説明

防災用収納箱

【課題】 通常時は防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できると共に、非常時は防災用品等を搬出した後の空間を利用するに際し、その利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供すること。
【解決手段】 防災用収納箱1は、防災用品等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えると共に、前記収納スペース11のカバーとなる床面3と、収納箱1の壁面4に折畳まれ、展開時に前記収納スペース11の上方の倉庫スペース10を仕切ることができる仕切板5を備えている。
地震等の災害発生の非常時には防災用品等が搬出された後に、前記床面3を壁面4側に移動させることで前記収納スペース11を倉庫スペース10に臨ませると共に、前記仕切板5により、前記倉庫スペース10を収納スペース11毎に区間可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災用品等を備蓄することができる防災用収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年に起きた阪神・淡路大震災は、都市のライフライン等に甚大な被害を与えたが、その中で罹災者を苦しめたトラブルにトイレ問題を始めとする生活衛生面の問題があった。
トイレの個数不足に対しては、非特許文献1のような、建設現場等に設置される仮設トイレを多数、被災地に投入することで解消させることができる。しかし、このような仮設トイレは、機能本位な構成、外観であって、女性には敬遠される恐れがあった。
【0003】
一方、特許文献1では、物置、物置用トイレキットに関し、たとえば災害時等に有効に機能する物置、物置用トイレキットが開示されている。
これは平常時および非常時のいずれにおいても設置スペースを有効に活用することが可能な物置を提供することにあるとされ、物置等の建物の床下空間のデッドスペースの有効利用に着目したものであった。
【非特許文献1】日野興業株式会社 取扱商品 仮設トイレ 2008年7月14日検索 インターネット<URL http://www.hinokogyo.co.jp/main/products/toilet01.html>
【特許文献1】特開2008−2214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしかかる物置、物置用トイレキットにおいては、倉庫スペースが複数の小型収納室に細分化されており、倉庫の容積性に問題があった。また、非常時には「大便器151、小便器152等を取り出し、床パネル156、床パネル157を外して便槽蓋153、便槽蓋154の便器用開口部153a、便器用開口部154aに設置して物置100を簡易トイレとして利用する」旨、記載されており、被災地の混乱の中での迅速なトイレの設置に不安があった。
【0005】
そこで、本願発明は、通常時は防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できると共に、非常時は防災用品等を搬出した後の空間を利用するに際し、男女を問わずに使い勝手がよく、またその利用の迅速性、簡易性を重視した防災用収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明は、防災用品等を収納可能な防災用収納箱であって、その内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備えると共に、前記収納スペースのカバーとなる床面と、壁面側に折畳まれ、且つ、展開時に前記収納スペースの上方の倉庫スペースを仕切りことができる仕切板を備えたことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項1の発明)。
【0007】
上記発明において、前記床面を壁面側に移動させることで前記収納スペースを倉庫スペースに臨ませると共に、前記仕切板により、前記倉庫スペースを収納スペース毎に区間可能な小部屋を形成することを特徴とする防災用収納箱とした(請求項2の発明)。
【0008】
上記発明において、前記収納スペースには便器が設置されていることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項3の発明)。
【0009】
上記発明において、前記小部屋の一面は、防災用収納箱の壁面であることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項4の発明)。
【0010】
上記発明において、前記仕切板は隣接する各小部屋に共用されることを特徴とする防災用収納箱とした(請求項5の発明)。
【0011】
上記発明において、前記小部屋は防災用収納箱の壁面に沿って隣接して配置可能なことを特徴とする防災用収納箱とした(請求項6の発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常時には、防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できる。そして、収納スペースに例えば便器を設置すれば、非常時には防災用品等を搬出した後の空間を利用して少なくとも一個の独立したトイレブースとなる小部屋を形成可能な収納箱となっている。
即ち、小部屋の組立の迅速性、簡易性が発揮され、さらに男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい収納箱を提供することができる。
さらに、収納スペースの設置物に従って、多用途に利用することができる収納箱となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る防災用収納箱の実施形態を図面に基いて説明する。
図1及び図2は実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図及び同外観背面図、図3は同防災用収納箱の通常時の水平断面図、図4は同正面視縦断面図、図5は同側面視縦断面図である。
図6は実施形態に係る防災用収納箱の非常時の水平断面図、図7は同正面視縦断面図、図8は同側面視縦断面図である。
これらの各図及び後述の各図において、同一の構成は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0014】
前記防災用収納箱1(以下、収納箱1とも称する)は、図1〜図5に示したように防災用品(図示せず)等を収納可能な建物であって、その内部に倉庫スペース10とこの倉庫スペース10の下に収納スペース11を備えると共に、前記収納スペース11のカバーとなる床面3と、収納箱1の壁面4に折畳まれ、且つ、展開時に前記収納スペース11の上方の倉庫スペース10を仕切ることができる仕切板5を備えている。
【0015】
地震等の災害時以外の通常時には、床面3から上方が防災用品等を収納可能な倉庫スペース10となっている。
一方、図6〜図8に示したように、地震等の災害発生の非常時には防災用品等が搬出された後に、前記床面3を壁面4側に移動させることで前記収納スペース11を倉庫スペース10に臨ませると共に、前記仕切板5により、前記倉庫スペース10を収納スペース11毎に区間可能としている。
【0016】
よって、通常時には、防災用品等を収納する倉庫として広いスペースを活用できる。そして、収納スペース11に例えば便器8が設置されていれば、独立したトイレブースとなる小部屋2を形成可能な収納箱となっている。従って、小部屋2の組立の迅速性、簡易性が発揮され、さらに男女を問わずにプライバシーが保護されて使い勝手がよい収納箱1を提供することができる。
【0017】
前記防災用品は、例えば、炊飯用具、飲料水、保存食料、燃料、ストーブ、簡易トイレ、シート、毛布等の防寒品、ポリタンク、発電機、救急用品等であって、災害時に罹災者の生活に必要な物である。
その他、前記収納箱1の設置場所に応じて、収納対象は変わってくる。例えば、設置場所が公園内であれば、公園の管理に必要な物品が含まれる。また、設置場所が公的な会館等であれば、会館の器具備品等が含まれる。
【0018】

前記収納箱1は、主として動産的に組立可能なもの、移築可能なものであって、例えばユニットハウス、仮設ハウス、倉庫、多目的ハウス等と称され、物等を収納できる建物である。また、ユニット建物のように規格化され、連設されるようなものも含まれる。
【0019】
前記収納箱1は、外壁12、屋根13、床14からなり、外壁12の開口にはドア15が設けられている。ドア15とドア15の間の枠120は取外式竪枠となっており、ドア15の開口幅により収納対象が制限されないようになっている。その他、外壁12には換気扇16が、屋根13には太陽電池パネル17がそれぞれ取付可能となっている。
前記収納箱1の外壁12、屋根13、床14等はパネル式となっていて、現地設置でのノックダウンが可能となっている。
【0020】
前記収納箱1の内部の倉庫スペース10は、外壁12、屋根13、ドア15及び床面3によって囲まれた空間であって、概ね1つの空間を指し、かかる空間が防災用品等を収納可能なスペースとなっている。
その他、前記収納箱1の使用目的に応じて、倉庫スペース10の他に、居住用の空間や事務所用の空間等を設けてもよく、その場合には居住空間等の中に独立する小部屋2を区画可能に構成してもよい。
【0021】
前記収納スペース11は、外壁12、床14及び床面3によって囲まれた空間であって、少なくとも1の空間が形成されていると共に、その収納スペース11に収納される対象物に従って、固定間仕切6(図4及び図5参照)等で区画可能になっている。
【0022】
前記小部屋2は、床14からの高さが平均的な身長の大人が隠れる程度のものすることができる仕切板5、ドア15、壁面4及び床14とで区画される空間から構成されている。
【0023】
以上のように構成された収納箱1においては、前記小部屋2は、収納スペース11に収納されているものが便器8であれば、上述のようにトイレブースとなり、耐水性のパレット等であればシャワーブースになり、浴槽であれば風呂ブースになり、それぞれ収納スペース11に収納されているものによって、その用途が決定される。
【0024】
次に前記床面3の構成例を図9A〜同9Dに基づいて説明する。
前記床面3は、収納スペース11に応じて、分割されており、図9A〜同9Dは分割された床面3の構成例を示すものである。図9Aは床面3の平面図、図9Bは床面3をドア15側からみた正面図、図9Cは側面図、図9Dは床面3の折畳状態を示す側面図である。
【0025】
前記床面3は、一端が壁面4側に回動自在に固定されている床本体30と、この床本体30の他端に回動自在に固定されているボート31と、このボード31に取付けられている取手32からなる。
前記床本体30は、断面略U字アングル33によりその強度が補強されている。
前記ボード31は、ドア15からの視線に対し収納スペース11をカバーするものでもある。
【0026】
次に、前記仕切板5の構成例を、図10A〜同10Cに基づいて説明する。図10Aは仕切板5の折畳状態を示す平面図、図10Bは展開された仕切板5の側面図、図10Cは同平面図である。
前記仕切板5は、その一端50aが壁面4側に回転自在に固定されて、水平方向に展開自在に取り付けられる第1の仕切材50と、その他端に水平方向に展開自在に連結された第2の仕切材51と、その他端に水平方向に展開自在に連結され第3の仕切材52からなる。
【0027】
前記仕切板5は、前記第1の仕切材50の一端50aが、隣接する収納スペース11、11の境界線の鉛直方向に沿って取り付けられており、折畳まれた状態では、収納箱1の壁面4と一体となることで、倉庫スペース10内に防災用品等が収納可能なように空間の最大化が図られている。
一方、非常時においては、隣接する収納スペース11上の倉庫スペース10の間仕切りとなって、利用者のプライバシーの保護を確保できるようになっている。
【0028】
前記仕切板5及び床面3は、特別な冶具を用いることなく、また他の構成部材を付加させることなく、それぞれ展開、折畳可能に、敷設、収納可能となっている。
【0029】
前記仕切材5は、予め収納箱1の壁面4に取付けたものでもよいが、例えば収納箱1の内部に収納しておいて、非常時の際に壁面4に取付けるように、後付けにしてもよい、
【0030】
前記固定間仕切板6は、上述のように収納スペース11の間仕切りとなるもので、図11Aの図示の通り、本体60と、この本体60を床14に固定する固定部61と、前記床面3の端部を支える床面サポート部62と、前記仕切板5の下端を支える仕切板サポート部63を備えている。
【0031】
以上のように構成される収納箱1では、前記仕切板5は隣接する各小部屋2、2・・・に共用されるようになっている。
【0032】
以上の収納箱1について、図3〜図8の如く4つの収納スペース11(以下、図4に11A、11B、11C、11Dと符号付する)を備えたケースにおいて、床面3が敷設され、仕切板5が折畳状態となっている通常時から、非常時への使用態様を説明する。
【0033】
まず、収納スペース11Aの床面3を壁面4側に収納する。即ち、取手32を用いて、床本体30を、その回転部30a(図9C参照)を中心にして、鉛直方法に壁面4まで押上げる。
次に、収納スペース11Aと11Bの境界に位置させた仕切板5の第3仕切材52、第2仕切材51及び第1仕切材50を順次展開させつつ、各仕切板の各下端を前記固定間仕切板6の仕切板サポート部63に配置する。その際にピン53などを仕切板サポート部63の孔に落とし込む。
【0034】
次に、順次、収納スペース11Bの床面3の収納、収納スペース11Bと11Cの境界に位置させた仕切板5の展開、収納スペース11Cの床面3の収納、収納スペース11Cと11Dの境界に位置させた仕切板5の展開、収納スペース11Dの床面3の収納を行う。
収納スペース11に便器8が収納されている場合には、その便器8は便槽80と一体のものを収納しておいてもよい。下水管に隣接して収納箱1を設置できる場合には、便器8からパイプ等を介して下水管への直流方式でもよい。
【0035】
以上のような防災用収納箱1の作用効果は、次の通りである。
1. 収納箱1の収納スペース11の使用目的、用途を自由に設定でき、倉庫スペース10が、その目的、用途に応じた小部屋2を備えた空間に可変可能である。
2. 各小部屋2の独立性が高いので、非常時に際してもプライバシーの保護を図ることができる。
3. 前記小部屋2は、折畳、展開できる仕切板5により構成されるので、通常時には倉庫スペース10の機能を害することなく、非常時には迅速に小部屋2を設置することができる。また、収納箱1の壁面4を小部屋の一部に利用することで、仕切板5の構成部材を少なくすることができる。
4. 展開することができる仕切板5及び収納することができる床面3としたことで、非常時には迅速に小部屋2を設置することができる。
5. また、展開された仕切板5は簡単に折畳むことができ、収納された床面3は簡単に敷設でき、再度倉庫スペース10に可変させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る防災用収納箱の外観正面図、
【図2】同背面図、
【図3】実施形態に係る防災用収納箱の通常時の水平断面図、
【図4】同正面から見た縦断面図、
【図5】同側面から見た縦断面図、
【図6】実施形態に係る防災用収納箱の非常時の水平断面図、
【図7】同正面から見た縦断面図、
【図8】同側面から見た縦断面図、
【図9A】床面の平面図、
【図9B】同正面図、
【図9C】同側面図、
【図9D】折畳状態の床面の側面図、
【図10A】折畳状態の仕切板の平面図、
【図10B】仕切板の展開状態の側面図、
【図10C】同平面図、
【図11A】固定間仕切板の側面図、
【図11B】同正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 防災用収納箱
10 倉庫スペース
11 収納スペース
12 外壁
13 屋根
14 床
15 ドア
16 換気扇
17 太陽電池パネル
2 小部屋
3 床面
30 床面本体
31 ボード
32 取手
33 アングル
4 壁面
5 仕切板
50 第1の仕切材
51 第2の仕切材
52 第3の仕切材
6 固定間仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災用品等を収納可能な防災用収納箱であって、
その内部に倉庫スペースとその下に少なくとも1つ収納スペースを備えると共に、
前記収納スペースのカバーとなる床面と、壁面側に折畳まれ、且つ、展開時に前記収納スペースの上方の倉庫スペースを仕切りことができる仕切板を備えたことを特徴とする防災用収納箱。
【請求項2】
前記床面を壁面側に移動させることで前記収納スペースを倉庫スペースに臨ませると共に、前記仕切板により、前記倉庫スペースを収納スペース毎に区間可能な小部屋を形成することを特徴とする請求項1に記載の防災用収納箱。
【請求項3】
前記収納スペースには便器が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防災用収納箱。
【請求項4】
前記小部屋の一面は、防災用収納箱の壁面であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の防災用収納箱。
【請求項5】
前記仕切板は隣接する各小部屋に共用されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防災用収納箱。
【請求項6】
前記小部屋は防災用収納箱の壁面に沿って隣接して配置可能なことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の防災用収納箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate


【公開番号】特開2010−37851(P2010−37851A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203320(P2008−203320)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】