を調整することができ、草木に水分が供給されることにより枯れてしまうことを減らし、土壌の砂漠化を防ぐことができる。気候が熱い時は、湿った土壌から水蒸気が出て、大気の温度を調和する。以上のようにして、環境保護に貢献する防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法を達成することができる。
【符号の説明】
【0022】
10 地下水源層
20 地底土壌層
30 グラデーション層
31 中空体
31a、31b 半分の殻
32 透孔
33 炭素物質
34 微生物菌種
35 含水物質
40 隔離層
50 快速水誘導層
60 透水敷設面層
61 フレーム
62 排水管
63 生コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法であって、
前記地質グラデーション層は、一般的な道路工事のグラデーション材料、或いは、現地の土砂に、透孔を設けた中空体を混ぜてなることを特徴とする、防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項2】
前記中空体は土質改良中空体であり、中空体内には、炭素物質、或いは、土質改良剤が詰められることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項3】
前記中空体は微生物培養中空体であり、中空体内には、微生物菌種が詰められることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項4】
前記中空体は保水中空体であり、中空体内には含水物質が詰められ、含水物質は、スポンジ、或いは、水分を吸収でき且つ微生物に分解されにくい物質であることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項5】
前記中空体には透孔が設けられ、前記中空体は、二等分された半分の殻を相互に合わせてなることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項6】
前記中空体には透孔が設けられ、前記中空体は、ブロー成形によって一体成型に加工されていることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項7】
前記中空体には透孔が設けられ、前記中空体は、注入成形によって一体成型に加工されていることを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。
【請求項8】
グラデーション層内に設けられた複数の中空体は網袋内に集められて袋状の中空体ユニットを形成することを特徴とする、請求項1に記載の防災と生態機能を備えた地質グラデーション層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57459(P2012−57459A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195577(P2011−195577)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(511219386)
【氏名又は名称原語表記】CHEN,JUI−WEN
【出願人】(511219364)
【Fターム(参考)】